JP3951410B2 - 厚鋼板製造設備 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、所定温度に加熱されたスラブを、1台または複数台のリバース式熱間圧延機によって圧延し、場合によっては加速冷却および形状矯正を施して、所定寸法の厚鋼板を歩留り高く製造する、厚鋼板の製造設備に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
厚鋼板は、加熱炉において所定温度に加熱されたスラブを、1台または複数台のリバース式熱間圧延機によって圧延し、場合によっては加速冷却および形状矯正を施し、シート状のまま室温まで冷却した後、所定寸法に切断することにより製造される。
【0003】
このような厚鋼板の製造に際し、製造歩留りの向上が要求されている。厚鋼板の製造歩留が低下する大きな要因としては、素材であるスラブを加熱炉において加熱する際に生ずる酸化スケールによるスケールロス、および、圧延後の厚板形状が矩形にならないためのクロップロスがあげられる。
【0004】
スラブを加熱炉において加熱する際に生ずるスケールの厚さは、スラブの加熱時間が長くなるに従って大になるといわれている。従って、スケールの生成を低減するためには、加熱炉におけるスラブの在炉時間を短くすることが有効である。しかしながら、スラブは、加熱炉においてその厚さ方向中心まで均等に加熱されなければならず、特に、厚肉のスラブの場合には、長時間の加熱が必要であることから、在炉時間の短縮には限度がある。従って、在炉時間の短縮によりスケールの生成防止を図ることはできない。
【0005】
クロップロスを低減するために、厚鋼板の平面形状を向上させる技術として、例えば、特公昭56−17961号公報および特公昭59−34405号公報には、圧延中のロール開度を制御することにより、被圧延材に厚み変化を与える方法が開示されている。しかしながら、このような方法では、圧延中のロール開度制御の僅かなずれによって、厚みの変化形状が変わってくるために、鋼板先後端のクロップロスを少なくすることには限界がある。
【0006】
素材であるスラブの単重を大にすると、スラブの体積に対する生成スケールの表面積が低下することによってスケールロスを低減させ、また、圧延非定常部の割合の低下によりクロップロスを低減することが可能になる。しかしながら、スラブ単重を大にすると、次のような問題が生ずる。
【0007】
即ち、スラブ単重を大にすると、必然的に厚鋼板の圧延終了長が大になる。圧延機の入側および出側には、例えば、デスケーリング装置、加速冷却装置、形状矯正機等、各種の設備が配置されているために、圧延終了長が大になると、上述した圧延機の前後に配置された装置による作業に支障が生ずる。従って、厚鋼板の圧延終了長には限度がある。
【0008】
また、熱間圧延された厚鋼板は、冷却床において室温近くまで冷却した後、これを所定の製品寸法に切断するのが一般的であるために、冷却床に入る寸法までしか厚鋼板の圧延終了長を大にすることはできない。このような圧延終了長の制約を回避するためには、圧延機とその前後の装置とからなる既存圧延設備の配置を変更しなければならず、そのためには多大の費用および長期間の工事が必要となるため、圧延設備を大幅に更新する場合のほか実施することはできない。
【0009】
圧延長を長くすることによって生ずる他の問題として、圧延時間の増大と、これに伴う圧延温度の低下がある。図2は、スラブ長が2倍になった場合の板厚と圧延時間との関係を示したグラフである。図2において、実線は基準スラブ長の場合の圧延時間を示し、破線は基準スラブ長の2倍の場合の圧延時間を示す。図面に示すように、スラブ長が基準スラブ長の2倍の場合には、その圧延時間は2倍以上に長くなる。
【0010】
特に問題となるのは、被圧延材が圧延ロールにより圧下されてから、次に圧延されるまでの時間であって、この時間が長いと、その間においてスラブが空冷されて温度低下を招く。この温度低下が著しい場合には、スラブの変形抵抗が増大する結果、圧延不可能になる場合が生ずる。
【0011】
このような、圧延中のスラブ温度の低下を防止する手段として、特開平7−314007号公報(以下、先行技術1という)には、2台のリバース圧延機のうちの1台のリバース圧延機の入側に保熱コイラーを設け、この保熱コイラーによってスラブを保熱することにより、スラブ温度の低下および形状の不均一を防止する技術が開示されている。
【0012】
また、スラブ単重を大となし歩留りを向上させる技術として、特開昭59−30406号公報(以下、先行技術2という)には、スラブを厚手鋼板の所要板厚まで圧延した後、所定長さに切断し、残りの材料を薄手鋼板の目標板厚まで圧延する技術が開示されており、また、特開昭60−68102号公報(以下、先行技術3という)には、スラブを中間厚まで粗圧延し、所定長さに切断した後、これを保温カバー内で保温し、順次所定寸法に仕上圧延することによって、1つの素材から異幅・異厚の鋼板を圧延する技術が開示されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
先行技術1の場合には、仕上圧延後の鋼板を巻取り、コイル状にして処理することが前提になっているために、仕上圧延後の鋼板をシート状で処理する厚鋼板の場合には、前述した冷却床の収容長さの問題を回避することはできない。また、厚鋼板の場合には、圧延後の鋼板を直ちに加速冷却することによって、強度および靱性の優れた高級鋼板とする場合が多く、この場合には、仕上圧延後の鋼板を直ちに巻取ることはできず、圧延機の前後のスペースに制約が生ずる問題を解決することはできない。
【0014】
先行技術2の場合には、圧延の途中段階で製品を得ようとしているので、一般的な圧下スケジュールでは、製品のクラウン量を低減し、平坦度を確保するために仕上板厚近くになるに従って圧下量を制約している現状では、厚手鋼板の仕上り板厚近傍でパス数が増える。従って、薄手鋼板を単独で圧延する場合に比較し、能率が低下すると共に、薄手鋼板の仕上がり温度が低下し、圧延不能になる場合が生ずる。
【0015】
先行技術3の場合は、中間厚で切断した後の仕上圧延でクロップが生ずるために、クロップの低減効果は少ない。また、先行技術2、3は、何れも圧延の途中段階で切断しているが、切断前の寸法を、前後の設備に干渉しない長さに制約される問題も生ずる。
【0016】
従って、この発明の目的は、上述した問題を解決し、既存の設備を大きく変えることなく、単重の大きいスラブを使用し、スケールロスおよびクロップロスを低減して歩留り高く厚鋼板を製造することができる厚鋼板の製造設備を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上述した問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、歩留り向上のために、素材として単重の大きいスラブの使用を可能にするためには、圧延中の鋼板温度の低下を、熱間圧延機前後の設備による処理を妨げることなく防止し、更に、圧延後の鋼板の長さを冷却床に収容し得る長さにすればよいことがわかった。
【0018】
この発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、この発明の厚鋼板製造設備は、少なくとも、加熱炉、デスケーリング装置、リバース式熱間圧延機および冷却床から構成され、上記順序で配置されている厚鋼板の製造設備において、前記リバース式熱間圧延機の前面側および後面側の両方またはその何れか一方に、圧延中の被圧延材が前後の設備と干渉するのを防止するためのコイラーが設けられ、そして、前記熱間圧延機の出側に、その後の工程における製品長が律される設備の前記製品長に応じて被圧延材を切断するための熱間切断機が設けられ、被圧延材を、室温まで冷却される前に前記熱間切断機によって所定寸法に切断することに特徴を有するものである。
【0019】
前記圧延機の前面側および後面側の両方またはその何れか一方にコイラーを設けたのは、被圧延材を圧延中にコイル状に巻取ることによって、前後の設備との干渉を避けると共に、その温度低下を防止するためであるが、温度低下の防止効果をより高めるためには、コイラーを断熱材で囲う等の処理を施した保熱コイラーを使用することが望ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に、この発明の厚鋼板製造設備を図面を参照しながら説明する。図1は、この発明の設備の一実施態様を示す配置図である。図面に示すように、加熱炉1、デスケーリング装置2、リバース式熱間圧延機3、加速冷却装置4、形状矯正機5および冷却床6がこの順序で圧延ラインに沿い配置されていることは、従来の設備と同じである。なお、上記設備中には熱処理装置が設けられていてもよい。
【0021】
素材であるスラブAは、加熱炉1において所定温度に加熱され、圧延ラインに沿って移動する間に、デスケーリング装置2においてデスケーリングされ、リバース式熱間圧延機3において所定板厚に圧延される。このようにして所定板厚に圧延された厚鋼板は、次いで、加速冷却装置4において加速冷却され、形状矯正機5において形状矯正され、冷却床6において室温まで冷却された後、精整工程に送られる。
【0022】
この発明の設備においては、リバース式熱間圧延機3の前面側および後面側に保熱コイラー7,7′が設けられており、熱間圧延機3の出側に、その後の工程における製品長が律される設備例えば冷却床6の前で、熱間圧延機3の後面側に設けられた保熱コイラー7′と加速冷却装置4との間に、製品長に応じて被圧延材を切断するための熱間切断機8が設けられている。保熱コイラー7,7′は、被圧延材の温度低下を防止する効果に優れているが、被圧延材の温度低下があまり問題ではない場合には、単なるコイラーを配置してもよい。
【0023】
スラブAは、リバース式熱間圧延機3で圧延され、保熱コイラー7,7′に巻き取られ次いで巻き戻され、熱間圧延機3により複数回圧下されることにより、圧延中に温度低下が生ずることなく、ほぼ均一な温度に保たれた状態で所定厚さの厚鋼板A′に圧延される。このようにして圧延された厚鋼板A′は、次いで、熱間切断機8により冷却床6に収容され得る長さにまで切断された後、加速冷却装置4に送られる。
【0024】
この発明において、リバース式熱間圧延機3で圧延された厚鋼板は、上述したように圧延機3の前面側および後面側に配置された保熱コイラー7,7′により一旦巻き取られるので、その温度低下が防止されると共に、圧延長が大にはならず、従って圧延機3の前後に設けられた設備との干渉が防止される。保熱コイラー7,7′は、熱間圧延機3の前後面両側に設けるほか、対象製品範囲により温度効果を防止し得れば、圧延機の前面または後面の何れか一方側の、被圧延材が他設備と干渉するおそれのある側に設けてもよい。
【0025】
上述のようにして圧延機3により圧延された厚鋼板A′は、熱間切断機8により切断された後、後工程に送られるので、後工程での処理に何ら支障が生ずることはない。熱間切断機8は、上述した熱間圧延機3と加速冷却装置4との間に設置するほか、設備配置上可能であれば、加速冷却装置4と形状矯正機5との間、または、形状矯正機5と冷却床6との間に設置しても問題はない。なお、熱間切断機8としては、走行する厚鋼板を一旦停止させて切断するローリングカットシャー式切断機ほか、走行切断機を使用してもよい。
【0026】
【実施例】
厚さ220mm、幅1900mm、長さ3000mmのスラブを、この発明の設備によってリバース圧延し、厚さ5.5mm、幅4000mm、長さ57000mmの厚鋼板にした。その結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
表1において、No. 1〜3は本発明の実施例であって、No. 1は、圧延機の前面側および後面側に設けた保熱コイラーによって被圧延材を保温し、圧延機と冷却床との間でこれを切断した例であって、この場合には、保温しない場合に比べて圧延仕上がり温度が112℃高く、十分な仕上がり温度を確保することができ、設備面の長さ制約も一切生ぜず、圧延長を十分に拡大することができた。
【0029】
No. 2は、圧延機の後面側に設けた保熱コイラーによって被圧延材を保温し、圧延機と冷却床との間でこれを切断した例であって、この例によれば、圧延機の後面側において生ずる長さ制約がなくなって圧延長を拡大することができ、且つ、保温しない場合に比べて圧延仕上がり温度が55℃高く、仕上がり温度を確保することができた。
【0030】
No. 3は、圧延機の前面側に設けた保熱コイラーによって被圧延材を保温し、圧延機と冷却床との間でこれを切断した例であって、この例によれば、圧延機の前面側において生ずる長さ制約がなくなって圧延長を拡大することができ、且つ、保温しない場合に比べて圧延仕上がり温度が55℃高く、仕上がり温度を確保することができた。
【0031】
No. 4〜6は比較例であって、No. 4は、圧延機の前面側および後面側に設けた保熱コイラーによって被圧延材を保温したが、圧延機と冷却床との間では切断しなかった例であって、仕上がり温度を確保することはできたが、圧延された厚鋼板を冷却床に収容することができなかった。No. 5は、圧延機の前後面何れの側でも保温せず、圧延機と冷却床との間で切断した例であり、No. 6は、圧延機の前後面何れの側でも保温せず且つ圧延機と冷却床との間でも切断しなかった例であって、何れも、圧延中の温度低下が激しく、円滑な圧延を行うことができなかった。
【0032】
【発明の効果】
以上述べたように、この発明によれば既存の設備を大きく変えることなく、単重の大きいスラブを使用し、スケールロスおよびクロップロスを低減して歩留り高く長尺の厚鋼板を製造することができる、工業上有用な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の設備の一実施態様を示す配置図である。
【図2】スラブ長が2倍になった場合の板厚と圧延時間との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 加熱炉
2 デスケーリング装置
3 熱間圧延機
4 加速冷却装置
5 形状矯正機
6 冷却床
7 保熱コイラー
8 熱間切断機
【発明の属する技術分野】
この発明は、所定温度に加熱されたスラブを、1台または複数台のリバース式熱間圧延機によって圧延し、場合によっては加速冷却および形状矯正を施して、所定寸法の厚鋼板を歩留り高く製造する、厚鋼板の製造設備に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
厚鋼板は、加熱炉において所定温度に加熱されたスラブを、1台または複数台のリバース式熱間圧延機によって圧延し、場合によっては加速冷却および形状矯正を施し、シート状のまま室温まで冷却した後、所定寸法に切断することにより製造される。
【0003】
このような厚鋼板の製造に際し、製造歩留りの向上が要求されている。厚鋼板の製造歩留が低下する大きな要因としては、素材であるスラブを加熱炉において加熱する際に生ずる酸化スケールによるスケールロス、および、圧延後の厚板形状が矩形にならないためのクロップロスがあげられる。
【0004】
スラブを加熱炉において加熱する際に生ずるスケールの厚さは、スラブの加熱時間が長くなるに従って大になるといわれている。従って、スケールの生成を低減するためには、加熱炉におけるスラブの在炉時間を短くすることが有効である。しかしながら、スラブは、加熱炉においてその厚さ方向中心まで均等に加熱されなければならず、特に、厚肉のスラブの場合には、長時間の加熱が必要であることから、在炉時間の短縮には限度がある。従って、在炉時間の短縮によりスケールの生成防止を図ることはできない。
【0005】
クロップロスを低減するために、厚鋼板の平面形状を向上させる技術として、例えば、特公昭56−17961号公報および特公昭59−34405号公報には、圧延中のロール開度を制御することにより、被圧延材に厚み変化を与える方法が開示されている。しかしながら、このような方法では、圧延中のロール開度制御の僅かなずれによって、厚みの変化形状が変わってくるために、鋼板先後端のクロップロスを少なくすることには限界がある。
【0006】
素材であるスラブの単重を大にすると、スラブの体積に対する生成スケールの表面積が低下することによってスケールロスを低減させ、また、圧延非定常部の割合の低下によりクロップロスを低減することが可能になる。しかしながら、スラブ単重を大にすると、次のような問題が生ずる。
【0007】
即ち、スラブ単重を大にすると、必然的に厚鋼板の圧延終了長が大になる。圧延機の入側および出側には、例えば、デスケーリング装置、加速冷却装置、形状矯正機等、各種の設備が配置されているために、圧延終了長が大になると、上述した圧延機の前後に配置された装置による作業に支障が生ずる。従って、厚鋼板の圧延終了長には限度がある。
【0008】
また、熱間圧延された厚鋼板は、冷却床において室温近くまで冷却した後、これを所定の製品寸法に切断するのが一般的であるために、冷却床に入る寸法までしか厚鋼板の圧延終了長を大にすることはできない。このような圧延終了長の制約を回避するためには、圧延機とその前後の装置とからなる既存圧延設備の配置を変更しなければならず、そのためには多大の費用および長期間の工事が必要となるため、圧延設備を大幅に更新する場合のほか実施することはできない。
【0009】
圧延長を長くすることによって生ずる他の問題として、圧延時間の増大と、これに伴う圧延温度の低下がある。図2は、スラブ長が2倍になった場合の板厚と圧延時間との関係を示したグラフである。図2において、実線は基準スラブ長の場合の圧延時間を示し、破線は基準スラブ長の2倍の場合の圧延時間を示す。図面に示すように、スラブ長が基準スラブ長の2倍の場合には、その圧延時間は2倍以上に長くなる。
【0010】
特に問題となるのは、被圧延材が圧延ロールにより圧下されてから、次に圧延されるまでの時間であって、この時間が長いと、その間においてスラブが空冷されて温度低下を招く。この温度低下が著しい場合には、スラブの変形抵抗が増大する結果、圧延不可能になる場合が生ずる。
【0011】
このような、圧延中のスラブ温度の低下を防止する手段として、特開平7−314007号公報(以下、先行技術1という)には、2台のリバース圧延機のうちの1台のリバース圧延機の入側に保熱コイラーを設け、この保熱コイラーによってスラブを保熱することにより、スラブ温度の低下および形状の不均一を防止する技術が開示されている。
【0012】
また、スラブ単重を大となし歩留りを向上させる技術として、特開昭59−30406号公報(以下、先行技術2という)には、スラブを厚手鋼板の所要板厚まで圧延した後、所定長さに切断し、残りの材料を薄手鋼板の目標板厚まで圧延する技術が開示されており、また、特開昭60−68102号公報(以下、先行技術3という)には、スラブを中間厚まで粗圧延し、所定長さに切断した後、これを保温カバー内で保温し、順次所定寸法に仕上圧延することによって、1つの素材から異幅・異厚の鋼板を圧延する技術が開示されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
先行技術1の場合には、仕上圧延後の鋼板を巻取り、コイル状にして処理することが前提になっているために、仕上圧延後の鋼板をシート状で処理する厚鋼板の場合には、前述した冷却床の収容長さの問題を回避することはできない。また、厚鋼板の場合には、圧延後の鋼板を直ちに加速冷却することによって、強度および靱性の優れた高級鋼板とする場合が多く、この場合には、仕上圧延後の鋼板を直ちに巻取ることはできず、圧延機の前後のスペースに制約が生ずる問題を解決することはできない。
【0014】
先行技術2の場合には、圧延の途中段階で製品を得ようとしているので、一般的な圧下スケジュールでは、製品のクラウン量を低減し、平坦度を確保するために仕上板厚近くになるに従って圧下量を制約している現状では、厚手鋼板の仕上り板厚近傍でパス数が増える。従って、薄手鋼板を単独で圧延する場合に比較し、能率が低下すると共に、薄手鋼板の仕上がり温度が低下し、圧延不能になる場合が生ずる。
【0015】
先行技術3の場合は、中間厚で切断した後の仕上圧延でクロップが生ずるために、クロップの低減効果は少ない。また、先行技術2、3は、何れも圧延の途中段階で切断しているが、切断前の寸法を、前後の設備に干渉しない長さに制約される問題も生ずる。
【0016】
従って、この発明の目的は、上述した問題を解決し、既存の設備を大きく変えることなく、単重の大きいスラブを使用し、スケールロスおよびクロップロスを低減して歩留り高く厚鋼板を製造することができる厚鋼板の製造設備を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上述した問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、歩留り向上のために、素材として単重の大きいスラブの使用を可能にするためには、圧延中の鋼板温度の低下を、熱間圧延機前後の設備による処理を妨げることなく防止し、更に、圧延後の鋼板の長さを冷却床に収容し得る長さにすればよいことがわかった。
【0018】
この発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、この発明の厚鋼板製造設備は、少なくとも、加熱炉、デスケーリング装置、リバース式熱間圧延機および冷却床から構成され、上記順序で配置されている厚鋼板の製造設備において、前記リバース式熱間圧延機の前面側および後面側の両方またはその何れか一方に、圧延中の被圧延材が前後の設備と干渉するのを防止するためのコイラーが設けられ、そして、前記熱間圧延機の出側に、その後の工程における製品長が律される設備の前記製品長に応じて被圧延材を切断するための熱間切断機が設けられ、被圧延材を、室温まで冷却される前に前記熱間切断機によって所定寸法に切断することに特徴を有するものである。
【0019】
前記圧延機の前面側および後面側の両方またはその何れか一方にコイラーを設けたのは、被圧延材を圧延中にコイル状に巻取ることによって、前後の設備との干渉を避けると共に、その温度低下を防止するためであるが、温度低下の防止効果をより高めるためには、コイラーを断熱材で囲う等の処理を施した保熱コイラーを使用することが望ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に、この発明の厚鋼板製造設備を図面を参照しながら説明する。図1は、この発明の設備の一実施態様を示す配置図である。図面に示すように、加熱炉1、デスケーリング装置2、リバース式熱間圧延機3、加速冷却装置4、形状矯正機5および冷却床6がこの順序で圧延ラインに沿い配置されていることは、従来の設備と同じである。なお、上記設備中には熱処理装置が設けられていてもよい。
【0021】
素材であるスラブAは、加熱炉1において所定温度に加熱され、圧延ラインに沿って移動する間に、デスケーリング装置2においてデスケーリングされ、リバース式熱間圧延機3において所定板厚に圧延される。このようにして所定板厚に圧延された厚鋼板は、次いで、加速冷却装置4において加速冷却され、形状矯正機5において形状矯正され、冷却床6において室温まで冷却された後、精整工程に送られる。
【0022】
この発明の設備においては、リバース式熱間圧延機3の前面側および後面側に保熱コイラー7,7′が設けられており、熱間圧延機3の出側に、その後の工程における製品長が律される設備例えば冷却床6の前で、熱間圧延機3の後面側に設けられた保熱コイラー7′と加速冷却装置4との間に、製品長に応じて被圧延材を切断するための熱間切断機8が設けられている。保熱コイラー7,7′は、被圧延材の温度低下を防止する効果に優れているが、被圧延材の温度低下があまり問題ではない場合には、単なるコイラーを配置してもよい。
【0023】
スラブAは、リバース式熱間圧延機3で圧延され、保熱コイラー7,7′に巻き取られ次いで巻き戻され、熱間圧延機3により複数回圧下されることにより、圧延中に温度低下が生ずることなく、ほぼ均一な温度に保たれた状態で所定厚さの厚鋼板A′に圧延される。このようにして圧延された厚鋼板A′は、次いで、熱間切断機8により冷却床6に収容され得る長さにまで切断された後、加速冷却装置4に送られる。
【0024】
この発明において、リバース式熱間圧延機3で圧延された厚鋼板は、上述したように圧延機3の前面側および後面側に配置された保熱コイラー7,7′により一旦巻き取られるので、その温度低下が防止されると共に、圧延長が大にはならず、従って圧延機3の前後に設けられた設備との干渉が防止される。保熱コイラー7,7′は、熱間圧延機3の前後面両側に設けるほか、対象製品範囲により温度効果を防止し得れば、圧延機の前面または後面の何れか一方側の、被圧延材が他設備と干渉するおそれのある側に設けてもよい。
【0025】
上述のようにして圧延機3により圧延された厚鋼板A′は、熱間切断機8により切断された後、後工程に送られるので、後工程での処理に何ら支障が生ずることはない。熱間切断機8は、上述した熱間圧延機3と加速冷却装置4との間に設置するほか、設備配置上可能であれば、加速冷却装置4と形状矯正機5との間、または、形状矯正機5と冷却床6との間に設置しても問題はない。なお、熱間切断機8としては、走行する厚鋼板を一旦停止させて切断するローリングカットシャー式切断機ほか、走行切断機を使用してもよい。
【0026】
【実施例】
厚さ220mm、幅1900mm、長さ3000mmのスラブを、この発明の設備によってリバース圧延し、厚さ5.5mm、幅4000mm、長さ57000mmの厚鋼板にした。その結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
表1において、No. 1〜3は本発明の実施例であって、No. 1は、圧延機の前面側および後面側に設けた保熱コイラーによって被圧延材を保温し、圧延機と冷却床との間でこれを切断した例であって、この場合には、保温しない場合に比べて圧延仕上がり温度が112℃高く、十分な仕上がり温度を確保することができ、設備面の長さ制約も一切生ぜず、圧延長を十分に拡大することができた。
【0029】
No. 2は、圧延機の後面側に設けた保熱コイラーによって被圧延材を保温し、圧延機と冷却床との間でこれを切断した例であって、この例によれば、圧延機の後面側において生ずる長さ制約がなくなって圧延長を拡大することができ、且つ、保温しない場合に比べて圧延仕上がり温度が55℃高く、仕上がり温度を確保することができた。
【0030】
No. 3は、圧延機の前面側に設けた保熱コイラーによって被圧延材を保温し、圧延機と冷却床との間でこれを切断した例であって、この例によれば、圧延機の前面側において生ずる長さ制約がなくなって圧延長を拡大することができ、且つ、保温しない場合に比べて圧延仕上がり温度が55℃高く、仕上がり温度を確保することができた。
【0031】
No. 4〜6は比較例であって、No. 4は、圧延機の前面側および後面側に設けた保熱コイラーによって被圧延材を保温したが、圧延機と冷却床との間では切断しなかった例であって、仕上がり温度を確保することはできたが、圧延された厚鋼板を冷却床に収容することができなかった。No. 5は、圧延機の前後面何れの側でも保温せず、圧延機と冷却床との間で切断した例であり、No. 6は、圧延機の前後面何れの側でも保温せず且つ圧延機と冷却床との間でも切断しなかった例であって、何れも、圧延中の温度低下が激しく、円滑な圧延を行うことができなかった。
【0032】
【発明の効果】
以上述べたように、この発明によれば既存の設備を大きく変えることなく、単重の大きいスラブを使用し、スケールロスおよびクロップロスを低減して歩留り高く長尺の厚鋼板を製造することができる、工業上有用な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の設備の一実施態様を示す配置図である。
【図2】スラブ長が2倍になった場合の板厚と圧延時間との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 加熱炉
2 デスケーリング装置
3 熱間圧延機
4 加速冷却装置
5 形状矯正機
6 冷却床
7 保熱コイラー
8 熱間切断機
Claims (1)
- 少なくとも、加熱炉、デスケーリング装置、リバース式熱間圧延機および冷却床から構成され、上記順序で配置されている厚鋼板の製造設備において、前記リバース式熱間圧延機の前面側および後面側の両方またはその何れか一方に、圧延中の被圧延材が前後の設備と干渉するのを防止するためのコイラーが設けられ、そして、前記熱間圧延機の出側に、その後の工程における製品長が律される設備の前記製品長に応じて被圧延材を切断するための熱間切断機が設けられ、被圧延材を、室温まで冷却される前に前記熱間切断機によって所定寸法に切断することを特徴とする厚鋼板製造設備。
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---|---|---|---|
JP03119798A JP3951410B2 (ja) | 1998-02-13 | 1998-02-13 | 厚鋼板製造設備 |
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JP03119798A JP3951410B2 (ja) | 1998-02-13 | 1998-02-13 | 厚鋼板製造設備 |
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JPH11226611A JPH11226611A (ja) | 1999-08-24 |
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ID=12324706
Family Applications (1)
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-
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