JP2003326302A - 厚鋼板の製造方法および製造設備 - Google Patents

厚鋼板の製造方法および製造設備

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 熱間圧延後に水冷を施されて製造される厚鋼
板について、一様な残留応力分布になるように調整する
ことで、生産性を阻害すること無く、条切り歪等の形状
不良の発生を防止することのできる厚鋼板の製造方法及
び製造設備を提供する。 【解決手段】 粗圧延機3と仕上圧延機4によって熱間
圧延され、水冷装置5によって冷却処理された厚鋼板1
aに対して、ホットレベラー6により形状を矯正し、そ
の後、急速加熱装置8を通過させることによって、厚鋼
板1aの幅端部近傍の表面温度が幅中央部の表面温度よ
り高くなるように厚鋼板1aの表面を急速加熱する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、厚鋼板の製造方法
および製造設備に関するものであり、特に、内部の残留
応力の分布が調整されて無害化された厚鋼板を製造する
技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】厚鋼板を製造する際には、熱間圧延機で
所定寸法に圧延後、引き続いて、水冷による冷却処理を
施して材質を確保することが一般的に行われている。
【0003】しかし、熱間圧延時の温度の不均一による
水冷開始温度の不均一や、水冷のむらによって冷却が不
均一になることがある。すなわち、厚鋼板の幅端部は幅
中央部の定常部に比較して、単位体積あたりの表面積が
大きいため、高温の間は放射冷却によってより早く温度
降下する。さらに、水冷時にも幅端部に水がかかること
などにより、厚鋼板の幅端部が幅中央部の定常部に比較
してより冷却され、温度が低くなりやすい。
【0004】このような冷却の不均一があると、冷却後
の厚鋼板の内部に残留応力が発生し、曲がりや波打ち等
の形状不良になることがある。特に、冷却後に室温にな
ってから切断して多数の条として使用に供するような場
合、厚鋼板の幅端部近傍に不均一に分布した残留応力が
切断によって開放され、厚鋼板の幅端部近傍の条が曲が
ってしまうという問題が起きる。
【0005】このような厚鋼板内部に発生する残留応力
をなくす方法としては、塑性変形を利用して、冷却の不
均一によって生じる熱応力歪を均一化する方法がある。
これには、厚鋼板にレベラーにより曲げ歪を与える方法
や、プレス加工により塑性変形を与える方法がある。ま
た、厚鋼板を炉の中で加熱して熱処理により熱応力歪を
除去する方法もある。
【0006】そして、生産性の面からは、水冷直後で厚
鋼板の温度が高く厚鋼板の変形抵抗が低い間にレベラー
加工を施すホットレベラーの使用が望ましいが、ホット
レベラーは形状を矯正する能力は高いものの不均一な残
留応力を除去する能力は低いため、残留応力が問題とな
る厚鋼板には、ホットレベラーをかけた厚鋼板を炉で熱
処理する方法が用いられている。
【0007】図9は、その方法を示す図である。加熱炉
2で加熱されたスラブ1が粗圧延機3と仕上圧延機4に
よって所定寸法の厚鋼板1aに熱間圧延される。引き続
き、熱間圧延された厚鋼板1aは加速冷却装置などの水
冷装置5によって水冷される。水冷された厚鋼板1a
は、ホットレベラー6により形状を矯正され、かつ残留
応力の一部を除去される。その後、厚鋼板1aは、オフ
ラインに設置された熱処理炉7に静置されて加熱され、
残留応力が除去される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ホットレベラーをかけた厚鋼板を炉で熱処理して残留応
力を除去する方法は、長時間の熱処理を必要とするため
生産性が低いという問題がある。
【0009】一方、条切り歪等の形状不良の発生は、残
留応力の不均一な分布によるものであり、その発生を防
止するためには、必ずしも残留応力を除去する必要があ
るわけではなく、一様な残留応力分布にすればよい。
【0010】本発明は、上記のような状況に鑑みてなさ
れたものであり、熱間圧延後に水冷を施されて製造され
る厚鋼板について、一様な残留応力分布になるように調
整することで、生産性を阻害すること無く、条切り歪等
の形状不良の発生を防止することのできる厚鋼板の製造
方法及び製造設備を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、本発明は以下の特徴を有している。
【0012】[1]熱間圧延機で所定寸法の厚鋼板に圧
延する熱間圧延工程と、熱間圧延された厚鋼板に水冷に
よる冷却処理を施す冷却処理工程と、冷却処理された厚
鋼板をホットレベラーによって矯正する矯正工程と、矯
正工程を経た厚鋼板の表面を加熱し、加熱後の幅端部の
表面温度が幅中央部の表面温度より高くなるようにする
加熱工程とを有することを特徴とする厚鋼板の製造方
法。
【0013】[2]加熱工程が高周波誘導加熱によって
行われることを特徴とする前記[1]記載の厚鋼板の製
造方法。
【0014】[3]加熱工程において、加熱後の幅端部
の表面温度が幅中央部の表面温度より40℃以上高くな
るように加熱することを特徴とする前記[1]又は
[2]記載の厚鋼板の製造方法。
【0015】[4]加熱工程において、加熱時の厚鋼板
への投入熱量が100W/cm2以上であることを特徴
とする前記[1]乃至[3]記載の厚鋼板の製造方法。
【0016】[5]加熱工程において、厚鋼板の温度が
480℃以下で加熱を開始することを特徴とする前記
[1]乃至[4]記載の厚鋼板の製造方法。
【0017】[6]加熱工程において、加熱は途中で冷
却を行わない一回加熱であることを特徴とする前記
[1]乃至[5]記載の厚鋼板の製造方法。
【0018】[7]所定寸法の厚鋼板に圧延する熱間圧
延機と、熱間圧延機で圧延された厚鋼板に水冷による冷
却処理を施す冷却処理装置と、冷却処理された厚鋼板を
矯正するホットレベラーと、矯正工程を経た厚鋼板の表
面を加熱し、加熱後の幅端部の表面温度が幅中央部の表
面温度より高くなるようにする加熱手段とを有すること
を特徴とする厚鋼板の製造設備。
【0019】[8]加熱手段がソレノイド型誘導加熱装
置であることを特徴とする前記[7]記載の厚鋼板の製
造設備。
【0020】[9]ソレノイド型誘導加熱装置は、周波
数が50〜5000Hzで、コイル長が500mm以上
であり、厚鋼板への投入熱量が100W/cm2以上で
あることを特徴とする前記[8]記載の厚鋼板の製造設
備。
【0021】[10]オンライン上にホットレベラーに
近接してソレノイド型誘導加熱装置を配置したことを特
徴とする前記[8]又は[9]記載の厚鋼板の製造設
備。
【0022】[11]ソレノイド型誘導加熱装置に加え
て、厚鋼板の幅端部を補助的に加熱又は/及び冷却を行
うための補助加熱装置又は/及び補助冷却装置を備えた
ことを特徴とする前記[8]乃至[10]記載の厚鋼板
の製造設備。
【0023】
【発明の実施の形態】本発明の一実施形態を図1に示
す。
【0024】図1において、加熱炉2で加熱されたスラ
ブ1が粗圧延機3と仕上圧延機4によって所定寸法の厚
鋼板1aに熱間圧延される。熱間圧延された厚鋼板1a
は、引き続き、加速冷却装置などの水冷装置5によって
水冷される。水冷された厚鋼板1aは、ホットレベラー
6により形状を矯正され、かつ残留応力の一部を除去さ
れる。その後、厚鋼板1aの表面を急速に加熱する急速
加熱装置8を通過させ、必要により厚鋼板1aの幅端部
を補助的に加熱・冷却する補助加熱・冷却装置9も通過
させることによって、厚鋼板1aの幅端部近傍の表面温
度が幅中央部の表面温度より高くなるように加熱する。
これによって、厚鋼板1aの残留応力の分布が一様な状
態に調整された厚鋼板を製造することができる。
【0025】上記によって厚鋼板1aの残留応力の分布
が一様な状態に調整されるのは、次のようなメカニズム
によりものである。
【0026】すなわち、まず、ホットレベラー6により
繰り返し曲げの塑性変形が加えられて、波打ちや曲がり
が除去された平坦な形状の厚鋼板1aになるように矯正
される。ただし、ホットレベラー6では、残留応力の一
部は除去されるものの、残留応力の分布は不均一なまま
である。
【0027】次に、ホットレベラー6により形状が矯正
された厚鋼板1aの表面を加熱し、表面温度を上昇させ
ることにより、厚鋼板1aの降伏応力が下がるとともに
熱膨張によって厚鋼板1aの表面に強い圧縮応力が発生
し、厚鋼板1aの表面が降伏して残留応力が一旦取り除
かれる。この時点で、厚鋼板1aの表面の残留応力はほ
ぼゼロになるが、板厚中央の幅方向に不均一な分布の残
留応力が残っている。
【0028】そして、厚鋼板1aの幅端部近傍が幅中央
部より高くなるように加熱されたことにより、板厚中央
の幅方向に不均一な分布の残留応力をキャンセルする熱
応力が新たに付与され、厚鋼板1aの幅方向の残留応力
が一様化される。
【0029】この時、残留応力は軽減され幅方向に一様
になるものの、ゼロになるわけではないから、炉中で均
一な温度に加熱する熱処理とは異なっており、残留応力
を調整する処理というべきものである。
【0030】このように、この実施形態においては、急
速加熱装置8によって厚鋼板1aの幅端部近傍の表面温
度が幅中央部の表面温度より高くなるように厚鋼板1a
の表面を急速加熱するだけでよいので、従来技術のよう
な熱処理炉を用いて厚鋼板1a全体の温度を均一に上げ
るのに比較して、著しく短時間の加熱ですみ、生産性を
阻害することがない。また、加熱するために投入する熱
エネルギーも少なくてすみ、著しく経済的である。
【0031】なお、一般的に、急速加熱装置で厚鋼板を
急速加熱すれば、厚鋼板の幅端部近傍の表面が幅中央部
の表面より加熱され易いが、特に、急速加熱装置8とし
て高周波誘導加熱であるソレノイド型誘導加熱装置を用
いた場合、厚鋼板1aの幅端部近傍の表面が幅中央部の
表面より強く加熱される特性が著しくなるので、厚鋼板
1aの幅端部近傍の表面温度が幅中央部の表面温度より
高くなるように加熱することが容易となる。
【0032】
【実施例】本発明に係る厚鋼板の製造方法を、厚さ32
mm、幅1m、長さ8mの厚鋼板を対象に実施した例に
ついて述べる。
【0033】この厚鋼板は、熱間圧延後、水冷によって
加速冷却され、ホットレベラーにかけられた後、室温ま
で放冷された厚鋼板を長さ8mに切断したものである。
これを非処理材と呼ぶことにする。
【0034】これに対し、上記の非処理材を周波数15
00Hz、出力7000Kwで長さ約1mのソレノイド
型誘導加熱装置2台で計4秒間の急速加熱をして残留応
力の調整を行ったものが本発明例である。この場合、コ
イル内の加熱される面は約2mであり、単位面積あたり
の発熱量はコイルの効率を70%として約250W/c
2である。
【0035】また、従来技術のように、上記の非処理材
をバッチ炉によって650℃で1時間30分の熱処理を
行ったものを従来例とした。
【0036】なお、本発明例と従来例の加熱方法の比較
を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】上記の非処理材と本発明例と従来例につい
て、幅方向の残留応力分布を調べた結果を図2に示す。
非処理材では、図2(a)に示すように、幅方向に不均
一な残留応力分布を有しているのに対して、本発明例
は、図2(b)に示すように、幅方向になだらかな残留
応力分布になっている。なお、従来例では、図2(c)
に示すように残留応力は完全に除去されている。
【0039】そして、これらの厚鋼板を200mmに条
切りした結果を表2に示す。非処理材では、8mで80
mmの曲がりという大きな条切り歪量が発生している対
して、本発明例では従来例と同様にほとんど条切り歪が
生じていない。
【0040】
【表2】
【0041】このように、本発明例では、加熱に要する
時間が従来例の約1000分の1程度であっても、従来
例と同様に条切り歪の発生を防止することができてい
る。
【0042】次に、ホットレベラー後のソレノイド型誘
導加熱装置による急速加熱の好適な条件について検討し
た結果を述べる。
【0043】熱間圧延後、水冷によって加速冷却され、
ホットレベラーをかけられた後、室温まで放冷された厚
さ40mm、幅700mm、長さ5mの厚鋼板を試験材
とした。そして、試験材を所定の温度まで均一加熱を行
い、その温度を初期温度として、1000Hzで、30
0W/cm2のソレノイド型誘導加熱装置を用いて試験
材を急速加熱した。急速加熱は幅中央部の表面温度が6
50℃に達するように加熱時間を調整した。その後、試
験材を室温まで空冷して条切りし、生じた曲がり量すな
わち条切り歪量を測定した。
【0044】ここで、急速加熱における試験材の温度変
化について、その一例を図3(a)に示す。急速加熱に
よって表面温度は急速に上昇した後、急速加熱が終了し
放冷に移ると急激に低下する。一方、内部温度は徐々に
上昇していく。そして、急速加熱終了後数秒経過する
と、表面温度と内部温度がほぼ同一温度となり、表面温
度が安定する。そこで、急速加熱が終了し放冷に移る時
点での表面温度を「加熱直後の表面温度」と呼び、急速
加熱終了後数秒経過して表面温度が安定した時の表面温
度を「加熱後の表面温度」と呼ぶことにする。
【0045】また、加熱後の表面温度の幅方向分布につ
いて、その一例を図3(b)に示す。急速加熱によっ
て、幅端部が幅中央部に比べて高い温度分布になるが、
板厚によって高温になる部分の幅が異なるため、幅最端
部から板厚分だけ幅方向の内側に入った部分までの領域
での最高温度と最低温度の差をもって評価することに
し、これを端部温度差と呼ぶことにした。
【0046】上記の結果を表3に示す。なお、表3にお
ける加熱直後の表面温度及び加熱後の表面温度は、共に
幅中央部の値である。
【0047】そして、表3における端部温度差と条切り
歪量との関係をプロットしたものを図4(a)に、端部
温度差と加熱後の表面温度との関係をプロットしたもの
を図4(b)に示している。
【0048】
【表3】
【0049】この結果、試験材の表面を急速加熱しなが
ら端部温度差を与えることによって、条切り歪量が減少
していることが分かるが、特に、試験材1〜4のように
端部温度差が40℃以上になると条切り歪量が非常に小
さくなっている。したがって、条切り歪量の発生を防止
するには、端部温度差が40℃以上になるように急速加
熱することが望ましいことを示している。
【0050】なお、表3において、試験材5、6のよう
に初期温度が比較的高温から急速加熱を行った場合、試
験材5に比べて端部温度差が小さい試験材6の方が条切
り歪量が少なくなっているが、これは、試験材6全体が
高温になったために、焼鈍による効果が加わったものと
考えられる。
【0051】そして、端部温度差が40℃以上になるよ
うに急速加熱した場合でも、急速加熱のエネルギー密度
によって条切り歪量が異なってくる。
【0052】図5(a)は、端部温度差が40℃以上に
なるように急速加熱する際の熱エネルギー密度、すなわ
ち、ソレノイド型誘導加熱装置の発熱量と条切り歪量の
関係を示したものである。これによると、条切り歪量を
低減するには、100W/cm2以上の発熱量で加熱する
ことが好ましいことを示している。なお、発熱量を50
W/cm2以下に抑えた場合は、加熱時間が長くなるため
に試験材全体の温度が高くなる効果によって条切り歪量
が多少減少するが、急速加熱処理で費やすトータルの熱
エネルギー量すなわち電力量は、図5(b)に示すよう
に、発熱量が340W/cm2の場合に比べて2倍以上に
なり、極めて不経済である。
【0053】このことは、急速加熱の熱エネルギー密度
の違いによって、加熱直後の試験材の表面と板厚内部の
温度差が変化することが影響している。ソレノイド型誘
導加熱装置の発熱量と、加熱直後の試験材の表面と板厚
内部の温度差との関係を求めたものを図6に示すが、好
ましい発熱量である100W/cm2以上の発熱量におい
ては、加熱直後の試験材の表面と板厚内部の温度差は2
00℃以上にも達している。この温度差が、試験材の表
面を板厚内部に比べて大きく熱膨張させ、試験材の表面
を降伏させて、条切り歪量の低減に寄与することにな
る。
【0054】ただし、この場合に厚鋼板の表面温度を上
げ過ぎると厚鋼板の材質に悪影響を及ぼすので、厚鋼板
の熱処理温度の上限である680℃から200℃低い4
80℃以下で急速加熱を開始する必要がある。
【0055】この意味では、ホットレベラー後の厚鋼板
の温度が480℃を越えている場合には、ホットレベラ
ーから離れた位置に急速加熱装置があれば、厚鋼板を搬
送し放置することで480℃以下になってから加熱する
ことができる。急速加熱装置とホットレベラーが近接し
ている場合は、ライン上で空冷によって冷却するかある
いは冷却床に仮置きして冷却することで480℃以下に
すればよい。
【0056】ホットレベラー後の厚鋼板の温度が480
℃以下であれば、急速加熱装置はどこに設置してもかま
わないが、最小のエネルギーで表面温度を上げるために
はホットレベラーに近接して設置することが望ましい。
通常の厚鋼板の圧延ラインは120mpm程度で搬送で
きるから40mm厚の厚鋼板の温度が10℃以上低下し
ないようにするには、ホットレベラーから50m以内に
あればよいが、急速加熱時に速度が低下して後部の温度
が下がることや8mm程度の厚さの冷えやすい厚鋼板の
場合には10m以内で急速加熱を開始できることが望ま
しい。
【0057】また、100W/cm2以上の発熱量で急速
加熱する場合でも、図7(b)に示すように、加熱と放
冷を繰り返すような複数回の加熱を行うと、加熱と加熱
の間に板厚方向の温度差ΔTが減少し、平均温度の上昇
量ΔTaveも大きくなって必要な熱エネルギーが増加す
る。また、幅端部が幅中央部に比べて高温になる加熱を
繰り返すことになり、幅端部が高温になり過ぎて、異常
組織になる危険性がある。したがって、図7(a)に示
すように、途中に放冷を含まない一回の加熱で行う方が
望ましい。
【0058】以上のことを設備的に実現するには、急速
加熱装置としては、高周波誘導加熱であるソレノイド型
誘導加熱装置が好適であり、広い板厚に対応するため、
その周波数は50〜5000Hzの範囲にあることが望
ましい。また、厚鋼板の圧延ピッチは2分程度であるか
ら板厚40mmの厚鋼板を2分以内に適切に急速加熱す
るためには、コイル長が500mm以上である必要があ
る。
【0059】ちなみに、通常の圧延ラインでは、ホット
レベラーが備えられているので、本発明を実現するに
は、急速加熱装置を設置すればよい。しかし、必ずしも
ホットレベラーの下流側に設置できるとは限らないの
で、ホットレベラーと水冷装置の間に退避可能とした急
速加熱装置を設けて、ホットレベラーをかけた後に厚鋼
板を逆送して加熱してもよい。 その際には、図8のよ
うに、現処理材Aと次処理材Bとが衝突しないような位
置に急速加熱装置8を設置するか、次処理材Bを一旦ラ
インの横に出すなどのバッファ装置を設置してもよい。
【0060】なお、板厚が10mmを下回るような厚鋼
板については、急速加熱装置だけでは、幅端部と幅中央
部が所望の温度差を生じるように急速加熱することが難
しい場合があり、その際には急速加熱装置に加えて補助
的に幅端部を加熱する補助加熱装置を付置して、所望の
条件を実現すればよい。
【0061】また、板厚が厚い場合は、急速加熱によっ
て幅端部の温度が上がり過ぎて問題となる場合があるの
で、その際には急速加熱装置に加えて補助的に幅端部を
冷却できる補助冷却装置を付置して、幅端部の温度を下
げてもよい。
【0062】
【発明の効果】本発明によれば、熱間加工後に水冷を施
された厚鋼板を、ホットレベラーによって矯正した後、
厚鋼板の幅端部の表面温度が幅中央部より高くなるよう
に厚鋼板の表面を急速加熱することで、厚鋼板の幅方向
の残留応力分布を一様な分布に調整するので、条切り歪
等の形状不良の生じない厚鋼板を、生産性を阻害するこ
と無く効率的に製造することのできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の説明する図である。
【図2】幅方向の残留応力分布を示す図である。
【図3】急速加熱における温度履歴及び温度分布を説明
する図である。
【図4】端部温度差と歪量の関係及び端部温度差と加熱
後表面温度の関係を示す図である。
【図5】発熱量と歪量の関係及び発熱量と必要電力量の
関係を示す図である。
【図6】発熱量と板厚方向の温度差の関係を示す図であ
る。
【図7】加熱を一回で行った場合と複数回に分けた場合
の温度履歴の比較図である。
【図8】本発明の他の実施形態を説明する図である。
【図9】従来技術を説明する図である。
【符号の説明】
1 スラブ 1a 厚鋼板 2 加熱炉 3 粗圧延機 4 仕上圧延機 5 水冷装置 6 ホットレベラー 7 熱処理炉 8 急速加熱装置 9 補助加熱・冷却装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C21D 1/42 C21D 1/42 F J P (72)発明者 杉岡 正敏 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 森坂 久志 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 Fターム(参考) 4E002 AD07 BD07 BD09 CB01 4E003 AA01 BA00

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱間圧延機で所定寸法の厚鋼板に圧延す
    る熱間圧延工程と、熱間圧延された厚鋼板に水冷による
    冷却処理を施す冷却処理工程と、冷却処理された厚鋼板
    をホットレベラーによって矯正する矯正工程と、矯正工
    程を経た厚鋼板の表面を加熱し、加熱後の幅端部の表面
    温度が幅中央部の表面温度より高くなるようにする加熱
    工程とを有することを特徴とする厚鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 加熱工程が高周波誘導加熱によって行わ
    れることを特徴とする請求項1記載の厚鋼板の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 加熱工程において、加熱後の幅端部の表
    面温度が幅中央部の表面温度より40℃以上高くなるよ
    うに加熱することを特徴とする請求項1又は2記載の厚
    鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】 加熱工程において、加熱時の厚鋼板への
    投入熱量が100W/cm2以上であることを特徴とす
    る請求項1乃至3記載の厚鋼板の製造方法。
  5. 【請求項5】 加熱工程において、厚鋼板の温度が48
    0℃以下で加熱を開始することを特徴とする請求項1乃
    至4記載の厚鋼板の製造方法。
  6. 【請求項6】 加熱工程において、加熱は途中で冷却を
    行わない一回加熱であることを特徴とする請求項1乃至
    5記載の厚鋼板の製造方法。
  7. 【請求項7】 所定寸法の厚鋼板に圧延する熱間圧延機
    と、熱間圧延機で圧延された厚鋼板に水冷による冷却処
    理を施す冷却処理装置と、冷却処理された厚鋼板を矯正
    するホットレベラーと、矯正工程を経た厚鋼板の表面を
    加熱し、加熱後の幅端部の表面温度が幅中央部の表面温
    度より高くなるようにする加熱手段とを有することを特
    徴とする厚鋼板の製造設備。
  8. 【請求項8】 加熱手段がソレノイド型誘導加熱装置で
    あることを特徴とする請求項7記載の厚鋼板の製造設
    備。
  9. 【請求項9】 ソレノイド型誘導加熱装置は、周波数が
    50〜5000Hzで、コイル長が500mm以上であ
    り、厚鋼板への投入熱量が100W/cm2以上である
    ことを特徴とする請求項8記載の厚鋼板の製造設備。
  10. 【請求項10】 オンライン上にホットレベラーに近接
    してソレノイド型誘導加熱装置を配置したことを特徴と
    する請求項8又は9記載の厚鋼板の製造設備。
  11. 【請求項11】 ソレノイド型誘導加熱装置に加えて、
    厚鋼板の幅端部を補助的に加熱又は/及び冷却を行うた
    めの補助加熱装置又は/及び補助冷却装置を備えたこと
    を特徴とする請求項8乃至10記載の厚鋼板の製造設
    備。
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