JP4008854B2 - 高平面度加工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術手段】
本発明は、ワークの表面を高平面度で平面研削するための高平面度加工装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば鉛直方向に沿って伸びる第1回転軸回りにワークを回転駆動するためのワーク回転駆動装置と、円環状の研削面を有する回転研削工具をその第1回転軸に対して微小な角度(すなわち、水平に対して微小な角度)傾斜させられた第2回転軸回りに回転駆動するための研削工具回転駆動装置とを備え、シリコン・ウェハやガラス等のワークを第1回転軸回りに、砥石等の回転研削工具を第2回転軸回りにそれぞれ回転させつつ、研削面の外周縁が第1回転軸上に位置し且つその最下点がワークの外周縁とその回転中心との間に位置するようにその研削面をそのワークの一面に押し当てることにより、その一面を平坦に研削する縦型ロータリ研削盤等の研削加工装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この研削加工装置によれば、研削面の回転軌跡が第1回転軸上を通ることから、その全周がワーク一面の全体に略一様な条件で押し当てられるので、例えばワークと回転研削工具とが水平方向にも同時に相対移動させられる研削方法に比較して、その一面が高精度で平坦に研削される。また、研削面がワークの一面に対して傾斜させられていることから、ワークに押し付けられた際の逃げが抑制されるため、ワーク一面の初期的な凹凸に拘わらず一定の平面度を得ることができる。すなわち、研削加工装置或いは回転研削工具の剛性が不十分であっても、その逃げに起因してワークが局部的に研削されることが抑制されるため平坦な被加工面が得られるのである。しかも、研削面外周縁の最下点がワーク外周縁とその回転中心との間に押し付けられることから、その研削面が第1回転軸上すなわちワークの回転中心上に常に位置させられることに起因してその回転中心が過度に研削されることが無いので、その回転中心が最も凹んだ被加工面形状(図8(d)参照)となる不都合が好適に防止される利点もある。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−150355号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の研削加工方法では、ワークの外周縁と回転中心との間の位置に研削面外周縁の最下点が押し付けられる結果として、ワークの被加工面は、その回転中心と外周縁が相対的に凸になり、それらの中間部が相対的に凹になったカモメ状と称される断面形状になる(例えば図8(a)参照)。この凸部と凹部との高低差すなわち平面度は、例えば直径8インチのシリコン・ウェハの場合で5(μm)程度になるので、研削加工後にラップ加工やポリッシュ加工を施して平面度を高めることが行われている。このため、回転中心が凹になる場合に比較して後加工による加工除去量が少なくなるというものの、所望の平面度を得るためには未だ加工除去量が比較的大きな後加工が必須となっていた。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、平面度を得るための後加工が無用になりまたはその負担を軽減し得る高平面度加工方法および加工装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための第1の手段】
斯かる目的を達成するために、第1発明の要旨とするところは、ワークをその一面に垂直な第1回転軸回りに、円環状の研削面を有する回転研削工具をその第1回転軸に対して所定角度傾斜する第2回転軸回りにそれぞれ回転させつつ、前記研削面の外周縁が前記第1回転軸上に位置し且つその最下点が前記ワークの外周縁とその回転中心との間に位置するようにその研削面をそのワークの一面に押し当てることにより、その一面を平坦に研削する高平面度加工方法であって、(a)前記回転研削工具を、その研磨面の最下点が前記ワークの半径の中央に位置するようにそのワークの一面に押し当てることにより、そのワークの一面を予め定められた厚さまで研削する第1加工工程と、 ( b)その第1加工工程による研削後、前記ワークに押し当てられた前記回転研削工具を前記第1回転軸回りおよび前記第2回転軸回りにそれぞれ回転させつつ、その回転研削工具の研削面の最下点がそのワークの回転中心および外周縁を通るように、前記ワークの回転中心がその回転中心と前記研削面の最下点とを結ぶ線に沿って前記第1回転軸に垂直な所定方向に相対移動させる第2加工工程と、を含むことにある。
【0008】
【第1発明の効果】
このようにすれば、第1加工工程において、前記回転研削工具が、その研磨面の最下点が前記ワークの半径の中央に位置するようにそのワークの一面に押し当てることによりそのワークの一面が研削された後、第2加工工程において、そのワークに押し当てられた回転研削工具の研削面の最下点がワークの回転中心および外周縁を通るようにワークと回転研削工具とがそれぞれの回転軸回りに回転させられつつ相対移動させられると、一面が予め定められた厚さまで研削される過程で相対的に凸になったそれら回転中心および外周縁が研削面の最下点で研削される。そのため、研削面の最下点をワークの回転中心と外周縁との間に位置させることに起因して生ずる被加工面の凸部が削り落とされて、相対的に凹になっていたそれらの中間部と略同じ高さとなる。すなわち、上記相対移動方向を、最下点が回転中心と外周縁とを通るように定めることにより、一面全体が略一様な高さに研削されるのである。このとき、この相対移動過程では回転中心近傍と外周縁近傍のみが研削されるため、当初から上記相対移動を行いつつ研削する場合のような押圧面積の変化に起因する研削面の変位延いては被加工面のうねりは殆ど生じない。したがって、研削加工後の平面度が従来に比較して著しく高められるため、後加工が無用になり或いは後加工による除去量が著しく減少させられてその負担が軽減される。
【0016】
【発明の好適な実施の形態】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明に用いる図面に関して、各部の寸法比等は必ずしも正確には描かれていない。
【0017】
図1は、本発明の高平面度加工装置の一実施例である縦型ロータリ研削盤10の正面図であり、図2はその側面図である。これらの図において、縦型ロータリ研削盤10は、下部フレーム12と、その下部フレーム12の上面のうち定盤14が載置された残りの部分において、水平軸心方向のピン16まわりの回動が微調節可能に第1傾動装置17により固設された上部フレーム18とを備えている。この第1傾動装置17は、例えば手動でねじ込み量を変化させるボルトや、ねじ軸およびモータ等の駆動装置等から成り、それらの雄ねじの一端が下部フレーム12にねじ込まれた状態で取り付けられたものである。上部フレーム18は、その雄ねじのねじ込み量を変化させることにより、図2における紙面に垂直な回動軸回りの傾斜角度が変化させられる。
【0018】
また、上部フレーム18には、鉛直方向に長手状を成す角柱状の一対の支柱20と、鉛直方向案内部材として機能するその支柱20にそれぞれ嵌装されて鉛直方向に案内される一対の鉛直方向静圧気体軸受装置22とが設けられている。それら一対の鉛直方向静圧気体軸受装置22は、連結板23などを介して互いに連結されている。図3は、上記支柱20の断面を示している。
【0019】
また、鉛直方向静圧気体軸受装置22は、たとえば図4にその要部を示すように、支柱20の4つの案内面を取り囲むハウジング24と、そのハウジング24内において上記案内面と対向し且つわずかな隙間を隔てて位置するように設けられた多孔質部材26と、その多孔質部材26の上記案内面側とは反対側に圧縮気体たとえば圧縮空気を供給するための気体供給通路28とを備え、上記支柱20の案内面との間の隙間に多孔質部材26から噴出させた高圧流体圧(静圧)を介在させることにより被接触でハウジング24が支柱20に支持或いは拘束されるようにする。
【0020】
上記鉛直方向静圧気体軸受装置22には、ガラス板、半導体ウエハなどの被研磨体である板状のワークWの一面(上面)を研削するために鉛直方向(後述するように厳密には方向可変)の回転軸まわりに研削砥石Gを回転駆動する砥石駆動装置30が連結され固定されている。この砥石駆動装置30は、たとえばカップ砥石のような回転研削工具である研削砥石Gを回転駆動するための研磨工具回転駆動装置として機能している。従って、支柱20およびそれにより案内される鉛直方向静圧気体軸受装置22は、砥石駆動装置30を鉛直方向に移動可能に支持するための砥石駆動装置支持装置として機能している。上記砥石駆動装置30は、鉛直方向静圧気体軸受装置22により鉛直方向への移動可能に支持されている。砥石駆動装置30は、軸(下)端に研削砥石Gが固定された回転軸32と、その回転軸32を回転駆動するモータ34が固定された固定板36と、そのモータ34に固定され、上記回転軸32を静圧気体を介して回転可能に支持する静圧気体回転軸受装置38とを備えている。この静圧気体回転軸受装置38は、回転軸32の外周面に対向する多孔質部材から吹き出させた高圧流体圧(静圧)を介在させた状態でその回転軸32を無接触で支持するものである。
【0021】
また、上記の固定板36の上端部近傍には、一対の第2傾動装置37,37が鉛直方向静圧気体軸受装置22に固定されることにより設けられている。この第2傾動装置37は、例えば手動でねじ込み量を変化させるボルトや、ねじ軸およびモータ等の駆動装置等から成るものである。その雄ねじのねじ込み量を変化させることにより、固定板36の上端部が図1における左右何れかの方向に押圧されると、その固定板36を厚み方向に貫通し、或いは略貫通して鉛直方向静圧気体軸受装置22に固定されたピン39回りに固定板36が回動させられる。そのため、モータ34の回転軸32は、図1における紙面に垂直な回動軸回りにその固定板36の回動角度だけ回動させられ、鉛直軸に対して傾斜させられるようになっている。上記一対の第2傾動装置37,37は、一方がねじ込まれるときには他方が後退させられ(或いは後退させられるように連携機構が備えられており)、固定板36が両側面から押圧されることによって、回転軸32が設定された傾斜角度に確実に固定されることになる。
【0022】
なお、前記の第1傾動装置17によって上部フレーム18が回動させられると、図2に示される構成から明らかなように鉛直方向静圧気体軸受装置22が共に回動させられるので、これに取り付けられているモータ34も同時に図2における紙面に垂直な回動軸回りに回動させられる。そのため、モータ34の回転軸32すなわち研削砥石Gの回転軸Cgは、図1における紙面に垂直な回動軸および図2における紙面に垂直な回動軸の2つの回動軸回りにそれぞれ回動させられ得るようになっている。
【0023】
また、上部フレーム18には、ワークWの研磨に際して砥石GをワークWに向かって所定の切込み量で送り込むために、その砥石GをワークWに向かってその回転軸に平行な方向すなわち略鉛直方向へ送り込む砥石送り駆動装置40が設けられている。砥石送り駆動装置40は、位置固定の上部フレーム18に設けられた送りねじ装置42と、その送りねじ装置42により送られる可動部材44と前記鉛直方向静圧気体軸受装置22に連結された連結板23との間に設けられ、その鉛直方向静圧気体軸受装置22をその可動部材44の移動方向と平行な方向に移動させる圧電アクチュエータ46とを備えたものである。送りねじ装置42は、鉛直方向の回転軸まわりに回転可能に上部フレーム18に設けられた送りねじ48と、その送りねじ48に連結されて上部フレーム18に設けられたモータ50とを備え、モータ50により回転駆動される送りねじ48の回転に伴ってそれに螺合した可動部材44が鉛直方向に位置決めする。また、上記圧電アクチュエータ46は、たとえば板状の圧電セラミックスが積層されたものであり、印加されたるされた駆動電圧に応じてその全長がたとえば200(μm)ストローク内で高精度で変化させられ、たとえば6(kN)の出力が得られるものである。
【0024】
また、上記上部フレーム18には、鉛直方向静圧気体軸受装置22により片持ち状に支持された砥石駆動装置30の荷重に起因して前記支柱20の案内面における面圧分布の偏在を緩和するための荷重平衡装置54が設けられている。荷重平衡装置54は、上記砥石駆動装置30と略同等の荷重を備えて上部フレーム18内に上下方向の移動が可能に配置された平衡錘56と、その平衡錘56と砥石駆動装置30との間を連結し、且つローラ58により逆U字状に案内されたケーブル60とを備え、上記砥石駆動装置30にそれを引上げる方向の推力を付与することによりその荷重をその上下位置に拘わらず軽減する。
【0025】
また、前記下部フレーム12上には、ワークWの上面を研磨するためにそのワークWを鉛直方向の回転軸Cwまわりに回転駆動するワーク回転駆動装置64が、定盤14、三分力動力計62、およびワーク回転駆動装置支持装置66を介して設けられている。ワーク回転駆動装置支持装置66は、上記ワーク回転駆動装置64を水平方向に移動可能に支持するためのものであって、その水平方向に延びる水平方向案内部材68と、上記ワーク回転駆動装置64が連結され、その水平方向案内部材68の案内面との間に静圧気体を介在させた状態でその水平方向案内部材68により一水平方向に案内される水平方向静圧気体軸受装置70とを備えている。図5に位置関係を示すように、上記ワーク回転駆動装置64に固定されたワークWは、前記研削砥石Gと鉛直方向において、ワークWの半径程度重複するように設定されている。本実施例においては、ワーク回転駆動装置支持装置66が相対移動装置に相当する。
【0026】
上記ワーク回転駆動装置64は、前記ワークWが着脱可能に取り付けられる吸着盤72が固定された図示しない回転軸と、その回転軸を回転駆動するモータ73と、そのモータ73に固定され、その回転軸を静圧気体を介して支持する静圧気体回転軸受装置74とを備えたものである。この静圧気体回転軸受装置74は、上記図示しない回転軸の外周面に対向する多孔質部材から吹き出させた高圧流体圧(静圧)を介在させた状態でその回転軸32を無接触で支持するものである。また、上記水平方向静圧気体軸受装置70は、前記鉛直方向静圧気体軸受装置22と同様に、水平方向案内部材68の案内面を取り囲むハウジング76と、そのハウジング76内において上記案内面と対向し且つわずかな隙間を隔てて位置するように設けられた図示しない多孔質部材と、その多孔質部材の上記案内面側とは反対側に圧縮気体たとえば圧縮空気を供給するための気体通路とを備え、上記水平方向案内部材68の案内面との間の隙間に多孔質部材から噴出させた高圧流体圧(静圧)を介在させることにより非接触でハウジング76が水平方向案内部材68の案内方向以外の移動が拘束されるようにする。ハウジング76は、たとえばリニヤモータのような水平方向駆動装置78或いは手動操作によって水平方向に往復移動させられる。この移動方向は、図5における上下方向であって、図に示される直線Lwは、ワークWの回転軸Cwを通り且つ移動方向に平行な直線である。
【0027】
また、下部フレーム12上には、例えば定盤14を図5における紙面に垂直すなわち鉛直方向の回転軸回り、例えばワークWの回転軸Cw回りに回動させるための水平回動装置80が備えられている。この水平回動装置80は、例えば制御装置エンコーダ82および回転駆動装置84等から構成されたものであって、水平方向静圧気体軸受装置70および水平方向駆動装置78等のワークWの水平方向駆動および回転駆動に係る構成部分を、その相対位置関係を維持したまま研削砥石Gに対して回動させる。これにより、ワークWの水平移動方向すなわち回転軸Cwの移動直線Lwが水平面内においてその回動角度だけ回動させられる。本実施例においては、上記の水平回動装置80が相対変位装置或いは移動方向回動装置に、制御装置エンコーダ82および回転駆動装置84が相対移動制御装置にそれぞれ相当する。
【0028】
以上のように構成された縦型ロータリ研削盤10では、先ず、第1傾動装置17および第2傾動装置37によって予め定められた角度だけ砥石回転軸Cgが鉛直方向に対して傾斜させられる。傾斜角度は、例えば、図1における右回り方向に0.01°程度、図2における左回り方向に0.01°程度である。この結果、研削砥石Gは、図6(a)に示されるように、正面視において上面が僅かに手前側を向き且つ全体として左端側が低くなるように傾斜させられた状態になっている。このとき、図6(b)に平面視における位置関係を示すように、研削砥石Gの外周縁左端を通る接線は、ワークWの中心すなわち回動軸Cw上を通り且つ前記の図5に示される水平方向案内部材68による案内方向すなわち移動直線Lwに平行である。また、上記のように2方向に傾斜させられた結果、研削砥石Gの下面(すなわち研削面)の最下点Pは回転軸Cw上にあるワークWの回転中心と外周縁との間の位置、例えばその回転中心から半径の1/2の長さだけ離隔した位置にある。研削砥石Gの下面において、この最下点Pと図示しない最上点との高さの差は、例えば20(μm)程度である。なお、研削砥石Gは、例えば円筒状の下端面にその周方向に沿って多数の砥石部材が固着されたものであるが、図においては全体を円板状に簡略化して描いている。
【0029】
次いで、ワークWが吸着盤72に固定されると、研削砥石GおよびワークWが各々の回転軸Cg、Cw回りの所定の方向に回転駆動されるとともに図示しない研削液が供給されつつ、その研削砥石GがワークWに接触する直前まで送りねじ装置42により下降させられる。すなわち、研削砥石Gは、その回転軸Cgがワーク回転軸Cwに対して傾斜させられた状態で回転させられる。上記の図6(a)は、この段階における位置関係を表している。次いで、圧電アクチュエータ46により研削砥石GがワークWに切り込まれることにより、ワークWの上面の全面に研削加工が行われる。このとき、研削砥石Gは、上述したように傾斜させられ且つ最下点PがワークWの半径の中央に位置させられていることから、実際に研削に寄与するのは図6(b)において太線で表された範囲のみとなる。すなわち、研削砥石GはワークWの半径部分のみに接触させられる。しかしながら、ワークWはその回転軸Cw回りに回転させられ、研削砥石Gもその回転軸Cg回りに回転させられるので、ワークWの全面が研削砥石Gの全周を用いて研削されることになる。
【0030】
上記のようにして予め定められた厚さ寸法まで研削した後、研削砥石GおよびワークWを継続的に回転させつつ、制御装置エンコーダ82で水平回動装置80を制御しつつ駆動することにより、例えば定盤14をワークWの回転軸Cw回りの左回り方向に予め定められた角度θだけ回動させる。図7(a)(b)は、この回動操作の前後を示した図である。(a)は、前記の図6に示される研削開始時における位置関係を表しており、研削砥石Gの最下点PがワークWの回転軸Cwから外れた位置にある。このため、ワークWの水平方向案内部材68による移動方向に沿った直線Lw,Lpは、図に示されるようにワークWの回転軸Cwおよび研削砥石Gの最下点Pの何れか一方のみを通ることになる。図においては回転中心の移動直線Lwが左側に位置し、最下点Pを通る直線Lpが右側に位置する。なお、図においてRは、図示の平面視においてワーク回転軸Cwおよび研削砥石回転軸Cgを通る直線であって、直線Lw,Lpと直交している。
【0031】
一方、定盤14を角度θだけ左回りに回動させたときの位置関係を示した図7(b)では、当初の位置からθだけ回動させられた回転軸Cwの移動直線Lw’が最下点Pをも通るものとなっている。換言すれば、回動角度θは、このように回転軸Cwの移動直線Lw’上に最下点Pが位置するように定められるのである。
【0032】
上記のようにワークWの移動方向をθだけ回動させた後、水平方向駆動装置78によってハウジング76が水平方向案内部材68上で前後に往復移動させられると、最下点Pが回転軸CwとワークWの外周縁とを通る範囲で、その回転軸Cwに垂直な水平方向に移動させられる。図7(c)は、この往復移動中の状態を表したものであり、ワークWが実線で示される時点では最下点Pが回転軸Cw上に位置しており、一点鎖線で示される時点では最下点PがワークWの外周縁上に位置している。なお、図において往復移動方向を矢印Tで示した。この往復移動を適当な回数例えば1回行った後、研削砥石GがワークWから上方に向かって離隔させられ、更に、定盤14が初期の位置に復帰させられると共に、ワークWが吸着盤72から取り外されることにより、1枚のワークWの研削加工が終了する。
【0033】
図8(a)は、上記の水平方向の往復移動前すなわちワークWおよび研削砥石Gを水平方向の相対位置が固定された状態で研削加工が行われた後におけるワークWの回転軸Cwを通る断面を示した図であり、(b)は、往復移動後の断面を示した図である。前述したように、研削砥石GはワークWの半径方向の中間位置に最下点Pが位置するようにその表面に押し付けられることから、ワークWの径方向においてその部分が最も大きく研削される。そのため、ワークWの中心および外周縁は相対的に加工量が少なくなるので、ワークWの断面は(a)に示されるように半径方向の中央部が凹になったカモメ状と称される形状になる。しかしながら、その後にワークWが初期の位置から水平方向にθだけ傾斜した方向に往復移動させられると、研削砥石Gの最下点Pが回転軸Cw上を通る移動直線Lwに沿ってそのワークWの中心と外周縁とを結ぶ範囲よりも広い範囲で移動させられることにより、ワークWの表面全体がその最下点Pによって研削加工される。そのため、半径方向の中心側および外周側の相対的に凸の部分が除去され、(b)に示されるように平坦な被研削面が得られる。このように加工された結果、例えばφ200×0.7(mm)の大きさのワークWを加工した場合に、(a)に示される凹部の深さすなわち平面度が例えば5(μm)程度であるのに対し、(b)に示される加工終了時では、例えば1(μm)程度と極めて高い平面度になる。
【0034】
これに対して、図7(a)に示されるようにワークWの移動直線Lwが初期状態のまま、すなわち定盤14を回動させないまま、水平方向駆動装置78によってハウジング76が水平方向案内部材68上で前後すなわち矢印T方向に往復移動させられると、(d)に示されるように、最下点Pが回転軸Cw上を通らない。そのため、この矢印T方向の往復移動ストロークを十分に大きくすると、ワークWの外周縁を研削することはできても、回転中心は研削できないことになる。したがって、往復移動後のワークWの断面は、図8(c)に示されるように中央部が凸の形状になるので、平坦な部分が拡大されるものの平面度は(a)の段階と同程度に留まる。すなわち、前記の定盤14の回動は、回動させない場合におけるワークW中心の削り残しをなくすために行われるのである。
【0035】
ところで、上述した定盤14の回動角度θすなわちワーク回転軸Cwの移動直線Lwの回動角度θすなわち制御装置エンコーダ82の制御量は、以下のようにして定められる。すなわち、図9にワークWと研削砥石Gとの平面視における位置関係を示すように、それらの回転軸Cw,Cgを結ぶ直線Rが定盤14の非回動状態においてワークWの移動方向と垂直を成すとき、その移動方向に平行な回転軸Cwの移動直線Lwおよび研削砥石Gの最下点Pを通る直線Lpの相互間隔Bは、B=A2/Dで与えられる。ここで、Aは、ワークWの回転軸Cwから最下点Pの接触点までの距離であり、Dは研削砥石Gの直径である。また、最下点Pと研削砥石Gの回転軸Cgとを通る直線が直線Rと成す角度を2θとすると、最下点Pおよび回転軸Cwを通る直線が直線Lwと成す角度はθである。したがって、この角度は、θ=sin-1(A/D)で与えられる。このようにして求められた角度θが移動直線Lwの回動させるべき角度になる。種々のA,Dの組合せに対する角度θを求めた結果を下記の表1および図10に示した。
【0036】
【0037】
なお、上記の各値のうち、Aは、一般にワークWの半径の1/2の長さが望ましい。また、実用性を考慮すると、A/D比は0.1〜0.5の範囲内が好ましい。したがって、ワークWの直径をDwとするとき、直径DがDwの1乃至5倍程度の大きさの研削砥石Gを用いることが好ましいといえる。因みに、A/D比が0.1未満では、水平往復移動前のワークの平坦度が低下するため、水平往復移動後の加工精度すなわち平坦度が低下し、若しくは加工精度を向上させるための加工時間が長くなり、A/D比が0.5を越えると、研削砥石Gの負荷が増大するので砥石磨耗が著しくなる。
【0038】
上述のように本実施例によれば、研削面の最下点Pがワーク回転軸Cwおよび外周縁を通るようにワークWと研削砥石Gとがそれぞれの回転軸回りに回転させられつつそのワークWが移動直線Lw上を水平移動させられると、一面が予め定められた厚さまで研削される過程で相対的に凸になったそれら回転中心および外周縁が最下点Pで研削される。すなわち、制御装置エンコーダ82によって、研削面の最下点Pがワーク回転軸Cwを通るようにワークWの移動方向すなわち移動直線Lwの傾斜角度θが制御されることから、ワーク回転駆動装置支持装置66によってワークWを移動させると、最下点PがワークWの回転軸Cwおよび外周縁を通るようにそのワークWと研削砥石Gとがそれぞれの回転軸回りに回転させられつつそのワークWが移動させられる。そのため、最下点PをワークWの回転中心と外周縁との間に位置させることに起因して生ずる被加工面の凸部が削り落とされて、相対的に凹になっていたそれらの中間部と略同じ高さとなる。すなわち、上記移動方向は最下点Pが回転軸Cwと外周縁とを通るように定められているので、一面全体が略一様な高さに研削される。このとき、上記の水平移動過程では回転軸Cw近傍と外周縁近傍のみが研削されるため、当初から水平移動を行いつつ研削する場合のような押圧面積の変化に起因する研削面の変位延いては被加工面のうねりは殆ど生じない。したがって、研削加工後のワークWの平面度が従来に比較して著しく高められる。
【0039】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において、前述した実施例と共通する部分は同一の符号を付して説明を省略する。
【0040】
図11、図12は、それぞれ前記の図9に対応する図であって、ワークWと研削砥石Gとの水平面内における相対変位の他の態様を表している。図11に示す例では、研削砥石Gが、一点鎖線で示す初期位置から実線で示される位置まで、ワークWの回転軸Cw回りに角度θだけ回動させられる。このように回動させられると、最下点Pも回転軸Cw回りに回動させられるので、角度θを適当に選ぶことにより、移動直線Lw上に最下点Pが位置させられる。なお、一点鎖線でしめされる最下点Pは、回動前の初期位置を表している。このようにしても、ワークWを移動直線Lwに沿って移動させたときにその回転軸Cgが最下点Pを通ることになるので、外周縁だけでなく回転中心近傍も確実に削り落とされて高い平面度が得られる。
【0041】
また、図12に示される態様では、ワークWが一点鎖線で示す初期位置から実線で示される位置まで、研削砥石Gの回転軸Cg回りに角度θだけ回動させられる。このように回動させられると、回転軸Cwも回転軸Cg回りに回動させられるので、角度θを適当に選ぶことにより、回動後の回転軸Cwの移動直線Lw’が最下点Pを通る直線Lp上に重ねられる。そのため、この態様でも、ワークWを移動直線Lw’に沿って移動させたときにその回転軸Cgが最下点Pを通ることになるので、外周縁だけでなく回転中心近傍も確実に削り落とされて高い平面度が得られる。
【0042】
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
【0043】
例えば、前述の実施例において、ワークWと研削砥石Gとを水平方向に相対移動させるためにそのワークWが移動させられていたが、反対に研削砥石Gが移動させられるように構成することもでき、或いは、両者が連携的に移動するように構成することもできる。
【0044】
また、前述の実施例において、ワーク回転駆動装置支持装置66による水平移動の方向を傾斜させるための水平回動装置80が備えられ、A/D比に応じた角度θだけワークWの移動直線Lwが回動させられていたが、A/D比が一定である場合には、移動直線Lwが固定的に設けられていても良い。
【0045】
その他一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高平面度加工装置の一実施例である縦型ロータリ研削盤を示す正面図である。
【図2】図1の縦型ロータリ研削盤の側面図である。
【図3】図1のIII−III視断面において支柱の断面を示す図である。
【図4】図1の縦型ロータリ研削盤に備えられた垂直方向静圧気体軸受け装置の構成の要部を説明する断面図である。
【図5】図1の縦型ロータリ研削盤における研削砥石とワークとの位置関係を説明する平面図である。
【図6】図1の縦型ロータリ研削盤の研削砥石の傾斜状態を説明するための(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図7】 (a)〜(d)は、研削後の水平移動を説明する図である。
【図8】 (a)は本発明の加工方法によるワークの平行移動前、(b)は平行移動後、(c)は平行移動方向が(b)とは異なる場合の平行移動後、(d)は研削砥石がワーク表面に平行な場合の研削加工後のそれぞれのワーク断面形状を模式的に示す図である。
【図9】ワーク回転中心から研削砥石最下点までの距離Aおよび研削砥石直径Dと、水平方向静圧気体軸受装置の傾斜角度θとの関係を説明する図である。
【図10】図9におけるA/D比とθとの関係を表したグラフである。
【図11】ワークと研削砥石との相対移動方向を変化させるための他の構成例を説明する原理図である。
【図12】ワークと研削砥石との相対移動方向を変化させるための更に他の構成例を説明する原理図である。
【符号の説明】
10:縦型ロータリ研削盤
17:第1傾動装置
37:第2傾動装置
66:ワーク回転駆動装置支持装置
80:水平回動装置
82:制御装置
W:ワーク
G:研削砥石
Cg:研削砥石回転軸
Cw:ワーク回転軸
P:研削砥石最下点
Lw:ワーク移動直線
Claims (1)
- ワークをその一面に垂直な第1回転軸回りに、円環状の研削面を有する回転研削工具をその第1回転軸に対して所定角度傾斜する第2回転軸回りにそれぞれ回転させつつ、前記研削面の外周縁が前記第1回転軸上に位置し且つその最下点が前記ワークの外周縁とその回転中心との間に位置するようにその研削面をそのワークの一面に押し当てることにより、その一面を平坦に研削する高平面度加工方法であって、
前記回転研削工具を、その研磨面の最下点が前記ワークの半径の中央に位置するように該ワークの一面に押し当てることにより、そのワークの一面を予め定められた厚さまで研削する第1加工工程と、
該第1加工工程による研削後、前記ワークに押し当てられた前記回転研削工具を前記第1回転軸回りおよび前記第2回転軸回りにそれぞれ回転させつつ、該回転研削工具の研削面の最下点がそのワークの回転中心および外周縁を通るように、前記ワークの回転中心がその回転中心と前記研削面の最下点とを結ぶ線に沿って前記第1回転軸に垂直な所定方向に相対移動させる第2加工工程と、
を含むことを特徴とする高平面度加工方法。
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