JP3630950B2 - 球面レンズの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に外径寸法と異なるレンズ径の凹形球面状のレンズ面を有する球面レンズの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
研削研磨による球面レンズの製造方法としては、例えば、1990年9月5日に日本オプトメカトロニクス協会より発行された『光学素子加工技術‘90』の〔I−5光学素子の加工工程〕7頁、に記載されているように、製品形状に類似した形状のプレス成形品を素材として、CG等による粗研削工程、砂掛けあるいは精研削による精研削工程、みがきによる研磨工程、の順に機械加工する方法が広く知られている。
【0003】
例えば、図6の(a)に示すように、公知のプレス加工によって製品形状に近い凹形球面状のレンズ面101を有するプレス成形品(以下、「ワーク」という)W を成形する。ワークW のレンズ面101の外周縁は輪帯部102によって囲まれており、また、レンズ面101の反対側には平坦な基準面103が設けられている。基準面103については、球面等の曲面である場合もある。
【0004】
通常のプレス加工によってワークW を製作すると、その外周部すなわち輪帯部102の厚さT は、一般的に、0.4〜0.5mm程度の寸法公差を有する。
【0005】
次に、図7に示す球面研削加工機を用いた研削加工によって、ワークW のレンズ面101を所定の曲率の球面に加工する。図7の装置は、ホルダ110aの先端に真空吸着あるいはすり割り構造のチャック等による締め付け等の方法でワークW を保持するワーク軸110と、台座111に対してワーク軸110を軸方向に進退させて切り込み深さを制御する図示しない切り込み制御系と、ワーク軸110を回転駆動する回転駆動部112と、先端に研削砥石120aを保持する工具軸120と、工具軸120を支持する台座121と、工具軸120を回転駆動する回転駆動部122等を有する。工具軸120を支持する台座121は、ワーク軸110に対する工具軸120の傾斜角度等を調節するために矢印A で示すように旋回自在である。
【0006】
ワークW の基準面103をワーク軸110のホルダ110aの基準面110bに当接して、前述のように真空吸着等の方法でワークW をワーク軸110に保持させる。ワーク軸110を回転駆動部112によって回転させながら、切り込み制御系によってワーク軸110を軸方向に前進させ、回転駆動部122によって回転する研削砥石120aにワークW を当接して、そのレンズ面101を所定の曲率の球面形状に研削する。
【0007】
このような球面研削工程によって加工されたレンズ面101は図6の(b)に示すように、目標値に近い曲率半径を有する凹形球面状のワークW となる。ワークW の中心部の厚さT は、上記の研削工程において、ワーク軸110の前進量等を制御する切り込み制御系のストッパーの位置によって定まるものである。
【0008】
続いて、図8に示す精研削加工機によって、ワークW のレンズ面101を所定の表面粗度に仕上げる表面研磨を行なう。図8の装置は、レンズホルダ131によって図示下向きに保持されたワークW を研磨工具132に当接し、研磨工具132を回転させながら、カンザシ133によってレンズホルダ131を横方向に揺動させることで、ワークW のレンズ面101と研磨工具132との間の摺り合わせを行なうように構成されており、研磨工具132には、ダイヤ砥粒を金属や樹脂等を用いて焼結成形した球面状の研磨面を有する精研削総型工具を用いる。
【0009】
この後、図8の装置の研磨工具132としてポリウレタンシートや固定砥粒等の研磨材を用いた最終的なみがきすなわち仕上げ研磨を行ない、目標とする曲率と表面粗度等に仕上げる。
【0010】
図8の装置の替わりに、図9に示すように、研磨工具142を回転させながら揺動させ、レンズR を保持するレンズホルダ141にカンザシ143を押圧し、これを回転させるように構成した精研削加工機を用いることもある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記従来の技術によれば、図6の(a)に示すように、プレス成形品であるワークW の厚さT は前述のようにプレス加工による0.4〜0.5mmの寸法公差をもっているため、球面研削加工機を用いて球面研削すると、同図の(b)に示すように、レンズR のレンズ面101の深さT に上記の寸法公差がそのまま出現する結果となり、レンズ面101の直径d が製品ごとに著しくバラつくのを避けることができない。
【0012】
詳しく説明すると、図7に示す球面研削加工機においては、ワークW のレンズ面101の反対側の基準面103をホルダ110aの基準面110bに当接し、ワーク軸110の前進量を制御する切り込み制御系によって切り込み深さを制御するように構成されており、切り込み制御系に設けられたストッパーによって切り込み停止位置が一定となる。従って、ワークW の中心部の厚さT が常時一定値となるように研削が行なわれる。他方、ワークW の外周縁に位置する輪帯部102における厚さは、球面研削を行なう前のワークW の厚さT と同じであるから、プレス加工による0.4〜0.5mm程度の寸法公差がレンズ面101の深さT の寸法公差となって残り、球面研削後のレンズ面101の直径d がバラつく結果となる。
【0013】
このように球面加工されたワークのレンズ面の直径にバラつきがあると、図8や図9に示す精研削加工機においてレンズ面を研磨するときに以下のような問題を生じる。すなわち、後工程での精研削加工および研磨加工において、球面研削後のレンズ面の直径(加工径)と精研削総型工具の外径との比率、あるいは精研削加工後に用いる研磨総型工具の外径との比率が、ワークが替わるたびに繰り返し変化するため、前記工具形状(研磨面)の摩耗進行状態が一定とならず、安定した加工を維持継続することが困難になる。これによって、品質不良が慢性化したり、あるいはこれを回避するために、研磨面の曲率変化に応じて、例えば、ワークと精研削総型工具、および研磨総型工具との間の相対位置を変更する作業が必要となる。すなわち、ワーク軸やホルダの位置を前後させる等の調整作業を頻繁に必要とすることになり、その結果、スループットが低下して、レンズの製造コストを上昇させていた。
【0014】
本発明は上記従来の技術の有する未解決の課題に鑑みてなされたものであり、凹形球面状に球面加工されたレンズ面を所定の表面粗度に仕上げる研磨加工等において、ワークの加工径を揃えておくことで、加工径のバラつきに起因する製品不良やスループットの低下等のトラブルを回避して、生産性を大幅に改善できる球面レンズの製造方法を提供することを目的とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明の球面レンズの製造方法は、凹形曲面状のレンズ面とその外周縁を囲む輪帯部を有するワークの前記輪帯部の端面を研削することによって前記レンズ面の加工径を揃える工程と、加工径を揃えたワークのレンズ面を所定の表面粗度に研磨する工程を有することを特徴とする。
【0016】
複数のワークを台金上に接着し、前記複数のワークのそれぞれの輪帯部の端面を同一研削手段によって研削することで各ワークのレンズ面の加工径を揃えるとよい。
【0017】
ワークのレンズ面の反対側の基準面を研削する工程が付加されていてもよい。
【0018】
ワークのレンズ面を球面加工するための球面研削加工機を用いて前記ワークの輪帯部の端面を研削してもよい。
【0019】
【作用】
ワークのレンズ面の加工径にバラつきがあると、レンズ面の仕上げ加工を行なう研磨工程において研磨工具の研磨面の摩耗が不均一となり、製品不良が慢性化したり、研磨工具の位置を調整する頻度が増えてスループットの低下を招く。そこで、上記の研磨工程の前に、ワークの輪帯部の端面を研削して厚さを揃えることで、レンズ面の加工径を一定にしておく。
【0020】
レンズ面の加工径にバラつきがないために研磨工具の摩耗が均一となり、定期的に研磨工具の位置を調整するだけで高精度の仕上がりを維持できる。
【0021】
研磨工具の摩耗による製品不良の発生やスループットの低下を防ぐことで、球面レンズの製造コストを大幅に低減できる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
(第1の実施の形態)
図1は第1の実施の形態による球面レンズの製造方法を説明するもので、同図の(a)に示すように、公知のプレス加工によって製品形状に近い凹形球面状のレンズ面1を有するプレス成形品(以下、「ワーク」という)R を成形する。ワークR のレンズ面1の外周縁は輪帯部2によって囲まれており、また、レンズ面1の反対側には平坦な基準面3が設けられている。
【0024】
通常のプレス加工によってワークR を製作すると、全体の厚さすなわち輪帯部2の厚さD は、一般的に、0.4〜0.5mm程度の寸法公差を有する。
【0025】
次に、研削手段である図2の研削装置を用いてワークR の輪帯部2の端面を研削し、図1の(b)に示すように、ワークR の厚さを所定の値D に低減し、レンズ面1の直径(加工径)d を揃える工程を設ける。図2の装置は、図示しない回転駆動系と切り込み駆動系を有する駆動部4の上端に支持されたホルダ5と、図示しない回転駆動系等を有する研削工具6を備えている。数多くのワークR の基準面3を下にして、鋼鉄やアルミニウム等を材料とする台金7に、ピッチ等の熱可塑性接着剤等を用いて接着し、台金7をホルダ5に固定する。
【0026】
なお、ワークR の基準面3は、図1に示すような平坦面に限らず、所定の曲率を有する球面でもよい。また、台金7の表面は平面でよいし、各ワークR の底部を収容するような座ぐり形状を有するものでもよい。
【0027】
このように各ワークR の輪帯部2を上向きにして台金7に固定し、研削工具6の研削砥石6aを輪帯部2に当接してホルダ5を回転させ、ホルダ5の回転と研削工具6の回転によって輪帯部2の端面を研削する。この端面研削工程で、ホルダ5の駆動部4の切り込み駆動系に設けられたストッパによって輪帯部2の研削量を調節して、その厚さを所定の値D に揃えることができる。
【0028】
次に、図4に示す球面研削加工機を用いた球面加工によって、ワークR のレンズ面1を所定の曲率の球面に加工する。図4の装置は、ホルダ10aの先端に真空吸着あるいはすり割り構造のチャック等による締め付け等の方法でワークR を保持するワーク軸10と、台座11に対してワーク軸10を軸方向に進退させて切り込み深さを制御する図示しない切り込み制御系と、ワーク軸10を回転駆動する回転駆動部12と、先端に研削砥石20aを保持する工具軸20を有し、工具軸20は台座21に支持され、回転駆動部22によって回転駆動される。工具軸20を保持する台座21は、ワーク軸10に対する工具軸20の傾斜角度等を調節するために矢印A で示すように旋回自在である。
【0029】
ワークR の基準面3をワーク軸10のホルダ10aの基準面に当接して、前述のように真空吸着等の方法でワークR をワーク軸10に保持させ、ワーク軸10を回転駆動部12によって回転させながら、切り込み制御系によってワーク軸10を軸方向に前進させ、回転駆動部22によって回転する研削砥石20aにワークR を当接して、そのレンズ面1を所定の曲率の球面形状に研削する。
【0030】
このような球面加工工程によって加工されたレンズ面1は図1の(c)に示すように、目標値に近い曲率半径を有するワークR となる。ワークR の中心部の厚さD は、上記の研削工程において、切り込み制御系によってワーク軸10の前進量等を制御することで、研削砥石20aの切り込み深さを調節し、所定の値に仕上げたものである。前述の端面研削工程によって、ワークR の輪帯部2の厚さD とレンズ面1の加工径d がそれぞれ所定の値となるように加工されているため、レンズ面1の深さD も一定となる。
【0031】
続いて、図3に示す精研削加工機によって、ワークR のレンズ面1を所定の表面粗度に仕上げる表面研磨を行なう。図3の装置は、レンズホルダ31によって図示下向きに保持されたワークR を研磨工具32に当接し、研磨工具32を回転させながら、カンザシ33によってレンズホルダ31を横方向に揺動させることで、ワークR のレンズ面1と研磨工具32との間の摺り合わせを行なうように構成されており、研磨工具32には、ダイヤ砥粒を金属や樹脂等を用いて焼結成形した球面状の研磨面を有する精研削総型工具を用いる。
【0032】
この後、図3の装置の研磨工具32としてポリウレタンシートや固定砥粒等の研磨材を用いた最終的なみがきすなわち仕上げ研磨加工を行ない、目標とする曲率と表面粗度等に仕上げる。
【0033】
図3の装置の替わりに、研磨工具を回転させながら揺動させ、ワークを保持するレンズホルダを回転させるように構成した精研削加工機を用いることもある。
【0034】
球面研削加工機による研削後のレンズ面1の直径すなわち加工径d は、研削前のワークR の厚さD にバラつきがないため、各ワークR について常に一定である。従って、精研削加工機等を用いた後工程に用いられる研磨工具等の研磨面の摩耗が、従来例のように不均一に進行する等の不都合がなく、仕上げ研磨後の球面レンズの品質は目標通りで、品質不良が多発したり、慢性化するおそれはない。また、品質を維持するための調整作業も定期的に予定通りに行なうだけでよい。
【0035】
このようにして品質不良やスループットの低下を防ぐことで、球面レンズの製造コストを大幅に低減できる。
【0036】
第2の実施の形態は、第1の実施の形態による図1の(b)の工程のに、図2に示す研削装置を用いてワークR0 の基準面3を研削する工程を付加したものである。ワークR0 の基準面3の平面度や曲率にバラつきがあると、ワークR1 を球面研削加工機に保持させたときの位置や姿勢が一定とならず、ワークR2 の中心部の厚さD2 にバラつきが発生する。そこで、図2の装置において、ワークR0 の基準面3を上にした状態で台金7に固定し、基準面3の凹凸を除去する。その他の点については第1の実施の形態と同様である。
【0037】
レンズ面の直径や中心部の厚さが一定で、極めて形状精度の高い球面レンズを製造することができる。
【0038】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態は、ワークの厚さを揃える工程に、図2の研削装置を用いる替わりに図4に示す球面研削加工機を用いるものである。図4の球面研削加工機においては、矢印A に示すように旋回させて工具軸20の傾斜角度を調節自在であるから、図5に示すように、ワーク軸10と同軸上に工具軸20を位置させ、ワークR の輪帯部2の端面に研削砥石20aを水平に当接して前記輪帯部2の研削を行なう。このようにして輪帯部2の厚さを所定の厚さD に揃えたうえで、工具軸20をもとの角度に傾けて、球面加工を行なう。
【0039】
このような単玉研削を採用すると、図2の装置のように多数のワークを一度に処理する場合に比べて輪帯部の端面加工の効率は劣るものの、図2の装置が不必要であり、ひき続き同じ装置上で球面加工を行なうことができるという利点がある。その他の点は第1の実施の形態と同様である。
【0040】
【発明の効果】
本発明は上述のように構成されているので、以下に記載するような効果を奏する。
【0041】
球面加工されたレンズ面を研磨して所定の表面粗度に仕上げる工程において、加工径のバラつきに起因する製品不良やスループットの低下を回避して、球面レンズの製造コストを大幅に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態による球面レンズの製造方法を示す図である。
【図2】図1の(b)に示す工程で用いる装置を示す図である。
【図3】レンズの仕上げ研磨に用いる精研削加工機を示す図である。
【図4】図1の(c)に示す工程に用いる球面研削加工機を説明する図である。
【図5】第3の実施の形態において、図1の(b)に示す工程に図4の装置を用いる場合を示す図である。
【図6】一従来例による球面レンズの製造方法を示す図である。
【図7】図6の(b)に示す工程に用いる球面研削加工機を説明する図である。
【図8】レンズの仕上げ研磨に用いる精研削加工機を示す図である。
【図9】レンズの仕上げ研磨に用いる精研削加工機の別の例を示す図である。
【符号の説明】
1 レンズ面
2 輪帯部
3 基準面
6 研削工具
7 台金

Claims (5)

  1. 凹形曲面状のレンズ面とその外周縁を囲む輪帯部を有するワークの前記輪帯部の端面を研削することによって前記レンズ面の加工径を揃える工程と、加工径を揃えたワークのレンズ面を所定の表面粗度に研磨する工程を有する球面レンズの製造方法。
  2. プレス加工によって凹形曲面状のレンズ面とその外周縁を囲む輪帯部を有するワークを製作する工程と、製作されたワークの輪帯部の端面を研削することによってレンズ面の加工径を揃える工程と、加工径を揃えたワークのレンズ面を所定の曲率に球面加工する工程と、球面加工されたレンズ面を所定の表面粗度に研磨する工程を有する球面レンズの製造方法。
  3. 複数のワークを台金上に接着し、前記複数のワークのそれぞれの輪帯部の端面を同一研削手段によって研削することで各ワークのレンズ面の加工径を揃えることを特徴とする請求項1または2記載の球面レンズの製造方法。
  4. ワークのレンズ面の反対側の基準面を研削する工程が付加されていることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載の球面レンズの製造方法。
  5. ワークのレンズ面を球面加工するための球面研削加工機を用いて前記ワークの輪帯部の端面を研削することを特徴とする請求項1または2記載の球面レンズの製造方法。
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