図1は、本発明の一実施例の平面研削加工用砥石Gを用いて平面研削加工が行われる状態を説明する図であり、縦型ロータリ研削盤(高速平面研削装置)10の構成を示す側面図である。図において、縦型ロータリ研削盤10は、下部フレーム12と、その下部フレーム12の上面のうち定盤14が載置された残りの部分において、水平軸心方向のピン16まわりの回動が微調節可能に第1傾動装置17により固設された上部フレーム18とを備えている。この第1傾動装置17は、例えば手動でねじ込み量を変化させるボルトや、ねじ軸およびモータ等の駆動装置等から成り、それらの雄ねじの一端が下部フレーム12にねじ込まれた状態で取り付けられたものであり、上部フレーム18は、その雄ねじのねじ込み量を変化させることにより、図1における紙面に垂直な回動軸回りの傾斜角度が変化させられる。
また、上部フレーム18には、鉛直方向に長手状を成す角柱状の一対の支柱20と、鉛直方向案内部材として機能するその支柱20にそれぞれ嵌装されて鉛直方向に案内される一対の鉛直方向静圧気体軸受装置22とが設けられている。それら一対の鉛直方向静圧気体軸受装置22は、連結板23などを介して互いに連結されている。
また、鉛直方向静圧気体軸受装置22は、支柱20の4つの案内面を取り囲むハウジング24と、そのハウジング24内において上記案内面と対向し且つわずかな隙間を隔てて位置するように設けられた多孔質部材26と、その多孔質部材26の上記案内面側とは反対側に圧縮気体たとえば圧縮空気を供給するための気体供給通路28とを備え、上記支柱20の案内面との間の隙間に多孔質部材26から噴出させた高圧流体圧( 静圧) を介在させることにより被接触でハウジング24が支柱20に支持或いは拘束されるようにする。
上記鉛直方向静圧気体軸受装置22には、ガラス板、半導体ウエハなどの被研磨体である板状のワークWの一面( 上面) を研削するために鉛直方向( 後述するように厳密には方向可変) の回転軸まわりに平面研削加工用砥石Gを回転駆動する砥石駆動装置30が連結され固定されている。この砥石駆動装置30は、たとえばカップ砥石のような回転研削工具である平面研削加工用砥石Gを回転駆動するための研磨工具回転駆動装置として機能している。従って、支柱20およびそれにより案内される鉛直方向静圧気体軸受装置22は、砥石駆動装置30を鉛直方向に移動可能に支持するための砥石駆動装置支持装置として機能している。上記砥石駆動装置30は、鉛直方向静圧気体軸受装置22により鉛直方向への移動可能に支持されている。砥石駆動装置30は、軸( 下) 端に平面研削加工用砥石Gが固定された回転軸32と、その回転軸32を回転駆動するモータ34が固定された固定板36と、そのモータ34に固定され、上記回転軸32を静圧気体を介して回転可能に支持する静圧気体回転軸受装置38とを備えている。この静圧気体回転軸受装置38は、回転軸32の外周面に対向する多孔質部材から吹き出させた高圧流体圧( 静圧) を介在させた状態でその回転軸32を無接触で支持するものである。
また、上記の固定板36の上端部近傍には、一対の第2傾動装置37,37が鉛直方向静圧気体軸受装置22に固定されることにより設けられている。この第2傾動装置37は、例えば手動でねじ込み量を変化させるボルトや、ねじ軸およびモータ等の駆動装置等から成るものである。その雄ねじのねじ込み量を変化させることにより、固定板36の上端部が正面視で左右何れかの方向に押圧されると、その固定板36を厚み方向に貫通し、或いは略貫通して鉛直方向静圧気体軸受装置22に固定されたピン39回りに固定板36が回動させられる。そのため、モータ34の回転軸32は、図1における紙面に平行な面内においてその固定板36の回動角度だけ回動させられ、鉛直軸に対して傾斜させられるようになっている。上記一対の第2傾動装置37,37は、一方がねじ込まれるときには他方が後退させられ( 或いは後退させられるように連携機構が備えられており) 、固定板36が両側面から押圧されることによって、回転軸32が設定された傾斜角度に確実に固定されることになる。
なお、前記の第1傾動装置17によって上部フレーム18が回動させられると、図1に示される構成から明らかなように鉛直方向静圧気体軸受装置22が共に回動させられるので、これに取り付けられているモータ34も同時に図1における紙面に垂直な回動軸回りに回動させられる。そのため、モータ34の回転軸32すなわち平面研削加工用砥石Gの回転軸心Cgは、図1における紙面に垂直な回動軸および図2における紙面に垂直な回動軸の2つの回動軸回りにそれぞれ回動させられ得るようになっている。
また、上部フレーム18には、ワークWの研磨に際して平面研削加工用砥石GをワークWに向かって所定の切込み量で送り込むために、その平面研削加工用砥石GをワークWに向かってその回転軸に平行な方向すなわち略鉛直方向へ送り込む砥石送り駆動装置40が設けられている。砥石送り駆動装置40は、位置固定の上部フレーム18に設けられた送りねじ装置42と、その送りねじ装置42により送られる可動部材44と前記鉛直方向静圧気体軸受装置22に連結された連結板23との間に設けられ、その鉛直方向静圧気体軸受装置22をその可動部材44の移動方向と平行な方向に移動させる圧電アクチュエータ46とを備えたものである。送りねじ装置42は、鉛直方向の回転軸まわりに回転可能に上部フレーム18に設けられた送りねじ48と、その送りねじ48に連結されて上部フレーム18に設けられたモータ50とを備え、モータ50により回転駆動される送りねじ48の回転に伴ってそれに螺合した可動部材44が鉛直方向に位置決めする。また、上記圧電アクチュエータ46は、たとえば板状の圧電セラミックスが積層されたものであり、印加されたるされた駆動電圧に応じてその全長がたとえば200(μm)ストローク内で高精度で変化させられ、たとえば6(kN) の出力が得られるものである。
また、上記上部フレーム18には、鉛直方向静圧気体軸受装置22により片持ち状に支持された砥石駆動装置30の荷重に起因して前記支柱20の案内面における面圧分布の偏在を緩和するための荷重平衡装置54が設けられている。荷重平衡装置54は、上記砥石駆動装置30と略同等の荷重を備えて上部フレーム18内に上下方向の移動が可能に配置された平衡錘56と、その平衡錘56と砥石駆動装置30との間を連結し、且つローラ58により逆U字状に案内されたケーブル60とを備え、上記砥石駆動装置30にそれを引上げる方向の推力を付与することによりその荷重をその上下位置に拘わらず軽減する。
また、前記下部フレーム12上には、ワークWの上面を研磨するためにそのワークWを鉛直方向の回転軸心Cwまわりに回転駆動するワーク回転駆動装置64が、定盤14、三分力動力計62、およびワーク回転駆動装置支持装置66を介して設けられている。ワーク回転駆動装置支持装置66は、上記ワーク回転駆動装置64を水平方向に移動可能に支持するためのものであって、その水平方向に延びる水平方向案内部材68と、上記ワーク回転駆動装置64が連結され、その水平方向案内部材68の案内面との間に静圧気体を介在させた状態でその水平方向案内部材68により一水平方向に案内される水平方向静圧気体軸受装置70とを備えている。上記ワーク回転駆動装置64に固定されたワークWは、平面研削加工用砥石Gと鉛直方向において、ワークWの半径程度重複するように設定されている。本実施例においては、ワーク回転駆動装置支持装置66が相対移動装置に相当する。
上記ワーク回転駆動装置64は、前記ワークWが着脱可能に取り付けられる吸着盤72が固定された図示しない回転軸と、その回転軸を回転駆動するモータ73と、そのモータ73に固定され、その回転軸を静圧気体を介して支持する静圧気体回転軸受装置74とを備えたものである。この静圧気体回転軸受装置74は、上記図示しない回転軸の外周面に対向する多孔質部材から吹き出させた高圧流体圧( 静圧) を介在させた状態でその回転軸32を無接触で支持するものである。また、上記水平方向静圧気体軸受装置70は、前記鉛直方向静圧気体軸受装置22と同様に、水平方向案内部材68の案内面を取り囲むハウジング76と、そのハウジング76内において上記案内面と対向し且つわずかな隙間を隔てて位置するように設けられた図示しない多孔質部材と、その多孔質部材の上記案内面側とは反対側に圧縮気体たとえば圧縮空気を供給するための気体通路とを備え、上記水平方向案内部材68の案内面との間の隙間に多孔質部材から噴出させた高圧流体圧( 静圧) を介在させることにより非接触でハウジング76が水平方向案内部材68の案内方向以外の移動が拘束されるようにする。ハウジング76は、たとえばリニヤモータのような水平方向駆動装置78或いは手動操作によって水平方向に往復移動させられる。この移動方向は、図5における上下方向であって、図に示される直線Lwは、ワークWの回転軸心Cwを通り且つ移動方向に平行な直線である。
また、下部フレーム12上には、例えば定盤14を図5における紙面に垂直すなわち鉛直方向の回転軸回り、例えばワークWの回転軸心Cw回りに回動させるための水平回動装置80が備えられている。この水平回動装置80は、例えば制御装置エンコーダ82および回転駆動装置84等から構成されたものであって、水平方向静圧気体軸受装置70および水平方向駆動装置78等のワークWの水平方向駆動および回転駆動に係る構成部分を、その相対位置関係を維持したまま平面研削加工用砥石Gに対して回動させる。これにより、ワークWの水平移動方向すなわち回転軸心Cwの移動直線Lwが水平面内においてその回動角度だけ回動させられる。本実施例においては、上記の水平回動装置80が相対変位装置或いは移動方向回動装置に、制御装置エンコーダ82および回転駆動装置84が相対移動制御装置にそれぞれ相当する。
以上のように構成された縦型ロータリ研削盤10では、先ず、第1傾動装置17および第2傾動装置37によって予め定められた角度だけ砥石回転軸心Cgが鉛直方向に対して傾斜させられる。この結果、平面研削加工用砥石Gは、正面視において上面が僅かに手前側を向き且つ全体として左端側が低くなるように傾斜させられた状態になっている。このとき、平面研削加工用砥石Gの外周縁左端を通る接線は、ワークWの中心すなわち回動軸心Cw上を通り且つ水平方向案内部材68による案内方向すなわち移動直線Lwに平行である。また、上記のように2方向に傾斜させられた結果、平面研削加工用砥石Gの下面( すなわち研削面) の最下点Pは回転軸心Cw上にあるワークWの回転中心と外周縁との間の位置、例えばその回転中心から半径の1/2の長さだけ離隔した位置にある。平面研削加工用砥石Gの下面において、この最下点Pと図示しない最上点との高さの差は、例えば20( μm)程度である。
次いで、ワークWが吸着盤72に固定されると、平面研削加工用砥石GおよびワークWが各々の回転軸心Cg、Cw回りの所定の方向に回転駆動されるとともに図示しない研削液が供給されつつ、その平面研削加工用砥石GがワークWに接触する直前まで送りねじ装置42により下降させられる。すなわち、平面研削加工用砥石Gは、その回転軸心Cgがワーク回転軸心Cwに対して傾斜させられた状態で回転させられる。次いで、圧電アクチュエータ46により平面研削加工用砥石GがワークWに切り込まれることにより、ワークWの上面の全面に研削加工が行われる。ワークWはその回転軸心Cw回りに回転させられ、平面研削加工用砥石Gもその回転軸心Cg回りに回転させられるので、ワークWの全面が平面研削加工用砥石Gの全周を用いて研削されることになる。
図2は、上記平面研削加工用砥石Gの構成を説明するために一部を切り欠いて示す図である。切り書かれた部分は回転軸心Cgを通る断面図である。図2において、平面研削加工用砥石Gは、例えば図2に示すように、円板状の台金本体部86と、その台金本体部86の外周部の一面から回転軸心Cg方向下向きに突設された環状外周壁88と、中央部において台金本体部86よりも肉厚とされた取付部90と、中心部において貫通して形成された取付穴92とを有し、その回転軸心Cgまわりに回転駆動される円盤状の台金94と、その環状外周壁88の先端面において周方向に連ねて固設された砥石部96とを備えている。そして、上記台金90の外周部すなわち台金本体86の外周部であって上記環状外周壁88が突き出された面とは反対側の面からその環状外周壁88とは反対向きに平衡壁98が突設されている。上記台金94は、アルミニウム合金等の金属製であり、台金本体部86、環状外周壁88、および平衡壁98は相互に一体に設けられている。
以上のように構成された平面研削加工用砥石Gは、静圧気体回転軸受装置38により回転可能に支持されたモータ34の回転軸32の軸端部に対して、同心となるように取り付けられて、たとえば2500乃至5000rpm 程度の回転速度で高速回転駆動される。平面研削加工用砥石Gの台金94の取付穴92は回転軸32の軸端面中央部に設けられた嵌合突起100に対して同心となるように嵌合されており、また取付穴92の反対側に嵌合されたフランジ付取付部材102を通して取付ボルト104が回転軸32の軸端面の中心に形成された雌ねじにr号されることにより、平面研削加工用砥石Gがモータ34の回転軸32に固定されている。
上記砥石部96は、短円筒状の環状外周壁88の先端面すなわち下端面に、多数の砥石片(円弧状砥石チップ)がその周方向に沿って連ねた状態で固着されることにより構成されている。この砥石部92は、たとえばダイヤモンド、窒化硼素などの超砥粒やアランダム、カーボランダムなどの一般砥粒が金属、ガラス質、或いは熱硬化性樹脂から成る結合剤によって結合されたよく知られたメタルボンド砥石、ビトリファイド砥石、レジノイド砥石などから構成される。
回転軸心Cgを通る断面図である図3に詳しく示すように、上記平衡壁98は、周方向に連なる環状壁であり、環状外周壁88と同じ外径寸法Rとなる位置に形成されている。また、環状外周壁88の台金本体部86からの突出し高さH1 よりも平衡壁98の台金本体部86からの突出し高さH2 が高く形成され、平衡壁98の径方向の厚みT1 は環状外周壁88の径方向の厚みT2 よりも大きく形成されているので、平衡壁98の質量m2 は環状外周壁88の質量m1 よりも十分に大きくされている。図3において、環状外周壁88および平衡壁98の中央に描かれた黒点は断面図上の重心を示している。
図3において、環状外周壁88の重心と回転軸心Cgとの間の半径をr1 とし、平衡壁98の重心と回転軸心Cgとの間の半径をr2 とし、角速度をωとすると、環状外周壁88の重心に作用する遠心力F1 および平衡壁98の重心に作用する遠心力F2 は、数式(1) および(2) に示すように表される。また、環状外周壁88の重心の台金本体部86からの高さをa1 、平衡壁98の重心の台金本体部86からの高さをa2 とすると、上記遠心力F1 および遠心力F2 によって発生する環状外周壁88の基部まわりのモーメントM1 および平衡壁98の基部まわりのモーメントM2 は数式(3) および(4) に示すように表される。環状外周壁88の重心の台金本体部86からの高さa1 、および平衡壁98の重心の台金本体部86からの高さa2 は、モーメントM1 およびM2 のモーメントアームに対応している。
F1 =m1 ・r1 ・ω2 ・・・(1)
F2 =m2 ・r2 ・ω2 ・・・(2)
M1 =F1 ・a1 ・・・(3)
M2 =F2 ・a2 ・・・(4)
本実施例では、前記のように、r1 ≒r2 、m1 <m2 と設定されていることから、平衡壁98の重心に作用する遠心力F2 は環状外周壁88の重心に作用する遠心力F1 よりも大きく(F1 <F2 )、しかも環状外周壁88の重心の台金本体部86からの高さをa1 よりも平衡壁98の重心の台金本体部86からの高さをa2 の方が大きく(a1 <a2 )設定されているので、環状外周壁88の基部まわりのモーメントM1 よりも平衡壁98の基部まわりのモーメントM2 が大きくされているが、モーメントM1 は図3において右周りに発生するが、モーメントM2 は図3において左周りに発生するので、相互に相殺される。
図4、図5、図6は、上記実施例の台金94を評価する評価試験の際に、比較品1として用いた従来の平面研削用砥石Gの台金110、比較品2として用いた中剛性の台金112、比較品3として用いた低剛性の台金114の構成をそれぞれ示す断面図である。比較品1の従来の台金110は、平衡壁98が設けられておらず、環状外周壁88の高さH1 が数倍程度大きい点で台金94と相違する。比較品2の中剛性の台金112は、平衡壁98が設けられておらず、環状外周壁88の高さH1 が台金110と同様に大きく且つその先端部から外周側へ突き出す補強フランジ部116が設けられている点で台金94と相違する。比較品3の低剛性の台金114は、平衡壁98が設けられておらず、環状外周壁88の高さH1 が台金110と同様に大きく、厚みT1 が3倍程度大きく、且つ台金本体部86および環状外周壁88の厚み方向に貫通する穴が周方向において10個設けられて剛性が低くされている点において台金94と相違する。なお、図4、図5、図6において砥石部96および回転軸心Cgの反対側は省略されている。
図7は、上記台金94、110、112、114を備えた平面研削加工用砥石Gの重量(ホイール質量)と、その平面研削加工用砥石Gを取付穴92を用いて回転可能に支持した状態で平面研削と同じような回転速度で回転させた場合の有限要素法を用いて解析した砥石部96の径方向の変位すなわち遠心力が作用したときの環状外周壁88の先端面の径方向の変位とを、それぞれ示している。解析条件は、台金94、110、112、114の径200mmφ、回転速度2500rpmである。図7において、○印は本発明が適用された前記実施例の台金94、□印は中剛性の台金112、△印は従来の台金110、×印は低剛性の台金114を示している。図から明らかなように、前記実施例の台金94の重量が従来の台金110や低剛性の台金114と同程度に軽く、且つ遠心力が作用したことによる砥石部96の径方向の変位が最も小さく、従来の台金110や中剛性の台金112と比較しても半分以下である。
本発明者が行った評価試験では、上記台金94、110、112、114を備えた平面研削加工用砥石が以下に示すドレス条件でドレッシングが施された後、鹿に示す加工条件で被削材を加工したときの研削性能が評価された。
[ドレス条件]
ドレスボード:GC#600
ホイール回転速度:1432rpm
テーブル回転速度:50rpm
切込速度:30μm
総切込量:100μm
ドレスアウト:10sec.
[研削加工条件]
ワークW:8インチφのシリコンウエハ(厚み:0.7mm)
平面研削砥石:250mmφ、GC#600ビトリファイド砥石
ホイール回転速度:3183rpm
テーブル回転速度:100rpm
切込速度:15μm
総切込量:100μm
スパークアウト:2sec.
湿式研磨
縦型ロータリ研削盤:図8、9、110に示す設定された図1に示す装置
図8は、平面研削加工用砥石GがワークWを研削するときの相対位置を示す平面図であり、図9は側面図である。平面研削加工用砥石Gの回転軸心Cgが僅かに傾斜させられることにより、平面研削加工用砥石Gの外周縁の位置bの高さが、ワークWの回転中心に対応するb1 点では0μmであるとすると、ワークWの外周縁に対応するb2 点では0μm、ワークWの回転中心と外周縁との中間に対応するb3 点では+3μm(下側へ3μm)、ワークWの外周縁に対応するb2 点では−20μm(上側へ20μm)となるように設定されている。一方、図9に示すように、ワークWが載置され且つ吸引等により固定される吸着盤72の吸着面は、中央部が4μm程度突き出す中凸形状に形成されている。ワークWの研磨加工面の目標形状は、図10に示すように、中央部が6μm程度突き出す中凸形状であり、このワークWの目標形状が得られるように、図8、図9に示すように設定されている。
図11および図12は、前記台金94、110、112、114を備えた平面研削加工用砥石Gをそれぞれ用いて上記の条件で平面研削加工した場合の評価試験結果を示している。図11は、平面研削加工後のワークWの研磨加工面を示すために反射光を用いて光学的に測定された、直径方向に走査した場合の凹凸形状(プロファイル形状)を示している。図11から明らかなように、測定された凹凸形状から目標形状を差し引いた後の形状において、本発明が適用された前記実施例の台金94を備えた平面研削加工用砥石Gが用いられた場合は、従来の台金110を備えた平面研削加工用砥石Gが用いられた場合、中剛性の台金112を備えた平面研削加工用砥石Gが用いられた場合、低剛性の台金114を備えた平面研削加工用砥石Gが用いられた場合に比較して、細かな脈動或いはうねりがなく、ワークWの表面が滑らかに平面研削加工されている。図12は、上記図11の平面研削加工結果の評価を容易とするために、各凹凸形状(信号波形)から目標形状を演算処理によって除去し、残された信号波形から表面粗さに対応するマイクロウエビネス値(従来の台金110を備えた平面研削加工用砥石Gが用いられた場合を1.00とする相対値)を算出したものである。このマイクロウエビネス値は、ワークWの表面粗さ波形データからツールマーク等の影響を除去するように予め決定された所定周波数帯(例えば5mm〜0. 8mm幅)のフィルタを通して抽出された表面粗さ値であって、大きいほど、表面粗さが大きいことを示している。図12から明らかなように、本発明が適用された前記実施例の台金94を備えた平面研削加工用砥石Gが用いられた場合、従来の台金110を備えた平面研削加工用砥石Gが用いられた場合、中剛性の台金112を備えた平面研削加工用砥石Gが用いられた場合、低剛性の台金114を備えた平面研削加工用砥石Gが用いられた場合の順に、マイクロウエビネス値が大きくなり、前記実施例の台金94を備えた平面研削加工用砥石Gが用いられた場合が最も平面研削加工の性能が高いことを示している。
上述のように、本実施例の台金94を備えた平面研削加工用砥石Gによれば、平衡壁98が、台金94の外周部であって環状外周壁88が突き出された面とは反対側の面からその環状外周壁88とは反対向きに突設されていることから、平面研削加工時において遠心力が平衡壁98に作用すると、環状外周壁88に作用する遠心力によって発生するモーメントを相殺する反対向きのモーメントが平衡壁98に発生して上記環状外周壁88および台金本体部86の変形が緩和されるので、高速回転されたとしても台金94の変形が抑制されて研削品質や研削精度が損なわれることが解消される。ちなみに、図4の破線は、従来の台金110が用いられた場合に遠心力により変形した台金94を示している。
また、本実施例の台金94を備えた平面研削加工用砥石Gによれば、台金94はアルミニウム合金製であり、平衡壁98はその台金94と一体に設けられたものであることから、台金94が軽量であると同時に平面研削加工時において高速回転されても研削品質や研削精度が維持される。
また、本実施例の台金94を備えた平面研削加工用砥石Gによれば、平衡壁98は、周方向に連なる環状壁であり、環状外周壁88よりも突き出し高さが高く形成されたものであることから、環状外周壁88に比較して平衡壁98の重心位置が台金本体部86から離れるので、遠心力が作用されることによって環状外周壁88に生じるモーメントM1 よりも平衡壁98に生じるモーメントM2 が大きくなり、平面研削時の押しつけ力による環状外周壁88が開く方向の変形すなわち外周側に向かう変形が相殺されて一層好適に台金94の変形が緩和される。
また、本実施例の台金94を備えた平面研削加工用砥石Gによれば、平衡壁98は、周方向に連なる環状壁であり、環状外周壁88よりも径方向の厚み寸法T2 が大きく形成されたものであることから、環状外周壁88に比較して平衡壁の質量が大きくなるので、遠心力が作用されることによって環状外周壁88に生じるモーメントM1 よりも平衡壁98に生じるモーメントM2 が大きくなり、平面研削時の押しつけ力による環状外周壁88が開く方向の変形すなわち外周側に向かう変形が相殺されて一層好適に台金94の変形が緩和される。
また、本実施例の台金94を備えた平面研削加工用砥石Gによれば、平衡壁98は、周方向に連なる環状壁であり、環状外周壁88と同じ外径寸法Rとなる位置に形成されたものであることから、平衡壁98が環状外周壁88よりも内側に設けられる場合に比較して、平衡壁98に必要な大きさのモーメントM2 を発生させるための質量、高さ、或いは厚みが相対的に小さくされるので、平面研削加工用砥石が軽量となる。また、平衡壁98が環状外周壁88よりも外側に設けられる場合に比較して、平面研削加工用砥石Gが小径となる。
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施できる。
例えば、前述の実施例においては、台金94はアルミニウム合金製であったが、チタン合金、鉄合金などの他の金属製であっても差し支えない。
また、前述の実施例の平衡壁98は、外周壁88と同じ外径Rを備えていたが、必ずしも同じでなくともよく、外周壁88の外径Rよりも小さい外径を備えたものであってもよい。
また、前述の実施例の平衡壁98は、周方向に連なる環状壁であったが、周方向の全部でなくてもよい、一部でもよい。たとえば径方向溝により周方向に複数に分断された構成でもよい。
また、前述の実施例の平衡壁98の高さH2 、厚みT2 、質量m2 は、外周壁88の高さH1 、厚みT1 、質量m1 よりも大きな値を備えていたが、それらの一部或いは全部が必ずしも大きくなくてもよい。平衡壁98が設けられていることにより、平衡壁98が設けられていない従来の台金よりもそれ相応の効果が得られることは明らかである。
また、前述の実施例の平衡壁98は、台金本体部86と一体に形成されていたが、別体に形成された後に機械的に固定されたり或いは溶接等により固着されたものであってもよい。
その他、一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。