JP4007020B2 - 液滴吐出装置とその駆動方法、製膜装置と製膜方法、カラーフィルタの製造方法、有機el装置の製造方法、及び電子機器 - Google Patents

液滴吐出装置とその駆動方法、製膜装置と製膜方法、カラーフィルタの製造方法、有機el装置の製造方法、及び電子機器 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステージ上に配置された基板上に液滴を塗布する液滴吐出装置に係り、詳しくはそのフラッシング動作を制御する機構を備えた液滴吐出装置とその駆動方法、さらには製膜装置と製膜方法、カラーフィルタの製造方法、有機EL装置の製造方法、及び電子機器に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクなどの液滴を吐出して薄膜形成やパターニングなどを行う液滴吐出装置として、一般にインクジェット技術を応用した装置がある。この装置は、液状材料供給部からの液状材料の供給を受ける液滴吐出ヘッドと、基板を液滴吐出ヘッドに対して相対的に移動させるステージとを備え、吐出データに基づいて液滴吐出ヘッドを移動させながら基板上に液滴を吐出させ、薄膜形成やパターニングなどを行うものである。
【0003】
液滴吐出ヘッドは、ステージ上に配置されたキャリッジに搭載されることにより、ステージに対して例えばそのX方向に移動可能に設けられたものである。なお、前記ステージには、基板を例えばY方向に移送する移送機構が設けられており、これによって液滴吐出ヘッドは、基板に対し相対的に見てXY方向に移動が可能になっている。
【0004】
また、この液滴吐出ヘッドは、基板に液滴を吐出する多数のノズルを、縦横に整列させた状態で備えた平面視矩形状のもので、この液滴吐出ヘッドを支持する軸が回動手段によって回動可能に設けられていることにより、X方向、Y方向に対しノズルの列が斜めになる姿勢で、液滴吐出が行えるようになっている。ここで、ノズルの列が斜めになるようにして液滴の吐出を行うのは、一定に形成された隣り合うノズル間のピッチを見掛け上狭くし、これにより精緻な、あるいは連続性のある薄膜形成やパターニングなどを行うためである。
【0005】
すなわち、図15(a)に示すように、液滴吐出ヘッドHのノズルNの列Lを、その移動方向(X方向)に対し直交させた正規の姿勢で液滴吐出を行った場合には、吐出される液滴T間のピッチP2は、ノズルN、N間のピッチP1と同一になる。
一方、図15(b)に示すように、液滴吐出ヘッドHのノズルNの列Lを、その移動方向(X方向)に対し斜めにした姿勢で液滴吐出を行った場合には、吐出される液滴T間のピッチP3は、ノズルN、N間のピッチP1より狭くなり、したがってノズル間のピッチを、見掛け上狭くすることができるのである。
【0006】
ところで、このような装置では、特に吐出する液状材料中の溶媒の揮発性が高い場合などに、液状材料の吐出が連続的になされないノズルでは、その開口に滞留する液状材料が溶媒の揮発によって粘度上昇を起こし、甚だしい場合には液状材料が固化したり、ここに塵埃が付着したり、さらには気泡の混入などによりノズル開口に目詰まりを発生し、吐出不良を起こすといった問題があった。
【0007】
このような吐出不良を防止するため、従来では、ステージの一方の側あるいは両方の側に、フラッシングエリアを設けている。このフラッシングエリアは、液滴吐出ヘッドの各ノズルに強制的に吐出を行わせるための場所であり、特に比較的長い時間吐出を行っていないノズルに対し、吐出不良を防止するために設けられたものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このようなフラッシングエリアでのフラッシングには、以下の改善すべき課題がある。
一般にフラッシングエリアでは、ステージ(基板)に対する液滴吐出ヘッドの移動を一旦停止させ、その状態でフラッシングを行っている。しかしながら、このように液滴吐出ヘッドの移動を停止させてフラッシングを行うのでは、吐出による薄膜形成やパターニングの工程全体の時間が長くなってしまい、結果として生産性が損なわれてしまう。
【0009】
また、このような課題を解消するべく、液滴吐出ヘッドを移動させつつフラッシングエリアでフラッシングを行うことも考えられる。しかしながら、特に液滴吐出ヘッドを斜めに配置している場合には、一部のノズルがフラッシングエリア上からはみ出てしまい易く、その際、このはみ出たノズルからもフラッシングを行うと、その周辺に液滴が飛散して汚れてしまい、目的とする製膜やパターニングに悪影響が及んだり、装置そのものが汚れてメンテナンスが煩雑になってしまう。
【0010】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、生産性を損なうことなく、しかも製膜やパターニングに悪影響を及ぼしたり、装置を汚したりすることが防止されたフラッシングを可能とする、液滴吐出装置とその駆動方法、さらには製膜装置と製膜方法、カラーフィルタの製造方法、有機EL装置の製造方法、及び電子機器を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため本発明の液滴吐出装置では、ステージの上方に設けられて基板に対し一の方向に往復移動可能に構成され、かつ、前記基板に液滴を吐出する複数のノズルを縦横に整列して備えた液滴吐出ヘッドと、前記ステージ上の基板に対し、前記一の方向での少なくとも一方の側方に設けられたフラッシングエリアと、前記液滴吐出ヘッドによる動作を制御する制御手段とを有し、前記液滴吐出ヘッドが、前記一の方向に対しそのノズルの列を斜めにして配置された液滴吐出装置であって、前記液滴吐出ヘッドがその周方向に回動可能に設けられ、かつその回動動作が前記制御手段によって制御されるよう構成されてなり、 前記液滴吐出ヘッドがフラッシングエリア内に移動してフラッシングを行う際、予め該液滴吐出ヘッドを、そのノズルの列が前記一の方向に対し直交するように回動させておき、全てのノズルがフラッシング動作を停止した後、再度斜めとなるように回動させると共に、前記制御手段は、前記液滴吐出ヘッドを移動させつつフラッシングエリア内で該液滴吐出ヘッドにフラッシング動作を行わせるとともに、少なくとも一つのノズルが予め設定したフラッシングエリア内から外れる位置に到達した際に、全てのノズルのフラッシング動作を停止させる制御をなすように構成されたことを特徴としている。
【0012】
この液滴吐出装置によれば、液滴吐出ヘッドを移動させつつフラッシングエリア内でフラッシング動作を行わせるので、このフラッシングにより生産性が損なわれることがない。また、少なくとも一つのノズルが予め設定したフラッシングエリア内から外れる位置に到達した際に、全てのノズルのフラッシング動作を停止させるように制御手段を構成したので、フラッシングエリアからはみ出てフラッシングがなされることによる製膜やパターニングへの悪影響や装置の汚染を、防止することができる。また、液滴吐出ヘッドを、そのノズルの列が前記一の方向に対し直交するように回動させ、その状態でフラッシングを行わせるので、液滴吐出ヘッドが斜めになっていることによりその一部のノズルがフラッシングエリア上からはみ出てしまい、その状態でフラッシングがなされるといったことを防止することができる。
【0013】
本発明の別の液滴吐出装置では、ステージの上方に設けられて基板に対し一の方向に往復移動可能に構成され、かつ、前記基板に液滴を吐出する複数のノズルを縦横に整列して備えた液滴吐出ヘッドと、前記ステージ上の基板に対し、前記一の方向での少なくとも一方の側方に設けられたフラッシングエリアと、前記液滴吐出ヘッドによる動作を制御する制御手段とを有し、前記液滴吐出ヘッドが、前記一の方向に対しそのノズルの列を斜めにして配置された液滴吐出装置であって、前記液滴吐出ヘッドがその周方向に回動可能に設けられ、かつその回動動作が前記制御手段によって制御されるよう構成されてなり、前記制御手段は、前記液滴吐出ヘッドがフラッシングエリア内に移動してフラッシングを行う際、予め該液滴吐出ヘッドを、そのノズルの列が前記一の方向に対し直交するように回動させておき、全てのノズルがフラッシング動作を停止した後、再度斜めとなるように回動させるよう制御すると共に、前記制御手段は、前記液滴吐出ヘッドを移動させつつフラッシングエリア内で該液滴吐出ヘッドにフラッシング動作を行わせるとともに、ノズルが予め設定したフラッシングエリア内から外れる位置に到達した際に、そのノズルのフラッシング動作を停止させる制御をなすように構成されたことを特徴としている。
【0014】
この液滴吐出装置によれば、液滴吐出ヘッドを移動させつつフラッシングエリア内でフラッシング動作を行わせるので、このフラッシングにより生産性が損なわれることがない。また、ノズルが予め設定したフラッシングエリア内から外れる位置に到達した際に、そのノズルのフラッシング動作を停止させるように制御手段を構成したので、フラッシングエリアからはみ出てフラッシングがなされることによる製膜やパターニングへの悪影響や装置の汚染を、防止することができる。また、液滴吐出ヘッドを、そのノズルの列が前記一の方向に対し直交するように回動させ、その状態でフラッシングを行わせるので、液滴吐出ヘッドが斜めになっていることによりその一部のノズルがフラッシングエリア上からはみ出てしまい、その状態でフラッシングがなされるといったことを防止することができる。
【0015】
また、前記液滴吐出装置においては、前記制御手段が、ノズルに対してフラッシング動作を停止させる制御を行った後、そのノズルに対して微振動動作を行わせるように制御するのが好ましい。
このようにすれば、液滴吐出ヘッド内の液の溶媒揮発による粘度上昇をより確実に防止することができる。
【0016】
また、前記液滴吐出装置においては、フラッシングエリアが、ステージ上の基板に対して前記一の方向での両側に設けられているのが好ましい。
このようにすれば、前記一の方向で往復移動した際、いずれの側でもフラッシングを行えることから、液滴吐出ヘッド内の液の溶媒揮発による粘度上昇をより確実に防止することができる。
【0017】
また、前記液滴吐出装置においては、前記制御手段が、液滴吐出ヘッドがフラッシングエリア上を外側に向けて移動する際にはフラッシング動作を行わせずに、フラッシングエリア上を内側に向けて移動する際にのみフラッシング動作を行わせるよう制御するのが好ましい。
このようにすれば、内側、すなわち基板側に向けて移動する際にのみ、フラッシング動作を行わせるので、基板上への液滴吐出の直前にフラッシングを行うことで、ノズルの吐出不良をより効果的に防止することができる。また、外側に向けて移動する際にはフラッシング動作を行わないので、液の無駄を軽減することができる。
【0019】
また、このようにした場合に、前記液滴吐出ヘッドに対する、そのノズルの列が前記一の方向に対し直交するように回動させる動作を、フラッシングエリア上で行うのが好ましい。
このようにすれば、基板上での液滴吐出に影響を与えることなく、フラッシングを行うことができる。
【0020】
本発明の製膜装置では、前記の液滴吐出装置を備えてなることを特徴としている。
この製膜装置によれば、前記の液滴吐出装置を備えてなるので、フラッシングによって生産性が損なわれることがなく、また、フラッシングエリアからはみ出てフラッシングがなされることによる製膜への悪影響や装置の汚染が、防止される。
【0021】
本発明の液滴吐出装置の駆動方法では、液滴吐出装置が、ステージの上方に設けられて前記基板に対し一の方向に往復移動可能に構成され、かつ、前記基板に液滴を吐出する複数のノズルを縦横に整列して備えた液滴吐出ヘッドと、前記ステージ上の基板に対し、前記一の方向での少なくとも一方の側方に設けられたフラッシングエリアとを有し、前記液滴吐出ヘッドを、前記一の方向に対しそのノズルの列を斜めにして配置してなり、前記液滴吐出ヘッドがその周方向に回動可能に設けられ、かつその回動動作が前記制御手段によって制御されるよう構成されてなり、前記液滴吐出ヘッドがフラッシングエリア内に移動してフラッシングを行う際、予め該液滴吐出ヘッドを、そのノズルの列が前記一の方向に対し直交するように回動させておき、全てのノズルがフラッシング動作を停止した後、再度斜めとなるように回動させると共に、フラッシングを、前記液滴吐出ヘッドを移動させつつフラッシングエリア内で該液滴吐出ヘッドにフラッシング動作を行わせることで行い、その後、少なくとも一つのノズルが予め設定したフラッシングエリア内から外れる位置に到達した際に、全てのノズルのフラッシング動作を停止させることを特徴としている。
【0022】
この液滴吐出装置の駆動方法によれば、液滴吐出ヘッドを移動させつつフラッシングエリア内でフラッシング動作を行わせるので、このフラッシングにより生産性が損なわれることがない。また、少なくとも一つのノズルが予め設定したフラッシングエリア内から外れる位置に到達した際に、全てのノズルのフラッシング動作を停止させるようにしているので、フラッシングエリアからはみ出てフラッシングがなされることによる製膜やパターニングへの悪影響や装置の汚染を、防止することができる。また、液滴吐出ヘッドを、そのノズルの列が前記一の方向に対し直交するように回動させ、その状態でフラッシングを行わせるので、液滴吐出ヘッドが斜めになっていることによりその一部のノズルがフラッシングエリア上からはみ出てしまい、その状態でフラッシングがなされるといったことを防止することができる。
【0023】
本発明の別の液滴吐出装置の駆動方法では、液滴吐出装置が、ステージの上方に設けられて前記基板に対し一の方向に往復移動可能に構成され、かつ、前記基板に液滴を吐出する複数のノズルを縦横に整列して備えた液滴吐出ヘッドと、前記ステージ上の基板に対し、前記一の方向での少なくとも一方の側方に設けられたフラッシングエリアとを有し、前記液滴吐出ヘッドを、前記一の方向に対しそのノズルの列を斜めにして配置してなり、前記液滴吐出ヘッドがフラッシングエリア内に移動してフラッシングを行う際、予め該液滴吐出ヘッドを、そのノズルの列が前記一の方向に対し直交するように回動させておき、全てのノズルがフラッシング動作を停止した後、再度斜めとなるように回動させると共に、フラッシングを、前記液滴吐出ヘッドを移動させつつフラッシングエリア内で該液滴吐出ヘッドにフラッシング動作を行わせることで行い、その後、ノズルが予め設定したフラッシングエリア内から外れる位置に到達した際に、そのノズルのフラッシング動作を停止させることを特徴としている。
【0024】
この液滴吐出装置の駆動方法によれば、液滴吐出ヘッドを移動させつつフラッシングエリア内でフラッシング動作を行わせるので、このフラッシングにより生産性が損なわれることがない。また、ノズルが予め設定したフラッシングエリア内から外れる位置に到達した際に、そのノズルのフラッシング動作を停止させるようにしているので、フラッシングエリアからはみ出てフラッシングがなされることによる製膜やパターニングへの悪影響や装置の汚染を、防止することができる。また、液滴吐出ヘッドを、そのノズルの列が前記一の方向に対し直交するように回動させ、その状態でフラッシングを行わせるので、液滴吐出ヘッドが斜めになっていることによりその一部のノズルがフラッシングエリア上からはみ出てしまい、その状態でフラッシングがなされるといったことを防止することができる。
【0025】
また、前記液滴吐出装置の駆動方法においては、ノズルに対してフラッシング動作を停止させる制御を行った後、そのノズルに対して微振動動作を行わせるのが好ましい。
このようにすれば、液滴吐出ヘッド内の液の溶媒揮発による粘度上昇をより確実に防止することができる。
【0026】
また、前記液滴吐出装置の駆動方法においては、フラッシングエリアが、ステージ上の基板に対して前記一の方向での両側に設けられているのが好ましい。
このようにすれば、前記一の方向で往復移動した際、いずれの側でもフラッシングを行えることから、液滴吐出ヘッド内の液の溶媒揮発による粘度上昇をより確実に防止することができる。
【0027】
また、前記液滴吐出装置の駆動方法においては、液滴吐出ヘッドがフラッシングエリア上を外側に向けて移動する際にはフラッシング動作を行わせずに、フラッシングエリア上を内側に向けて移動する際にのみフラッシング動作を行わせるのが好ましい。
このようにすれば、内側、すなわち基板側に向けて移動する際にのみ、フラッシング動作を行わせるので、基板上への液滴吐出の直前にフラッシングを行うことで、ノズルの吐出不良をより効果的に防止することができる。また、外側に向けて移動する際にはフラッシング動作を行わないので、液の無駄を軽減することができる。
【0029】
また、このようにした場合に、前記液滴吐出ヘッドに対する、そのノズルの列が前記一の方向に対し直交するように回動させる動作を、フラッシングエリア上で行うのが好ましい。
このようにすれば、基板上での液滴吐出に影響を与えることなく、フラッシングを行うことができる。
【0030】
本発明の製膜方法では、前記の液滴吐出装置の駆動方法を備えてなることを特徴としている。
この製膜方法によれば、前記の液滴吐出装置の駆動方法を備えてなるので、フラッシングによって生産性が損なわれることがなく、また、フラッシングエリアからはみ出てフラッシングがなされることによる製膜への悪影響や装置の汚染が、防止される。
【0031】
本発明のカラーフィルタの製造方法では、前記の製膜方法によってカラーフィルタを形成することを特徴としている。
このカラーフィルタの製造方法によれば、前述したように生産性が損なわれることがなく、また、製膜への悪影響や装置の汚染が防止されることから、カラーフィルタを生産性よくしかも良好に形成することができる。
【0032】
本発明の有機EL装置の製造方法では、前記の製膜方法によって有機EL装置の構成要素となる薄膜を形成することを特徴としている。
この有機EL装置の製造方法によれば、前述したように生産性が損なわれることがなく、また、製膜への悪影響や装置の汚染が防止されることから、有機EL素子の構成要素となる薄膜を生産性よくしかも良好に形成することができる。
【0033】
本発明の電子機器では、前記の製膜方法が用いられて形成されたデバイスを備えてなることを特徴としている。
この電子機器によれば、前記の製膜方法が用いられて形成されたデバイスを備えてなることにより、生産性よくしかも良好に形成されたものとなる。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
図1は、本発明の液滴吐出装置を備えた製膜装置を、カラーフィルター製造装置として用いる場合の一実施形態例を示す図であり、図1において符号30は製膜装置となる液滴吐出装置である。この液滴吐出装置30は、ベース31、基板移動手段32、ヘッド移動手段33、液滴吐出ヘッド34、液供給手段35、制御装置(制御手段)40等を有して構成されたものである。ベース31は、その上に前記基板移動手段32、ヘッド移動手段33を設置したものである。
【0035】
基板移動手段32は、ベース31上に設けられたもので、Y軸方向に沿って配置されたガイドレール36を有したものである。この基板移動手段32は、例えばリニアモータ(図示せず)により、スライダ37をガイドレール36に沿って移動させるよう構成されたものである。
スライダ37上にはステージ39が固定されている。このステージ39は、基板Sを位置決めし保持するためのものである。すなわち、このステージ39は、公知の吸着保持手段(図示せず)を有し、この吸着保持手段を作動させることにより、基板Sをステージ39の上に吸着保持するようになっている。基板Sは、例えばステージ39の位置決めピン(図示せず)により、ステージ39上の所定位置に正確に位置決めされ、保持されるようになっている。
【0036】
ステージ39上の基板Sに対し、その両側、すなわち後述する液滴吐出ヘッド34の移動方向(X軸方向)での両側には、液滴吐出ヘッド34にフラッシングを行わせるためのフラッシングエリア41が設けられている。これらフラッシングエリア41、41は、Y軸方向に延びて形成された平面視矩形状のもので、ステージ39の側方のベース31上に設けられた容器の開口部などにより、形成されたものである。なお、このようなフラッシングエリア41、41は、そのベース31上での位置が予め決められており、この位置が後述する制御装置に記憶されるようになっている。
【0037】
ヘッド移動手段33は、ベース31の後部側に立てられた一対の架台33a、33aと、これら架台33a、33a上に設けられた走行路33bとを備えてなるもので、該走行路33bをX軸方向、すなわち前記の基板移動手段32のY軸方向と直交する方向に沿って配置したものである。走行路33bは、架台33a、33a間に渡された保持板33cと、この保持板33c上に設けられた一対のガイドレール33d、33dとを有して形成されたもので、ガイドレール33d、33dの長さ方向に液滴吐出ヘッド34を搭載するキャリッジ42を移動可能に保持したものである。キャリッジ42は、リニアモータ(図示せず)等の作動によってガイドレール33d、33d上を走行し、これにより液滴吐出ヘッド34をX軸方向に移動させるよう構成されたものである。
【0038】
ここで、このキャリッジ42は、ガイドレール33d、33dの長さ方向、すなわちX軸方向に例えば1μm単位で移動が可能になっており、このような移動は制御装置40によって制御されるようになっている。したがって、前述したようにフラッシングエリア41、41の位置が制御装置40に記憶されることにより、後述するように液滴吐出ヘッド34の各動作とフラッシングエリア41、41の位置との関係を、この制御装置40で制御することができるようになっている。
【0039】
液滴吐出ヘッド34は、前記キャリッジ42に取付部43を介して回動可能に取り付けられたものである。取付部43にはモータ44が設けられており、液滴吐出ヘッド34はその支持軸(図示せず)がモータ44に連結している。このような構成のもとに、液滴吐出ヘッド34はその周方向に回動可能となっている。また、モータ44も前記制御装置40に接続されており、これによって液滴吐出ヘッド34はその周方向への回動が、制御装置40に制御されるようになっている。
【0040】
ここで、液滴吐出ヘッド34は、図2(a)に示すように例えばステンレス製のノズルプレート12と振動板13とを備え、両者を仕切部材(リザーバプレート)14を介して接合したものである。ノズルプレート12と振動板13との間には、仕切部材14によって複数の空間15と液溜まり16とが形成されている。各空間15と液溜まり16の内部は液状材料で満たされており、各空間15と液溜まり16とは供給口17を介して連通したものとなっている。また、ノズルプレート12には、空間15から液状材料を噴射するためのノズル孔18が縦横に整列させられた状態で複数形成されている。一方、振動板13には、液溜まり16に液状材料を供給するための孔19が形成されている。
【0041】
また、振動板13の空間15に対向する面と反対側の面上には、図2(b)に示すように圧電素子(ピエゾ素子)20が接合されている。この圧電素子20は、一対の電極21の間に位置し、通電するとこれが外側に突出するようにして撓曲するよう構成されたものである。そして、このような構成のもとに圧電素子20が接合されている振動板13は、圧電素子20と一体になって同時に外側へ撓曲するようになっており、これによって空間15の容積が増大するようになっている。したがって、空間15内に増大した容積分に相当する液状材料が、液溜まり16から供給口17を介して流入する。また、このような状態から圧電素子20への通電を解除すると、圧電素子20と振動板13はともに元の形状に戻る。したがって、空間15も元の容積に戻ることから、空間15内部の液状材料の圧力が上昇し、ノズル孔18から基板に向けて液状材料の液滴22が吐出される。
【0042】
なお、このような構成からなる液滴吐出ヘッド34は、その底面形状が略矩形状のもので、図15(a)、(b)に示したようにノズルN(ノズル孔18)が縦横に整列した状態で矩形状に配置されたものである。そして、本例では、その縦方向、すなわち長辺方向に配置されたノズル群をノズルの列(ノズル列)としている。また、各ノズルN(ノズル孔18)は、それぞれに独立して圧電素子20が設けられていることにより、その吐出動作や後述する微振動動作をそれぞれ独立して行うようになっている。
【0043】
液供給手段35は、液滴吐出ヘッド34に液状材料を供給する液供給源45と、この液供給源45から液滴吐出ヘッド34に液を送るための液供給チューブ46とからなるものである。
制御装置40は、コンピュータ等からなるもので、前述したようにフラッシングエリア41の位置、具体的にはY軸に平行となる両側の辺のX座標を記憶するとともに、液滴吐出ヘッド34の位置情報、すなわち液滴吐出ヘッド34のガイドレール33d、33d上での位置(X座標)とそのときの各ノズルの位置(X座標)とを検知して記憶するものである。また、これらの記憶に基づき、各ノズルに対し通常の吐出動作とフラッシング動作、および後述する微振動動作を行わせる制御をなすようになっている。
【0044】
ここで、制御装置40による、フラッシング動作の具体的な制御を説明する。本発明では、いくつかパターンで制御を行うことができるが、大きく分けて以下の二通りの制御を行うようになっている。なお、以下に示す制御は、いずれも液滴吐出ヘッド34をそのノズル列が斜めになるように所望角度回動して配置し、そのノズル間のピッチを所望する見掛け上のピッチにしている。
【0045】
制御の一番目は、液滴吐出ヘッド34を移動させつつフラッシングエリア41内でこの液滴吐出ヘッド34にフラッシング動作を行わせるとともに、少なくとも一つのノズルがフラッシングエリア41内から外れる位置に到達した際に、これを検知して全てのノズルのフラッシング動作を停止させるように制御を行う方式である。
二番目は、液滴吐出ヘッド34を移動させつつフラッシングエリア41内でこの液滴吐出ヘッド34にフラッシング動作を行わせるとともに、ノズルがフラッシングエリア41内から外れる位置に到達した際に、そのノズル、すなわちフラッシングエリア41内から外れる個々のノズルに対し、そのフラッシング動作を停止させる制御を行う方式である。
【0046】
すなわち、これらの方式では、まず、前述したように予めフラッシングエリア41の両辺の位置を、液滴吐出ヘッド34の移動方向であるX軸での座標として記憶する。その際、図3に示すようにフラッシングエリア41がステージ39(基板S)の両側にある場合には、ステージ39(基板S)側、すなわち内側のX座標となるX2、X3を記憶し、さらに外側となるX1、X4も記憶する。
【0047】
そして、前記の一番目の方式では、液滴吐出ヘッド34の最外部に位置するノズル、すなわち図4(a)中に示すように液滴吐出ヘッド34の移動方向であるX軸方向に対し斜めに配置された液滴吐出ヘッド34の、X軸方向での最外位置となる角部のノズルN1、N2の位置を記憶する。そして、液滴吐出ヘッド34の移動によってこれらノズルN1、N2が予め設定したフラッシングエリア41内から外れる位置に到達した際、例えば図4(a)に示したように液滴吐出ヘッド34がフラッシングエリア41側からステージ39側に移動する場合には、そのノズルN2がフラッシングエリア41の内側の座標であるX2に到達した際に、全てのノズルNのフラッシング動作を停止させるようにする。
【0048】
なお、このようなフラッシング動作は、液滴吐出ヘッド34がフラッシングエリア41上に位置するすべての間を通じて行うようにしてもよいが、特に吐出する液が高価である場合などでは、液滴吐出ヘッド34がフラッシングエリア41上を外側に向けて移動する際にはフラッシング動作を行わせずに、図4(a)に示したようにフラッシングエリア41上を内側に向けて移動する際にのみ、フラッシング動作を行わせるよう制御するのが好ましい。
このようにすれば、基板S上への液滴吐出の直前にフラッシングを行うことで、ノズルNの吐出不良をより効果的に防止することができ、また液の無駄を軽減することができるからである。
【0049】
また、このように内側に向けて移動する際にのみフラッシング動作を行わせる場合、そのフラッシング動作の開始時期としては、特に限定されることはないものの、例えば液滴吐出ヘッド34がフラッシングエリア41上を外側に向けて移動し、一旦フラッシンエリア41から外れた後、再度戻ってきて図4(b)に示すように、そのノズルN1がフラッシングエリア41の外側の座標であるX1に到達した際に、全てのノズルNに対しフラッシング動作を行わせるようにする。また、液滴吐出ヘッド34がフラッシングエリア41上から外れることなく、その上、すなわち全てのノズルNがフラッシングエリア41上にある状態で移動方向を変え、折り返す場合には、例えばその折り返す時点で全てのノズルNに対しフラッシング動作を行わせるようにする。
【0050】
一方、前記の二番目の方式では、斜めに配置された液滴吐出ヘッド34の全てのノズルNの位置を記憶する。そして、液滴吐出ヘッド34の移動によってこれらノズルNが予め設定したフラッシングエリア41内から外れる位置に到達した際、そのノズルN、すなわちフラッシングエリア41内から外れる個々のノズルNに対し、そのフラッシング動作を停止させる。例えば、図4(a)に示したように液滴吐出ヘッド34がフラッシングエリア41側からステージ39側に移動する場合に、ノズルN2がフラッシングエリア41の内側の座標であるX2に到達した際、このノズルN2のみにそのフラッシング動作を停止させるよう制御する。そして、その後このX2に到達した他のノズルNについても、順次そのフラッシング動作を停止させるように制御していく。
【0051】
なお、このようなフラッシング動作においても、各ノズルNがそれぞれフラッシングエリア41上に位置するすべての間を通じて行うようにしてもよいが、前述したように吐出する液が高価である場合などでは、やはり液滴吐出ヘッド34がフラッシングエリア41上を外側に向けて移動する際にはフラッシング動作を行わせずに、フラッシングエリア41上を内側に向けて移動する際にのみ、フラッシング動作を行わせるよう制御するのが好ましい。
【0052】
また、これらの方式において、液滴吐出ヘッド34にフラッシングを行わせる際、予め該液滴吐出ヘッド34を、そのノズルの列がX軸方向(一の方向)に対し直交するように回動させておき、その状態でフラッシングを行わせるようにしてもよい。すなわち、図5(a)に示すようにステージ39(基板S)上での液滴吐出動作を行った後、そのままフラッシングエリア41に移動する際、制御装置40によってモータ44を作動させ、液滴吐出ヘッド34を図5(a)中二点鎖線で示すようにその姿勢を斜めにしない正規な姿勢へと移行させ、これによりフラッシングエリア41上でノズル列がY軸方向(一の方向)に一致する姿勢にする。また、このように液滴吐出ヘッド34を回動する場合、その回動動作を、図5(b)に示すようにフラッシングエリア41上に到達した後、行うようにしてもよい。
【0053】
なお、このようにフラッシングの際に液滴吐出ヘッド34を回動させる場合にも、そのフラッシングについての制御は前述した二通りの制御で行うことができる。
このようにしてフラッシングを行うようにすれば、液滴吐出ヘッド34が斜めになっていることによりその一部のノズルがフラッシングエリア41上からはみ出てしまい、その状態でフラッシングがなされるといったことを防止することができる。
また、回動動作をフラッシングエリア上に到達した後に行うようにした場合には、基板S上での液滴吐出に影響を与えることなく、フラッシングを行うことができる。
【0054】
また、制御方式として特に前記の二番目の方式を採用した場合、フラッシングエリア41上では液滴吐出ヘッド34はそのノズル列の方向がY軸方向(一の方向)に一致していることから、ノズル列を構成する各ノズルは、予め設定したフラッシングエリア41内から外れる位置に同時に到達するようになる。したがって、各ノズル毎にそのフラッシングを制御する方式であるにもかかわらず、実質的にはノズルの列毎にフラッシングを制御することにより、フラッシングエリア41外に液滴を吐出することなく、フラッシング動作を行わせることができ、これにより制御の簡略化を図ることができる。
【0055】
また、このようなフラッシングの際に液滴吐出ヘッド34を回動させる場合においても、やはり液滴吐出ヘッド34がフラッシングエリア41上を外側に向けて移動する際にはフラッシング動作を行わせずに、フラッシングエリア41上を内側に向けて移動する際にのみ、フラッシング動作を行わせるよう制御するのが好ましい。
【0056】
また、前記二通りのいずれの制御方式においても、フラッシングの動作を行わせた後、そのフラッシング動作を停止させたノズルに対して、印字前微振動動作を行わせるように制御するのが好ましい。
ここで、微振動動作とは、液滴吐出ヘッド34の各ノズルに対応する圧電素子20に対し十分小さい電圧を印可し、これにより振動板13を小さく振動させて図2(a)、(b)に示した空間15内の液状材料に微振動を与え、液滴吐出を行わせることなく液状材料の増粘を抑える動作である。
【0057】
すなわち、基板S上への液滴吐出、およびフラッシングの際には、圧電素子20に対し図6中の波形Tで示す比較的大きな電圧を印可するのに対し、微振動動作では、図6中の波形Bで示す小さな電圧を印可し、前述したように液滴吐出を行わせることなく液状材料に微振動のみを与えるようにしているのである。なお、微振動動作には、基板S上にて液滴を吐出する動作の直前に行う第1の微振動、ノズル間において、吐出動作を行わないノズルに対して他のノズルが吐出動作を行っている際に行う第2の微振動、液滴吐出ヘッド34のスタートアップ前に行う第3の微振動、これらに関係なく常時行う常時微振動などがあるが、本発明においては、特にフラッシングの動作を行わせた後、そのフラッシング動作を停止させたノズルに対し、前述した第1の微振動動作を行わせるように制御するのが好ましい。
このようにすれば、液滴吐出ヘッド34内の液の溶媒揮発による粘度上昇を、より確実に防止することができる。
【0058】
次に、このような構成からなる液滴吐出装置30の駆動方法を用いた製膜方法を、カラーフィルタの製造に適用した場合の一例について説明する。
この例では、まず、基板Sをステージ39上の所定位置に設置し、この設置位置を制御装置40に入力する。また、制御装置40によってモータ44を作動させ、液滴吐出ヘッド34をそのノズル間のピッチが所望する見掛け上のピッチ、すなわち図15(b)に示した液滴T間のピッチP3が得られるような角度となるように回動し、そのノズル列を斜めにする。
【0059】
前記基板Sとしては、適度の機械的強度を有すると共に、光透過性が高い透明基板が用いられる。具体的には、透明ガラス基板、アクリルガラス、プラスチック基板、プラスチックフィルム及びこれらの表面処理品等が用いられる。
また、本例では、例えば図7に示すように長方形形状の基板S上に、生産性をあげる観点から複数個のカラーフィルター領域51をマトリックス状に形成する。これらのカラーフィルター領域51は、後で基板Sを切断することにより、液晶表示装置に適合するカラーフィルターとして用いることができる。なお、カラーフィルター領域51としては、図7に示したようにRの液状材料、Gの液状材料、およびBの液状材料をそれぞれ所定のパターン、本例では従来公知のストライプ型で形成して配置する。なお、この形成パターンとしては、ストライプ型のほかに、モザイク型やデルタ型あるいはスクウェアー型等としてもよい。
【0060】
このようなカラーフィルター領域51を形成するには、まず、図8(a)に示すように透明の基板Sの一方の面に対し、ブラックマトリックス52を形成する。このブラックマトリックス52の形成方法としては、光透過性のない樹脂(好ましくは黒色)を、スピンコート等の方法で所定の厚さ(例えば2μm程度)に塗布することで行う。このブラックマトリックス52の格子で囲まれる最小の表示要素、すなわちフィルターエレメント53については、例えばX軸方向の巾を30μm、Y軸方向の長さを100μm程度とする。
【0061】
次に、図8(b)に示すように、前記の液滴吐出ヘッド34から液滴54を吐出し、これをフィルターエレメント53に供給する。吐出する液滴54の量については、加熱工程における液状材料の体積減少を考慮した十分な量とする。
ここで、このような液滴54の吐出は、液滴吐出ヘッド34をヘッド移動手段33におけるガイドレール33d、33dに沿ってX軸方向に往復移動させつつ行うが、その際、各パス毎に、あるいは数パス毎に液滴吐出ヘッド34をフラッシングエリア41にまで移動させ、ここで前述したフラッシングを行う。その場合、前述した二通りの方式のいずれで行ってもよい。また、印字前微振動を行うか否か、液滴吐出ヘッド34を一旦回動させてからフラッシングを行うか否か、さらにフラッシングを行わせるタイミング(フラッシングエリア41上を内側に向けて移動する際にのみフラッシングを行わせるかなど)などについても、いずれを選択してもよい。
【0062】
このようにして基板S上のすべてのフィルターエレメント53に液滴54を充填したら、ヒータを用いて基板Sが所定の温度(例えば70℃程度)となるように加熱処理する。この加熱処理により、液状材料の溶媒が蒸発して液状材料の体積が減少する。この体積減少の激しい場合には、カラーフィルターとして十分な膜の厚みが得られるまで、吐出工程と加熱工程とを繰り返す。この処理により、液状材料の溶媒が蒸発して、最終的に液状材料の固形分のみが残留して膜化し、図8(c)に示すように色材料層55となる。
【0063】
次いで、基板Sを平坦化し、かつ色材料層55を保護するため、図8(d)に示すように色材料層55やブラックマトリックス52を覆って基板S上に保護膜56を形成する。この保護膜56の形成にあたっては、スピンコート法、ロールコート法、リッピング法等の方法を採用することもできるが、色材料層55の形成と同様に、図1に示した液滴吐出装置30を用いて行うこともできる。
【0064】
次いで、図8(e)に示すようにこの保護膜56の全面に、スパッタ法や真空蒸着法等によって透明導電膜57を形成する。その後、透明導電膜57をパターニングし、画素電極58を前記フィルターエレメント53に対応させてパターニングする。なお、液晶表示パネルの駆動にTFT(Thin Film Transistor)を用いる場合には、このパターニングは不用となる。
【0065】
このような液滴吐出装置30によるカラーフィルタの製造にあっては、特にそのフラッシング動作を、液滴吐出ヘッド34を移動させつつ行うので、このフラッシングにより生産性が損なわれるのを防止することができる。
また、ノズルが予め設定したフラッシングエリア41内から外れる位置に到達した際に、全てのノズル、あるいは外れる個々のノズルのフラッシング動作を停止させるように制御装置40を構成したので、フラッシングエリア41からはみ出てフラッシングがなされることによる製膜やパターニングへの悪影響や装置の汚染を確実に防止することができる。さらに、このように製膜やパターニングへの悪影響などが防止されていることから、カラーフィルタ55を生産性よくしかも良好に形成することができる。
【0066】
また、本発明の液滴吐出装置30の駆動方法を用いた製膜方法は、有機EL素子の構成要素となる薄膜の形成にも適用することができる。図9、図10はこのような有機EL素子を備えたELディスプレイの一例の概略構成を説明するための図であり、これらの図において符号70はELディスプレイである。
このELディスプレイ70は、回路図である図9に示すように透明の表示基板上に、複数の走査線131と、これら走査線131に対して交差する方向に延びる複数の信号線132と、これら信号線132に並列に延びる複数の共通給電線133とがそれぞれ配線されたもので、走査線131及び信号線132の各交点毎に、画素(画素領域素)71が設けられて構成されたものである。
【0067】
信号線132に対しては、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン、アナログスイッチを備えるデータ側駆動回路72が設けられている。
一方、走査線131に対しては、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査側駆動回路73が設けられている。また、画素領域71の各々には、走査線131を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング薄膜トランジスタ142と、このスイッチング薄膜トランジスタ142を介して信号線132から供給される画像信号を保持する保持容量capと、保持容量capによって保持された画像信号がゲート電極に供給されるカレント薄膜トランジスタ143と、このカレント薄膜トランジスタ143を介して共通給電線133に電気的に接続したときに共通給電線133から駆動電流が流れ込む画素電極141と、この画素電極141と反射電極154との間に挟み込まれる発光部140と、が設けられている。
【0068】
このような構成のもとに、走査線131が駆動されてスイッチング薄膜トランジスタ142がオンとなると、そのときの信号線132の電位が保持容量capに保持され、該保持容量capの状態に応じて、カレント薄膜トランジスタ143のオン・オフ状態が決まる。そして、カレント薄膜トランジスタ143のチャネルを介して共通給電線133から画素電極141に電流が流れ、さらに発光部140を通じて反射電極154に電流が流れることにより、発光部140は、これを流れる電流量に応じて発光するようになる。
ここで、各画素71の平面構造は、反射電極や有機EL素子を取り除いた状態での拡大平面図である図10に示すように、平面形状が長方形の画素電極141の四辺が、信号線132、共通給電線133、走査線131及び図示しない他の画素電極用の走査線によって囲まれた配置となっている。
【0069】
次に、このようなELディスプレイ70に備えられる有機EL素子の製造方法について、図11〜図13を用いて説明する。なお、図11〜図13では、説明を簡略化するべく、単一の画素71についてのみ図示する。
まず、基板を用意する。ここで、有機EL素子では後述する発光層による発光光を基板側から取り出すことも可能であり、また基板と反対側から取り出す構成とすることも可能である。発光光を基板側から取り出す構成とする場合、基板材料としてはガラスや石英、樹脂等の透明ないし半透明なものが用いられるが、特にガラスが好適に用いられる。
【0070】
また、基板に色フィルター膜や蛍光性物質を含む色変換膜、あるいは誘電体反射膜を配置して、発光色を制御するようにしてもよい。
また、基板と反対側から発光光を取り出す構成の場合、基板は不透明であってもよく、その場合、アルミナ等のセラミックス、ステンレス等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したもの、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などを用いることができる。
本例では、基板として図11(a)に示すようにソーダガラス等からなる透明基板121を用意する。そして、これに対し、必要に応じてTEOS(テトラエトキシシラン)や酸素ガスなどを原料としてプラズマCVD法により厚さ約200〜500nmのシリコン酸化膜からなる下地保護膜(図示せず)を形成する。
【0071】
次に、透明基板121の温度を約350℃に設定して、下地保護膜の表面にプラズマCVD法により厚さ約30〜70nmのアモルファスシリコン膜からなる半導体膜200を形成する。次いで、この半導体膜200に対してレーザアニールまたは固相成長法などの結晶化工程を行い、半導体膜200をポリシリコン膜に結晶化する。レーザアニール法では、例えばエキシマレーザでビームの長寸が400mmのラインビームを用い、その出力強度は例えば200mJ/cm2 とする。ラインビームについては、その短寸方向におけるレーザ強度のピーク値の90%に相当する部分が各領域毎に重なるようにラインビームを走査する。
【0072】
次いで、図11(b)に示すように、半導体膜(ポリシリコン膜)200をパターニングして島状の半導体膜210とし、その表面に対して、TEOSや酸素ガスなどを原料としてプラズマCVD法により厚さ約60〜150nmのシリコン酸化膜または窒化膜からなるゲート絶縁膜220を形成する。なお、半導体膜210は、図10に示したカレント薄膜トランジスタ143のチャネル領域及びソース・ドレイン領域となるものであるが、異なる断面位置においてはスイッチング薄膜トランジスタ142のチャネル領域及びソース・ドレイン領域となる半導体膜も形成されている。つまり、図11〜図13に示す製造工程では二種類のトランジスタ142、143が同時に作られるのであるが、同じ手順で作られるため、以下の説明ではトランジスタに関しては、カレント薄膜トランジスタ143についてのみ説明し、スイッチング薄膜トランジスタ142についてはその説明を省略する。
【0073】
次いで、図11(c)に示すように、アルミニウム、タンタル、モリブデン、チタン、タングステンなどの金属膜からなる導電膜をスパッタ法により形成した後、これをパターニングし、ゲート電極143Aを形成する。
次いで、この状態で高濃度のリンイオンを打ち込み、半導体膜210に、ゲート電極143Aに対して自己整合的にソース・ドレイン領域143a、143bを形成する。なお、不純物が導入されなかった部分がチャネル領域143cとなる。
【0074】
次いで、図11(d)に示すように、層間絶縁膜230を形成した後、コンタクトホール232、234を形成し、これらコンタクトホール232、234内に中継電極236、238を埋め込む。
次いで、図11(e)に示すように、層間絶縁膜230上に、信号線132、共通給電線133及び走査線(図11に示さず)を形成する。ここで、中継電極238と各配線とは、同一工程で形成されていてもよい。このとき、中継電極236は、後述するITO膜により形成されることになる。
【0075】
そして、各配線の上面をも覆うように層間絶縁膜240を形成し、中継電極236に対応する位置にコンタクトホール(図示せず)を形成し、そのコンタクトホール内にも埋め込まれるようにITO膜を形成し、さらにそのITO膜をパターニングして、信号線132、共通給電線133及び走査線(図示せず)に囲まれた所定位置に、ソース・ドレイン領域143aに電気的に接続する画素電極141を形成する。ここで、信号線132及び共通給電線133、さらには走査線(図示せず)に挟まれた部分が、後述するように正孔注入層や発光層の形成場所となっている。
【0076】
次いで、図12(a)に示すように、前記の形成場所を囲むように隔壁150を形成する。この隔壁150は仕切部材として機能するものであり、例えばポリイミド等の絶縁性有機材料で形成するのが好ましい。隔壁150の膜厚については、例えば1〜2μmの高さとなるように形成する。また、隔壁150は、液滴吐出ヘッド34から吐出される液体に対して撥液性を示すものが好ましい。隔壁150に撥液性を発現させるためには、例えば隔壁150の表面をフッ素系化合物などで表面処理するといった方法が採用される。フッ素化合物としては、例えばCF4 、SF5 、CHF3 などがあり、表面処理としては、例えばプラズマ処理、UV照射処理などが挙げられる。
そして、このような構成のもとに、正孔注入層や発光層の形成場所、すなわちこれらの形成材料の塗布位置とその周囲の隔壁150との間には、十分な高さの段差111が形成されているのである。
【0077】
次いで、図12(b)に示すように、表示基板121の上面を上に向けた状態で、正孔注入層の形成材料を前記の液滴吐出ヘッド34より、前記隔壁150に囲まれた塗布位置、すなわち隔壁150内に選択的に塗布する。
ここで、このような正孔注入層の形成材料の吐出は、液滴吐出ヘッド34をヘッド移動手段33におけるガイドレール33d、33dに沿ってX軸方向に往復移動させつつ行うが、その際、各パス毎に、あるいは数パス毎に液滴吐出ヘッド34をフラッシングエリア41にまで移動させ、ここで前述したフラッシングを行う。その場合、先のカラーフィルタ製造の場合と同様に、前述した二通りの方式のいずれで行ってもよい。また、印字前微振動を行うか否か、液滴吐出ヘッド34を一旦回動させてからフラッシングを行うか否か、さらにフラッシングを行わせるタイミング(フラッシングエリア41上を内側に向けて移動する際にのみフラッシングを行わせるかなど)などについても、いずれを選択してもよい。
【0078】
前記正孔注入層の形成材料としては、ポリマー前駆体がポリテトラヒドロチオフェニルフェニレンであるポリフェニレンビニレン、1,1−ビス−(4−N,N−ジトリルアミノフェニル)シクロヘキサン、トリス(8−ヒドロキシキノリノール)アルミニウム等が挙げられる。
このとき、液状の形成材料114Aは、流動性が高いため水平方向に広がろうとするが、塗布された位置を囲んで隔壁150が形成されているので、形成材料114Aは隔壁150を越えてその外側に広がることが防止されている。
【0079】
次いで、図12(c)に示すように加熱あるいは光照射により液状の前駆体114Aの溶媒を蒸発させて、画素電極141上に、固形の正孔注入層140Aを形成する。
次いで、図13(a)に示すように、表示基板121の上面を上に向けた状態で、液滴吐出ヘッド34より液状材料として発光層の形成材料(発光材料)114Bを前記隔壁150内の正孔注入層140A上に選択的に塗布する。この発光層の形成材料の吐出に際しても、各パス毎に、あるいは数パス毎に液滴吐出ヘッド34をフラッシングエリア41にまで移動させ、ここで前述したフラッシングを行う。
【0080】
発光層の形成材料としては、例えば共役系高分子有機化合物の前駆体と、得られる発光層の発光特性を変化させるための蛍光色素とを含んでなるものが好適に用いられる。
共役系高分子有機化合物の前駆体は、蛍光色素等とともに液滴吐出ヘッド34から吐出されて薄膜に成形された後、例えば以下の式(I)に示すように加熱硬化されることによって共役系高分子有機EL層となる発光層を生成し得るものをいい、例えば前駆体のスルホニウム塩の場合、加熱処理されることによりスルホニウム基が脱離し、共役系高分子有機化合物となるもの等である。
【0081】
【化1】
Figure 0004007020
【0082】
このような共役系高分子有機化合物は固体で強い蛍光を持ち、均質な固体超薄膜を形成することができる。しかも形成能に富みITO電極との密着性も高い。さらに、このような化合物の前駆体は、硬化した後は強固な共役系高分子膜を形成することから、加熱硬化前においては前駆体溶液を後述する液滴吐出ヘッドを用いた製膜法に適用可能な所望の粘度に調整することができ、簡便かつ短時間で最適条件の膜形成を行うことができる。
【0083】
このような前駆体としては、例えばPPV(ポリ(パラ−フェニレンビニレン))またはその誘導体の前駆体が好ましい。PPVまたはその誘導体の前駆体は、水あるいは有機溶媒に可溶であり、また、ポリマー化が可能であるため光学的にも高品質の薄膜を得ることができる。さらに、PPVは強い蛍光を持ち、また二重結合のπ電子がポリマー鎖上で非極在化している導電性高分子でもあるため、高性能の有機EL素子を得ることができる。
【0084】
このようなPPVまたはPPV誘導体の前駆体として、例えば化学式(II)に示すような、PPV(ポリ(パラ−フェニレンビニレン))前駆体、MO−PPV(ポリ(2,5−ジメトキシ−1,4−フェニレンビニレン))前駆体、CN−PPV(ポリ(2,5−ビスヘキシルオキシ−1,4−フェニレン−(1−シアノビニレン)))前駆体、MEH−PPV(ポリ[2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキシルオキシ)]−パラ−フェニレンビニレン)前駆体等が挙げられる。
【0085】
【化2】
Figure 0004007020
【0086】
PPVまたはPPV誘導体の前駆体は、前述したように水に可溶であり、製膜後の加熱により高分子化してPPV層を形成する。前記PPV前駆体に代表される前駆体の含有量は、組成物全体に対して0.01〜10.0wt%が好ましく、0.1〜5.0wt%がさらに好ましい。前駆体の添加量が少な過ぎると共役系高分子膜を形成するのに不十分であり、多過ぎると組成物の粘度が高くなり、液滴吐出ヘッドを用いた製膜法による精度の高いパターニングに適さない場合がある。
【0087】
さらに、発光層の形成材料としては、少なくとも1種の蛍光色素を含むのが好ましい。これにより、発光層の発光特性を変化させることができ、例えば、発光層の発光効率の向上、または光吸収極大波長(発光色)を変えるための手段としても有効である。すなわち、蛍光色素は単に発光層材料としてではなく、発光機能そのものを担う色素材料として利用することができる。例えば、共役系高分子有機化合物分子上のキャリア再結合で生成したエキシトンのエネルギーをほとんど蛍光色素分子上に移すことができる。この場合、発光は蛍光量子効率が高い蛍光色素分子からのみ起こるため、発光層の電流量子効率も増加する。したがって、発光層の形成材料中に蛍光色素を加えることにより、同時に発光層の発光スペクトルも蛍光分子のものとなるので、発光色を変えるための手段としても有効となる。
【0088】
なお、ここでいう電流量子効率とは、発光機能に基づいて発光性能を考察するための尺度であって、下記式により定義される。
ηE =放出されるフォトンのエネルギー/入力電気エネルギー
そして、蛍光色素のドープによる光吸収極大波長の変換によって、例えば赤、青、緑の3原色を発光させることができ、その結果フルカラー表示体を得ることが可能となる。
さらに蛍光色素をドーピングすることにより、EL素子の発光効率を大幅に向上させることができる。
【0089】
蛍光色素としては、赤色の発色光を発光する発光層を形成する場合、赤色の発色光を有するローダミンまたはローダミン誘導体を用いるのが好ましい。これらの蛍光色素は、低分子であるため水溶液に可溶であり、またPPVと相溶性がよく、均一で安定した発光層の形成が容易である。このような蛍光色素として具体的には、ローダミンB、ローダミンBベース、ローダミン6G、ローダミン101過塩素酸塩等が挙げられ、これらを2種以上混合したものであってもよい。
【0090】
また、緑色の発色光を発光する発光層を形成する場合、緑色の発色光を有するキナクリドンおよびその誘導体を用いるのが好ましい。これらの蛍光色素は前記赤色蛍光色素と同様、低分子であるため水溶液に可溶であり、またPPVと相溶性がよく発光層の形成が容易である。
【0091】
さらに、青色の発色光を発光する発光層を形成する場合、青色の発色光を有するジスチリルビフェニルおよびその誘導体を用いるのが好ましい。これらの蛍光色素は前記赤色蛍光色素と同様、低分子であるため水・アルコール混合溶液に可溶であり、またPPVと相溶性がよく発光層の形成が容易である。
【0092】
また、青色の発色光を有する他の蛍光色素としては、クマリンおよびその誘導体を挙げることができる。これらの蛍光色素は、前記赤色蛍光色素と同様、低分子であるため水溶液に可溶であり、またPPVと相溶性がよく発光層の形成が容易である。このような蛍光色素として具体的には、クマリン、クマリン−1、クマリン−6、クマリン−7、クマリン120、クマリン138、クマリン152、クマリン153、クマリン311、クマリン314、クマリン334、クマリン337、クマリン343等が挙げられる。
【0093】
さらに、別の青色の発色光を有する蛍光色素としては、テトラフェニルブタジエン(TPB)またはTPB誘導体を挙げることができる。これらの蛍光色素は、前記赤色蛍光色素等と同様、低分子であるため水溶液に可溶であり、またPPVと相溶性がよく発光層の形成が容易である。
以上の蛍光色素については、各色ともに1種のみを用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。
【0094】
これらの蛍光色素については、前記共役系高分子有機化合物の前駆体固型分に対し、0.5〜10wt%添加するのが好ましく、1.0〜5.0wt%添加するのがより好ましい。蛍光色素の添加量が多過ぎると発光層の耐候性および耐久性の維持が困難となり、一方、添加量が少な過ぎると、前述したような蛍光色素を加えることによる効果が十分に得られないからである。
【0095】
また、前記前駆体および蛍光色素については、極性溶媒に溶解または分散させて液状材料とし、この液状材料を液滴吐出ヘッド34から吐出するのが好ましい。極性溶媒は、前記前駆体、蛍光色素等を容易に溶解または均一に分散させることができるため、液滴吐出ヘッド34のノズル孔18での発光層形成材料中の固型分が付着したり目詰りを起こすのを防止することができる。
【0096】
このような極性溶媒として具体的には、水、メタノール、エタノール等の水と相溶性のあるアルコール、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルイミダゾリン(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の有機溶媒または無機溶媒が挙げられ、これらの溶媒を2種以上適宜混合したものであってもよい。
【0097】
さらに、前記形成材料中に湿潤剤を添加しておくのが好ましい。これにより、形成材料が液滴吐出ヘッド34のノズル孔18で乾燥・凝固することを有効に防止することができる。かかる湿潤剤としては、例えばグリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールが挙げられ、これらを2種以上混合したものであってもよい。この湿潤剤の添加量としては、形成材料の全体量に対し、5〜20wt%程度とするのが好ましい。
なお、その他の添加剤、被膜安定化材料を添加してもよく、例えば、安定剤、粘度調整剤、老化防止剤、pH調整剤、防腐剤、樹脂エマルジョン、レベリング剤等を用いることができる。
【0098】
このような発光層の形成材料114Bを液滴吐出ヘッド34のノズル孔18から吐出すると、形成材料114Aは隔壁150内の正孔注入層140A上に塗布される。
ここで、形成材料114Aの吐出による発光層の形成は、赤色の発色光を発光する発光層の形成材料、緑色の発色光を発光する発光層の形成材料、青色の発色光を発光する発光層の形成材料を、それぞれ対応する画素71に吐出し塗布することによって行う。なお、各色に対応する画素71は、これらが規則的な配置となるように予め決められている。
【0099】
このようにして各色の発光層形成材料を吐出し塗布したら、発光層形成材料114B中の溶媒を蒸発させることにより、図13(b)に示すように正孔層注入層140A上に固形の発光層140Bを形成し、これにより正孔層注入層140Aと発光層140Bとからなる発光部140を得る。ここで、発光層形成材料114B中の溶媒の蒸発については、必要に応じて加熱あるいは減圧等の処理を行うが、発光層の形成材料は通常乾燥性が良好で速乾性であることから、特にこのような処理を行うことなく、したがって各色の発光層形成材料を順次吐出塗布することにより、その塗布順に各色の発光層140Bを形成することができる。
その後、図5(c)に示すように、透明基板121の表面全体に、あるいはストライプ状に反射電極154を形成し、有機EL素子を得る。
【0100】
このような液滴吐出装置30による、有機EL素子の構成要素となる正孔層注入層140Aや発光層140Bの製造にあっても、特にそのフラッシング動作を、液滴吐出ヘッド34を移動させつつ行うので、このフラッシングにより生産性が損なわれるのを防止することができる。
また、ノズルが予め設定したフラッシングエリア41内から外れる位置に到達した際に、全てのノズル、あるいは外れる個々のノズルのフラッシング動作を停止させるように制御装置40を構成したので、フラッシングエリア41からはみ出てフラッシングがなされることによる製膜やパターニングへの悪影響や装置の汚染を確実に防止することができる。さらに、このように製膜やパターニングへの悪影響などが防止されていることから、正孔層注入層140Aや発光層140Bを生産性よくしかも良好に形成することができる。
【0101】
なお、本発明の液滴吐出装置とその駆動方法、及びこれらを備えた製膜装置と製膜方法としては、特にカラーフィルタや有機EL素子の構成要素となる薄膜の製造にのみ用いられるだけでなく、他の種々の薄膜やパターニングの形成にも適用可能である。例えば、プロジェクション用スクリーンなどに用いられる、マイクロレンズの形成などにも適用可能である。
【0102】
次に、本発明の電子機器について説明する。本発明の電子機器は、これに備えられるデバイスの構成要素や製造上形成する薄膜が、前記の液滴吐出装置30の駆動方法を用いた製膜方法によって形成されたものである。すなわち、本発明の電子機器は、前記のカラーフィルタを備えた液晶表示装置、または前記の有機EL素子を備えたELディスプレイなどを表示装置として備えてなるものである。図14(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図14(a)において、500は携帯電話本体を示し、501は前記の液晶表示装置やELディスプレイなどからなる表示装置を示している。
図14(b)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図14(b)において、600は情報処理装置、601はキーボードなどの入力部、603は情報処理本体、602は前記の液晶表示装置やELディスプレイなどからなる表示装置を示している。
図14(c)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図14(c)において、700は時計本体を示し、701は前記の液晶表示装置やELディスプレイなどからなる表示装置を示している。
図14(a)〜(c)に示す電子機器は、前記の液晶表示装置やELディスプレイなどからなる表示装置が備えられたものであるので、生産性よくしかも良好に形成されたものとなる。
【0103】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の液滴吐出装置によれば、液滴吐出ヘッドを移動させつつフラッシングエリア内でフラッシング動作を行わせるので、このフラッシングにより生産性が損なわれることがない。また、少なくとも一つのノズルが予め設定したフラッシングエリア内から外れる位置に到達した際に、全てのノズルのフラッシング動作を停止させるように制御手段を構成したので、フラッシングエリアからはみ出てフラッシングがなされることによる製膜やパターニングへの悪影響や装置の汚染を、防止することができる。
【0104】
本発明の別の液滴吐出装置によれば、液滴吐出ヘッドを移動させつつフラッシングエリア内でフラッシング動作を行わせるので、このフラッシングにより生産性が損なわれることがない。また、ノズルが予め設定したフラッシングエリア内から外れる位置に到達した際に、そのノズルのフラッシング動作を停止させるように制御手段を構成したので、フラッシングエリアからはみ出てフラッシングがなされることによる製膜やパターニングへの悪影響や装置の汚染を、防止することができる。
【0105】
本発明の製膜装置によれば、前記の液滴吐出装置を備えてなるので、フラッシングによって生産性が損なわれることがなく、また、フラッシングエリアからはみ出てフラッシングがなされることによる製膜への悪影響や装置の汚染を防止することができる。
【0106】
本発明の液滴吐出装置の駆動方法によれば、液滴吐出ヘッドを移動させつつフラッシングエリア内でフラッシング動作を行わせるので、このフラッシングにより生産性が損なわれることがない。また、少なくとも一つのノズルが予め設定したフラッシングエリア内から外れる位置に到達した際に、全てのノズルのフラッシング動作を停止させるようにしているので、フラッシングエリアからはみ出てフラッシングがなされることによる製膜やパターニングへの悪影響や装置の汚染を、防止することができる。
【0107】
本発明の別の液滴吐出装置の駆動方法によれば、液滴吐出ヘッドを移動させつつフラッシングエリア内でフラッシング動作を行わせるので、このフラッシングにより生産性が損なわれることがない。また、ノズルが予め設定したフラッシングエリア内から外れる位置に到達した際に、そのノズルのフラッシング動作を停止させるようにしているので、フラッシングエリアからはみ出てフラッシングがなされることによる製膜やパターニングへの悪影響や装置の汚染を、防止することができる。
【0108】
本発明の製膜方法によれば、前記の液滴吐出装置の駆動方法を備えてなるので、フラッシングによって生産性が損なわれることがなく、また、フラッシングエリアからはみ出てフラッシングがなされることによる製膜への悪影響や装置の汚染を、防止することができる。
【0109】
本発明のカラーフィルタの製造方法によれば、前記の製膜方法によってカラーフィルタを形成するようにしたので、生産性が損なわれることがなく、また、製膜への悪影響や装置の汚染が防止されることから、カラーフィルタを生産性よくしかも良好に形成することができる。
【0110】
本発明の有機EL装置の製造方法によれば、前記の製膜方法によって有機EL装置の構成要素となる薄膜を形成するようにしたので、生産性が損なわれることがなく、また、製膜への悪影響や装置の汚染が防止されることから、有機EL素子の構成要素となる薄膜を生産性よくしかも良好に形成することができる。
【0111】
本発明の電子機器によれば、前記の製膜方法が用いられて形成されたデバイスを備えてなるので、生産性よくしかも良好に形成されたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の液滴吐出装置の一実施形態例の概略構成を示す斜視図である。
【図2】 液滴吐出ヘッドの概略構成を説明するための図であり、(a)は要部斜視図、(b)は要部側断面図である。
【図3】 ステージとフラッシングエリアとの位置関係を説明するための平面図である。
【図4】 (a)、(b)は、フラッシングエリアと液滴吐出ヘッドとの位置関係を説明するための平面図である。
【図5】 (a)、(b)は、液滴吐出ヘッドの回動を説明するための平面図である。
【図6】 圧電素子に対する印可電圧の波形を示す図である。
【図7】 基板上のカラーフィルタ領域を示す図である。
【図8】 (a)〜(f)はカラーフィルタ領域の形成方法を工程順に説明するための要部側断面図である。
【図9】 有機EL素子を備えたELディスプレイの一例の回路図である。
【図10】 図9に示したELディスプレイにおける画素部の平面構造を示す拡大平面図である。
【図11】 (a)〜(e)は有機EL素子の製造方法を工程順に説明するための要部側断面図である。
【図12】 (a)〜(c)は図3に続く工程を順に説明するための要部側断面図である。
【図13】 (a)〜(c)は図4に続く工程を順に説明するための要部側断面図である。
【図14】 本発明の電子機器の具体例を示す図であり、(a)は携帯電話に適用した場合の一例を示す斜視図、(b)は情報処理装置に適用した場合の一例を示す斜視図、(c)は腕時計型電子機器に適用した場合の一例を示す斜視図である。
【図15】 (a)、(b)は液滴吐出ヘッドの姿勢(取付角度)と吐出される液滴との関係を説明するための図である。
【符号の説明】
30…液滴吐出装置
34…液滴吐出ヘッド
39…ステージ
40…制御装置(制御手段)
41…フラッシングエリア
S…基板

Claims (17)

  1. ステージの上方に設けられて基板に対し一の方向に往復移動可能に構成され、かつ、前記基板に液滴を吐出する複数のノズルを縦横に整列して備えた液滴吐出ヘッドと、前記ステージ上の基板に対し、前記一の方向での少なくとも一方の側方に設けられたフラッシングエリアと、前記液滴吐出ヘッドによる動作を制御する制御手段とを有し、前記液滴吐出ヘッドが、前記一の方向に対しそのノズルの列を斜めにして配置された液滴吐出装置であって、
    前記液滴吐出ヘッドがその周方向に回動可能に設けられ、かつその回動動作が前記制御手段によって制御されるよう構成されてなり、
    前記制御手段は、前記液滴吐出ヘッドがフラッシングエリア内に移動してフラッシングを行う際、予め該液滴吐出ヘッドを、そのノズルの列が前記一の方向に対し直交するように回動させておき、全てのノズルがフラッシング動作を停止した後、再度斜めとなるように回動させるよう制御すると共に、
    前記制御手段は、前記液滴吐出ヘッドを移動させつつフラッシングエリア内で該液滴吐出ヘッドにフラッシング動作を行わせるとともに、少なくとも一つのノズルが予め設定したフラッシングエリア内から外れる位置に到達した際に、全てのノズルのフラッシング動作を停止させる制御をなすように構成されたことを特徴とする液滴吐出装置。
  2. ステージの上方に設けられて基板に対し一の方向に往復移動可能に構成され、かつ、前記基板に液滴を吐出する複数のノズルを縦横に整列して備えた液滴吐出ヘッドと、前記ステージ上の基板に対し、前記一の方向での少なくとも一方の側方に設けられたフラッシングエリアと、前記液滴吐出ヘッドによる動作を制御する制御手段とを有し、前記液滴吐出ヘッドが、前記一の方向に対しそのノズルの列を斜めにして配置された液滴吐出装置であって、
    前記液滴吐出ヘッドがその周方向に回動可能に設けられ、かつその回動動作が前記制御手段によって制御されるよう構成されてなり、
    前記制御手段は、前記液滴吐出ヘッドがフラッシングエリア内に移動してフラッシングを行う際、予め該液滴吐出ヘッドを、そのノズルの列が前記一の方向に対し直交するように回動させておき、全てのノズルがフラッシング動作を停止した後、再度斜めとなるように回動させるよう制御すると共に、
    前記制御手段は、前記液滴吐出ヘッドを移動させつつフラッシングエリア内で該液滴吐出ヘッドにフラッシング動作を行わせるとともに、ノズルが予め設定したフラッシングエリア内から外れる位置に到達した際に、そのノズルのフラッシング動作を停止させる制御をなすように構成されたことを特徴とする液滴吐出装置。
  3. 前記制御手段は、ノズルに対してフラッシング動作を停止させる制御を行った後、そのノズルに対して微振動動作を行わせるよう制御することを特徴とする請求項1又は2記載の液滴吐出装置。
  4. 前記フラッシングエリアが、ステージ上の基板に対して前記一の方向での両側に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  5. 前記制御手段は、液滴吐出ヘッドがフラッシングエリア上を外側に向けて移動する際にはフラッシング動作を行わせずに、フラッシングエリア上を内側に向けて移動する際にのみフラッシング動作を行わせるよう制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  6. 前記液滴吐出ヘッドに対する、そのノズルの列が前記一の方向に対し直交するように回動させる動作を、フラッシングエリア上で行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の液滴吐出装置を備えてなる製膜装置。
  8. ステージ上に配置された基板上に液滴を塗布する液滴吐出装置の駆動方法であって、
    前記液滴吐出装置は、前記ステージの上方に設けられて前記基板に対し一の方向に往復移動可能に構成され、かつ、前記基板に液滴を吐出する複数のノズルを縦横に整列して備えた液滴吐出ヘッドと、前記ステージ上の基板に対し、前記一の方向での少なくとも一方の側方に設けられたフラッシングエリアとを有し、前記液滴吐出ヘッドを、前記一の方向に対しそのノズルの列を斜めにして配置してなり、
    前記液滴吐出ヘッドがその周方向に回動可能に設けられ、かつその回動動作が前記制御手段によって制御されるよう構成されてなり、
    前記液滴吐出ヘッドがフラッシングエリア内に移動してフラッシングを行う際、予め該液滴吐出ヘッドを、そのノズルの列が前記一の方向に対し直交するように回動させておき、全てのノズルがフラッシング動作を停止した後、再度斜めとなるように回動させると共に、
    フラッシングを、前記液滴吐出ヘッドを移動させつつフラッシングエリア内で該液滴吐出ヘッドにフラッシング動作を行わせることで行い、その後、少なくとも一つのノズルが予め設定したフラッシングエリア内から外れる位置に到達した際に、全てのノズルのフラッシング動作を停止させることを特徴とする液滴吐出装置の駆動方法。
  9. ステージ上に配置された基板上に液滴を塗布する液滴吐出装置の駆動方法であって、
    前記液滴吐出装置は、前記ステージの上方に設けられて前記基板に対し一の方向に往復移動可能に構成され、かつ、前記基板に液滴を吐出する複数のノズルを縦横に整列して備えた液滴吐出ヘッドと、前記ステージ上の基板に対し、前記一の方向での少なくとも一方の側方に設けられたフラッシングエリアとを有し、前記液滴吐出ヘッドを、前記一の方向に対しそのノズルの列を斜めにして配置してなり、
    前記液滴吐出ヘッドがその周方向に回動可能に設けられ、かつその回動動作が前記制御手段によって制御されるよう構成されてなり、
    前記液滴吐出ヘッドがフラッシングエリア内に移動してフラッシングを行う際、予め該液滴吐出ヘッドを、そのノズルの列が前記一の方向に対し直交するように回動させておき、全てのノズルがフラッシング動作を停止した後、再度斜めとなるように回動させると共に、
    フラッシングを、前記液滴吐出ヘッドを移動させつつフラッシングエリア内で該液滴吐出ヘッドにフラッシング動作を行わせることで行い、その後、ノズルが予め設定したフラッシングエリア内から外れる位置に到達した際に、そのノズルのフラッシング動作を停止させることを特徴とする液滴吐出装置の駆動方法。
  10. ノズルのフラッシング動作を停止させた後、そのノズルに対して微振動動作を行わせることを特徴とする請求項8又は9記載の液滴吐出装置の駆動方法。
  11. 前記フラッシングエリアが、ステージ上の基板に対して前記一の方向での両側に設けられていることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の液滴吐出装置の駆動方法。
  12. 液滴吐出ヘッドがフラッシングエリア上を外側に向けて移動する際にはフラッシング動作を行わせずに、フラッシングエリア上を内側に向けて移動する際にのみフラッシング動作を行わせることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の液滴吐出装置の駆動方法。
  13. 前記液滴吐出ヘッドに対する、そのノズルの列が前記一の方向に対し直交するように回動させる動作を、フラッシングエリア上で行うことを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載の液滴吐出装置の駆動方法。
  14. 請求項8〜13のいずれかに記載の駆動方法を備えてなる製膜方法。
  15. 請求項14記載の製膜方法により、カラーフィルタを形成することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
  16. 請求項14記載の製膜方法により、有機EL装置の構成要素となる薄膜を形成することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
  17. 請求項14に記載の製膜方法が用いられて形成されたデバイスを備えてなる電子機器。
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