JP2005322469A - 電気光学装置及びその製造方法、並びに電子機器 - Google Patents

電気光学装置及びその製造方法、並びに電子機器 Download PDF

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Abstract

【課題】 液相法により形成された機能層を有する発光素子を具備した電気光学装置において、該液相法にて形成される機能層の膜厚を均一化することができ、もって光学特性の向上を実現した電気光学装置を提供する。
【解決手段】 本発明に係る電気光学装置の一形態たる有機EL装置は、基板P上に立設したバンク150により囲まれてなる区画領域151内に設けられた発光素子200を備えており、前記発光素子200が、液相法により形成された有機機能層140を含んでおり、前記区画領域151に対応して、該区画領域151内に温度分布を形成可能な凹部141a(温度分布形成手段)を備えている。
【選択図】 図3

Description

本発明は、電気光学装置及びその製造方法、並びに電子機器に関するものである。
近年、自発光素子である有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子を画素として用いた有機EL装置の開発が進められている。有機EL素子は、陽極と陰極との間に発光層等の有機機能層を挟持した構成を備えており、最近では、有機物材料を溶解した液体材料を、インクジェット法によって基板上にパターン配置する方法を採用した有機EL装置の開発が行われている(例えば特許文献1参照)。
特許3328297号公報
上記特許文献1によれば、仕切部材(隔壁)により区画された画素毎にインクジェット法により液体材料を塗布する技術が開示されているが、該インクジェット法により塗布された液体材料を乾燥させた場合に、仕切部材の近傍に薄膜材料が集まる結果、画素の周縁領域の膜厚が、同中央部の膜厚より厚くなる傾向がある。このように有機機能層の膜厚に不均一が生じると、陰極からの電子と陽極からの正孔の再結合のバランスがくずれ、発光効率が変化し輝度が異なる問題が生じる。また電子あるいは正孔の準位や、有機機能層内での光路差による干渉条件が変化して発光色に影響を与え、表示品質を低下させるおそれが生じる。
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、液相法により形成された機能層を有する発光素子を具備した電気光学装置において、該液相法にて形成される機能層の膜厚を均一化することができ、もって光学特性の向上を実現した電気光学装置を提供することを目的としている。
また本発明は、製造される電気光学装置の光学特性を高めることが可能な製造方法を提供することを目的としている。
本発明は、上記課題を解決するために、基体上に立設した仕切部材により囲まれてなる区画領域内に設けられた発光素子を備えた電気光学装置であって、前記発光素子が、液相法により形成された機能層を含んでおり、前記区画領域に対応して、該区画領域内に温度分布を形成可能な温度分布形成手段が設けられていることを特徴とする電気光学装置を提供する。
係る構成の電気光学装置は、その製造に際して、前記区画領域内に液体材料を配し、当該液体材料を乾燥固化させることにより前記機能層が形成される。従来の有機EL装置における機能層形成工程も同様であるが、係る従来構成における膜厚ムラの問題は、この区画領域内に配した液体材料の乾燥工程において、仕切部材の表面張力によって液体材料が仕切部材側に引き寄せられ、液体材料が偏った状態で固化することに起因すると考えられる。
そこで本発明の電気光学装置では、前記区画領域に対応して前記温度分布形成手段を設け、前記液体材料の乾燥工程において、前記区画領域内に温度分布を形成可能にした。このように温度分布を形成することで、液体材料中に温度分布を形成し、もって所定の対流を液体材料中に生じさせることができる。そして、この液体材料の流動によって液体材料の偏在が防止され、その結果均一な膜厚にて機能層を形成できるようになる。したがって本構成の電気光学装置によれば、機能層の膜厚を均一化することができ、光学特性の向上を実現することができる。
本発明の電気光学装置では、前記温度分布形成手段が、吸熱性又は蓄熱性を有する材料からなる保温部材により構成されるとともに、前記区画領域の平面視中央部に配置されている構成とすることが好ましい。この構成によれば、前記保温部材によって区画領域の中央部の温度を相対的に高くすることができ、これにより区画領域に液体材料が配された際に、区画領域の中央部から周縁部に向かう対流を液体材料中に生じさせることができる。したがって、本構成の電気光学装置によれば、液体材料の偏りを効果的に防止し、均一な膜厚の機能層を形成することができる。
本発明の電気光学装置では、前記保温部材が、アモルファスシリコンからなるものであることが好ましい。アモルファスシリコンは、レーザアニールによる多結晶化に見られるように、紫外線の吸収が大きく、またその吸収により容易に温度を上昇させることができるものである。したがって、本構成の電気光学装置においては、区画領域に液体材料を配して機能層を形成する際に、前記保温部材に対して紫外線を照射することで容易に保温部材の温度を上昇させることができ、もって液体材料に温度分布を形成するとともに対流を生じさせることができる。これにより、均一な膜厚で光学特性に優れた機能層を得ることができる。
本発明の電気光学装置では、前記発光素子と基体との間に、前記発光素子を駆動するためのスイッチング素子が設けられており、前記アモルファスシリコンからなる保温部材が、前記スイッチング素子に含まれる半導体層と同層に形成されている構成とすることもできる。この構成によれば、発光素子を駆動するためのスイッチング素子(薄膜トランジスタ等)を構成する半導体層とともに保温部材を形成でき、製造に際しての工数の増加を伴うことなく機能層の膜厚均一化を実現できる。
本発明の電気光学装置では、前記区画領域の底面部に、前記発光素子の一の電極を成す画素電極が設けられており、前記温度分布形成手段が、前記画素電極の基体側に設けられていることが好ましい。このように画素電極の下層側(基体側)に前記温度分布形成手段を設けるならば、液体材料の乾燥に際して基体側から加熱した際に、画素電極表面に所望の温度分布を容易に形成し得るものとなる。また、画素電極を含む発光素子の構成に変更を加えることがないため、製造が比較的容易であるという利点も得られる。
本発明の電気光学装置では、前記区画領域の底面部に凹部が形成され、前記発光素子が、前記凹部内に形成された前記機能層を含む構成とすることができる。このように区画領域底面部に設けられた凹部内に機能層を形成した構成とするならば、乾燥工程において基体側から加熱した際に、凹部の中央部と周縁部とでは異なった温度になる。したがってこの凹部は、区画領域内に温度分布を形成可能な温度分布形成手段として機能する。そして、この温度の差異により液体材料中に対流を生じさせることができるので、形成される機能層の均一化を実現できる。
本発明の電気光学装置では、前記区画領域の底面部に、前記発光素子の一の電極を成す画素電極が設けられており、前記凹部が、前記区画領域に臨む画素電極表面に形成されている構成とすることもできる。この場合、前記凹部は、画素電極の表面を部分的に除去することにより形成できる。
あるいは、前記区画領域の底面部に、前記発光素子の一の電極を成す画素電極が設けられており、前記凹部が、前記画素電極の基体側に設けられた絶縁膜の形状に起因するものである構成とすることもできる。すなわち、絶縁膜表面に凹部を形成し、係る凹部を含む領域に前記画素電極を形成することで、絶縁膜の凹部に倣う凹状を画素電極表面に形成したものであってもよい。
あるいはまた、前記区画領域の底面部に、前記発光素子の一の電極を成す画素電極が設けられており、前記凹部が、前記画素電極の基体側に設けられた回路層の形状に起因するものである構成とすることもできる。すなわち、画素電極に電力を供給するべく設けられる回路層の凹凸形状を利用して前記画素電極表面の凹部を形成してもよい。
本発明の電気光学装置では、前記凹部の周縁部が、曲面形状を成して形成されていることが好ましい。このような構成とすることで、前記凹部内に配された液体材料中に対流を生じさせた場合に、前記曲面形状によって対流による液体材料の流動をより円滑なものとすることができ、機能層の平坦化を一層促進する構成となる。
本発明の電気光学装置では、前記発光素子と基体との間に、前記発光素子を駆動するためのスイッチング素子が設けられており、前記スイッチング素子の前記基体側に、該基体側からみて前記スイッチング素子を覆う遮光部材が設けられていることが好ましい。このような遮光部材を設けておけば、前記温度分布形成手段が光照射を利用するものである場合に、照射する光からスイッチング素子を保護することができ、製造歩留まりの向上に寄与する。
本発明の電気光学装置の製造方法は、基体上に立設された仕切部材に囲まれてなる区画領域内に設けられた発光素子を備えた電気光学装置の製造方法であって、前記区画領域内に液体材料を選択塗布することにより機能層を形成する機能層形成工程を含み、前記塗布された液体材料を乾燥固化する際に、該液体材料中に温度分布を生じさせることを特徴とする。
この製造方法によれば、前記液体材料を乾燥させる際に、液体材料中に温度分布を形成し、もって液体材料中に対流を生じさせて液体材料を流動させるので、表面張力によって区画領域周縁部側へ液体材料が偏って配置されるのを防止することができ、もって均一な膜厚の機能層を形成することができる。したがって本製造方法によれば、均一な膜厚の機能層を有する発光素子を具備し、光学特性に優れた電気光学装置を製造することができる。
本発明の電気光学装置の製造方法では、前記塗布された液体材料を乾燥固化する際に、前記区画領域の底面中央部における前記液体材料の温度を、同区画領域の底面周縁部における温度より高くすることが好ましい。この製造方法によれば、前記液体材料を乾燥させる際に、区画領域の中央部から周縁部に向かう対流を生じさせることができ、液体材料の流動を促進することができる。これにより、表面張力によって区画領域周縁部に引き寄せられた液体材料を再度区画領域の中央部側へ流動させることができ、区画領域内での液体材料の偏在を防止して機能層の平坦化を実現できる。
本発明の電気光学装置の製造方法では、前記機能層形成工程に先立って、前記区画領域の底面部に対応する位置に温度分布形成手段を形成する工程を含むことが好ましい。この製造方法によれば、区画領域底面部に温度分布形成手段を設けるので、区画領域内に液体材料を配して乾燥させる際に、区画領域底面部と当接する液体材料中に温度分布を形成でき、区画領域の底面部の面方向での対流を生じさせることができる。これにより、表面張力によって区画領域周縁部に引き寄せられた液体材料の流動を促進し、液体材料の偏在による膜厚ムラを効果的に防止することができる。
本発明の電気光学装置の製造方法では、前記温度分布形成手段として、吸熱性又は蓄熱性を有する材料からなる保温部材を前記区画領域の底面部に対応する位置に設けることが好ましい。この製造方法によれば、前記保温部材によって、区画領域底面部に容易に温度分布を形成することができるため、液体材料中に先の対流を形成でき、機能層の膜厚の均一化を実現できる。
上記保温部材としては、アモルファスシリコンや金属材料を用いることができる。アモルファスシリコンは吸熱性を有するため、紫外線照射等の光照射手段を用いて保温部材を選択的に昇温させることができる。また金属材料は高い蓄熱性を有する材料からなるため、基体を加熱することによって保温部材を選択的に高温に保持でき、温度分布を容易に形成できる。特に、例えばシリコン酸化物などの熱伝導性の乏しい絶縁体中に熱伝導性の高い金属材料と配置することにより、金属材料における蓄熱性を向上させることができる。
本発明の電気光学装置の製造方法では、前記基体上に前記発光素子を駆動するためのスイッチング素子を形成する工程を含み、前記スイッチング素子を構成する半導体層と同層に、前記温度分布形成手段としてのアモルファスシリコン層を形成することもできる。この製造方法によれば、スイッチング素子を形成する工程において同時に温度分布形成手段を形成できるため、効率的な製造が可能になる。
本発明の電気光学装置の製造方法では、前記機能層形成工程に先立って、前記区画領域の底面部に凹部を形成する工程を含むことが好ましい。このように区画領域の底面部に凹部を形成する工程を有する製造方法とした場合、機能層を形成する工程は、当該凹部内に液体材料を配し、乾燥固化させる工程となる。係る乾燥工程において、基体側から加熱するならば、区画領域底面部のうち熱源に近い部位(中央部)では温度が高くなり、熱源から遠い部位(周縁部)では相対的に温度が低くなり、当該底面部に温度分布が形成される。そして、係る温度分布によって液体材料中に底面部面方向の対流を生じさせることができ、機能層の平坦化を実現できる。
本発明の電気光学装置の製造方法では、前記区画領域の底面部に前記発光素子の一の電極を成す画素電極を形成する工程と、該画素電極の表面を部分的に除去することにより該画素電極表面に凹部を形成する工程とを含むこともできる。
また本発明の電気光学装置の製造方法は、前記区画領域の底面部に相当する位置に、表面に凹部が形成された絶縁層を形成する工程と、前記絶縁層上の前記凹部を含む領域に、前記発光素子の一の電極を成す画素電極を形成する工程とを含むこともできる。
上記温度分布形成手段としての凹部を形成する工程には、上記各工程のいずれも好適に用いることができる。
次に、本発明の電子機器は、先の本発明の電気光学装置を備えたことを特徴としている。この構成によれば、その表示部において良好な輝度及び発光色の高画質表示が得られる電子機器が提供される。
(第1の実施形態)
[電気光学装置]
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。以下では、本発明の電気光学装置の一実施の形態として、電気光学素子としての有機EL素子(発光素子)を画素として基体上に配列してなる電気光学装置としての有機EL装置(有機エレクトロルミネッセンス装置)を例示して説明する。この有機EL装置は、例えば電子機器等の表示手段として好適に用いることができるものである。
図1は、本実施形態の有機EL装置の回路構成図、図2は、同有機EL装置に備えられた各画素領域71の平面構造を示す図であって、(a)は画素領域71のうち主にTFT等の画素駆動部分の構成を示す図、(b)は画素間を区画するバンク(仕切部材)等の構成を示す図である。また図3は、図2(a)のA−A線に沿う断面構成を示す図である。
図1に示すように、有機EL装置70は、透明の基板上に、複数の走査線131と、これら走査線131に対して交差する方向に延びる複数の信号線132と、これら信号線132に並列に延びる複数の共通給電線133とがそれぞれ配線されたもので、走査線131及び信号線132の各交点毎に、画素領域71が設けられて構成されたものである。
信号線132に対しては、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン、及びアナログスイッチ等を備えるデータ側駆動回路72が設けられている。一方、走査線131に対しては、シフトレジスタ及びレベルシフタ等を備える走査側駆動回路73が設けられている。また、画素領域71の各々には、走査線131を介して走査信号が供給されるゲート電極を含むスイッチング用TFT(薄膜トランジスタ)142と、このスイッチング用TFT(薄膜トランジスタ)142を介して信号線132から供給される画像信号を保持する保持容量capと、保持容量capによって保持された画像信号が供給されるゲート電極を含む駆動用TFT143と、この駆動用TFT143を介して共通給電線133に電気的に接続したときに共通給電線133から駆動電流が流れ込む画素電極141と、この画素電極141と共通電極154との間に挟み込まれる有機機能層140とが設けられている。そして、前記画素電極141と共通電極154と、有機機能層140とによって構成される素子が発光素子である。
このような構成のもとに、走査線131が駆動されてスイッチング用TFT142がオンとなると、そのときの信号線132の電位が保持容量capに保持され、該保持容量capの状態に応じて、駆動用TFT143のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用TFT143のチャネルを介して共通給電線133から画素電極141に電流が流れ、さらに発光部140を通じて共通電極154に電流が流れることにより、発光部140は、これを流れる電流量に応じて発光するようになる。
次に、図2(a)に示す画素領域71の平面構造をみると、画素領域71は、平面視略矩形状の画素電極141の四辺が、信号線132、共通給電線133、走査線131及び図示しない他の画素電極用の走査線によって囲まれた配置となっている。また、図3に示す画素領域71の断面構造をみると、基板(基体)P上に駆動用TFT143が設けられており、駆動用TFT143を覆って形成された複数の絶縁膜を介した基板P上に、発光素子200が形成されている。発光素子200は、基板P上に立設されたバンク(仕切部材)150に囲まれる領域内に設けられた有機機能層140を主体として構成され、この有機機能層140を、画素電極141と共通電極154との間に挟持した構成を備える。ここで、図2(b)に示す平面構造をみると、バンク150は、画素電極141の形成領域に対応する平面視略矩形状の区画領域151(開口部)を有しており、この区画領域151に先の有機機能層140が形成されるようになっている。
図3に示すように、駆動用TFT143は、半導体膜210に形成されたソース領域143a、ドレイン領域143b、及びチャネル領域143cと、半導体層表面に形成されたゲート絶縁膜220を介してチャネル領域143cに対向するゲート電極143Aとを主体として構成されている。半導体膜210及びゲート絶縁膜220上には、これらを覆う形にて第1層間絶縁膜230が形成されており、この第1層間絶縁膜230を貫通して半導体膜210に達するコンタクトホール232,234内に、それぞれドレイン電極236、ソース電極238が埋設され、各々の電極はドレイン領域143b、ソース領域143aに導電接続されている。第1層間絶縁膜230には、平坦化絶縁膜(第2層間絶縁膜)240が形成されており、この第2層間絶縁膜240に貫設されたコンタクトホールに画素電極141の一部が埋設されている。そして画素電極141とドレイン電極236とが導電接続されることで、駆動用TFT143と画素電極141とが電気的に接続されている。
画素電極141は、その表面に凹部141aを備えており、この画素電極141に一部乗り上げるようにして有機材料からなるバンク(仕切部材)150が形成されている。そして、バンク150の内壁面と凹部141aの周端部内面とが連続する壁面を形成しており、バンク150の内壁面と画素電極141の凹部141aとによって断面視略舟底形の凹部を成す区画領域151が構成されている。
上記発光素子200は、画素電極141上に正孔注入層(電荷輸送層)140Aと発光層140Bとを積層し、この発光層140Bとバンク150とを覆う共通電極154を形成することにより構成されている。本実施形態の場合、有機機能層140を構成する正孔注入層140A及び発光層140Bは画素電極141の凹部141a内に配置されている。また有機機能層140の側端部と当接する凹部141aの曲面部141bは曲面形状を成して形成されており、詳細は後述するが、係る曲面形状を具備していることで、液相法により正孔注入層140Aを形成する際に、この凹部141aの作用により正孔注入層140Aを平坦化できるようになっている。
基板Pとしては、いわゆるトップエミッション型の有機EL装置70の場合、発光素子200が配設された側から光を取り出す構成であるので、ガラス等の透明基板のほか、不透明基板も用いることができる。不透明基板としては、例えばアルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したもの、また熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、さらにはそのフィルム(プラスチックフィルム)などが挙げられる。
画素電極141は、基板Pを介して光を取り出すボトムエミッション型の場合には、ITO(インジウム錫酸化物)等の透光性導電材料により形成されるが、トップエミッション型の場合には透光性である必要はなく、金属材料等の適宜な導電材料によって形成できる。
共通電極154は、発光層140Bとバンク150の上面、さらにはバンク150の側壁面を覆った状態で基板P上に形成される。この共通電極154を形成するための材料としては、トップエミッション型の場合、透明導電材料が用いられる。透明導電材料としてはITOが好適であるが、他の透光性導電材料であっても構わない。
共通電極154の上層側には、陰極保護層を形成してもよい。係る陰極保護層を設けることで、製造プロセス時に共通電極154が腐食されるのを防止する効果が得られる。この陰極保護層は、無機化合物、例えば、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン窒酸化物等のシリコン化合物により形成できる。共通電極154を無機化合物からなる陰極保護層で覆うことにより、共通電極154への酸素等の侵入を良好に防止することができる。なお、陰極保護層は10nmから300nm程度の厚みに形成される。
上記構成を備えた本実施形態の有機EL装置70では、区画領域151に臨む画素電極141表面に凹部141aが形成され、係る凹部141a内に正孔注入層140A及び発光層140Bが形成されている。詳細は後段の製造方法の説明で述べるが、この凹部141aは、本実施形態の有機EL装置の製造に際して、正孔注入層140Aの液体材料が塗布される領域であり、塗布された液体材料を乾燥固化させる際に、前記液体材料中に所定の温度分布を形成するとともに、適切な方向の対流を生じさせる作用を奏する。その結果、形成材料が画素領域の周縁部に偏るのを防止でき、もって液体材料を均一な膜厚にて固化することができる。したがって、本実施形態の有機EL装置は、膜厚及び膜質の均一な正孔注入層140Aを備えたものとなり、また正孔注入層140A上に形成される発光層140Bの均一性も向上される。このような構成を備えたことで、本実施形態の有機EL装置は、ムラのない表示特性を得られるものとなっている。
また、有機EL装置70がトップエミッション型の有機EL装置であるならば、画素電極141は光反射性の金属膜により形成することができるため、凹部141a内に配された有機機能層140にて生じた光のうち、有機機能層140の側方へ伝搬した光をも効率よく表示光として利用することが可能である。つまり、有機機能層140の側端部から射出される光が、この側端部と当接する曲面形状の曲面部141bにより図3上側へ反射される結果、有機機能層140からの光取り出し効率が向上し、高輝度の表示を得ることが可能になる。
[電気光学装置の製造方法]
以下、本発明に係る電気光学装置の製造方法について図面を参照しながら説明する。本実施形態では、図1から図3に示した構成を備えた有機EL装置70を、液滴吐出法(インクジェット法)を用いて製造する方法を例示して説明する。なお、製造方法の説明に先立ち、有機EL装置70の製造に好適に使用できる液滴吐出装置について説明し、その後、各製造プロセスを説明することとする。
<液滴吐出装置>
図4は本発明の有機EL装置を製造する際に用いる液滴吐出装置を示す概略斜視図である。また、図5及び図6は液滴吐出装置に設けられた液滴吐出ヘッドを示す図である。
図4において、液滴吐出装置IJは、基板Pの表面(所定面)に液滴(インク滴)を配置可能な成膜装置であって、ベース12と、ベース12上に設けられ、基板Pを支持するステージ(ステージ装置)STと、ベース12とステージSTとの間に介在し、ステージSTを移動可能に支持する第1移動装置14と、ステージSTに支持されている基板Pに対して、有機機能層の形成材料を含む液滴を定量的に吐出(滴下)可能な液滴吐出ヘッド20と、液滴吐出ヘッド20を移動可能に支持する第2移動装置16とを備えている。液滴吐出ヘッド20の液滴の吐出動作や、第1移動装置14及び第2移動装置16の移動動作を含む液滴吐出装置IJの動作は制御装置CONTにより制御される。
第1移動装置14はベース12の上に設置されており、Y軸方向に沿って位置決めされている。第2移動装置16は、ベース12の後部12Aに立てられた支柱16A,16Aにより第1移動装置16の上方に支持されている。第2移動装置16のX軸方向は第1移動装置14のY軸方向と直交する方向である。ここで、Y軸方向はベース12の前部12Bと後部12A方向に沿った方向である。これに対してX軸方向はベース12の左右方向に沿った方向であり、各々水平である。また、Z軸方向はX軸方向及びY軸方向に垂直な方向である。
第1移動装置14は例えばリニアモータによって構成され、2本のガイドレール40と、これらのガイドレール40,40に沿って移動可能なスライダー42とを備えている。このリニアモータ形式の第1移動装置14のスライダー42はガイドレール40に沿ってY軸方向に移動して位置決め可能である。スライダー42はZ軸回り(θZ)用のモータ44を備えている。このモータ44は例えばダイレクトドライブモータであり、モータ44のロータはステージSTに固定されている。これにより、モータ44に通電することでロータとステージSTとはθZ方向に沿って回転してステージSTをインデックス(回転割り出し)することができる。すなわち、第1移動装置14はステージSTをY軸方向及びθZ方向に移動可能である。ステージSTは基板Pを保持し所定の位置に位置決めするものである。また、ステージSTは吸着保持装置50を有しており、吸着保持装置50が作動することによりステージSTに設けられた吸入孔46Aを通して基板PをステージSTの上に吸着して保持する。
第2移動装置16はリニアモータによって構成され、支柱16A,16Aに固定されたコラム16Bと、このコラム16Bに支持されているガイドレール62Aと、ガイドレール62Aに沿ってX軸方向に移動可能に支持されているスライダー60とを備えている。スライダー60はガイドレール62Aに沿ってX軸方向に移動して位置決め可能であり、液滴吐出ヘッド20はスライダー60に取り付けられている。
液滴吐出ヘッド20は揺動位置決め装置としてのモータ62,64,66,68を有している。モータ62を作動すれば、液滴吐出ヘッド20はZ軸に沿って上下動して位置決め可能である。このZ軸はX軸とY軸に対して各々直交する方向(上下方向)である。モータ64を作動すると、液滴吐出ヘッド20はY軸回りのβ方向に沿って揺動して位置決め可能である。モータ66を作動すると、液滴吐出ヘッド20はX軸回りのγ方向に揺動して位置決め可能である。モータ68を作動すると、液滴吐出ヘッド20はZ軸回りのα方向に揺動して位置決め可能である。すなわち、第2移動装置16は液滴吐出ヘッド20をX軸方向及びZ軸方向に移動可能に支持するとともに、この液滴吐出ヘッド20をθX方向、θY方向、θZ方向に移動可能に支持する。
このように、図4の液滴吐出ヘッド20は、スライダー60において、Z軸方向に直線移動して位置決め可能で、α、β、γに沿って揺動して位置決め可能であり、液滴吐出ヘッド20の吐出面20Pは、ステージST側の基板Pに対して正確に位置あるいは姿勢をコントロールすることができる。なお、液滴吐出ヘッド20の吐出面20Pには液滴を吐出する複数のノズルが設けられている。
図5は液滴吐出ヘッド20を示す分解斜視図である。液滴吐出ヘッド20は、複数のノズル81を有するノズルプレート80と、振動板85を有する圧力室基板90と、これらノズルプレート80と振動板85とを嵌め込んで支持する筐体88とを備えて構成されている。
液滴吐出ヘッド20の主要部構造は、図6の斜視図一部断面図に示すように、圧力室基板90をノズルプレート80と振動板85とで挟み込んだ構造とされている。ノズルプレート80のノズル81は、各々圧力室基板90に区画形成された圧力室(キャビティ)91に対応している。圧力室基板90には、シリコン単結晶基板等をエッチングすることにより、各々が圧力室として機能可能にキャビティ91が複数設けられている。キャビティ91同士の間は側壁92で分離されている。各キャビティ91は供給口94を介して共通の流路であるリザーバ93に繋がっている。振動板85は例えば熱酸化膜等により構成される。
振動板85にはタンク口86が設けられ、図4に示したタンク30からパイプ(流路)31を通じて任意の液滴を供給可能に構成されている。振動板85上のキャビティ91に相当する位置には圧電体素子87が配設されている。圧電体素子87はPZT素子等の圧電性セラミックスの結晶を上部電極および下部電極(図示せず)で挟んだ構造を備える。圧電体素子87は制御装置CONTから供給される吐出信号に対応して体積変化を発生可能に構成されている。
液滴吐出ヘッド20から液滴を吐出するには、まず、制御装置CONTが液滴を吐出させるための吐出信号を液滴吐出ヘッド20に供給する。液滴は液滴吐出ヘッド20のキャビティ91に流入しており、吐出信号が供給された液滴吐出ヘッド20では、その圧電体素子87がその上部電極と下部電極との間に加えられた電圧により体積変化を生ずる。この体積変化は振動板85を変形させ、キャビティ91の体積を変化させる。この結果、そのキャビティ91のノズル穴211から液滴が吐出される。液滴が吐出されたキャビティ91には吐出によって減った液体材料が新たに後述するタンク30から供給される。
本実施形態に係る液滴吐出装置IJに備えられた液滴吐出ヘッド20は、圧電体素子に体積変化を生じさせて液滴を吐出させる構成であるが、発熱体により液体材料に熱を加えその膨張によって液滴を吐出させるような構成であってもよい。
図4に戻り、基板P上に設けられる液体材料は、液体材料調整装置Sにより生成される。液体材料調整装置Sは、液体材料を収容可能なタンク30と、タンク30に取り付けられ、このタンク30に収容されている液体材料の温度を調整する温度調整装置32と、タンク30に収容されている液体材料を攪拌する撹拌装置33とを備えている。温度調整装置32はヒータにより構成されており、タンク30内の液体材料を任意の温度に調整する。温度調整装置32は制御装置CONTにより制御され、タンク30内の液体材料は温度調整装置32により温度調整されることで所望の粘度に調整される。
タンク30はパイプ(流路)31を介して液滴吐出ヘッド20に接続しており、液滴吐出ヘッド20から吐出される液体材料の液滴はタンク30からパイプ31を介して供給される。
なお、図4には液滴吐出ヘッド20及び液体材料調整装置Sのそれぞれが1つだけ図示されているが、液滴吐出装置IJには複数の液滴吐出ヘッド20及び液体材料調整装置Sが設けられており、これら複数の液滴吐出ヘッド20のそれぞれから異種または同種の液体材料の液滴が吐出されるようになっている。そして、基板Pに対してこれら複数の液滴吐出ヘッド20のうち、第1の液滴吐出ヘッドから第1の液体材料を吐出した後、これを焼成又は乾燥し、次いで第2の液滴吐出ヘッドから第2の液体材料を基板Pに対して吐出した後これを焼成又は乾燥し、以下、複数の液滴吐出ヘッドを用いて同様の処理を行うことにより、基板P上に複数の材料層が積層され、多層パターンを形成できるようになっている。
<有機EL装置の製造方法>
次に、上述した液滴吐出装置IJを用いた有機EL装置(電気光学装置)の製造方法について説明するが、以下に示す手順や液体材料の材料構成は一例であってこれに限定されるものではない。
以下、上記有機EL装置70の製造方法について図7ないし図9を参照して説明する。なお、図7から図9には、説明を簡略化するために単一の画素領域71についてのみ図示しているが、有機EL装置70の各画素領域71において共通の画素構成を有しているものとする。本発明に係る有機EL装置では、発光素子の光を基板側から取り出す構成(ボトムエミッション)、及び基板と反対側から取り出す構成(トップエミッション)のいずれも採用できるが、本実施形態ではトップエミッション型の有機EL装置として説明する。
まず、図7(a)に示すように、基板P上に駆動用TFT143を形成する。トップエミッション型では、基板は不透明であってもよいため、アルミナ等のセラミックス、ステンレス等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したもの、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂なども用いることができるが、従来から液晶装置等に用いられているガラス基板であってもよい。
上記駆動用TFT143の作製手順は、例えば以下のような工程による。
まず、基板Pに対し、必要に応じてTEOS(テトラエトキシシラン)や酸素ガスなどを原料としてプラズマCVD法により厚さ約200〜500nmのシリコン酸化膜からなる下地保護膜(図示せず)を形成しておく。その後、基板温度を350℃程度に設定して基板Pの表面にプラズマCVD法により厚さ約30〜70nmのアモルファスシリコン膜を形成し、公知のフォトリソグラフィ技術を用いてパターニングすることで半導体膜210を形成する。そしてこの半導体膜210を、レーザアニールまたは固相成長法などによる結晶化工程に供することで結晶化してポリシリコン膜とする。レーザアニール法では、例えばエキシマレーザであってビームの長寸が400mmのラインビームを用いることができ、その出力強度は例えば200mJ/cmである。ラインビームについては、その短寸方向におけるレーザ強度のピーク値の90%に相当する部分が各領域毎に重なるようにラインビームを走査する。
次いで、半導体膜210及び基板Pの表面に対して、TEOSや酸素ガスなどを原料としてプラズマCVD法により厚さ約60〜150nmのシリコン酸化膜または窒化膜からなるゲート絶縁膜220を形成する。なお、半導体膜210は、図3に示した駆動用TFT143のチャネル領域及びソース・ドレイン領域となるものであるが、異なる断面位置においてはスイッチング用TFT142のチャネル領域及びソース・ドレイン領域となる半導体膜も形成されている。つまり、図7(a)に示す駆動用TFT143を作製する工程では、2種類のトランジスタ142、143が同時に作製される。
次に、アルミニウム、タンタル、モリブデン、チタン、タングステンなどの金属膜、ないしこれらの積層膜からなる導電膜をスパッタ法等により形成した後、パターニングすることで、ゲート電極143Aを形成する。続いて、半導体膜210に対して、高濃度のリンイオンを打ち込むことで、ゲート電極143Aに対して自己整合的にソース・ドレイン領域143a、143bを形成する。このとき、ゲート電極143Aにより遮蔽されて不純物が導入されなかった部分がチャネル領域143cとなる。その後、半導体膜210及び基板P表面を覆う層間絶縁膜230を形成する。
次に、層間絶縁膜230を貫通するコンタクトホール232及び234を形成し、これらコンタクトホール232及び234内にドレイン電極236及びソース電極238を埋め込むように形成し、駆動用TFT143を得る。ここで、層間絶縁膜230上においてソース電極238に接続するように、不図示の共通給電線(配線)や走査線も形成しておく。さらに、層間絶縁膜230、及び各配線の上面を覆うように第2層間絶縁膜240を形成し、この第2層間絶縁膜240を貫通してドレイン電極236に達するコンタクトホール245aを貫設する。
上記の工程によって第2層間絶縁膜240を形成したならば、次に、図7(b)に示すように、コンタクトホール245aを含む領域に、公知のフォトリソグラフィ技術を用いて画素電極141をパターン形成する。これにより、先の図2(a)に示したような信号線、共通給電線、及び走査線に囲まれた位置に、ドレイン電極236を介して駆動用TFT143のドレイン領域143bと導電接続された画素電極141が形成される。
本実施形態の場合、有機EL装置70はトップエミッション型であるため、画素電極141は透明導電膜である必要はなく、金属材料により形成することができる。画素電極141をアルミニウムや銀等の光反射性の金属膜を含む構成とすれば、この画素電極に入射した光を反射させて観察者側へ射出できるようになる。本有機EL装置70では、画素電極141は陽極として機能するので、仕事関数が4.8eV以上の材料で形成することが好ましく、具体例を挙げるならば、ITO/Alの積層膜、Au、Pt等からなる金属膜で形成するのがよい。なお、この画素電極141の形成に先立って、第2層間絶縁膜240の表面を清浄化する処理(例えば酸素プラズマ処理、UV照射処理、オゾン処理等)を施しておいてもよい。これにより、画素電極141と第2層間絶縁膜240との密着性を向上させることができる。
次に、図7(c)に示すように、マスク材290をフォトレジスト等を用いてパターン形成する。マスク材290には、画素電極141の平面領域内に配される開口部290aを設けておく。続いて、図7(d)に示すように、マスク材290を介したエッチング処理を施すことにより画素電極141の表面を部分的に除去し、画素電極141表面に凹部141aを形成する。このとき、エッチング処理としてウェットエッチングやフッ素系ガスを用いたドライエッチングのような等方的なエッチング処理を行うことで、開口部290a内に露出されている画素電極141は、開口部290aより広い範囲でエッチングされる。このようにして、凹部141aの周縁部に曲面形状の曲面部141bを形成する。
また、上記エッチング処理において、エッチング速度を高める、あるいはマスク材290と画素電極141との密着性を若干弱くしておくことで、より効率的に曲面形状の曲面部141bを形成することが可能になる。エッチング速度を高める場合、画素電極141がITO膜からなるものであれば、水素ガスによるイオンドープを行うことで、画素電極のエッチング速度を高めることができる。
上記エッチング処理が終了したならば、マスク材290を除去しておく。
次に、図8(a)に示すように、第2層間絶縁膜240上に、アクリル、ポリイミド等の有機絶縁材料からなるバンク150をパターン形成する。バンク150の高さは、例えば1〜2μm程度に設定され、基板P上で発光素子の仕切部材として機能する。またバンク150は、画素電極141に一部乗り上げるようにして形成されており、バンク150の内壁面が凹部141の曲面部141bとほぼ連続した壁面を成すように画素電極141の凹部141aに対して位置合わせされる。
上記構成のもと、発光素子の正孔注入層や発光層の形成場所、すなわちこれらの形成材料の塗布位置とその周囲のバンク150との間に十分な高さの段差からなる区画領域151(開口部)が形成される。
なお、本実施形態では省略しているが、画素電極141とバンク151との間に、酸化シリコン等の無機絶縁材料からなる無機バンクを形成してもよいのは勿論であり、係る無機バンクを設ける場合には、無機バンクの一部が区画領域151内に露出されるように画素電極141、無機バンク、及びバンク150を配置するのがよい。そして、この無機バンクを設けるならば、後段の工程で画素電極141上に塗布される液体材料を画素電極上に均一に濡れ広がらせることができる。
無機バンクを形成する場合、バンク150の形成に先立って、画素電極141及び第2層間絶縁膜240を覆うように酸化シリコン膜を形成した後、公知のフォトリソグラフィ技術を用いて酸化シリコン膜をパターニングし、画素電極141の表面を部分的に開口させる形成方法が採用できる。
バンク150を形成したならば、次に、バンク150及び画素電極141を含む基板上の領域に対して撥液処理を施す。バンク150は、発光素子を区画する仕切部材として機能するので、液滴吐出ヘッド20から吐出される液体材料に対して非親和性(撥液性)を示すものであることが好ましく、前記撥液処理により、バンク150に選択的に非親和性を発現させることができる。係る撥液処理として、例えばバンクの表面をフッ素系化合物などで表面処理するといった方法を採用できる。フッ素化合物としては、例えばCF、SF、CHFなどがあり、表面処理としては、例えばプラズマ処理、UV照射処理などが挙げられる。
このような撥液処理では、基体の一面側全体に処理を施したとしても、ITO膜や金属膜からなる無機材料の画素電極141表面は有機材料からなるバンク150の表面よりも撥液化されにくく、バンク150の表面のみが選択的に撥液化され、バンク150に囲まれる領域内に液体材料に対する親和性の異なる複数の領域が形成される。
なお、バンク150自体をフッ素化合物含有の樹脂材料等により形成しておけば、上記撥液処理を行わなくともバンク150の表面に撥液性を発現させることが可能である。
次に、図8(b)に示すように、基板Pの上面を上に向けた状態で正孔注入層形成材料を含む液体材料114aを液滴吐出ヘッド20によりバンク150に囲まれた塗布位置に選択的に塗布する。正孔注入層を形成するための液体材料114aは図4に示した液体材料調整装置Sにより調製され、正孔注入層形成材料及び溶媒を含む。
正孔注入層形成材料としては、ポリマー前駆体がポリテトラヒドロチオフェニルフェニレンであるポリフェニレンビニレン、1,1−ビス−(4−N,N−ジトリルアミノフェニル)シクロヘキサン、トリス(8−ヒドロキシキノリノール)アルミニウム、ポリスチレンスルフォン酸等を例示することができる。また、溶媒としては、イソプロピルアルコール、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−イミダゾリノン等の極性溶媒を例示することができる。
上述した正孔注入層形成材料を含む液体材料114aが液滴吐出ヘッド20より基板P上に吐出されると、流動性が高いため水平方向に広がろうとするが、塗布された位置を囲んでバンク150が形成されているので、液体材料114aはバンク150を越えてその外側に広がらないようになっている。また本実施形態では、画素電極141の表面が親液領域となっているので、画素電極141上に塗布された液体材料114aは画素電極141上で濡れ広がり、撥液性のバンク150と画素電極141との境界より内側の画素電極141上に保持される。
上記液体材料114aを塗布したならば、図8(c)に示すように、基板Pの図示下面側に配設された加熱手段(ヒータ等)300により基板Pを加熱し、液体材料114aを乾燥固化させる。乾燥条件の一例を挙げると、大気環境下又は窒素ガス雰囲気下において所定温度及び時間(一例として200℃、10分)の焼成を行う。あるいは大気圧より低い圧力環境下(真空環境下)に配置することで溶媒の除去を促進してもよい。
この乾燥工程において、画素電極141上に塗布されている液体材料114aは、その液面が徐々に低下し、最終的に固化されて正孔注入層140Aを構成する。このとき、液体材料114aは、乾燥初期にはバンク150の区画領域151内で断面凸形の液面を形成しているが、その液面は時間経過に伴い徐々に下降する。従来の有機EL装置では、液面の下降に伴って液体材料が画素領域の周縁部側に偏って配置され、その結果膜厚ムラが生じていた。これは、バンク表面は撥液化されているとはいえ表面張力があるため、この表面張力によって液体材料が画素電極周縁部に引っ張られるためであると考えられる。
これに対して、本実施形態では、画素電極141表面に凹部141aが形成されており、さらに凹部141aの周縁部に曲面形状を成す曲面部141bが形成されているので、図示の如く画素電極141の厚さが、その中心部と周縁部とで異なっており、そのため画素電極141を介して液体材料114aに伝わる熱量も前記中心部と周縁部とで異なることとなる。このような温度分布が凹部141a上で生じる結果、液体材料114a中に、図8(c)に示すような中心部から周縁部に向かう対流が生じ、さらにこの対流は曲面形状の曲面部141bに導かれて図示上方向へ流れるようになっている。
そして、液体材料114aの内部に円滑に流動する対流が形成されることで、液体材料114aを画素周縁部側へ引き寄せる表面張力の作用にも関わらず、液体材料114aは画素電極141上で均一に乾燥され、均一な膜厚の正孔注入層140Aを形成する。
続いて、図9(a)に示すように、基板Pの上面を上に向けた状態で液滴吐出ヘッド20より発光層形成材料と溶媒とを含む液体材料114bをバンク150内の正孔注入層140A上に選択的に塗布する。この発光層形成材料としては、例えば共役系高分子有機化合物の前駆体と、得られる発光層の発光特性を変化させるための蛍光色素とを含んでなるものを好適に用いることができる。共役系高分子有機化合物の前駆体は、蛍光色素等とともに液滴吐出ヘッド20から吐出されて薄膜に成形された後、加熱硬化されることによって共役系高分子有機EL層となる発光層を生成し得るものをいい、例えば前駆体のスルホニウム塩の場合、加熱処理されることによりスルホニウム基が脱離し、共役系高分子有機化合物となるもの等である。
このような共役系高分子有機化合物は固体で強い蛍光を持ち、均質な固体超薄膜を形成することができる。しかも形成能に富みITO電極との密着性も高い。さらに、このような化合物の前駆体は、硬化した後は強固な共役系高分子膜を形成することから、加熱硬化前においては前駆体溶液を後述する液滴吐出パターニングに適用可能な所望の粘度に調整することができ、簡便かつ短時間で最適条件の膜形成を行うことができる。
上記前駆体としては、例えばPPV(ポリ(パラ−フェニレンビニレン))またはその誘導体の前駆体が好ましい。PPVまたはその誘導体の前駆体は、水あるいは有機溶媒に可溶であり、また、ポリマー化が可能であるため光学的にも高品質の薄膜を得ることができる。さらに、PPVは強い蛍光を持ち、また二重結合のπ電子がポリマー鎖上で非極在化している導電性高分子でもあるため、高性能の発光素子を得ることができる。
上記PPVまたはPPV誘導体の前駆体として、例えばPPV(ポリ(パラ−フェニレンビニレン))前駆体、MO−PPV(ポリ(2,5−ジメトキシ−1,4−フェニレンビニレン))前駆体、CN−PPV(ポリ(2,5−ビスヘキシルオキシ−1,4−フェニレン−(1−シアノビニレン)))前駆体、MEH−PPV(ポリ[2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキシルオキシ)]−パラ−フェニレンビニレン)前駆体等が挙げられる。
PPVまたはPPV誘導体の前駆体は、前述したように水に可溶であり、成膜後の加熱により高分子化してPPV層を形成する。前記PPV前駆体に代表される前駆体の含有量は、液体材料組成物全体に対して0.01〜10.0wt%が好ましく、0.1〜5.0wt%がさらに好ましい。前駆体の添加量が少な過ぎると共役系高分子膜を形成するのに不十分であり、多過ぎると液体材料組成物の粘度が高くなり、液滴吐出法(インクジェット法)による精度の高いパターニングに適さない場合がある。
さらに、発光層形成材料としては、少なくとも1種の蛍光色素を含むのが好ましい。これにより、発光層の発光特性を変化させることができ、例えば、発光層の発光効率の向上、または光吸収極大波長(発光色)を変えるための手段としても有効である。すなわち、蛍光色素は単に発光層材料としてではなく、発光機能そのものを担う色素材料として利用することができる。例えば、共役系高分子有機化合物分子上のキャリア再結合で生成したエキシトンのエネルギーをほとんど蛍光色素分子上に移すことができる。この場合、発光は蛍光量子効率が高い蛍光色素分子からのみ起こるため、発光層の電流量子効率も増加する。したがって、発光層の形成材料中に蛍光色素を加えることにより、同時に発光層の発光スペクトルも蛍光分子のものとなるので、発光色を変えるための手段としても有効となる。
なお、ここでいう電流量子効率とは、発光機能に基づいて発光性能を考察するための尺度であって、式(ηE=放出されるフォトンのエネルギー/入力電気エネルギー)により定義される。そして、蛍光色素のドープによる光吸収極大波長の変換によって、例えば赤、青、緑の3原色を発光させることができ、その結果フルカラー表示体を得ることが可能となる。さらに蛍光色素をドーピングすることにより、EL素子の発光効率を大幅に向上させることができる。
蛍光色素としては、赤色発光層を形成する場合、赤色に発光するローダミンまたはローダミン誘導体を好ましく用いることができる。これらの蛍光色素は、低分子であるため水溶液に可溶であり、またPPVと相溶性がよく、均一で安定した発光層の形成が容易である。このような蛍光色素として具体的には、ローダミンB、ローダミンBベース、ローダミン6G、ローダミン101過塩素酸塩等が挙げられ、これらを2種以上混合したものであってもよい。
また、緑色発光層を形成する場合、緑色に発光するキナクリドンおよびその誘導体を好ましく用いることができる。これらの蛍光色素は前記赤色蛍光色素と同様、低分子であるため水溶液に可溶であり、またPPVと相溶性がよく発光層の形成が容易である。
さらに、青色発光層を形成する場合、青色に発光するジスチリルビフェニルおよびその誘導体を好ましく用いることができる。これらの蛍光色素は前記赤色蛍光色素と同様、低分子であるため水・アルコール混合溶液に可溶であり、またPPVと相溶性がよく発光層の形成が容易である。
また、青色に発色する他の蛍光色素としては、クマリンおよびその誘導体を挙げることができる。これらの蛍光色素は、前記赤色蛍光色素と同様、低分子であるため水溶液に可溶であり、またPPVと相溶性がよく発光層の形成が容易である。このような蛍光色素として具体的には、クマリン、クマリン−1、クマリン−6、クマリン−7、クマリン120、クマリン138、クマリン152、クマリン153、クマリン311、クマリン314、クマリン334、クマリン337、クマリン343等が挙げられる。
さらに、別の青色の発色光を有する蛍光色素としては、テトラフェニルブタジエン(TPB)またはTPB誘導体を挙げることができる。これらの蛍光色素は、前記赤色蛍光色素等と同様、低分子であるため水溶液に可溶であり、またPPVと相溶性がよく発光層の形成が容易である。
以上の蛍光色素については、各色ともに1種のみを用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。
これらの蛍光色素については、前記共役系高分子有機化合物の前駆体固型分に対し、0.5〜10wt%添加するのが好ましく、1.0〜5.0wt%添加するのがより好ましい。蛍光色素の添加量が多過ぎると発光層の耐候性および耐久性の維持が困難となり、一方、添加量が少なすぎると、前述したような蛍光色素を加えることによる効果が十分に得られないからである。
また、前記前駆体および蛍光色素については、極性溶媒に溶解または分散させて液体材料とし、この液体材料を液滴吐出ヘッド20から吐出するのが好ましい。極性溶媒は、前記前駆体、蛍光色素等を容易に溶解または均一に分散させることができるため、液滴吐出ヘッド20のノズル孔での発光層形成材料中の固型分が付着したり目詰りを起こすのを防止することができる。
このような極性溶媒として具体的には、水、メタノール、エタノール等の水と相溶性のあるアルコール、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルイミダゾリン(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、2,3−ジヒドロベンゾフラン等の有機溶媒または無機溶媒が挙げられ、これらの溶媒を2種以上適宜混合したものであってもよい。
更に、前記形成材料中に湿潤剤を添加しておくのが好ましい。これにより、形成材料が液滴吐出ヘッド20のノズル孔で乾燥・凝固することを有効に防止することができる。かかる湿潤剤としては、例えばグリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールが挙げられ、これらを2種以上混合したものであってもよい。この湿潤剤の添加量としては、形成材料の全体量に対し、5〜20wt%程度とするのが好ましい。
なお、その他の添加剤、被膜安定化材料を添加してもよく、例えば、安定剤、粘度調整剤、老化防止剤、pH調整剤、防腐剤、樹脂エマルジョン、レベリング剤等を用いることができる。
上記、液体材料114bを液滴吐出ヘッド20から吐出することによる発光層の形成は、赤色の発色光を発光する発光層形成材料を含む液体材料、緑色の発色光を発光する発光層形成材料を含む液体材料、青色の発色光を発光する発光層形成材料を含む液体材料を、それぞれ対応する画素領域71(区画領域151)に吐出し塗布することによって行う。なお、各色に対応する画素領域71は、これらが規則的な配置となるように予め決められている。
このようにして各色の発光層形成材料を含む液体材料114bを吐出し塗布したならば、先の正孔注入層140Aの形成工程と同様にして液体材料114b中の溶媒を蒸発させる。この工程により、図9(b)に示すように正孔注入層140A上に固形の発光層140Bが形成され、これにより正孔注入層140Aと発光層140Bとからなる有機機能層140が得られる。
ここで、発光層形成材料を含む液体材料114b中の溶媒の蒸発については、必要に応じて加熱あるいは減圧等の処理を行うが、発光層形成材料は通常乾燥性が良好で速乾性であることから、特にこのような処理を行なわなくても構わない。したがって各色の発光層形成材料を順次吐出塗布することにより、その塗布順に各色の発光層140Bを形成することができる。また先に記載のように、液体材料114bが配される正孔注入層140Aの表面は、平坦面に形成されているので、その上に形成される発光層140Bも高い平坦性をもって形成される。
その後、図9(c)に示すように、基板Pの表面全体に、あるいはストライプ状に、ITO等の透明導電材料からなる共通電極154を形成する。こうして、発光素子200を製造することができる。なお、本実施形態において発光素子200は画素電極141と正孔注入層140Aと発光層140Bと共通電極154とを含むものである。
このような発光素子の製造方法において、正孔注入層140Aや発光層140Bといった発光素子の構成要素となる薄膜は液滴吐出装置IJにより製造されるので、正孔注入層140Aや発光層140Bの形成材料となる液体材料のロスは少なく、正孔注入層140Aや発光層140Bは比較的安価にしかも安定して形成される。
ところで、図9(c)に示すように、形成された駆動用TFT143と発光素子200とは基板Pの法線方向において重なり合わないように配置されているが、発光層からの光を基板Pと反対側から取り出す所謂トップエミッション構造では、駆動用TFT143と発光素子とが重なり合っていても問題ない。トップエミッション構造においてはバンク150の下方に薄膜トランジスタを配置する必要がなく、バンク150の形成領域を小さくすることができるとともに発光素子の形成領域を大きくすることができるので、発光面積を大きくすることができる。
以上説明したように、本発明に係る製造方法によれば、基板P上にバンク150及び発光素子200を形成するに際して、画素電極141表面に、曲面形状の曲面部141bを有する凹部141aを形成しておき、その後バンク150の内部に液体材料114aを配するので、画素電極141表面に配された液体材料中に所定方向の対流が誘起され、液体材料が画素電極141周縁部側へ誘導されるのを防止することができる。これにより、得られる正孔注入層140Aや発光層140Bは、均一な膜厚にて平坦に形成される。したがって、表示ムラが生じ難く、信頼性の高い発光素子200を製造することができる。
上記実施形態では、液滴吐出装置IJを用いた液滴吐出法により液体材料を塗布することで有機機能層140を形成する場合について説明したが、液滴吐出法に限らず、例えばスピンコート法、スリットコート(或いはカーテンコート)法、ダイコート法など他の塗布方法を用いることもできる。また、液体材料の生成工程や成膜工程は大気環境下で行ってもよいし窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。なお、液体材料調整装置Sによる液体材料の生成工程や液滴吐出装置IJによる成膜工程はクリーンルーム内でパーティクル及びケミカル的にクリーン度を維持された環境下で行うのが望ましい。
また、本実施の形態では、正孔注入層140Aや発光層140Bを液相法で形成する場合について説明しているが、例えば画素毎に着色材料を液相法にて形成し、カラーフィルタを形成する場合にも本発明の製造方法を採用することができる。その他、例えば液晶装置等の電気光学装置において、液相法にて画素毎に材料形成を行う場合にも本発明の製造方法を好適に用いることができる。
(第2の実施形態)
上記実施の形態では、画素電極141表面に凹部141aを形成し、この凹部141a内に液体材料114aを配することで、正孔注入層140Aを形成する場合について説明したが、本発明に係る電気光学装置においては、図10に示す構成も適用できる。以下、図10を参照して本発明の第2の実施形態について説明する。なお、図10において先の図1〜図9と同一の符号を付された構成要素は同様の構成であり、その詳細な説明は省略することとする。
図10は、本発明に係る電気光学装置の第2の実施形態である有機EL装置を示す図であって、先の実施形態の図8(c)に相当する断面構成図である。同図に示す有機EL装置は、第2層間絶縁膜240及び画素電極141の構成において先の第1実施形態と異なっており、具体的には、第2層間絶縁膜240表面のうち、発光素子200が形成されるべき領域に凹部240aが形成されている。そして、この凹部240aを含む平面領域に、画素電極141が形成される結果、画素電極141表面に、凹部240aに倣う凹部141aが形成されている。また、第2層間絶縁膜240の周縁部に、曲面形状の曲面部240bが形成されており、画素電極141の凹部141a周縁部には、前記曲面部240bに倣う曲面形状の曲面部141bが形成されている。画素領域間を区画する仕切部材たるバンク150は、画素電極141の凹部141aを取り囲んで形成され、その内壁面は、凹部141aの曲面部141bとほぼ連続した壁面を成している。
すなわち、図10に示す本実施形態の有機EL装置では、画素電極141表面の凹部141aが、下層側(基板P側)の第2層間絶縁膜240に形成された凹部240aに起因して形成されている以外は、先の実施形態と同様の構成である。
上記第2層間絶縁膜240表面の凹部240aは、第2層間絶縁膜240が酸化シリコン等の無機絶縁材料により形成されている場合には、先の第1実施形態における画素電極141のエッチング処理(図7(d)参照)と同様の等方的なエッチング処理を、画素電極141の形成に先立って第2層間絶縁膜240に施すことで形成できる。あるいは、第2層間絶縁膜240を樹脂材料により形成し、スタンパ技術やプレス加工等による形状転写法を用いて凹部240aを形成してもよい。
上記構成において、正孔注入層140Aを液相法により形成する場合、図10に示すように、画素電極141表面の凹部141a内に液体材料114aを配し、この液体材料114aを乾燥させて固形の正孔注入層140Aを形成する。そして本実施形態に係る乾燥工程においても、上記凹部141aの作用により、液体材料114a中に円滑に流動する対流が形成されるので、表面張力によって液体材料が画素周縁部に引っ張られるのを防止することができ、もって均一な膜厚の正孔注入層140Aを得られるようになっている。また正孔注入層140Aが平坦化される結果、その上層に形成される発光層140Bも均一な膜厚に形成できる。したがって本実施形態によれば、均一な膜厚、膜質を有し、発光ムラが生じ難く、信頼性に優れた発光素子200を形成することができる。
また、本実施形態の如く第2層間絶縁膜240表面に凹部240aを形成する場合、上述した第2層間絶縁膜240の表面を部分的に除去する方法のほか、駆動用TFT143が設けられた回路層の凹凸形状を利用する方法も適用できる。この場合、発光素子200が形成されるべき領域を取り囲む配線(信号線132や走査線133)を覆う第2層間絶縁膜240を、前記配線による段差を平坦化しない膜厚にて、プラズマCVD法や塗布法を用いて形成すれば、前記配線による段差に起因する凸状部を表面に具備した第2層間絶縁膜240が得られる。そして、これらの凸状部に囲まれる領域には、相対的に凹んだ形状の凹部240aが形成されることとなる。このように回路層の凹凸に起因する凸状部によって凹部240aを形成するならば、凹部240aの周縁部は必然的になだらかな曲面形状を成すこととなるので、画素電極141上に配した液体材料114aの対流を促進し得る構造を具備した有機EL装置を容易に得ることができる。
(第3の実施形態)
次に、図11は、本発明に係る電気光学装置の第3の実施形態である有機EL装置を示す断面構成図であって、先の実施形態の図9(c)に相当する断面構成図である。同図において図2及び図3と同一の構成要素には同一の符号を付して示している。
本実施形態の有機EL装置は、図11に示すように、図2及び図3に示した有機EL装置における画素電極141の下層側(基板P側)に、吸熱性又は蓄熱性を有する材料からなる保温部材146が設けられたものである。この保温部材146は、例えばアモルファスシリコンからなるものとされ、画素電極141の凹部141aの平面領域内で部分的に設けられており、平面視で凹部141aの略中心部に配置されている。
上記構成を備えた本実施形態の有機EL装置の製造に際しては、図12に示すように、区画領域151内の凹部141a上に配された液体材料114aを乾燥させる工程において、基板P側から区画領域151に対して紫外線Lを照射する。すると、画素電極141の下層側(紫外線Lから見て手前側)には、アモルファスシリコンからなる保温部材146が設けられているので、保温部材146が紫外線Lを吸収して昇温される。アモルファスシリコンは、レーザアニールによる多結晶化に見られるように、紫外線に対する光吸収が大きいことが知られており、係る保温部材146の構成材料として好適である。ただし、アモルファスシリコンが溶融する温度まで紫外線強度を増加させると、アブレーションによる剥離が生じ素子を破壊したり、保温部材が500℃以上の高温になり有機材料を劣化させるおそれが生じるため、保温部材146の温度が100℃〜200℃程度となるように紫外線Lの強度を調整することが好ましい。
上記紫外線照射を行うと、保温部材146の温度上昇により、凹部141a上に配されている液体材料114aに対して温度分布が生じ、それによって図11に示すような凹部141aの中心部から周縁部に向かう対流が生じる。また凹部141aの周縁部には曲面形状を成す曲面部141bが形成されているので、上記対流は曲面部141bの形状に沿って図示上方へ円滑に流れるようになっている。これにより、バンク150等の表面張力によって液材料114aが画素領域周縁部に偏るのを防止し、均一な膜厚の正孔注入層140Aを形成することができる。
なお、本実施形態では保温部材146がアモルファスシリコンからなるものとされ、第2層間絶縁膜240中に形成されている場合について図示して説明したが、保温部材146の材質及び配設位置は、上記構成に限定されるものではない。例えば、保温部材146をアモルファスシリコンにより形成する場合、TFT143等を構成する半導体層210と同層に保温部材146を形成することができる。
また、保温部材146は、金属材料により形成することができ、この場合、図11に示すように第2層間絶縁膜240中に設けてもよく、ソース電極238やドレイン電極236、あるいはゲート電極143Aと同層に設けることもできる。保温部材146をTFT143や配線を構成する金属材料からなる層と同層に形成すれば、製造工程を効率化できる。特に、例えばシリコン酸化物などの熱伝導性の乏しい絶縁体中に熱伝導性の高い金属材料と配置することにより、金属材料における蓄熱性を向上させることができる。
保温部材146を金属材料により形成する場合には、保温部材146は吸熱性よりむしろ良好な蓄熱性を呈するものとなるため、図11に示した紫外線Lの照射に代えて、図10に示したようなヒータ等の加熱手段300による加熱によって乾燥工程を行うことが好ましい。加熱手段300により基板Pを加熱すれば、蓄熱性を有する材料からなる保温部材146が設けられた部位の液体材料114aの温度が相対的に高くなるため、図11に示すように凹部141aの中心部から周縁部に向かう対流を生じさせることができ、先の実施形態と同様に、正孔注入層140Aの平坦化を達成することができる。
また、上記第3の実施形態では、画素電極141に凹部141aが設けられている構成としたが、本実施形態の如く保温部材146を具備した有機EL装置においては、保温部材146によって効率よく温度分布が形成され、液体材料114a中に図示のような対流を生じさせることができるため、凹部141aを設けない構成としてもよい。
(第4の実施形態)
次に、図12は、本発明に係る電気光学装置の第4の実施形態である有機EL装置を示す断面構成図であって、先の実施形態の図9(c)に相当する断面構成図である。同図において図2及び図3と同一の構成要素には同一の符号を付して示している。
図12に示す有機EL装置は、図11に示した第3実施形態の有機EL装置と同様、保温部材146を具備した有機EL装置であるが、駆動用TFT143の基板P側に遮光膜(遮光部材)205が形成されている点で異なっている。より詳細には、基板P上に遮光膜205が形成され、遮光膜205を覆って下地絶縁膜207が形成されている。そして、下地絶縁膜207上に部分的に形成された半導体層210により駆動用TFT143が構成されている。駆動用TFT143から上側の発光素子200等の構成は先の第3実施形態と同様である。
上記構成を備えた本実施形態の有機EL装置によれば、TFT143を基板P側から見て覆う位置に遮光膜205が形成されているので、区画領域151に配された液体材料114aを乾燥固化させる工程において、基板P側から紫外線Lを照射した場合に、TFT143の半導体層210に紫外線Lが入射しないようにすることができる。これにより、紫外線Lによる半導体層210やソース/ドレイン領域143a、143bの変質等を効果的に防止でき、歩留まりよく有機EL装置を製造することが可能になる。
(電子機器)
図13は、本発明に係る電子機器の一例を示す斜視構成図である。
図13に示す映像モニタ1200は、先の実施形態の有機EL表示装置(表示装置)を備えた表示部1201と、筐体1202と、スピーカ1203等を備えて構成されている。そして、この映像モニタ1200は、先の有機EL装置70により高画質でムラの少ない表示が可能である。
上記実施の形態の有機EL装置は、上記携帯電話に限らず、電子ブック、パーソナルコンピュータ、デジタルスチルカメラ、ビューファインダ型あるいはモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等々の画像表示手段として好適に用いることができ、いずれの電子機器においても、ムラのない均一な表示を得ることができる。
第1実施形態に係る有機EL装置の回路構成図。 同、平面構成図。 図2のA−A線に沿う断面構成図。 液滴吐出装置の斜視構成図。 液滴吐出ヘッドの説明図。 液滴吐出ヘッドの説明図。 第1実施形態に係る有機EL装置の製造工程を示す断面構成図。 第1実施形態に係る有機EL装置の製造工程を示す断面構成図。 第1実施形態に係る有機EL装置の製造工程を示す断面構成図。 第2実施形態に係る有機EL装置の製造工程を示す断面構成図。 第3実施形態に係る有機EL装置の製造工程を示す断面構成図。 第4実施形態に係る有機EL装置の製造工程を示す断面構成図。 電子機器の一例を示す斜視構成図。
符号の説明
20…液滴吐出ヘッド、70…有機EL装置(電気光学装置)、71…画素、114a,114b…液体材料、140…有機機能層(機能層)、141…画素電極、141a…凹部、141b…内壁部、230…第1層間絶縁膜、240…第2層間絶縁膜、240a…凹部、240b…内壁部、142…スイッチング用TFT、143…駆動用TFT、150…バンク(仕切部材)、154…共通電極、200…発光素子、IJ…液滴吐出装置、P…基板(基体)

Claims (18)

  1. 基体上に立設した仕切部材により囲まれてなる区画領域内に設けられた発光素子を備えた電気光学装置であって、
    前記発光素子が、液相法により形成された機能層を含んでおり、
    前記区画領域に対応して、該区画領域内に温度分布を形成可能な温度分布形成手段が設けられていることを特徴とする電気光学装置。
  2. 前記温度分布形成手段が、吸熱性又は蓄熱性を有する材料からなる保温部材により構成されるとともに、前記区画領域の平面視中央部に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
  3. 前記保温部材が、アモルファスシリコンからなるものであることを特徴とする請求項2に記載の電気光学装置。
  4. 前記発光素子と基体との間に、前記発光素子を駆動するためのスイッチング素子が設けられており、
    前記アモルファスシリコンからなる保温部材が、前記スイッチング素子に含まれる半導体層と同層に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の電気光学装置。
  5. 前記区画領域の底面部に、前記発光素子の一の電極を成す画素電極が設けられており、
    前記温度分布形成手段が、前記画素電極の基体側に設けられていることを特徴とする請求項1から4いずれか1項に記載の電気光学装置。
  6. 前記区画領域の底面部に凹部が形成され、前記発光素子が、前記凹部内に形成された前記機能層を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電気光学装置。
  7. 前記区画領域の底面部に、前記発光素子の一の電極を成す画素電極が設けられており、前記凹部が、前記区画領域に臨む画素電極表面に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の電気光学装置。
  8. 前記凹部の周縁部が、曲面形状を成して形成されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の電気光学装置。
  9. 前記発光素子と基体との間に、前記発光素子を駆動するためのスイッチング素子が設けられており、
    前記スイッチング素子の前記基体側に、該基体側からみて前記スイッチング素子を覆う遮光部材が設けられていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の電気光学装置。
  10. 基体上に立設された仕切部材に囲まれてなる区画領域内に設けられた発光素子を備えた電気光学装置の製造方法であって、
    前記区画領域内に液体材料を選択塗布することにより機能層を形成する機能層形成工程を含み、
    前記塗布された液体材料を乾燥固化する際に、該液体材料中に温度分布を生じさせることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
  11. 前記塗布された液体材料を乾燥固化する際に、前記区画領域の底面中央部における前記液体材料の温度を、同区画領域の底面周縁部における温度より高くすることを特徴とする請求項10に記載の電気光学装置の製造方法。
  12. 前記機能層形成工程に先立って、前記区画領域の底面部に対応する位置に温度分布形成手段を形成する工程を含むことを特徴とする請求項10又は11に記載の電気光学装置の製造方法。
  13. 前記温度分布形成手段として、吸熱性又は蓄熱性を有する材料からなる保温部材を前記区画領域の底面部に対応する位置に設けることを特徴とする請求項12に記載の電気光学装置の製造方法。
  14. 前記基体上に前記発光素子を駆動するためのスイッチング素子を形成する工程を含み、
    前記スイッチング素子を構成する半導体層と同層に、前記温度分布形成手段としてのアモルファスシリコン層を形成することを特徴とする請求項12又は13に記載の電気光学装置の製造方法。
  15. 前記機能層形成工程に先立って、
    前記区画領域の底面部に凹部を形成する工程を含むことを特徴とする請求項10から14のいずれか1項に記載の電気光学装置の製造方法。
  16. 前記区画領域の底面部に前記発光素子の一の電極を成す画素電極を形成する工程と、該画素電極の表面を部分的に除去することにより該画素電極表面に凹部を形成する工程とを含むことを特徴とする請求項15に記載の電気光学装置の製造方法。
  17. 前記区画領域の底面部に相当する位置に、表面に凹部が形成された絶縁層を形成する工程と、
    前記絶縁層上の前記凹部を含む領域に、前記発光素子の一の電極を成す画素電極を形成する工程と
    を含むことを特徴とする請求項16に記載の電気光学装置の製造方法。
  18. 請求項1から9のいずれか1項に記載の電気光学装置を備えたことを特徴とする電子機器。
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KR101480005B1 (ko) 2008-02-25 2015-01-08 삼성디스플레이 주식회사 유기 발광 표시 장치 및 그 제조 방법

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