JP4004884B2 - 転がり支承系免震部材 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、建物躯体や商品ケ―スや展示台等の上部構造と基礎部材等の下部構造との間に介装される転がり支承系免震部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来におけるこの種,転がり支承系免震部材としては、図5に示すような下部構造と上部構造との間で、下部構造側のフランジ鋼板101に取り付けられた下部球軌道盤102と上部構造側のフランジ鋼板103に取り付けられた上部鋼球軌道盤104の各中心部の間に転がり支承材である鋼球105を配置し、該鋼球105が前記上下部の鋼球軌道盤104,102にそれぞれ形成した中央部が窪んだ皿状の転がり面107,106に沿って転動できるようにしたものがある(以下,前者という)。なお、108は前記上下部の鋼球軌道盤104,102の外周に設けられた養生幕である。
【0003】
また、図6に示すような下部構造と上部構造との間で、下部構造側のフランジ鋼板111に取り付けられた鋼球軌道盤112と上部構造側のフランジ鋼板113に取り付けられたベアリング114に鋼球115を配置し、該鋼球115が前記鋼球軌道盤112に形成した中央部が窪んだ皿状の転がり面116に沿って転動できるようにしたものがある(以下,後者という)。なお、117は前記ベアリング114に配置されたボ―ルであり、118は前記上部構造側の接合用ベ―スプレ―ト113と鋼球軌道盤112の外周に設けられた養生幕である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記従来例の前者の場合、転がり支承系免震部材が転がり支承材である鋼球105と上下部の鋼球軌道盤104,102とによって形成され、支承材と復元材の機能は果たしているが地震エネルギ―を吸収する減衰機能は全くなく、減衰作用は別個の減衰部材に委ねている状態であり、また、鋼球105は上下部の鋼球軌道盤104,102に単に挟まれた無防備状態にあるので、該鋼球105の配置部位に安定性を欠き、鋼球105の正確な動作が望めない、という問題がある。
【0005】
一方,前記従来例の後者の場合、鋼球115の上部をベアリング114に回転可能に取付け保持しているため鋼球115の配置部位に安定性はあるが、該鋼球115の転がり面116は下部に配置された鋼球軌道盤112にのみ形成せざるを得ないことから、該転がり面116の広さは、前者のような上下の鋼球軌道盤を鋼球がフリ―に転がるものに比して約4倍の面積を必要とする。そのため、前者の約4倍の鋼球軌道盤112を養生する養生幕118も鋼球115の移動の妨げとならないように装備しなければならず、全体の規模が大型化すると共に、小規模の建造物の免震部材としては甚だ不向きである。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、鋼球の転がり面が比較的に小さいものであって該鋼球の安定した誘導を行わせ乍ら減衰動作を行わせ、且つ周辺の復元部材等との協働によって確実な減衰,復元動作を行わせる、動作に安全性がありコンパクトな転がり支承系免震部材を提供することにある。
【0007】
また、復元動作が更により確実に行われる転がり支承系免震部材を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明における転がり支承系免震部材は、下部構造と上部構造との間で下部構造側に取り付けられた下部鋼球軌道盤と上部構造側に取り付けられた上部鋼球軌道盤の各中心部の間に転がり支承材である鋼球を配置した免震部材において、上・下部各鋼球軌道盤に形成した鋼球の転がり止めの外側四隅で上下部のフランジ鋼板間に弾性体からなる復元部材を立設し、該各復元部材の中央端をガイド鋼板に接続し、該ガイド鋼板の中心部にリング状の摩擦ダンパ―を設け、該摩擦ダンパ―の内周面に前記鋼球の水平方向中心部を位置させ、前記上・下部各鋼球軌道盤の中心部に形成したトリガ―の役割を果たすポジションホ―ルと前記摩擦ダンパ―によって鋼球を保持させるようにしたことを特徴とするものである。
【0009】
また、前記上・下部各鋼球軌道盤の中央部に前記ポジションホ―ルに向けて鋼球の復元用の補助スロ―プを形成したことを特徴とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
添付図面を参照して本発明の実施例について説明する。
図1ないし図4において、1は下部構造(図示せず)との接合用ベ―スプレ―トであり、該ベ―スプレ―ト1には下部フランジ鋼板2が取付られている。また、3は上部構造(図示せず)との接合用ベ―スプレ―トであり、該ベ―スプレ―ト3には上部フランジ鋼板4が取付られている。
【0011】
前記下部フランジ鋼板2には、マットゴム5を介した下部鋼球軌道盤6と、積層ゴム或は円筒ゴム等の弾性体からなる減衰・復元部材7,7…の各一端とが取付られている。また、上部フランジ鋼板4には、マットゴム8を介した上部鋼球軌道盤9と、前記復元部材7,7…の各他端とが取付られている。
【0012】
前記下部鋼球軌道盤6の外周には鋼球10の転がり止め11が形成され、上部鋼球軌道盤9の外周にも鋼球10の転がり止め12が形成されている。
【0013】
前記復元部材7,7…は、鋼球軌道盤6,9の転がり止め11,12の外側位置の四隅で前記上下のフランジ鋼板4,2間に立設されており、また、各復元部材7の中央端にはガイド鋼板13への装着フランジ14が形成されており、該フランジ14,14…により各復元部材7の中央端はガイド鋼板13に接続されている。
【0014】
前記ガイド鋼板13の中心部には、リング状の摩擦ダンパ―15が配置されており、該摩擦ダンパ―15の内周面16には前記鋼球10の水平方向中心部が位置されるようになっている。
【0015】
前記摩擦ダンパ―15は、前記ガイド鋼板13に固着されたリング状で断面L字形のダンパ―ケ―ス17と、該ダンパ―ケ―ス17の内周に配置されたゴム材からなる圧力調整部材18と、その内周に配置されたステンレス鋼板からなる内輪摩擦板19と、前記圧力調整部材18の上面に位置した圧力蓋鋼板20と、で構成されている。
【0016】
そして、前記ダンパ―ケ―ス17の上部内周面にはねじ21が螺設され、また圧力蓋鋼板20の外周にはねじ22が前記ねじ21と螺合するように螺設されおり、該両ねじ21,22の螺合状態を調節することによって圧力蓋鋼板20による圧力調整部材18からの内輪摩擦板19への押圧力が調整され、これにより鋼球10と内輪摩擦板19との間に発生する摩擦力が調整される。
なお、23は前記内輪摩擦板19の伸縮用切断目地であり、24は圧力蓋鋼板20の回転用ダボ穴である。
【0017】
前記鋼球軌道盤6,9の中心部には、トリガ―の役割を果たすポジションホ―ル25,26が形成されている。したがって、両鋼球軌道盤6,9間に配置された鋼球10は、前記ポジションホ―ル25,26と前述の摩擦ダンパ―15によって保持されることになる。
【0018】
なお、前記上部及び下部のフランジ鋼板4,2の外周間は養生幕(図示せず)で覆うようにすると安全である。
【0019】
以上のような構成からなる転がり支承系免震部材において、平常時の例えば風速30m/s程度の風圧や震度の小さい(例えば震度3以下)場合には、鋼球10がポジションホ―ル25,26によって回動できないように押圧保持されている。そして、震度が大きくなると(例えば震度3以上)、鋼球10がポジションホ―ル25,26による押圧力にうち勝つて回動し乍らポジションホ―ル25,26から抜け出して移動する。この移動時には鋼球10と摩擦ダンパ―15との間の摩擦によって地震エネルギ―が吸収され乍ら周辺の復元部材7,7…の水平変位を許容すると共に、鋼球10は上部構造を支持するものである。
【0020】
そして、地震振動が終息すると各復元部材7の復元力で復元部材7,7…が略元の状態に戻ると共に鋼球10は摩擦ダンパ―15と摩擦し乍ら地震エネルギ―を吸収しつつ前記ポジションホ―ル25,26に戻り、転がり支承系免震部材を元の状態とする。
【0021】
このように、鋼球10の外周の摩擦ダンパ―15と鋼球10の周辺に分割された各復元部材7とを備えた転がり支承系免震部材では、摩擦ダンパ―15との摩擦接触によって地震エネルギ―が充分に吸収され乍ら分割された復元部材7,7…により水平剛性を形成し乍ら、地震時に発生する水平変形に対しても各復元部材7と鋼球10が協働して偏心圧力に充分耐え得るものとなる。
【0022】
そして、本発明に係る転がり支承系免震部材では、鋼球10の転がり面を上下に配して比較的に小さな転がり面としながら該鋼球10をガイド鋼板13により安定した誘導を行わせ、且つ鋼球10と摩擦接触する摩擦ダンパ―15及び周辺の復元部材7,7…との協働によって減衰,復元動作を行わせることから、動作に安全性がありコンパクトな転がり支承系免震部材となる。
【0023】
そして、前記上・下部各鋼球軌道盤9,6の中央部に前記ポジションホ―ル26,25に向けて鋼球10の復元用の補助スロ―プ27,27を形成した場合には、鋼球10が該補助スロ―プ27を容易に転がることによって、復元部材7,7…の変形初期段階での復元力を補助し、且つ地震終息後に鋼球10が該補助スロ―プ27を容易に落下して前記ポジションホ―ル25,26に確実に納まり、同時に上部構造が完全に元の位置に復元できるものである。
【0024】
【発明の効果】
本発明は上・下部各鋼球軌道盤に形成した鋼球の転がり止めの外側四隅で上下部のフランジ鋼板間に弾性体からなる復元部材を立設し、該各復元部材の中央端をガイド鋼板に接続し、該ガイド鋼板の中心部にリング状の摩擦ダンパ―を設け、該摩擦ダンパ―の内周面に前記鋼球の水平方向中心部を位置させ、前記上・下部各鋼球軌道盤の中心部に形成したトリガ―の役割を果たすポジションホ―ルと前記摩擦ダンパ―によって鋼球を保持させるようにしたので、鋼球と摩擦ダンパ―との摩擦接触によって地震エネルギ―を充分に吸収し分割された復元部材により水平剛性を形成し乍ら、地震時に発生する水平変形に対しても各復元部材と鋼球が協働して偏心圧力に充分耐え得るものであって、鋼球の転がり面を比較的に小さくして該鋼球の安定した誘導を行わせ乍ら減衰動作を行わせ、且つ周辺の復元部材等との協働によって確実な減衰,復元動作を行わせる、動作に安全性がありコンパクトな転がり支承系免震部材となる。
【0025】
そして、前記上・下部各鋼球軌道盤の中央部に前記ポジションホ―ルに向けて鋼球の復元用の補助スロ―プを形成した場合には、復元部材の変形初期段階での復元力が補助され、且つ地震終息後に鋼球が該補助スロ―プを容易に落下して前記ポジションホ―ルに確実に納まり、同時に上部構造が完全に元の位置に復元でき、復元動作が更により確実に行われる転がり支承系免震部材となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明に係る転がり支承系免震部材の平面配列図である。
【図2】図2は図1のA―A断面図である。
【図3】図3は図2の摩擦ダンパ―部位のB―B断面図である。
【図4】図4は本発明に係る摩擦ダンパ―部の説明用拡大断面図である。
【図5】図5は従来例の転がり支承系免震部材の断面図である。
【図6】図6は他の従来例の転がり支承系免震部材の断面図である。
【符号の説明】
2,4 フランジ鋼板
6,9 鋼球軌道盤
7 復元部材
10 鋼球
11,12 鋼球の転がり止め
13 ガイド鋼板
15 摩擦ダンパ―
25,26 ポジションホ―ル
27 補助スロ―プ
Claims (2)
- 下部構造と上部構造との間で下部構造側に取り付けられた下部鋼球軌道盤と上部構造側に取り付けられた上部鋼球軌道盤の各中心部の間に転がり支承材である鋼球を配置した免震部材において、上・下部各鋼球軌道盤に形成した鋼球の転がり止めの外側四隅で上下部のフランジ鋼板間に弾性体からなる減衰・復元部材を立設し、該各減衰・復元部材の中央端をガイド鋼板に接続し、該ガイド鋼板の中心部にリング状の摩擦ダンパ―を設け、該摩擦ダンパ―の内周面に前記鋼球の水平方向中心部を位置させ、前記上・下部各鋼球軌道盤の中心部に形成したトリガ―の役割を果たすポジションホ―ルと前記摩擦ダンパ―によって鋼球を保持させるようにしたことを特徴とする転がり支承系免震部材。
- 前記上・下部各鋼球軌道盤の中央部に前記ポジションホ―ルに向けて鋼球の復元用の補助スロ―プを形成したことを特徴とする請求項1記載の転がり支承系免震部材。
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