JP4004607B2 - フォトレジストフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はプリント配線板の製造に用いられるフォトレジストフィルムに関し、更に詳しくは感度、解像力、レジスト剥離性、密着性に優れ、又エッチングでの導体のかけやメッキによるメッキラインのギザツキのない耐エッチング性あるいはメッキ性に優れたフォトレジストフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プリント配線板等の製造には感光性樹脂組成物を用いたフォトレジスト法が用いられており、このフォトレジスト法においては、例えば、まず透明なフィルム等の支持体上に感光性樹脂組成物を塗布して感光性樹脂組成物層を形成した後、この感光性樹脂組成物層を所望のパターンを形成しようとする基板表面に積層し、次いで該感光性樹脂組成物層に原画をパターンマスクを介して露光した後、未露光部分を溶剤又はアルカリ水溶液による現像処理により除去して、レジスト画像を形成させ、形成されたレジスト画像を保護マスクとし、公知のエッチング処理又はパターンメッキ処理を行った後、レジスト剥離して印刷回路基板を製造する方法が通常行われる。このような製造工程において、生産性向上、時間短縮化のために高感度を有することが求めれらている。
【0003】
更に近年では、電子機器の小型、軽量化に伴いプリント配線板の微細化、高密度化が進んでおり、高解像力をもつドライフィルムレジスト(DFRと略すことがある)が求められている。レリーフパターンの巾が5〜200μmで、隣接するパターンとの間隔が10μm以上で、かつ巾と高さの比が1/1.5以下である高感度でパターン形成性が良好でなおかつレジスト剥離性が良好なDFRが必要になってきた。
【0004】
レリーフパターンを得る従来技術としては、特定のモル吸光係数をもつ光重合開始剤を用いてレリーフパターンを製造する方法(特公平5−81897号公報)、分子量を規定したポリマー、不飽和基含有化合物、開始剤としてジアルキルアミノアセトフェノン、2,4,5−トリフェニルイミダゾール二量体を用いた光重合組成物において、該不飽和基含有化合物中の不飽和基を1個有する化合物の割合や2個有する化合物の割合や分子量を規定した組成物(特開平3−6202号公報)、α,β−不飽和エチレン系単量体を有するバインダーポリマー、光重合ポリマー、特定の構造式をもつ化合物と2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体からなる開始剤を用いた感光性樹脂組成物(特開平2−62545号公報)、開始剤として2,4,5−トリフェニルイミダゾリル二量体を用いる画像形成系用光重合性組成物(特公昭45−37377号公報)が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特公平5−81897号公報開示技術では、膜厚が厚くなるに従い、感度が低下するとともにパターン形状が太鼓状に太り解像力が不足し、特開平3−6202号公報、特開平2−62545号公報開示技術では、厚膜が厚くなるに従い、感度が低下し、パターンの逆台形化も顕著になり、又最終工程であるレジスト剥離においても非常に時間がかかる等の問題がある。又、特公昭45−37377号公報開示技術では、高感度ではあるが、パターン形状が太鼓状に太り解像力が不足するとともに密着性についてはまだまだ改善の余地が残るものである。
【0006】
一方で、感度、解像度、密着性を改善する目的で、フォトレジストフィルムとしてヘイズ値が0.1〜1.5%の支持体フィルムを用いることが提案されている(特開平6−230579号公報、特開平8−123018号公報)が、該技術では、通常のアルカリ現像型ドライフィルムレジストを用いた場合には、該金属基板とレジストの密着性について、最近の技術の高度化に伴うファイン化、精細化を考慮するとまだまだ満足するものでなく、エッチングでの導体のかけや染み込みが生じ、いわゆる耐エッチング性に劣ったり、又メッキ時にメッキラインのギザツキが生じる等、歩留まりが低下するという問題が残るのである。
【0007】
そこで、本発明ではこのような背景下において、感度、解像力、レジスト剥離性、密着性に優れ、又レジストの密着不足によるエッチングでの導体のかけ、染み込みのない耐エッチング性やメッキラインのギザツキのないメッキ性に優れたフォトレジストフィルムを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
しかるに本発明者等はかかる課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、支持体フィルム(I)/感光性樹脂組成物層(II)/保護フィルム(III)からなるフォトレジストフィルムにおいて、支持体フィルム(I)の厚みが10〜30μmで、表面粗度(Ra)が0.001〜0.015μmであり、かつ、感光性樹脂組成物層(II)が、酸価が95〜250mgKOH/gで、重量平均分子量が5000〜200000のベースポリマー(a)、エチレン性不飽和化合物(b)、自己開裂型開始剤(c)を含んでなり、かつ(b)中にエチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレートを50重量%以上含んでなるフォトレジストフィルムが上記目的に合致することを見出し、本発明を完成するに至った。本発明では、特に支持体フィルム(I)が易滑処理を施されてなり、かつ、該易滑処理面どうしの静摩擦係数(μs)が1.0以下、動摩擦係数(μd)が0.8以下である支持体フィルム(I)を用いることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明に用いる支持体フィルム(I)は、透明であることは勿論の他、支持体フィルム(I)の厚みが10〜30μm、好ましくは12〜25μmであり、表面粗度(Ra)が0.001〜0.015μm、好ましくは0.002〜0.01μmであることが必要である。かかる支持体フィルム(I)の厚みが10μm未満ではフィルムが柔軟過ぎて取り扱いに不便となり、30μmを越えると解像度が低下したり、コストアップとなる。
又、表面粗度(Ra)が0.001μm未満では製膜加工中においてフィルム表面に傷がつきやすくなり、0.015μmを越えるとレジストパターンにギザツキが生じ、導体のカケや断線の原因となる。
【0010】
ここで、表面粗度(Ra)とは、新JIS B 0601に基づき測定されるものであり、表面粗さ測定器サーフコーダSE−30D((株)小坂研究所製)により求められる。
【0011】
本発明において、表面粗度(Ra)が0.001〜0.015μmの範囲の支持体フィルム(I)であれば特に限定されないが、例えば、東レ社製T60タイプや帝人社製Oタイプ、M62タイプ、X71タイプ等のフィルムに易滑処理を施してなるものが用いられる。
易滑処理については、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、フッ素系等の樹脂をフィルム表面にコーティングすることにより行われる。
【0012】
更に、易滑処理されてなる支持体フィルム(I)の該易滑処理面どうしの静摩擦係数(μs)が1.0以下、動摩擦係数(μd)が0.8以下であることが特に好ましく、本発明の効果を顕著に発揮する。
かかる静摩擦係数(μs)が1.0及び動摩擦係数(μd)が0.8を越えると製膜加工中においてフィルム表面に傷がつきやすくなり好ましくない。
ここで、静摩擦係数(μs)、動摩擦係数(μd)は、JIS K 7125に基づき導かれる。
【0013】
本発明の感光性樹脂組成物層(II)は、酸価が95〜250mgKOH/gで、重量平均分子量が5000〜200000のベースポリマー(a)、エチレン性不飽和化合物(b)、自己開裂型開始剤(c)を含んでなり、かつ(b)中にエチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレートを50重量%以上含む感光性樹脂組成物からなるものである。
本発明に用いるベースポリマー(a)としては、酸価が95〜250mgKOH/gであることが必要で、好ましくは110〜163mgKOH/gである。酸価が95mgKOH/g未満では、良好な現像性が得られず、解像力不良、パターン裾形状不良となり、不適であり、250mgKOH/gを越えると耐現像液性の低下に伴う細線密着不良や、現像中での膨潤によって解像力不良となり不適である。
【0014】
又、ベースポリマー(a)の重量平均分子量は5000〜200000であることが必要で、好ましくは30000〜120000であり、更に好ましくは50000〜100000である。重量平均分子量が5000未満では塗工乾燥によってフィルム化した際、充分なフィルム保持性が得られず、エッジフュージョンの原因となり不適であり、重量平均分子量が200000を越えると充分な現像性が得られず、解像不良の原因となり不適である。
【0015】
該ベースポリマー(a)として具体的には、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などが用いられる。
【0016】
これらの中では、(メタ)アクリレートを主成分とし、エチレン性不飽和カルボン酸や他の共重合可能なモノマーを共重合したアクリル系(共重合体)樹脂、アセトアセチル基含有アクリル系(共重合体)樹脂がベースポリマー(a)として好適に用いられる。
【0017】
(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどが例示される。
【0018】
エチレン性不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸が好適に用いられ、そのほか、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などのジカルボン酸、あるいはそれらの無水物やハーフエステルも用いることができる。これらの中では、アクリル酸とメタクリル酸が特に好ましい。
【0019】
本発明のエチレン性不飽和化合物(b)は(b)中にエチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレートを50重量%以上含むもので、更には60重量%以上含まれることが好ましく、特に好ましくは65〜80重量%である。かかる含有量が50重量%未満では良好な細線密着性が得られず好ましくない。
【0020】
エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレートとは下記一般式(1)で表される。
【化1】
だだしl、m、nは0又は正数を示す。
【0021】
エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート以外のエチレン性不飽和化合物としては多官能モノマーや単官能モノマーが単独、または2種以上用いられる。
多官能モノマーとして具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレートが挙げられるが、好ましくはプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが用いられる。
【0022】
単官能モノマーとして具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、フタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどが挙げられ、好ましくは、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレートが用いられる。
【0023】
ベースポリマー(a)100重量部に対するエチレン性不飽和化合物(b)の割合は、25〜100重量部、特に35〜75重量部の範囲から選ぶことが望ましい。エチレン性不飽和化合物(b)の割合が100重量部を越えると、乾燥後長期保存に耐える十分な粘度が得られず、スリットしたロール端面よりレジストが流れ出るエッジフュージョンを起こすので好ましくなく、エチレン性不飽和化合物(b)の割合が25重量部未満では乾燥後の粘度が高くなり過ぎ、可撓性不足により、カッティングの際にチップが出たり、架橋成分不足により、現像で良好なパターン形状が得られない。
【0024】
自己開裂型開始剤(c)としては下記一般式(2)で表されるもので、具体的にはベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾイルイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、2,2−ジヒドロキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノンなどを挙げることができる。
【0025】
【化2】
[式中R1はフェニル基、又は置換フェニル基、R2は水素、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン、R3は水酸基、アルコキシ基を表す。]
【0026】
かかる自己開裂型開始剤(c)の配合量は特に限定されないが、ベースポリマー(a)100重量部に対して、自己解裂開始剤(c)は1.0〜15重量部が好ましく、更には2〜12重量部含まれていることが好ましく、自己開裂開始剤(c)が1.0重量部よりも少ないと十分に硬化させるために多大な露光量を要し、逆に15重量部よりも多いと、可塑剤的効果が大きくエッジフュージョンの原因となり好ましくない。
【0027】
更に本発明では、自己開裂型開始剤(c)と光重合開始剤とを併用することができ、かかる光重合開始剤としては、ベンジルジフェニルジスルフィド、ジベンジル、ジアセチル、アントラキノン、ナフトキノン、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ベンゾフェノン、p,p′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、p,p′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ピバロインエチルエーテル、1,1−ジクロロアセトフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、ヘキサアリールイミダゾール二量体、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,2−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン、フェニルグリオキシレート、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、ジベゾスパロン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパノン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、トリブロモフェニルスルホン、トリブロモメチルフェニルスルホン、アクリジン、9−フェニルアクリジン、2,4−トリクロロメチル−(4′−メトキシフェニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(4′−メトキシナフチル)−6−トリアジン等が例示される。
【0028】
更に、本発明では、感度向上の目的でN−フェニルグリシン(d)を配合することも有用で、配合割合は(a)100重量部に対して0.1〜1.0重量部、特に0.2〜0.5重量部が好ましく、0.1重量部未満では感度向上の効果が望めず、1.0重量部を越えると未露光状態でベース染料の変色を起こし好ましくない。
【0029】
又、本発明では、内部硬化を向上させる目的で、2,4,5−トリフェニルイミダゾール二量体(e)を配合することも有用で、配合割合は(a)100重量部に対して0.5〜15重量部、特に1.0〜5.0重量部が好ましく、0.5重量部未満では十分な内部硬化が得られない為、現像後のパターン形状が悪化し好ましくなく、15重量部を越えると未露光状態で保存中に2,4,5−トリフェニルイミダゾール二量体(e)が結晶化して析出することがあり好ましくない。
【0030】
本発明の感光性樹脂組成物(II)には、そのほか、染料(着色、発色)、密着性付与剤、可塑剤、酸化防止剤、熱重合禁止剤、溶剤、表面張力改質材、安定剤、連鎖移動剤、消泡剤、難燃剤、などの添加剤を適宜添加することができる。
【0031】
かくして得られた感光性樹脂組成物(II)はレリーフパターン製造、プリント配線板(PWP)や透明電極等の加工の際のエッチングレジスト又はメッキレジスト等に幅広く利用することができるが、特に厚膜のレリーフパターンの製造に最適である。
【0032】
本発明で用いられる保護フィルム(III)は、フォトレジストフィルムをロール状にして用いる場合に、粘着性を有する感光性樹脂組成物層が支持体フィルムに転着したり、感光性樹脂組成物層に壁などが付着するのを防止する目的で感光性樹脂組成物層に積層して用いられる。かかる保護フィルムとしては、例えばポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、テフロンフィルムなどが挙げられるが、本発明はかかる例示のみに限定されるものではない。なお、該保護フィルムの厚さについては特に限定はなく、通常10〜50μm、なかんずく10〜30μmであればよい。
【0033】
かくして本発明では上記支持体フィルム(I)、感光性樹脂組成物層(II)、保護フィルム(III)を順次積層したフォトレジストフィルムとなる。
次に、本発明のフォトレジストフィルムの製造及びそれを用いる厚膜のレリーフパターンの製造について説明する。
【0034】
(成層方法)
上記の感光性樹脂組成物(II)をポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、ビニロンフィルム等の支持フィルム(I)面に塗工した後、その塗工面の上からポリエチレンフィルム等の保護フィルム(III)を被覆してフォトレジストフィルムとする。
【0035】
(露光)
フォトレジストフィルムによって画像を形成させるには保護フィルム(III)を剥離してから感光性樹脂組成物層(II)の側を銅張基板の銅面などの金属面に貼り付けた後、他方のフィルム上にパターンマスクを密着させて露光する。
【0036】
尚、本発明の厚膜ファインパターンの形状及び寸法としては、レリーフパターンの巾が10〜200μmで隣接するパターンとの間隔が10μm以上で、かつ巾と高さの比は1/1.5以下、好ましくは1/2.0以下である。又、パターンの断面形状がほぼ矩形を有し、側面と基板とのなす角度が90°±10°(80°〜100°)、更に隣接パターンとの間隔は10μm以上である。
上記の如く本発明に適した厚膜レジストを形成されるためには、一度の操作で所望の厚膜を得ることが困難であることが多い。そこで上記のドライフィルムの積層においては、ベースフィルム上に形成したレジストを基材上に転写する操作を繰り返す多段ラミネート操作を行って、所望の厚膜とする方法が推奨される。更には100μm以上の厚さの厚膜レジストを容易に形成することができる。
【0037】
露光に際しては通常紫外線照射により行い、その際の光源としては、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライドランプ、ケミカルランプなどが用いられる。紫外線照射後は、必要に応じ加熱を行って、硬化の完全を図ることもできる。
【0038】
(現像)
露光後は、レジスト上のフィルムを剥離除去してから現像を行う。感光性樹脂組成物(II)層は稀アルカリ現像型であるので、露光後の現像は、炭酸ソーダ、炭酸カリウムなどのアルカリ0.3〜2重量%程度の稀薄水溶液を用いて行う。該アルカリ水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を混入させてもよい。
【0039】
(エッチング、メッキ)
その後、通常塩化第二銅−塩酸水溶液や塩化第二鉄−塩酸水溶液等の酸性エッチング液を用いて常法に従ってエッチングを行う。希にアンモニア系のアルカリエッチング液も用いられる。メッキ法は、脱脂剤、ソフトエッチング剤などのメッキ前処理剤を用いて前処理を行った後、メッキ液を用いてメッキを行う。メッキ液としては、銅メッキ液、ニッケルメッキ液、鉄メッキ液、銀メッキ液、金メッキ液、錫メッキ液、コバルトメッキ液、亜鉛メッキ液、ニッケルコバルトメッキ液、はんだメッキ液等が挙げられる。
【0040】
(硬化レジストの剥離除去)
エッチング工程又はメッキ工程後、残っている硬化レジストの剥離を行う。硬化レジストの剥離除去は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの0.5〜5重量%程度の濃度のアルカリ水溶液からなるアルカリ剥離液を用いて行う。
【0041】
本発明のフォトレジストフィルムは、特定の表面粗度(Ra)を有する支持体フィルム(I)/酸価が95〜250mgKOH/gで、重量平均分子量が5000〜200000のベースポリマー(a)、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレートを50重量%以上含むエチレン性不飽和化合物(b)、自己解裂型開始剤(c)を含有してなる感光性樹脂組成物層(II)/保護フィルム(III)からなるため、感度、解像度、基板とレジストの密着性、導体への染み込みや導体のかけがないといった耐エッチング性やメッキ時にメッキラインのギザツキのないメッキ性に優れ、レジストパターンを短時間かつ高い歩留まりで行うことができ、更に厚膜ファインパターンを形成することができるのである。
【0042】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述する。
尚、ことわりのない限り「%」及び「部」は重量基準である。
実施例1
[感光性樹脂組成物の調製]
下記のベースポリマー(a)100部に、下記のエチレン性不飽和化合物(b)67部、2,2′−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(c)10部、N−フェニルグリシン(d)0.4部、2,4,5−トリフェニルイミダゾール二量体(e)3.5部を配合してよく混合し、感光性樹脂組成物を調製した。
【0043】
ベースポリマー(a)
メチルメタクリレート/n−ブチルメタクリレート/メタクリル酸の共重合割合が重量基準で50/25/25である共重合体(酸価163mgKOH/g、ガラス転移点94℃、重量平均分子量7万)。
エチレン性不飽和化合物(b)
エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート67%、ポリピロピレングリコールジアクリレート33%からなるモノマーの混合物。
【0044】
上記感光性樹脂組成物のドープをギャップ10ミルのアプリケーターを用いて、表面粗度(Ra)0.002μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)からなる支持体フィルム(I)(厚み16μm)上に塗工し、室温で1分30秒放置した後、60℃、90℃、110℃のオーブンでそれぞれ3分間乾燥して、レジスト厚50μmのドライフィルムとし、更にポリエチレンフィルムからなる保護フィルム(III)(厚さ23μm)をラミネートしてフォトレジストフィルムとした。
尚、支持体フィルム(I)はポリエステル系樹脂により易滑処理を行い、易滑処理面どうしの静摩擦係数(μs)が0.8、動摩擦係数(μd)が0.6のものであった。
次にメチルエチルケトンで表面洗浄を行った厚さ2mmのステンレススチール基板を60℃に加温し、その表面に上記で得たフォトレジストフィルムを保護フィルム(III)を剥がしながら、ラミネートした。その後、PETフィルムをはがして、再度ラミネートを行い、更に同様のラミネート操作を計4回繰り返すことにより、ステンレススチール基板上に厚さ200μmのレジストを形成させた。
【0045】
次いで得られた基材のPETフィルム(I)に、2kw水銀ショートアーク灯(平行光源)で、ストーファー21段ステップタブレット(光透過量が段階的に少なくなるように作られたネガフィルム)の数値が9となる露光量で露光を行った。露光後15分経過してからPETフィルム(I)を剥離し、20℃で0.5%炭酸ナトリウム水溶液をブレークポイント(未露光部分が完全溶解する時間)の1.5倍の現像時間でスプレーすることにより未露光部分を溶解除去して硬化樹脂画像を得た。
【0046】
そして、この基材をニッケルメッキ液によりメッキを行った後、60℃の3%水酸化ナトリウム水溶液で1.5kg/cm2でスプレーし、剥離を行い画像を形成した。
上記において以下の項目を下記の如く評価した。
【0047】
(イ)エッジフュージョン
PETフィルムを積層したまま、作製したレジストを300mm幅、120m長にスリット、ロール化し、該ロールを30℃、60RH%の恒温、恒湿機中に横おきに遮光下で放置し、端面のレジストの浸みだしを、目視で以下の様に評価した。
○・・・3日間放置しても浸みだしがない。
×・・・3日間放置中に浸みだしを確認。
【0048】
(ロ)感度
上記ステンレススチール基板上に設けた200μm厚のレジストをカバーフィルムを除去後、炭酸ナトリウム0.5重量%、20℃の現像液をスプレー圧0.5kg/cm2で噴霧し、基板表面が見えるまでの時間を最小現像時間とし、
最小現像時間の1.5倍の時間で、ストファーの21段のステップダブレットを用いて現像した時、ステップ9を与える露光量(mj/cm2)を求めた。
【0049】
(ハ)解像度
上記露光量におけるライン巾200μmのパターンの解像可能なスペースの巾を測定した。
【0050】
(ニ)剥離性
ライン/スペース=200μm/200μmのパターンを形成後、そのスペース部に高さ180〜200μmのニッケルメッキを行った後、60℃の3%水酸化ナトリウム水溶液を1.5kg/cm2でスプレーして、剥離を行い、以下の様に評価した。
○・・・30分以内で剥がれ、剥離片の一部がNiメッキ部に残らない。
△・・・30分以内で剥がれるが、剥離片の一部がNiメッキ側面に付着する。
×・・・30分では剥がれない。
【0051】
(ホ)密着性
ライン巾10〜200μmにおいて5μm毎にラインを設けたパターンマスク(ラインは1本のみ−スペース巾∞)を用いて上記の解像性評価と同様に現像して密着性良好な最小ライン巾(μm)を調べた。
【0052】
(ヘ)メッキ性
ライン/スペース=400μm/300μmの現像後、レジストパターンをメッキし、レジストを剥離した後、基材を拡大顕微鏡で観察して、メッキラインのギザツキ具合によりを目視評価した。評価基準は下記の通りである。
○・・・ギザツキなし
△・・・端部に5μm未満のギザツキあり
×・・・端部に5μm以上のギザツキあり
【0053】
(ト)巻き取り性
フォトレジストフィルムを幅300mmにスリットしながら、内径76.2mmのABS樹脂製パイプに長さ150mを巻き取った後、パイプ両端を固定して、30℃、50%RHの条件下で3日間宙吊りで保存した。保存後、室温(23℃)に戻して一週間放置した後の巻きズレを測定した。評価基準は下記の通りである。
○・・・ズレなし
△・・・1mm未満のズレがあり
×・・・1mm以上のズレがあり
【0054】
実施例2
実施例1において、N−フェニルグリシン(d)を除いた以外は、実施例1に準じて感光性樹脂組成物を調製し、上記と同様の評価を行った。
【0055】
実施例3
実施例1において、2,4,5−トリフェニルイミダゾール二量体(e)を除いた以外は、実施例1に準じて感光性樹脂組成物を調製し、上記と同様の評価を行った。
【0056】
実施例4
実施例1において、N−フェニルグリシン(d)、2,4,5−トリフェニルイミダゾール二量体(e)を除いた以外は、実施例1に準じて感光性樹脂組成物を調製し、上記と同様の評価を行った。
【0057】
実施例5
実施例1において、エチレン性不飽和化合物(b)としてエチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレートの含量を80%、ポリピロピレングリコールジアクリレート20%からなるモノマーの混合物を用いた以外は、実施例1に準じて感光性樹脂組成物を調製し、更に表面粗度(Ra)が0.005μm(静摩擦係数(μs)が1.0、動摩擦係数(μd)が0.7)のPETフィルム(I)(厚み15μm)を用いた以外は同様に行い、上記と同様の評価を行った。
【0058】
実施例6
下記ベースポリマー(a)を125部用いた以外は、実施例1に準じて感光性樹脂組成物を調製し、更に表面粗度(Ra)が0.01μm(静摩擦係数(μs)が0.8、動摩擦係数(μd)が0.6)のPETフィルム(I)(厚み20μm)を用いた以外は同様に行い、上記と同様の評価を行った。
ベースポリマー(a)
メチルメタクリレート/n−ブチルアクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/メタクリル酸の共重合割合が重量基準で48/10/20/22である共重合体(酸価143mgKOH/g、ガラス転移点40.1℃、重量平均分子量7.5万)。
【0059】
比較例1
実施例1において、エチレン性不飽和化合物(b)としてエチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレートを40%、ポリピロピレングリコールジアクリレート60%からなるモノマーの混合物を用いた以外は、実施例1に準じて感光性樹脂組成物を調製し、上記と同様の評価を行った。
【0060】
比較例2
実施例1において、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレートの替わりにトリメチロールプロパントリアクリレートを用いた以外は、実施例1に準じて感光性樹脂組成物を調製し、上記と同様の評価を行った。
【0061】
比較例3
実施例1において、エチレン性不飽和化合物(b)として、2、2′−ビス−(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン(BPE−500)のみを用いた以外は、実施例1に準じて感光性樹脂組成物を調製し、上記と同様の評価を行った。
【0062】
比較例4
実施例1において、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(c)10部の替わりにp,p′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン1部を用いた以外は、実施例1に準じて感光性樹脂組成物を調製し,上記と同様の評価を行った。
【0063】
比較例5
実施例1において、酸価が91mgKOH/gのポリマーを用いて実施例1に準じて感光性樹脂組成物を調製し、上記と同様の評価を行った。
【0064】
比較例6
実施例1において、酸価が251mgKOH/gのポリマーを用いて実施例1に準じて感光性樹脂組成物を調製し、上記と同様の評価を行った。
【0065】
比較例7
実施例1において、重量平均分子量が3000の下記ベースポリマー(a)を用いて実施例1に準じて感光性樹脂組成物を調製し、上記と同様の評価を行った。
ベースポリマー(a)
メチルメタクリレート/スチレン/メタクリル酸の共重合割合が重量基準で45/30/25である共重合体(酸価163mgKOH/g、ガラス転移点118℃)。
【0066】
比較例8
実施例1において重量平均分子量が25万の下記ベースポリマー(a)を用いて実施例1に準じて感光性樹脂組成物を調製し、上記と同様の評価を行った。
ベースポリマー(a)
メチルメタクリレート/n−ブチルアクリレート/メタクリル酸の共重合割合が重量基準で65/10/25である共重合体(酸価163mgKOH/g、ガラス転移点94℃)。
【0067】
比較例9
実施例1において、支持体フィルム(I)として、表面粗度(Ra)が0.01μm(静摩擦係数(μs)が2.0、動摩擦係数(μd)が1.0)で、厚みが38μmのPETフィルムを用いた以外は同様に行い、上記と同様の評価した。
【0068】
比較例10
実施例1において、支持体フィルム(I)として、表面粗度(Ra)が0.025μm(静摩擦係数(μs)が0.6、動摩擦係数(μd)が0.4)で、厚みが20μmのPETフィルムを用いた以外は同様に行い、上記と同様の評価した。
実施例及び比較例の評価結果は、表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
【発明の効果】
本発明で得られたフォトレジストフィルムは、感度、解像力、レジスト剥離性に優れ、更に金属基板への密着性が良く、導体への染み込みや導体のかけがないといった耐エッチング性やメッキ時のメッキラインのギザツキがないといったメッキ性に優れるため、印刷配線板の製造、リードフレームの製造、厚膜レリーフパターンの製造、金属の精密加工等に用いられるエッチングレジスト又はメッキレジストとして有用である。
Claims (6)
- 支持体フィルム(I)/感光性樹脂組成物層(II)/保護フィルム(III)からなるフォトレジストフィルムにおいて、支持体フィルム(I)の厚みが10〜30μmで、表面粗度(Ra)が0.001〜0.015μmであり、かつ、感光性樹脂組成物層(II)が、酸価が95〜250mgKOH/gで、重量平均分子量が5000〜200000のベースポリマー(a)、エチレン性不飽和化合物(b)、自己開裂型開始剤(c)を含んでなり、かつ(b)中にエチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレートを50重量%以上含んでなることを特徴とするフォトレジストフィルム。
- 支持体フィルム(I)が易滑処理を施されてなり、かつ、該易滑処理面どうしの静摩擦係数(μs)が1.0以下、動摩擦係数(μd)が0.8以下である支持体フィルム(I)を用いることを特徴とする請求項1記載のフォトレジストフィルム。
- 感光性樹脂組成物層(II)が、更にN−フェニルグリシン(d)と2,4,5−トリフェニルイミダゾール二量体(e)を含んでなることを特徴とする請求項1又は2記載のフォトレジストフィルム。
- 感光性樹脂組成物層(II)が、酸価が95〜250mgKOH/gで、重量平均分子量が5000〜200000のベースポリマー(a)100重量部に対して、エチレン性不飽和化合物(b)を25〜100重量部、自己開裂型開始剤(c)を1.0〜15重量部、N−フェニルグリシン(d)を0.1〜1.0重量部、2,4,5−トリフェニルイミダゾール二量体(e)を0.5〜15重量部配合してなることを特徴とする請求項1、2又は3記載のフォトレジストフィルム。
- レリーフパターン製造用であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載のフォトレジストフィルム。
- レリーフパターンの巾が5〜200μmで、隣接するパターンとの間隔が10μm以上で、かつ巾と高さの比が1/1.5以下であることを特徴とする請求項5記載のフォトレジストフィルム。
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