JP4003595B2 - 脂肪族或いは脂環式ポリエステル及びその製造方法 - Google Patents

脂肪族或いは脂環式ポリエステル及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、脂肪族或いは脂環式ポリエステル及びその製造方法に関し、成形時の環状オリゴマーの副生が抑制され、それにより、成形体としたときの表面外観の低下をなくし、又、成形時の金型等の成形装置の汚染をなくした脂肪族或いは脂環式ポリエステル及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、脂肪族或いは脂環式ジオール成分と脂肪族或いは脂環式ジカルボン酸成分とに由来する構成繰返し単位から主としてなる脂肪族或いは脂環式ポリエステルは、生分解性を付与できるプラスチックとして注目され、フィルム、繊維、及び容器等その他成形体として各種包装資材、農業資材、漁業資材等に使用され、或いはその使用が試みられている。
【0003】
一方、ジオールとジカルボン酸或いはそのエステル形成性誘導体とをエステル化反応或いはエステル交換反応させた後、重縮合触媒の存在下に重縮合させることにより製造されるポリエステルにおいては、その重縮合時に一部が環化する反応が不可避的に生じて副生した環状オリゴマーが含有され、更に、溶融成形時にも環状オリゴマーが副生し、それらの環状オリゴマーが、成形体としたときの成形体表面にブリードアウトして表面外観を低下させるとか、或いは、成形時に金型等の成形装置を汚染し、得られる成形体の表面平滑性が損なわれて透明性を低下させるとか、金型等の成形装置の清掃のために生産性を大幅に低下させる等の問題を起こすことが知られている。
【0004】
これに対して、脂肪族或いは脂環式ポリエステルにおいて、ポリエステル中に含有される環状オリゴマー量の低減化を意図して、例えば、重縮合後のポリエステルを、又は更に多価イソシアネートと反応させたポリエステルを、ポリエステルの融点より10〜60℃以下の温度で水又は/及びアルコールに接触させる洗浄処理を施す方法(例えば、特許文献1参照。)が提案され、更に、この方法におけるポリエステル分子量の低下を抑制すべく、重縮合後のポリエステルを、又は更に多価イソシアネートと反応させたポリエステルを、脂肪族ケトン、環状脂肪族エーテル、及び脂肪族モノエステルから選ばれる1種以上の溶剤に、ポリエステルの融点未満、且つ溶剤の沸点未満の温度で接触させる洗浄処理を施す方法(例えば、特許文献2参照。)も提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−316276号公報。
【特許文献2】
特開2002−3606号公報。
【0006】
しかしながら、本発明者等の検討によると、これらの方法は、重縮合後のポリエステルにおける環状オリゴマーの低減化には効果が認められ、特に後者方法では洗浄処理によるポリエステルの分子量の低下も抑制できるものの、溶融成形時における環状オリゴマーの副生を抑制することは困難であり、依然として、環状オリゴマーの副生による前記問題の本質的解決に到り得ているものではないことが判明した。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前述の従来技術における現状に鑑みてなされたもので、従って、本発明は、成形時の環状オリゴマーの副生が抑制され、それにより、成形体としたときの表面外観の低下をなくし、又、成形時の金型等の成形装置の汚染をなくした脂肪族或いは脂環式ポリエステル及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、脂肪族或いは脂環式ジオール成分と脂肪族或いは脂環式ジカルボン酸成分とに由来する構成繰返し単位から主としてなり、環状オリゴマー含有量(CDA ;ppm)が4,000ppm以下で、且つ、230℃で2時間加熱した後の環状オリゴマー含有量(CDB ;ppm)の加熱前の前記環状オリゴマー含有量(CDA ;ppm)との差(CDB −CDA )が1,000ppm以下である脂肪族或いは脂環式ポリエステル、及び、脂肪族或いは脂環式ジオール成分と脂肪族或いは脂環式ジカルボン酸成分とに由来する構成繰返し単位から主としてなり、重縮合触媒の存在下に重縮合させることにより製造された脂肪族或いは脂環式ポリエステルに、該ポリエステルを、ケトン類、エーテル類、及びエステル類からなる群より選択された水可溶性有機溶剤と水との、重量比で50/50〜95/5の混合物に接触させるか、又は、これらの水可溶性有機溶剤に接触させた後、水に接触させる後処理を施す前記脂肪族或いは脂環式ポリエステルの製造方法、を要旨とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の脂肪族或いは脂環式ポリエステルは、脂肪族或いは脂環式ジオール成分と脂肪族或いは脂環式ジカルボン酸成分とに由来する構成繰返し単位から主としてなるものである。
【0010】
本発明において、構成繰返し単位のその脂肪族或いは脂環式ジオール成分としては、特に限定されるものではないが、脂肪族ジオール成分においては、その脂肪族炭化水素基の炭素数が2〜10であるものが好ましく、2〜6であるものが特に好ましく、又、脂環式ジオール成分においては、その脂環式炭化水素基の炭素数が3〜10であるものが好ましく、4〜8であるものが特に好ましい。
【0011】
その脂肪族或いは脂環式ジオール成分としては、具体的には、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の脂肪族ジオール、及び、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオールに由来するものが挙げられ、これらの中で、ポリエステルとしての物性面等から、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、及び1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来するものが好ましく、1,4−ブタンジオールに由来するものが特に好ましい。尚、これらの脂肪族或いは脂環式ジオール成分は、1種であっても2種以上が用いられていてもよい。
【0012】
又、構成繰返し単位のその脂肪族或いは脂環式ジカルボン酸成分としては、特に限定されるものではないが、脂肪族ジカルボン酸成分においては、その脂肪族炭化水素基の炭素数が0〜12であるものが好ましく、2〜6であるものが更に好ましく、又、脂環式ジカルボン酸成分においては、その脂環式炭化水素基の炭素数が5〜10であるものが好ましく、6〜8であるものが特に好ましい。
【0013】
その脂肪族或いは脂環式ジカルボン酸成分としては、具体的には、例えば、蓚酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸、ドデカジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、及び、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸等の脂環式ジカルボン酸、並びに、これらジカルボン酸の炭素数1〜4程度のアルキルエステル、無水物等のエステル形成性誘導体に由来するものが挙げられ、これらの中で、ポリエステルとしての物性面等から、琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸、及びこれらのエステル形成性誘導体に由来するものが好ましく、琥珀酸及びそのエステル形成性誘導体が特に好ましい。尚、これらの脂肪族或いは脂環式ジカルボン酸成分は、1種であっても2種以上が用いられていてもよい。
【0014】
本発明の脂肪族或いは脂環式ポリエステルは、前記脂肪族或いは脂環式ジオール成分と前記脂肪族或いは脂環式ジカルボン酸成分とに由来する構成繰返し単位から主としてなるが、更に、脂肪族或いは脂環式オキシカルボン酸成分、及びラクトン成分等の共重合成分に由来する構成繰返し単位を含有していてもよく、その脂肪族或いは脂環式オキシカルボン酸成分としては、具体的には、例えば、グリコール酸、乳酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル−n−酪酸、3−ヒドロキシ−n−酪酸、4−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−n−吉草酸、3−ヒドロキシ−n−吉草酸、4−ヒドロキシ−n−吉草酸、5−ヒドロキシ−n−吉草酸、2−ヒドロキシ−n−カプロン酸、2−ヒドロキシ−i−カプロン酸、3−ヒドロキシ−n−カプロン酸、4−ヒドロキシ−n−カプロン酸、5−ヒドロキシ−n−カプロン酸、6−ヒドロキシ−n−カプロン酸、p−ヒドロキシ(ヘキサヒドロ安息香酸)等に由来するものが、又、そのラクトン成分としては、例えば、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン、ラウロラクトン等に由来するものが、それぞれ挙げられる。これらの中で、乳酸、及びグリコール酸に由来するものが好ましく、乳酸に由来するものが特に好ましい。
【0015】
更に、本発明の脂肪族或いは脂環式ポリエステルの構成繰返し単位としては、共重合成分として、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン等の芳香族ジオール成分、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸成分、p−ヒドロキシ安息香酸等の芳香族オキシカルボン酸成分、及び、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、林檎酸、没食子酸、トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の三官能以上の多官能成分等の共重合成分に由来する構成繰返し単位を含有していてもよい。尚、以上の共重合成分は、1種であっても2種以上が用いられていてもよい。
【0016】
以上の構成繰返し単位の各成分の中で、本発明の脂肪族或いは脂環式ポリエステルとしては、全成分に対して、1,4−ブタンジオールに由来する成分の含有割合が10モル%以上で、琥珀酸に由来する成分の含有割合が15モル%以上を占めるポリエステルが特に好ましい。
【0017】
本発明の脂肪族或いは脂環式ポリエステルは、前記脂肪族或いは脂環式ジオールと前記脂肪族或いは脂環式ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とを、必要に応じて用いられる前記共重合成分と共に、エステル化反応或いはエステル交換反応を経て、重縮合触媒の存在下に重縮合させることにより製造されるが、基本的には、ポリエステルの慣用の製造方法による。即ち、前記脂肪族或いは脂環式ジオールと、前記脂肪族或いは脂環式ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とを、必要に応じて用いられる前記共重合成分と共に、スラリー調製槽に投入して攪拌下に混合して原料スラリーとなし、エステル化反応槽で常圧〜加圧下、加熱下で、エステル化反応させ、或いは、エステル交換触媒の存在下にエステル交換反応させた後、得られたエステル化反応生成物或いはエステル交換反応生成物としてのポリエステル低分子量体を重縮合槽に移送し、重縮合触媒の存在下に、常圧から漸次減圧としての減圧下、加熱下で、溶融重縮合させ、必要に応じて、引き続き固相重縮合装置に移送し、加熱下で固相重縮合させることにより製造される。尚、これらは連続式又は回分式でなされ、又、エステル化反応槽、重縮合槽、及び固相重縮合装置は、それぞれ一段としても多段としてもよい。
【0018】
尚、前記製造方法において、原料スラリーの調製時の前記脂肪族或いは脂環式ジオールと前記脂肪族或いは脂環式ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体との使用割合は、後者のジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体1モルに対して、前者のジオールを通常0.5〜2モル、好ましくは0.8〜1.5モルの範囲とされる。
【0019】
又、エステル化反応或いはエステル交換反応は、通常50〜300℃程度、好ましくは120〜260℃程度の温度、常圧から微減圧下で、生成する水又はアルコールを系外に留出させながら、通常20分〜5時間程度、好ましくは30分〜3時間程度の時間でなされ、その後、溶融重縮合に移行させ、溶融重縮合は、重縮合触媒の存在下、通常100〜350℃程度、好ましくは150〜300℃程度の温度、通常1〜1,300Pa程度、好ましくは10〜700Pa程度の減圧下で、通常1〜15時間程度、好ましくは1〜6時間程度の時間でなされる。
【0020】
又、重縮合触媒としては、ポリエステルの重縮合触媒として従来より慣用されている触媒が用いられ、例えば、二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、蓚酸ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド等のゲルマニウム化合物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、メトキシアンチモン等のアンチモン化合物、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、蓚酸チタン、蓚酸チタンカリウム等のチタン化合物等が挙げられ、更に、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキシド、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム等のマグネシウム化合物、及びコバルト化合物等が併用されて用いられる。これらの中で、本発明においては、ゲルマニウム化合物が特に好ましい。又、重縮合触媒の使用量は、前記ジオールと前記ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体等の原料100重量部に対して、通常0.001〜3重量部程度、好ましくは0.005〜1.5重量部程度とされる。
【0021】
又、本発明において、重縮合時には、本発明の効果を損なわない範囲で、前記各化合物以外の金属化合物を存在させてもよく、その場合の金属化合物としては、ジルコニウム、ハフニウム、クロム、モリブデン、タングステン、鉄、ニッケル、金、銀、銅、亜鉛、アルミニウム、錫、アンチモン、ランタン、セリウム等の酸化物、水酸化物、アルコキシド、炭酸塩、燐酸塩、カルボン酸塩、ハロゲン化物等の化合物が挙げられる。
【0022】
又、重縮合時には、前記重縮合触媒と共に、正燐酸、トリス(トリエチレングリコール)ホスフェート、エチルジエチルホスホノアセテート、エチルアシッドホスフェート、トリエチレングリコールアシッドホスフェート、亜燐酸等の燐化合物を安定剤として共存させてもよい。
【0023】
溶融重縮合後のポリエステルは、通常、重縮合槽の底部に設けられた抜き出し口からストランド状に抜き出して、水冷しながら若しくは水冷後、カッターで切断されてペレット状、チップ状等の粒状体とされ、引き続く固相重縮合は、その粒状体を、通常、130Pa〜常圧程度の圧力下、60〜220℃程度の温度で、30分〜50時間程度の時間加熱することによりなされる。この固相重縮合により、ポリエステルを更に高重合度化させ得ると共に、環状オリゴマー等の反応副生成物を低減化させることができる。
【0024】
本発明の脂肪族或いは脂環式ポリエステルは、ポリスチレン換算の数平均分子量が10,000〜200,000であるのが好ましく、30,000〜200,000であるのが更に好ましい。数平均分子量が前記範囲未満では、機械的強度が劣ることとなり、一方、前記範囲超過では、溶融成形性が低下し、成形機内での発熱等により環状オリゴマーが副生し易くなることとなる。
【0025】
そして、本発明の脂肪族或いは脂環式ポリエステルは、環状オリゴマー含有量(CDA ;ppm)が4,000ppm以下のものであり、2,000ppm以下であるのが好ましく、1,000ppm以下であるのが特に好ましい。環状オリゴマー含有量(CDA ;ppm)が前記範囲超過では、成形体としたときの表面外観の低下が避けられず、又、成形時の金型等の成形装置の汚染を生じることとなる。
【0026】
更に、本発明の脂肪族或いは脂環式ポリエステルは、230℃で2時間加熱した後の環状オリゴマー含有量(CDB ;ppm)の加熱前の前記環状オリゴマー含有量(CDA ;ppm)との差(CDB −CDA )が1,000ppm以下であり、800ppm以下であるのが好ましく、500ppm以下であるのが特に好ましい。環状オリゴマー含有量(CDA ;ppm)が前記範囲を満足していても、この加熱前後の環状オリゴマー含有量の差(CDB −CDA )が前記範囲超過では、成形体としたときの表面外観の低下が避けられず、又、成形時の金型等の成形装置の汚染を生じることとなる。
【0027】
本発明において、加熱前後の環状オリゴマー含有量の差(CDB −CDA )を前記範囲のものとするには、重縮合触媒の存在下に重縮合させることにより製造された前記脂肪族或いは脂環式ポリエステルに、ケトン類、エーテル類、及びエステル類からなる群より選択された水可溶性有機溶剤、及び水との接触による後処理を施すことによりなされ、その後処理方法としては、水可溶性有機溶剤と水とを同時又は逐次に接触させ、最終的にポリエステルを水可溶性有機溶剤と水の両方に接触させることになれば特に限定されるものではないが、好適には、前記重縮合により得られたポリエステル粒状体を、水溶性有機溶剤と水との混合物に接触させる方法、又は、水溶性有機溶剤に接触させた後、水に接触させる方法が挙げられる。
【0028】
ここで、前者方法における水可溶性有機溶剤としては、水に対する溶解度が5重量%以上であって、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジオキサン、トリオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類が用いられ、又、水との混合物におけるこれらの有機溶剤と水との混合割合は、重量比で50/50〜95/5とするのが好ましい。又、後者方法における水可溶性有機溶剤としても、水に対する溶解度が5重量%以上であって、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジオキサン、トリオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、及び、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類が用いられる。
【0029】
又、前者方法におけるポリエステルと、前記水可溶性有機溶剤と水との混合物との接触、後者方法におけるポリエステルと、前記水可溶性有機溶剤、及び水との接触方法としては、ポリエステルをそれらの処理液中に浸漬する方法が好ましいが、その他に、ポリエステルを仕込んだ容器内にそれらの処理液を循環させる方法や、ポリエステルにそれらの処理液を噴霧する方法等であってもよい。
【0030】
又、これらの接触処理における温度としては、前記水可溶性有機溶媒を用いる処理においては、室温から水可溶性有機溶剤の沸点の間の温度とするのが好ましく、その間のより高温度とするのが更に好ましく、又、水を用いる処理においては、室温から水の沸点の間の温度とするのが好ましく、60℃以上とするのが更に好ましい。又、処理時間としては、1分〜40時間とするのが好ましい。
【0031】
以上の本発明の脂肪族或いは脂環式ポリエステルは、必要に応じてポリエステルに通常添加される酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、核剤、可塑剤、着色剤、充填材等と共に、常法により溶融混練することにより成形用材料として調製され、例えば、圧縮成形法、押出成形法、射出成形法、中空成形法等のプラスチックの通常の溶融成形法により成形体とされ、又は更に、熱成形、延伸成形、発泡成形等の二次成形に付され、例えば、フィルム状、シート状、繊維状、トレイ状、ボトル状、パイプ状、その他特定形状等の成形体として、例えば、包装用資材、農業用資材、土木用資材、建築用資材、漁業用資材、自動車部品、家電部品、その他工業用資材等として用いられる。
【0032】
これらの中で、本発明の脂肪族或いは脂環式ポリエステルによる成形体としては、多量の廃棄量が発生する包装用資材、例えば、包装用フィルム、袋、トレイ、ボトル、緩衝用発泡体、魚箱等、及び、農業用資材、例えば、マルチングフィルム、トンネルフィルム、ハウスフィルム、日覆い、畦シート、発芽シート、植生マット、育苗床、植木鉢等、並びに自動車部品、家電部品等が好ましく、特に、土壌に近い状態で用いられる農業用資材が好ましい。
【0033】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0034】
実施例1
攪拌装置、加熱装置、窒素導入管、及び助剤添加口等を備えた反応容器に、1,4−ブタンジオール88.7重量部、琥珀酸100.2重量部、及び、予め1重量%の二酸化ゲルマニウムを溶解させた90重量%乳酸水溶液5.4重量部を仕込み、攪拌下に窒素ガスを導入しつつ210℃に昇温し、この温度で90分間反応させることによりエステル化反応させ、次いで、210℃から徐々に昇温すると共に、常圧から漸次減圧とし、230℃、67Paの真空下で、全重合時間4時間で溶融重縮合を行い、反応容器の底部に設けられた抜き出し口からストランド状に抜き出して、水冷後、カッターで切断してペレット状の脂肪族ポリエステルを得た。得られた脂肪族ポリエステルについて、以下に示す方法で数平均分子量を測定したところ、22,000であった。
【0035】
<数平均分子量の測定>
東ソー社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー「HLC−8020」を用い、クロロホルム溶媒とし、カラムは東ソー社製「PLgel−10μ−MIX」を用いて、ポリスチレン換算の数平均分子量を測定した。
【0036】
得られた脂肪族ポリエステルペレット30重量部を40℃に加熱したアセトンと水との混合物(重量比9:1)60重量部に10時間浸漬する後処理を施した後、以下に示す方法でポリエステル中の環状オリゴマー含有量(CDA )を測定したところ、700ppmであった。
【0037】
<環状オリゴマー含有量の測定>
島津製作所製液体クロマトグラフィー「LC−10A」を用い、移動相をアセトニトリル/水(容量比4/6)とし、カラムは資生堂社製「SHISEIDOCAPCELL PAK C−18 TYPE MG」を用いて環状二量体量を定量した。
【0038】
又、後処理したポリエステルの数平均分子量は22,000であり、後処理前に較べて低下は認められなかった。更に、後処理したポリエステルペレットをガラス容器に詰め、230℃で2時間加熱した後、取り出して、前記の方法でポリエステル中の環状オリゴマー含有量(CDB )を測定したところ、1,100ppmであり、その差(CDB −CDA )は400ppmであった。
【0039】
又、この後処理したポリエステルペレットを用いて、200℃で厚さ300μmのシートをプレス成形し、そのシートを室温で1ケ月放置した後、表面におけるブリードアウト物の有無を目視観察したところ、ブリードアウト物は全く認められなかった。
【0040】
実施例2
実施例1で得られた脂肪族ポリエステルペレット30重量部を、60重量部のアセトン還流下に4時間浸漬した後、95℃の熱水に1時間浸漬する後処理を施した。そのポリエステル中の環状オリゴマー含有量(CDA )を測定したところ、600ppmであった。又、数平均分子量は21,000であり、後処理前に較べて低下は無視できる程度であった。この後処理したポリエステルペレットをガラス容器に詰め、230℃で2時間加熱した後、前記の方法でポリエステル中の環状オリゴマー含有量(CDB )を測定したところ、1,000ppmであり、その差(CDB −CDA )は400ppmであった。又、この後処理したポリエステルペレットを用いて、200℃で厚さ300μmのシートをプレス成形し、そのシートを室温で1ケ月放置した後、表面におけるブリードアウト物の有無を目視観察したところ、ブリードアウト物は全く認められなかった。
【0041】
実施例3
攪拌装置、加熱装置、窒素導入管、及び助剤添加口等を備えた反応容器に、1,4−ブタンジオール88.7重量部、琥珀酸90.2重量部、テレフタル酸14.1重量部、及び、予め1重量%の二酸化ゲルマニウムを溶解させた90重量%乳酸水溶液5.4重量部を仕込み、攪拌下に窒素ガスを導入しつつ210℃に昇温し、この温度で120分間反応させることによりエステル化反応させ、次いで、210℃から徐々に昇温すると共に、常圧から漸次減圧とし、230℃、67Paの真空下で、全重合時間5時間で溶融重縮合を行い、反応容器の底部に設けられた抜き出し口からストランド状に抜き出して、水冷後、カッターで切断してペレット状の脂肪族ポリエステルを得た。得られた脂肪族ポリエステルについて、前記の方法で数平均分子量を測定したところ、21,000であった。
【0042】
得られた脂肪族ポリエステルペレット30重量部を40℃に加熱したアセトンと水との混合物(重量比9:1)60重量部に10時間浸漬する後処理を施した後、前記の方法でポリエステル中の環状オリゴマー含有量(CDA )を測定したところ、600ppmであった。又、数平均分子量は21,000であり、後処理前に較べて低下は認められなかった。この後処理したポリエステルペレットをガラス容器に詰め、230℃で2時間加熱した後、前記の方法でポリエステル中の環状オリゴマー含有量(CDB )を測定したところ、1,100ppmであり、その差(CDB −CDA )は500ppmであった。又、この後処理したポリエステルペレットを用いて、200℃で厚さ300μmのシートをプレス成形し、そのシートを室温で1ケ月放置した後、表面におけるブリードアウト物の有無を目視観察したところ、ブリードアウト物は全く認められなかった。
【0043】
比較例1
実施例1で得られた脂肪族ポリエステルペレット30重量部を、60重量部のアセトン還流下に4時間浸漬する後処理を施した後、前記の方法でポリエステル中の環状オリゴマー含有量(CDA )を測定したところ、600ppmであった。又、数平均分子量は22,000であった。この後処理したポリエステルペレットをガラス容器に詰め、230℃で2時間加熱した後、前記の方法でポリエステル中の環状オリゴマー含有量(CDB )を測定したところ、2,100ppmであり、その差(CDB −CDA )は1,500ppmであった。又、この後処理したポリエステルペレットを用いて、200℃で厚さ300μmのシートをプレス成形し、そのシートを室温で1ケ月放置した後、表面におけるブリードアウト物の有無を目視観察したところ、ブリードアウト物の存在が確認された。
【0044】
比較例2
実施例1で得られた脂肪族ポリエステルペレット30重量部を、95℃の熱水に1時間浸漬する後処理を施した後、前記の方法でポリエステル中の環状オリゴマー含有量(CDA )を測定したところ、7,200ppmであった。又、数平均分子量は20,000であった。この後処理したポリエステルペレットをガラス容器に詰め、230℃で2時間加熱した後、前記の方法でポリエステル中の環状オリゴマー含有量(CDB )を測定したところ、7,500ppmであり、その差(CDB −CDA )は300ppmであった。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、成形時の環状オリゴマーの副生が抑制され、それにより、成形体としたときの表面外観の低下をなくし、又、成形時の金型等の成形装置の汚染をなくした脂肪族或いは脂環式ポリエステル及びその製造方法を提供することができる。

Claims (7)

  1. 脂肪族或いは脂環式ジオール成分と脂肪族或いは脂環式ジカルボン酸成分とに由来する構成繰返し単位から主としてなり、環状オリゴマー含有量(CDA ;ppm)が4,000ppm以下で、且つ、230℃で2時間加熱した後の環状オリゴマー含有量(CDB ;ppm)の加熱前の前記環状オリゴマー含有量(CDA ;ppm)との差(CDB −CDA )が1,000ppm以下であることを特徴とする脂肪族或いは脂環式ポリエステル。
  2. 構成繰返し単位の脂肪族或いは脂環式ジオール成分が、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、及び1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる群より選択された少なくとも1種に由来し、脂肪族或いは脂環式ジカルボン酸成分が、琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸、及びこれらのエステル形成性誘導体からなる群より選択された少なくとも1種に由来する請求項1に記載の脂肪族或いは脂環式ポリエステル。
  3. 更に、脂肪族或いは脂環式オキシカルボン酸成分に由来する構成繰返し単位を含む請求項1又は2のいずれかに記載の脂肪族或いは脂環式ポリエステル。
  4. 脂肪族或いは脂環式ジオール成分と脂肪族或いは脂環式ジカルボン酸成分とに由来する構成繰返し単位から主としてなり、重縮合触媒の存在下に重縮合させることにより製造された脂肪族或いは脂環式ポリエステルに、該ポリエステルを、ケトン類、エーテル類、及びエステル類からなる群より選択された水可溶性有機溶剤と水との、重量比で50/50〜95/5の混合物に接触させるか、又は、これらの水可溶性有機溶剤に接触させた後、水に接触させる後処理を施すことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の脂肪族或いは脂環式ポリエステルの製造方法。
  5. 水可溶性有機溶剤と水との混合物に接触させる後処理を、水可溶性有機溶剤と水との混合物中にポリエステルを浸漬させることにより行う請求項4に記載の脂肪族或いは脂環式ポリエステルの製造方法。
  6. 水可溶性有機溶剤に接触させた後、水に接触させる後処理を、水可溶性有機溶剤中にポリエステルを浸漬させた後、水中に浸漬させることにより行う請求項4に記載の脂肪族或いは脂環式ポリエステルの製造方法。
  7. 水可溶性有機溶剤がアセトンである請求項4乃至6のいずれかに記載の脂肪族或いは脂環式ポリエステルの製造方法。
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