JP4002022B2 - 光信号伝送用耐熱多芯プラスチック光ファイバ素線及びケーブル - Google Patents

光信号伝送用耐熱多芯プラスチック光ファイバ素線及びケーブル Download PDF

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、車載用配線、FA機器配線、パソコン配線などの光信号伝送や、光電センサーなどに使用される、耐熱性で、且つ機械的にも座屈しにくい多芯プラスチック光ファイバ素線及びケーブルに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリメチルメタクリレート(PMMA)系樹脂からなる芯を有する多芯プラスチック光ファイバの鞘樹脂については、特開平5−134120号公報に記載されているごとくビニリデンフロライド80モル%とテトラフロロエチレン20モル%からなる2元共重合体が特に有名であり、実用化されている。
【0003】
そのほか、ビニリデンフロライドとテトラフロロエチレンとヘキサフロロプロペン共重合体が使用できることが記載されているがそのような共重合体は無数にあるにもかかわらず、特に好ましい共重合体組成についての具体的な記載はなく、未だ多芯プラスチック光ファイバでの実用化はない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
近年多芯プラスチック光ファイバの曲げ特性の良さを買って、多方面の光通信用途にこのプラスチック光ファイバを使用したいという要求が非常に強くなっている。かつて光ケーブルは固定配線で使用する使われ方をしていたが、通信速度の高速化による光ファイバの利用が拡大し、光ファイバ配線が身の回りの可動配線にまで使用されるようになるに従い、多芯プラスチック光ファイバの適用の範囲が急激に拡大して来た。特にビニリデンフロライド系樹脂からなる鞘を用いた多芯プラスチック光ファイバは、芯間の保持性に優れ、機械的にも繰り返し屈曲や振動に耐える能力に著しく優れているので、期待が大きい。それに伴い、多芯プラスチック光ファイバの適用環境が、従来の70℃以下の範囲から、さらに高温、高湿度側に広がりつつあるが、80℃、湿度95%程度の高湿度高温度領域や100℃程度の高温下でも伝送損失が十分低い多芯プラスチック光ファイバはなかった。
【0005】
本発明の目的は、上記問題を解決し、高温・高湿の環境下においても伝送損失が低く、且つ機械的な座屈にも耐える多芯プラスチック光ファイバを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は第一に、ポリメチルメタクリレート系の芯樹脂からなる芯繊維と、その芯繊維の周りを、鞘樹脂としてビニリデンフロライドとテトラフロロエチレンとへキサフロロプロペンの3元共重合体またはビニリデンフロライドとヘキサフロロプロペンの2元共重合体であって、ビニリデンフロライド成分が30〜92モル%、テトラフロロエチレン成分が0〜55モル%、ヘキサフロロプロペン成分が8〜25モル%の範囲にあり、ナトリウムD線で20℃で測定した屈折率が1.350〜1.380の範囲にあり、23℃におけるショアD硬度(ASTMD2240)の値が30〜55の範囲にあり、メルトフローインデックス(230℃、荷重3.8Kg、オリフィスの直径2mm、長さ8mm条件)が、5g/10分〜100g/10分の流動性を示す樹脂でとり囲んで鞘層となし、さらに該鞘層の周りを、120℃以上の融点を有し且つビカット軟化温度(ASTMD1525)が110℃以上であるビニリデンフロライド系樹脂で被覆した保護層とを有する心線を、7本以上一纏めになるように複合紡糸してなることを特徴とする光信号伝送用耐熱多芯プラスチック光ファイバ素線を提供するものである。
【0007】
本発明において好ましくは、上記鞘樹脂が、ビニリデンフロライド成分が40〜62モル%、テトラフロロエチレン成分が28〜40モル%、ヘキサフロロプロペン成分が8〜22モル%の範囲にあり、23℃におけるショアD硬度(ASTM D2240)が35〜45の範囲にあるプラスチック光ファイバ素線である。
【0008】
さらに本発明において好ましくは、上記保護層の外側に、熱可塑性樹脂からなる第2の保護層を設ける。該第2の保護層としては、ビニリデンフロライド構造単位が70重量%以上であり、ショアD硬度(ASTM D2240)が60以上である、ビニリデンフロライド系の樹脂からなり、厚さが50μm以上のものが好ましい。
【0009】
また本発明は第二に、上記本発明の多芯プラスチック光ファイバ素線の周りに熱可塑性樹脂からなる被覆層を設けたことを特徴とする光信号伝送用耐熱多芯プラスチック光ファイバケーブルを提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1、図2に本発明の多芯プラスチック光ファイバ素線の、図3に図2の素線を用いて構成したケーブルの実施形態の断面図をそれぞれ示す。図中、1は芯、2は鞘層、3は保護層、4は心線で、図1の多芯プラスチック光ファイバ素線は該心線4を7本以上を一纏めにして複合紡糸してなり、図2の多芯プラスチック光ファイバ素線は図1の素線の外側にさらに第2の保護層5を被覆しており、さらに図3のケーブルは図2の素線の周囲に熱可塑性樹脂からなる被覆層6を設けてケーブルとしている。
【0011】
多芯プラスチック光ファイバの芯樹脂としてPMMA系樹脂が好ましいことは公知である。そのような樹脂としてはメチルメタクリレート単独重合体や、メチルメタクリレートを50重量%以上含んだ共重合体で、共重合可能な成分として、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどのアクリル酸エステル類、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸シクロヘキシルなどのメタクリル酸エステル類、イソプロピルマレイミドのようなマレイミド類、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンなどがあり、これらの中から一種以上適宜選択して共重合させることができる。
【0012】
上記PMMA系樹脂からなる芯に対し鞘樹脂としては、従来、ビニリデンフロライド80モル%とテトラフロロエチレン20モル%からなる共重合体が使用されているが、80℃以上の高温では伝送損失値が増加するという問題があった。これに対しビニリデンフロライドとテトロフロロエチレンとヘキサフロロプロペンからなる共重合体がプラスチック光ファイバの鞘として提案はされていたがその具体的な組成の明示はなく、80℃以上の高い湿度でも低い伝送損失値を保つような多芯プラスチック光ファイバは無かった。
【0013】
本発明者は従来、樹脂が柔らか過ぎたり、芯のPMMA系樹脂との十分な密着力が無いために、プラスチック光ファイバの鞘には不適当だとして敬遠されていた、ビニリデンフロライド成分が30〜92モル%、テトロフロロエチレン成分が0〜55モル%、ヘキサフロロプロペン成分が8〜25モル%の範囲にあり、23℃におけるショアD硬度が30〜55のビニリデンフロライド系樹脂について鋭意検討を行った。
【0014】
上記ビニリデンフロライド系樹脂は極めて透明性に優れている。しかしながら、芯のPMMA系樹脂に対する相溶性がなく、PMMAからなる板に該ビニリデンフロライド系樹脂フィルムをプレス成形して行う剥離テストでは容易に該フィルムの剥離が生じるなど、接着性も弱く、またこのビニリデンフロライド系樹脂は軟らかすぎて容易に変形するという問題がある。
【0015】
しかしながら、上記特定のビニリデンフロライド系樹脂を多芯プラスチック光ファイバに実際に適用してみたところ、従来のビニリデンフロライド系樹脂からなる鞘に比べて高温下での伝送損失の安定性に優れた多芯プラスチック光ファイバが得られることを発見した。
【0016】
本発明に鞘樹脂として用いる特定のビニリデンフロライ系樹脂は、従来のプラスチック光ファイバの鞘におけるビニリデンフロライド系樹脂の選択思想とは異なるものである。即ち、従来の鞘樹脂の選択思想における好ましいビニリデンフロライド系鞘樹脂とは、透明性が高く、芯樹脂との相溶性に優れ芯樹脂と混ざって透明になるもの、耐熱性(融点)が高いものであった。しかし、実際に、これらを全て満足する鞘樹脂は存在しておらず、現実の樹脂においては高透明性と高融点或いは高軟化温度が相反しており、且つ芯のPMMA系樹脂と相溶化する樹脂も無いのが実情であった。そのため、従来の選択は、鞘がやや不透明であっても、芯と鞘が相溶化すれば、その部分が透明となり、伝送損失が確保できるということに主眼を置き、鞘樹脂が選定されてきたのである。
【0017】
一方、本発明に用いる鞘樹脂は、透明性は抜群であるが、芯樹脂との相溶性は十分でなく、混ぜると濁る。そして、樹脂は非常に柔らかいものであるので、従来とは異なる思想に基づく。しかし、この鞘樹脂を用いた多芯プラスチック光ファイバの特長としては、伝送性能が80℃以上、場合によっては85℃の高湿度条件下でも安定であり、さらに100℃においても安定である。ここで、伝送性能が安定であるとは、平行光線に近い入射光源の場合のみならず、LED光のように広角度の光源に対しても光受光量の変化が少ないことを意味している。
【0018】
従来のビニリデンフロライド系樹脂からなる鞘を有するプラスチック光ファイバでは、その伝送損失を芯と鞘の界面の相溶帯域の透明性に依存していた。そのため、芯の直径が1000μm程度と大きい時は、この相溶帯域も1μm程度に大きくなり比較的安定であるが、多芯プラスチック光ファイバのように芯の直径が小さくなると、相溶帯域の厚さが非常に薄くなり、熱に対する安定性が大きく低下することがわかった。本発明においては、好ましくはこの相溶帯域を作らない、可撓性を有する樹脂を用いたことに特徴を有する。本発明の多芯プラスチック光ファイバでは鞘樹脂が常に透明であるため、高温でも伝送損失値が安定しているのである。
【0019】
また、芯と鞘の密着性については、従来のビニリデンフロライド系樹脂からなる鞘を有するプラスチック光ファイバでは完全に相溶して極めて強固である。これに対し、PMMA系樹脂からなる芯の周囲を本発明にかかるビニリデンフロライド系樹脂からなる鞘で取り囲んだだけの多芯プラスチック光ファイバの場合は、硝子に柔らかい吸盤が密着するのと同じように、芯に鞘が面と面で貼り付いているものであるため、多芯プラスチック光ファイバが断線するようなことは無いが、素線の状態で2mm以下程度の曲げ半径で急俊に曲げたような場合には、ファイバは座屈したように変形するという問題が生じることが判明した。素線の周りにケーブル被覆などを施した場合はこのようなことはかなり抑制されるが、ケーブルの場合でも被覆を剥がして素線の状態で急俊に曲げるような用途の可能性を考慮すれば、この座屈問題は解決しておいた方が好ましく、本発明はこの検討の結果到達したものである。
【0020】
即ち、本発明の多芯プラスチック光ファイバ素線は、芯の周囲を鞘で取り囲み、さらに各々の鞘層の周りを120℃以上の融点を有しかつビカット軟化温度(ASTM D1525)が110℃以上であるビニリデンフロライド系樹脂で被覆して保護層となした心線を、7本以上一纏めになるように複合紡糸するものである。
【0021】
ここで素線断面における芯、鞘層、保護層の各断面積の比率について述べれば、芯の比率が60%〜90%程度、より好ましくは75%〜90%である。60%未満では光量が少ないのであまり好ましくない。90%を超えると、芯が円形から変形してくるので伝送損失が大きくなり過ぎる。鞘層の面積は2%〜20%、より好ましくは2%〜10%である。保護層の断面積は8%〜20%、より好ましくは10%〜20%である。鞘層は芯の周りをほぼリング状に配置され、保護層は鞘層の周りを取り囲みつつ隣接する芯線と連結するものであり、特に機械的な補強のためには、芯以外の面積の大半を保護層にまわすのがよい。
【0022】
本発明において、好ましくは、素線の直径は0.2mm〜3.0mm、さらに好ましくは0.5mm〜2.0mmである。また鞘層の厚さは、好ましくは1μm〜30μm、より好ましくは1μm〜20μmである。さらに保護層の厚さは、好ましくは1μm〜50μmであり、望ましくは1μm〜30μmである。
【0023】
本発明に用いる鞘樹脂はナトリウムD線で20℃で測定した屈折率(nd20)が1.350〜1.380の範囲にある透明な樹脂である。
【0024】
本発明に用いる鞘樹脂としてはショアD硬度(ASTM D2240)の値が30〜55である。この値が55より高いと芯と鞘の面と面の摩擦力が弱くなり、本発明の組成領域の鞘樹脂は本質的にPMMA系樹脂とは相溶しないので、硬い鞘樹脂は芯から容易に剥離しやすくなり、芯が鞘から飛び出したする。30未満では鞘が流動してしまい、芯が鞘から飛び出したり、引っ込んだりする。より好ましくは35〜45である。
【0025】
さらに総合的な鞘樹脂の好ましい特性として、透明性と樹脂硬度をより満足する樹脂としては、その組成がビニリデンフロライド成分が40〜62モル%、テトラフロロエチレン成分が28〜40モル%、ヘキサフロロプロペン成分が8〜22モル%の範囲にあり、23℃におけるショアD硬度(ASTM D2240)の値が35〜45の樹脂が好ましい。
【0026】
本発明において、鞘樹脂のメルトフローインデックスは、230℃、荷重3.8Kg、オリフィスの直径2mm、長さ8mm条件で測定される値で、5g/10分〜100g/10分の範囲にあるものが要求されるが、この値が5より低いと、多芯プラスチック光ファイバの各芯を万遍なく被覆するのが困難になる。また100を超えると、強度が弱くなり、芯を強固に支持出来なくなる。好ましくは5〜40g/10分である。
【0027】
また、本発明においてビカット軟化温度はASTM D1525に準じて荷重1.0kg、昇温速度2℃/分で針が深さ1mm刺さった時の温度を言う。
【0028】
尚、本発明に用いる鞘樹脂の各成分の含有量は、NMRにより測定することができる。具体的には、鞘樹脂試料の適量をアセトン−d6とα,α,α−トリフロロトルエンとの混合溶媒に溶解してなる試料溶液を用意し、観測周波数は1Hが400MHz、19Fが376MHzとし、化学シフトの基準物として、1H−NMRはテトラメチルシランを基準に換算し、19F−NMRはトリクロロフロロメタンを基準に換算した。スペクトルからの各成分濃度の算出は次式により求めた重量%組成を、モル%換算する。
【0029】
【数1】
Figure 0004002022
【0030】
尚、上記式中、
A:試料溶液中のトリフロロトルエンmmol数
B:1H−NMRで2.2〜2.7ppmと3.0〜3.8ppmの積分値合計
C:1H−NMRで7.0〜8.5ppmの積分値
D:試料溶液中の試料mg数
E:19F−NMRで−67〜−78ppmの積分値
F:19F−NMRで−62〜−66ppmの積分値
【0031】
次に保護層のビニリデンフロライド系樹脂としては、ポリビニリデンフロライド、ポリビニリデンフロライド−クロロトリフロロエチレンのランダム共重合体にビニリデンフロライドをグラフトさせた共重合体、ポリビニリデンフロライド−テトラフロロエチレン共重合体、ポリビニリデンフロライド−ヘキサフロロプロペン共重合体、ポリビニリデンフロライド−テトラフロロエチレン−ヘキサフロロプロペン共重合体、ポリビニリデンフロライド−クロロトリフロロエチレン共重合体などである。特にビニリデンフロライド80モル%とテトラフロロエチレン20モル%からなる共重合体などは好適である。これらのビニリデンフロライド系樹脂の融点は120℃以上でかつビカット軟化温度が110℃以上の耐熱性を示すものが必要であるが、より好ましくは融点が125〜180℃、ビカット軟化温度が115℃以上、23℃におけるショアD硬度(ASTM D2240)の値が56以上である硬質樹脂で被覆すれば、より高い耐熱性が確保できる。本発明において、保護層のビニリデンフロライド系樹脂としては不透明なものも使用可能である。
【0032】
本発明においては、上記芯と鞘と保護層からなる素線を裸線として、さらにその外側に、熱可塑性樹脂からなる第2の保護層を設けることにより、より強度の増した素線が得られる。第2の保護層を形成する熱可塑性樹脂としては、ナイロン12やビニリデンフロライド系樹脂が好ましく用いられ、特に、ビニリデンフロライド構造単位が70重量%以上であり、ショアD硬度(ASTM D2240)が60以上である、ビニリデンフロライド系の樹脂からなり、厚さが50μm以上の第2の保護層を設けることにより、より強度の増した素線が得られる。当該第2の保護層は、上記裸線の保護層に強固に密着しており、一体不可分的に取り扱うことができる。固いビニリデンフロライド系樹脂からなる第2の保護層は、内部の裸線を保護し、曲げによるファイバの潰れを抑制し、座屈を生じにくくすることができる。また、コネクタ端末に固定する際にも、該第2の保護層を剥す必要はないため、該固定作業における座屈も当然防止することができる。当該第2の保護層の厚さは、50μm以上であればその効果が得られ、好ましくは200μm以上であり、通常のファイバ素線の直径から鑑みて、500μm以下の範囲で適宜設定される。
【0033】
本発明の多芯プラスチック光ファイバの製造方法について説明すれば、溶融状態の芯樹脂と鞘樹脂と保護層樹脂をそれぞれギヤポンプなどの定量供給装置を用いて芯の断面積と鞘の断面積と保護層の断面積の比率に合わせた供給量で、3層複合紡糸ダイに供給し紡糸する。得られた複合紡糸ダイ出口のストランドを機械的強度を付与するため、通常、110℃〜150℃程度の温度で1.3〜5倍に延伸させ、そのあと歪みをとるため同様の温度で熱処理して、素線とする。本発明において、第2の保護層を形成する場合には、上記複合紡糸して得られた素線を裸線としてその外側に、第2の保護層樹脂を延伸をかけることなく被覆すればよい。また、通常は、これら素線の外側に、さらに、延伸をかけることなく熱可塑性樹脂でジャケット被覆して被覆層を形成し、ケーブルとして使用する。
【0034】
上記ケーブルを形成する際の被覆層に用いる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ナイロン12、その他のポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン、ビニリデン系フロライド樹脂などである。また、その好ましい厚さは100μm〜2000μmである。本発明の多芯プラスチック光ファイバは耐熱性と引き回し性の要求される車載ケーブルやパソコンの配線やオーディオの配線や、光電センサーなどに使用される。
【0035】
【実施例】
[実施例1]
芯樹脂として屈折率nd20が1.492のポリメチルメタクリレート樹脂で重量平均分子量が10万の樹脂を用いた。鞘樹脂としては、ビニリデンフロライド57モル%、テトロフロロエチレン32モル%、ヘキサフロロプロペン11モル%からなる共重合体で、230℃、3.8Kg荷重におけるメルトフローインデックスが7.2g/10分、測定条件を変えて240℃、10kg荷重でのメルトフローインデックスが27g/10分、屈折率nd20が1.364、23℃におけるショアD硬度(ASTM D2240)の値が41の樹脂を用いた。また、保護層樹脂としてはビニリデンフロライド72重量%とテトラフロロエチレン28重量%からなる共重合体で、230℃、3.8Kg荷重におけるメルトフローインデックスが30g/10分であり、融点が127℃、ビカット軟化温度が119℃のビニリデンフロライド系樹脂を用いた。
【0036】
尚、上記鞘樹脂の各成分の含有量については、アセトン−d6を91重量部とα,α,α−トリフロロトルエン9重量部からなる混合溶媒100重量部に鞘樹脂を9〜10重量部精秤して溶解して調製した試料溶液を用い、前述した通り、NMRで測定して求めた。
【0037】
上記芯樹脂、鞘樹脂、保護層樹脂の3つの樹脂をギヤポンプを用いて容積比にて、80対7対13の割合で37芯からなる3層複合紡糸ダイに導入した。紡糸ダイの温度は240℃とした。紡糸ダイから排出されるストランドを常法により2倍に延伸し、熱処理して直径1000μmの多芯プラスチック光ファイバ素線を得た。
【0038】
上記素線の伝送損失は650nmの波長で、入射NA0.15で測定し145dB/kmであった。この素線を半径2mmの棒の回りに巻付けたが、素線は座屈することはなかった。
【0039】
上記素線に黒色ポリエチレンのジャケットをほどこし、外径2.2mmのプラスチック光ファイバケーブルを製造し、信頼性のテストを行った。まず、85℃で95%の湿度のオーブンに1000時間放置したときの伝送損失値は180dB/kmと安定していた。別の耐熱試験として、100℃の乾熱状態に1000時間放置した場合でも150dB/kmと安定していた。
【0040】
これらの伝送損失値は比較的入射角の小さい時の値であるが、LEDを光源にして、光ファイバケーブル10mのサンプルに光を入射せしめ、その出射光の値の評価を行なった。用いた装置はハクトロニクス社製のオプティカルパワーメータ「PHOTOM 205」で、650nmの発光波長で、入射NAは0.6以上のものである。その結果、テスト前の出射光量が−18.0dBmであったものを、85℃、95%の湿度下に500時間置いた後の値は−18.6dBmで、変化は小さかった。同様に105℃に500時間置いたものの値は−18.5dBmであり、これもまた、極めて安定していた。
【0041】
[実施例2]
実施例1の素線を裸線として用い、その外側に、さらにビニリデンフロライド系樹脂を被覆して第2の保護層を形成した。被覆にはクロスヘッドダイを使用し、上記裸線には延伸をかけないようにした。用いたビニリデンフロライド系樹脂は、ポリビニリデンフロライドと、ビニリデンフロライドとクロロトリフロロエチレンとの共重合体との混合物で、ビニリデンフロライド成分が90重量%、ショアD硬度が23℃で74のものを用いた。第2保護層の厚さは0.3mmとし、外径1.6mmの多芯プラスチック光ファイバ素線を得た。
【0042】
得られた素線を半径が1mmの棒の周りに360°巻きつけ、解除したところ、なだらかな曲線状に素線が回復し、座屈は生じなかった。なお、裸線については、当該テストにおいて座屈を生じ、鋭角の折れが生じた。
【0043】
[比較例1]
実施例1と同様の芯樹脂と鞘樹脂を用いた。紡糸ダイは37本の芯とそれを取り囲む鞘からなる2層構造ダイを用いた。芯樹脂、鞘樹脂をギヤポンプにより、容量比率が80対20になるように複合紡糸ダイに供給し、実施例1と同様にして直径1000μmの多芯プラスチック光ファイバ裸線を得た。この裸線の伝送損失は140dB/kmであった。しかしこの裸線を半径5mmの棒に巻き付けても座屈は発生しなかったが、半径2mmの棒に巻き付けた場合には裸線に座屈が生じファイバに復元できない折れが生じた。
【0044】
[比較例2]
芯樹脂として屈折率nd20が1.492のポリメチルメタクリレート樹脂で重量平均分子量が10万の樹脂を用いた。鞘樹脂としては、特開平1−74505号公報に記載されている、直径が1mm程度の単芯のプラスチック光ファイバにおいてはPMMAの芯と鞘層との間に0.7μm程度の相溶帯域を示すようなビニリデンフロライド94モル%とヘキサフロロプロペン6モル%からなる共重合体を用いた。保護層樹脂は実施例1と同じものを用い、紡糸ダイも37本の芯と各芯を取り囲む鞘からなる2層構造ダイを用いた。芯樹脂、鞘樹脂をギヤポンプにより、容量比率が80対20になるように複合紡糸ダイに供給し、実施例1と同様にして直径1000μmの多芯プラスチック光ファイバ裸線を得た。この多芯プラスチック光ファイバ裸線にポリエチレン樹脂を被覆し、外径2.2mmの多芯プラスチック光ファイバケーブルを得た。
【0045】
得られた多芯プラスチック光ファイバケーブルの伝送損失は、650nmの単色光で、入射NAが0.15で測定した値が150dB/kmであった。このケーブルを10mとり、実施例1と同様に650nmのオプティカルパワーメータを用いてLEDでの出射光を測定した。その結果、新しいケーブルの出射光量は−19.0dBmであった。次に、このケーブルを85℃で95%湿度下に500時間置いた時の出射光量は−27.0dBmに大きく変化していた。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のプラスチック光ファイバ素線及びケーブルは、耐熱性及び強度に優れているため、高温・低湿及び高温・高湿の過酷な環境下においても伝送損失が十分に低く、しかも曲げによる座屈を生じにくいため、高温環境や狭い環境での使用や可動配線としての使用にも耐え、光ファイバの広範囲な用途への利用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多芯プラスチック光ファイバ素線の一実施形態の断面図である。
【図2】本発明の多芯プラスチック光ファイバ素線の他の実施形態の断面図である。
【図3】図2の素線を用いて構成した本発明の多芯プラスチック光ファイバケーブルの一実施形態の断面図である。
【符号の説明】
1 芯
2 鞘層
3 保護層
4 心線
5 第2の保護層
6 被覆層

Claims (5)

  1. ポリメチルメタクリレート系の芯樹脂からなる芯繊維と、その芯繊維の周りを、鞘樹脂としてビニリデンフロライドとテトラフロロエチレンとへキサフロロプロペンの3元共重合体またはビニリデンフロライドとヘキサフロロプロペンの2元共重合体であって、ビニリデンフロライド成分が30〜92モル%、テトラフロロエチレン成分が0〜55モル%、ヘキサフロロプロペン成分が8〜25モル%の範囲にあり、ナトリウムD線で20℃で測定した屈折率が1.350〜1.380の範囲にあり、23℃におけるショアD硬度(ASTMD2240)の値が30〜55の範囲にあり、メルトフローインデックス(230℃、荷重3.8Kg、オリフィスの直径2mm、長さ8mm条件)が、5g/10分〜100g/10分の流動性を示す樹脂でとり囲んで鞘層となし、さらに該鞘層の周りを、120℃以上の融点を有し且つビカット軟化温度(ASTMD1525)が110℃以上であるビニリデンフロライド系樹脂で被覆した保護層とを有する心線を、7本以上一纏めになるように複合紡糸してなることを特徴とする光信号伝送用耐熱多芯プラスチック光ファイバ素線。
  2. 上記鞘樹脂が、ビニリデンフロライド成分が40〜62モル%、テトラフロロエチレン成分が28〜40モル%、ヘキサフロロプロペン成分が8〜22モル%の範囲にあり、23℃におけるショアD硬度(ASTM D2240)が35〜45の範囲にある請求項1記載の光信号伝送用耐熱多芯プラスチック光ファイバ素線。
  3. 上記保護層の外側に、熱可塑性樹脂からなる第2の保護層を設けた請求項1または2記載の光信号伝送用耐熱多芯プラスチック光ファイバ素線。
  4. 上記第2の保護層が、ビニリデンフロライド構造単位が70重量%以上であり、ショアD硬度(ASTM D2240)が60以上である、ビニリデンフロライド系樹脂からなり、厚さが50μm以上である請求項3記載の光信号伝送用耐熱多芯プラスチック光ファイバ素線。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の多芯プラスチック光ファイバ素線の周りに熱可塑性樹脂からなる被覆層を設けたことを特徴とする光信号伝送用耐熱多芯プラスチック光ファイバケーブル。
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