JP4001747B2 - リチウム二次電池及びその製造方法 - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は、リチウム二次電池(以下、単に「電池」ともいう)及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、長期安定性及び信頼性に優れたリチウム二次電池、並びに工程が簡易で生産性に優れた、その製造方法に関する。
背景技術
近年、リチウム二次電池は、携帯型の通信機器やノート型パーソナルコンピュータ等の電子機器の電源として広く用いられている。また、国際的な地球環境の保護のための省資源化や省エネルギー化の要請が高まり、電気自動車やハイブリッド電気自動車(以下、単に「電気自動車等」ともいう)のエンジン起動用やモータ駆動用バッテリーとして、リチウム二次電池の開発が進められている。
従来、リチウム二次電池は、電極体を内部に収容した電池ケースの先端部と電極蓋の外縁部とを接合することにより封止され、この接合は、かしめ、及び/又は、溶接の方法により形成される。この電池は、図2及び図5に示すように、電池ケース16の胴体部の直径Rbodyとかしめ部の直径Rtopとは、同じ大きさになるようにかしめ加工されている(特開平9−92241号公報等を参照)。
しかし、図2に示すように、電池ケース16と電極蓋の間にパッキン23を介し、電池ケース16の胴体部の直径Rbodyとかしめ部の直径Rtopとを同じ大きさに形成すると、パッキン23に対し均一に圧力がかからず、電池ケース16と電極蓋との間に隙間ができ、この隙間が電解液の通路になり、この通路を通じて電池ケースの胴体部に存在する電解液が漏れてしまうという問題があった。
また、図5に示すように、電池ケース16の先端部と電極蓋の外縁部とを溶接により接合し、電池ケース16の胴体部の直径Rbodyとかしめ部の直径Rtopとを同じ大きさに形成すると、電池ケース16と電極蓋15Aの外縁部との自体の密着性が弱く、その接合力は溶接のみによることになる。この方法により形成された電池は、通信機器やコンピュータ等の電子機器の電源としてに使用する場合には何ら問題はないが、電気自動車等のエンジン起動用やモータ駆動用バッテリーとして使用する場合にはエンジン起動時や走行時に発生する振動に対して十分な耐久性を必要とすることから、長期的に密閉性を保持することが困難であるという問題があった。
また、従来、リチウム二次電池は、まず、電極体を電池ケースに挿入して安定な位置に載置し、電池ケースの胴体部を狭めて電池ケースと電極体の隙間を殆どなくした後、電池ケース内に電解液を注入し、次いで、電池ケースの開口部に電極蓋を取付け、電池ケースと電極蓋の外縁部とを絞り加工及びかしめ加工により接合して電池を封止するという製造方法によって作製される(特開平10−27584号公報等を参照)。
しかし、特開平10−27584号公報記載の製造方法では、電極体に電解液を含浸させた後に電池ケースと電極蓋の外縁部とを絞り加工及びかしめ加工により接合して電池の封止を行うことから、電池ケースを絞り加工する際に電池ケースの胴体部より開口部へと電解液が上昇し、かしめ部に電解液が浸入し、この浸入した電解液はかしめ部に通路を形成し、この通路を通じて電池ケースの胴体部に存在する電解液が漏れてしまうという問題があった。
本発明は、かかる従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電池ケースと電極蓋とのかしめを強くし、電池ケースと電極蓋との間のかしめ隙間をなくすことにより、電解液の漏れを抑制して、長期安定性及び信頼性の向上を図ったリチウム二次電池を提供することにある。
また別の目的としては、電池ケースと電極蓋とのかしめを強くし、且つ電池ケース先端部と電極蓋の外縁部とを溶接することにより、電解液の漏れを抑制して、長期安定性及び信頼性の向上を図ったリチウム二次電池を提供することにある。
また更に別の目的としては、狭い電池ケース内における接合作業等の煩瑣な作業を不必要とし、また、選別された良品の電池素子のみを製造の次工程に用いることにより、製造が簡易で生産性の向上を図った、上述のリチウム二次電池を製造する方法を提供することにある。
発明の開示
本発明によれば、正極板と負極板とを、セパレータを介して捲回又は積層した、非水電解液を含浸した、電極体を、両端部に電極蓋を備えた円筒形の電池ケースに収容してなり、さらに、前記電池ケースと前記電極蓋との間に弾性体を配設するとともに、前記電池ケースの前記弾性体と接する部分を圧接して形成したかしめ部によって前記電池ケースを封止してなるリチウム二次電池であって、前記電池ケースの胴体部の直径をRbody(mm)、前記かしめ部の直径をRtop(mm)としたときに、RbodyとRtopとが、Rbody>Rtopの関係を満足することを特徴とするリチウム二次電池が提供される。このとき、電池ケースとしては、Al又はAl合金からなることが好ましい。
本発明のリチウム二次電池においては、Rbody(mm)とRtop(mm)との差をΔR(mm)としたときに、ΔRが、ΔR≦5(mm)の関係を満足することが好ましく、RbodyとΔRとが、(ΔR/Rbody)× 100≦10(%)の関係を満足することが好ましい。
また、かしめ部によって、圧接された弾性体の圧接方向の変形量が、スプリングバック量より大きく、且つ弾性体にかかる圧接力が、弾性体の弾性維持率を95%以上とする圧接力以下であることが好ましい。このとき、弾性体としては、エチレンプロピレンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂のいずれかであることが好ましい。また、電極蓋としては、電解液注入口を備えることが好ましい。
また、本発明によれば、非水電解液を含浸した、正極板と負極板とを、セパレータを介して捲回又は積層してなる電極体を、両端部に電極蓋を備えた円筒形の電池ケースに収容してなるリチウム二次電池であって、前記電池ケースの先端部と前記電極蓋の外縁部とを、絞り加工、かしめ加工、及び溶接加工により接合したことを特徴とするリチウム二次電池、が提供される。
また、本発明によれば、正極板と負極板とを、セパレータを介して捲回又は積層した、非水電解液を含浸した、電極体を、両端部に、電池蓋と内部端子と外部端子とを有する電極蓋を備えた円筒形の電池ケースに収容してなり、前記電池ケースの前記電極蓋と接する部分を圧接して形成したかしめ部によって封止してなるリチウム二次電池であって、前記電池ケースの胴体部の直径をRbody(mm)、前記かしめ部の直径をRtop(mm)としたときに、RbodyとRtopとが、Rbody>Rtopの関係を満足させ、且つ前記電池ケースの先端部と前記電極蓋の外縁部とを、溶接加工により接合したことを特徴とするリチウム二次電池、が提供される。このとき、電池ケースとしては、Al又はAl合金からなることが好ましく、電池蓋と外部端子とが、Al又はAl合金からなることが好ましい。
本発明のリチウム二次電池においては、Rbody(mm)とRtop(mm)の差をΔR(mm)としたときに、ΔRが、ΔR≦5(mm)の関係を満足することが好ましく、RbodyとΔRとが、(ΔR/Rbody)× 100≦10(%)の関係を満足することが好ましい。また、電池ケースの形状としては、パイプ状であることがこのましい。さらに、溶接加工によって、電池ケースの先端部の全域と電極蓋とが接合されることが好ましく、電極蓋の外縁部直近部分に絞り加工部を形成することが好ましい。
本発明のリチウム二次電池は、電池容量が2Ah以上の大型電池に好適に採用される。また、車載用電池として好適に採用され、高出力を必要とするエンジン起動用電源、大電流の放電が頻繁に行われる電気自動車用又はハイブリッド電気自動車用として好適に用いられる。
さらに、本発明によれば、正極板と負極板とを、セパレータを介して巻芯外周に捲回してなる内部電極体の両端に設けた集電タブのそれぞれと、2枚の電極蓋のそれぞれの内部端子部とを接合して電池素子を形成し、次いで、この電池素子を、両端が開放された電池ケースに挿入した後、前記電池ケースの両端部のそれぞれと前記2枚の電極蓋の外縁部のそれぞれとを接合し、次いで、少なくとも一枚の前記電極蓋に設けた電解液注入口より電解液を注入した後、前記電解液注入口を封止することを特徴とするリチウム二次電池の製造方法、が提供される。
本発明のリチウム二次電池においては、電池ケースの両端部のそれぞれと2枚の電極蓋の外縁部のそれぞれとを接合すると同時に又はその前後に、電池ケースの電極蓋の外縁部直近部分に絞り加工をすることが好ましく、電池ケースと電極蓋との接合方法として、かしめ、及び/又は、溶接の方法を用いることが好ましい。
かしめ作業時には、電池ケースと電極蓋の間に弾性体を介することが好ましく、弾性体としては、エチレンプロピレンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はフッ素樹脂のいずれかを用いることが好ましい。溶接作業時には、エネルギー源としてYAGレーザーを用いることが好ましい。さらに、電池ケースとしては、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるものを用いることが好ましい。発明を実施するための最良の形態
本発明は、第一から第四の発明に大別される。尚、第一から第三の発明はリチウム二次電池について、第四の発明は、リチウム二次電池の製造方法についてである。以下、本発明の実施形態について説明をするが、本発明がこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下、各発明について説明する。
第一の発明は、正極板と負極板とを、セパレータを介して捲回又は積層した、非水電解液を含浸した、電極体を、両端部に電極蓋を備えた円筒形の電池ケースに収容してなり、さらに、電池ケースと電極蓋との間に弾性体を配設するとともに、電池ケースの弾性体と接する部分を圧接して形成したかしめ部によって電池ケースを封止してなるリチウム二次電池であって、電池ケースの胴体部の直径をRbody(mm)、かしめ部の直径をRtop(mm)としたときに、RbodyとRtopとが、Rbody>Rtopの関係を満足するように構成する。図1(a)、図1(b)に示すように、電池ケース16、正極蓋、負極蓋、弾性体23の強度の範囲内で、電池ケースの胴体部の直径Rbody、かしめ部の直径RtopをRbody>Rtopと強くかしめ加工を行い、電池ケース16と電極蓋とのかしめ隙間をなくすことにより、電解液の漏れを抑制することができる。
このとき、電池ケースとしては、Al若しくはAl合金からなることが好ましい。このような材料の電池ケースは各種の径のものが市販されているために入手が容易かつ安価であり、しかも、Al等の材料は軽量であることから電池の軽量化が可能となり、電池の重量エネルギー密度、及び重量出力密度の向上を図ることができる。さらに、電池の成形においても、かしめ加工等が容易であるという特徴も備えている。アルミニウムとは純アルミニウムを指すが、純度として90%以上のものであれば、問題なく用いることが可能である。
第一の発明においては、Rbody(mm)とRtop(mm)との差をΔR(mm)としたときに、ΔRが、ΔR≦5(mm)の関係を満足し、RbodyとΔRとが、(ΔR/Rbody)×100≦10(%)の関係を満足することが好ましい。後述する実施例の結果より、これ以上に強くかしめると、電池ケースに割れが生じるからである。
また、第一の発明においては、かしめ部によって、圧接された弾性体の圧接方向の変形量が、スプリングバック量より大きく、且つ弾性体にかかる圧接力が、弾性体の弾性維持率を95%以上とする圧接力以下であることが好ましい。この弾性体には、図1(a)に示すように、電極蓋の形状に応じたパッキン23を用い、パッキン23はかしめ加工により弾性変形を示していく。第一の発明において、スプリングバック量とは、内部電極体1と電極蓋を接続して一体化したものを電池ケース16に挿入し、電池ケース16をオートグラフでかしめ終えた位置を基準に、変位をモニターしながら徐々に圧接の荷重を小さくしていき、完全に荷重が解放されたときの基準位置からの変位量を指す。このとき、弾性体の圧接方向の変形量がスプリングバック量より大きいと、かしめが終了した後でも隙間が生ずることがなく、これにより、電解液の漏洩が防止される。
また、弾性体の弾性維持率とは、外径10mmφ×内径7mmφ×1mmの弾性体をオートグラフを用いて圧縮応力をかけ、所定時間経過後に圧縮応力を解放したときの、圧接力印加前後での厚みの変化を意味する。つまり、圧接力印加前の弾性体の厚みをA、圧接力印加後の弾性体の厚みをBとすると、弾性維持率Dは、D=B/A×100で表せる。
図3(a)〜(d)は、外径10mmφ×内径7mmφ×1mmに加工された各種の弾性体((a)エチレンプロピレンゴム、(b)フッ素樹脂、(c)ポリエチレン、(d)ポリプロピレン)について、弾性維持率と変位量を、加えられた圧接力との関係で示した説明図であり、各図に示された斜線枠の部分が、本発明にかかる好適な範囲である。すなわち、弾性維持率が95%以上であれば、弾性を確保するとともに面圧が確保される。
また、第一の発明において、電極蓋は、電解液注入口を備えることが好ましい。本発明のリチウム二次電池は、例えば、以下のようにして製造することができる。まず、電池蓋と内部電極体をタブ圧着・溶接により一体化させた電池素子を、一体として電池ケースに挿入する。そして、絞り加工及びかしめ加工を行い、電池を閉塞させる。それから、電池蓋に備えられた電解液注入口から電解液を内部電極体に含浸させ、注入口を蓋するという製造方法である。電極蓋が電解液注入口を備えていると、上記の製造方法を採用でき、電解液は電池ケース胴体部に閉じ込められることになり、上述したかしめ隙間を無くすことと合わせて、電解液漏れの可能性は殆どなくなることになる。
次に、第二の発明について説明する。本発明における第二の発明は、非水電解液を含浸した、正極板と負極板とを、セパレータを介して捲回又は積層してなる電極体を、両端部に電極蓋を備えた円筒形の電池ケースに収容してなるリチウム二次電池であって、電池ケースの先端部と電極蓋の外縁部とを、かしめ加工、絞り加工、及び溶接加工により接合する。このようにして、電池ケースの先端部ち電極蓋の外縁部とを、かしめ加工することにより電池ケースを密閉し、絞り加工することにより電極蓋の位置決め及び固定をし、溶接加工することにより電解液の漏れを極めて抑制することができる。
次に、第三の発明について説明する。発明における第三の発明は、正極板と負極板とを、セパレータを介して捲回又は積層した、非水電解液を含浸した、電極体を、両端部に、電池蓋と内部端子と外部端子とを有する電極蓋を備えた円筒形の電池ケースに収容してなり、電池ケースの電極蓋と接する部分を圧接して形成したかしめ部によって封止してなるリチウム二次電池であって、電池ケースの胴体部の直径をRbody(mm)、かしめ部の直径をRtop(mm)としたときに、RbodyとRtopとが、Rbody>Rtopの関係を満足させ、且つ電池ケースの先端部と電極蓋の外縁部とを、溶接加工により接合するように構成する。図4(a)、図4(b)に示すように、電池ケース16、正極蓋、負極蓋の強度の範囲内で、電池ケースの胴体部の直径Rbody、かしめ部の直径RtopをRbody>Rtopと強くかしめ加工を行い、電池ケース16と電極蓋とのかしめ隙間をなくすことにより、溶接を安定的に行うことが可能となり、電解液の漏れを抑制することができる。
このとき、電池ケースとしては、Al若しくはAl合金からなることが好ましく、この電池ケースの形状はパイプ状であることが好ましい。電池ケースにAl若しくはAl合金を用いる技術的意義は第一の発明と同様である。
又、電池蓋及び外部端子としては、Al若しくはAl合金からなることが好ましい。第三の発明の電極蓋は、電池ケースと溶接され電池に蓋をする(電池蓋)、内部端子と接続され電流を外部に取り出す(外部端子)、電極リードと接合され電極体内部の電流を受け取る(内部端子)、という3つの役割をもっている。本発明において、上述した理由により電池ケースにAl材質のものを用いた際には、電池ケースと溶接される電池蓋に同じAl材質のものを用いると、溶け込みが良く、均質で電池ケースと電極蓋が一体化したような、しっかりした溶接を行うことができる。又、Alは電気伝導性が良く、従来から外部端子としてよく用いられている。電池蓋、外部端子、内部端子の各部材の接合する際には、特にその方法には制限は無いが、摩擦接合、ロウ付け、溶接、かしめ、又は鍛造かしめ等により接合すればよい。
この際に、正極側では、電極リード、電池蓋、外部端子、内部端子すべてにAlを用いることができるが、負極側では、負極電気化学反応より電極リードにAlを用いることができず、CuあるいはNiを用いることになる。よって、電極リードからの集電抵抗を小さくするため、電極リードがCuの場合は負極内部端子にCuを、電極リードがNiの場合は負極内部端子にNiまたはCuを用いることが好ましい。そのようにして材質を決定した負極内部端子とAl材質を用いた負極外部端子は上記の方法により接合されればよい。
ここで、負極内部端子に用いられるCu及びNiとしては、Cu又はCu合金、及びNi又はNi合金であることが好ましい。また、Cu及びNiとは純銅、純ニッケルを指すが、純度として90%以上のものであれば、問題なく用いることが可能である。
第三の発明においては、Rbody(mm)とRtop(mm)の差をΔR(mm)としたときに、ΔRが、ΔR≦5(mm)の関係を満足することが好ましく、RbodyとΔRとが、(ΔR/Rbody)×100≦10(%)の関係を満足することが好ましい。後述する実施例の結果より、これ以上に強くかしめると、電池ケースに割れが生じることとなるからである。
さらに、第三の発明においては、溶接加工によって、電池ケースの先端部の全域と電極蓋とが接合されることが、確実に密閉するために、好ましい。また、電極蓋の外縁部直近部分に絞り加工部を形成することが好ましい。本発明のように、電池ケースの先端部と電極蓋の外縁部をかしめ加工し、電極蓋の外縁部直近部を絞り加工し、電池ケースの先端部の全域と電極蓋とを溶接をすることにより、車載した場合にリチウム二次電池にかかる振動等の応力を分散することができる。よって、かしめ部の溶接の安定性が向上し、車載用電池として用いた場合にも、移動中に常に加えられる振動に対して長期的に密閉を保持することが可能となる。
ちなみに、図5に示すような、くびれ加工及びかしめ加工が無い従来の電池においては、溶接部26にすべての応力が集中することとなり、振動に弱く、問題の残るものとなる。
ところで、電極蓋等の溶接による固定方法は、図4に示した形態に限定されるものではない。図6(a)、(b)及び図7(a)、(b)、(c)は別の溶接方法を用いたリチウム二次電池の断面図である。
図6(a)は、電池ケース16の側面から電極蓋へレーザーを貫通させることによる溶接方法、図6(b)は、電池ケース16の端面側からレーザーを照射させる溶接方法である。この際、図6(a)は図6(b)の場合に比べ、溶接部26の偏心の影響は少ないが、電池ケース16と電極蓋の間に隙間があると不充分な溶接になる。又、図6(b)は図6(a)に比べ、直接突き合わせた部分にレーザーが当たるため該隙間の影響は受けにくいが、溶接部26の偏心の影響は受けやすく、レーザーを溶接面に正確に照射しなければならない。
後述する実施例において示しているが、図6(a)、図6(b)の溶接方法は、本発明のかしめ具合を用いた場合、充分に車載用リチウム二次電池として実用可能なものである。
図7(a)は、電極蓋がかしめにより固定状態になった後も更に電池ケース16を倒しこんで溶接の密着性を改善した電池に対して、図6(a)と同じく、電池ケース16の側面から電極蓋へレーザーを貫通させることによる溶接方法である。図7(a)のように、電池ケース16を内側に倒しこむことは、溶接部26にかかる応力を低減することにもつながるので、耐振動性を向上させることのできる溶接方法といえる。
図7(b)、図7(c)は、図6(a)、図6(b)、図7(a)と電極蓋の形状が異なっている。図6(a)、図6(b)、図7(a)の電極蓋の外周部は、薄い板状になっており、電池ケース16のかしめ応力を歪み無く、曲げ応力として受けとることができる形状になっている。それに対して、図7(b)、図7(c)の電極蓋は、電池蓋全体が一様の厚みであり且つ1枚の真直ぐな板状の形状になっている。
その図7(b)は、電池蓋全体が一様の厚みであり且つ1枚の真直ぐな板状である電極蓋の上部を覆いかぶせるように電池ケース16を倒しこむことで、電池ケース16と電極蓋の密着性を高めた電池に対して、図6(b)と同じく、電池ケース16の端面側からレーザーを照射させる溶接方法である
又、図7(c)は、図7(b)と同じ形状の電極蓋を、図7(b)と同じように電池ケース16をかしめて倒しこんだ電池に対して、図6(b)と同じく、電池ケース16の端面側からレーザーを照射させる溶接方法である。これら図7(b)、図7(c)は、電池ケース16と電極蓋の密着性が高いことから、耐振動性に優れた溶接方法といえる。
ここで、作製された第一から第三の発明のリチウム二次電池の用途として、例えば、EVやHEV等のモータ駆動用を考える。この場合、モータ駆動のために100〜200Vといった電圧が必要となるため、複数の電池を直列に接続する必要がある。そこで、図1(a)及び図4(a)中に示される電池14の電極端子構造のように、正極外部端子18A、負極外部端子18Bを電池14の端面の中央に配設すると、電池間の接続が容易となり、好ましい。
次に、第四の発明について説明する。第四の発明のリチウム二次電池の製造方法においては、まず、正極板と負極板とをセパレータを介して巻芯外周に捲回してなる内部電極体の両端に設けた集電タブのそれぞれと、2枚の電極蓋のそれぞれの内部端子部とを接合して電池素子を形成する。次ぎに、この電池素子を、両端が開放された電池ケースに挿入した後、電池ケースの両端部のそれぞれと2枚の電極蓋のそれぞれの外縁部を接合する。そして、最後に、少なくとも一枚の電極蓋に設けた電解液注入口より電解液を注入した後、電解液注入口を封止する。このように、図9(a)から図9(b)、図9(c)、図9(d)、図10(a)に示すようにして、先に内部電極体1と、正極蓋と負極蓋の2枚の電極蓋とを接合して電池素子を作製し、図10(b)に示すようにして、それを一体として電池ケース16に挿入することで、電池ケース16内で行う作業を不必要にすることができ、また、選別された良品の電池素子のみを次工程に用いることができるので、工程を簡易にし生産性の向上を図ることができる。さらに、図11(a)、図11(b)、図12に示すようにして、電池ケース16と電極蓋の外縁部とを絞り加工及びかしめ加工により接合して電池を封止した後に電解液を注入することで、電解液を電池ケース胴体部に確実に閉じこめることができるので、電池の電解液漏れの抑制を図ることができる。
さらに、第四の発明においては、電池ケースの両端部のそれぞれと2枚の電極蓋のそれぞれの外縁部とを接合すると同時に又はその前後に、電池ケースの電極蓋の外縁直近部分に絞り加工をすることが好ましい。このことにより、電池における電極蓋の位置決めと固定がなされることになる。
第四の発明において、電池ケースと電極蓋との接合方法としては、かしめ、及び/又は、溶接の方法を用いることが好ましい。これらの方法の技術的意義と好適な方法は以下に述べる。
第四の発明において、電池ケースと電極蓋の接合方法としてかしめの方法を用いる場合には、かしめ作業時に、電池ケースと電極蓋の間に弾性体を介することが好ましい。図11(a)の下図に示すように、電極蓋の形状に応じた弾性体であるパッキン23を用いた場合、このパッキン23はかしめ加工により適度な弾性変形を示していくが、かしめ加工にあたっては、このパッキンの荷重方向の変形量がスプリングバック量よりも大きく、且つ、弾性体の弾性維持率が95%以上となる応力以下とすることが好ましい。
スプリングバック量は、一体化された電池素子を電池ケースに挿入し、電池ケースをオートグラフでかしめ終えた位置を基準に、変位をモニターしながら徐々に荷重を小さくしていき、完全に荷重が解放されたときの基準位置からの変位量を指す。従って、弾性体の荷重方向の変形量がこのスプリングバック量より大きいと、かしめが終了した後でも隙間が生ずることがなく、これにより、電解液の漏洩が防止される。
また、弾性維持率は、例えば、外径10mmφ×内径7mmφ×1mmの弾性体をオートグラフを用いて圧縮応力をかけ、所定時間経過後に圧縮応力を解放したときの、応力印加前後での厚みの変化で表される。つまり、応力印加前の弾性体の厚みをA、応力印加後の弾性体の厚みをBとすると、弾性維持率Dは、D=B/A×100で与えられる。
図3(a)〜(d)は、外径10mmφ×内径7mmφ×1mmに加工された各種の弾性体((a)エチレンプロピレンゴム、(b)フッ素樹脂、(c)ポリエチレン、(d)ポリプロピレン)について、弾性維持率と変位量を、加えられた応力との関係で示した説明図であり、各図に示された斜線枠の部分が、本発明にかかる好適な範囲である。すなわち、弾性維持率が95%以上であれば、弾性を確保するとともに面圧が確保される。
また、第四の発明において、電池ケースと電極蓋の接合方法として溶接の方法を用いる場合には、溶接作業時に、エネルギー源としてYAGレーザーを用いることが好ましい。この際には、電池ケースの先端部と電極蓋の外縁部の全域を溶接することが、確実に密閉するために、好ましい。
この溶接は電解液注入前に行うので電解液の劣化を考慮する必要はなく、その溶接条件の好適範囲は電解液が注入されている場合に比べ広いものの、内部電極体に樹脂部品(セパレータ)を使用しているため、溶接時の温度には制限がある。
溶接時の電池温度の上昇を抑制するためには、投入エネルギー密度の高い溶接方法がよく、具体的には、該温度が100℃以下となる溶接方法とすることが好ましい。そのような溶接方法として、溶接ビーム(アーク)が絞られるレーザー溶接、電子ビーム溶接がある。レーザー溶接は大気中で溶接でき、装置も簡便で生産性もよいものとなる。それに対して、電子ビーム溶接は真空状態にて行う必要があるため、装置により多くのコストがかかる上、製造工程も増えることになる。
レーザー溶接の中でも本発明で用いるYAGレーザー溶接は、そのビームのエネルギー密度が高く、短時間でアルミの溶接が可能であり、温度上昇も最小限にとどめることができるので、信頼性の高い溶接を実現することができることとなる。
第四の発明においては、電池ケースとして、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるものを用いることが好ましい。このような材料の電池ケースは各種の径のものが市販されているために入手が容易かつ安価であり、しかも、アルミニウム及びアルミニウム合金は軽量であることから電池の軽量化が可能となり、電池の重量エネルギー密度、及び重量出力密度の向上を図ることができる。さらに、電池の成形においても、かしめ加工及び絞り加工が容易であるという特徴も備えている。アルミニウムとは純アルミニウムを指すが、純度として90%以上のものであれば、問題なく用いることが可能である。
電池ケースにアルミニウム材質のものを用いた際には、電池ケースと溶接される電池蓋に同じアルミニウム材質のものを用いると、溶け込みが良く、均質で電池ケースと電極蓋が一体化したような、しっかりした溶接を行うことができる。アルミニウムは電気伝導性が良く、従来から外部端子としてよく用いられている材料である。
リチウム二次電池では、正極側の集電タブ、正極蓋、外部端子、内部端子すべてにアルミニウムを用いることができるが、負極側では、負極電気化学反応より集電タブにアルミニウムを用いることができないため、負極集電タブには銅又はニッケルを用いる。この場合に集電タブからの集電抵抗を小さくするには、集電タブが銅の場合は負極内部端子に銅を、集電タブがニッケルの場合は負極内部端子にニッケルまたは銅を用いるよい。さらに、電池ケースとの溶接を考慮して負極外部端子にアルミニウムを用いる場合には、上記の負極内部端子とアルミニウムを、摩擦接合、ロウ付け、溶接、かしめ、又は鍛造かしめ等により接合すればよい。
ここで、負極集電タブ及び負極内部端子に用いられる銅及びニッケルとしては、銅又は銅合金、及びニッケル又はニッケル合金であることが好ましい。また、銅及びニッケルとは純銅、純ニッケルを指すが、純度として90%以上のものであれば、問題なく用いることが可能である。
また、本発明における電解液注入方法については特に制限はないが、上述したような構造である本発明のリチウム二次電池においては、以下のような方法が好適である。電解液を充填する際、図11(b)に示すように、電池内を真空ポンプを用いて真空雰囲気とし、大気圧との差圧を利用して、電解液注入口15から電解液が注入される。ここでは真空度を0.1torr(13.3Pa)程度より高真空の状態となるようにすることが好ましい。
なお、電解液の含浸処理中は、電解液が沸騰しない程度の真空度に保つことが好ましく、このときの真空度は使用する電解液を構成する溶媒の物性に大きく依存する。また、ノズル20の材質としては、電解液による腐食受けない金属あるいは樹脂が用いられ、ノズル20はチューブやパイプ等を介して電解液貯蔵タンクと接続され、定量ポンプ等を用いて電解液貯蔵タンクから電解液が送られる。
このようにして電解液を電池の下部から満たしていくことにより、内部電極体1は下部から上部へと含浸し、内部電極体1から発生する気泡は、電解液の含浸していない空間を抜けることができるようになるため、電解液の含浸を効率的に行うことができるようになる。こうして、電解液の注入時間を短縮することが可能となり、この場合、電解液に揮発性の高い溶媒が含まれている場合であっても、その蒸発量は最小限に抑えられ、電解液特性の低下が回避される。
次に、電解液の含浸処理が終了した後、電解液注入口の周囲を窒素やアルゴンといた不活性ガスでパージし、その後に電池内に残留する余剰電解液をノズル20を用いて外部へ排出する。このとき、正極内部端子の配置スペース等に充填された余剰電解液をより多く排出するために、ノズル20の先端は電池の底部にまで挿入されていることが好ましい。
最後に、電解液注入口15は、外部からネジ21又はシール材の充填といった簡便な封止方法によって閉塞される。この閉塞作業が簡便な方法によって行うことができると、設備費の低減とパージガスの使用量の低減を図ることができる。
本発明のリチウム二次電池は、正極板と負極板をセパレータを介して捲回又は積層してなる電極体及び電解液を、両端部に電極蓋を備えた円筒形の電池ケースを用いたものである。従って、その他の材料や電池構造には何ら制限はない。以下、電池を構成する主要部材並びにその構造について説明する。
リチウム二次電池の心臓部とも言える電極体の1つの構造は、小容量のコイン電池にみられるような、正負各電極活物質を円板状にプレス成型したものでセパレータを挟んだ単セル構造である。
コイン電池のような小容量電池に対して、容量の大きい電池に用いられる電極体の1つの構造は捲回型である。図13に示されるように、捲回型電極体1は、正極板2と負極板3とを、多孔性ポリマーからなるセパレータ4を介して正極板2と負極板3とが直接に接触しないように巻芯13の外周に捲回して構成される。正極板2及び負極板3(以下、「電極板2・3」と記す。)に取り付けられている電極リード5・6の数は最低1本あればよく、複数の電極リード5・6を設けて集電抵抗を小さくすることもできる。
電極体の別の構造としては、コイン電池に用いられる単セル型の電極体を複数段に積層してなる積層型が挙げられる。図14に示すように、積層型電極体7は、所定形状の正極板8と負極板9とをセパレータ10を挟み交互に積層したもので、1枚の電極板8・9に少なくとも1本の電極リード11・12を取り付ける。電極板8・9の使用材料や作成方法等は、捲回型電極体1における電極板2・3等と同様である。
次に、捲回型電極体1を例に、その構成について詳細に説明する。正極板2は集電基板の両面に正極活物質を塗工することによって作製される。集電基板としては、アルミニウム箔やチタン箔等の正極電気化学反応に対する耐蝕性が良好である金属箔が用いられる。また、正極活物質としては、マンガン酸リチウム(LiMn)やコバルト酸リチウム(LiCoO)等のリチウム遷移金属複合酸化物が好適に用いられ、好ましくは、これらにアセチレンブラック等の炭素微粉末が導電助剤として加えられる。
正極活物質の塗工は、正極活物質粉末に溶剤や結着剤等を添加して作成したスラリー或いはペーストを、ロールコータ法等を用いて、集電基板に塗布・乾燥することで行われ、その後に必要に応じてプレス処理等が施される。
負極板3は、正極板2と同様にして作成することができる。負極板3の集電基板としては、銅箔若しくはニッケル箔等の負極電気化学反応に対する耐蝕性が良好な金属箔が好適に用いられる。負極活物質としては、ソフトカーボンやハードカーボンといったアモルファス系炭素質材料や人造黒鉛や天然黒鉛等の高黒鉛化炭素質粉末が用いられる。
セパレータ4としては、マイクロポアを有するLi透過性のポリエチレンフィルム(PEフィルム)を、多孔性のLi透過性のポリプロピレンフィルム(PPフィルム)で挟んだ三層構造としたものが好適に用いられる。これは、電極体の温度が上昇した場合に、PEフィルムが約130℃で軟化してマイクロポアが潰れ、Liの移動即ち電池反応を抑制する安全機構を兼ねたものである。そして、このPEフィルムをより軟化温度の高いPPフィルムで挟持することによって、PEフィルムが軟化した場合においても、PPフィルムが形状を保持して正極板2と負極板3の接触・短絡を防止し、電池反応の確実な抑制と安全性の確保が可能となる。
この電極板2・3とセパレータ4の捲回作業時に、電極板2・3において電極活物質の塗工されていない集電基板が露出した部分に、電極リード5・6がそれぞれ取り付けられる。電極リード5・6としては、それぞれの電極板2・3の集電基板と同じ材質からなる箔状のものが好適に用いられる。電極リード5・6の電極板2・3への取り付けは、超音波溶接やスポット溶接等を用いて行うことができる。
次に、本発明のリチウム二次電池に用いられる非水電解液について説明する。溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、プロピレンカーボネート(PC)といった炭酸エステル系のものや、γ−ブチロラクチン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等の単独溶媒若しくは混合溶媒が好適に用いられる。
このような溶媒に溶解されるリチウム化合物、即ち電解質としては、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)やホウフッ化リチウム(LiBF)等のリチウム錯体フッ素化合物、或いは過塩素酸リチウム(LiClO)といったリチウムハロゲン化物が挙げられ、1種類若しくは2種類以上を前記溶媒に溶解して用いる。
以下、本発明を実施例に基づいて、より具体的に説明する。
(実施例1〜4、比較例1、2)
実施例1〜4及び比較例1,2の電池は、正極の電極基板として幅200mm、長さ3600mm、負極の電極基板として幅200mm、長さ4000mmの大きさのものを捲回して作製した内部電極体を、両端部にパッキンを備えた電極蓋と溶接し、一体化された電池素子として、内径48mmφの電池ケースに収容した後、電池ケースを絞り加工及びかしめ加工をし、次いで、電極蓋に備えられた電解液注入口より電解液を注入した後、注入口を封止をして作製した。なお、電池ケースとしては、Alパイプを用い、パッキンとしては、厚さ1mmのエチレンプロピレンゴムを用いて作製した。
上記実施例及び比較例においてかしめの健全性を評価した結果を表1に示す。ここで、実施例1〜4及び比較例1,2のかしめ部は、上記の方法により、かしめ部にかかる応力に差が生ずるように調整したかしめ方法を用いて作製した。このときの電極蓋の外径及び電池形状は、表1に示す通りである。また、その他の部材、試験環境はすべての試料において同じとした。なお、非水電解液としては、実際上のことを考慮して、ECとDECの等容量混合溶媒に電解質としてのLiPFを1mol/lの濃度となるように溶解した溶液を用いた。
【表1】
Figure 0004001747
かしめ部の評価については、実施例及び比較例について、それぞれ100本の電池を作製し、かしめ部からの電解液漏れの有無、アルミパイプかしめ部の割れ、クラックの有無を観察することにより、かしめの健全性を評価している。表1においては、1本でも上記不具合に該当すれば×、100本すべての電池において液漏れ無し、クラック無しの場合は、○とした。
(評価)
表1から分かるように、Rbody−Rtop=0mm、ΔR/Rbody=0%では電解液漏れが観察され、パッキンの変形が不十分であることが分かった。また、かしめ部の直径が、電池の胴体部の直径に対し、Rbody−Rtop=5mm、ΔR/Rbody=10%までの場合には、かしめ部に割れ等は発生せず、良好なかしめ加工ができ、電池の密閉性が極めてよく保たれることが分かった。また、電池ケースをRbody−Rtop=6mm、ΔR/Rbody=12%まで密閉加工を行った場合には、かしめ加工時にパイプが割れ、クラックが発生する結果となり、電池として機能できないことが分かった。これは、電池ケースの変形が大きすぎて、負荷に耐えられなくなったためと考えられる。
(実施例5〜8、比較例3〜5)
実施例5〜8及び比較例3〜5の電池は、正極の電極基板として幅200mm、長さ3600mm、負極の電極基板として幅200mm、長さ4000mmの大きさのものを捲回して内部電極体を作製した。その内部電極体に、正極電池蓋、正極外部端子、及び正極内部端子からなる放圧孔を備えた正極蓋と、それぞれの間にパッキンを挟んだ負極電池蓋、負極外部端子、及び負極内部端子からなる負極蓋を両端に溶接し、一体化された電池素子として、内径48mmφの電池ケースに収容した後、電池ケースを絞り加工及びかしめ加工した。次いで、電池ケースと電極蓋を、図6(a)の溶接法と同じように、電池ケースの側面側から電極蓋に貫通するようにして、その全周をYAGレーザーを用いて溶接した。
そして、ここまでの電解液注入前の電池において、Heリーク試験を行った。それは、図8に示すように、電極蓋の中央に備えられた放圧孔22から電池14内を真空に排気した後、電池ケース16と電極蓋の溶接部26からHeガス29を吹き付け、Heガス29が電池14内に侵入したかどうかをヘリウムリークディテクター30を用いて検出することにより行った。この際、電池14内のHe分圧が10−9Pa・m/s以下であるものを、○とした。
次いで、Heリーク試験終了後、放圧孔22を電解液注入口15として利用し電解液を注入し、金属箔24によりを封止をして電池を作製して、評価した。尚、電池ケース16としては、Alパイプを用い、パッキン23としては、厚さ1mmのエチレンプロピレンゴムを用いて作製した。
(実施例9〜12、比較例6〜8)
実施例9〜12及び比較例6〜8の電池は、電池ケースと電極蓋の溶接を電池ケースと電極蓋を直接突き合わせた部分に行った点を除いては、実施例5〜8と同様のリチウム二次電池を実施例5〜8と同様の方法にて作製して、評価した。
上記実施例及び比較例においてHeリーク及び電解液漏れを評価した結果を表2、表3に示す。ここで、実施例5〜12及び比較例3〜8のかしめ部は、上記の方法により、かしめ部にかかる応力に差が生ずるように調整したかしめ方法を用いて作製した。このときの電極蓋の外径及び電池形状は、表2、表3に示す通りである。また、その他の部材、試験環境はすべての試料において同じとした。なお、非水電解液としては、実際上のことを考慮して、ECとDECの等容量混合溶媒に電解質としてのLiPFを1mol/lの濃度となるように溶解した溶液を用いた。
【表2】
Figure 0004001747
【表3】
Figure 0004001747
Heリーク及び電解液漏れの評価については、実施例及び比較例について、それぞれ100本の電池を作製し、かしめ加工された電池ケースと電極蓋の溶接部からのHeリーク、電解液漏れの有無、アルミパイプかしめ部の割れ、クラックの有無を観察することにより評価している。表2、表3においては、1本でも上記不具合に該当すれば×、100本すべての電池においてHeリーク無し、液漏れ無し、クラック無しの場合は、○とした。
(評価2)
表2から分かるように、図6(a)と同じように電池ケースと電極蓋とが溶接されたリチウム二次電池において、Rbody−Rtop=0mm、ΔR/Rbody=0%である比較例3、比較例4では、共にHeリークが観察され、比較例3では液漏れも発生する結果となった。これは、溶接部を断面観察してみると、かしめが不充分で、電極蓋と電池ケースの間に隙間があったために、溶接が不充分であったことが分かった。
比較例4においては、液漏れはなかったがHeはリークしたため、短期的密閉性はよいが、高温下や長期振動下では信頼性が低いと考えられる。
また、かしめ部の直径が、電池の胴体部の直径に対し、Rbody−Rtop=5mm、ΔR/Rbody=10%までの場合には、かしめ部に割れ等は発生せず、良好なかしめ加工ができ、電池の密閉性が極めてよく保たれることが分かった。また、電池ケースをRbody−Rtop=5.5mm、ΔR/Rbody=11%まで密閉加工を行った場合には、かしめ加工時にパイプが割れ、クラックが発生する結果となり、電池として機能できないことが分かった。これは、電池ケースの変形が大きすぎて、負荷に耐えられなくなったためと考えられる。
(評価3)
表3から分かるように、図6(b)と同じように電池ケースと電極蓋とが溶接されたリチウム二次電池においては、Rbody−Rtop=0mm、ΔR/Rbody=0%である比較例6、比較例7では、共にHeリークと液漏れが観察される結果となった。これも、比較例3、4の場合と同様に、溶接が不充分であることが理由であった。
また、かしめ部の直径が、電池の胴体部の直径に対し、Rbody−Rtop=5mm、ΔR/Rbody=10%までの実施例9〜12の場合には、実施例5〜8の場合と同様に、良好な結果となった。また、電池ケースをRbody−Rtop=5.5mm、ΔR/Rbody=11%まで密閉加工を行った比較例8の場合には、比較例5と同様に、電池として機能できない結果となった。
以上、本発明について、捲回型電極体を用いたリチウム二次電池における発明であるが、本発明はそれ以外の電池構造を問うものでないこというまでもない。このような本発明のリチウム二次電池の構成条件は、電池容量が2Ah以上であるものに好適に採用される。また、電池の用途も限定されるものではないことはいうまでもないが、長期耐振動性が要求される車載用大容量電池として、エンジン起動用、及び電気自動車又はハイブリッド電気自動車用に特に好適に用いることができる。
産業上の利用可能性
以上説明したように、本発明は、電池ケースと電極蓋とのかしめを強くし、電池ケースと電極蓋との間のかしめ隙間をなくすことにより、電解液の漏れを抑制して、長期安定性及び信頼性の向上を図ることができる。
また本発明は、電池ケースと電極蓋とのかしめを強くし、且つ電池ケース先端部と電極蓋の外縁部とを溶接することにより、電解液の漏れを抑制して、長期安定性及び信頼性の向上を図ることができる。
さらに本発明は、狭い電池ケース内における接合作業等の煩瑣な作業を不必要とし、また、選別された良品の電池素子のみを製造の次工程に用いることにより、製造が簡易で生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
図1(a)(b)は、本発明のリチウム二次電池の電池形態を示すもので、図1(a)は断面図、図1(b)は図1(a)の一部拡大図である。
図2は、従来のリチウム二次電池の一実施形態を示す断面図である。
図3(a)〜(d)は、各弾性体についての弾性維持率と変位量との関係を示す説明図である。
図4(a)(b)は、本発明のリチウム二次電池の実施形態を示すもので、図4(a)は断面図、図4(b)は図4(a)の一部拡大図である。
図5は、従来のリチウム二次電池の一実施形態を示す断面図である。
図6(a)(b)は、本発明のリチウム二次電池における電池ケースと電極蓋との溶接の一実施形態を示す断面図である。
図7(a)(b)(c)は、本発明のリチウム二次電池における電池ケースと電極蓋との溶接の、他の一実施形態を示す断面図である。
図8は、本発明のリチウム二次電池において、電池ケースと電極蓋との溶接部のHeリーク試験の方法を示す説明図である。
図9(a)〜(d)は、本発明のリチウム二次電池の製造工程を示す連続断面図である。
図10(a)(b)は、図9(a)〜(d)に続く、本発明のリチウム二次電池の製造工程を示す連続断面図である。
図11(a)(b)は、図10(a)(b)に続く、本発明のリチウム二次電池の製造工程を示す連続断面図である。
図12は、図11(a)(b)に続く、本発明のリチウム二次電池の製造工程を示す連続断面図である。
図13は、捲回型電極体の構造を示す斜視図である。
図14は、積層型電極体の構造を示す斜視図である。

Claims (11)

  1. 正極板と負極板とを、セパレータを介して捲回又は積層した、非水電解液を含浸した、電極体を、両端部に電極蓋を備えた円筒形の電池ケースに収容してなり、さらに、前記電池ケースと前記電極蓋との間に弾性体を配設するとともに、前記電池ケースの前記弾性体と接する部分を圧接して形成したかしめ部によって前記電池ケースを封止してなるリチウム二次電池であって、 前記電池ケースの胴体部の直径をRbody(mm)、前記かしめ部の直径をRtop(mm)としたときに、RbodyとRtopとが、Rbody>Rtopの関係を満足することを特徴とするリチウム二次電池。
  2. 前記電池ケースが、Al又はAl合金からなる請求項1に記載のリチウム二次電池。
  3. 前記Rbody(mm)と前記Rtop(mm)との差をΔR(mm)としたときに、ΔRが、ΔR≦5(mm)の関係を満足する請求項1又は2に記載のリチウム二次電池。
  4. 前記Rbodyと前記ΔRとが、(ΔR/Rbody)×100≦10(%)の関係を満足する請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
  5. 前記かしめ部によって、圧接された前記弾性体の圧接方向の変形量が、スプリングバック量より大きく、且つ前記弾性体にかかる圧接力が、前記弾性体の弾性維持率を95%以上とする圧接力以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
  6. 前記弾性体が、エチレンプロピレンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂のいずれかである請求項1〜5のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
  7. 前記電極蓋が、電解液注入口を備えた請求項1〜6のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
  8. 2Ah以上の電池容量である請求項1〜7のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
  9. 車載用である請求項1〜8のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
  10. エンジン起動用である請求項9に記載のリチウム二次電池。
  11. 電気自動車用又はハイブリッド電気自動車用である請求項9又は10に記載のリチウム二次電池。
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