JP3999006B2 - ハーネス用ガイド部材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワンボックスカーなど自動車に用いられているスライドドアと車体との間に配置するワイヤハーネスのガイド部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ワンボックスカーやRV車などには、車体に沿ってスライドするように開閉するスライドドアが装備されているものが用いられているものが多い。このようなスライドドアが自動ドアである場合や、スライドドアにスピーカなどの音響機器や電装機器が内装されているような場合、これらの電装品に給電するためのワイヤハーネスが配線されている。
【0003】
従来、このようなスライドドアを有する自動車のスライドドアへ給電するためのワイヤハーネスの配線例としては、スライドドアの各機器はコントローラを介してワイヤハーネスに接続され、ワイヤハーネスの端末がドア前端部の一方の接点に接続されているようなものがある。車体側には他方の接点が設けられ、接点にはワイヤハーネスを介してバッテリに接続されている。車体側の接点は防塵、防水のための図示しない可動接点を介してスライドドア側の接点に接続される。
【0004】
しかし、上記の構造の場合にはスライドドアの閉時にのみ通電が行われ、ドアが少しでも開いた状態では、パワーウインドウの開閉やスピーカなどの機器の作動ができないといった欠点があった。
【0005】
そのような欠点を解消する別の例としては例えば図5に示すようなものがある。図5において1は車体、2はスライドドアである。スライドドア2は、車体1の乗降口に凹設された引き込みレールとドア後方の車体側壁に設けられたレールを介して前後方向にスライドして乗降口を開閉するものである。
【0006】
車体1とドア2との間には、ドア2内のスライド部に余長を持たせたワイヤハーネス23を掛け渡すように配線し、ワイヤハーネス23の両端部はコネクタを介して車体とスライドドアに接続されており、ワイヤハーネスはスライド部内で長手方向の湾曲部を有した状態で収容されており、スライドドアの開閉に伴って湾曲した状態でスライドドアに取り付けた側が往復動するようになっている。
【0007】
このようにワイヤハーネスを車体とドアの間に掛け渡すことによって、ドアが開いた状態でも機器に電気や音声信号などを供給することができるので利便性が非常に向上することになる。
【0008】
ただし、ワイヤハーネスが弛んで車体やスライドドアに接触しないようにしなければならないが、その手段としてスチール製のメジャー用いるような幅方向に湾曲した金属バンドをガイド部材として用いワイヤハーネスを固定して動きを規制していた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のような幅方向に湾曲した金属バンドをガイド部材として用いることによってハーネスが垂れ下がるのを防止することができ、擦れによる摩耗や挟みといったことからハーネスを保護するという機能を満足することはできるが、金属製であることから、例えば車の駐停車中で周囲の温度が上昇した場合、熱伝導率が高いことからその熱をハーネスに伝えやすくなって悪影響を及ぼしてしまうといった問題が発生する。
【0010】
また、スライドドアの開閉のたびに繰り返し屈曲することになるので、金属製の場合に素材が疲労して切断したり、折れたりするといった問題もある。
【0011】
そこで本発明では車体とスライドドアの間に余長をもって掛け渡すハーネスを車体やドアとの擦れや挟みからガイドする部材であって、周囲の熱をハーネスに伝えにくく熱からもハーネスを保護し、またドアの開閉による繰り返し屈曲に対しても強いハーネス用ガイド部材の提供を目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記のような目的を達成するために、本発明では車体側からスライドドア間で給電するために車体とスライドドアとを接続する場合に、スライドドアの開閉動作とともに移動することのできるよう弛みのある状態で用いられるハーネスをガイドするハーネス用ガイド部材であって、エラストマーの片面に織物を用いた帆布を一体積層することによって、該帆布を外側にして幅方向に湾曲させたベルト材であり、該ベルト材の長手方向に沿って湾曲した内面にハーネスを固定して取り付けて用いることを特徴とする。
【0013】
ガイド部材の素材としてエラストマーを用いているので、熱伝導性が低く、環境温度が上昇してもハーネスに熱を伝えにくいので熱によるノイズに発生やハーネスを構成する部材の軟化など悪影響を防止することができる。また、ドアの開閉による繰り返し屈曲に対しても金属製バンドをガイド部材として用いる場合よりも長期にわたって機能を果たすことができる。更に帆布を積層していることからスライドドアや車体と擦れることがあっても容易に摩耗してしまうことがなく、ハーネスを保護することができる。
【0014】
請求項2では、車体側からスライドドア間で給電するために車体とスライドドアとを接続する場合に、スライドドアの開閉動作とともに移動することのできるよう弛みのある状態で用いられるハーネスをガイドするハーネス用ガイド部材であって、エラストマーの片面に織物を用いた帆布を一体積層することによって、該帆布を外側にして幅方向に湾曲させたベルト材ベルト材であり、該ベルト材長手方向に沿ってベルト材を構成するエラストマー中であって、前記帆布に近い側にハーネスを埋設して用いることを特徴とする。
【0015】
予めハーネスをエラストマー中に埋め込んだ状態にしており、ハーネスが直接車体やスライドドアに接触するといった問題を完全に防止してしまうことができる。また、周囲の熱から保護する機能に関してもより確実なものになる。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1はスライドドアが取り付けられた自動車のスライドドアを開放したところの斜視図であり、図2はスライドドアにおける断面図、図3はスライドドアが開放しているときの斜視図、図4はスライドドアが閉塞しているときのハーネスの様子を示す概略図、図5は図4の状態を側面から見たところの概要図、図6はスライドドアが開放しているときのハーネスの様子を示す概略図、図7は図6の状態を側面から見たところの概要図、図8はハーネス用ガイド部材にハーネスが取り付けられたところの斜視図である。
【0017】
本発明のハーネス用ガイド部材が適用されるスライドドアとは次に様なものである。図1において、スライドドア1は、車体2に形成した開口3の上下縁および該車体2の後部側壁の上下方向中央にそれぞれ配設したアッパレール4、ロアレール5およびセンタレール6にスライドドア1の前端上部、前端下部および後端中央にそれぞれ配設したアッパローラ、ロアローラおよびセンタローラが係合して案内され、スライドド1が車体2に沿ってスライドするようになっている。
【0018】
各レール4、5、6の前端は車体内方に湾曲しており、スライドドア1は、開くときは車体外方に振り出された後に後方にスライドし、閉じるときは前方にスライドしたのち全閉位置付近で車体内方に引き込まれる。
【0019】
ロアローラは、ローラ支持部材8に設けた左右の垂直軸9間に設けた水平軸10に走行ローラ11が軸支されて構成されている。ローラ支持部材8は支持アーム12に垂直軸13に回動自在に枢着されている。支持アーム12は、スライドドア1に固着されたL形のブラケット14に取り付けられている。アッパローラは、支持アーム15に軸支された水平ローラ16によって構成されている。そして、図示しないセンタローラは、ロアローラと同様に2個の水平ローラと1個の走行ローラとがローラ支持部材に取り付けられて構成されており、ローラ支持部材は、支持アームに回動可能に枢着されたものである。
【0020】
以上のように構成されたスライドドアにおいて、スライドドア1自身が自動ドアであったり、スライドドアにパワーウインドウやスピーカなどの音響機器がとりつけられたりしたものであって、車体2から給電もしくは音声信号などをスライドドア1へ供給してやる必要がある。
【0021】
車体2とスライドドア1との間にはバッテリからのハーネス21が掛け渡すように配線され、スライドドア1にはパワーウインドウやスピーカなどの音響機器へのハーネス22が配線されている。またスライドドア2のスライド部にはハーネス23が余長を持たせた状態で配線されており、ハーネス23の一方の端部はコネクタAを介してハーネス21に接続され、他方の端部はコネクタBを介してハーネス22に接続されている。このように接続されることによって、車体2側からスライドドア1側へ電気や音声信号が送られるようになっている。
【0022】
そして、スライドドアを閉塞状態にすると図4、図5に示すように、車体とスライドドアとの間に配置したハーネス21はスライドドア1側から見て後端に位置する一方、スライドドア2側のハーネス22側のコネクタBは、ハーネス21側のコネクタAよりも前方に位置し、その間のハーネス23はU字状に湾曲している。この閉塞状態からスライドドア1を開放状態にすると、図6、図7で示すようにコネクタAがスライドドア2の後端からコネクタBよりも前方に移動する。
【0023】
スライドドア2がこのような開閉動作をする際にハーネス23はU字状に湾曲した状態でコネクタA側の端部が固定されコネクタB側の端部が移動し、U字状に湾曲する部分がハーネス23内で位置を変えることになる。このようにハーネス23はスライドドア1の開閉に伴って屈曲と伸張とを繰り返すことになる。
【0024】
ハーネス23は図8に示すように本発明のハーネス用ガイド部材30に取り付けられている。本発明のハーネス用ガイド部材30はエラストマー31に帆布32を積層することによって幅方向に湾曲させた帯状部材であり、湾曲した内側にハーネス23を固定して用いるようになっている。このようなハーネス用ガイド部材30を用いることによって、余長をもって配線されているハーネス23が垂れ下がることがなく、スライドドア1の開閉時に車体2やドア1に接触して切断されたり摩耗したりすることを防止することができる。
【0025】
従来は、このようなガイド部材として金属製バンドが用いられていたが、本発明のようなエラストマー31に帆布32を積層した素材とすることによって、スライドドア1の開閉で繰り返し屈曲を受けることになっても長期にわたって疲労することなく使用し続けることができる。また、エラストマー素材であることから金属と比べると熱伝導率が低く、周囲が高温になったとしてもハーネス23に熱を伝えることなく高温によるハーネス23への悪影響を遮断することができるものである。
【0026】
ハーネス用ガイド部材30はエラストマー31に帆布32が一体的に積層されたものであり、エラストマー31としては、特に限定されるものではないが、水素化ニトリルゴム(HNBR)、ニトリルゴム(NBR)、天然ゴム(NR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン・プロピレン・ジエン・モノマーゴム(EPDM)、ミラブルウレタン、ウレタンなどを用いることができる。自動車の車内は温度変化が大きく低温側は氷点下20〜30℃から高温側も70〜80℃にまで達する可能性もあり、前記のエラストマーの中でも水素化ニトリルゴム(HNBR)もしくはエチレン・ブタジエン・ジエン・モノマーゴム(EPDM)を用いることが好ましい。
【0027】
また、前記エラストマー31に一体的に積層する帆布32としては、例えば、綿、麻等の天然繊維やポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン等の有機化学繊維等からなる平織、綾織、朱子織などからなる織布が用いられるが、中でもポリアミド繊維を用いることが耐摩耗性、屈曲性の両方の面で優れていることから最も好ましい。編布や不織布などでなく織物を用いることによって伸びが小さいのでエラストマーとの間の収縮率の差が効いてハーネス用ガイド部材30を湾曲させるためのそりを発生させることができる。
【0028】
以上のようなハーネス用ガイド部材30は大体1〜3mm程度の厚みとする。1mm未満であると強度不足となり早期に切断したり摩耗したりし、3mmを超えると剛性が高くなりすぎて屈曲性を阻害することになるので好ましくない。
【0029】
本発明のハーネス用ガイド部材30は、例えば次のような方法で製造することができる。円筒形状の金型に未加硫のエラストマー31シートを巻きつけて、次いで接着処理を施した帆布32をその上から巻きつける。更に上からジャケットを被せて加硫缶内で160〜175℃、0.6〜0.85MPaで加硫する。加硫缶内から取り出して金型から脱型すると、片面に帆布を積層一体化したスリーブが得られる。必要に応じて適宜な幅に輪切りすることによってエンドレスの帯状となる。次いで長手方向の1箇所を切ることによってオープンエンドの帯状物を得ることができる。
【0030】
このように片面に帆布32を積層一体化することによって両者の収縮率の差によってエラストマー31側を内側として幅方向に湾曲した帯状のハーネス用ガイド部材30を製造することができる
【0031】
9は別の例を示す断面図であり、この例ではハーネス34自身がハーネス用ガイド部材30を形成するエラストマー31中に埋設されている。ハーネス34をエラストマー31中に埋設しておくことによって、ハーネス34はエラストマー31によって完全に外界から遮断してしまうことができるので、スライドドア1を開閉する際にもハーネス34自身が車体やドアなどに接触することが一切なくなる。また、周囲の環境温度を遮る効果も大きいものとすることができる。
【0032】
このようなエラストマー31中にハーネス34を埋設したハーネス用ガイド部材30の製造は図5に示すようなガイド部材を製造するのとほぼ同様の手順で作成することができる。
【0033】
円筒形状の金型に未加硫のエラストマー31シートを巻きつけて、次いでハーネス34となる導線を必要本数巻きつけて、接着処理を施した帆布32をその上から巻きつける。更に上からジャケットを被せて加硫缶内で160〜175℃、0.6〜0.85MPaで加硫する。加硫缶内から取り出して金型から脱型すると、片面に帆布32を積層一体化したスリーブが得られる。必要に応じて適宜な幅に輪切りすることによってエンドレスの帯状となる。次いで長手方向の1箇所を切ることによってオープンエンドの帯状物を得ることができる。
【0034】
また、本発明のハーネス用ガイド部材30はエラストマー31と帆布32を一体的に積層することによって湾曲させているが、図10に示すように金属もしくは樹脂などの剛性を有する素材からなる湾曲形状のクランプ35を端部に取り付けて強制的に湾曲させる方法を併用することも可能である。
【0035】
【発明の効果】
以上のように本発明では、車体側からスライドドア間で給電するために車体とスライドドアとを接続する場合に、スライドドアの開閉動作とともに移動することのできるよう弛みのある状態で用いられるハーネスをガイドするハーネス用ガイド部材であって、エラストマーの片面に織物を用いた帆布を一体積層することによって、該帆布を外側にして幅方向に湾曲させたベルト材であり、該ベルト材の長手方向に沿って湾曲した内面にハーネスを固定して取り付けて用いることを特徴とする。
【0036】
ガイド部材の素材としてエラストマーを用いているので、熱伝導性が低く、環境温度が上昇してもハーネスに熱を伝えにくいので熱によるノイズに発生やハーネスを構成する部材の軟化など悪影響を防止することができる。また、ドアの開閉による繰り返し屈曲に対しても金属製バンドをガイド部材として用いる場合よりも長期にわたって機能を果たすことができる。更に帆布を積層していることからスライドドアや車体と擦れることがあっても容易に摩耗してしまうことがなく、ハーネスを保護することができる。
【0037】
請求項2では、車体側からスライドドア間で給電するために車体とスライドドアとを接続する場合に、スライドドアの開閉動作とともに移動することのできるよう弛みのある状態で用いられるハーネスをガイドするハーネス用ガイド部材であって、エラストマーの片面に織物を用いた帆布を一体積層することによって、該帆布を外側にして幅方向に湾曲させたベルト材であり、該ベルト材長手方向に沿ってベルト材を構成するエラストマー中であって、前記帆布に近い側にハーネスを埋設して用いることを特徴とする。
【0038】
予めハーネスをエラストマー中に埋め込んだ状態にしており、ハーネスが直接車体やスライドドアに接触するといった問題を完全に防止してしまうことができる。また、周囲の熱から保護する機能に関してもより確実なものになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 スライドドアが取り付けられた自動車のスライドドアを開放したところの斜視図である。
【図2】 図1におけるスライドドア部分の断面図である。
【図3】 スライドドアが開放しているときのハーネスの様子を示す概略斜視図である。
【図4】 スライドドアが閉塞しているときのハーネスの様子を上から見た概略図である。
【図5】 スライドドアが閉塞しているときのハーネスの様子を側面から見た概略図である。
【図6】 スライドドアが開放しているときのハーネスの様子を上から見た概略図である。
【図7】 スライドドアが開放しているときのハーネスの様子を側面から見た概略図である。
【図8】 ハーネス用ガイド部材にハーネスが取り付けられたところの斜視図である。
【図9】 ハーネスを埋設したハーネス用ガイド部材の断面図である。
【図10】 ベルトクランプを取り付けたハーネス用ガイド部材の側面図である。
【符号の説明】
1 スライドドア
2 車体
3 開口
4 アッパレール
5 ロアレール
6 センタレール
8 ローラ支持部材
9 垂直軸
10 水平軸
11 走行ローラ
12 支持アーム
13 垂直軸
14 ブラケット
15 支持アーム
16 水平ローラ
21 ハーネス
22 ハーネス
23 ハーネス
30 ハーネス用ガイド部材
31 エラストマー
32 帆布
34 ハーネス
35 クランプ

Claims (2)

  1. 車体側からスライドドア間で給電するために車体とスライドドアとを接続する場合に、スライドドアの開閉動作とともに移動することのできるよう弛みのある状態で用いられるハーネスをガイドするハーネス用ガイド部材であって、エラストマーの片面に織物を用いた帆布を一体積層することによって、該帆布を外側にして幅方向に湾曲させたベルト材であり、該ベルト材の長手方向に沿って湾曲した内面にハーネスを固定して取り付けて用いることを特徴とするハーネス用ガイド部材。
  2. 車体側からスライドドア間で給電するために車体とスライドドアとを接続する場合に、スライドドアの開閉動作とともに移動することのできるよう弛みのある状態で用いられるハーネスをガイドするハーネス用ガイド部材であって、エラストマーの片面に織物を用いた帆布を一体積層することによって、該帆布を外側にして幅方向に湾曲させたベルト材であり、該ベルト材長手方向に沿ってベルト材を構成するエラストマー中であって、前記帆布に近い側にハーネスを埋設して用いることを特徴とするハーネス用ガイド部材。
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