JP4335355B2 - ゴムクローラの成型方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は比較的高速で走行できるゴムクローラに関するものであり、更に言えば、高速で走行する際の振動の低減をもたらすゴムクローラの成型方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
ゴムクローラは農業用機械や建設機械等の走行部に広く使用されているが、近年では自動車等の車軸に装着されて高速走行に供されるゴムクローラを用いた走行装置が開発されている。かかるゴムクローラは無端のゴム弾性体とこの長手方向にスチールコードを埋設した構造を基本としているが、通常のゴムクローラの成型法は送り加硫等によって有端のゴム弾性体中にスチールコードを埋設し、無端状とする継手構造は両端より突出するスチールコード端を重ね合せ、この周囲に未加硫ゴムを充填しこれを加硫して無端状としている。尚、送り加硫とはゴムクローラの周長に比べて短いモールドを使用し、少しずつ分断して順次加硫してゆく方法である。
【0003】
図1はこの従来のゴムクローラの継手構造の断面図であり、スチールコード2の内外にゴム弾性体1が加硫されてゴムクローラの基体が形成され、有端のゴム弾性体1よりスチールコード2の両端2a、2bが突出しており、継手構造はこの両端2a、2bを重ね合せ、この内外に未加硫ゴム1a、1bを、場合によってはその間に接着用ゴムシートを挟み、これを加硫成型して無端状のゴムクローラとしている。ゴムクローラ中のスチールコード2はゴムクローラ全体として同一の水平部位に埋設される必要があり、このため、通常は重ね合されたスチールコード2a、2bのうち、外側に配置されるスチールコード2bがゴムクローラの外周側に浮いた状態で埋設される。
【0004】
ゴムクローラ中のスチールコード2は走行に供された際にこのスチールコード2が引張力に抗することになるが、駆動輪や遊動輪に巻き掛けされた際に湾曲する中立面P1となる。従って、このスチールコード2の中立面P1は動かないとすると、継手部における中立面P1より外側のスチールコード端部に加わる引張り力は内周側に向うこととなる。そして、例え周方向に動いたとしてもその一部は内周側に向かうこととなり、この力は中立面P1から外側に離れる程大きくなる。そしてこの力により継手部のクローラの内周面に屈曲部ができてこれが振動の発生の原因となる。
【0005】
即ち、スチールコードがかかる状態で埋設されたゴムクローラにあっては、高速走行に供した場合にこのスチールコードの継手構造が特に振動の発生に大きく影響し、引張りの中立面(スチールコード)P1より大きく外れた外側の端部が振動の発生に大きく影響し、しかもスチールコードの継手構造が他の部位よりも剛性が高いことからも振動の発生をももたらすこととなる。
このように、駆動輪や遊動輪によって曲げられた際、スチールコードの継手部が駆動輪等に繰り返し衝突することとなり、ここに大きな振動や騒音の発生源となるものである。
【0006】
尚、スチールコードを無端状に連続して巻き掛けしてなるいわゆるスパイラル成型も考えられているが、これは予め得られるゴムクローラの周長分の円形又は楕円形のモールドを用い、このモールド面にゴム材を装着した後に一本のスチールコードを螺旋状に巻き掛けするものであり、成型装置が極めて大掛かりとなり得られたゴムクローラのコストも高価なものとなってしまうため、安価な成型方法の開発が要請されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はゴムクローラの継手構造を改善することにより低速度走行から高速走行の際でも振動の発生を低減することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
ゴムクローラの成型方法の第1は、有端で直線状のスチールコードの上下にゴムクローラの内周面側と外周面側を構成するゴム材を加硫し、ゴムクローラ本体を成型する工程と、該ゴムクローラ本体の有端部を重ね合せて無端状に加硫成型するゴムクローラの成型方法であって、スチールコードの重ね合せ部の内周側の未加硫ゴム部の厚さをスチールコードの直線部位のゴム部の厚さよりも薄くし、一方、スチールコードの重ね合せ部の外周側の未加硫ゴム部の厚さを前記直線部位の厚さよりも厚くし、これを加圧下に加熱して加硫成型することを特徴とするものであり、通常は、有端状ゴムクローラ本体の重ね合せ面、即ちスチールコード側をウォータージャケット等の冷却手段により前記したトリートゴムを未加硫状態とし、その後この部位を無端状に重ね合せて加硫成型するのが良い。場合によっては、この間に例えばゴムクローラを構成するゴム材の硫黄分よりも多くした接着用未加硫ゴムシートをはさんで加硫成型することも可能である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の第1のゴムクローラにあっては、スチールコードの内側の重ね合わせ部は他の部位のスチールコード列の水平位置より内側に位置するように構成されているものであり、従って、両端はスチールコードの水平位置の両側にて対向して配置されている。このため、スチールコード端部の重ね合せ部は引張りの中立位置即ちスチールコードの水平面に対して上下に均等に配置され、このため、ゴムクローラ全体の曲げ抵抗も従来のゴムクローラに比べて曲げ抵抗の部分的差異を大きく低減したものであり、振動の発生や騒音の発生の低減をもたらすものである。
【0014】
そして、成型方法の第1は、ゴムクローラにおけるスチールコードの重ね合せ部の改良を目的としたものであり、重ね合せ部をスチールコードの水平位置に対して上下に対向して形成する方法であって、ゴムクローラを構成する基体はスチールコードを水平に保ってその内外にゴム材を加硫したものであり、無端化の際にはスチールコード端部の重ね合せ部における内周側の未加硫ゴムのボリュームを小さく、外周側のボリュームを大きくして加圧加硫したものであり、ボリュームの小さい分だけスチールコード端を下方に配置させることによってスチールコードの水平位置の左右にスチールコードの端部を配することが可能となったものである。尚、場合によってはゴムクローラを構成するゴム材の硫黄分よりも多い未加硫ゴムシートを両者の間に挟んで加硫成型するものである。
【0015】
第2の成型方法にあっては、いわゆる送り加硫方式を採用した成型方法であって、前記した第1の成型方法におけるゴムクローラの基体部を部分的に分断しこれを加硫し、以下順次この工程を繰り返してゴムクローラの基体部を成型するものである。勿論、無端化する際にはスチールコード両端における未加硫ゴムのボリュームは上記第1の手段を採用するものである。
【0016】
更に、第3の成型方法にあっては、送り加硫方法の別例を提供するもので、この方法にあっては、スチールコードの無端化を最初に行い、次いで順次ゴム材をスチールコードの内外に加硫して行く方法である。勿論、無端化する際にはスチールコード両端における未加硫ゴムのボリュームは上記第1の手段を採用することは言うまでもない。
【0017】
【実施例】
以下、本発明を図面をもって更に説明する。
図2は本発明のゴムクローラの主要部における断面図である。
図中、1はゴム弾性体であり、2はこのゴム弾性体1中に一直線状に埋設されたスチールコードである。かかるスチールコード2の両端部2a、2bはその継手を構成する重ね合せ部にあって、内側に存在するスチールコード2aは内周側に位置させるようにしたもので、そのため、スチールコード2bもそれだけ内周側に配置されることとなる。このため、ゴム弾性体1中のスチールコード2の水平位置P1に対して上下に平行に配置した構造となっており、その引張りの中立面はスチールコード2a、2bの対向するゴム部1cとなっている。図中、符号3は内周側に埋設した芯金であり、4は外周側に備えたラグである。
【0018】
即ち、駆動輪や遊動輪における曲げにあって、このスチールコード端2aが水平位置に対して内周側に配置され、そして外周側の2bはより内周側でこれにほぼ平行に埋設されているため、特に外周側のスチールコード端2bがこの中立面P1に近づけることによって曲げ剛性が低く、曲げ抵抗を小さくすることができることとなったものであり、このため、振動、騒音の発生が低くおさえられることとなったものである。
【0019】
図3は本発明の成型方法の第1のゴムクローラの成型法の主工程を示す図であり、第1工程にてスチールコード2の内外面にゴムクローラを構成する部材、即ち、ゴム弾性体や芯金等を配してゴム材を加硫してゴムクローラの基体を構成する。この例ではゴムクローラ基体を順次部分加硫する送り加硫にて成型したもので、スチールコード2はゴム弾性体1中に同一水平位置P1に埋設されたものである。このスチールコード2は列状をなしかつトリートゴムにてカバーされているのが一般的であり、この例でも図示はしないがトリートゴムにて覆われるものである。
【0020】
この有端のゴムクローラ基体の両端より所定長さのスチールコード2を突出させたものであり、第2工程ではこの突出させたスチールコード2a、2bを重ね合せ、この両側に未加硫ゴム1a、1bを充填するものである。未加硫ゴム1aが加硫させた際のゴムの性状は、例えば硬度(JIS・A)73±5度、伸び200(%以上)、未加硫ゴム1bが加硫させた際のゴムの性状は例えば硬度(JIS・A)54±5度、伸び400(%以上)であり、両者共強度140(kg/cm2以上)である。
【0021】
この際、重ね合されるスチールコード2の内周側のスチールコード2aに対応する未加硫ゴム部1aはゴム部材のボリュームとしてはやや少なめとするものであり、一方、外周側のスチールコード2bに対応する未加硫ゴム部1bはゴム部材のボリュームをやや多めとしたものである。
【0022】
このような状態にて第3工程として上下型内にて加圧して加熱し、未加硫ゴム部1a、1bを加硫成型するものである。こうすることによって、ゴム部材1bにてスチールコード2b、そして2aが下側に押された状態に加硫されることとなり、図2に示すように継手構造を有するゴムクローラを得ることとなるものである。尚、スチールコード2a、2bは未加硫ゴムにてコートされておりそのまま成型してもよいが、この間に接着用未加硫ゴムシート(1c)を挟んでもよいことは言うまでもない。
【0023】
尚、図示する未加硫ゴム1a、1bの部位は、場合によってはゴム弾性体1が構成される際に一体に形成したものであっても良く、この場合にはスチールコード2a、2bに対応して図示しないウォータージャケット等を接触させておき、この部位のトリートゴムの加硫を阻止しておき、最後にこの部位を重ねてトリートゴムを加硫して無端化することも可能である。
【0024】
成型方法の第2は図示はしないがスチールコード2の内外に加硫されるゴム弾性体1を適当な長さに分断して加硫し、この工程を順次行ってゴムクローラの基体を構成したものであって、加硫の際のモールドが比鮫的小さいもので良いという特徴がある。無端化の条件等は前記した成型方法1の場合とほぼ同様であり省略する。
【0025】
成型方法の第3にあっては、有端のスチールコードを先ず無端化するものであって、その後のゴムクローラの基体部は送り加硫する成型方法である。無端化の際の条件はこれ又前記例とほぼ同一であり省略する。
【0026】
【発明の効果】
本発明のゴムクローラは上記のような継手の構造を有しており、スチールコードの重ね合せ部を改良することにより低速度走行から高速走行の際でも振動の発生を低減することができることとなったもので、その成型方法も安価な方法を提供できたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はこの従来のゴムクローラの断面図である。
【図2】図2は本発明の第1のゴムクローラの主要部における断面図である。
【図3】図3は本発明の成型方法の第1における主工程を示す図である。
【符号の説明】
1‥ゴム弾性体、
1a、1b‥未加硫ゴム、
1c‥接着用未加硫ゴムシート、
2‥スチールコード、
2a、2b‥スチールコードの端部、
3‥芯金、
4‥ラグ、
P1‥中立面。

Claims (1)

  1. 有端で直線状のスチールコードの上下にゴムクローラの内周面側と外周面側を構成するゴム材を加硫し、ゴムクローラ本体を成型する工程と、該ゴムクローラ本体の有端部を重ね合せて無端状に加硫成型するゴムクローラの成型方法であって、
    スチールコードの重ね合せ部のゴムクローラの内周面を凹ますことで、スチールコードの重ね合せ部のゴムクローラの内周面からスチールコードまでの未加硫ゴム部の厚さを、スチールコードの重ね合せ部以外のゴムクローラの内周面からスチールコードまでのゴム部の厚さよりも薄くし、
    一方、スチールコードの重ね合せ部のゴムクローラの外周面を盛り上げることで、スチールコードの重ね合せ部のゴムクローラの外周面からスチールコードまでの未加硫ゴム部の厚さを、スチールコードの重ね合せ部以外の外周面からスチールコードまでのゴム部の厚さよりも厚くし、
    有端状ゴムクローラ本体の重ね合せ面を冷却手段により未加硫状態としてスチールコードの重ね合せ部以外を加硫し、スチールコードの重ね合せ部以外を加硫した後に未加硫状態の重ね合せ面を重ね合せて加圧下に加熱して加硫成型することを特徴とするゴムクローラの成型方法。
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