JP3998892B2 - 高純度アルキルアダマンチルエステルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、不純物として昇華性物質を含む粗アルキルアダマンチルエステルを効率よく蒸留精製することによって、高純度のアルキルアダマンチルエステルを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、昇華性物質を不純物として含む高沸点化合物を蒸留精製する場合、昇華性物質が昇華して配管を閉塞する危険性があり、また、配管に付着した固体の昇華性物質が後から留出してくる高沸点化合物に溶解して、高沸点化合物の純度が上がらなくなるという問題があり、蒸留精製は困難であった。
【0003】
一方、製品に対する純度の要求は年々高まってきており、特に半導体製造プロセスに使用する製品には金属成分の低減が厳しく要求されている。また、このような金属成分を効率よく除去できる精製法としては、蒸留精製が適している。
【0004】
近年、アルキルアダマンチル(メタ)アクリレートのポリマーは、半導体製造プロセスにおけるドライエッチング耐性が高いことが報告され(例えば特開平5−265212号公報)、半導体用レジスト材料としての可能性が注目されている。これらアルキルアダマンチル(メタ)アクリレートにおいても半導体用レジスト材料として使用する場合には金属成分が低減された高純度のものが要求される。
【0005】
該アルキルアダマンチル(メタ)アクリレートは、一般にアダマンタンを原料に、アダマンタノンを経てアルキルアダマンタノールを得、これと(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸の無水物、又は(メタ)アクリル酸ハロゲン化物との反応により製造できることが知られている。しかし、目的化合物であるアルキルアダマンチル(メタ)アクリレートは高沸点の化合物であり、未反応原料や反応副生成物として混入しているアダマンタン、アダマンタノン、アルキルアダマンタノール等は、目的化合物の沸点より昇華開始温度(昇華点)の低い昇華性物質であることから、目的化合物を蒸留により効率よく精製することが困難であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上のように効率的な蒸留精製方法が知られていなかった、昇華性物質を不純物として含む粗アルキルアダマンチルエステルについて、効率的な精製方法を採用して高純度の目的化合物を製造する方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、目的とするアルキルアダマンチルエステルの沸点より低い沸点を有し、かつ、アルキルアダマンチルエステルの沸点より低い温度で昇華する昇華性物質の昇華開始温度以上の沸点を有する化合物の存在下に粗アルキルアダマンチルエステルを蒸留することにより、目的とするアルキルアダマンチルエステルを効率よく精製できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、下記一般式(1)
【化1】
(式中、R3は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、R4は水素原子又はメチル基である。)で示されるアルキルアダマンチルエステルの沸点より低い温度で昇華する昇華性物質を不純物として含む粗アルキルアダマンチルエステルを蒸留して高純度アルキルアダマンチルエステルを製造する方法において、該アルキルアダマンチルエステルの沸点より低い沸点を有し、かつ、アルキルアダマンチルエステルの沸点より低い温度で昇華する昇華性物質の昇華開始温度以上の沸点を有する化合物の存在下に該蒸溜を行ない、該アルキルアダマンチルエステルの沸点より低い沸点を有し、かつ、アルキルアダマンチルエステルの沸点より低い温度で昇華する昇華性物質の昇華開始温度以上の沸点を有する化合物の留出により、昇華して蒸留装置内部に付着した昇華性物質を洗い落とすか、または、昇華性物質の蒸留装置内部への付着を防ぎ、次いで留出する該アルキルアダマンチルエステルを回収することを特徴とする高純度アルキルアダマンチルエステルの製造方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の方法では、目的とするアルキルアダマンチルエステルの沸点より低い温度で昇華する昇華性物質(以下、低温昇華性物質ともいう。)を含む粗アルキルアダマンチルエステル(以下、被精製物ともいう。)を蒸留する。このとき被精製物としては、低温昇華性物質を含む粗アルキルアダマンチルエステルであれば特に限定されない。例えば、(i)目的とする有機化合物の沸点より低い温度で昇華する昇華性物質を原料として化学反応により該アルキルアダマンチルエステルを合成して得られる、未反応原料が残存する反応液、(ii)或いは該反応液から得られる粗生成物であって前記原料を不純物として含むもの、又は(iii)化学反応によりアルキルアダマンチルエステルを合成する際に副生成物として生成し、該アルキルアダマンチルエステルの沸点より低い温度で昇華する昇華性物質を含む反応液、或いは(iv)該反応液から得られる粗生成物であって前記副生成物を不純物として含むものなどが使用される。
【0010】
例えば、アルキルアダマンチルエステルの合成反応においては、昇華性物質であるアダマンタン、アダマンタノン、アルキルアダマンタノール等の合成原料や合成反応における副生成物が生成物中に不可避的に混入する。このような合成反応において得られる粗有機化合物は、本発明における蒸留の対象物として好適である。
【0011】
上記のアルキルアダマンチルエステルは、常圧における沸点が100℃以上、1mmHgの減圧下で40℃以上であるような高沸点の化合物であり、このような有機化合物の沸点と低温昇華性物質の昇華開始温度との差が10℃以上、特に20〜100℃である場合に、本発明の方法は特に好適である。
【0012】
例えば、アダマンタンを原料に、アダマンタノンを経てアルキルアダマンタノールを得、これと(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸の無水物、又は(メタ)アクリル酸ハロゲン化物等との反応によりアルキルアダマンチル(メタ)アクリレート等のアルキルアダマンチルエステルが製造される。この場合、得られる反応液あるいは該反応液から得られる粗製品は、一般に、未反応原料や反応副生成物であるアダマンタン、アダマンタノン、アルキルアダマンタノール等を不純物として含んでおり、これらの不純物は蒸留時の真空度にもよるが、一般に目的化合物であるアルキルアダマンチルエステルの沸点より昇華開始温度が100℃〜10℃程度低い低温昇華性物質である。この様な反応液等から目的化合物を蒸溜により精製する方法として本発明の方法を特に好適に採用することができる。
【0013】
上記の方法で製造されるアルキルアダマンチルエステルは、下記一般式(1)
【0014】
【化2】
【0015】
(式中、R3は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、R4は水素原子又はメチル基である。)
で示される。
【0016】
前記一般式(1)において、R 3 で示されるアルキル基を具体的に例示すれば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等の直鎖アルキル基;及びイソプロピル基、第3級ブチル基、ネオペンチル基等の分岐アルキル基を挙げることができる。特に、半導体用レジストの原料として有用であり、特に高純度化が重要であるという観点から、前記一般式(1)で示されるもの中でもR3がメチル基、エチル基、またはブチル基であり、R4が水素またはメチル基であるものが好適である。
【0017】
本発明においては、被精製物には、目的とするアルキルアダマンチルエステル及び低温華性物質以外の物質(以下、第三物質ともいう。)、例えば、昇華性を有さない物質、或いは昇華性を有していても昇華開始温度が目的とするアルキルアダマンチルエステルの沸点よりも高い物質を含んでいてもよい。通常、第三物質となり得る化合物としては、目的とするアルキルアダマンチルエステルの合成時に用いる原料、副生成物、溶媒などが挙げられる。
【0018】
また、被精製物の組成は特に限定されないが、蒸留効率などの点から目的とするアルキルアダマンチルエステルと低温昇華性物質との総重量を基準として、目的とする有機化合物が50〜99重量%、特に70〜99重量%であるのが好適である。また、第三物質を含む場合には、該第三物質の含有量は前記総重量を100重量部としたときに50重量部以下、特に30重量部以下であるのが好適である。
【0019】
本発明においては、前記被精製物の蒸留を、目的とするアルキルアダマンチルエステルの沸点より低い沸点を有し、かつ、低温昇華性物質の昇華開始温度以上の沸点を有する化合物(以下、蒸溜助剤ともいう。)の存在下に行い、目的とするアルキルアダマンチルエステルを精製する。
【0020】
低温昇華性物質は、蒸留の初期に昇華し、蒸留装置内部に凝固して付着する。蒸留助剤は、その沸点に応じて低温昇華性物質の昇華と同時かまたは相前後して留出し、蒸留装置内部に付着した低温昇華性物質を洗い流すか、または、低温昇華性物質の蒸留装置内部への付着を抑制する作用を有する。したがって、蒸留助剤によって低温昇華性物質が排出された後に、留出する目的とするアルキルアダマンチルエステルを回収することによって、目的とするアルキルアダマンチルエステルを高純度で回収することができる。
【0021】
蒸留助剤は、目的とするアルキルアダマンチルエステルの沸点よりも低い沸点を有するもので、かつ、低温昇華性物質の昇華開始温度以上の沸点であれば、どのような化合物であってもよい。蒸留助剤の沸点が低温昇華性物質の昇華開始温度以上であれば、低温昇華性物質の昇華と同時に、または昇華の後に蒸留助剤が留出し、留出する蒸留助剤によって蒸留装置内部に付着した低温昇華性物質を洗い流すことができる。その結果、目的化合物を高純度で蒸溜することができる。
【0022】
蒸留助剤は、低温昇華性物質を溶解するものであることが、高純度の有機溶媒を高回収率で得ることができるために好ましい。
【0023】
目的とするアルキルアダマンチルエステルとの分離が容易な蒸留助剤を用いた場合には、蒸留が進んでアルキルアダマンチルエステルが留出し、蒸留助剤と混合した場合でも、蒸留助剤が容易に取り除けるのでアルキルアダマンチルエステルを高純度で得ることができる。例えば、水溶性の蒸留助剤を用いれば、留出液を水洗いすることにより容易にアルキルアダマンチルエステルを得ることができる。また、非水溶性の蒸留助剤を用いれば、留出液をそれぞれ水、酸性水溶液、またはアルカリ性水溶液に溶解し、分液操作等により蒸留助剤を除いてから、必要に応じて中和操作をし、水を取り除くことにより容易にアルキルアダマンチルエステルを得ることができる。
【0024】
蒸留助剤は、被精製物に含まれるアルキルアダマンチルエステル及び低温昇華性物質の種類に応じて適宜決定すればよいが、カルボニル基を含有する化合物は、効率よく低温昇華性物質の付着を抑制することが可能であり、被生成物中のアルキルアダマンチルエステルの含有量が低い場合であっても、目的とするアルキルアダマンチルエステルを高い純度で得ることが可能である。
【0025】
本発明において好適に使用できる蒸溜助剤を具体的に例示すれば、例えば、n−ブチルフェニルエーテル、ジヘキシルエーテル等のエーテル類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;ジメチルスルホキシドやスルホラン等のスルホキシドやスルホン類;ヘキサメチルりん酸トリアミド等のりん酸アミド類;ベンジルイソプロピルケトン、イソプロピルフェニルケトン、ヘプタノフェノン、メチルシクロヘキサノン等の非環状または環状のケトン類;デカナール、ベンツアルデヒド等のアルデヒド類;ジエチレングリコールジアセテート、フェニルアセテート等のエステル類;ジメチルホルムアミド、ジプロピルホルムアミド、N−ベンジルアセトアミド、アセトアニリド、1−ホルミルピペリジン、1−アセチルピペリジン、N−ホルミルモルホリン、N,N−ジエチルアセトアセトアミド等の非環状のアミド類;イプシロン−カプロラクタム、2−ピロリジノン、N−メチルピロリジノン、1−メチル−2−ピロリドン、1−メチル−2−ピペリドン、2−ピペリドン、2−ピロリドン、N−メチル−4−ピペリドン等の環状アミド類;テトラエチルウレア、1,3−ジエチルウレア、1,1−ジエチルウレア等の非環状のウレア類;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン、エチレンウレア、テトラヒドロ−2−ピリミジノン等の環状ウレア類;フタルイミド、スクシンイミド等のイミド類;無水シクロヘキサンジカルボン酸等の酸無水物類;カルバミック酸メチルエステル等のウレタン類;ラクチド類;等が挙げられる。これら蒸留助剤は単独で用いてもよいし、複数種類を混合して用いてもよい。
【0026】
これらの蒸溜助剤のなかでも、下記一般式(2)
【0027】
【化3】
【0028】
(式中、R1は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、Aは−CH2−または>N−R2(R2は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である。)であり、nは1〜6の整数である。)で示される環状ウレア類又は環状アミド類は、被精製物である粗アルキルアダマンチルエステルに含まれる低温昇華性物質に対して特に良好な溶解性を示すことから、目的とするアルキルアダマンチルエステルを高純度、高回収率で得ることができ、特に好ましい。
【0029】
前記一般式(2)において、R1、R2は共に独立した水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である。該アルキル基を具体的に例示すれば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等の直鎖アルキル基;及びイソプロピル基、第3級ブチル基、ネオペンチル基等の分岐アルキル基が挙げられる。
【0030】
特に好ましい蒸留助剤を具体的に例示すれば、イプシロン−カプロラクタム、2−ピロリジノン、N−メチルピロリジノン、1−メチル−2−ピロリドン、1−メチル−2−ピペリドン、2−ピペリドン、2−ピロリドン、N−メチル−4−ピペリドン等の環状アミド類;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン、エチレンウレア、テトラヒドロ−2−ピリミジノン等の環状ウレア類を挙げることができる。
【0031】
蒸留助剤の存在のさせ方は、目的とするアルキルアダマンチルエステルが沸騰を開始する前に、昇華して蒸留装置内部に付着した低温昇華性物質を洗い流せるか、または低温昇華性物質の蒸留装置内部への付着を防止できるような態様であれば特に限定されない。例えば、蒸留を開始する前に蒸留助剤を予め被精製物と混合しても良いし、蒸留を開始してから蒸留釜に直接、或いは蒸留塔、蒸留管、乾留ラインに供給してもよい。
【0032】
なお、蒸留助剤の効果としては、前記した低温昇華性物質の洗浄効果の他に、例えば、蒸留助剤を添加して被精製物の粘度を下げたり、アルキルアダマンチルエステルが常温で固体である場合には、溶液化や懸濁液化したりすることにより取扱を容易にする効果もある。さらに蒸留操作中(特に留出液を冷却するときに)に固体が析出することなく効率よく蒸留精製を行うことが出来るようになるという効果も期待できる。前記洗浄効果の他にこの様な効果を期待する場合には、アルキルアダマンチルエステルの沸点に近い沸点を持つ液体を第二の蒸留助剤として被精製物に添加するのが好適である。
【0033】
蒸留助剤の添加量は、低温昇華性物質が蒸留装置から全て洗い流されるに必要十分な量を加えればよく、不純物の量や蒸留助剤への溶解性等を勘案して加える量を決定すれば良いが、通常は、被精製物中に含まれる低温昇華性物質1重量部に対して0.1〜100重量部、好ましくは1〜20重量部の範囲である。
【0034】
本発明の製造方法において、蒸留助剤の存在下での蒸留方式は特に限定されず、単蒸留または分別蒸留が用いられ、分別蒸留の場合、分留管としては、ビグルー型、同心円筒型、回転バンド型、充填カラム等の薄膜式分留管や泡鐘型、多孔板型等のプレート式分留管が好適に用いられ、特に減圧蒸留を行う場合は圧力損失の少ない薄膜式分留管が好適に用いられる。また、クーゲルロールや薄膜蒸留等の公知の蒸留方式が何ら制限無く採用できる。また、温度や圧力、還流比などの蒸留条件も特に限定されず、被精製物の組成、蒸留助剤の種類及び添加量、最終的に得られるアルキルアダマンチルエステルの純度等に応じて適宜決定すればよい。
【0035】
【実施例】
以下に実施例および比較例を掲げて本発明をさらに詳細に述べるが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
【0036】
実施例1
昇華性の不純物としてアダマンタン(昇華開始温度、室温以下)2.1重量%、2−メチレンアダマンタン(昇華開始温度30℃)5.3重量%、2−アダマンタノン(昇華開始温度50℃)4.5重量%、2−メチル−2−アダマンタノール(昇華開始温度60℃)1.2重量%を含む純度72重量%の2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート(沸点92℃/0.3mmHg)1重量部に、0.05重量部の1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(沸点225℃)を加え、減圧下蒸留を行った。
【0037】
蒸留は、5cmのビグルー型分留管と全縮型還流分留装置を用い、ガラスキャピラリーで空気を導入しながら、真空度0.3mmHgで行った。初めに不純物として混入していたアダマンタン等は蒸留装置にわずかに付着したが、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが留出するにつれて徐々に溶解、剥離して、閉塞等を起こさなかった。初留をカットし、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレートが留出し始めた時点で本留を取りはじめた。本留分を集めたところ2−メチル−2−アダマンチルメタクリレートを純度97.7重量%で得ることができた。
【0038】
実施例2
実施例1において蒸留助剤として用いた1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンの代わりにN−メチルピロリジノン(沸点81℃/10mmHg)を0.3重量部用いた他は実施例1に準じて蒸留を行った。初めに蒸留装置内に付着した昇華性不純物は、N−メチルピロリジノンが留出するにつれて徐々に溶解、剥離して、閉塞等を起こさなかった。本留において2−メチル−2−アダマンチルメタクリレートの留出と共にN−メチルピロリジノンは混ざり合ってしまったが、留出液を純水で洗浄することにより、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレートを純度95.8重量%で得ることができた。
【0039】
実施例3
昇華性の不純物としてアダマンタン6.3重量%、2−アダマンタノン2.1重量%、2−エチル−2−アダマンタノール(昇華開始温度60℃)0.9重量%含む純度82重量%の2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート(沸点96℃/0.2mmHg)1重量部に対し、0.1重量部のテトラエチルウレア(沸点214℃)と0.1重量部の1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(沸点232℃)を加え、減圧下蒸留を行った。
【0040】
蒸留は、5cmのビグルー型分留管と全縮型還流分留装置を用い、ガラスキャピラリーで空気を導入しながら、真空度0.2mmHgで減圧蒸留した。
【0041】
その結果、蒸留装置内に固体が析出することなく蒸留は進行し、本留の留出液をヘキサンに溶解し、純水で洗浄した後にヘキサンを留去することにより2−エチル−2−アダマンチルメタクリレートを純度96.5重量%で得ることができた。なお、この2−エチル−2−アダマンチルメタクリレートを室温で放置すると結晶になった。
【0042】
実施例4
昇華性の不純物としてアダマンタン5.1重量%、2−アダマンタノン1.1重量%、2−ブチル−2−アダマンタノール(昇華開始温度70℃)0.4重量%を含む純度79重量%の2−ブチル−2−アダマンチルメタクリレート(沸点103℃/0.2mmHg)1重量部に対し、0.1重量部の1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(沸点232℃)を加え、実施例3と同様にして減圧下蒸留を行った。
【0043】
その結果、蒸留装置内に固体が析出することなく蒸留は進行し、本留の留出液をヘキサンに溶解し、純水で洗浄し、続いてヘキサンを留去することにより2−ブチル−2−アダマンチルメタクリレートを純度97.5重量%で得ることができた。
【0044】
実施例5
昇華性の不純物としてアダマンタン(昇華開始温度、室温以下)0.05重量%、2−アダマンタノン(昇華開始温度50℃)2.5重量%、2−メチル−2−アダマンタノール(昇華開始温度60℃)3.8重量%を含む純度78重量%の2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート(沸点92℃/0.3mmHg)1重量部に、0.1重量部のジエチレングリコール(沸点245℃)を加え、減圧下蒸留を行った。
【0045】
蒸留は、5cmのビグルー型分留管と全縮型還流分留装置を用い、ガラスキャピラリーで空気を導入しながら、真空度0.3mmHgで減圧蒸留した。初めに不純物として混入していた2−アダマンタノンや2−メチル−2−アダマンタノールが昇華して蒸留装置の壁に付着したが、ジエチレングリコールが留出するにつれて徐々に溶解、剥離して、閉塞等を起こさなかった。初留をカットし、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレートが留出し始めた時点で本留を取りはじめたところ、ジエチレングリコールは2−メチル−2−アダマンチルメタクリレートと混ざり合わず、ジエチレングリコールが下層に分離した。これを分液することにより2−メチル−2−アダマンチルメタクリレートを純度97.6重量%で得ることができた。
【0046】
実施例6
実施例5において蒸留助剤として用いたジエチレングリコールの代わりにN−メチルピロリジノン(沸点81℃/10mmHg)を用いた他は実施例5に準じて蒸留を行った。初めに蒸留装置内に付着した昇華性不純物は、N−メチルピロリジノンが留出するにつれて徐々に溶解、剥離して、閉塞等を起こさなかった。本留において2−メチル−2−アダマンチルメタクリレートの留出と共にN−メチルピロリジノンは混ざり合ってしまったが、留出液を純水で洗浄することにより、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレートを純度97.0重量%で得ることができた。
【0047】
実施例7
昇華性の不純物としてアダマンタン0.2重量%、2−アダマンタノン2.0重量%、2−エチル−2−アダマンタノール(昇華開始温度60℃)0.8重量%含む純度86重量%の2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート(沸点96℃/0.2mmHg)1重量部に対し、0.1重量部のジエチレングリコール(沸点245℃)と0.1重量部のテトラエチレングリコール(沸点314℃)を加え、減圧下蒸留を行った。
【0048】
蒸留は、5cmのビグルー型分留管と全縮型還流分留装置を用い、ガラスキャピラリーで空気を導入しながら、真空度0.2mmHgで減圧蒸留した。
【0049】
その結果、蒸留装置内に固体が析出することなく蒸留は進行し、本留留出液をヘキサンに溶解し、純水で洗浄した後にヘキサンを留去することにより2−エチル−2−アダマンチルメタクリレートを純度96.3重量%で得ることができた。なお、この2−エチル−2−アダマンチルメタクリレートを室温で放置すると結晶になった。
【0050】
実施例8
昇華性の不純物としてアダマンタン0.1重量%、2−アダマンタノン1.0重量%、2−ブチル−2−アダマンタノール(昇華開始温度70℃)0.5重量%を含む純度85重量%の2−ブチル−2−アダマンチルメタクリレート(沸点103℃/0.2mmHg)1重量部に対し、0.1重量部のテトラエチレングリコール(沸点314℃)を加え、実施例7と同様にして減圧下蒸留を行った。
【0051】
その結果、蒸留装置内に固体が析出することなく蒸留は進行し、本留の留出液をヘキサンに溶解し、純水で洗浄し、続いてヘキサンを留去することにより2−ブチル−2−アダマンチルメタクリレートを純度97.5重量%で得ることができた。
【0052】
実施例9
昇華性の不純物としてアダマンタン(昇華開始温度、室温以下)0.1重量%、2−メチレンアダマンタン(昇華開始温度40℃)12.4重量%、2−アダマンタノン(昇華開始温度50℃)6.3重量%、2−メチル−2−アダマンタノール(昇華開始温度60℃)2.7重量%を含む純度65重量%の2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート(沸点92℃/0.3mmHg)1重量部に、0.1重量部の1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(沸点225℃)を加え、減圧下蒸留を行った。
【0053】
蒸留は、5cmのビグルー型分留管と全縮型還流分留装置を用い、ガラスキャピラリーで空気を導入しながら、真空度0.3mmHgで行った。初めに不純物として混入していたアダマンタン等は昇華して一部蒸留装置の壁に付着したが、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが留出するにつれて徐々に溶解、剥離して、閉塞等を起こさなかった。初留をカットし、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート純度が80%を越えた時点で本留を取りはじめた。本留分を集めたところ2−メチル−2−アダマンチルメタクリレートを純度97.7重量%で得ることができた。
【0054】
実施例10〜19
実施例9において蒸留助剤として用いた1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンの代わりに表1に示す各種蒸留助剤を用いた他は実施例9に準じて蒸留を行った。本留分に蒸留助剤が混合している場合には、本留留出液をヘキサンに溶解し、純水で洗浄した後にヘキサンを留去することにより目的物を得た。
【0055】
【表1】
【0056】
結果を併せて表1に示す。低温昇華性物質が多量に含まれている場合においてもカルボニル基を含有する化合物を蒸留助剤として用いた場合には効果的に低温昇華性物質の付着を抑制することが可能であった。
【0057】
比較例1
実施例1で用いた純度79重量%の2−メチル−2−アダマンチルメタクリレートに何も加えずにそのまま減圧蒸留を行ったところ、蒸留装置の冷却管が昇華性固体で閉塞し、蒸留できなかった。
【0058】
比較例2
実施例9で用いた純度65重量%の2−メチル−2−アダマンチルメタクリレートに何も加えずにそのまま減圧蒸留を行ったところ、蒸留装置の冷却管が昇華性固体で閉塞し、蒸留できなかった。
【0059】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、蒸留の初期に昇華して配管などに付着する昇華性物質を、昇華性物質の昇華と同時に、またはそれに続いて留出する蒸留助剤によって溶解または剥離させることができ、配管の閉塞や有機化合物への溶解を避けることができる。またアルキルアダマンチルエステルに蒸留助剤が混入しても容易に除去可能であることから、効率よくアルキルアダマンチルエステルを蒸留精製することが可能となる。
【0060】
本発明により、これまで蒸留精製が困難であった昇華性物質を不純物として含む高沸点化合物を容易に蒸留精製することが可能になった。本発明の製造方法を採用することにより、半導体用レジスト材料としての用途が期待される高純度アルキルアダマンチルエステルを容易に得ることも可能である。
Claims (3)
- 下記一般式(1)
- アルキルアダマンチルエステルの沸点より低い沸点を有し、かつ、アルキルアダマンチルエステルの沸点より低い温度で昇華する昇華性物質の昇華開始温度以上の沸点を有する化合物が、エーテル類、ポリアルキレングリコール類、スルホキシド類、スルホラン類、りん酸アミド類、非環状または環状のケトン類、アルデヒド類、エステル類、非環状または環状のアミド類、非環状または環状のウレア類、イミド類、酸無水物類、ウレタン類、またはラクチド類である特許請求の範囲第1項に記載の製造方法。
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