JP3997084B2 - 硬質炭素被覆膜の脱膜方法及び再生方法並びに再生基材 - Google Patents

硬質炭素被覆膜の脱膜方法及び再生方法並びに再生基材 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基材の表面に物理蒸着法等により形成した硬質炭素被覆膜を脱膜する脱膜方法、再度成膜して再使用する再生方法及び再生基材に関する。特に、エンドミル、ドリル、タップあるいはプレス金型を含む高速度工具鋼、超硬合金鋼を部材とした工具上に直接に、またはTiN、TiCN、TiC、TiAlN等のセラミック被覆膜を成膜した上に、物理蒸着法等により硬質炭素被覆膜を形成した工具において、切削加工等により刃先や表面が摩耗した後に脱膜を施して再度使用可能とするための再生方法および該方法によって得られた再生工具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来ダイヤモンドライクカーボン(DLC)と呼ばれている硬質炭素被覆膜は平滑で、摩擦係数が非常に低いことから、膜特性としての潤滑性、耐溶着性、離型性を生かして機械部品や金型、工具に広く適用されて効果を発揮している。特に最近ではアルミおよびアルミ合金に対する耐溶着性に優れることからアルミ加工用切削工具にも開発されて市場に普及しつつある。(不二越技報VOL.56NO.2掲載『DLCコーティング工具』)しかしながら切削工具の場合は、硬質炭素被覆膜の効果で被削物の溶着が少ないながらも寿命限界に達したものは、工具の刃部に加工した被削物が溶着し、再度刃部の摩耗部分の研磨を行っても被膜の上には切り粉の排出時に付着した溶着物が着いているため、摩耗部の再研磨だけでは再使用の効果は期待できない。またそのまま硬質炭素被覆膜を形成したとしても、加工時に生じた切削被覆膜面近傍の溶着した被削物や切削熱による被覆膜の劣化が影響して、初期被膜層と再処理形成層との密着性が悪くなり、最悪の場合は形成層が剥離する場合がある。従ってこのような状態で再処理をした工具を使用したとしても密着性の悪い状態では硬質炭素被覆膜の効果は発揮されず本来の機能を果たすことができない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
工具の再生を目的として再処理を行う場合、上記の問題を解決するためには加工によって溶着、劣化した硬質炭素被覆膜の脱膜を行った上で再度被覆膜を形成する方法が最も良い。しかし、TiN、TiCN、TiC、TiAlNなどのチタン系のセラミック被覆膜は脱膜液が開発されており、例えば特許第2597931号公報、特開平8−325755号公報に記載のように化学反応によって被覆膜の脱膜が可能である。しかし硬質炭素被覆膜については化学的な酸化還元反応に対して非常に安定な物質であるため、溶液による脱膜方法はなく、工具母材に損傷を与えないで硬質炭素被覆膜だけをきれいに除去する方法は現在のところ確立されていない状態である。
【0004】
一方硬質炭素被覆膜系でも最も硬いとされているダイヤモンド被覆膜についてはプラズマCVD法によるドライエッチング法があり、例えば特開平5−339758号公報においては、プラズマ中の水素イオンによる還元作用で炭素元素を原子レベル反応させて除去する方法が開示されている。これを硬質炭素被覆膜にも応用が可能であると考えられるが、この方法ではコストがかかりすぎ実用的であるとはいえない。本発明の課題はかかる硬質炭素被覆膜を綺麗に除去し、また、コストの低い手段を用いて硬質炭素被覆膜を除去し、再生し、再使用する硬質炭素被覆膜の脱膜方法及び再生方法並びに再生基材を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等はまず硬質炭素被覆膜の除去方法について研究を行い、硬質炭素被覆膜にアルミナ粉等の硬質な粉体を用いて物理的な衝撃を与えることにより被覆膜が除去されることを発見し、さらには、工具損傷が少ない状態で硬質炭素被覆膜のみが脱膜できることを知得した。この知得により、請求項1の発明においては、基材の表面に物理蒸着法により形成された硬質炭素被覆膜に5〜100ミクロンの微粒のアルミナ粉体、または5〜50ミクロンの微粒ダイヤモンドを複合させた研磨材を空気と共に噴射させるマイクロブラスト処理により前記硬質炭素被覆膜を脱膜させる硬質炭素被覆膜の脱膜方法を提供することにより上記課題を解決した。即ち、硬質炭素被覆膜の表面に微粒の硬質粉体、例えば、アルミナ粉体、又は微粒ダイヤモンドを複合させた研磨剤を用いたマイクロブラスト処理を基材に損傷を与えない程度に施して硬質炭素被覆膜の脱膜を行い、再生に適した基材表面の状態を得ることで再処理した被覆膜の密着性を向上させることができる。
【0006】
詳述すると、硬質炭素被覆膜(ダイヤモンドライクカーボン)の特徴は、被膜の硬さでマイクロビッカース硬さでHV5000といわれるアモルファスカーボン(非晶質硬質炭素)系のものと、比較的柔らかいHV1000程度の水素原子を多く含んだC:H(水素含有硬質炭素)系、金属元素を含んだメタリックカーボン(金属含有硬質炭素)系に大別されている。これらはプラズマCVD法、カーボンターゲットを用いたスパッタリング法またはアークイオンプレーティング法で形成できる。また最近ではカーボンを坩堝で溶解して成膜を図るイオンプレーティング方法も提唱され(例えば特願平10−349890号公報)、特にアルミ加工用の工具に適用して市場に販売されている。
【0007】
この硬質炭素系の被覆膜はHV1000〜5000と被覆膜の形成方法によりいろいろな硬さを膜をつくることができ、用途に応じて任意に選択できることが特徴であるが、TiNなどのセラミック硬質膜と比較して一般的に膜の応力が高く、1ミクロン程度の薄い膜厚でしか形成できない。本発明者は硬質炭素被覆膜が膜応力が高く、薄い膜であることに着目し、脱膜には一般的に広く用いられているショットブラストによる方法が最も安価に行えると判断した。しかしながら一般的な数ミリの粉体の大きさを使用するショットブラスト方式では被覆膜の除去する際の衝撃で切削工具にとって重要である工具刃部も損傷受けることから、各種の粉体の種類と粒径の違いを試みたところ、前述したように、本発明においては、5〜100ミクロンの微粒のアルミナ粉体、また5〜50ミクロンのは微粒ダイヤモンドを複合させた研磨材を用いたマイクロブラスト処理(以下微粒粉体を使用したショットブラスト処理をマイクロブラスト処理と称する)が工具刃部に損傷を与えないことを知得したのである。
【0008】
さらに、超硬合金を母材とした硬質炭素被覆膜工具にはアルミナ粉の最大粒子の平均径44ミクロン以下の微細粉体(JIS R6001粒度#1000以上)が適しており、高速度工具鋼を母材とした被覆工具には最大粒子の平均径26ミクロン以下の微粒ダイヤモンド(JIS R6001粒度#2000以上)を複合させた研磨材を用いた方が良いとの結論に至った。そこで、請求項に記載の発明においては、前記基材の材料は高速度工具鋼であって、前記研磨材は最大粒子の平均径26ミクロン以下の微粒ダイヤモンド(JIS R6001粒度#2000以上)を複合させた研磨材とし、請求項に記載の発明においては、前記基材の材料は超硬合金であって、前記研磨材は最大粒子の平均径44ミクロン以下のアルミナ粉体(JIS R6001粒度#1000以上)を複合させた研磨材とした硬質炭素被覆膜の脱膜方法を提供するものである。
【0009】
高速度工具鋼を母材とした工具に直接にアルミナ粉体をマイクロブラスト処理した場合は、工具刃部の損傷なく硬質炭素被覆膜は除去されるが、高速度工具鋼は超硬合金よりも母材が柔らかいため工具表面が梨地状になり、再処理を施した場合に硬質炭素被覆膜本来の機能である平滑性が失われる。以上の理由で高速度工具鋼を母材とした工具には最大粒子の平均径26ミクロン以下の微粒ダイヤモンド(JIS R6001粒度#2000以上)を複合させた研磨材が好ましい。また超硬合金を母材とした硬質炭素被覆膜工具の被覆膜の除去にも同様な微粒ダイヤモンドを複合させた研磨材を用いてもかまわない。また、アルミナ粉体、又は微粒ダイヤモンドはマイクロブラスト処理を例えば工具部材に損傷を与えない程度に施される粒度、硬度を選択し、また、適宜な噴射圧力を設定して脱膜処理を行うことはいうまでもない。
【0010】
前記硬質炭素被覆膜は前述したようにアルミやアルミ合金加工用切削工具に有用であり、かかる場合は請求項に記載の発明のように前記硬質炭素被覆膜は基材上に直接に、あるいはTiN,TiCN、TiC,TiAlNなどのセラミック硬質膜を成膜した上に、硬質炭素被覆膜を被覆した硬質炭素被覆膜とするのが好ましい。
【0011】
前述の方法で硬質炭素被覆膜を除去した基材の表面は本来の面粗度が確保され、基材も損傷を受けることがない。また表面状態も劣化した膜や溶着している部分もきれいに除去され、基材を使用した結果、摩耗した部分も確認しやすい状態になる。さらに、摩耗部を再研磨し成形して、脱脂のための洗浄工程を経て、硬質炭素被覆膜の成形が可能となる。
そこで、請求項に記載の発明においては、請求項1乃至にいずれか一に記載の硬質炭素被覆膜の脱膜方法により基材表面の硬質炭素被覆膜のみを脱膜した後に、摩耗部を成形し、表面を洗浄し、新たに硬質炭素被覆膜の処理を施し硬質炭素被覆膜の再生方法を提供するものとなった。また、かかる方法で再生された再生基材を提供する(請求項)。また、かかるものは金型等に適し、再生金型を提供する(請求項)。
【0012】
基材が切削工具の場合は、本発明の脱膜方法で硬質炭素被覆膜を除去した切削工具の表面は本来の面粗度が確保され、工具刃部も損傷を受けることがない。また表面状態も劣化した膜や溶着している部分もきれいに除去され、切削工具使用で摩耗した刃部等も確認しやすい状態になる。このような方法で脱膜した工具は、摩耗した刃部を再度研磨で削ずることで新しい刃部をつくり(再研磨)、さらに脱脂のための洗浄工程を経て、硬質炭素被覆膜の形成(再処理)とすることができる。そこで、請求項に記載の発明においては、
前記基材は切削工具であって、請求項1乃至にいずれか一に記載の硬質炭素被覆膜の脱膜方法により切削工具表面の硬質炭素被覆膜のみを脱膜した後に、刃部を再生し、表面を洗浄し、新たに硬質炭素被覆膜の処理を施すことにより再生を図るようにした。さらに、
かかる方法で切削工具を再生することができる(請求項)。なお、硬質炭素被覆膜の再生が充分に行われたかは、Aスケールロックウエル硬度計を用いて押圧した場合に生ずる圧痕を100倍の倍率で観察した結果が、前記圧痕の外周1mm以上の範囲で膜と基材との間で剥離が認められない程度の密着性を有するようにして確認するのが好ましい(請求項10)。圧痕の判定基準を図3に示す。判定H1が剥離のない状態、判定H2,3,4はそれぞれ剥離を生じており、判定H1のものが好ましい密着性を示す。
【0013】
【実施例】
次に本発明の方法を用いてエンドミルに硬質炭素被覆膜を施した場合について説明する。
(実施例1)
実施例1は本発明品である超硬合金製エンドミルについての場合である。図2の(a)に示すように、超硬合金を母材21とした外径10mmの2枚刃の無処理エンドミルに、イオンプレーティング溶解法によりセラミック硬質膜22であるTiCを形成し、さらに炭素を原料として硬質炭素被覆膜30を被覆した。そして密着性の評価として工具の表面にAスケールロックウエル硬度計を押圧し、生じた圧痕を100倍の倍率で観察した結果、圧痕の外周1mm以上の範囲で膜と工具母材との間で剥離が認められなかった。図3に示す剥離試験での判定はH1に示すものであった。
【0014】
このエンドミルを用いて、圧延アルミ合金A5052を以下の条件で加工した。
(1)切削加工
切削工具:外径10mm 2枚刃 超硬合金エンドミル
切削条件:ドライ(エアブロー)
加工方法:側面切削(ダウンカット)
切削速度:314m/min(10000min−1)
送り速度:0.2mm/刃(4000mm/min)
切り込み:Aa=10mm Ar=2.5mm
切削長:3m
被削材:A5052
【0015】
さらに、上記切削加工後に、本発明である脱膜方法により脱膜を行うべく、以下の条件で硬質炭素系被覆膜が完全にとれるまでマイクロブラスト処理を施した。図1は本発明の一実施例を示すマイクロブラスト処理装置の模式図である。図1に示すように、噴射装置3は粉体1と圧力空気2とを混合し、圧力空気により粉体を空気とともに粉体噴射4するようにされている。この噴射装置3をエンドミル5の刃部6に被覆された硬質炭素被覆膜7に向かって下記の噴射距離Lで矢印8の方向に移動しながら粉体を噴射する。粉体の種類等は次の通りである。
(2)マイクロブラスト処理
粉体の種類:アルミナ粉#2000(JIS R6001粒度)
噴射圧力:0.1MPa
噴射距離:噴射ノズルと工具間100mm
噴射移動速度:850mm/min
噴射時間:30秒
【0016】
その後工具刃部の摩耗部分を研磨して、工具をアルカリ洗浄で脱脂をおこない、再度イオンプレーティング溶解法により硬質炭素被覆膜のみの形成を行った。そして密着性の評価として再処理を施した工具の表面にAスケールロックウエル硬度計を押圧し、生じた圧痕を100倍の倍率で観察した結果、圧痕の外周1mm以上の範囲で硬質炭素被覆膜とセラミック硬質膜(TiC)の間で剥離は認められなかった。本発明方法において脱膜を行い、再処理を施した硬質炭素被覆膜は切削に耐えうるに十分な密着性であることが確認できた。(図3に示す剥離試験での判定はH1)そして上記切削条件で再度加工を行った結果、摩耗の損傷状態は再処理前と同じ状態であり、本発明の脱膜及び再生方法が新品に勝とも劣らない性能を得られることが確認できた。
【0017】
(実施例2)
実施例2は本発明品である高速度工具鋼製エンドミルについての場合である。図2の(b)に示すように、高速度工具鋼を母材25とした外径10mmの2枚刃の無処理エンドミルに、イオンプレーティング溶解法により炭素を原料として硬質炭素被覆膜30を被覆した。そして密着性の評価として工具の表面にAスケールロックウエル硬度計を押圧し、生じた圧痕を100倍の倍率で観察した結果、圧痕の外周1mm以上の範囲で膜と工具母材との間で剥離が認められなかった(図3に示す剥離試験で判定はH1)。
【0018】
その後圧延アルミ合金A5052を以下の条件で加工した。
(1)切削加工
切削工具:外径10mm 2枚刃 高速度工具鋼(ハイス)エンドミル
切削条件:ドライ(エアブロー)
加工方法:側面切削(ダウンカット)
切削速度:78.5m/min(2500min−1)
送り速度:0.15mm/刃(730mm/min)
切り込み:Aa=10mm Ar=2.5mm
切削長:5m
被削材:A5052
【0019】
さらに、上記切削加工後に、本発明である脱膜方法により脱膜を行うべく、以下の条件で硬質炭素被覆膜が完全にとれるまで前述したと同様に図1に示す噴射装置により、硬質炭素被覆膜30に向けて粉体を噴射し、硬質炭素被覆膜を脱膜した。
(2)マイクロブラスト処理
粉体の種類:微粒ダイヤモンド#3000(JIS R6001粒度)を複合した軟質研磨材(マルチコーン粒径0.5〜2mm)
噴射圧力:0.5MPa
噴射距離:噴射ノズルと工具間20mm
噴射時間:30秒
【0020】
その後工具刃部の摩耗部分を研磨して、工具をアルカリ洗浄で脱脂をおこない、再度イオンプレーティング溶解法により硬質炭素系被覆膜のみの形成を行った。そして密着性の評価として再処理を施した工具の表面にAスケールロックウエル硬度計を押圧し、生じた圧痕を100倍の倍率で観察した結果、圧痕の外周1mm以上の範囲で硬質炭素被覆膜と工具母材の間で剥離は認められなかった(図3に示す剥離試験で判定はH1)。本発明方法において脱膜を行い、再処理を施した硬質炭素被覆膜は切削に耐えうるに十分な密着性であることが確認できた。そして上記切削条件で再度加工を行った結果、摩耗の損傷状態は再処理前と同じ状態であり、本発明の脱膜及び再生方法の有効性が確認できた。
【0021】
(実施例3)
実施例3は本発明を用いない場合の比較品として超硬合金製エンドミルについて行った場合について説明する。超硬合金を母材とした外径10mmの2枚刃の無処理エンドミルに、イオンプレーティング溶解法によりセラミック硬質膜であるTiCを形成し、さらに炭素を原料として硬質炭素系被覆膜をコーティングを被覆した。そして密着性の評価として工具の表面にAスケールロックウエル硬度計を押圧し、生じた圧痕を100倍の倍率で観察した結果、圧痕の外周1mm以上の範囲で膜と工具母材との間で剥離が認められなかった(図3に示す剥離試験で判定はH1)。
【0022】
その後圧延アルミ合金A5052を以下の条件で加工した。
(1)切削加工
切削工具:外径10mm 2枚刃 超硬合金エンドミル
切削条件:ドライ(エアブロー)
加工方法:側面切削(ダウンカット)
切削速度:314m/min(10000min−1)
送り速度:0.2mm/刃(4000mm/min)
切り込み:Aa=10mm Ar=2.5mm
切削長:3m
被削材:A5052
【0023】
切削加工後に本発明方法による脱膜処理を施さないで、使用した工具の刃部の摩耗部を研磨してそのままアルカリ洗浄で脱脂洗浄をおこない、再度イオンプレーティング溶解法により硬質炭素被覆膜のみの形成を行った。その結果、図3に示す剥離試験での判定はH4と剥離が見られ、さらに切削試験を行ったところ、刃部近傍の被覆膜は溶着物が原因で剥離を生じ切削に耐えうることができず、再使用することができなかった。
【0024】
【発明の効果】
以上述べたように本発明においては、物理蒸着法により形成された硬質炭素被覆膜に5〜100ミクロンの微粒のアルミナ粉体、または5〜50ミクロンの微粒ダイヤモンドを複合させた研磨材を空気と共に噴射させるマイクロブラスト処理を基材に損傷を与えない程度に施して硬質炭素被覆膜の脱膜を行い、再生に適した基材表面の状態を得られ再処理した被覆膜の密着性が向上できるので、硬質炭素被覆膜を綺麗に除去し、さらに、物理的に硬質炭素被覆膜を除去するため複雑な化学反応を利用したセラミック硬質膜の除膜処理とは異なり廃液処理もなく、取り扱い作業も簡単かつ安全であり、再生処理としては環境に非常に負荷の少ない方法を提供するものとなった。またコスト面でもダイヤモンドコーティング膜の脱膜方法で使われるプラズマCVD装置のような大がかりな設備は必要なく、安価なブラストの設備で量産ができるため再生コストを非常に安くすることができ、また、再生使用しても充分使用に耐える再生基材を提供するものとなった。
【0025】
また、超硬合金を母材とした硬質炭素被覆
膜工具には最大粒子の平均径44ミクロン以下のアルミナ粉体(JIS R6001粒度#1000以上)が適しており、高速度工具鋼を母材とした被覆工具には最大粒子の平均径26ミクロン以下の微粒ダイヤモンド(JIS R6001粒度#2000以上)を複合させた研磨材を用いるようにしたので、超硬合金や高速度工具鋼を用いた金型、切削工具に有用な再生方法を提供するものとなった。
【0026】
また、硬質炭素被覆膜は基材、特に切削工具上に直接に、あるいはTiN,TiCN、TiC,TiAlNなどのセラミック硬質膜を成膜した上に、硬質炭素被覆膜を被覆したので、アルミやアルミ合金加工用に適した切削工具の再生に利用できる。さらには、アルミのドライ加工において優れた性能を有する硬質炭素被覆膜被覆工具の脱膜方法および該方法で得られた安価な再生工具を提供するものとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施に用いるマイクロブラスト処理装置の模式図である。
【図2】本発明の硬質炭素被覆膜の構造を示し、(a)は実施例1の超硬合金製のエンドミルの被覆、(b)は実施例2の高速度工具鋼のエンドミルの被覆の状態をしめす説明図である。
【図3】工具等の基材に被覆された被覆膜の密着性を判定するための剥離試験の判定基準である。
【符号の説明】
1、4 微粒の硬質粉体(アルミナ粉体、微粒のダイヤモンドを複合させた研磨材)
2 空気
3 噴射装置(マイクロブラスト装置)
5 基材(工具、金型)
6、30 硬質炭素被覆膜
21 基材の材料(超硬合金)
22 セラミック硬質膜(TiN,TiCN、TiC,TiAlN)
23 基材の材料(高速度工具鋼)
21a、23b 基材の表面

Claims (10)

  1. 基材の表面に物理蒸着法により形成された硬質炭素被覆膜に5〜100ミクロンの微粒のアルミナ粉体、または5〜50ミクロンの微粒ダイヤモンドを複合させた研磨材を空気と共に噴射させるマイクロブラスト処理により前記硬質炭素被覆膜を脱膜させることを特徴とする硬質炭素被覆膜の脱膜方法。
  2. 前記基材の材料は高速度工具鋼であって、前記研磨材は最大粒子の平均径26ミクロン以下の微粒ダイヤモンド(JIS R6001粒度#2000以上)を複合させた研磨材であることを特徴とする請求項1に記載の硬質炭素被覆膜の脱膜方法。
  3. 前記基材の材料は超硬合金であって、前記研磨材は最大粒子の平均径44ミクロン以下のアルミナ粉体(JIS R6001粒度#1000以上)を複合させた研磨材であることを特徴とする請求項1に記載の硬質炭素被覆膜の脱膜方法。
  4. 前記硬質炭素被覆膜は基材上に直接に、あるいはTiN,TiCN、TiC,TiAlNなどのセラミック硬質膜を成膜した上に、硬質炭素被覆膜を被覆した硬質炭素被覆膜であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一に記載の硬質炭素被覆膜の脱膜方法。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一に記載の硬質炭素被覆膜の脱膜方法により基材表面の硬質炭素被覆膜のみを脱膜した後に、摩耗部を成形し、表面を洗浄し、新たに硬質炭素被覆膜の処理を施すことにより再生を図ることを特徴とする硬質炭素被覆膜の再生方法。
  6. 請求項に記載の再生方法により再生されたことを特徴とする再生基材。
  7. 前記基材は金型であること特徴とする請求項に記載の再生金型。
  8. 前記基材は切削工具であって、請求項1乃至にいずれか一に記載の硬質炭素被覆膜の脱膜方法により切削工具表面の硬質炭素被覆膜のみを脱膜した後に、刃部を再生し、表面を洗浄し、新たに硬質炭素被覆膜の処理を施すことにより再生を図ることを特徴とする硬質炭素被覆膜の再生方法。
  9. 請求項に記載の再生方法により再生されたことを特徴とする再生切削工具。
  10. 請求項6又は7又は9のいずれかに記載の再生した基材上の硬質炭素被覆膜は、Aスケールロックウエル硬度計を用いて押圧した場合に生ずる圧痕を100倍の倍率で観察した結果が、前記圧痕の外周1mm以上の範囲で膜と基材との間で剥離が認められない程度の密着性を有することを特徴とする再生基材。
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