JP3996521B2 - 多層配線基板用基材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、多層配線基板(多層プリント配線板)、多層配線基板用基材およびその製造方法に関し、特に、フリップチップ実装などの高密度実装が可能な多層のフレキシブルプリント配線板等の多層配線基板、多層配線基板用基材およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高耐熱性、電気絶縁性、高屈曲性を有するポリイミドフィルムを絶縁層材料として使用したフレキシブルプリント配線板(FPC)は知られている。また、FPCを多層積層し、スルーホールによって層間導通を得る多層FPCが開発されている。
【0003】
スルーホールによる多層FPCでは、層間接続位置の制約のために、配線設計の自由度が低く、スルーホール上にチップを実装することができないため、実装密度を高くすることに限界があり、近年のより一層の高密度実装化の要求に対応できなくなっている。
【0004】
このことに対処して、層間接続をスルーホールによらずにIVH(Interstitial Via Hole)によって行い、ビア・オン・ビアが可能な樹脂多層プリント配線板、例えば、松下電器産業社のALIVH(Any Layer Interstitial Via Hole)基板や、ポリイミドによるFPCをスルーホールを使用せずにビルドアップ方式で多層に積層するソニーケミカル社のポリイミド複合多層ビルドアップ集積回路基板(MOSAIC)等が開発されている。
【0005】
また、ポリイミドフィルムを絶縁層として、それの片面に銅箔による導電層を貼り付けられている汎用の銅張樹脂基材(積層材)を出発基材として、簡便な工程によりIVH構造の多層FPCを得る構造と製法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1に示されている多層配線基板用基材では、絶縁層の一方の面に銅箔を設けた銅張樹脂基材に貫通孔を穴あけした後、導電性樹脂組成物(樹脂系の導電性ペースト)を銅箔側からスクリーン印刷法等による印刷法によって充填することで、図9に示されているようなIVH部分を形成している。
【0007】
なお、図9において、101は絶縁層を、102は銅箔部を、104は貫通孔を、105は貫通孔104に充填された導電性樹脂組成物を各々示している。
【0008】
そして、スクリーン印刷時のマスク(ステンシル)の開口部の口径をIVH径より大きくすることにより、印刷時の位置合わせ精度にある程度の余裕ができると共に、銅箔部102上に導電性樹脂組成物105によってマスク開口部口径相当の大きさのヘッド状部105Aが形成される。
【0009】
このヘッド状部105Aによって貫通孔104に充填された導電性樹脂組成物105と銅箔部102との接触面積を大きくすることができる。また、ヘッド状部105Aの存在により、貫通孔104に充填された導電性樹脂組成物105が貫通孔104より抜け落ちることを防止できる。
【0010】
【特許文献1】
特開2002−353621号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に示されているような多層配線基板用基材では、図9に示すように導電性樹脂組成物105の銅箔部102より上の部分、すなわちヘッド状部105Aの厚さのため、導電性樹脂組成物105の硬化後に多層化のための積層接着を行う場合には、銅箔による回路部の厚さに、導電性樹脂組成物105の銅箔より上部(ヘッド状部105A)の厚さを加えた厚さを埋め込むのに十分な接着層の厚さが必要となり、接着層を厚くしないと、多層配線基板の表面平滑性の低下を招くことになる。
【0012】
このため、ポリイミドフィルムを絶縁層としてそれの片面に銅箔による導電層が貼り付けられている汎用の銅張樹脂基材では、絶縁層の厚さが15〜30μm、銅箔の厚さが5〜20μm程度であることに対して、15〜30μm程度の厚さを有する接着層が必要になり、接着層の厚肉化に伴う基板の厚膜化を招くことになる。
【0013】
一方で、導電性樹脂組成物と他層の銅箔との接触が密接に行われるように、導電性樹脂組成物が硬化前の柔らかい状態で積層することが考えられている。
【0014】
しかし、特許文献1に示されている多層配線基板用基材に、これを適応すると、図10に示されているように、導電性樹脂組成物105の銅箔部102より上の部分(ヘッド状部105A)が、多層積層時の積層圧Pによって過剰に押しつぶれ、圧潰状態で広がってしまう。
【0015】
このため、基板表面上から見たヘッド状部105Aの大きさを均一化することが困難であるばかりか、他配線部102’までヘッド状部105Aの導電性樹脂組成物が広がってしまい、回路の短絡を招く虞れがある。
【0016】
この発明は、上述の如き課題に鑑みてなされたものであり、導電性樹脂組成物と導電回路部の接触信頼性を損なうことなく、基板の平滑性を低下させることなく薄い多層配線基板を得ることができ、しかも、高温に曝すような信頼性試験を行われても、剥離、剥がれ等の障害を生じることがなく、併せてビアホールに充填された導電性ペーストと導電回路部の接触面積の増大できる多層配線基板用基材およびその製造方法および多層配線基板を提供することを目的としている。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、この発明による多層配線基板用基材の製造方法は、絶縁性基材の一方の面に導電層が張り合わされた積層材を出発基材とし、前記導電層をエッチングし配線パターンを形成後、導電層部分の口径が絶縁性基材部分の口径より小さい貫通孔を穿孔する穿孔工程と、導電性樹脂組成物を前記貫通孔の絶縁性基材部分と導電層部分の全てに充填する充填工程と、を有する。
【0027】
また、上述の目的を達成するために、この発明による多層配線基板用基材の製造方法は、絶縁性基材の一方の面に導電層が張り合わされた積層材を出発基材とし、前記絶縁性基材の他方の面に層間接着のための接着層を設け、前記導電層をエッチングし配線パターンを形成後、導電層部分の口径が絶縁性基材部分および接着層部分の口径より小さい貫通孔を穿孔する穿孔工程と、導電性樹脂組成物を前記貫通孔の絶縁性基材部分と接着層部分と導電層部分の全てに充填する充填工程と、を有する。
【0028】
この発明による多層配線基板用基材の製造方法における好ましい穿孔工程として、レーザビーム照射によって導電層部分以外の樹脂部分に口径が大きい穴あけを行い、当該穴あけ完了後に導電層部分に口径が小さい穴あけを行って貫通孔を穿設する工程か、あるいは、ビーム径方向にレーザ強度分布を有するレーザビーム照射を導電層とは反対側の面に対し行い、導電層部分以外の樹脂部分に口径が大きい穴あけを、導電層部分に口径が小さい穴あけを一括して行なって貫通孔を穿設する工程の何れかを選択できる。
【0029】
また、この発明による多層配線基板用基材の製造方法では、レーザ穿孔により生成されるスミアを除去するために、レーザビーム照射による穿孔工程後に、デスミア工程を有することが好ましい。
【0030】
この発明による多層配線基板用基材の製造方法における充填工程は、導電性樹脂組成物を前記導電層とは反対側よりスクイジングによって前記貫通孔に穴埋め充填する工程とすることができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図を参照してこの発明の実施形態を説明する。
図1、図2はこの発明による一実施形態に係わる多層配線基板用基材の基本構成を示している。
【0032】
図1に示されている多層配線基板用基材は、絶縁性基材をなす絶縁樹脂層11の一方の面に配線パターンをなす銅箔等による導電層12を、他方の面に層間接着のための接着層13を各々設けられ、接着層13と絶縁樹脂層11と導電層12とを貫通する貫通孔14を穿設されている。貫通孔14の全てには導電性樹脂組成物15が充填され、IVH(バイアホール)を形成している。
【0033】
FPCでは、絶縁樹脂層11は、全芳香族ポリイミド(API)等によるポリイミドフィルムやポリエステルフィルム等の可撓性を有する樹脂フィルムで構成されている。絶縁樹脂層11と導電層12と接着層13との3層構造は、汎用の片面銅箔付きポリイミド基材のポリイミド部(絶縁樹脂層11)の銅箔(導電層12)とは反対側の面に接着層13としてポリイミド系接着材を貼付したもので構成できる。
【0034】
多層配線基板用基材に形成された貫通孔14のうち、接着層13と絶縁樹脂層11を貫通する部分(バイアホール)14aの口径は通常のバイアホール径とされ、導電層12を貫通する部分(小孔)14bの口径は接着層13および絶縁樹脂層11を貫通する部分14aの口径より小径になっている。
【0035】
接着層13は、接着剤の塗布以外に、熱可塑性ポリイミド、あるいは熱可塑性ポリイミドに熱硬化機能を付与したフィルムの貼り付けにより形成することができる。熱可塑性ポリイミドの場合、基板の耐熱性を考慮し、ガラス転移点の高いものを使用するのが好ましい。
【0036】
なお、絶縁樹脂層11は、ポリイミドフィルム以外に、エポキシ系、イミド系のプリプレグなどを絶縁材として利用することも可能であり、その場合には、絶縁樹脂層11が接着材としても機能するため、接着層13を別途形成する必要が省かれる。
【0037】
導電性樹脂組成物15は、導電機能を有する金属粉末を樹脂バインダに混入し、溶剤を含む粘性媒体に混ぜてペースト状にした導電性ペーストを、絶縁樹脂層11の側よりスクイジング等によって貫通孔14に満遍なく穴埋め充填したものである。すなわち、貫通孔14の接着層−絶縁樹脂層部分14aと導電層部分14bの全てに導電性樹脂組成物15が満遍なく充填されている。
【0038】
導電性樹脂組成物15は、導電層12の裏面12aで導通を取るものであり、導電層12の上表面との接触で導通を取るものではないので、導電層12の上方に突出した拡張部分を必要としない。
【0039】
導電層12、すなわち、銅箔部には、樹脂部(絶縁樹脂層11+接着層13)よりも小さい孔14bを穿設しているが、これは、図11に示されているように、銅箔部102と樹脂部(絶縁層101)の孔径を同じにした場合には、銅箔部102と絶縁層101との接触部分が銅箔部102の孔壁面部102Aのみとなり、銅箔部102と導電性樹脂組成物105との導通接続に関して信頼性に乏しくなるからである。
【0040】
また、図12に示されているように、銅箔部102に孔を穿設しないで、樹脂部絶縁層101のみに孔を穿った場合には、スクイジング等による導電性ペーストの穴埋め充填時にIVHの空気抜きが充分に行われず、IVHに気泡hが残存し、銅箔部102と導電性樹脂組成物105との接触面積が不安定になるからである。
【0041】
導電層12に設けられる小さい孔14bは、エアーブリード孔として機能し、導電性ペーストの穴埋め充填時に、気泡はこの小さい孔14bから確実に排出され、導電層12と導電性樹脂組成物15との接触面積を的確に確保できる。
【0042】
図2に示されている多層配線基板用基材は、絶縁性基材をなす絶縁樹脂層21自体が層間接着のための接着性を有している。この基材は、絶縁樹脂層21の一方の面に配線パターンをなす銅箔等による導電層22を設けられ、絶縁樹脂層21と導電層22とを貫通する貫通孔24を穿設されている。貫通孔24には導電性樹脂組成物25が充填され、IVH(バイアホール)を形成している。
【0043】
FPCでは、接着性を有する絶縁樹脂層21は、熱可塑性ポリイミド(TPI)あるいは熱可塑性ポリイミドに熱硬化機能を付与したもので構成される。熱可塑性ポリイミドの場合、基板の耐熱性を考慮し、ガラス転移点の高いものを使用するのが好ましい。
【0044】
貫通孔24のうち、絶縁樹脂層21を貫通する部分(バイアホール)24aの口径は通常のバイアホール径とされ、導電層22を貫通する部分(小孔)24bの口径は絶縁樹脂層21を貫通する部分24aの口径より小径になっている。
【0045】
導電性樹脂組成物25は、導電機能を有する金属粉末を樹脂バインダに混入し、溶剤を含む粘性媒体に混ぜてペースト状にした導電性ペーストを、絶縁樹脂層21の側よりスクイジング等によって貫通孔24に満遍なく穴埋め充填したものである。すなわち、貫通孔24の絶縁樹脂層部分24aと導電層部分24bの全てに導電性樹脂組成物25が満遍なく充填されている。
【0046】
導電性樹脂組成物25は、導電層22の裏面22aで導通を取るものであり、導電層22の上表面との接触で導通を取るものではないので、導電層22の上方に突出した拡張部分を必要としない。
【0047】
導電層22に設けられる小さい孔24bは、エアーブリード孔として機能し、の穴埋め充填時に気泡はこの小さい孔24bから確実に排出され、導電層22と導電性樹脂組成物25との接触面積を的確に確保できる。
【0048】
図1、図2に示されている何れの多層配線基板用基材においても、大きい孔14a、24aと小さい孔14b、24bとによる貫通孔14、24は、レーザビーム照射によるレーザ穴あけ加工により形成することができる。この他、エッチング、レーザビーム照射とエッチングとの組み合わせによっても、大きい孔14a、24aと小さい孔14b、24bとによる貫通孔14、24を加工することができる。
【0049】
レーザ穴あけ加工の場合、まず、レーザビーム照射によって絶縁樹脂層11と接着層13とに大きい孔14a、あるいは絶縁樹脂層21に大きい孔24aを穿設したのち、再びレーザビーム照射によって導電層12あるいは22に小さい孔14bあるいは24bを穿設し、その後、導電性樹脂組成物(導電性ペースト)15、25を貫通孔14、24に穴埋め充填する方法をとってもよいが、通常、レーザビーム強度(レーザ強度)は、ビーム径方向に見て、ビーム中央が高く(強く)、周りは低く(弱く)なっているために、これを利用して、導電層12、22に形成する中心部の小さい孔14b、24bと、樹脂部の大きい孔14a、24aとを一度に穿設することができる。これにより、より短時間で、効率よく上記構造のバイアホールを得ることができる。
【0050】
さらに、ビーム強度の被加工面内分布が、図8(a)、(b)に示されているように、レーザ被加工面内の中心付近が強く、周辺部が弱い2段階になっているレーザビームによって穴あけすることで、より確実に上記構造のIVHを形成することができる。このような2段階レーザ強度のレーザビームは、レーザビームの絞り込み以前に、ビーム透過率が、中心部で高く、周辺部で低いフィルタにレーザビームを通すことで得ることができる。
【0051】
図3はこの発明による多層配線基板の一つの実施形態を示している。この多層配線基板は、図1に示されている多層配線基板用基材を、1層目の基板10Aと2層目の基材10Bとして、2枚重ね合わせ、1層目の基材10Aの接着層13によって1層目の基材10Aと2層目の基材10Bとを互いに接着接合してなる。2層目の基材10Bの接着層13上には表面部の配線パターンをなす銅箔による導電層16が形成されている。
【0052】
導電性樹脂組成物15を充填された各貫通孔14はIVHをなし、導電性樹脂組成物15によって各層の導電層15、あるいは導電層15と16の層間導通が行われる。
【0053】
導電性樹脂組成物15は、貫通孔14の接着層−絶縁樹脂層部分14aに加えて、導電層部分14bにも充填されているから、この多層配線基板において、内部に空洞ができることがなく、高温に曝すような信頼性試験を行われても、剥離、剥がれ等の障害を生じることがない。
【0054】
また、導電層部分14bにも導電性樹脂組成物15が充填されているから、導電層部分の内周面の面積分、ビアホールに充填された導電性樹脂組成物15と導電層15との接触面積が増大する効果も得られる。
【0055】
また、導電層部分14bにも導電性樹脂組成物15が充填されていることにより、投錨的効果が得られる。これにより、絶縁樹脂層11、接着層13、導電性樹脂組成物15の熱膨張係数の違いからくる熱応力によって導電性樹脂組成物15が絶縁樹脂層11や接着層13より剥離し難くなり、耐久性、信頼性が向上する。
【0056】
なお、図2に示されている多層配線基板用基材を、複数枚、重ねて互いに接着接合することによっても、同様の機能を備えた多層配線基板を得ることができる。
【0057】
また、図4、図5に示されているように、貫通孔14、24に充填された導電性樹脂組成物15、25を層間接着面側に突出させ、導電性樹脂組成物15、25による突起部15A、25Aを形成することが好ましい。
【0058】
この突起部15A、25Aは、隣接層の導電層に圧着あるいは突き刺さり、層間の電気接続抵抗を低下する。
【0059】
つぎに、図1に示されている多層配線基板用基材、およびその多層配線基板用基材による多層配線基板の製造方法の一実施形態を図6、図7を参照して説明する。
【0060】
図6(a)に示されているように、絶縁樹脂層(ポリイミドフィルム)11の片面に配線パターンをなす銅箔による導電層12を設けられた片面銅張積層材(CCL)を出発材とし、図6(b)に示されているように、絶縁樹脂層11側に、可塑性ポリイミドあるいは熱可塑性ポリイミドに熱硬化機能を付与したフィルムを貼り付けて接着層13を形成する。
【0061】
つぎに、図6(c)に示されているように、導電層12にエッチング等を行って導電層12による配線パターン(回路パターン)を形成する。
【0062】
つぎに、図6(d)に示されているように、接着層13上にPETマスキングテープ17を貼り付け、レーザ穴あけ加工等により、図6(e)に示されているように、PETマスキングテープ17、接着層13、絶縁樹脂層11、導電層12を貫通する貫通孔14を穿設する。
【0063】
この貫通孔14は、PETマスキングテープ17、接着層13、絶縁樹脂層11を貫通する部分14aの口径を通常のバイアホール径、例えば、100μmとすると、導電層12を貫通する部分14bの口径は、バイアホール径より小径の30〜50μm程度になっている。
【0064】
貫通孔14の穿孔が完了すれば、貫通孔14内に残存している穿孔による樹脂や銅箔の酸化物等によるスミア18を除去するデスミアを行う。デスミアは、プラズマによるソウトエッチングや、過マンガン塩素系のデスミア液によるウエットデスミアにより行うことができる。
【0065】
図6(f)に示されているように、デスミアが完了すれば、図6(g)に示されているように、スクリーン印刷で使用するようなスクイジプレート(スキージプレート)50を使用してPETマスキングテープ17の面側から導電性樹脂組成物(導電ペースト)15をスクイジングによって貫通孔14に穴埋め充填する。
【0066】
図6(h)は、導電性樹脂組成物15の穴埋め充填完了状態を示している。この導電性樹脂組成物の穴埋め充填は、貫通孔14の接着層−絶縁樹脂層部分14aに加えて導電層部分14bにも隙間なく充分に行う。
【0067】
導電性樹脂組成物15は、後の工程における加熱に対する酸化を避けるため、銀ペーストを使用した。この時、粘度を300dPa・sのものを使用したところ、銅箔部(導電層12)の小孔14bから導電ペーストが抜け落ちることなく的確に穴埋め充填することができた。なお、導電性樹脂組成物15としては、銀ペースト以外に、銅フィラーやカーボン混合物による導電性ペーストを使用することも可能である。
【0068】
この実施形態では、基材表面にPETマスキングテープ17が貼付されているために、メタルマスクやスクリーンマスクを介さず、スクイジプレート50を直接基板に接触させてスクイジングを行ってよいが、もちろん、メタルマスクやスクリーンマスクを介してスクイジングすることにより、導電性樹脂組成物の無駄を削減することができる。
【0069】
このスクイジングの際に、銅箔部(導電層12)の小孔14bから気泡が排出され、貫通孔14内に気泡が残存することがなく、銅箔部(導電層12)と導電性樹脂組成物15との密着が導電層12の裏面12aで十分に行われる。
【0070】
上述したように、貫通孔14の樹脂部分の大きい孔14aの口径が100μm程度であれば、銅箔部分の小さい孔14bの口径は30〜50μm径程度でよく、この小孔14bの口径は、導電性樹脂組成物15との接触抵抗からの要求に加えて、導電性樹脂組成物15の粘度やチキソ性といった諸特性に応じ、気泡の残留と導電性樹脂組成物15の脱落を回避できるように選定することになる。
【0071】
つぎに、図6(i)に示されているように、表面に導電性樹脂組成物15の残りが付いているPETマスキングテープ17を剥がす。これにより一枚の基材10が完成する。この基材10Aは、PETマスキングテープ17の剥離により、層間接着面側、すなわち、接着層13の表面より突出した導電性樹脂組成物15による突起部15Aを形成される。突起部15Aの高さはPETマスキングテープ17の厚さ相当である。
【0072】
この基材10Aを1層目の基材とし、図6(a)〜(i)に示されているこれまでと同様の製法で作製した基材10Bと、銅箔による導電層16を各々適当な位置合わせ法によって位置合わせしつつ積層加熱圧着(ラミネーション)することで、図7(j)、(k)に示されているように、多層化が達成される。
【0073】
ラミネーションの際、基材を真空下に曝しながら加熱圧着することで、導電層12による回路パターンの凹凸に対する接着層13の追従性を高くすることができる。また、導電性樹脂組成物15が柔らかい状態で積層を行い、導電性樹脂組成物15と他層の銅箔との接触を密接にすることができる。
【0074】
最後に、図7(l)に示されているように、最外層の導電層16をエッチングによって回路形成することで、多層配線板として完成を見る。この多層配線板の内部に空洞部が残ることがない。
【0075】
上述した多層配線基板用基材の製造手順、およびその多層配線基板用基材による多層配線基板の製造手順は、図2に示されている多層配線基板用基材の製造、およびその多層配線基板用基材による多層配線基板の製造にも同様に適用できる。
【0076】
なお、この発明による多層配線基板、多層配線基板用基材およびその製造方法は、ポリイミドフィルムを使用したフレキシブルプリント配線板に限られることはなく、ポリエステルフィルムを使用したフレキシブルプリント配線板、エポキシ樹脂や、ガラス布、アラミド不織布等によるプリプレグ材を絶縁材として使用したリジッドタイプのものにも同様に適用することができる。
【0077】
以上に於ては、この発明を特定の実施の形態について詳細に説明したが、この発明は、これに限定されるものではなく、この発明に係わる技術的思想の範囲内にて種々の実施の形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0078】
【発明の効果】
以上の説明から理解される如く、この発明による多層配線基板、多層配線基板用基材およびその製造方法によれば、導電層と導電性樹脂組成物との導通接触を、貫通孔の絶縁性基材部分と導電層部分との口径差から、導電層裏側で取る構造になり、導電性樹脂組成物の導電層より上の部分と導電層との接触面積確保から派生する諸問題から解放され、汎用の銅張樹脂基材を出発材料として、導電性樹脂組成物と導電回路部との接触信頼性を損なうことなく、しかも基板の平滑性を低下させることなく、薄い多層配線基板を得ることができる。
【0079】
また、貫通孔の絶縁性基材部分や接着層部分(ビアホール)に加えて導電層部分にも導電性樹脂組成物が充填されているから、積層後、多層配線板の内部に空洞ができることがなく、高温に曝すような信頼性試験を行われても、剥離、剥がれ等の障害を生じることがない。併せて導電層部分の内周面の面積分、ビアホールに充填された導電性ペーストと導電層との接触面積を増大できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係わる多層配線基板用基材の一つの基本構成を示す断面図である。
【図2】この発明の一実施形態に係わる多層配線基板用基材の他の一つの基本構成を示す断面図である。
【図3】この発明の一実施形態に係わる多層配線基板を示す断面図である。
【図4】この発明の他の実施形態に係わる多層配線基板用基材を示す断面図である。
【図5】この発明の他の実施形態に係わる多層配線基板用基材を示す断面図である。
【図6】(a)〜(i)はこの発明の一実施形態に係わる多層配線基板用基材の製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図7】(j)〜(l)はこの発明の一実施形態に係わる多層配線基板の製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図8】(a)はこの発明の一実施形態に係わる多層配線基板用基材の穿孔工程でのレーザ被加工面を示す説明図、(b)は同じくそれのレーザ強度分布を示す説明図である。
【図9】従来の多層配線基板用基材のIVH構造を示す断面図である。
【図10】従来の多層配線基板用基材のIVH構造における不具合を示す断面図である。
【図11】銅箔部と絶縁層の孔径を同じにしたIVH構成を示す断面図である。
【図12】銅箔部に孔を穿設しない構成を示す断面図である。
【符号の説明】
10A…1層目の基材
10B…2層目の基材
11…絶縁樹脂層
12…導電層
13…接着層
14…貫通孔
14a…絶縁樹脂層−接着層部分
14b… 導電層部分
15…導電性樹脂組成物
15A…突出部
16…導電層
17…PETマスキングテープ
21…絶縁樹脂層
22…導電層
24…貫通孔
24a…絶縁樹脂層部分
24b… 導電層部分
25…導電性樹脂組成物
25A…突出部
Claims (6)
- 絶縁性基材の一方の面に導電層が張り合わされた積層材を出発基材とし、前記導電層をエッチングし配線パターンを形成後、導電層部分の口径が絶縁性基材部分の口径より小さい貫通孔を穿孔する穿孔工程と、導電性樹脂組成物を前記貫通孔の絶縁性基材部分と導電層部分の全てに充填する充填工程と、を有する多層配線基板用基材の製造方法。
- 絶縁性基材の一方の面に導電層が張り合わされた積層材を出発基材とし、前記絶縁性基材の他方の面に層間接着のための接着層を設け、前記導電層をエッチングし配線パターンを形成後、導電層部分の口径が絶縁性基材部分および接着層部分の口径より小さい貫通孔を穿孔する穿孔工程と、
導電性樹脂組成物を前記貫通孔の絶縁性基材部分と接着層部分と導電層部分の全てに充填する充填工程と、
を有する多層配線基板用基材の製造方法。 - 絶縁性基材の片面に配線パターンをなす導電層を設けられた積層材に、導電層部分の口径が絶縁性基材部分の口径より小さい貫通孔を穿孔する穿孔工程と、
導電性樹脂組成物を前記貫通孔の絶縁性基材部分と導電層部分の全てに充填する充填工程とを有し、
前記穿孔工程は、レーザビーム照射によって導電層部分以外の樹脂部分に口径が大きい穴あけを行い、当該穴あけ完了後に導電層部分に口径が小さい穴あけを行って貫通孔を穿設する多層配線基板用基材の製造方法。 - 絶縁性基材の一方の面に配線パターンをなす導電層を、他方の面に層間接着のための接着層を設けられた積層材に、導電層部分の口径が絶縁性基材部分および接着層部分の口径より小さい貫通孔を穿孔する穿孔工程と、
導電性樹脂組成物を前記貫通孔の絶縁性基材部分と接着層部分と導電層部分の全てに充填する充填工程とを有し、
前記穿孔工程は、レーザビーム照射によって導電層部分以外の樹脂部分に口径が大きい穴あけを行い、当該穴あけ完了後に導電層部分に口径が小さい穴あけを行って貫通孔を穿設する多層配線基板用基材の製造方法。 - 絶縁性基材の片面に配線パターンをなす導電層を設けられた積層材に、導電層部分の口径が絶縁性基材部分の口径より小さい貫通孔を穿孔する穿孔工程と、
導電性樹脂組成物を前記貫通孔の絶縁性基材部分と導電層部分の全てに充填する充填工程とを有し、
前記穿孔工程は、ビーム径方向にレーザ強度分布を有するレーザビーム照射を導電層とは反対側の面に対し行い、導電層部分以外の樹脂部分に口径が大きい穴あけを、導電層部分に口径が小さい穴あけを一括して行なって貫通孔を穿設する多層配線基板用基材の製造方法。 - 絶縁性基材の一方の面に配線パターンをなす導電層を、他方の面に層間接着のための接着層を設けられた積層材に、導電層部分の口径が絶縁性基材部分および接着層部分の口径より小さい貫通孔を穿孔する穿孔工程と、
導電性樹脂組成物を前記貫通孔の絶縁性基材部分と接着層部分と導電層部分の全てに充填する充填工程とを有し、
前記穿孔工程は、ビーム径方向にレーザ強度分布を有するレーザビーム照射を導電層とは反対側の面に対し行い、導電層部分以外の樹脂部分に口径が大きい穴あけを、導電層部分に口径が小さい穴あけを一括して行なって貫通孔を穿設する多層配線基板用基材の製造方法。
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