JP3996273B2 - 自動二輪車用ラジアルタイヤ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に大型自動二輪車用として好適であり、中低速度で旋回する際のタイヤの倒れ込みを、直進安定性、旋回安定性及びタイヤ剛性感等を損ねることなく抑制しうる自動二輪車用ラジアルタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
近年、自動二輪車用タイヤにおいても、高速走行性能を高めるべくラジアル配列のカーカスの外側をベルト層によってタガ締めしたラジアル構造のものが多用されている。
【0003】
しかし、このようなラジアルタイヤを装着した自動二輪車を用い、中低速の速度領域で旋回する際、旋回中に倒れ込みが発生する場合がある。この旋回時の倒れ込みを抑制するため、従来、例えば
(1) カーカス外側のサイドウオール部におけるゴム厚さを薄くする、
(2) トレッドゴムのゴム硬度を増加する、
(3) ビードエーペックスゴムのボリュウムを減じて小型化する、
等の手段が提案されている。
【0004】
しかしながら、前記(1) の手段では、サイドウオール部での剛性不足となり、又前記(2) の手段では、トレッド剛性が過大となることによって、グリップ性を損ねかつハンドルが細く振動する所謂シミーを招くなど操縦安定性を低下する。又前記(3) の手段では、直進安定性および旋回安定性の低下を招くという問題がある。
【0005】
そこで本発明は、カーカス外側のサイドウオール部におけるゴム厚さ及びその分布を特定することを基本として、中低速度で旋回する際のタイヤの倒れ込みを、直進安定性、旋回安定性、及びタイヤ剛性感等を損ねることなく抑制しうる自動二輪車用ラジアルタイヤの提供を目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明は、トレッド部からサイドウォール部をへてビード部のビードコアに至るプライ本体部とこのプライ本体部に連なり前記ビードコアをタイヤ軸方向内側から外側に巻上げられるプライ巻上げ部とを有しかつ有機繊維のカーカスコードをタイヤ周方向に対して70〜90度の角度で配列した2枚のカーカスプライからなるカーカス、前記プライ本体部とプライ巻上げ部との間を通って前記ビードコアから半径方向外方にのびるビードエーペックスゴム、及びこのカーカスの半径方向外側かつトレッド部に配されるとともに有機繊維のベルトコードをタイヤ周方向に対して15〜30度の角度で配列した1枚以上のベルトプライからなるベルト層を具える自動二輪車用ラジアルタイヤであって、
前記トレッド部をなすトレッドゴムは、JISショアA硬度Hsが55〜70度、
前記サイドウオール部をなすサイドウオールゴムは、JISショアA硬度Hsが40〜70度、 トレッド端P1のビードベースラインからのトレッド端高さHTは、タイヤ断面高さH0の0.4〜0.6倍、
前記ビードエーペックスゴムの半径方向の外端のビードベースラインからのビードエーペック高さHBは、前記トレッド端高さHTの0.2〜0.8倍、
前記プライ巻上げ部の半径方向の外端のビードベースラインからの巻上げ高さHPは、前記トレッド端高さHTの0.5〜1.0倍、
前記ビードコアの半径方向の外端から前記トレッド端P1までの領域の半径方向の高さh0の1/3倍の距離を前記ビードコアの外端から半径方向に隔たるタイヤ外面上の1/3高さ点P2における該タイヤ外面と前記カーカスとの間のゴム厚さTFは、タイヤ公称断面巾Wの1.6%〜5.9%、
前記領域の高さh0の2/3倍の距離を前記ビードコアの外端から半径方向に隔たるタイヤ外面上の2/3 高さ点P3における該タイヤ外面とカーカスとの間のゴム厚さTEは、タイヤ公称断面巾Wの1.6%〜5.9%、及び
前記トレッド端P3とカーカスとの間のゴム厚さTDは、タイヤ公称断面巾Wの4.1%〜10.0%とする一方、
前記ゴム厚さTDとゴム厚さTEとの比TD/TEは1.8〜2.1、前記ゴム厚さTDとゴム厚さTFとの比TD/TFは1.8〜2.1としたことを特徴としている。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図示例とともに説明する。
図1、2において、自動二輪車用ラジアルタイヤ1(以下タイヤ1という)は、本例では、タイヤサイズを120/70ZR17とした大型自動二輪車の前輪として用いる高速用タイヤとして形成される。
【0008】
前記タイヤ1は、トレッド部2と、その両端からタイヤ半径方向内方にのびるサイドウォール部3と、各サイドウォール部3のタイヤ半径方向内方端に位置するビード部4とを具え、又前記ビード部4、4間にはカーカス6が架け渡されるとともに、このカーカス6の半径方向外側かつトレッド部2の内方にはベルト層7を設けている。
【0009】
なお前記トレッド部2は、トレッド端P1、P1間のトレッド巾がタイヤの最大巾となるように、タイヤ赤道Cから該トレッド端P1に向かって小さな曲率半径を有して凸円弧状に湾曲してのびる。このとき、トレッド端P1のビードベースラインLからのトレッド端高さHTは、タイヤ断面高さH0の0.4〜0.6倍であり、これによりトレッド部2のキャンバー量を十分に確保し、大きなバンク角での旋回走行を可能としている。
【0010】
なおトレッド部2をなすトレッドゴム12には、JISショアA硬度Hsが55〜70度の範囲、通常58度程度の耐摩耗に優れるゴムが用いられる。又前記サイドウオール部3をなすサイドウオールゴム13は、JISショアA硬度Hsを40〜70度の範囲、通常前記トレッドゴム12より軟質とした硬度50度程度の柔軟性に優れるゴムが使用される。本例では、サイドウオールゴム13は、ビード部4から立上がるとともにその上端を、前記ベルト層7の外端部分とカーカス6との間隙G内に延在している。
【0011】
又前記カーカス6は、カーカスコードをタイヤ赤道Cに対して70〜90度の角度で配列した2枚のカーカスプライ、本例ではコード角度を88度とした2枚のカーカスプライ6A、6Bからなり、前記カーカスコードとして、ナイロン、レーヨン、ポリエステル等の有機繊維コードが用いられる。
【0012】
各カーカスプライ6A、6Bは、トレッド部2からサイドウォール部3をへてビードコア5に至るプライ本体部9A、9Bの両端に、ビードコア5の廻りでタイヤの内側から外側に巻上げられるプライ巻上げ部10A、10Bを有し、このプライ本体部とプライ巻上げ部との間には、ビードコア5から半径方向外方にのびるビードエーペックスゴム8が充填される。このビードエーペックスゴム8の半径方向の外端のビードベースラインLからのビードエーペック高さHBは、前記トレッド端高さHTの0.2〜0.8倍の範囲である。
【0013】
又前記プライ巻上げ部10A、10Bは、ビードベースラインLからの半径方向の巻上げ高さHP1、HP2を、それぞれ前記トレッド端高さHTの0.5〜1.0倍としたハイターンアップの巻上げ構造をなす。これにより、前記ビードエーペックスゴム8と協働して必要なタイヤ剛性を確保している。本例では、特に、前記巻上げ高さHP1を0.7×HT〜1.0×HT、かつ巻上げ高さHP2を0.5×HT〜0.7×HTとし、タイヤ軸方向外側のプライ巻上げ部10Aが、内側のプライ巻上げ部10Bを被覆することにより、プライ端での損傷を抑制している。
【0014】
又前記ベルト層7は、ベルトコードをタイヤ赤道Cに対して15〜30度の角度で配列した1枚以上のベルトプライ、本例ではコード角度を17度とした内外2枚のベルトプライ7A、7Bからなり、ベルトコードとして、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、芳香族ポリアミド等の有機繊維コードが用いられる。
【0015】
そして、本願では、このような構造のタイヤにおけるタイヤ外側部のゴム厚さ分布を特定することにより、中低速度で旋回する際のタイヤの倒れ込みを、直進安定性、旋回安定性、及びタイヤ剛性感を損ねることなく抑制している。
【0016】
詳しくは、タイヤ外側面上の1/3 高さ点P2における該タイヤ外側面と前記カーカス6との間のゴム厚さTFが、タイヤ公称断面巾W(本例では120mm)の1.6%〜5.9%であって、本例では2.0〜7.0mmの範囲としている。又タイヤ外側面上の2/3 高さ点P3における該タイヤ外側面と前記カーカス6との間のゴム厚さTEが、タイヤ公称断面巾Wの1.6%〜5.9%であって、本例では2.0〜7.0mmの範囲としている。又前記トレッド端P3とカーカス6との間のゴム厚さTDが、タイヤ公称断面巾Wの4.1%〜10.0%であって、本例では5.0〜12.0mmの範囲としている。
【0017】
ここで、前記1/3 高さ点P2とは、前記ビードコア5の半径方向の外端から前記トレッド端P1までの領域Yの半径方向の高さh0の1/3倍の距離を前記ビードコア5の外端から半径方向に隔たるタイヤ外面上の点を意味する。前記2/3 高さ点P3とは、前記領域高さh0の2/3倍の距離を前記ビードコア5の外端から半径方向に隔たるタイヤ外面上の点を意味する。
【0018】
さらにタイヤ1では、前記ゴム厚さTF、TE、TDにおいて、比TD/TEを1.8〜2.1、かつ比TD/TFを1.8〜2.1としている。
【0019】
このようなゴム厚さの分布を達成することによって、直進安定性、旋回安定性、及びタイヤ剛性感を損ねることなく、タイヤの倒れ込みを抑制しうるのである。
前記比TD/TEと比TD/TFの双方が、2.1を越えた場合或いは1.8未満の場合には、倒れ込みの抑制効果が得られず、しかも旋回性能を著しく低下させる。
【0020】
前記比TD/TEまたは比TD/TFの一方のみが、2.1を越えた場合には、倒れ込みの抑制効果及び旋回性能をある程度維持できるが、タイヤ剛性感が著しく低下する。
【0021】
逆に、前記比TD/TEまたは比TD/TFの少なくとも一方が、1.8を下回った場合には、旋回性能を著しく低下させる。
【0022】
なおこのような、ゴム厚さの分布による前記効果は、前述の構造のタイヤにおいて発揮される。
【0023】
【実施例】
タイヤサイズが120/70ZR17でありかつ図1に示す基本構成を有するタイヤを、表1の仕様で試作するとともに、各試供タイヤにおけるタイヤの倒れ込み、直進安定性、旋回安定性、及びタイヤ剛性感をテストした。
【0024】
テストは、試供タイヤを標準リム(MT3.50×17)、標準内圧(250kpa)のもとで750cc級の大型自動二輪車の前輪に装着し、乾燥アスファルト路面を実車走行したときの、ライダーの官能により、5.0点を満点として評価した。数値が大きいほど良好である。なお操縦安定性の総合評価として各性能の平均値を求め、平均値が4.0以上のものを合格(○)、4.0未満を不合格(×)としている。
【0025】
【表1】
Figure 0003996273
【0026】
表1に示すように、比較例1、2は、比TD/TE及び比TD/TFの双方が、2.1を越えているので、倒れ込みの抑制効果および旋回性能が不充分である。
比較例3、4、7、8は、比TD/TE及び比TD/TFの少なくとも一方が、1.8を下回っているため旋回性能が不充分となり、しかもに比較例3、4、8では比TF/TEが0.857〜1.167の範囲から外れるにつれて、倒れ込みの抑制効果も減じている。
比較例5、6は、比TD/TE及び比TD/TFの一方のみが、2.1を越えているため、倒れ込みの抑制効果及び旋回性能をある程度維持されているが、タイヤ剛性感を損ねている。
【0027】
【発明の効果】
叙上の如く本発明は構成しているため、中低速度で旋回する際のタイヤの倒れ込みを、直進安定性、旋回安定性、及びタイヤ剛性感を損ねることなく抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例のタイヤの断面図である。
【図2】サイドウオール部を拡大して示す断面図である。
【符号の説明】
2 トレッド部
3 サイドウォール部
4 ビード部
5 ビードコア
6 カーカス
6A、6B カーカスプライ
7 ベルト層
7A、7B ベルトプライ
8 ビードエーペックスゴム
9A、9B プライ本体部
10A、10B プライ巻上げ部
12 トレッドゴム
13 サイドウオール部
L ビードベースライン
Y 領域

Claims (1)

  1. トレッド部からサイドウォール部をへてビード部のビードコアに至るプライ本体部とこのプライ本体部に連なり前記ビードコアをタイヤ軸方向内側から外側に巻上げられるプライ巻上げ部とを有しかつ有機繊維のカーカスコードをタイヤ周方向に対して70〜90度の角度で配列した2枚のカーカスプライからなるカーカス、前記プライ本体部とプライ巻上げ部との間を通って前記ビードコアから半径方向外方にのびるビードエーペックスゴム、及びこのカーカスの半径方向外側かつトレッド部に配されるとともに有機繊維のベルトコードをタイヤ周方向に対して15〜30度の角度で配列した1枚以上のベルトプライからなるベルト層を具える自動二輪車用ラジアルタイヤであって、
    前記トレッド部をなすトレッドゴムは、JISショアA硬度Hsが55〜70度、
    前記サイドウオール部をなすサイドウオールゴムは、JISショアA硬度Hsが40〜70度、
    トレッド端P1のビードベースラインからのトレッド端高さHTは、タイヤ断面高さH0の0.4〜0.6倍、
    前記ビードエーペックスゴムの半径方向の外端のビードベースラインからのビードエーペック高さHBは、前記トレッド端高さHTの0.2〜0.8倍、
    前記プライ巻上げ部の半径方向の外端のビードベースラインからの巻上げ高さHPは、前記トレッド端高さHTの0.5〜1.0倍、
    前記ビードコアの半径方向の外端から前記トレッド端P1までの領域の半径方向の高さh0の1/3倍の距離を前記ビードコアの外端から半径方向に隔たるタイヤ外面上の1/3 高さ点P2における該タイヤ外面と前記カーカスとの間のゴム厚さTFは、タイヤ公称断面巾Wの1.6%〜5.9%、
    前記領域の高さh0の2/3倍の距離を前記ビードコアの外端から半径方向に隔たるタイヤ外面上の2/3 高さ点P3における該タイヤ外面とカーカスとの間のゴム厚さTEは、タイヤ公称断面巾Wの1.6%〜5.9%、及び
    前記トレッド端P3とカーカスとの間のゴム厚さTDは、タイヤ公称断面巾Wの4.1%〜10.0%とする一方、
    前記ゴム厚さTDとゴム厚さTEとの比TD/TEは1.8〜2.1、前記ゴム厚さTDとゴム厚さTFとの比TD/TFは1.8〜2.1としたことを特徴とする自動二輪車用ラジアルタイヤ。
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