JP3623622B2 - 自動二輪車用タイヤ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、旋回安定性、限界旋回性などの旋回性能を向上しうる自動二輪車用タイヤに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来の自動二輪車用タイヤにあっては、例えば図4に示す如く、カーカスaは、トレッド部からサイドウォール部、及びビード部のビードエイペックスbの軸方向内側を通りビード部のビードコアc近傍に至る本体部dに前記ビードコアcを軸方向内側から外側に向かって折返すとともに、前記ビードエイペックスbの軸方向外面に沿って巻上げる巻上げ部eを具えていた。
【0003】
このような巻上げ部eを有するカーカスaにあっては、内圧充填することによって、その本体部dは略円弧形状となる。他方、カーカスaの巻上げ部eは、ビードエイペックスbが存在するため、本体部dが略円形状に膨らむにも関わらず直線状となる。
【0004】
旋回走行する際において、路面の凹凸、石などによってタイヤに外力が作用した場合には、この外力が発端となって、車体の振れが発生するが、自動二輪車用タイヤにあっては、バンク角を有して旋回するため、前記巻上げ部eは路面に対して略直立状態となる場合がある。
【0005】
その際には、車体の振れが大きくなり旋回安定性が低下する。又、車体に作用する前記外力が大きい場合には、直線状をなす巻上げ部eが座屈することによりタイヤが撓み、旋回走行中にキャンバー角が変化するなど姿勢変化を生じ、旋回安定性が著しく低下することがある。
【0006】
発明者は、前記問題点を解決するため研究、実験を重ねた結果、カーカスをビードエイペックスの外側において自然平衡状態に近い形状に保たせることによって、外力を吸収する能力を高めることが出来ることを見出し、本発明を完成させたのである。
【0007】
本発明は、旋回走行時において、旋回安定性、限界旋回性などの旋回性能を向上した自動二輪車用タイヤの提供を目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、トレッド面がタイヤ子午断面において凸に膨らむ円弧状をなしかつトレッド端縁がタイヤ最大巾位置をなす自動二輪車用タイヤであって、
トレッド部からサイドウォール部を通りビード部のビードコアの軸方向外側に至る本体部に、前記ビードコアの半径方向内側を通って半径方向外側に巻上げられる巻込み部を一連に設けたカーカス、及び前記ビードコアの半径方向外側面からカーカスの本体部と巻込み部の間を半径方向外側に向かってのびる先細かつ硬質ゴムからなるビードエイペックスを具えたことを特徴とする自動二輪車用タイヤ。
前記構成を具えることによりカーカスの本体部は、ビード部において、硬質ゴムからなるビードエイペックスの軸方向外側に位置するため、内圧を付加した状態ではビードエイペックスの影響を受けることなく軸方向断面において、略全域に亘って自然平衡状態に近い円弧状を保つことが出来る。
【0009】
従って、バンク角を有して高速旋回中に路面の凹凸又は石などの上を通過する際に生じる外力によって車体に振れが発生した場合であっても、本体部は外力による負荷が大きくなるにつれて徐々に屈曲量が増すこととなり外力を効果的に吸収し、車体の振れを抑制する。しかも本体の振れに起因する急激な姿勢変化が生じないため旋回安定性が向上し、旋回時における限界速度も上昇する。
【0010】
加うるに、巻込み部がビードエイペックスの軸方向内側に位置するため、図4に示す従来の巻上げプライのように、旋回中に巻込み部が座屈する危険が排除され旋回安定性を更に高めうる。
【0011】
なお、ビードエイペックスの硬質ゴムはJISA硬度を60〜90度に、又ビードベースラインからのビードエイペックスの半径方向外側端のエイペックス高さAHをカーカスの前記巻込み部ビードベースラインからの巻込み高さMHよりも大とするのが好ましい。
【0012】
又、トレッド部の内部かつカーカスの半径方向外側に補強層を配し、しかもこの補強層は、繊維コードを略タイヤ周方向に螺旋巻きすることにより形成したバンドプライのみによって形成するのが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面に基づき説明する。
図1〜3において自動二輪車用タイヤ1は、トレッド面2aがタイヤ子午断面において凸に膨らむ円弧状をなしかつトレッド端縁Eがタイヤ最大巾位置をなす。
【0014】
なお、該タイヤを正規リムにリム組みし、規定された内圧を付加した正規状態において、トレッド面2aのタイヤ軸方向の断面形状について、前記円弧半径Rとトレッド巾WTとの比R/WTは0.3〜1.0の範囲であることが好ましい。前記比R/WTが0.3未満ではキャンバースラストが大きくなり、旋回時に過度な倒れ込みが発生するなどのハンドリング性能が低下し、よってR/WTは0.5以上がさらに良い。又R/WTが1.0をこえると旋回走行時において車体が内側に倒れにくくなるなどハンドリング性能に劣ることとなる。
【0015】
又、自動二輪車用タイヤ1は、外周面が前記トレッド面2aをなすトレッド部2からサイドウォール部3を通りビード部4のビードコア5の軸方向外側に至る本体部6に、前記ビードコア5の半径方向内側を通って半径方向外側に巻上げられる巻込み部7を一連に設けたカーカス9、及び該カーカス9の前記本体部6と前記巻込み部7との間を半径方向外側に向かってのびる先細かつ硬質ゴムからなるビードエイペックス10とを具える。
【0016】
本例においては、トレッド部2の内部かつカーカス9の半径方向外側に補強層11を配している。
【0017】
前記カーカス9は、タイヤ赤道Cに対して70〜90°の角度で傾斜するラジアル又はセミラジアル配列にカーカスコードを配列した1枚以上、本例では1枚のカーカスプライからなり、カーカスコードとしてナイロン、レーヨン、ポリエステル、芳香族ポリアミド等の有機繊維コードが用いられる。
【0018】
このようにカーカス9は、ビードエイペックス10のタイヤ軸方向内側で立上がる巻込み部7を設けることによって、本体部6は、前記した如く、自然平衡状態に近い円弧状を保つことが出来るため、旋回走行時において外力を効果的に吸収し、旋回安定性、限界旋回性などの旋回性能を高めうる。
【0019】
ビードエイペックス10は、JISA硬度が60〜90度の硬質ゴムによって高剛性に形成される。又、ビードエイペックス10の半径方向外側端10aのビードヘースラインLからの高さであるエイペックス高さAHは、カーカス9の巻込み部7の前記ビードベースラインLからの巻込み高さMHよりも大としている。
【0020】
なお、巻込み高さMHがエイペックス高さAHに近接すると、巻込み部7の端部と、ビードエイペックス10の外側端とに歪みが集中しやすいので(AH−MH)の差は5mm以上、さらには10mm以上であることが好ましい。前記(AH−MH)の差が小さすぎると内圧によるカーカス9の巻込み部7が本体部6の方向へ引張られる力によって、巻込み部7が引張られ巻込み部7に端部ルースや巻込み部プライルースが発生しやすくなり、耐久性を低下させるからである。
【0021】
このようにビードエイペックス10及びカーカス9の巻込み部7を形成することにより、カーカス9の巻込み部7の端部によって生じるビード部4の剛性差は、高剛性のビードエイペックス10の配置部分に含まれることとなるため、サイドウォール部3の屈曲特性が一層滑らかとなり、又巻込み部7の端部を起点として、サイドウォール部が急激に折曲がり屈曲量が増大する危険が排除され、旋回過渡特性が向上し、良好な旋回安定性を得ることが出来る。好ましくは巻込み高さMHをエイペックス高さAHの0.7倍以下、より好ましくは0.5倍以下とするのがよい。
【0022】
このような効果を更に高めるにはビードエイペックスの硬度を更に高めるのが好ましく、JISA硬度を70〜90度とするのがより好ましい。
【0023】
なお、自動二輪車にあっては、車種によってタイヤに要求される横剛性は種々異なるがサイドウォール剛性を更に高める必要がある場合には、ビードエイペックス10のゴム硬度をJISAの80度以上の高硬度とする他、ビードエイペックスの高さAHを更に高くしてもよい。このようにビードエイペックス10の寸法、及び物性を変化させることにより必要とされる横剛性を保持しつつ最良の旋回安定性を得ることが出来る。
【0024】
補強層11は、繊維コード13を略タイヤ周方向に螺旋巻きすることによって形成したバンドプライ12のみによって形成される。繊維コード13としては、ナイロン、ポリエステル、レーヨン、芳香族ポリアミド等の有機繊維が好適に採用しうる。
【0025】
本例では前記繊維コード13を1本又は平行に配した複数本単位にてトッピングゴム15に埋設することによって長尺の帯状プライ16を形成するとともに、この帯状プライ16をタイヤ赤道Cに対して5°以下の小角度傾けて螺旋巻きすることにより前記バンドプライ12が形成される。又、本実例では、帯状プライ16の巻付けに際して図3に示す如く、該帯状プライ16の緩みを防止している。なお補強層11は、前記構成に係るバンドプライ12を2枚以上、即ち帯状プライ16の螺旋巻きを2層以上の複数層として形成することも可能である。
【0026】
自動二輪車用タイヤにあっては、通常、カーカスの半径方向外側に、コードをタイヤ赤道に対して10〜40度傾けかつ傾斜方向が互いに逆に傾く2枚のカットプライからなる高剛性のベルト層を設けることが広く用いられているが、このようなベルト層にあっては、ベルト層自体の剛性が大きいため、ベルト層の端部において大きな剛性段差が生じ、旋回時に作用する負荷によって、殊に限界走行時において、その端部で屈曲することにより、タイヤに急激な姿勢変化が生じやすく、旋回過渡特性が低下する。
【0027】
従って本例のように繊維コードを略周方向に螺旋巻きしたバンドプライ12のみによって補強層11を形成することによって、前述のカットプライを重ね合わせたベルト層に比べてトレッド部の剛性は顕著に小さくなり、剛性段差が著しく緩和されることによって、旋回走行時における旋回過渡特性が向上し、更に良好な旋回安定性を得ることが出来る。
【0028】
なお本発明において、前記カーカスの本体部を両側のビードコアからそれぞれのびる2枚のカーカスプライをトレッド部の中間位置において接続し一体化するよう形成することが出来、又、前記本体部の外向き面に沿い、トレッド部からビードコア近傍にのびる巻下しカーカスプライを併設することも出来、本発明は種々な態様のものに変形できる。
【0029】
【実施例】
タイヤサイズが180/55ZR17でありかつ図1に示す基本構成を有するタイヤについて、表1、2に示す仕様で試作する(実施例1〜5)とともにその性能についてテストを行った。なお装着リムは17×MT5.50である。又従来の構成及び本願構成のタイヤ(比較例)についても併せてテストを行い性能を比較した。実施例、比較例とも共通の基本構成を表2に示す。
テスト条件は次の通り。
【0030】
旋回安定性及び限界旋回性能のテスト
タイヤ内圧250kpaのもとで750cc級の自動二輪車の後輪に装着し乾燥舗装路面を走行させた。
評価方法は、ライダーの官能により評価し100点法による指数で評価した。数値が大きいほど良好である。
又限界旋回性能テストは、限界旋回時における操縦性及び限界速度の高さを評価した。
テスト結果を表1に示す。
【0031】
【表1】
Figure 0003623622
【0032】
【表2】
Figure 0003623622
【0033】
テストの結果、各実施例のものは比較例のものに比べて旋回安定性及び限界旋回性能がともに優れており、旋回性能を向上し得たことが確認出来た。
【0034】
【発明の効果】
叙上の如く本発明の自動二輪車用タイヤは、サイドウォール部を通りビードコアの軸方向外側に至る本体部に、ビードコアの半径方向内側を通って半径方向外側に巻上げられる巻込み部を一連に設けたカーカスと、前記カーカスの本体部と巻込み部との間を立上がるビードエイペックスとを具えているため、本体部は、内圧を付与することにより自然平行状態に近い形状となり、タイヤ内に外力の吸収能力が高まることによって、旋回安定性、限界旋回性などの旋回性能の向上を図りうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示すタイヤ軸方向断面図である。
【図2】その繊維コードを示す斜視図である。
【図3】繊維コードの巻付けを例示する断面図である。
【図4】従来技術を例示する断面図である。
【符号の説明】
2 トレッド部
2a トレッド面
3 サイドウォール部
4 ビード部
5 ビードコア
6 本体部
7 巻込み部
9 カーカス
10 ビードエイペックス
10a 外側端
11 補強層
12 バンドプライ
13 繊維コード
E トレッド端縁
L ビードベースライン
AH エイペックス高さ
MH 巻込み高さ

Claims (2)

  1. トレッド面がタイヤ子午断面において凸に膨らむ円弧状をなしかつトレッド端縁がタイヤ最大巾位置をなす自動二輪車用タイヤであって、
    トレッド部からサイドウォール部を通りビード部のビードコアの軸方向外側に至る本体部に、前記ビードコアの半径方向内側を通って半径方向外側に巻上げられる巻込み部を一連に設けたカーカス、及び前記ビードコアの半径方向外側面からカーカスの本体部と巻込み部の間を半径方向外側に向かってのびる先細かつ硬質ゴムからなるビードエイペックスを具えたことを特徴とする自動二輪車用タイヤ。
  2. 前記ビードエイペックスの硬質ゴムは、JISA硬度が60〜90度であり、かつビードベースラインからのビードエイペックスの半径方向外側端のエイペックス高さAHは、カーカスの前記巻込み部のビードベースラインからの巻込み高さMHよりも大とするとともに、トレッド部内部かつカーカスの半径方向外側に補強層を配し、しかもこの補強層は、繊維コードを略タイヤ周方向に螺旋巻きすることにより形成したバンドプライのみからなることを特徴とする請求項1記載の自動二輪車用タイヤ。
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