JP3995909B2 - 透明導電膜形成用ペーストとそれを用いた透明導電膜及びその製造方法 - Google Patents

透明導電膜形成用ペーストとそれを用いた透明導電膜及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は透明導電膜形成用ペーストとそれを用いた透明導電膜及びその製造方法に関し、更に詳しくは、基板上に微細なパターンを形成することが可能な透明導電膜形成用ペースト、微細なパターンが形成された透明導電膜、および該透明導電膜の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、透明導電膜として代表的なアンチモンドープ酸化錫(ATO)または錫ドープ酸化インジウム(ITO)は、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等の各種ディスプレイの表示素子電極やタッチパネルの電極等に利用されている。
これらディスプレイの表示素子電極やタッチパネルの電極等に使用されるITOからなるパターン化された透明導電膜は、真空蒸着法、スパッタリング法により均一膜を形成した後、フォトレジストによるレジストパターンを形成し、酸エッチングすることにより形成されてきた。
【0003】
しかしながら、真空蒸着法やスパッタリング法は、装置が複雑かつ高価であることから製造コストが高く、量産性にも問題がある。また、酸エッチングを行うために廃液処理の問題がある。さらに、パターン化された透明導電膜の成膜は工程が非常に多く煩雑であるから、コスト的に問題がある。
そこで、短工程かつ低コストの方法として、感光性塗料法が提案され、実用に供されている。この方法は、インジウム化合物及び錫化合物を含む溶液に感光性樹脂を添加した塗布液を用いて、塗布、乾燥、紫外線露光、現像、焼成という工程でパターン化したITO膜を得る方法である。
【0004】
一方、最も短工程、低コストでパターン化されたITO膜を得る方法としてスクリーン印刷法がある。この方法は、インジウム化合物及び錫化合物と、エポキシプレポリマー或いはヒドロキシプロピルセルロース等からなる増粘剤と、これらを溶解させる溶剤とを含むインクを用いて、スクリーン印刷法により基板上にパターン成膜し、その後、焼成して透明導電膜とする方法である。この方法は、例えば、特開昭61−9496号公報、特開昭61−9470号公報、特開昭61−9471号公報等に開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の感光性塗料法では、用いることのできる材料に制限があるという問題点、感光性塗料の経時安定性が不十分であるという問題点、成膜時、特に現像時の膜質の劣化等の問題点があり、安定した成膜のための余裕度が狭く、制御が難しい。また、微細なパターン加工を行なうためには、露光装置、現像装置等の高価な装置が必要である。
【0006】
また、上述した従来のスクリーン印刷法では、スクリーン印刷時のダレによりライン幅が太くなり、設定値通りに印刷することが困難であるという問題点があった。また、印刷可能なライン幅がせいぜい100μm程度であり、50μm前後の微細パターンを得ることが困難である。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、非常に短工程、低コストで、非常に微細なパターン化された透明導電膜を形成することのできる透明導電膜形成用ペースト、パターン化された透明導電膜およびその製造方法を提供するものであり、特にスクリーン印刷によるパターン化された透明導電膜の形成に好適に用いられる透明導電膜形成用ペーストとそれを用いた透明導電膜及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は次の様な透明導電膜形成用ペーストとそれを用いた透明導電膜及びその製造方法を採用した。
すなわち、本発明の透明導電膜形成用ペーストは、インジウム及び錫を含む化合物と有機酸とから生成したヒドロキシ化合物に有機配位子が配位したキレート錯体と、バインダー(ただし、紫外線硬化型および紫外線崩壊型の感光性樹脂を除く)と、溶剤とを含有してなることを特徴とする。
【0009】
この透明導電膜形成用ペーストでは、インジウム及び錫を含む化合物と有機酸とから生成したヒドロキシ化合物に有機配位子が配位したキレート錯体を含有したことにより、ペーストの経時安定性が向上し、成膜時、特に現像時の膜質の劣化等の問題点が解消される。
【0010】
前記インジウム及び錫を含む化合物は、錫ドープ酸化インジウムが好ましい。
前記有機酸は、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
前記ヒドロキシ化合物は、次の化学式
{In(RnCOO)2(OH)}X・{Sn(RnCOO)21-X ……(1)
(但し、RnCOOはアシルオキシ基であり、nは1〜5、xは0.86≦x≦0.96を満たす数である)で表されるヒドロキシ化合物が好ましい。
【0011】
前記有機配位子は、β−ジケトン、アミノアルコール、多価アルコールから選択された少なくとも1種が好ましい。
さらに、前記インジウム及び錫の合計の含有量は、酸化物に換算して1〜20重量%が好ましい。
前記バインダーの含有量は、1〜20重量%が好ましい。
【0012】
本発明の透明導電膜は、本発明の透明導電膜形成用ペーストが、該ペースト中に含まれる溶剤に可溶または該溶剤を吸収する樹脂からなる下地膜上に塗布され、焼成されていることを特徴とする。
前記下地膜の膜厚は0.2〜5μmが好ましい。
【0013】
本発明の透明導電膜の製造方法は、本発明の透明導電膜形成用ペーストを、該ペースト中に含まれる溶剤に可溶または該溶剤を吸収する樹脂からなる下地膜上にスクリーン印刷し、500℃以上の温度で焼成することを特徴とする。
【0014】
この透明導電膜の製造方法では、本発明の透明導電膜形成用ペーストを、該ペースト中に含まれる溶剤に可溶または該溶剤を吸収する樹脂からなる下地膜上にスクリーン印刷することにより、印刷精度が向上し、50μm幅までのパターン加工が可能になる。
また、スクリーン印刷法を用いたことにより、成膜時の作業性が向上し、製造コストを削減することが可能である。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の透明導電膜形成用ペーストとそれを用いた透明導電膜及びその製造方法の一実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0016】
[透明導電膜形成用ペースト]
本実施形態の透明導電膜形成用ペーストは、インジウムと錫の両方を含む化合物と有機酸とから生成したヒドロキシ化合物に有機配位子が配位したキレート錯体と、バインダーと、前記キレート錯体とバインダーを溶解する溶剤とを少なくとも含有している。
【0017】
インジウムと錫の両方を含む化合物としては、特に限定されるものではなく、例えば、インジウムと錫との酸化物、インジウムと錫との水酸化物等を使用することができる。特に、インジウムと錫との酸化物、すなわち錫ドープ酸化インジウム(ITO)は、有機酸との脱水反応性に優れる等の理由から好適に使用される。
【0018】
また、有機酸も特に限定されるものではなく、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸等の低級モノカルボン酸、マレイン酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸などを好適に使用することができる。特に、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等の低級カルボン酸は分子量が小さいので、透明導電膜形成時の前記キレート錯体の熱分解温度を低くすることができるために、好適に使用される。
【0019】
インジウムと錫の両方を含む化合物と有機酸とから生成したヒドロキシ化合物に配位する有機配位子としては、β−ジケトン、アミノアルコールまたは多価アルコールが好適に使用できる。β−ジケトンの具体例としては、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチルなどが挙げられ、アミノアルコールの具体例としては、ジエタノールアミン、2−アミノエタノール、トリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0020】
また、多価アルコールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールなどが挙げられる。これらの有機配位子の中でも特に好ましいのは、キレート錯体の安定性および熱分解性の点から、β−ジケトンとしてはアセチルアセトン、アミノアルコールとしてはジエタノールアミン、多価アルコールとしてはエチレングリコールである。
【0021】
以下、インジウムと錫の両方を含む化合物としてITOを、有機酸として酢酸をそれぞれ用いた場合を好適例として挙げ、本発明をさらに詳細に説明する。
上記のヒドロキシ化合物は、ITOと酢酸とを酢酸の沸点(110℃)で、例えば2〜4時間、還流し反応させることにより調製することができる。
このようにして得られたヒドロキシ化合物から調製される透明導電膜形成用ペーストは、従来のインジウムの硝酸塩、塩化物および錫の塩化物等から調製されるペーストとは対照的に、透明導電膜形成過程の焼成時に腐食性ガス(NOx等)が発生せず、環境、装置を汚染するおそれがない。
【0022】
前記ヒドロキシ化合物としては、上述した化学式(1)で表されるヒドロキシ化合物が好ましい。
この化学式(1)において、xの値を0.86≦x≦0.96と限定した理由は、xの値が0.96を越えると、錫(Sn)のドーパントとしての効果が無くなり、電子のキャリア濃度を高くできず、抵抗値が低くならないからであり、また、xの値が0.86未満であると、Snが不純物としてIn23粒子の粒界に析出し、抵抗値を高くする原因となるからである。
【0023】
次に、このように生成したヒドロキシ化合物に有機配位子を添加し、必要により溶剤中で反応させることにより、キレート錯体を合成する。
有機配位子の添加量は、インジウム原子1モルに対して2モル以上である。添加量が2モル未満であると完全なキレート錯体が得られず、未反応のヒドロキシ化合物が残留するので、好ましくない。
【0024】
キレート錯体は、70〜80℃で約4〜8時間攪拌・反応させて合成するのが好ましい。常温で合成すると、キレート錯体の生成に多大な時間を必要とするので好ましくない。
また、溶剤としては、前記ヒドロキシ化合物、有機配位子および生成するキレート錯体を溶解することができるものであれば、特に限定されることはなく、アルコール系溶媒、グリコール類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類等が挙げられる。特に、印刷性を向上させるためにはペースト粘度を高くする必要があり、中でも高沸点溶剤であるα−テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、ベンジルアルコール、2−フェノキシエタノール等が好適に使用される。
【0025】
透明導電膜形成用ペースト中のインジウムと錫の合計の含有量は、ITO換算でペースト重量に基づき、1〜20重量%とするのが好ましい。より好ましい含有量は4〜7重量%である。含有量が1重量%未満であると、焼成して得られる透明導電膜の膜厚が薄く、表面抵抗値が高くなるからである。また、含有量が20重量%を越えると、得られる透明導電膜の膜厚が厚くなり過ぎてクラックが発生し、緻密な膜が得られず、しかも、抵抗値が高くなり、透過率も低くなる。
【0026】
透明導電膜形成用ペーストには、スクリーン印刷に適した粘性を付与するためにバインダーが含まれている。バインダーとしては、インジウムと錫のキレート錯体との反応性がなく、使用している溶剤に溶解が可能であれば特に限定されることはなく、一般的に印刷用ペーストのバインダーとして用いられているエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース、ポリビニルブチラールなどのブチラール樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル樹脂等を使用することができる。特に、ペーストの安定性、成膜性の点からポリビニルブチラールが好適に使用される。
【0027】
透明導電膜形成用ペースト中のバインダーの含有量は、ペースト重量に基づき、通常1〜20重量%、好ましくは6〜9重量%である。含有量が1重量%未満であると、ペーストの粘度が低くなり過ぎ、微細な印刷が難しく、印刷精度も悪くなるからであり、逆に、20重量%を越えると、焼成後のITO膜が多孔質となり、緻密な膜が得られず、抵抗値が高くなるからである。
【0028】
透明導電膜形成用ペースト中に溶媒として含有させる溶剤としては、前記キレート錯体および前記のバインダーを溶解できるものであれば特に限定されることはなく、アルコール系溶媒、グリコール類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類等が挙げられる。特に、印刷性を向上させるためにはペースト粘度を高くする必要があり、中でも高沸点溶剤であるα−テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、ベンジルアルコール、2−フェノキシエタノール等が好適に使用される。
【0029】
[印刷下地膜形成用インク]
印刷下地膜形成用インク中に含まれる樹脂は、透明導電膜形成用ペーストに含有されている溶剤に可溶であるか、または該溶剤を吸収するものであればよく、特に制限されるものではない。具体例としては、エチルセルロースなどのセルロース、ポリビニルブチラールなどのブチラール樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル樹脂などが挙げられるが、透明導電膜形成用ペーストに含有しているバインダーと同一のものを使用することもできる。この場合、焼成時に残査を残さないものを選択して用いる。
この印刷下地膜形成用インク中に含まれる樹脂の量は、特に制限されるものではないが、通常、印刷下地膜形成用インクの重量に対して1〜20重量%程度である。
【0030】
印刷下地膜形成用インク中に含まれる溶剤は、前記樹脂を溶解し得るものであれば特に制限されるものではない。その具体例としては、トルエンなどの炭化水素、シクロヘキサノン、メチルエチルケトンなどのケトン類、イソプロピルアルコール、n−ブタノールなどのアルコール類、ブチルセロソルブ、テトラヒドロフランなどのエーテル類が挙げられる。また、特にスクリーン印刷法により印刷下地膜を形成する場合は、α−テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、エチルカルビトール等が好ましい。これらは単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
【0031】
[パターン化された透明導電膜およびその製造方法]
パターン化された透明導電膜は、前記透明導電膜形成用ペーストを、スクリーン印刷等の塗布方法により基板上に直接塗布するか、あるいは前記印刷下地膜形成用インクを基板上に塗布し印刷下地膜を形成した後に、スクリーン印刷等の塗布方法により塗布するかした後、乾燥、焼成することによって形成される。
【0032】
印刷下地膜の成膜には、公知の方法が採用でき、例えば、ワイヤーバーコート法、スピンコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法等が挙げられる。
この印刷下地膜を形成することにより、透明導電膜形成用ペーストを所定のパターンマスクを用いてスクリーン印刷した場合、転写された該透明導電膜形成用ペースト中の溶剤が印刷下地膜内に瞬時に吸収され、したがって、印刷ペーストの粘度が急激に上昇することで、基板上でのペーストのダレが抑制され、ライン太りが抑制される。
【0033】
その結果、ほぼスクリーンマスクの設計値通りのライン幅が約50μmの微細なライン幅まで印刷が可能となる。印刷下地膜の膜厚は溶剤の吸収量、焼成後の透明導電膜の強度、抵抗値を考慮し、0.2〜5μmが好ましく、0.4〜1.0μmがより好ましい。その理由は、印刷下地膜の膜厚が0.2μmよりも薄いとペースト中の溶剤を吸収しきれず、ライン太りを抑制する効果が小さく、逆に、5μmよりも厚いと焼成時の分解ガスが多くなり、焼成後の透明導電膜の強度低下、抵抗値増大の原因となるからである。
【0034】
基板上に印刷下地膜形成用インクを塗布、乾燥して印刷下地膜を成膜した後、この印刷下地膜上に透明導電膜形成用ペーストをスクリーン印刷してファインパターン膜を形成する。その後、乾燥し、次いで、大気中において500℃以上の温度で30〜60分程度焼成することにより、パターン化された透明導電膜が作製される。
【0035】
透明導電膜の膜厚は特に限定はされないが、高い透過率を得、膜欠陥の発生を防止するためには、0.1〜0.5μmが好ましく、0.1〜0.3μmがより好ましい。
上記の製造方法によれば、非常に簡易な工程で、安全且つ低コストでパターン化された透明導電膜を作製することができる。また、焼成時にNOxや塩素ガス等の腐食性ガスの発生がないため、焼成炉および環境を汚染するおそれがない。
【0036】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0037】
「実施例1」
[透明導電膜形成用ペースト]
粒径0.1〜1.0μmのITO微粉末(住友大阪セメント製)800gと酢酸(関東化学製)4000gを5リットルのセパラブルフラスコに入れ、沸点下で3時間還流し、インジウムと錫を含むヒドロキシ酢酸塩{In(AcO)2(OH)}0.9・{Sn(AcO)20.1(白色沈殿物)を得た。
【0038】
得られたヒドロキシ酢酸塩をろ別し、アルコールで洗浄後、60℃で乾燥した。その後、乾燥したヒドロキシ酢酸塩40.0gとジエタノールアミン46.0gと2−フェノキシエタノール64.0gを500mlのセパラブルフラスコに入れ、70℃で4時間、加熱攪拌してキレート錯体溶液を得た。インジウム原子1モルに対する有機配位子の添加量は3モルであった。
【0039】
次いで、予めポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製:エスレックB;BH−3)30.0gをα−テルピネオール239.9gに溶解させた溶液と、前記キレート錯体溶液を、混練機により十分に混合して透明導電膜形成用ペーストを得た。得られたペースト中におけるバインダー成分であるポリビニルブチラール樹脂の配合割合は7%であり、得られたペーストの粘度は48000cpsであった。液の白濁、沈殿等も無く、粘度変化も見られなかった。
【0040】
[パターン化された透明導電膜]
下記のスクリーンマスク及び印刷機を用いてパターン化された透明導電膜を形成した。
・スクリーンマスク:東京プロセスサービス製
メッシュ:ST−400
乳剤厚:10μm、枠サイズ:320nm×320nm
マスクパターン構造:
(A)ライン幅/スペース幅(μm)=50/50の縦横ストライプライン
(B)70mm×70mmのベタパターン
【0041】
・印刷機:マイクロ・テック製スクリーン印刷機:MT−320
・印刷条件:クリアランス:1mm、印圧:3kg/cm2、背圧:1.3kg/cm2、スキージ速度:20mm/sec、スキージゴムアタック角度:70°、スクレッパ圧:2.5kg/cm2、スクレッパ速度:30mm/sec
【0042】
上記印刷機を使用し、透明導電膜形成用ペーストをスクリーンマスク(マスクパターン構造A)を用いて、ソーダライムガラス基板上にスクリーン印刷した後、150℃で15分間乾燥した。
こうして得られたパターン形成膜を電気炉中(大気雰囲気)で580℃、60分間焼成して微細にパターン化されたITOからなる透明導電膜を得た。なお、焼成時に発生するガスは二酸化炭素と水蒸気のみであり、腐食性ガスは発生しなかった。
【0043】
「実施例2」
[透明導電膜形成用ペースト]
実施例1と同様に、透明導電膜形成用ペーストを調整した。
[印刷下地膜形成用インク]
ポリビニルブチラール樹脂(BH−3)30.0gをα−テルピネオール470.0gに溶解して印刷下地膜形成用インクを得た。
【0044】
[パターン化された透明導電膜]
実施例1と同じ印刷機を使用し、印刷下地膜形成用インクをスクリーンマスク(マスクパターン構造B)を用いてソーダライムガラス基板上にスクリーン印刷した後、110℃で15分間乾燥した。得られた印刷下地膜の膜厚は0.8μmであった。
【0045】
次いで、透明導電膜形成用ペーストをスクリーンマスク(マスクパターン構造A)を用いて、上記の印刷下地膜上にスクリーン印刷した後、150℃で15分間乾燥した。
こうして得られたパターン形成膜を電気炉中(大気雰囲気)で580℃、60分間焼成して微細にパターン化されたITOからなる透明導電膜を得た。なお焼成時に発生するガスは二酸化炭素と水蒸気のみであり、腐食性ガスは発生しなかった。
【0046】
「実施例3」
[透明導電膜形成用ペースト]
実施例1と同様に、インジウムと錫のキレート錯体溶液を得た。次いで、予めポリビニルブチラール樹脂(BH−3)20.0gをα−テルピネオール160.0gに溶解させた溶液と、前記キレート錯体溶液を、混練機により十分に混合して透明導電膜形成用ペーストを得た。得られたペースト中におけるバインダー成分であるポリビニルブチラール樹脂の配合割合は6%であり、得られたペーストの粘度は38000cpsであった。液の白濁、沈殿等も無く、粘度変化も見られなかった。
【0047】
[印刷下地膜形成用インク]
実施例2と同様に、印刷下地膜形成用インクを得た。
[パターン化された透明導電膜]
実施例2と同様の方法により、パターン化された透明導電膜を得た。
【0048】
「実施例4」
[透明導電膜形成用ペースト]
実施例1と同様に、インジウムと錫のキレート錯体溶液を得た。次いで、予めポリビニルブチラール樹脂(BH−3)40.0gをα−テルピネオール319.8gに溶解させた溶液と、前記キレート錯体溶液を、混練機により十分に混合して透明導電膜形成用ペーストを得た。得られたペースト中におけるバインダー成分であるポリビニルブチラール樹脂の配合割合は8%であり、得られたペーストの粘度は38000cpsであった。液の白濁、沈殿等も無く、粘度変化も見られなかった。
【0049】
[印刷下地膜形成用インク]
実施例2と同様に、印刷下地膜形成用インクを得た。
[パターン化された透明導電膜]
実施例1と同様の方法で、パターン化された透明導電膜を得た。
【0050】
「実施例5」
[透明導電膜形成用ペースト]
実施例1と同様に、インジウムと錫を含むヒドロキシ酢酸塩{In(AcO)2(OH)}0.9・{Sn(AcO)20.1(白色沈殿物)を得た。
得られたヒドロキシ酢酸塩40.0gとジエタノールアミン30.7gと2−フェノキシエタノール79.3gを500mlのセパラブルフラスコに入れ、70℃で8時間加熱攪拌し、キレート錯体溶液を得た。インジウム原子1モルに対する有機配位子の添加量は2モルであった。
【0051】
次いで、予めポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製:エスレックB;BH−3)30.0gをα−テルピネオール239.9gに溶解させた溶液と、前記キレート錯体溶液を、混練機により十分に混合して透明導電膜形成用ペーストを得た。得られたペースト中におけるバインダー成分であるポリビニルブチラール樹脂の配合割合は7%であり、得られたペーストの粘度は40000cpsであった。液の白濁、沈殿等も無く、粘度変化も見られなかった。
【0052】
[印刷下地膜形成用インク]
実施例2と同様に印刷下地膜形成用インクを得た。
[パターン化された透明導電膜]
実施例2と同様にパターン化された透明導電膜を得た。
【0053】
「実施例6」
[透明導電膜形成用ペースト]
実施例1と同様に、インジウムと錫のキレート錯体溶液を得た。次いで、予めエチルセルロース樹脂(100cp;関東化学製)25.0gをα−テルピネオール200.0gに溶解させた溶液と、前記キレート錯体溶液を、混練機により十分に混合して透明導電膜形成用ペーストを得た。得られたペースト中におけるバインダー成分であるエチルセルロースの配合割合は7%であり、得られたペーストの粘度は45000cpsであった。液の白濁、沈殿等も無く、粘度変化も見られなかった。
【0054】
[印刷下地膜形成用インク]
エチルセルロース(100cp)30.0gをα−テルピネオール470.0gに溶解して印刷下地膜形成用インクを得た。
[パターン化された透明導電膜]
実施例2と同様に、パターン化された透明導電膜を得た。
【0055】
「実施例7」
[透明導電膜形成用ペースト]
インジウムと錫のキレート錯体を合成する際に、2−フェノキシエタノールの代わりにベンジルアルコールを使用したこと以外は、実施例1に準じて透明導電膜形成用ペーストを得た。得られたペーストの粘度は42000cpsであり、液の白濁、沈殿等も無く、粘度変化も見られなかった。
【0056】
[印刷下地膜形成用インク]
実施例2と同様に、印刷下地膜形成用インクを得た。
[パターン化された透明導電膜]
実施例2と同様に、パターン化された透明導電膜を得た。
【0057】
「実施例8」
[透明導電膜形成用ペースト]
粒径0.1〜1.0μmのITO微粉末(住友大阪セメント製)800gとプロピオン酸(関東化学製)4000gを5リットルのセパラブルフラスコに入れ、沸点下で3時間還流し、インジウムと錫を含むヒドロキシプロピオン酸塩{In(C25COO)2(OH)}0.9・{Sn(C25COO)20.1(白色沈殿物)を得た。
【0058】
得られたヒドロキシプロピオン酸塩44.5gとジエタノールアミン30.7gと2−フェノキシエタノール74.8gを500mlのセパラブルフラスコに入れ、70℃で8時間加熱撹拌してキレート錯体溶液を得た。インジウム原子1モルに対する有機配位子の添加量は2モルであった。
次いで、予めポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製:エスレックB;BH−3)30.0gをα−テルピネオール239.9gに溶解させた溶液と、前記キレート錯体溶液を、混練機により十分に混合して透明導電膜形成用ペーストを得た。得られたペーストの粘度は45000cpsであり、液の白濁、沈殿等も無く、粘度変化も見られなかった。
【0059】
[印刷下地膜形成用インク]
実施例2と同様に、印刷下地膜形成用インクを得た。
[パターン化された透明導電膜]
実施例2と同様に、パターン化された透明導電膜を得た。
【0060】
「実施例9」
[透明導電膜形成用ペースト]
粒径0.1〜1.0μmのITO微粉末(住友大阪セメント製)800gと、蟻酸(関東化学製)4000gを5リットルのセパラブルフラスコに入れ、沸点下で3時間還流し、インジウムと錫を含むヒドロキシ蟻酸塩{In(HCOO)2(OH)}0.9・{Sn(HCOO)20.1(白色沈殿物)を得た。
【0061】
得られたヒドロキシ蟻酸塩35.5gとジエタノールアミン30.7gと2−フェノキシエタノール83.8gを500mlのセパラブルフラスコに入れ、70℃で8時間加熱撹拌してキレート錯体溶液を得た。インジウム原子1モルに対する有機配位子の添加量は2モルであった。
次いで、予めポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製:エスレックB;BH−3)30.0gをα−テルピネオール239.9gに溶解させた溶液と、前記キレート錯体溶液を、混練機により十分に混合して透明導電膜形成用ペーストを得た。得られたペーストの粘度は42000cpsであり、液の白濁、沈殿等も無く、粘度変化も見られなかった。
【0062】
[印刷下地膜形成用インク]
実施例2と同様に、印刷下地膜形成用インクを得た。
[パターン化された透明導電膜]
実施例2と同様に、パターン化された透明導電膜を得た。
【0063】
「実施例10」
[透明導電膜形成用ペースト]
粒径0.1〜1.0μmのITO微粉末(住友大阪セメント製)800gと酪酸(関東化学製)4000gを5リットルのセパラブルフラスコに入れ、沸点下で3時間還流し、インジウムと錫を含むヒドロキシ酪酸塩{In(C37COO)2(OH)}0.9・{Sn(C37COO)20.1(白色沈殿物)を得た。
【0064】
得られたヒドロキシ酪酸塩49.0gとジエタノールアミン30.7gと2−フェノキシエタノール70.3gを500mlのセパラブルフラスコに入れ、70℃で8時間加熱撹拌してキレート錯体溶液を得た。インジウム原子1モルに対する有機配位子の添加量は2モルであった。
次いで、予めポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製:エスレックB;BH−3)30.0gをα−テルピネオール239.9gに溶解させた溶液と、前記キレート錯体溶液を、混練機により十分に混合して透明導電膜形成用ペーストを得た。得られたペーストの粘度は45000cpsであり、液の白濁、沈殿等も無く、粘度変化も見られなかった。
【0065】
[印刷下地膜形成用インク]
実施例2と同様に、印刷下地膜形成用インクを得た。
[パターン化された透明導電膜]
実施例2と同様に、パターン化された透明導電膜を得た。
【0066】
「比較例」
[透明導電膜形成用ペースト]
硝酸インジウム40.0gと蓚酸錫2.5gとアセチルアセトン44.2gと2−フェノキシエタノール64.0gを500mlのセパラブルフラスコに入れ、沸点下で2時間還流してキレート錯体溶液を得た。この工程以外は実施例1に準じることで透明導電膜形成用ペーストを得た。得られたペーストの粘度は8000cpsであり、液の白濁、沈殿等も無く、粘度変化も見られなかった。
【0067】
[印刷下地膜形成用インク]
実施例2に準じて印刷下地膜形成用インクを得た。
[パターン化された透明導電膜]
実施例2と同様に、パターン化された透明導電膜を得た。この比較例では無機塩を原料にしたために、成膜性が悪く、膜が白濁し、透明な導電膜が得られなかった。
【0068】
「透明導電膜の評価」
以上により得られた実施例1〜10及び比較例の透明導電膜の膜厚、表面抵抗値、波長550nmの光に対する光透過率、膜強度、およびパターン加工性等を次の方法または装置を用いて評価した。
Figure 0003995909
【0069】
Figure 0003995909
【0070】
評価結果を表1に示す。
【表1】
Figure 0003995909
【0071】
表1の結果によれば、実施例1〜10は、ライン太りがあまり見られず、50〜60μmのライン幅のパターンを形成することができた。また、優れた導電性を有するとともに、透明性、膜硬度及び膜強度においても優れたものであった。特に、印刷下地膜を形成した実施例2〜10は、設計通りの50μmという微細なライン幅のパターンを形成することができた。また、実施例1〜10においては、成膜の際に腐食性ガスが発生せず、安全な環境で成膜を行い得ることが分かった。
【0072】
一方、比較例は、ペーストの粘度も低く、ライン幅50μmの設計に対し、ライン太りが生じたために、実際に形成されたライン幅は100μmであった。また、表面抵抗値も8000Ω/□と導電性も劣っていることがわかった。さらに、透明性も悪く、膜硬度、膜強度ともに劣ったものであった。
【0073】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の透明導電膜形成用ペーストによれば、インジウム及び錫を含む化合物と有機酸とから生成したヒドロキシ化合物に有機配位子が配位したキレート錯体と、バインダー(ただし、紫外線硬化型および紫外線崩壊型の感光性樹脂を除く)と、溶剤とを含有したので、ペーストの経時安定性を向上させることができ、成膜時、特に現像時の膜質の劣化等の問題点を解消することができる。
【0074】
本発明の透明導電膜は、本発明の透明導電膜形成用ペーストを、該ペースト中に含まれる溶剤に可溶または該溶剤を吸収する樹脂からなる下地膜上に塗布し、焼成してなることとしたので、ライン太りを抑制することができ、優れた導電性を得るとともに、ライン幅の微細なパターンを形成した同伝幕が得られる。
このように、この透明導電膜は、ディスプレイの表示素子等の電極材料として極めて優れたものである。
【0075】
本発明の透明導電膜の製造方法によれば、本発明の透明導電膜形成用ペーストを、該ペースト中に含まれる溶剤に可溶または該溶剤を吸収する樹脂からなる下地膜上にスクリーン印刷し、500℃以上の温度で焼成するので、従来のスクリーン印刷では得られなかった印刷精度を得ることができ、ライン幅50μm程度までパターン加工を行うことができる。
また、スクリーン印刷法を用いたので、成膜時の作業性を向上させることができ、また、安全性にも優れている。また、低コストでかつ非常に簡単な工程で微細なパターン化された透明導電膜を作製することができ、焼成炉および環境を汚染するおそれもない。

Claims (10)

  1. インジウム及び錫を含む化合物と有機酸とから生成したヒドロキシ化合物に有機配位子が配位したキレート錯体と、バインダー(ただし、紫外線硬化型および紫外線崩壊型の感光性樹脂を除く)と、溶剤とを含有してなることを特徴とする透明導電膜形成用ペースト。
  2. 前記インジウム及び錫を含む化合物は、錫ドープ酸化インジウムであることを特徴とする請求項1記載の透明導電膜形成用ペースト。
  3. 前記有機酸は、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸から選択された少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2記載の透明導電膜形成用ペースト。
  4. 前記ヒドロキシ化合物は、次の化学式
    {In(RCOO)(OH)}・{Sn(RCOO)1−x ……(1)
    (但し、RCOOはアシルオキシ基であり、nは1〜5、xは0.86≦x≦0.96を満たす数である)で表されることを特徴とする請求項1、2または3記載の透明導電膜形成用ペースト。
  5. 前記有機配位子は、β−ジケトン、アミノアルコール、多価アルコールから選択された少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の透明導電膜形成用ペースト。
  6. 前記インジウム及び錫の合計の含有量は、酸化物に換算して1〜20重量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の透明導電膜形成用ペースト。
  7. 前記バインダーの含有量が、1〜20重量%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の透明導電膜形成用ペースト。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項記載の透明導電膜形成用ペーストが、該ペースト中に含まれる溶剤に可溶または該溶剤を吸収する樹脂からなる下地膜上に塗布され、焼成されていることを特徴とする透明導電膜。
  9. 前記下地膜の膜厚は0.2〜5μmであることを特徴とする請求項8記載の透明導電膜。
  10. 請求項1〜7のいずれか1項記載の透明導電膜形成用ペーストを、該ペースト中に含まれる溶剤に可溶または該溶剤を吸収する樹脂からなる下地膜上にスクリーン印刷し、500℃以上の温度で焼成することを特徴とする透明導電膜の製造方法。
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