JP3806560B2 - 感光性透明導電膜形成用塗布液、パターン化された透明導電膜および該透明導電膜の製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板上にパターン化された透明導電膜を形成可能な感光性透明導電膜形成用塗布液、パターン化された透明導電膜、および該透明導電膜の製造方法に関する。さらに詳しくは、透明導電膜形成材料として錫ドープ酸化インジウムのキレート錯体を含有する感光性透明導電膜形成用塗布液、該塗布液を用いて形成された優れた透明性と高い導電性を兼ね備えたパターン化された透明導電膜、および該透明導電膜の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、LCD、EL、PDPなどのディスプレイ用の表示素子透明電極やタッチパネルの透明電極などに使用されるパターン化された透明導電膜の形成材料として、錫ドープ酸化インジウム(以下、「ITO」と表記する場合がある)材料が知られている。
【0003】
このITO材料からなるパターン化された透明導電膜は、ITO材料から真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法により均一膜を形成した後、フォトレジストによりレジストパターンを形成し、さらに酸エッチングすることにより形成されている。
しかし、上記の真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法は、装置が高価で複雑であり、コストと量産性に問題がある。
【0004】
これに対して、工程が短かく、かつ製造コストが低い方法として、インジウム化合物と錫化合物を含む溶液中に感光性樹脂を添加した感光性透明導電膜形成用塗布液を用い、塗布、乾燥、露光、現像、焼成してパターン化された透明導電膜を形成する方法(以下、「塗布法」と表記する場合がある)がある。しかし、入手しやすい硝酸インジウム、塩化インジウムなどの無機塩を溶媒に溶解した塗布液を用いて透明導電膜を形成すると膜の白濁を生じ、得られた膜の機械的強度が弱い。
【0005】
他の塗布法として、金属アルコキシドと感光性樹脂とを含む感光性透明導電膜形成用塗布液を用いる方法があるが、原料が非常に高価であり、また加水分解され易く塗布液の安定性に問題がある。
さらに他の塗布法として、インジウム、錫のアセチルアセトナートなどのキレート錯体と感光性樹脂とを含む感光性透明導電膜形成用塗布液を用いる方法があるが、溶解性の良い溶媒がなく、厚膜化すると錯体が析出して膜の白濁を生じ、膜の機械的強度が弱い。
【0006】
そこで、これらの塗布法の改良方法として、膜の白濁防止、機械的強度の向上、塗布液の安定性を確保するために、インジウム塩および錫塩に、β−ジケトン、アミノアルコールおよび多価アルコール類などの有機配位子を有機溶媒中で配位させた化合物を含む感光性透明導電膜形成用塗布液を用いる方法がある。
しかしながら、この改良方法にあっても、インジウム塩および錫塩として、一般に、硝酸塩や塩化物が使用されるため焼成時にNOxや塩素ガスなどの腐食性ガスが発生し、焼成炉および環境を汚染するという問題がある。また、それらの塩は結晶水を含むため、パターン化の際、塗膜が水に対して弱く、一般的なアルカリ水溶液に浸食される。そのため、感光性樹脂を溶解可能な有機溶剤でしか現像できず、作業安全性に問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来の技術が有する問題点を解決することにあり、より具体的には、安価で、安定性に優れた感光性透明導電膜形成用塗布液;該感光性透明導電膜形成用塗布液を用いて形成された透明性、導電性、および塗膜の機械的強度に優れたパターン化された透明導電膜;ならびに、成膜時の作業性が良く、作業安全性に優れ、非常に簡易な工程で微細にパターン化された透明導電膜を作製することができ、しかも焼成炉および環境を汚染する虞がない前記の透明導電膜の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、透明導電膜形成材料として特定のITO系化合物を使用することにより、上記の課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、インジウム(In)と錫(Sn)を含む化合物と有機酸から生成したヒドロキシ化合物に有機配位子が配位したキレート錯体と、紫外線硬化型または紫外線崩壊型の感光性樹脂と、溶剤とを少なくとも含有することを特徴とする感光性透明導電膜形成用塗布液を提供する。
【0009】
ここに、InとSnとを含む化合物は錫ドープ酸化インジウムであることが好ましく、また、有機酸は酢酸であることが好ましい。特に、前記のヒドロキシ化合物としては、次の化学式(1):
{In(AcO)2(OH)}x・{Sn(AcO)2}1-x (1)
(式中のAcはアセチル基であり、xは0.86≦x≦0.96を満足する数である)
で表わされるものが好ましい。また、有機配位子は、β−ジケトン、アミノアルコールおよび多価アルコール類の中から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
【0010】
塗布液中のInとSnの含有量は、錫ドープ酸化インジウムに換算して、該塗布液重量に基づき、1〜20重量%であることが好ましい。また、塗布液中の前記の紫外線硬化型または紫外線崩壊型の感光性樹脂の含有量は、該塗布液重量に基づき、1〜20重量%であることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、上記の感光性透明導電膜形成用塗布液を基板上に塗布・乾燥し、該乾燥膜を露光・現像してパタ−ン化し、焼成して得られた錫ドープ酸化インジウムからなることを特徴とするパターン化された透明導電膜を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、上記の感光性透明導電膜形成用塗布液を基板上に塗布・乾燥し、該乾燥膜上にフォトマスクを設置し、紫外線を照射して露光した後、アルカリ水溶液にて現像してパタ−ン化し、500℃以上の温度で焼成することを特徴とするパターン化された透明導電膜の製造方法を提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、実施の形態を掲げ、本発明を詳細に説明する。なお、この実施の形態は発明の趣旨をよりよく理解させるためのものであり、特に限定がない限り、本発明の内容を制限するものではない。
【0014】
透明導電膜形成用塗布液
本発明の感光性透明導電膜形成用塗布液は、InとSnを含む化合物と有機酸から生成したヒドロキシ化合物に有機配位子が配位したキレート錯体と、紫外線硬化型または紫外線崩壊型の感光性樹脂と、前記キレート錯体と前記感光性樹脂を溶解する溶剤とを少なくとも含有している。
ここに、InとSnを含む化合物としては、特に限定されるものではなく、例えばInとSnとの酸化物、InとSnとの水酸化物などを使用することができ、特にInとSnとの酸化物、なかでも錫ドープ酸化インジウム(ITO)は、有機酸との脱水反応性に優れるなどの理由から好適に使用される。
【0015】
また、有機酸も特に限定されるものでなく、例えば酢酸、マレイン酸、プロピオン酸、酪酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸などを好適に使用することができ、特に酢酸は、分子量が小さいので、透明導電膜形成時の前記キレート錯体の熱分解温度を低くできるので好適に使用される。
【0016】
上記ヒドロキシ化合物に配位する有機配位子としては、β−ジケトン、アミノアルコールおよび多価アルコール類が好適に使用できる。β−ジケトンの具体例としては、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチルなどが挙げられ、アミノアルコールの具体例としては、ジエタノールアミン、2−アミノエタノール、トリエタノールアミンなどが挙げられ、また、多価アルコール類の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールなどが挙げられる。これらの有機配位子の中でも、塗布液の安定性および錯体の熱分解性の点から、β−ジケトンとしてアセチルアセトン、アミノアルコールとしてジエタノールアミン、多価アルコール類としてエチレングリコールが特に好ましい。
【0017】
以下、InとSnを含む化合物としてITOを、有機酸として酢酸を用いた場合を好適例として掲げ、本発明をさらに詳細に説明する。
前記のヒドロキシ化合物は、ITOと酢酸とを酢酸の沸点(110℃)下で、例えば2時間〜4時間、還流し反応させることにより調製することができる。このようにして得られたヒドロキシ化合物から調製される感光性透明導電膜形成用塗布液は、インジウムの硝酸塩または塩化物、および、錫の硝酸塩または塩化物から調製される透明導電膜形成用塗布液とは対照的に、塗布液中に硝酸イオンや塩素イオンが残留することがなく、透明導電膜の形成過程で焼成時にNOxや塩素ガスなどの腐食性ガスが発生せず、さらに前記の感光性樹脂を添加した際、酸性が強くなく、塗布液の安定性に優れるので好ましい。また、このヒドロキシ化合物はその分子中に結晶水を含まないので、水が実質的に塗膜中に残留することがなく、現像時にアルカリ水溶液を使用しても膜の耐水性が低下しないので好ましい。
【0018】
前記ヒドロキシ化合物としては、前記化学式(1)で表わされるものが好ましい。化学式(1)において、xの値が0.96より大きいと、錫(Sn)のドーバントとしての効果がなく、電子のキャリア濃度を高くできず抵抗値が低くならない。また、前記xの値が0.86より小さいと、逆にSnが不純物としてIn2O3粒子の粒界に析出し、抵抗値を高くする原因となり、好ましくない。
【0019】
有機配位子の添加量は、インジウム原子1モルに対して2モル以上である。添加量がこれより少ないと完全なキレート錯体が合成されず、未反応のヒドロキシ化合物が残留する。
キレート錯体の合成は、高温下、例えば有機配位子の沸点下で約2時間〜約4時間還流して合成することが好ましい。常温で合成するとキレート化が不十分で塗布液の安定性に問題がある。
【0020】
感光性透明導電膜形成用塗布液中のInとSnの含有量は、ITO換算で、塗布液重量に基づき、1〜20重量%が好ましい。より好ましい含有量は、3〜7重量%である。含有量がこれよりも少ないと焼成して得られる透明導電膜の膜厚が薄く、表面抵抗値が高くなる。逆に、これよりも含有量が多いと得られる透明導電膜の膜が厚くなり過ぎ、クラックが発生して緻密な膜が得られない。
【0021】
透明導電膜形成用塗布液中に含有せしめる感光性樹脂は、格別限定されることはなく、一般に透明導電膜の形成に用いられる紫外線硬化型のネガ型感光性樹脂、および紫外線崩壊型のポジ型感光性樹脂を使用することができる。紫外線硬化型のネガ型感光性樹脂の具体例としては、光重合性アクリル系樹脂などが挙げられ、また、紫外線崩壊型のポジ型感光性樹脂の具体例としてはノボラック系樹脂などが挙げられる。
透明導電膜形成用塗布液中の感光性樹脂の含有量は、塗布液重量に基づき、通常1〜20重量%、好ましくは5〜10重量%である。含有量がこれよりも少ないと紫外線による膜の硬化または崩壊が十分に行われず良好なパターンが得られず、逆に、これよりも多いと焼成後のITO膜が多孔質となり緻密な膜が得られない。
【0022】
透明導電膜形成用塗布液中に溶媒として含有せしめる溶剤としては、前記キレート錯体および前記の感光性樹脂を溶解できるものであれば特に限定されないが、塗工性を考慮して、1−プロパノール、2−プロパノール、ベンジルアルコールなどのアルコール類、アセチルアセトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸3−メトキシブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノアセタートなどのエステル類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類などの中沸点または高沸点有機溶媒を使用することが好ましい。
【0023】
パターン化された透明導電膜およびその製造方法
パターン化された透明導電膜は、前記感光性透明導電膜形成用塗布液を基板上に塗布、乾燥した後、露光・現像してパターン化し、焼成することによって作成される。
透明導電膜形成用塗布液を塗布するには、公知の方法が採用でき、例えば、ディップコート法、スピンコート法、ロールコート法などが採られる。塗布液の塗布量は、形成される乾燥透明導電膜の膜厚が好ましくは50〜500nm、より好ましくは100〜300nmとなるようにする。透明導電膜の膜厚がこれよりも薄いと表面抵抗値が高く、逆にこれよりも厚いと膜にクラックが発生する。
【0024】
塗布膜は、乾燥した後、露光・現像してパターン化される。すなわち、塗布膜上に所定のパターンを有するフォトマスクを設置して紫外線を照射して露光し、次いで、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイト、ジエタノールアミンなどの有機アルカリ、または水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどの無機アルカリの水溶液で現像してパターン化する。次いで、パターン形成膜を500℃以上の温度で30分〜60分程度焼成することにより、透明導電膜が作製される。焼成時の雰囲気は特に制限されず、通常、大気中で行う。
上記の方法によれば、非常に簡易な工程で、安全かつ低コストでパターン化された透明導電膜を作製することができる。また、焼成時にNOxや塩素ガスなどの腐食性ガスの発生がないため、焼成炉および環境を汚染する虞がない。
【0025】
【実施例】
以下、実施例および比較例を掲げ、本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1
透明導電膜形成用塗布液
粒径0.1μm〜1.0μmのITO微粉末(住友大阪セメント(株)製)800gと、酢酸4000gを5リットルのセパラブルフラスコに入れ、酢酸の沸点(110℃)下で3時間還流し、インジウムと錫を含むヒドロキシ酢酸塩、{In(AcO)2(OH)}0.90・{Sn(AcO)2}0.1(白色沈殿物)を得た。
得られたヒドロキシ酢酸塩を濾別しアルコールで洗浄後、60℃で乾燥した。乾燥したヒドロキシ酢酸塩26.7g、アセチルアセトン86.6gおよびベンジルアルコール86.7gを500mlのセパラブルフラスコに入れ、沸点(140℃)下で2時間還流してキレート錯体溶液を得た。
室温まで冷却後、この溶液に紫外線硬化型のネガ型感光性樹脂溶液(CSP−S004、フジフィルムオーリン社製、樹脂固形分31.4重量%)71.7gを添加し、1時間良く攪拌して、感光性透明導電膜形成用塗布液を得た。
この感光性透明導電膜形成用塗布液は、3ヶ月間静置しても感光性樹脂の反応、白濁、沈殿の生成などが認められず安定であり、また、粘度変化も認められなかった。
【0026】
パターン化された透明導電膜
上記の感光性透明導電膜形成用塗布液をスピンコーター(400rpm、20sec.)でソーダライムガラス基板上に塗布した後、120℃で15分間乾燥した。乾燥膜上にパターン加工精度評価用のフォトマスク(線幅:2、3、4、5、……、15μm、線間:2、3、4、5、……、15μm)を設置し、紫外線(480mJ/cm2)を照射後、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイト水溶液中で2分間パドル現像して膜の未露光部分を溶解除去した。
こうして得られたパターン形成膜を電気炉中(大気雰囲気)で580℃、1時間焼成して微細にパターン化されたITOからなる透明導電膜を作成した。なお、焼成時に発生するガスは二酸化炭素と水蒸気のみであり、腐食性ガスは発生しなかった。
【0027】
実施例2
感光性透明導電膜形成用塗布液
実施例1で得られたキレート錯体溶液に紫外線崩壊型のポジ型感光性樹脂溶液(AZ RFP―210K、クラリアント社製、樹脂固形分29.3重量%)と、溶媒としてベンジルアルコール81.5gとを添加し、1時間良く攪拌して、感光性透明導電膜形成用塗布液を得た。
この感光性透明導電膜形成用塗布液は、3ヶ月間静置しても感光性樹脂の反応、白濁、沈殿の生成などが認められず安定であり、また、粘度変化も認められなかった。
【0028】
パターン化された透明導電膜
上記の感光性透明導電膜形成用塗布液を用い、90℃で20分間乾燥した他は実施例1に準じて、パターン化された透明導電膜を作成した。なお、焼成時に発生するガスは二酸化炭素と水蒸気のみであり、腐食性ガスは発生しなかった。
【0029】
実施例3
感光性透明導電膜形成用塗布液
キレート錯体の還流合成時に、有機配位子としてジエタノールアミン22.8gと、溶剤としてベンジルアルコール150.5gを添加した他は実施例1に準じて、感光性透明導電膜形成用塗布液を調製した。
この感光性透明導電膜形成用塗布液は、3ヶ月間静置しても感光性樹脂の反応、白濁、沈殿の生成などが認められず安定であり、また、粘度変化も認められなかった。
【0030】
パターン化された透明導電膜
上記の感光性透明導電膜形成用塗布液を用いた他は実施例1に準じて、パターン化された透明導電膜を作成した。なお、焼成時に発生するガスは二酸化炭素と水蒸気のみであり、腐食性ガスは発生しなかった。
【0031】
実施例4
感光性透明導電膜形成用塗布液
キレート錯体の還流合成時に、有機配位子としてエチレングリコール26.8gと、溶剤としてベンジルアルコール146.5gを用いた他は実施例1に準じて、感光性透明導電膜形成用塗布液を調製した。
この感光性透明導電膜形成用塗布液は、3ヶ月間静置しても感光性樹脂の反応、白濁、沈殿の生成などが認められず安定であり、また、粘度変化も認められなかった。
【0032】
パターン化された透明導電膜
上記の感光性透明導電膜形成用塗布液を用いた他は実施例1に準じて、パターン化された透明導電膜を作成した。なお、焼成時に発生するガスは二酸化炭素と水蒸気のみであり、腐食性ガスは発生しなかった。
【0033】
実施例5
感光性透明導電膜形成用塗布液
キレート錯体の還流合成時に、有機配位子としてジエチレングリコール23.0gと、溶剤としてベンジルアルコール150.3gを用いた他は実施例1に準じて、透明導電膜形成用塗布液を調製した。
この感光性透明導電膜形成用塗布液は、3ヶ月間静置しても感光性樹脂の反応、白濁、沈殿などの生成などが認められず安定であり、また、粘度変化も認められなかった。
【0034】
パターン化された透明導電膜
上記の感光性透明導電膜形成用塗布液を用いた他は実施例1に準じて、実施例5のパターン化された透明導電膜を得た。なお、焼成時に発生するガスは二酸化炭素と水蒸気のみであり、腐食性ガスは発生しなかった。
【0035】
比較例1
感光性透明導電膜形成用塗布液
硝酸インジウム3水和物94.7g、シュウ酸錫5.6gおよびアセチルアセトン105.3gを500mlのセパラブルフラスコに入れ、沸点(110℃)下で2時間還流してキレート錯体溶液を得た。室温まで冷却後、酢酸3−メトキシブチル117.7gと、紫外線硬化型のネガ型感光性樹脂溶液(CSP−S004、フジフィルムオーリン社製、樹脂固形分31.4重量%)47.2gを添加し、1時間良く攪拌して感光性透明導電膜形成用塗布液を調製した。
【0036】
パターン化された透明導電膜
上記の感光性透明導電膜形成用塗布液を用い、120℃で12分間乾燥した。その後、実施例1に準じて現像を試みた。しかしながら、現像時に塗膜が膨潤、剥離してしまい、アルカリ水溶液による現像は不可能であった。
【0037】
比較例2
感光性透明導電膜形成用塗布液
比較例1で調製したキレート錯体溶液に、酢酸3−メトキシブチル114.3gと、紫外線崩壊型のポジ型感光性樹脂溶液(AZ RFP―210K、クラリアント社製、樹脂固形分29.3重量%)50.6gを添加し、1時間良く攪拌して感光性透明導電膜形成用塗布液を調製した。
【0038】
パターン化された透明導電膜
上記の感光性透明導電膜形成用塗布液を用い、90℃で20分間乾燥した。その後、実施例1に準じて現像を試みた。しかしながら、現像時に塗膜が膨潤、剥離してしまい、アルカリ水溶液による現像は不可能であった。
【0039】
透明導電膜の評価
以上の実施例1〜5で得られた透明導電膜の膜厚を触針式膜厚測定装置(DEKTAK303)、表面抵抗を四端子法抵抗測定装置(三菱化学(株)製ロレスタAP)、波長550nmの光透過率を分光光度計(日本分光(株)製V−570)、膜硬度を鉛筆硬度計(太平理化工業(株)製)を用い、パターン加工精度を光学顕微鏡観察用により、それぞれ評価した。その結果を表−1に示した。
【0040】
【表1】
【0041】
【発明の効果】
本発明の感光性透明導電膜形成性塗布液は、透明導電膜形成材料として、InとSnを含む化合物と有機酸から生成したヒドロキシ化合物に有機配位子が配位したキレート錯体を含有するので、安価で、塗布液の安定性に優れている。
また、この塗布液を基板上に塗布・乾燥し、該乾燥膜を露光・現像してパタ−ン化し、さらに焼成して得られる、錫ドープ酸化インジウムからなる感光性透明導電膜は、透明性、導電性および塗膜の機械的強度に優れており、ディスプレイの表示素子などの電極材料に特に適している。さらに、このパターン化された透明導電膜の製造方法は、成膜時の作業性が良く、作業安全性に優れ、非常に簡易な工程で微細なパターン化された透明導電膜を作製することができ、しかも焼成炉および環境を汚染する虞がない。
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板上にパターン化された透明導電膜を形成可能な感光性透明導電膜形成用塗布液、パターン化された透明導電膜、および該透明導電膜の製造方法に関する。さらに詳しくは、透明導電膜形成材料として錫ドープ酸化インジウムのキレート錯体を含有する感光性透明導電膜形成用塗布液、該塗布液を用いて形成された優れた透明性と高い導電性を兼ね備えたパターン化された透明導電膜、および該透明導電膜の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、LCD、EL、PDPなどのディスプレイ用の表示素子透明電極やタッチパネルの透明電極などに使用されるパターン化された透明導電膜の形成材料として、錫ドープ酸化インジウム(以下、「ITO」と表記する場合がある)材料が知られている。
【0003】
このITO材料からなるパターン化された透明導電膜は、ITO材料から真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法により均一膜を形成した後、フォトレジストによりレジストパターンを形成し、さらに酸エッチングすることにより形成されている。
しかし、上記の真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法は、装置が高価で複雑であり、コストと量産性に問題がある。
【0004】
これに対して、工程が短かく、かつ製造コストが低い方法として、インジウム化合物と錫化合物を含む溶液中に感光性樹脂を添加した感光性透明導電膜形成用塗布液を用い、塗布、乾燥、露光、現像、焼成してパターン化された透明導電膜を形成する方法(以下、「塗布法」と表記する場合がある)がある。しかし、入手しやすい硝酸インジウム、塩化インジウムなどの無機塩を溶媒に溶解した塗布液を用いて透明導電膜を形成すると膜の白濁を生じ、得られた膜の機械的強度が弱い。
【0005】
他の塗布法として、金属アルコキシドと感光性樹脂とを含む感光性透明導電膜形成用塗布液を用いる方法があるが、原料が非常に高価であり、また加水分解され易く塗布液の安定性に問題がある。
さらに他の塗布法として、インジウム、錫のアセチルアセトナートなどのキレート錯体と感光性樹脂とを含む感光性透明導電膜形成用塗布液を用いる方法があるが、溶解性の良い溶媒がなく、厚膜化すると錯体が析出して膜の白濁を生じ、膜の機械的強度が弱い。
【0006】
そこで、これらの塗布法の改良方法として、膜の白濁防止、機械的強度の向上、塗布液の安定性を確保するために、インジウム塩および錫塩に、β−ジケトン、アミノアルコールおよび多価アルコール類などの有機配位子を有機溶媒中で配位させた化合物を含む感光性透明導電膜形成用塗布液を用いる方法がある。
しかしながら、この改良方法にあっても、インジウム塩および錫塩として、一般に、硝酸塩や塩化物が使用されるため焼成時にNOxや塩素ガスなどの腐食性ガスが発生し、焼成炉および環境を汚染するという問題がある。また、それらの塩は結晶水を含むため、パターン化の際、塗膜が水に対して弱く、一般的なアルカリ水溶液に浸食される。そのため、感光性樹脂を溶解可能な有機溶剤でしか現像できず、作業安全性に問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来の技術が有する問題点を解決することにあり、より具体的には、安価で、安定性に優れた感光性透明導電膜形成用塗布液;該感光性透明導電膜形成用塗布液を用いて形成された透明性、導電性、および塗膜の機械的強度に優れたパターン化された透明導電膜;ならびに、成膜時の作業性が良く、作業安全性に優れ、非常に簡易な工程で微細にパターン化された透明導電膜を作製することができ、しかも焼成炉および環境を汚染する虞がない前記の透明導電膜の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、透明導電膜形成材料として特定のITO系化合物を使用することにより、上記の課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、インジウム(In)と錫(Sn)を含む化合物と有機酸から生成したヒドロキシ化合物に有機配位子が配位したキレート錯体と、紫外線硬化型または紫外線崩壊型の感光性樹脂と、溶剤とを少なくとも含有することを特徴とする感光性透明導電膜形成用塗布液を提供する。
【0009】
ここに、InとSnとを含む化合物は錫ドープ酸化インジウムであることが好ましく、また、有機酸は酢酸であることが好ましい。特に、前記のヒドロキシ化合物としては、次の化学式(1):
{In(AcO)2(OH)}x・{Sn(AcO)2}1-x (1)
(式中のAcはアセチル基であり、xは0.86≦x≦0.96を満足する数である)
で表わされるものが好ましい。また、有機配位子は、β−ジケトン、アミノアルコールおよび多価アルコール類の中から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
【0010】
塗布液中のInとSnの含有量は、錫ドープ酸化インジウムに換算して、該塗布液重量に基づき、1〜20重量%であることが好ましい。また、塗布液中の前記の紫外線硬化型または紫外線崩壊型の感光性樹脂の含有量は、該塗布液重量に基づき、1〜20重量%であることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、上記の感光性透明導電膜形成用塗布液を基板上に塗布・乾燥し、該乾燥膜を露光・現像してパタ−ン化し、焼成して得られた錫ドープ酸化インジウムからなることを特徴とするパターン化された透明導電膜を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、上記の感光性透明導電膜形成用塗布液を基板上に塗布・乾燥し、該乾燥膜上にフォトマスクを設置し、紫外線を照射して露光した後、アルカリ水溶液にて現像してパタ−ン化し、500℃以上の温度で焼成することを特徴とするパターン化された透明導電膜の製造方法を提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、実施の形態を掲げ、本発明を詳細に説明する。なお、この実施の形態は発明の趣旨をよりよく理解させるためのものであり、特に限定がない限り、本発明の内容を制限するものではない。
【0014】
透明導電膜形成用塗布液
本発明の感光性透明導電膜形成用塗布液は、InとSnを含む化合物と有機酸から生成したヒドロキシ化合物に有機配位子が配位したキレート錯体と、紫外線硬化型または紫外線崩壊型の感光性樹脂と、前記キレート錯体と前記感光性樹脂を溶解する溶剤とを少なくとも含有している。
ここに、InとSnを含む化合物としては、特に限定されるものではなく、例えばInとSnとの酸化物、InとSnとの水酸化物などを使用することができ、特にInとSnとの酸化物、なかでも錫ドープ酸化インジウム(ITO)は、有機酸との脱水反応性に優れるなどの理由から好適に使用される。
【0015】
また、有機酸も特に限定されるものでなく、例えば酢酸、マレイン酸、プロピオン酸、酪酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸などを好適に使用することができ、特に酢酸は、分子量が小さいので、透明導電膜形成時の前記キレート錯体の熱分解温度を低くできるので好適に使用される。
【0016】
上記ヒドロキシ化合物に配位する有機配位子としては、β−ジケトン、アミノアルコールおよび多価アルコール類が好適に使用できる。β−ジケトンの具体例としては、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチルなどが挙げられ、アミノアルコールの具体例としては、ジエタノールアミン、2−アミノエタノール、トリエタノールアミンなどが挙げられ、また、多価アルコール類の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールなどが挙げられる。これらの有機配位子の中でも、塗布液の安定性および錯体の熱分解性の点から、β−ジケトンとしてアセチルアセトン、アミノアルコールとしてジエタノールアミン、多価アルコール類としてエチレングリコールが特に好ましい。
【0017】
以下、InとSnを含む化合物としてITOを、有機酸として酢酸を用いた場合を好適例として掲げ、本発明をさらに詳細に説明する。
前記のヒドロキシ化合物は、ITOと酢酸とを酢酸の沸点(110℃)下で、例えば2時間〜4時間、還流し反応させることにより調製することができる。このようにして得られたヒドロキシ化合物から調製される感光性透明導電膜形成用塗布液は、インジウムの硝酸塩または塩化物、および、錫の硝酸塩または塩化物から調製される透明導電膜形成用塗布液とは対照的に、塗布液中に硝酸イオンや塩素イオンが残留することがなく、透明導電膜の形成過程で焼成時にNOxや塩素ガスなどの腐食性ガスが発生せず、さらに前記の感光性樹脂を添加した際、酸性が強くなく、塗布液の安定性に優れるので好ましい。また、このヒドロキシ化合物はその分子中に結晶水を含まないので、水が実質的に塗膜中に残留することがなく、現像時にアルカリ水溶液を使用しても膜の耐水性が低下しないので好ましい。
【0018】
前記ヒドロキシ化合物としては、前記化学式(1)で表わされるものが好ましい。化学式(1)において、xの値が0.96より大きいと、錫(Sn)のドーバントとしての効果がなく、電子のキャリア濃度を高くできず抵抗値が低くならない。また、前記xの値が0.86より小さいと、逆にSnが不純物としてIn2O3粒子の粒界に析出し、抵抗値を高くする原因となり、好ましくない。
【0019】
有機配位子の添加量は、インジウム原子1モルに対して2モル以上である。添加量がこれより少ないと完全なキレート錯体が合成されず、未反応のヒドロキシ化合物が残留する。
キレート錯体の合成は、高温下、例えば有機配位子の沸点下で約2時間〜約4時間還流して合成することが好ましい。常温で合成するとキレート化が不十分で塗布液の安定性に問題がある。
【0020】
感光性透明導電膜形成用塗布液中のInとSnの含有量は、ITO換算で、塗布液重量に基づき、1〜20重量%が好ましい。より好ましい含有量は、3〜7重量%である。含有量がこれよりも少ないと焼成して得られる透明導電膜の膜厚が薄く、表面抵抗値が高くなる。逆に、これよりも含有量が多いと得られる透明導電膜の膜が厚くなり過ぎ、クラックが発生して緻密な膜が得られない。
【0021】
透明導電膜形成用塗布液中に含有せしめる感光性樹脂は、格別限定されることはなく、一般に透明導電膜の形成に用いられる紫外線硬化型のネガ型感光性樹脂、および紫外線崩壊型のポジ型感光性樹脂を使用することができる。紫外線硬化型のネガ型感光性樹脂の具体例としては、光重合性アクリル系樹脂などが挙げられ、また、紫外線崩壊型のポジ型感光性樹脂の具体例としてはノボラック系樹脂などが挙げられる。
透明導電膜形成用塗布液中の感光性樹脂の含有量は、塗布液重量に基づき、通常1〜20重量%、好ましくは5〜10重量%である。含有量がこれよりも少ないと紫外線による膜の硬化または崩壊が十分に行われず良好なパターンが得られず、逆に、これよりも多いと焼成後のITO膜が多孔質となり緻密な膜が得られない。
【0022】
透明導電膜形成用塗布液中に溶媒として含有せしめる溶剤としては、前記キレート錯体および前記の感光性樹脂を溶解できるものであれば特に限定されないが、塗工性を考慮して、1−プロパノール、2−プロパノール、ベンジルアルコールなどのアルコール類、アセチルアセトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸3−メトキシブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノアセタートなどのエステル類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類などの中沸点または高沸点有機溶媒を使用することが好ましい。
【0023】
パターン化された透明導電膜およびその製造方法
パターン化された透明導電膜は、前記感光性透明導電膜形成用塗布液を基板上に塗布、乾燥した後、露光・現像してパターン化し、焼成することによって作成される。
透明導電膜形成用塗布液を塗布するには、公知の方法が採用でき、例えば、ディップコート法、スピンコート法、ロールコート法などが採られる。塗布液の塗布量は、形成される乾燥透明導電膜の膜厚が好ましくは50〜500nm、より好ましくは100〜300nmとなるようにする。透明導電膜の膜厚がこれよりも薄いと表面抵抗値が高く、逆にこれよりも厚いと膜にクラックが発生する。
【0024】
塗布膜は、乾燥した後、露光・現像してパターン化される。すなわち、塗布膜上に所定のパターンを有するフォトマスクを設置して紫外線を照射して露光し、次いで、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイト、ジエタノールアミンなどの有機アルカリ、または水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどの無機アルカリの水溶液で現像してパターン化する。次いで、パターン形成膜を500℃以上の温度で30分〜60分程度焼成することにより、透明導電膜が作製される。焼成時の雰囲気は特に制限されず、通常、大気中で行う。
上記の方法によれば、非常に簡易な工程で、安全かつ低コストでパターン化された透明導電膜を作製することができる。また、焼成時にNOxや塩素ガスなどの腐食性ガスの発生がないため、焼成炉および環境を汚染する虞がない。
【0025】
【実施例】
以下、実施例および比較例を掲げ、本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1
透明導電膜形成用塗布液
粒径0.1μm〜1.0μmのITO微粉末(住友大阪セメント(株)製)800gと、酢酸4000gを5リットルのセパラブルフラスコに入れ、酢酸の沸点(110℃)下で3時間還流し、インジウムと錫を含むヒドロキシ酢酸塩、{In(AcO)2(OH)}0.90・{Sn(AcO)2}0.1(白色沈殿物)を得た。
得られたヒドロキシ酢酸塩を濾別しアルコールで洗浄後、60℃で乾燥した。乾燥したヒドロキシ酢酸塩26.7g、アセチルアセトン86.6gおよびベンジルアルコール86.7gを500mlのセパラブルフラスコに入れ、沸点(140℃)下で2時間還流してキレート錯体溶液を得た。
室温まで冷却後、この溶液に紫外線硬化型のネガ型感光性樹脂溶液(CSP−S004、フジフィルムオーリン社製、樹脂固形分31.4重量%)71.7gを添加し、1時間良く攪拌して、感光性透明導電膜形成用塗布液を得た。
この感光性透明導電膜形成用塗布液は、3ヶ月間静置しても感光性樹脂の反応、白濁、沈殿の生成などが認められず安定であり、また、粘度変化も認められなかった。
【0026】
パターン化された透明導電膜
上記の感光性透明導電膜形成用塗布液をスピンコーター(400rpm、20sec.)でソーダライムガラス基板上に塗布した後、120℃で15分間乾燥した。乾燥膜上にパターン加工精度評価用のフォトマスク(線幅:2、3、4、5、……、15μm、線間:2、3、4、5、……、15μm)を設置し、紫外線(480mJ/cm2)を照射後、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイト水溶液中で2分間パドル現像して膜の未露光部分を溶解除去した。
こうして得られたパターン形成膜を電気炉中(大気雰囲気)で580℃、1時間焼成して微細にパターン化されたITOからなる透明導電膜を作成した。なお、焼成時に発生するガスは二酸化炭素と水蒸気のみであり、腐食性ガスは発生しなかった。
【0027】
実施例2
感光性透明導電膜形成用塗布液
実施例1で得られたキレート錯体溶液に紫外線崩壊型のポジ型感光性樹脂溶液(AZ RFP―210K、クラリアント社製、樹脂固形分29.3重量%)と、溶媒としてベンジルアルコール81.5gとを添加し、1時間良く攪拌して、感光性透明導電膜形成用塗布液を得た。
この感光性透明導電膜形成用塗布液は、3ヶ月間静置しても感光性樹脂の反応、白濁、沈殿の生成などが認められず安定であり、また、粘度変化も認められなかった。
【0028】
パターン化された透明導電膜
上記の感光性透明導電膜形成用塗布液を用い、90℃で20分間乾燥した他は実施例1に準じて、パターン化された透明導電膜を作成した。なお、焼成時に発生するガスは二酸化炭素と水蒸気のみであり、腐食性ガスは発生しなかった。
【0029】
実施例3
感光性透明導電膜形成用塗布液
キレート錯体の還流合成時に、有機配位子としてジエタノールアミン22.8gと、溶剤としてベンジルアルコール150.5gを添加した他は実施例1に準じて、感光性透明導電膜形成用塗布液を調製した。
この感光性透明導電膜形成用塗布液は、3ヶ月間静置しても感光性樹脂の反応、白濁、沈殿の生成などが認められず安定であり、また、粘度変化も認められなかった。
【0030】
パターン化された透明導電膜
上記の感光性透明導電膜形成用塗布液を用いた他は実施例1に準じて、パターン化された透明導電膜を作成した。なお、焼成時に発生するガスは二酸化炭素と水蒸気のみであり、腐食性ガスは発生しなかった。
【0031】
実施例4
感光性透明導電膜形成用塗布液
キレート錯体の還流合成時に、有機配位子としてエチレングリコール26.8gと、溶剤としてベンジルアルコール146.5gを用いた他は実施例1に準じて、感光性透明導電膜形成用塗布液を調製した。
この感光性透明導電膜形成用塗布液は、3ヶ月間静置しても感光性樹脂の反応、白濁、沈殿の生成などが認められず安定であり、また、粘度変化も認められなかった。
【0032】
パターン化された透明導電膜
上記の感光性透明導電膜形成用塗布液を用いた他は実施例1に準じて、パターン化された透明導電膜を作成した。なお、焼成時に発生するガスは二酸化炭素と水蒸気のみであり、腐食性ガスは発生しなかった。
【0033】
実施例5
感光性透明導電膜形成用塗布液
キレート錯体の還流合成時に、有機配位子としてジエチレングリコール23.0gと、溶剤としてベンジルアルコール150.3gを用いた他は実施例1に準じて、透明導電膜形成用塗布液を調製した。
この感光性透明導電膜形成用塗布液は、3ヶ月間静置しても感光性樹脂の反応、白濁、沈殿などの生成などが認められず安定であり、また、粘度変化も認められなかった。
【0034】
パターン化された透明導電膜
上記の感光性透明導電膜形成用塗布液を用いた他は実施例1に準じて、実施例5のパターン化された透明導電膜を得た。なお、焼成時に発生するガスは二酸化炭素と水蒸気のみであり、腐食性ガスは発生しなかった。
【0035】
比較例1
感光性透明導電膜形成用塗布液
硝酸インジウム3水和物94.7g、シュウ酸錫5.6gおよびアセチルアセトン105.3gを500mlのセパラブルフラスコに入れ、沸点(110℃)下で2時間還流してキレート錯体溶液を得た。室温まで冷却後、酢酸3−メトキシブチル117.7gと、紫外線硬化型のネガ型感光性樹脂溶液(CSP−S004、フジフィルムオーリン社製、樹脂固形分31.4重量%)47.2gを添加し、1時間良く攪拌して感光性透明導電膜形成用塗布液を調製した。
【0036】
パターン化された透明導電膜
上記の感光性透明導電膜形成用塗布液を用い、120℃で12分間乾燥した。その後、実施例1に準じて現像を試みた。しかしながら、現像時に塗膜が膨潤、剥離してしまい、アルカリ水溶液による現像は不可能であった。
【0037】
比較例2
感光性透明導電膜形成用塗布液
比較例1で調製したキレート錯体溶液に、酢酸3−メトキシブチル114.3gと、紫外線崩壊型のポジ型感光性樹脂溶液(AZ RFP―210K、クラリアント社製、樹脂固形分29.3重量%)50.6gを添加し、1時間良く攪拌して感光性透明導電膜形成用塗布液を調製した。
【0038】
パターン化された透明導電膜
上記の感光性透明導電膜形成用塗布液を用い、90℃で20分間乾燥した。その後、実施例1に準じて現像を試みた。しかしながら、現像時に塗膜が膨潤、剥離してしまい、アルカリ水溶液による現像は不可能であった。
【0039】
透明導電膜の評価
以上の実施例1〜5で得られた透明導電膜の膜厚を触針式膜厚測定装置(DEKTAK303)、表面抵抗を四端子法抵抗測定装置(三菱化学(株)製ロレスタAP)、波長550nmの光透過率を分光光度計(日本分光(株)製V−570)、膜硬度を鉛筆硬度計(太平理化工業(株)製)を用い、パターン加工精度を光学顕微鏡観察用により、それぞれ評価した。その結果を表−1に示した。
【0040】
【表1】
【0041】
【発明の効果】
本発明の感光性透明導電膜形成性塗布液は、透明導電膜形成材料として、InとSnを含む化合物と有機酸から生成したヒドロキシ化合物に有機配位子が配位したキレート錯体を含有するので、安価で、塗布液の安定性に優れている。
また、この塗布液を基板上に塗布・乾燥し、該乾燥膜を露光・現像してパタ−ン化し、さらに焼成して得られる、錫ドープ酸化インジウムからなる感光性透明導電膜は、透明性、導電性および塗膜の機械的強度に優れており、ディスプレイの表示素子などの電極材料に特に適している。さらに、このパターン化された透明導電膜の製造方法は、成膜時の作業性が良く、作業安全性に優れ、非常に簡易な工程で微細なパターン化された透明導電膜を作製することができ、しかも焼成炉および環境を汚染する虞がない。
Claims (9)
- インジウム(In)と錫(Sn)を含む化合物と有機酸から生成したヒドロキシ化合物に有機配位子が配位したキレート錯体と、紫外線硬化型または紫外線崩壊型の感光性樹脂と、溶剤とを少なくとも含有することを特徴とする感光性透明導電膜形成用塗布液。
- 前記のInとSnを含む化合物が錫ドープ酸化インジウムである請求項1記載の感光性透明導電膜形成用塗布液。
- 前記の有機酸が酢酸である請求項1または請求項2に記載の感光性透明導電膜形成用塗布液。
- 前記のヒドロキシ化合物が次の化学式(1)で表わされる請求項1記載の感光性透明導電膜形成用塗布液。
{In(AcO)2(OH)}x・{Sn(AcO)2}1-x (1)
(式中のAcはアセチル基であり、xは0.86≦x≦0.96を満足する数である) - 前記の有機配位子は、β−ジケトン、アミノアルコールおよび多価アルコール類の中から選ばれた少なくとも1種である請求項1記載の感光性透明導電膜形成用塗布液。
- InとSnの含有量は、錫ドープ酸化インジウムに換算して、該塗布液重量に基づき、1〜20重量%である請求項1〜5のいずれかに記載の感光性透明導電膜形成用塗布液。
- 前記の紫外線硬化型または紫外線崩壊型の感光性樹脂の含有量は、該塗布液重量に基づき、1〜20重量%である請求項1〜6のいずれかに記載の感光性透明導電膜形成用塗布液。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の感光性透明導電膜形成用塗布液を基板上に塗布・乾燥し、該乾燥膜を露光・現像してパタ−ン化し、焼成して得られた錫ドープ酸化インジウムからなることを特徴とするパターン化された透明導電膜。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の感光性透明導電膜形成用塗布液を基板上に塗布・乾燥し、該乾燥膜上にフォトマスクを設置し、紫外線を照射して露光した後、アルカリ水溶液にて現像してパタ−ン化し、500℃以上の温度で焼成することを特徴とするパターン化された透明導電膜の製造方法。
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