JP3993375B2 - 椅子 - Google Patents

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Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、椅子の構造に関し、より詳しくは、座り心地を良くするための椅子の構造に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
現在、オフィスやキャンプなどで使用される椅子として、背もたれ部や着座部分に布地を取り付けて構成するようにしたものが存在している。このような椅子は、背もたれ部や着座部分の外縁部に金属製フレームや木枠を設け、このフレームや木枠に直接布地を取り付けて構成するようにしている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このような椅子では、フレームや木枠に直接布地を取り付けて構成しているので、着座した場合にこれらのフレームや木枠と布地との境界部分に急激な段差を生じ、この段差の部分に違和感を生じさせてしまうという問題を有していた。
【０００４】
そこで、本発明は上記問題に着目してなされたもので、着座部や背もたれ部などに張り地を取り付けるようにした椅子において、その張り地の取付部分近傍における接触感を良くするような椅子を提供することを目的とするものである。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、身体接触部分に設けられた布状の張り部材を背もたれ下部フレーム及び当該背もたれ下部フレームに対して後傾し得る背もたれ上部フレームに亘って取り付けて構成した椅子において、背もたれ下部フレームに略Ｕ字形状をした弾性部材を取り付けるとともに背もたれ上部フレームに下向きの略Ｕ字状に設けた弾性部材を取り付け、当該弾性部材の自由端同士を互いにオーバーラップするように設け、前記張り部材に荷重をかけた場合に、当該張り部材の取付端側からフレームとの接触領域を拡大させるような退避部を前記フレームに設けて構成したものである。
【０００６】
このように、フレームに張り部材を徐々に沿わせるための退避部を設けるようにしたので、張り部材の急激な折れ曲がり部分がなくなり、この近傍における接触の違和感を少なくすることができるばかりでなく、張り部材の磨耗も防止することができる。なお、この退避部としては、想定される着座者の体格や体重に応じた湾曲部や傾斜部を設けるようにすればよい。また、この場合、退避部を設けたフレームを背もたれ部などの身体接触部分の四隅部分に設けるようにすれば、フレームとの接触部分を極力少なくすることができるようになる。
【０００７】
また、好ましくは、このように張り部材を設けて構成した椅子において、背もたれ下部フレーム及び背もたれ上部フレームに一端側を自由端とし他端側を固定端として片持梁状の弾性部材をそれぞれ取り付け、当該弾性部材の上に張り部材を設けるとともに当該弾性部材の自由端同士を互いにオーバーラップするように設け、当該弾性部材の撓み許容側に、当該弾性部材の固定端側から自由端側に向けて広げて構成した退避空間を設けて構成する。
【０００８】
すなわち、身体接触部分である着座部分や背もたれ部分などに布地などを張り付ける場合、まず、一端側を自由端とし他端側を固定端として弾性部材を取り付け、この上に布地などを設けるようにする。そして、その際、弾性部材における固定端から自由端側に向けて撓みを許容するための退避空間を設ける。このようにすれば、例えば、弾性部材として撓み易いものを使用した場合であっても、その弾性部材が退避空間内で変形するので、身体接触部分に違和感を与えることがなくなる。
【０００９】
また、この弾性部材の撓み許容方向側に、弾性部材の撓みに沿った湾曲部を有するフレームを設ければ、仮に、弾性部材が大きく撓んだ場合であっても、この湾曲部に弾性部材を沿わせることができ、これによって、身体接触部分に滑らかな感触を与えることができるばかりでなく、撓みに基づく弾性部材の劣化を防止することができる。
【００１０】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。図１は、本発明の一実施の形態を示す椅子１の要部を示す斜視図である。この椅子１は、主にベース脚２に取り付けられた支基３と、この支基３に設けられたリンク６およびリンク７と、このリンク６およびリンク７に取り付けられた着座フレーム４、および、この着座フレーム４の後方に設けられた背もたれフレーム５とによって構成したものである。また、この椅子１には、着座フレーム４および背もたれフレーム５に対して弾性力を付与するガスシリンダや、その他にもカバーやクッションなどを適宜取り付けるようにしている。
【００１１】
この支基３は、逆三角形状のアルミ部材などで構成したものであり、その下端をベース脚２に取り付けるとともに、その前端部分に軸６１を介してリンク６を取り付けたものである。このリンク６は、着座フレーム４の前端に設けた軸４０および支基３に設けられた軸６１とによって回転しながら動くように構成されたものである。また、リンク７は、支基３の斜辺略中央部分に設けられたトーションバー７２の軸７１上に一端を固定し、リンク７の他端についても着座フレーム４の後方近傍で回転できるように取り付けている。なお、このトーションバー７２には、軸７１に回転力を与えるように設けており、常時このバネ力によってリンク７の軸８側を椅子１の前方側（Ｂ側）に回転させるようにしている。
【００１２】
また、このリンク７の上端裏面側には、背もたれ上部フレーム５５との間に連結されたガススプリング９１が設けられており、常時このガスの圧力によって背もたれフレーム５を前方側（Ｂ側）に押圧するようにしている。また、このガススプリング９１には、そのスプリング軸を挟み込んで固定するための機構が設けられており、図示しないレバーの操作によってガススプリング９１をフリー状態と固定状態とに切り替えられるようにしている。
【００１３】
このリンク７の上端側に設けられている軸８は、背もたれ下部フレーム５０と背もたれ上部フレーム５５を回転可能に取り付けるようにしたものである。この背もたれ下部フレーム５０は、リンク７の略延長方向上に延びる坐骨対応フレーム５１と、この坐骨対応フレーム５１から屈曲して、上方もしくはＢ方向に傾斜して延びる腰骨対応フレーム５２と、この腰骨対応フレーム５２を連結する連結部材５３とを備え、さらに、この２本の腰骨対応フレーム５２の先端部分にも、着座者の荷重作用方向（Ａ方向）に対して、弾性部材５４の固定端側から円弧状に離れるようにした退避部たる湾曲部５２ａを設けて、弾性部材５４の退避空間Ｓを設けるようにしている。
【００１４】
この弾性部材５４は、連結部材５３から腰骨対応フレーム５２の湾曲部５２ａ直前にかけて取り付けられたものであり、上向きに開口した略Ｕ字形状をした薄い合成樹脂などによって構成されたものである。この弾性部材５４は、張り部材９とともに、腰骨対応フレーム５２や連結部材５３に対してネジＰによって固定され、さらに、この弾性部材５４の自由端５４ａについても、張り部材９を取り付けていない状態で腰骨対応フレーム５２上にその弾性部材５４が位置するようにし、この弾性部材５４の戻り反力によって張り部材９を内側から押し出すようにしている。また、この略Ｕ字状に構成された弾性部材５４は、左右の腰骨対応フレーム５２から内側に向けて突出するようにしており、さらに、連結部材５３の上方にも自由端を設けることによって略Ｕ字状に構成された内部にクッション性を持たせるようにしている。
【００１５】
一方、軸８に取り付けられている背もたれ上部フレーム５５は、背もたれ下部フレーム５０と同様に、その下部を屈曲させて上方に向けて構成するとともに、この屈曲部分から背もたれ下部フレーム５０の後方を通って、着座者の肩近傍まで延びるように設けるようにしたものである。また、この背もたれ上部フレーム５５の上端側には、円弧状に湾曲させた退避部たる湾曲部５６を設けるようにしており、弾性部材５９の自由端側の撓みを許容する方向に湾曲させて、この弾性部材５９と湾曲部５６との間に退避空間Ｓを設けるようにしている。更に、この左右に設けられた湾曲部５６の下端側には、左右のフレームを連結補強するための連結部材５８を設け、この湾曲部５６の上方にも、連結部材５７を設けるようにしている。この連結部材５７は、中央部分を湾曲して構成したものであり、着座者の肩部分を包むように支持させるようにしたものである。
【００１６】
この連結部材５７および左右のフレームに取り付けられる弾性部材５９は、下方に設けられた弾性部材５４と同様に、下向きの略Ｕ字状に設けた薄板状の樹脂で構成したものであり、その上端側を張り部材９とともにネジＰを用いて連結部材５７に固定して、自由端側が湾曲部５６上で撓むようにしている。また、左右のフレームの内側および連結部材５７の下方についても、弾性部材５９の自由端５９ａ側がこれらのフレームから突出するように設けており、これによって略Ｕ字状に設けられた内部空間にクッション性を持たせるようにしている。更に、この弾性部材５９の自由端５９ａ側は、対向して設けられた弾性部材５４の自由端５４ａ上にオーバーラップするように設けられており、背もたれ上部のみが後傾した場合であっても、この弾性部材５９の自由端５９ａが対向する弾性部材５４の自由端５４ａを後方に押圧して、上下の弾性部材５４、５９が一体として段差のない撓み曲線を形成するようにしている。
【００１７】
符号９は、これらの弾性部材５４、５９上に設けられる張り部材を示したものであり、例えば、メッシュを設けたナイロン製の部材などで構成したものである。この張り部材９は、弾性部材５４、５９を覆うように背もたれ上部フレーム５５および背もたれ下部フレーム５０に設けられるものであり、例えば、弾性部材５４、５９を内部に包んで一体としてネジＰを用いて固定するようにしたものである。
【００１８】
このように背もたれフレーム５や弾性部材５４・５９を構成することによって、図２に示すように、張り部材９を背もたれ部に取り付けた場合に、張り部材９が弾性部材５４、５９によって内側から押圧されるようになり、これによって、背もたれ部分に対するクッション性を良くすることができる。さらに、着座することに基づいて弾性部材５４、５９が大きく撓んだ場合であっても（図３）、弾性部材５４、５９が湾曲部５２ａ、５６に沿って撓み、背もたれ部分に対する局所的な違和感をなくすことができる。また、このような椅子において、背もたれ上部フレーム５５だけを後傾させた場合、すなわち、着座フレーム４を固定させるとともにガススプリング９１をフリー状態として背もたれ上部フレーム５５を軸８を中心に回転させるようにした場合（図４）であっても、弾性部材５４が湾曲部５２ａに沿って撓みながらその張り部材９の長さの変化を吸収できるようになるので、背もたれ部分の表面を滑らかにすることができる。
【００１９】
このように、本実施の形態によれば、身体接触部分に張り部材９を設けて構成した椅子１において、背もたれ上部フレーム５５と背もたれ下部フレーム５０とに湾曲部５６、５２ａを設け、この上方に張り部材９を設けるようにしたので、張り部材９に荷重をかけた場合であっても、その湾曲部５６、５２ａに張り部材９を滑らかに沿わせることができる。
【００２０】
また、一端側を自由端５４ａ、５９ａとし他端側を固定端として弾性部材５４、５９を取り付け、この弾性部材５４、５９の撓む方向（Ａ方向）側に、固定端側から自由端５４ａ、５９ａ側に向けて徐々に広がるような退避空間Ｓを形成したので、仮に弾性部材５４、５９の撓みが大きいものであっても、その弾性部材５４、５９を退避空間Ｓに沿って変形させることができ、身体接触部分に違和感をより少なくすることができる。
【００２１】
また、本実施の形態では、この弾性部材５４、５９の下方に、弾性部材５４、５９の撓みに沿った湾曲部５４ａ、５６を有するフレームを設けたので、弾性部材５４、５９が大きく撓んだ場合であっても、この湾曲部５４ａ、５６に弾性部材５４、５９を沿わせることができ、これによって、身体接触部分に滑らかな感触を与えることができるばかりでなく、撓みに基づく弾性部材５４、５９や張り部材９の劣化を防止することができる。
【００２２】
なお、本実施の形態では、椅子１の背もたれ部分について説明したが、これに限らず、椅子１の着座部分に同様の構成を採用しても良い。この場合、着座部分が大きく撓むのでソファーのような座り心地を与えることができる。
【００２３】
また、本実施の形態では、フレームによって湾曲部を構成するようにしたが、これに限らず、フレーム以外の別の部材、例えば、クッション性を有するゴム部材などによって湾曲部を構成することもできる。このように構成した場合は、弾性部材５４、５９が大きく撓んだ場合、まず、この弾性部材５４、５９が湾曲部に接触し、更に、ゴム部材を押圧することによって着座者の接触感を和らげることができるようになる。
【００２４】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したような形態で実施され、以下に記載されるような効果を奏する。
【００２５】
すなわち、本発明の椅子は、身体接触部分に設けられた張り部材をフレームに取り付けて構成した椅子において、張り部材に荷重をかけた場合に、この張り部材の取付端側からフレームとの接触領域を拡大させるような退避部をフレームに設けるようにしたので、張り部材の急激な折れ曲がりを防止することができ、これによって接触の違和感を少なくすることができる。
【００２６】
また、一端側を自由端とし他端側を固定端として弾性部材を取り付け、この弾性部材の上に張り部材を設けるとともに、弾性部材の撓み許容側に弾性部材の固定端側から自由端側に向けて広げて構成した退避空間を設けので、仮に、弾性部材が撓み易いものであっても、その弾性部材が退避空間内で変形し、身体接触部分に違和感を与えることがなくなる。
【００２７】
更に、この弾性部材の下方に、弾性部材の撓みに沿った湾曲部を有するフレームを設けたので、弾性部材が大きく撓んだ場合であっても、この湾曲部に弾性部材が沿わせることができ、これによって、身体接触部分に滑らかな感触を与えることができるばかりでなく、撓みに基づく弾性部材の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の一実施の形態を示す椅子の要部斜視図。
【図２】同実施の形態を示す要部側面図。
【図３】図２における立位の着座状態を示した図。
【図４】同実施の形態における背もたれ上部フレームのみを後傾させた状態を示す図。
【符号の説明】
１・・・椅子
９・・・張り部材
５２ａ・・・退避部（湾曲部）
５４・・・弾性部材
５４ａ・・・自由端
５６・・・退避部（湾曲部）
５９・・・弾性部材
５９ａ・・・自由端
Ｓ・・・退避空間

Claims (3)

  1. 身体接触部分に設けられた布状の張り部材を背もたれ下部フレーム及び当該背もたれ下部フレームに対して後傾し得る背もたれ上部フレームに亘って取り付けて構成した椅子において、
    背もたれ下部フレームに略Ｕ字形状をした弾性部材を取り付けるとともに背もたれ上部フレームに下向きの略Ｕ字状に設けた弾性部材を取り付け、当該弾性部材の自由端同士を互いにオーバーラップするように設け、
    前記張り部材に荷重をかけた場合に、当該張り部材の取付端側からフレームとの接触領域を拡大させるような退避部を前記フレームに設けたことを特徴とする椅子。
  2. 身体接触部分に設けられた布状の張り部材を背もたれ下部フレーム及び当該背もたれ下部フレームに対して後傾し得る背もたれ上部フレームに亘って取り付けて構成した椅子において、
    背もたれ下部フレーム及び背もたれ上部フレームに一端側を自由端とし他端側を固定端として弾性部材をそれぞれ取り付け、当該弾性部材の上に張り部材を設けるとともに当該弾性部材の自由端同士を互いにオーバーラップするように設け、
    当該弾性部材の撓み許容側に、当該弾性部材の固定端側から自由端側に向けて広げて構成した退避空間を設けたことを特徴とする椅子。
  3. 前記退避空間が、前記弾性部材と当該弾性部材の撓みに沿った湾曲部を有するフレームによって構成された空間であることを特徴とする請求項２に記載の椅子。
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