JP3993083B2 - ファイバコリメータ及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ファイバコリメータ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図8は、従来のファイバコリメータの一例を示すもので、図中符号2は筐体を示し、また符号3はGRINレンズを示し、符号4は光ファイバ素線をそれぞれ示す。GRINレンズ3はセルフォックレンズとも呼ばれ、レンズ媒質内で屈折率が放物線状に変化しており、入射光をレンズ媒質内で放物線状に屈折させることができる。光ファイバ素線4は、キャピラリ6によりGRINレンズ3に接続されている。このGRINレンズ3と光ファイバ素線4とは、筐体2内に収容されており、筐体2は外枠の役割を果たす。
【0003】
このファイバコリメータ1は、光ファイバ素線4を伝搬した光をGRINレンズ3に通して放物線状に屈折させ、コリメート性(平行性)に優れた光ビームとして出射する機能を有する。このため、光ファイバ伝搬から空間伝播への切り替えを優れた光結合効率で行うことができ、光コネクタとして例えば光の分岐、結合、切り替え等を行う光回路に利用される。
【0004】
このファイバコリメータ1は、図8に示すように、筐体2とGRINレンズ3とを接着剤30で固定する方法や、鏡筒一体型レンズと筐体2とを溶接により接合する方法等によって製造される。鏡筒一体型レンズと筐体2とを溶接により接合する方法では、例えばレーザ等を用いて溶接し接合することになる。
しかし溶接により接合する方法は、製造に係る装置が非常に高価であり、製造コストが高くなってしまう。また、接合面を点で接合するため、接合面を完全に封止することができない。このためファイバコリメータ1内を外気と完全に遮断することができず、これによりファイバコリメータ1は、特に湿気による影響を受けることとなり、信頼性に欠ける問題がある。
また、レーザによる溶接で鏡筒一体型レンズと筐体2を仮固定した後、半田等で気密封止することもできるが、製造工程が増え、製造コストが高くなる問題がある。
【0005】
また筐体2とGRINレンズ3とを接着剤30で固定し、ファイバコリメータ1とする方法では、例えば光学接着剤等を用いて固定する(特許文献1参照。)。この方法では、接合面を完全に封止できるため湿気による影響を無くすることができる。
しかし光学接着剤などの接着剤30は、高温多湿の環境に非常に弱く、接着性の低下による強度低下や剥れが生じてしまうため、信頼性に欠ける問題がある。更に光学接着剤は高温度に耐えることができない。このため図8に示すような筐体2とGRINレンズ3とが接着剤30によって固定されたファイバコリメータ1では、光部品に実装する工程にて、半田やYAGレーザ等のように熱を与える方法を用いることができない問題がある。
【0006】
図9は、従来のファイバコリメータ1の他の一例を示す(特許文献2参照。)。このファイバコリメータ1では、非球面レンズ40が金属製の筐体2と一体モールドで成形されている。また光ファイバ素線4は金属製ファイバホルダ41の挿入孔に挿入、固定され、この光ファイバ素線4が固定された金属製ファイバホルダ41は、筐体2に溶接、固定されている。
金属製ファイバホルダ41と筐体2とはYAG溶接によって固定されており、上述したように、外気と完全に遮断することができず、湿気による影響を受けやすく、信頼性に欠ける問題がある。また製造に係る装置は非常に高価であり、製造コストが高くなってしまう。
また非球面レンズ40は、金属製の筐体2と一体モールドで成形されており、高い加工精度を必要とし、製造コストが更に高くなってしまう問題がある。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−196180号公報
【特許文献2】
特開平7−151934号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、上記した事情に鑑みなされたものである。すなわちレンズと筐体との接合面が強固に固定され、かつ完全に封止され湿気による影響が無く、これにより環境による特性の変動がほとんど無く、また耐熱性に優れ、光部品に実装する際に半田やYAGレーザを用いた簡便な方法が適用できるファイバコリメータを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため、請求項1にかかる発明は、光ファイバが接続されたレンズと、筐体を備え、前記レンズが前記筐体の端部側に接続されたファイバコリメータにおいて、
前記レンズと前記筐体とが、低融点ガラスにより接合され、かつ、該レンズの側面部が、該低融点ガラスにより被覆されており、該低融点ガラスの外周面が半球状であることを特徴とするファイバコリメータである。
【0010】
これによりレンズと筐体との接合面を完全に封止でき、ファイバコリメータ内を外気と遮断できる。このためファイバコリメータ内への湿気の進入を抑えることができ、湿気による光学特性の変動を低減できる。これにより環境による特性の変動がほとんど無く、高い信頼性を有するファイバコリメータが実現できる。
また、前記レンズの側面部が、前記低融点ガラスにより被覆されたことにより、レンズの側面のうち外部に晒される部分が少なくなり、衝撃等からレンズを保護することができる。このため例えば衝撃によってレンズ側面に欠けや傷、折れなどが発生することを無くすことができ、高い信頼性が実現できる。ここで前記したレンズの側面部は、レンズの側面全体を示す。
さらに、レンズと筐体とを強固に接着でき、優れた引張り強度が実現できる。このため、例えば光ファイバを把持してファイバコリメータを取り扱う場合のように、レンズに接続された光ファイバに引張力が加わってもレンズと筐体とが外れることがなく、この引張り力に耐えることができる。
さらにまた、前記低融点ガラスの外周面が半球状であることにより、上記した接合面における経路長を大きく設けることができ、ファイバコリメータ内への湿気の進入を無くすることができる。更に上記した接合面は、十分な接合面積を有することとなり、レンズを強固に筐体へ固定できる。
【0011】
請求項2にかかる発明は、接合面における前記ファイバコリメータの内部から外部に至る経路長が1mm以上であることを特徴とする請求項1に記載のファイバコリメータである。
ここで、前記した接合面は、筐体と低融点ガラスとの接合面、レンズと低融点ガラスとの接合面を示す。
【0012】
外気の湿気は、上記した接合面を通り、ファイバコリメータ内へ進入するため、上記した経路長は湿気の進入経路となる。上記した経路長を1mm以上とすることによって、ファイバコリメータ内への湿気の進入を無くすることができる。これにより環境による特性の変動がほとんど無く、高い信頼性を有するファイバコリメータが実現できる。更に接合部は十分な接合面積を有することとなり、レンズを筐体へ強固に固定できる。上記した経路長は、更に好ましくは、1〜3mmであり、最も好ましくは、1〜2mmである。このとき多量に低融点ガラスを使用することがなく経済的であり、かつファイバコリメータ内への湿気の進入をほぼ完全に無くすることができ、高い信頼性が実現できる。またレンズを筐体へ更に強固に固定できる。
【0013】
経路長が1mm未満のとき、ファイバコリメータ内への湿気の進入を抑えることができず、環境による特性の変動が生じてしまい、好ましくない。また経路長が3mmよりも長いとき、多くの低融点ガラスを用いる必要があるためコストが高くなり、また製造が困難となるため、好ましくない。
【0014】
請求項3にかかる発明は、前記低融点ガラスの線膨張係数が、前記レンズの線膨張係数と前記筐体の線膨張係数との範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載のファイバコリメータである。
温度が変化するとき、低融点ガラス、レンズ、筐体の線膨張係数の差によって接合面には熱応力が生じる。低融点ガラスは、レンズと筐体との間に位置しており、この低融点ガラスの線膨張係数をレンズの線膨張係数と筐体の線膨張係数との範囲とすることによって、低融点ガラス、レンズ、筐体の線膨張係数の差を小さくすることができ、接合面に生じる熱応力を低減できる。
このため熱応力による低融点ガラスのクラックの発生を防ぐことができ、これにより低融点ガラスの機械的強度の低下やレンズの割れ等がほとんど無く、高い信頼性を有するファイバコリメータが実現できる。
特に低融点ガラスの線膨張係数は、レンズの線膨張係数と筐体の線膨張係数との平均値にほぼ等しい値であることが更に好ましく、これにより線膨張係数の差による熱応力を更に低減でき、高い信頼性が実現できる。
【0015】
請求項4にかかる発明は、前記レンズは、その主面が前記筐体の端部から0.2〜0.4mm外部に位置して、前記低融点ガラスにより固定されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のファイバコリメータである。
これにより、低融点ガラスの外周面5aを半球状に形成しやすく、接合工程が簡便に行える。GRINレンズの主面3bが筐体の端部2aより0.2mm未満では、低融点ガラスの外周面5aを半球状に形成することが困難であり、好ましくない。またGRINレンズの主面3bが筐体の端部2aから0.4mmよりも離れているとき、GRINレンズの側面部3aを低融点ガラス5で被覆することが困難となり、必要となる低融点ガラス5の量も多くなるため、好ましくない。
【0019】
請求項にかかる発明は、前記低融点ガラスの軟化点が、250〜400℃であることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のファイバコリメータである。
これによりファイバコリメータを光部品へ実装する際、半田によるろう接や、YAGレーザを用いた溶接等の簡便な手段が適用でき、実装工程を簡便に行うことができる。低融点ガラスの軟化点は、更に好ましくは、300〜400℃であり、最も好ましくは、300〜350℃である。これにより筐体とレンズとを簡便に接合でき、光ファイバ被覆への悪影響も少なく、かつ耐熱性に優れ、熱によって低融点ガラスの接着性が低下しにくく、高温度でも使用できる。
【0020】
低融点ガラスの軟化点が250℃よりも低いとき、ファイバコリメータを光部品へ実装する際、YAGレーザを用いた簡便な手段が適用できず、実装工程が困難となり、好ましくない。低融点ガラスの軟化点が400℃よりも高い場合、ファイバコリメータの製造工程にて、軟化点よりも高い温度で低融点ガラスを部分加熱することが困難となり、拡散した熱によって光ファイバの被覆部分が焦げてしまう等の問題が生じるので、レンズと筐体とを接合することが難しくなるため、好ましくない。
【0021】
請求項にかかる発明は、光ファイバが接続されたレンズと、筐体を備え、前記レンズが前記筐体の端部側に接続されたファイバコリメータを製造する方法において、
低融点ガラスを接合面に配し、加熱して前記低融点ガラスを溶融した後、冷却固化して前記レンズと前記筐体とを接合するとともに、前記低融点ガラスの外周面を半球状とすることを特徴とするファイバコリメータの製造方法である。
これにより簡便に優れた信頼性を有するファイバコリメータを製造できる。
また、前記低融点ガラスの外周面を半球状とすることにより上記した接合面における経路長を大きく設けた構成とすることができるので、ファイバコリメータ内への湿気の進入を抑制する能力に優れたファイバコリメータが得られる。
さらには、上記した接合面は、十分な接合面積をもたらすので、レンズが強固に筐体へ固定されたファイバコリメータを構築できる。
【0022】
請求項にかかる発明は、スポットヒータで加熱して前記低融点ガラスを溶融することを特徴とする請求項に記載のファイバコリメータの製造方法である。
スポットヒータは熱量を抑えて加熱できるため、加熱時に低融点ガラスの急激な温度上昇を抑えることができる。これにより低融点ガラス全体を均一にゆっくりと軟化させることができ、熱衝撃によって低融点ガラスに亀裂(クラック)が生じることを防ぎ、低融点ガラスの融解による流動性の変化を制御しやすく、簡便に低融点ガラスを所望の接合面に設けることができ、また所望の形状とすることができる。
【0023】
請求項にかかる発明は、半導体レーザで加熱して前記低融点ガラスを溶融することを特徴とする請求項8に記載のファイバコリメータの製造方法である。
これにより短時間で低融点ガラスを所望の温度とすることができ、低融点ガラスを加熱して溶融し、冷却固化してレンズと筐体を接合する工程を短時間で行うことができる。
【0024】
請求項にかかる発明は、前記筐体に金属又はセラミックスからなるカバーを被せ、該カバーを半導体レーザで加熱し、発生した熱によって前記低融点ガラスを溶融することを特徴とする請求項に記載のファイバコリメータの製造方法である。
これにより例えば筐体表面が金メッキされ、半導体レーザを反射し、効率良く半導体レーザで加熱できない場合であっても、筐体に被せたカバーを半導体レーザで加熱し、加熱されたカバーの熱によって低融点ガラスを溶融するため、効率良く低融点ガラスを溶融できる。
前記したカバーは、ステンレスからなるものが好ましい。これによりカバーは半導体レーザによって効率良く加熱され、この熱によって低融点ガラスを溶融できる。
【0025】
請求項10にかかる発明は、高周波加熱装置で加熱して前記低融点ガラスを溶融することを特徴とする請求項8に記載のファイバコリメータの製造方法である。
高周波加熱装置を用いることによって、筐体の接合部分は自己加熱され、短時間で所望の温度とすることができ、作業工程を短時間で行える。また加熱温度と加熱範囲は、高周波加熱装置の磁界の強さ、交番周期によって決定できるため、容易に所望の処理条件を設定でき、作業性に優れる。
【0026】
請求項11にかかる発明は、前記低融点ガラスを仮焼結して成形し、前記接合面に嵌め込み、加熱して前記低融点ガラスを溶融することを特徴とする請求項乃至のいずれかに記載のファイバコリメータの製造方法である。
これにより接合面に低融点ガラスを配する工程を確実にかつ簡便に行え、更にレンズの主面の表面に低融点ガラスが付着することを防ぐことができる。このため歩留まりを低減でき、かつレンズと筐体とを接合した後、レンズの主面に付着した低融点ガラスを除去する工程を無くすることができる。これにより製造工程を簡略化でき、製造コストを低減できる。
【0027】
【発明の実施の形態】
[第1の実施形態]
[ファイバコリメータ]
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。図1は、本実施形態のファイバコリメータを示す。本実施形態のファイバコリメータ1は、円筒状の筐体2、GRINレンズ3、光ファイバ素線4からなる。光ファイバ素線4は、キャピラリ6によりGRINレンズ3に接続される。また筐体2とGRINレンズ3とは、低融点ガラス5により接合される。低融点ガラス5は、GRINレンズ3の側面を覆うように設けられている。低融点ガラス5の外周面5aは外部に面した表面を示し、本実施形態では半球状である。
【0028】
GRINレンズ3は、その主面3bが筐体の端部2aから0.2〜0.4mm外部に位置するように固定される。GRINレンズの側面部3aは、GRINレンズ3の側面のうち、筐体の端面2aより外部に位置する部分であり、図中の符号3’で示した範囲である。本実施形態では側面部3aは、低融点ガラス5によりほぼ完全に被覆されている。
【0029】
接合面は、GRINレンズ3と低融点ガラス5との接合面7(図中の符号7’で示した範囲)、筐体2と低融点ガラス5との接合面8(図中の符号8’で示した範囲)であり、この接合面におけるファイバコリメータ1の内部から外部に至る経路長は、1〜1.2mmである。
【0030】
[ファイバコリメータの製造方法]
まず低融点ガラスを仮焼結して所定の形状に成形する。図2は、仮焼結し成形された低融点ガラス5を示す。成形された低融点ガラス5は、中央部にGRINレンズ3が配置される貫通孔11と、筐体の端部2aと接する面12が設けられている。次に図3のように、この成形された低融点ガラス5を筐体の端部2aに嵌め込み、GRINレンズ3を中央部の貫通孔11に挿入する。
【0031】
スポットヒータにてまず筐体2を加熱する。筐体2と接する面から熱が伝わり、低融点ガラス5は軟化し始める。低融点ガラス5の表面が軟化したら、筐体2と低融点ガラス5とをスポットヒータにて加熱する。低融点ガラス5を十分に加熱し、表面張力を利用して図1に示すように、低融点ガラスの外周面5aを半球状とする。そして図1に示すように、GRINレンズの側面部3aをほぼ完全に被覆する。また接合面7,8における前記ファイバコリメータ1の内部から外部に至る経路長を1〜1.2mmとする。
【0032】
図1に示すように、本実施形態のファイバコリメータ1は、筐体2とGRINレンズ3とが低融点ガラス5により接合されており、ファイバコリメータ1内へ外気の湿気が進入することを抑えることができる。このため湿気による光学特性の変動を抑えることができる。
【0033】
また低融点ガラスの外周面5aは半球状であり、これにより接合面積を大きく設けることができる。更にGRINレンズの側面3aの大半は低融点ガラス5により被覆されており、外部からの衝撃等からGRINレンズ3を保護できる。また、GRINレンズ3と筐体2とを強固に接着でき、光ファイバ素線4を把持して引張ったときの引張り強度を向上させることもできる。
【0034】
GRINレンズ3は、その主面3bが筐体の端部2aから0.2〜0.4mm外部に位置するように固定されており、これにより低融点ガラスの外周面5aを半球状に形成しやすく、接合工程が簡便に行える。GRINレンズの主面3bが筐体の端部2aより0.2mm未満では、低融点ガラスの外周面5aを半球状に形成することが困難であり、好ましくない。またGRINレンズの主面3bが筐体の端部2aから0.4mmよりも離れているとき、GRINレンズの側面部3aを低融点ガラス5で被覆することが困難となり、必要となる低融点ガラス5の量も多くなるため、好ましくない。
【0035】
更に本実施形態では、接合面7,8のうち、低融点ガラスの外周面5aから底面5bまでの経路長は1〜1.2mmであり、これにより湿気の進入を無くすることができ、かつGRINレンズ3を強固に筐体2へ固定できる。経路長が1mm未満では湿気の進入を抑えることができず好ましくない。また経路長が1.2mmよりも大きい場合、多くの低融点ガラス5を用いる必要があるためコストが高くなり、また製造が困難となるため、好ましくない。
【0036】
低融点ガラス5には、Pb,Bi,B,Nb,Ti,Zn,Fe等の酸化物を含む材料を用いており、線膨張係数は8.8×10−6[1/℃]である。筐体2はSUS304又はSUS316であり、線膨張係数は16×10−6〜17×10−6[1/℃]である。またGRINレンズ3の線膨張係数は5×10−7[1/℃]である。このように低融点ガラス5の線膨張係数は、筐体2の線膨張係数とGRINレンズ3の線膨張係数とのほぼ中間値である。
このため接合面7,8にて、低融点ガラス5、GRINレンズ3、筐体2の線膨張係数の差によって生じる熱応力を低減でき、低融点ガラス5のクラックの発生を防ぐことができる。これによりクラックの発生による低融点ガラスの機械的強度の低下やGRINレンズ3の割れ等がほとんど無く、高い信頼性が実現できる。
また、筐体2にKOVAR(線膨張係数5×10−6[1/℃])や、インバー(線膨張係数1×10−6〜2×10−6[1/℃])等の石英と非常に近い線膨張係数を有する金属を用いることによっても非常に信頼性の高い封着を実現できる。
【0037】
また低融点ガラス5の軟化点は約270℃であり、半田によるろう接やYAGレーザによる溶接を行っても低融点ガラス5は軟化せず、接着力の低下や変質等が無い。このため本実施形態のファイバコリメータ1を光部品へ実装する際、半田やYAGレーザなどを用いた簡便な方法が適用でき、光部品への実装工程が簡便に行うことができる。
【0038】
本実施形態のファイバコリメータ1の製造方法は、まず低融点ガラス5を仮焼結して接合面の形状に成形し、次に筐体2とGRINレンズ3との間に嵌め込むため、接合面7,8に低融点ガラス5を配置する工程が確実に、かつ簡便に行える。
このためGRINレンズの主面3bの表面に低融点ガラス5が付着することを防ぐことができ、歩留まりを低減できる。またGRINレンズ3と筐体2とを接合した後、GRINレンズの主面3bに付着した低融点ガラス5を除去する工程を無くすることができる。これにより製造工程を簡略化でき、製造コストを低減できる。
【0039】
また低融点ガラス5をスポットヒータにて加熱しており、低融点ガラス5の急激な温度上昇を抑えることができる。これより低融点ガラス5をゆっくりと軟化させることができ、更に熱衝撃による低融点ガラス内部のクラック発生を防ぎ、低融点ガラス5の融解による流動性の変化を簡便に制御でき、容易に低融点ガラス5を所望の接合面に設けることができ、また所望の形状とすることができる。
【0040】
また低融点ガラス5を設ける位置は特に限定されないが、図5〜7のように低融点ガラスを設けることは好ましくない。図5は、外周面5aが平面となるように低融点ガラス5を設けたファイバコリメータ1を示す。この場合、低融点ガラス5の表面張力によって製造が困難であり、好ましくない。
図6は、筐体2の内面にのみ低融点ガラスを設けたファイバコリメータ1を示す。この場合、接合面7,8を大きく設けることができず、これにより湿気の進入を十分に抑えることができず、また十分な強度が得られず好ましくない。
図7は、GRINレンズの側面部3aが低融点ガラス5により被覆されていないファイバコリメータ1を示す。この場合、GRINレンズの側面3aが、低融点ガラス5により被覆されておらず、脆性材料であるガラスは多少の傷でも急激に強度が低下してしまうため、外部からの衝撃等によりGRINレンズ3に割れや欠けが生じやすく、好ましくない。
【0041】
[第2の実施形態]
本実施形態のファイバコリメータ1の全体構成は、上述した第1の実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
本実施形態のファイバコリメータ1の製造方法が、第1の実施形態にて説明した製造方法と異なる点は、低融点ガラス5を加熱する加熱手段が、スポットヒータに代えて半導体レーザを用いることのみである。半導体レーザを用いることによって、短時間で低融点ガラス5を加熱して溶融させることができ、GRINレンズ3及び筐体2を接合する工程を短時間で行うことができる。
【0042】
また、メッキされた筐体2を用いてファイバコリメータ1を製造する場合、そのメッキ表面で吸収されない波長のレーザ光は反射され、レーザ光による筐体の加熱を行うことができない。このような場合、半導体レーザから出射される波長のレーザ光を吸収するステンレスなどの材料からなり、前記筐体2の外径よりも大きい内径をもつ管状のカバーを作製し、前記筐体2の外側に被せ、この被せたカバーにレーザ光を照射して加熱する。
この方法によって、メッキされた筐体2をより効率的に半導体レーザによって加熱することができ、低融点ガラス5を溶融させることができる。
【0043】
[応用形態]
[ファイバコリメータ]
図4は、本発明を応用した形態のファイバコリメータ1を示す。このファイバコリメータ1の全体構成が、上述した第1の実施形態と異なる点は、低融点ガラス5に代えて金属ろう材20を用いることである。使用する金属ろう材20融点は280℃である。
【0044】
[ファイバコリメータの製造方法]
図4に示した金属ろう材20とGRINレンズ3との接合面21、金属ろう材20と筐体2との接合面22に、ニッケルメッキ等のメッキ処理を行う。次に水素還元雰囲気中にて筐体2及びGRINレンズ3を所望の位置に配置し、金属ろう材20を用いて筐体2とGRINレンズ3とを接合する。
【0045】
応用形態のファイバコリメータ1は、金属ろう材20により接合するため、外気からの湿気の進入を無くすることができ、更に優れた接着性が得られる。このため湿気の進入を抑えかつ十分な強度を実現するために、必要な金属ろう材20は少量で良く、製造コストを低減できる。
【0046】
なお本応用形態では、金属ろう材20は、使用するGRINレンズ3、筐体2の材質との相溶性に優れ、また優れた接着性を有し、所望の融点のものであれば使用できる
【0047】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明のファイバコリメータは、筐体とGRINレンズとが低融点ガラスによって接合されることによって、外気からの湿気の進入を抑えることができ、これにより環境によって光学特性がほとんど変動せず、優れた信頼性が実現できる。また接合面における経路長を1mm以上設けることによって、外気からの湿気の進入を無くすることができ、これにより優れた信頼性が実現でき、かつ強固にGRINレンズを筐体に固定できる。
更に低融点ガラスの線膨張係数をGRINレンズの線膨張係数から筐体の線膨張係数までの範囲にすることによって、温度変化の際、線膨張係数の差により接合面に生じる熱応力を低減でき、熱応力による低融点ガラスのクラックの発生を防ぐことができる。
また低融点ガラスの軟化点を250〜400℃とすることによって、本発明のファイバコリメータは、光部品に実装する際、半田やYAGレーザを使用でき、簡便に実装工程が行える。
【0048】
本発明のファイバコリメータの製造方法では、スポットヒータにて低融点ガラスを加熱することによって、簡便に低融点ガラスを所望の接合面に設け、かつ所望の形状とできる。また半導体レーザにて低融点ガラスを加熱することによって、短時間で低融点ガラスを所望の温度に加熱でき、短時間で接合できる。
更に高周波加熱装置にて低融点ガラスを加熱することによって、簡便に容易に処理条件を設定でき、作業性に優れる。また低融点ガラスを仮焼結して成形し、接合面に嵌め込むことによって、正確にかつ簡便に低融点ガラスを配することができ、GRINレンズの主面に低融点ガラスが付着することを抑えることができ、製造工程の簡略化、製造コストの低減が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の低融点ガラスを用いたファイバコリメータの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の製造方法に用いられる成形された低融点ガラスの一例を示す概略断面図である。
【図3】成形された低融点ガラスを接合面に配した一例を示す概略断面図である。
【図4】本発明を応用した形態の金属ろう材を用いたファイバコリメータの一例を示す概略断面図である。
【図5】外周面が平面となるように低融点ガラスを設けたファイバコリメータの一例を示す概略断面図である。
【図6】筐体の内面にのみ低融点ガラスを設けたファイバコリメータの一例を示す概略断面図である。
【図7】GRINレンズの側面部が低融点ガラスにより被覆されていないファイバコリメータの一例を示す概略断面図である。
【図8】従来の光学接着剤を用いたファイバコリメータの一例を示す概略断面図である。
【図9】従来のファイバコリメータの他の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1・・・ファイバコリメータ,2・・・筐体,3・・・GRINレンズ,3a・・・GRINレンズの側面部,4・・・光ファイバ素線,5・・・低融点ガラス,5a・・・低融点ガラスの外周面,7・・・GRINレンズと低融点ガラスとの接合面,8・・・筐体と低融点ガラスとの接合面,20・・・金属ろう材,21・・・GRINレンズと金属ろう材との接合面,22・・・筐体と金属ろう材とーの接合面

Claims (11)

  1. 光ファイバが接続されたレンズと、筐体を備え、前記レンズが前記筐体の端部側に接続されたファイバコリメータにおいて、
    前記レンズと前記筐体とが、低融点ガラスにより接合され、かつ、該レンズの側面部が、該低融点ガラスにより被覆されており、該低融点ガラスの外周面が半球状であることを特徴とするファイバコリメータ。
  2. 接合面における前記ファイバコリメータの内部から外部に至る経路長が1mm以上であることを特徴とする請求項1に記載のファイバコリメータ。
  3. 前記低融点ガラスの線膨張係数が、前記レンズの線膨張係数と前記筐体の線膨張係数との範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載のファイバコリメータ。
  4. 前記レンズの側面部は、その主面が前記筐体の端部から0.2〜0.4mm外部に位置して、前記低融点ガラスにより固定されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のファイバコリメータ。
  5. 前低融点ガラスの軟化点が、250〜400℃であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のファイバコリメータ。
  6. 光ファイバが接続されたレンズと、筐体を備え、前記レンズが前記筐体の端部側に接続されたファイバコリメータを製造する方法において、
    低融点ガラスを接合面に配し、加熱して前記低融点ガラスを溶融した後、冷却固化して前記レンズと前記筐体とを接合するとともに、前記低融点ガラスの外周面を半球状とすることを特徴とするファイバコリメータの製造方法。
  7. スポットヒータで加熱して前記低融点ガラスを溶融することを特徴とする請求項6に記載のファイバコリメータの製造方法。
  8. 半導体レーザで加熱して前記低融点ガラスを溶融することを特徴とする請求項6に記載のファイバコリメータの製造方法。
  9. 前記筐体に金属又はセラミックスからなるカバーを被せ、該カバーを半導体レーザで加熱し、発生した熱によって前記低融点ガラスを溶融することを特徴とする請求項8に記載のファイバコリメータの製造方法。
  10. 高周波加熱装置で加熱して前記低融点ガラスを溶融することを特徴とする請求項6に記載のファイバコリメータの製造方法。
  11. 前記低融点ガラスを仮焼結して成形し、前記接合面に嵌め込み、加熱して前記低融点ガラスを溶融することを特徴とする請求項6乃至10のいずれかに記載のファイバコリメータの製造方法。
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