JP3992312B2 - 研磨又は研削加工用助剤組成物、研磨材組成物及び表面加工方法 - Google Patents
研磨又は研削加工用助剤組成物、研磨材組成物及び表面加工方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板、特に磁気ディスク用基板やレンズ、セラミックス素材等の表面加工に有用な研磨又は研削加工用助剤組成物、研磨材組成物及び表面加工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
ガラス素材、カーボン素材、及びセラミックス素材のような脆性材料からなる材料の表面研磨は、一般にサブミクロンから数10ミクロンサイズのダイヤモンドやアルミナ、SiCなどの研磨砥粒を水中に分散させた研磨材組成物を用いて行われている(特開昭54−89389号公報、特開平1−205973号公報等)。
【0003】
しかし従来の研磨材組成物を用いた表面研磨では、昨今の高品位表面に対する要求や低コストの要求に応えるには不十分であった。例えば、従来の研磨材組成物においては、研磨材組成物中での研磨砥粒の分散性や加工屑(研削や研磨により発生した微粉)の分散除去・再付着防止が不十分なために、被加工物の表面にピットやスクラッチ等の表面欠陥が生じたり、また、研磨速度が上げられず低コスト化に限界があった。
【0004】
従って、本発明の目的は、被加工物の表面、特に脆性材料からなる被加工物の表面に表面欠陥を生じさせること無く高速度で表面加工し得る研磨又は研削加工用助剤組成物、研磨材組成物及び表面加工方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、加工用助剤として特定の有機高分子を用いることにより上記目的を達成し得ることを知見した。
【0006】
本発明は上記知見に基づきなされたもので、少なくとも研磨又は研削加工用助剤と水とを含む研磨又は研削加工用助剤組成物において、
上記研磨又は研削加工用助剤が水溶性又は水分散性の有機高分子からなり、
該有機高分子は、1個以上の水酸基を持つ芳香族基を分子量500単位当たりに1個以上有し、且つその主鎖中に重合性のビニル系単量体から誘導される2価の基を含み、
主鎖中に重合性のビニル系単量体から誘導される2価の基を含む上記有機高分子が、重量平均分子量1000〜100万のヒドロキシスチレン系重合体又はその誘導体であり、
上記ヒドロキシスチレン系重合体又はその誘導体が下記一般式(1)で表され、
【化2】
上記研磨又は研削加工用助剤を組成物中に1〜5重量%含有することを特徴とする研磨又は研削加工用助剤組成物を提供することにより上記目的を達成したものである。
【0007】
また、本発明は、上記研磨又は研削加工用助剤組成物と研磨材とからなり、該研磨材の含有量が0.01〜30重量%であることを特徴とする研磨材組成物を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、上記研磨又は研削加工用助剤組成物を被加工物の表面に接触させ、これと同時に砥石又は砥粒を該被加工物の表面に押し付けることを特徴とする表面加工方法を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の研磨又は研削加工用助剤組成物(以下、単に加工用助剤組成物という)について説明する。
【0010】
上述の通り、本発明の加工用助剤組成物は、研磨又は研削加工用助剤(以下、単に加工用助剤という)と水とを必須成分とするものである。
【0011】
本発明の加工用助剤組成物に使用される上記加工用助剤としては、水溶性又は水分散性の有機高分子であって、1個以上の水酸基を持つ芳香族基を分子量500単位当たりに1個以上有し、且つその主鎖中に重合性のビニル系単量体から誘導される2価の基を含む有機高分子が用いられる。
【0012】
上記有機高分子について詳述すると、該有機高分子は、上述の通り1個以上の水酸基を持つ芳香族基を分子量500単位当たりに1個以上有し、好ましくは1.5〜10個有し、更に好ましくは2〜4個有する。該芳香族基の数が分子量500単位当たりに1個未満であると、研磨材や加工屑の分散性が低下したり、あるいは加工屑が研磨材の表面や、研磨パッド、定盤へ再付着しやすくなり、加工速度の低下を招いてしまう。
【0013】
上記有機高分子は、極性基を有していることが、研磨材及び加工屑の分散性の向上、及び、金属定盤の防錆性の点から好ましい。該極性基の数は、分子量500単位当たりに平均0.1〜5個であることが好ましく、1〜3個であることが更に好ましい。
上記極性基としては、極性を有するものであれば特に制限は無いが、好ましくはスルホン基、カルボキシル基、リン酸基、亜リン酸基、ホスホン酸基、亜ホスホン酸基、ホスフィン基、亜ホスフィン基、第3級アミノ基、第4級アンモニウム塩基、又はニトロ基が用いられ、特に好ましくはスルホン基、カルボキシル基が用いられる。これらの極性基は単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
上記有機高分子が、その主鎖中に重合性のビニル系単量体(即ちC=C結合を有する重合性の単量体)から誘導される2価の基を有する場合、該有機高分子として用いられるものはヒドロキシスチレン系重合体又はその誘導体(以下、「ヒドロキシスチレン系重合体類」という)である。該ヒドロキシスチレン系重合体類は、その重量平均分子量が1000〜100万であり、1500〜5万であることが更に好ましく、2000〜2万であることが一層好ましい。該重量平均分子量が1000に満たないと研磨材や加工屑の分散性が低下して、加工速度の低下を招き、100万を超えると水溶性に乏しくなり、加工用助剤としての機能が著しく低下する。
【0015】
上記ヒドロキシスチレン系重合体類は下記一般式(1)で表される。
【化3】
また、本発明の範囲外であるが、下記一般式(A)で表されるヒドロキシスチレン系重合体類を用いることもできる(但し、下記一般式(1)で表されるものを除く)。
【化4】
【0016】
【化5】
【0017】
上記一般式(A)において、m,n,k,pはそれぞれ整数とは規定せず、ある一定の範囲の任意の数(実数)である。重合体を構成する単量体について考えるならば、k、pは当然整数であり、構成単位のブロックごとに考えるならば、mは整数であり、そして分子ごとに考えるならば、nは整数である。しかしながら重合体はその本質において、混合物であり、そして重合体の性質はその混合物の性質としてとらえる方が、その個々の構成単位を問題にするよりも正しい。従って、本発明において、上記一般式(A)は平均組成として表示してある。
【0018】
上記一般式(A)で表されるヒドロキシスチレン系重合体類は、該一般式(A)においてY及び/又はZで表されるような置換基を有するか又は有しないところの、ヒドロキシスチレン、イソプロペニルフェノール(ヒドロキシ−α−メチルスチレン)、若しくはヒドロキシ−α−エチルスチレン等のヒドロキシスチレン系単量体の単独重合体;該ヒドロキシスチレン系単量体同士の共重合体;又は該ヒドロキシスチレン系単量体と他の重合性のビニル系単量体(X)との共重合体であり得る。上記ヒドロキシスチレン系重合体類中の重合単位であるヒドロキシスチレンやイソプロペニルフェノールはオルト体、メタ体若しくはパラ体又はこれらの混合物であってもよいが、特にパラ体又はメタ体であることが好ましい。
【0019】
上記一般式(A)で表されるヒドロキシスチレン系重合体類が共重合体である場合、他の重合性のビニル系単量体(X)の例としては、無水マレイン酸、マレイン酸、アクリル酸、メチルメタクリレート、メタクリル酸、グリシジルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、イタコン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アクリルギンエチルフォスフェート、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アクリロニトリル、マレイミド、ビニルピリジン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、フマル酸エステルあるいは各種有機酸のビニルエステルなどが挙げられる。
この場合、上記ヒドロキシスチレン系単量体と、他の重合性のビニル系単量体(X)との割合(前者/後者)は、モル比で1〜10〜20/1であることが適当である。
【0020】
上記ヒドロキシスチレン系単量体における置換基(B1)及び(B2)においては、Mで表されるアルカリ金属又はアルカリ土類金属としてLi,Na,K,Mg,Ca,Sr,Ba等を用いることが適当である。
尚、上記ヒドロキシスチレン系単量体にスルホン基を導入するには、発煙硫酸又は無水硫酸等をスルホン化剤として用いる通常のスルホン化法を用いることができる。
【0021】
上記ヒドロキシスチレン系単量体における置換基(B5)及び(B6)においては、R4 、R5 及びR6 は同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜36の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基;ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、ホスホアルキル基、メルカプトアルキル基等のアルキル誘導体基;又は炭素数1〜16の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基で置換されたベンジル基等の芳香族基から選択されることが好ましく、上記一般式(A)で表されるヒドロキシスチレン系重合体類が水溶性又は水分散性でなくなるまでの鎖長の炭素鎖を有するものである。またR4 とR5 とから環が形成されていてもよい。この場合、該環は、R4 及びR5 に含まれる原子団のみから形成されたものでもよく、或いはR4 及びR5 に含まれる原子団と他の原子団(例えばN含有原子団)とから形成されたもの(例えばイミダゾリン環)でもよい。特に好ましくは、R4 、R5 及びR6 は、同一又は異なっていてもよく、直鎖若しくは分岐鎖アルキル基;ヒドロキシアルキル基;又は炭素数1〜5の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基で置換された芳香族基である。
尚、上記ヒドロキシスチレン系重合体類に関して、「水溶性」及び「水分散性」とは、本発明の組成物を使用する温度において、該ヒドロキシスチレン系重合体類を所定量配合して本発明の組成物を調製した場合に、該ヒドロキシスチレン系重合体類が水中に溶解又は分散する状態をいう。具体的には該ヒドロキシスチレン系重合体類は0.01重量%以上溶解することが好ましい。
【0022】
上記一般式(A)で表されるヒドロキシスチレン系重合体類の水溶性を向上させるためには、置換基(B5)のアミン部分を有機酸又は無機酸で中和することが好ましい。該有機酸又は無機酸としては、例えば酢酸、クエン酸、シュウ酸、アスコルビン酸、フェニルホスホン酸、クロルメチルホスホン酸、モノ、ジ及びトリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、硫酸、リン酸、塩酸、ホウ酸、硝酸、沸化水素酸、ヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロチタン酸、ヘキサフルオロジルコニウム酸が挙げられる。これらの酸は単独で又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
尚、置換基(B5)の導入は、例えばジアルキルアミンとホルムアルデヒドとを用いるマンニッヒ反応により容易に行うことができる。
また、置換基(B6)の導入は、例えば置換基(B5)の第3級アミノ化物とハロゲン化アルキルとのメンシュトキン反応により容易に行うことができる。
【0024】
上記ヒドロキシスチレン系単量体における置換基(B7)及び(B8)においては、R7 〜R10は同一又は異なっていてもよく、H;炭素数1〜36の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基;ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、メルカプトアルキル基、ホスホアルキル基等のアルキル誘導体基;又は炭素数1〜16の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基で置換されたフェニル基等の芳香族基から選択されることが好ましく、上記一般式(A)で表されるヒドロキシスチレン系重合体類が水溶性又は水分散性でなくなるまでの鎖長の炭素鎖を有するものである。特に好ましくは、R7 〜R13は同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基;ヒドロキシアルキル基;又は炭素数1〜5の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基で置換された芳香族基である。
【0025】
尚、置換基(B7)は、例えば特開昭53−71190号公報に開示されているように、ヒドロキシスチレン系重合体をメチロール化した後にリン酸又はリン酸エステル基導入体と反応させることによって得られる。
また、置換基(B8)は、例えば特開昭53−47489号公報に開示されているように、ヒドロキシスチレン系重合体をまずハロゲン化またはハロメチル化し、それに3価のリン化合物を反応(アルブゾフ反応)させ、ついでそれを熱転位させることによって得られる。
【0026】
上記ヒドロキシスチレン系単量体における置換基(B9)は、例えば特開昭61−34444号公報に開示されているように、ハロゲン化水素とホルムアルデヒドとを作用させてハロゲノメチル化(例えば−CH2 Cl化)を行い、次いで3価の亜リン酸エステル類を作用すれば容易に得られる。
【0027】
上記一般式(A)で表されるヒドロキシスチレン系重合体類の調製方法は、得られる重合体(有機高分子)の加工用助剤としての機能を損なわない限り特に制限されず、例えば特公平3−19319号公報や特公平3−51799号公報に記載の方法等が挙げられる。
【0028】
本発明の範囲外であるが、上記有機高分子として、その主鎖中に−Ar−CH 2 −(Arは官能基で置換されていてもよいヒドロキシフェニレン基を表す)で表される基を含むものを用いることができる。該有機高分子の重量平均分子量は、上記ヒドロキシスチレン系重合体類の場合と同様の理由により、1000〜100万であることが好ましく、1500〜10万であることが更に好ましく、2000〜5万であることが一層好ましい。
−Ar−CH2−で表される基において、Arで表されるフェニレン基はヒドロキシフェニレン基であることが好ましい。また、Arで表されるフェニレン基における官能基としては、アルキル基、アルキルスルホン酸(塩)基の他、上述した種々の極性基が挙げられる。
【0029】
主鎖中に−Ar−CH2−で表される基を含む上記有機高分子としては、下記一般式(a1)〜(a3)の何れかで表される高分子を用いる。
【0030】
【化6】
【0031】
上記一般式(a2)中、Ar’で表される2価の芳香族基としては、フェニレン基(例えば1,3−フェニレン基)及びナフチレン基(例えば1,4−フェニレン基)が挙げられる。
また、上記一般式(a3)中、Ar”で表される1価の芳香族基としては、フェニル基等が挙げられる。
Ar’で表される2価の芳香族基及びAr”で表される1価の芳香族基における官能基としては、上記一般式(a1)におけるArで表されるヒドロキシフェニレン基の官能基と同様のものが挙げられる。
【0032】
主鎖中に−Ar−CH2 −で表される基を含む有機高分子の具体例としては、m−クレゾールメチルスルホン酸のホルマリン縮合物のNa塩、m−クレゾールベークライトメチルスルホン酸−シェファー酸のホルマリン縮合物のNa塩等が挙げられる。
【0033】
上記一般式(a1)〜(a3)で表される有機高分子の調製方法は、得られる共重合体の加工用助剤としての機能を損なわない限り特に制限されず、例えばホルマリン縮合反応、カチオン重合、ラジカル重合、熱重合、或いは有機酸による重合反応により合成することができる。
【0034】
上記共重合体からなる加工用助剤は、本発明の加工用助剤組成物中に1〜5重量%含有される。該加工用助剤の含有量が上記範囲内であれば、本発明の加工用助剤組成物の粘度が適度に保たれ、しかも加工速度の向上効果が十分に発現する。
【0035】
本発明の加工用助剤組成物におけるもう一方の必須成分である水は、媒体として用いられるものであり、その組成物中の含有量が好ましくは40〜99.9重量%であり、更に好ましくは85〜99.5重量%である。水の含有量が上記範囲内であれば、被加工物を生産効率良く表面加工することができる。
【0036】
本発明の加工用助剤組成物においては、上述の必須成分に加えて必要に応じて他の成分を添加剤として添加することができる。該添加剤としては、例えば、単量体型の酸化合物の金属塩(以下、この単量体型の酸化合物の金属塩を「単量体型助剤」という)を挙げることができる。上記加工用助剤と該単量体型助剤とを併用することで、両者の協同効果により加工速度が一層向上する。
【0037】
上記単量体型の酸化合物の金属塩(単量体型助剤)とは、重合性を有さない(即ち、単量体)酸化合物の金属塩を意味する。
該酸化合物としては何等かの酸化作用を有するものであれば特段制限されるものではない。該酸化合物の具体例としては、硝酸、硫酸、亜硫酸、過硫酸、塩酸、過塩素酸、燐酸、亜燐酸、次亜燐酸、ピロリン酸、炭酸、乳酸、シュウ酸、及び安息香酸、並びにこれらを官能基として有する有機酸等が挙げられる。
また、該酸化合物の金属塩の金属としては、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル及び鉄などが挙げられ、好ましくはアルミニウム及びマグネシウムが用いられる。
上記単量体型助剤は、一種または二種以上を組み合わせて使用することが出来る。
特に、上記単量体型助剤として、硝酸の金属塩、硫酸の金属塩、シュウ酸の金属塩、乳酸の金属塩及び安息香酸の金属塩からなる群から選ばれる一種以上を用いることが好ましく、とりわけ硝酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、又は安息香酸ニッケル等を用いると、研磨速度の向上効果が一層高くなるので好ましい。
【0038】
上記単量体型助剤は本発明の加工用助剤組成物中に、好ましくは0.001〜10重量%含有され、更に好ましくは0.05〜5重量%含有される。該単量体型助剤の含有量が上記範囲内であれば加工速度の向上が十分であり、10重量%を超えて用いても加工速度は飽和する。
【0039】
また、本発明の加工用助剤組成物においては、上記単量体型助剤の他に、各種界面活性剤、アルカリ性物質、各種増粘剤、各種分散剤、各種防錆剤、キレート剤、有機溶媒等の添加剤を用いることもできる。これらの添加剤は、本発明の加工用助剤組成物中に好ましくはそれぞれ0.001〜10重量%添加される。
【0040】
本発明の加工用助剤組成物は、そのpHに特段の制限はなく、被加工物の材質により適宜選択すればよいが、1〜7、特に1.5〜6、とりわけ2〜5であることが好ましい。pHが上記範囲内であると被加工物の表面が酸化され易くなって表面が柔らかくなるので加工速度が速くなる。本発明の加工用助剤組成物のpHを上記範囲内にするためには、例えば、上記加工用助剤及び必要に応じて上記単量体型助剤を所定量添加すればよい。
【0041】
本発明の加工用助剤組成物は、各種加工工具〔例えば、定盤型ホイール、カップホイール、ストレートホイール等の固定砥粒ホイール(金属バインダー中にダイヤモンド砥粒等の研磨砥粒を分散固定した固定砥石)〕と併用されて、被加工物の各種加工、例えば、研磨、研削等に用いられる。特に、本発明の加工用助剤組成物は、被加工物の表面加工(研削等)に好適に用いられ、とりわけ固定砥石と併用されて、被加工物の表面研削、例えば研削取り代が1〜1000μm程度で、研削後の中心線平均粗さRaが0.0005〜1μm程度の中〜仕上げ研削に好適に用いられ、特に仕上げ研削に有効である。
尚、本明細書において「研磨」とは遊離砥粒を用いた平滑化加工をいい、「研削」とは、固定砥石等の工具を用いた加工をいう。
【0042】
本発明の加工用助剤組成物を用いた加工の対象となる被加工物の材質としては、例えばアルミニウム、ガラス、ガラス状炭素、シリコン、その他セラミックス材料等が挙げられる。これらのうち、ガラスやガラス状炭素等の脆性材料からなる被加工物に対して本発明の加工用助剤組成物を用いて加工を行うと、従来の加工用助剤を用いた場合に比べてクラックの発生を抑えながらしかも速く加工ができるので好ましい。
これらの被加工物の形状に特に制限は無く、例えばディスク状、プレート状、スラブ状、プリズム状等の平面部を有する形状や、レンズ等の曲面部を有する形状のものが本発明の加工用助剤組成物を用いた加工の対象となる。
【0043】
次に、本発明の研磨材組成物について説明する。
尚、本発明の研磨材組成物に関して特に詳述しない点については、上述の加工用助剤組成物に関して詳述した説明が適宜適用される。
【0044】
本発明の研磨材組成物は、上記加工用助剤組成物と研磨材とからなり、該研磨材の含有量が該研磨材組成物中において0.01〜30重量%であり、被加工物の表面研磨、例えば研磨取り代が0.5〜1000μm程度で、研磨後の中心線平均粗さRaが2〜1μm程度の粗研磨(ラッピング)や仕上げ研磨(ポリッシング)に好適に用いられ、特にポリシングに著しい効果が認められる。
【0045】
上記研磨材としては、研磨用として一般に使用されている研磨砥粒を使用することができる。該研磨材の具体例としては、アルミナ系粒子、SiC粒子、ダイヤモンド粒子、ZrO2 粒子、MgO粒子及びコロイダルシリカ粒子等が挙げられる。これらの研磨材のうち、アルミナ系粒子又はSiC粒子を使用すると研磨速度が速いので好ましく、特に、アルミナ系粒子として中間アルミナ粒子を使用すると被加工物の表面粗さを極めて小さくできるので好ましい。尚、本明細書において、中間アルミナ粒子とは、α−アルミナ粒子以外のアルミナ粒子の総称であり、具体的にはγ−アルミナ粒子、δ−アルミナ粒子、θ−アルミナ粒子、η−アルミナ粒子、及び無定型アルミナ粒子等が挙げられる。
【0046】
上記研磨材の一次粒子の平均粒径は100μm以下であることが好ましい。一次粒子の平均粒径が100μmより大きいと被加工物を例えば研磨した際、特にガラス状炭素のような高硬度材料からなる被加工物を研磨した際に被加工物の表面粗さを小さくすることが困難となる場合がある。上記研磨材の粒径の下限には特段制限はないが、あまりに小さすぎると研磨速度が遅くなるので、一次粒子の平均粒径で0.0005μm以上であることが好ましい。上記研磨材の一次粒子の一層好ましい平均粒径は0.02〜30μmである。
なお、上記研磨材の一次粒子の平均粒径は、該研磨材0.1gに分散剤を加え、次いで超音波を印加して該研磨材を分散させ、更に乾燥させて得られたものをSEM観察して画像解析により求めたものである。また、該平均粒径が2μm以上のものなら、コールターカウンター〔型式MULTI SIZER−II、(株)コールター社製〕で測定しても良い。
【0047】
上記研磨材は、本発明の研磨材組成物中において水を媒体としたいわゆるスラリー状の状態で使用される。本発明の研磨材組成物における該研磨材の含有量は、本発明の研磨材組成物の粘度や被加工物の要求品質などに応じて種々選択することが出来るが、一般的な範囲としての含有量は上述の通り0.01〜30重量%であり、好ましくは0.02〜10重量%である。該研磨材の含有量が上記範囲内であれば、生産効率良く低表面粗さが達成される。
【0048】
本発明によれば、上記加工用助剤組成物を被加工物の表面に接触させ、これと同時に砥石又は砥粒を該被加工物の表面に押し付けることを特徴とする表面加工方法が提供される。
かかる表面加工方法の好ましい一実施形態について、カーボン材料の一つであるガラス状炭素基板の表面研削を例にとり図1及び図2を参照して説明する。ここで、図1は、ガラス状炭素基板の粗研削工程で使用される両面加工機を示す概略正面図であり、図2は、図1におけるX−X線矢視図である。
【0049】
図1に示す両面加工機1は、下定盤2と、該下定盤2の上方に配設される上定盤3と、該上定盤3に接して該上定盤3を支持する定盤支持部4とを具備して構成されている。
【0050】
図1に示すように、上定盤3は、エアシリンダ11の出力ロッド11aの先端部にブラケット12を介して回転可能に取り付けられている。該上定盤3は該エアシリンダ11により昇降可能になされていると共に、下降時にはベース5側で図2に示す矢印D方向に回転するロータ13の溝に係合して同方向に回転するようになされている。また、上記上定盤3の下面には、粒子状の加工材料(研磨砥粒)をバインダー剤により分散・保持させてなる固定砥石(図示せず)が配設されている。また、該上定盤3は、上記定盤支持体4にボルト(図示せず)によって緊結固定されており、該定盤支持体4と共に回転自在に設けられている。
【0051】
図2に示すように、下定盤2は、上記ベース5上に矢印A方向に回転自在に設けられていて、その上面には、上記上定盤3に配設されている固定砥石と同種の固定砥石6が配設されている。また、該下定盤2には、中央の矢印B方向に回転する太陽歯車7と外周側の矢印C方向に回転する内歯歯車8とに噛み合って、公転しつつ自転する遊星歯車状のキャリア9が4機配設されていている。そして、各キャリア9に設けられた8個の穴内にそれぞれ被加工物であるガラス状炭素基板10がセットされるようになっている。
【0052】
上記上定盤3と上記下定盤2との間には、スラリー供給パイプ(図示せず)により本発明の加工用助剤組成物が所定の量で供給されるようになっている。
そして、上記エアシリンダ11によって上記上定盤3を下降させることにより、上記キャリア9と一体に動く上記ガラス状炭素基板10は、上記下定盤2と上記上定盤3とに挟まれて粗研削が行われる。
【0053】
上記上定盤3及び下定盤2に配設されている固定砥石は、ダイヤモンド、CBN(Cubic Bron Nitride)、アルミナ、SiC、ZrO2 、MgO又はコロイダルシリカ等の粒子(研磨砥粒)をバインダー剤に分散・保持させてなるものである。これらの粒子うち、ダイヤモンド、アルミナ又はSiCを用いると加工速度が一層向上するので好ましい。本実施形態においてはダイヤモンド粒子が加工材料として用いられている。これらの粒子の平均粒径は、加工の種類(研磨、研削、切断)、加工の程度、及び被加工物の材質等にもよるが、一般に一次粒子の平均粒径が0.002〜30μmであることが好ましく、0.005〜10μmであることが更に好ましい。
また、上記バインダー剤としては、例えば、Fe(鋳鉄など)、Cu若しくはNi等の金属単体又はこれらの一種以上を含む合金からなるメタルボンド剤を用いることができる。
【0054】
上記粗研削に用いられるガラス状炭素基板は、炭素質樹脂状原料(フェノール樹脂等)を一対のガラス板間で硬化させた後、所定形状に打ち抜き、焼成して得られたものであり、その中心線平均粗さRaは粗研削前において約0.01〜3μmである。そして、該ガラス状炭素基板を後述する条件において粗研削することにより、その中心線平均粗さRaは約0.0005〜0.2μmとなる。
【0055】
上記両面加工機を用いてガラス状炭素基板を粗研削する場合の条件は、一般的には下記の通りである。
即ち、加工圧力は、好ましくは10〜2000g/cm2 であり、更に好ましくは30〜1500g/cm2 である。
加工時間は、好ましくは2〜120分であり、更に好ましくは2〜30分である。
加工温度は、好ましくは室温〜50℃である。
両面加工機の上下定盤にそれぞれ配設される固定砥石中のダイヤモンド粒子の粒度(番手)は、好ましくは#100〜#500万であり、更に好ましくは#300〜#300万である。
両面加工機の下定盤回転数は加工機サイズに依存するが、例えばSPEED FAM社製9B型両面加工機であれば、好ましくは10〜100rpmであり、更に好ましくは10〜60rpmである。
本発明の加工用助剤組成物の流量は、加工機サイズに依存するが、例えばSPEED FAM社製9B型両面加工機であれば、好ましくは5〜300cc/minであり、更に好ましくは10〜150cc/minである。
【0056】
次に、本発明の研磨材組成物を用いた好ましい表面加工方法の一実施形態について、上述の方法により粗研削されたガラス状炭素基板の粗研磨(ラッピング)及びそれに引き続く仕上げ研磨(ポリッシング)を例にとり説明する。尚、本実施形態の粗研磨(ラッピング)及び仕上げ研磨(ポリッシング)に関して特に詳述しない点については、上述の加工用助剤組成物を用いた粗研削に関して詳述した説明が適宜適用される。
【0057】
本実施形態の粗研磨(ラッピング)及び仕上げ研磨(ポリッシング)は、上述の粗研削に用いられる両面加工機を用いて行うことができる。この場合、該両面加工機の上下定盤に配設された固定砥石に代えて所定の硬度を有する研磨用パッドを用い、且つ上記スラリー供給パイプから上記加工用助剤組成物に代えて研磨材組成物を所定の量で供給する。
粗研磨(ラッピング)を行う場合には、上記両面加工機の上下定盤には上記研磨砥粒を含まない鋳鉄製等の金属定盤を用い、本発明の研磨材組成物を上記上定盤に開けられた穴を通じて所定量供給する。研磨材組成物中の研磨材の一次粒子の平均粒径は3〜30μmであることが好ましく、その濃度は1〜30重量%、特に2〜20重量%であることが好ましい。
一方、仕上げ研磨(ポリシング)を行う場合には、上記両面加工機の上下定盤に発泡ウレタンパッド等の樹脂製研磨パッドを装着し、スラリー供給パイプから本発明の研磨材組成物を供給する。研磨材組成物中の研磨材の一次粒子の平均粒径は粗研磨(ラッピング)の場合よりも小さく、0.0002〜3μmであることが好ましい。また、研磨材の濃度は粗研磨(ラッピング)の場合よりも低く、0.01〜5重量%、特に0.02〜2重量%であることが好ましい。
【0058】
本実施形態の仕上げ研磨(ポリッシング)における条件は、一般的には下記の通りである。
即ち、加工圧力は、好ましくは10〜2000gf/cm2 であり、更に好ましくは30〜1500gf/cm2 である。
加工時間は、好ましくは2〜120分であり、更に好ましくは2〜30分である。
上記両面加工機の上下定盤にそれぞれ装着する上記研磨パッドの硬度〔JISA(JIS K−6301)に準拠〕は、好ましくは40〜100であり、更に好ましくは60〜100である。
上記両面加工機の下定盤回転数は加工機サイズに依存するが、例えばSPEED FAM社製 9B型両面加工機であれば、好ましくは10〜100rpmであり、更に好ましくは10〜60rpmである。
本発明の研磨材組成物の供給流量は、加工機サイズに依存するが、例えばSPEED FAM社製9B型両面加工機であれば、好ましくは5〜300cc/minであり、更に好ましくは10〜150cc/minである。
【0059】
粗研削されたガラス状炭素基板を上記の条件において粗研磨(ラッピング)及びそれに引き続き仕上げ研磨(ポリッシング)することにより、その中心線平均粗さRaは約4〜20Åとなる。
【0060】
本発明の加工用助剤組成物及び研磨材組成物を用いた表面加工方法は、上記実施形態に制限されず、例えば、上述の両面加工機に代えて他の加工機を用いてもよい。また、被加工物として、ガラス状炭素以外の炭素、アルミニウム、ガラス、シリコン等を用いることもできる。また、上述の表面加工方法は、磁気記録媒体用基板に限られず、半導体用シリコンウェハ、光学ミラーやハーフミラー、及び光学プリズム等にも同様に適用することができる。
【0061】
【実施例】
以下、実施例により本発明の有効性を例証する。しかしながら、本発明の範囲はかかる実施例に制限されるものではない。
【0062】
〔実施例1〜17及び比較例1〜5〕
表1に示す研磨材と加工用助剤とを、表1に示す濃度で以て残部水と混合・撹袢し、研磨材組成物を得た。尚、実施例2、3、9、10及び17以外は本発明の範囲外(比較例)である。また、研磨材の濃度は実施例及び比較例を通じてすべて10重量%である。また、用いた加工用助剤の構造は、表3〜表5に示す通りであり、単量体型助剤の種類は表6に示す通りである。
粗研磨(ラッピング)により中心線平均粗さRaを0.1μmとした直径2.5インチのガラス状炭素(GC)基板、ガラス基板、Al2O3・TiC基板、及びシリコンウエハを、該研磨材組成物を用いて、両面加工機により中間研磨(研磨材としてGC#3000を用いた場合)、又は仕上げ研磨(研磨材としてα−Al2O3又はSiO2を用いた場合)した。この際、該両面加工機は下記の条件にて使用した。
【0063】
【0064】
実施例及び比較例における各基板について、120分研磨を行い除去量を測定し、比較例を基準として相対研磨速度を求めた。その結果を表2に示す。また、研磨後の各基板の表面におけるピット及びスクラッチの発生の程度を下記の基準により評価した。その結果を表2に示す。
【0065】
〔ピット〕
光学顕微鏡観察(微分干渉顕微鏡)を用い倍率×400倍で各基板の表面を60度おきに6カ所測定し、5μm以上のピット個数をカウントしてその平均値を求めた。評価基準は下記の通りである。
S:ピット密度が0個/mm2
A:ピット密度が0.3個未満/mm2
B:ピット密度が0.3個以上1個未満/mm2
C:ピット密度が1個以上/mm2
〔スクラッチ〕
光学顕微鏡観察(微分干渉顕微鏡)を用い倍率×50倍で各基板の表面を60度おきに6カ所測定した。スクラッチの深さはZYGO(ZYGO社製)により測定した。評価基準は下記の通りである。
S:深さ500Åを超えるスクラッチが0本/1視野
A:深さ500Åを超えるスクラッチが平均0.5本未満/1視野
B:深さ500Åを超えるスクラッチが平均0.5本以上1本未満/1視野
C:深さ500Åを超えるスクラッチが平均1本以上/1視野
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
【0070】
【表5】
【0071】
【表6】
【0072】
表2に示す結果から明らかなように、上記加工用助剤を含有する研磨材組成物(実施例1〜17(但し実施例2、3、9、10及び17のみ))を用いて基板を研磨すると、該加工用助剤を含有しない研磨材組成物(比較例1〜5)を用いて基板を研磨した場合に比して、研磨速度が向上し、ピット及びスクラッチの発生が抑えられることが分かる。尚、研磨後の基板の表面粗さは、実施例及び比較例で同程度であった。
【0073】
【発明の効果】
本発明によれば、被加工物の表面にピットやスクラッチ等の表面欠陥を生じさせること無く高速度で表面加工し得る加工用助剤組成物、研磨材組成物及び表面加工方法が提供される。
本発明は、特に脆性材料からなる被加工物の表面加工に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の表面加工方法に好ましく用いられる両面加工機を示す要部概略正面図である。
【図2】図1におけるX−X線矢視図である。
【符号の説明】
1 両面加工機
2 下定盤
3 上定盤
4 基板支持部
5 ベース
6 固定砥石
Claims (5)
- 少なくとも研磨又は研削加工用助剤と水とを含む研磨又は研削加工用助剤組成物において、
上記研磨又は研削加工用助剤が水溶性又は水分散性の有機高分子からなり、
該有機高分子は、1個以上の水酸基を持つ芳香族基を分子量500単位当たりに1個以上有し、且つその主鎖中に重合性のビニル系単量体から誘導される2価の基を含み、
主鎖中に重合性のビニル系単量体から誘導される2価の基を含む上記有機高分子が、重量平均分子量1000〜100万のヒドロキシスチレン系重合体又はその誘導体であり、
上記ヒドロキシスチレン系重合体又はその誘導体が下記一般式(1)で表され、
- 更に単量体型の酸化合物の金属塩一種以上を組成物中に0.01〜30重量%含む、請求項1記載の研磨又は研削加工用助剤組成物。
- 固定砥石と併用される、請求項1又は2記載の研磨又は研削加工用助剤組成物。
- 請求項1〜3の何れかに記載の研磨又は研削加工用助剤組成物と研磨材とからなり、該研磨材の含有量が0.01〜30重量%であることを特徴とする研磨材組成物。
- 請求項1〜3の何れかに記載の研磨又は研削加工用助剤組成物を被加工物の表面に接触させ、これと同時に砥石又は砥粒を該被加工物の表面に押し付けることを特徴とする表面加工方法。
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