JP3991726B2 - フッ素置換イリジウム錯体の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(EL;ElectroLuminescence)材料として有効なフッ素置換されたイリジウム錯体の製造方法に関する。
【従来の技術】
従来の発光材料は、一重項-三重項遷移による発光を利用した材料(以下、一重項発光材料という。)が用いられており、主に、アルミキノリノールやナイルレッド、ペリレン等が用いられている。
最近になり、トリス(フェニルピリジン)イリジウムが従来の一重項発光材料をはるかに越える発光効率を示すことが判明した(T.TSUTSUI et al.; Jpn. J. Appl. Phys. Vol.38(1999) L1502-L1504, Part2, No.12B, 15 December 1999, Express Letter)。このトリス(フェニルピリジン)イリジウムは、励起三重項状態から基底状態への遷移による発光を利用した材料(以下、三重項発光材料という。)であり、今後この材料を契機に一重項発光材料から三重項発光材料の開発にシフトしていくものと考えられる。
【発明が解決しようとする課題】
有機EL発光材料として上記トリス(フェニルピリジン)イリジウムを考えた場合、その耐久性、特に耐熱性及び耐酸化性が不十分であることが課題として挙げられる。
上記課題を解決する手段としてはイリジウム原子に配位しているフェニルピリジン中の水素原子をフッ素原子で置換することが考えられる。フッ素原子は炭素原子との結合エネルギーが高いため、水素原子をフッ素原子で置換すると耐熱性及び耐酸化性等の向上が期待される。
しかし、フッ素置換フェニルピリジンの報告例は、幾つかあるものの、このフッ素置換フェニルピリジンを配位子としたイリジウム錯体の報告例は、窒素原子から数えて10位の位置にフッ素置換したイリジウム錯体があるに過ぎない。
本発明の目的は、発光効率が高く、耐久性に優れたフッ素置換イリジウム錯体の配位子であるフッ素置換2-フェニルピリジンを収率よく製造し得るフッ素置換イリジウム錯体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、次の式(1)に示される窒素原子から数えて2,3,4又は5位の位置に1つだけフッ素が置換されたフッ素置換2-フェニルピリジンとイリジウム(III)アセチルアセトネートとを反応させ、次の式(2)に示されるフッ素置換イリジウム錯体を形成させるフッ素置換イリジウム錯体を製造する方法の改良である。その特徴ある構成は、フッ素置換2-フェニルピリジンが次の式(3)で示されるハロゲン化ベンゼンを有機リチウム化合物と反応させた後、塩化亜鉛(II)と反応させることにより得られる塩化亜鉛ベンゼンを次の式(4)で示されるフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンとを反応させることにより合成されるとき、フッ素置換2-フェニルピリジンの合成反応に用いられる溶媒がTHFであることを特徴とするフッ素置換イリジウム錯体の製造方法である。
【化6】
【化7】
【化8】
但し、XはCl、Br又はI元素である。
【化9】
但し、XはCl、Br又はI元素である。
請求項2に係る発明は、請求項1記載の式(1)に示される窒素原子から数えて2,3,4又は5位の位置に1つだけフッ素が置換されたフッ素置換2-フェニルピリジンとイリジウム(III)アセチルアセトネートとを反応させ、請求項1記載の式(2)に示されるフッ素置換イリジウム錯体を形成させるフッ素置換イリジウム錯体を製造する方法の改良である。その特徴ある構成は、フッ素置換2-フェニルピリジンが請求項1記載の式(3)で示されるハロゲン化ベンゼンを金属マグネシウムと反応させることにより得られる有機金属化合物と請求項1記載の式(4)で示されるフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンとを反応させることにより合成されるとき、フッ素置換2-フェニルピリジンの合成反応に用いられる溶媒がTHFであることを特徴とするフッ素置換イリジウム錯体の製造方法である。
請求項3に係る発明は、請求項1記載の式(1)に示される窒素原子から数えて2,3,4又は5位の位置に1つだけフッ素が置換されたフッ素置換2-フェニルピリジンとイリジウム(III)アセチルアセトネートとを反応させ、請求項1記載の式(2)に示されるフッ素置換イリジウム錯体を形成させるフッ素置換イリジウム錯体を製造する方法の改良である。その特徴ある構成は、フッ素置換2-フェニルピリジンが請求項1記載の式(4)で示されるフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンを金属マグネシウムと反応させることにより得られる次の式(5)で示される有機金属化合物と請求項1記載の式(3)で示されるハロゲン化ベンゼンとを反応させることにより合成されるとき、フッ素置換2-フェニルピリジンの合成反応に用いられる溶媒がTHFであることを特徴とするフッ素置換イリジウム錯体の製造方法である。
【化10】
但し、XはCl、Br又はI元素である。
請求項1ないし3いずれかに係る発明では、フッ素置換2-フェニルピリジンの合成反応において溶媒にTHFを用いることにより、フッ素置換イリジウム錯体の配位子である1つだけフッ素が置換された2-フェニルピリジンを収率よく製造できる。従って発光効率が高く、耐久性に優れたフッ素置換イリジウム錯体を効率よく製造できる。
【発明の実施の形態】
トリス(フェニルピリジン)イリジウムにおいて、配位子であるフェニルピリジン任意の位置にフッ素を導入することができれば、上記イリジウム錯体の耐久性、耐酸化性等の面で大いに有効である。本発明者らは以上の問題を鋭意検討した結果、任意の位置にフッ素を導入したフッ素置換2-フェニルピリジンが得られることを確認した。
具体的には、ハロゲン化ベンゼンを有機リチウム化合物と反応させた後、塩化亜鉛(II)と反応させることにより塩化亜鉛ベンゼンとし、これとフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンとを反応させるか、若しくはハロゲン化ベンゼンを金属マグネシウムと反応させることにより有機金属化合物とし、これとフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンとを反応させるか、又は、フッ素置換2-ハロゲン化ピリジンを金属マグネシウムにより有機金属化合物とし、これとハロゲン化ベンゼンとを反応させることにより、ピリジン環側にフッ素の入ったフッ素置換2-フェニルピリジンが得られることを確認した。
更に上記方法により得られたフッ素置換2-フェニルピリジンとイリジウム(III)アセチルアセトネート([CH3COCH=C(O-)CH3]3Ir)とを反応させることにより、目的とする(フッ素置換2-フェニルピリジン)3Ir錯体が得られることを確認している。この(フッ素置換2-フェニルピリジン)3Ir錯体の製造方法において、上記フッ素置換2-フェニルピリジンを製造する反応を行う際に溶媒としてTHFを用いることにより、フッ素置換2-フェニルピリジンの収率が向上することを確認し、本発明に至った。
次に本発明の実施の形態について説明する。
イリジウム(III)アセチルアセトネートと窒素原子から数えて2,3,4又は5位の位置に1つだけフッ素が置換されたフッ素置換2-フェニルピリジンとを反応させ、錯体を形成することにより本発明のイリジウム錯体が得られる。配位子となるフッ素置換2-フェニルピリジンの製造方法は、フッ素を置換させる位置によって、フェニル基側にフッ素を置換させる方法と、ピリジン環側にフッ素を置換させる方法の2通りの方法がある。本発明はフッ素置換2-フェニルピリジンの合成反応における溶媒にTHFを用いることを特徴とする。溶媒にTHFを用いることにより、他の溶媒を用いるよりもフッ素置換2-フェニルピリジンの収率が向上するため、目的とするフッ素置換2-フェニルピリジンを配位子とするイリジウム錯体が効率よく製造できる。
ピリジン環側にフッ素を置換したフッ素置換2-フェニルピリジンの製造方法を説明する。ピリジン環側にフッ素を置換したフッ素置換2-フェニルピリジンの製造方法としては、 (1)有機リチウム化合物を用いた方法と、(2)金属マグネシウムを用いた方法により製造される。
(1)有機リチウム化合物を用いた方法
先ず、ハロゲン化ベンゼンを用意し、下記式(6)に示すように、このハロゲン化ベンゼンに有機リチウム化合物(式(6)中ではn-ブチルリチウム)を反応させることにより、リチウム原子がハロゲン化ベンゼン中のハロゲン原子と置換した有機リチウム化合物が得られる。
【化11】
但し、XはCl、Br又はI元素である。
この反応に使用される有機リチウム化合物としては、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム等が挙げられる。この式(6)に示す反応では、反応温度が−78〜0℃の範囲内で反応時間が0.5〜3時間である。反応温度が−78℃未満では効果的に反応が進行せず、0℃を越えると副反応が起きてしまうため、有機金属化合物の収率が低下する。好ましい反応温度は−78〜−40℃である。反応時間が0.5時間未満であると、反応が十分に進行しない。好ましい反応時間は1〜3時間である。
次に、下記式(7)に示すように、有機リチウム化合物に塩化亜鉛(II)を反応させて塩化亜鉛ベンゼンに変換する。
【化12】
ここで、有機リチウム化合物を塩化亜鉛ベンゼンに変換するのは、後述するフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンとの反応の際に、有機リチウム化合物の求核性を制御するためである。この反応は0〜70℃で1〜5時間行うことにより反応が進行する。
次に、下記式(8)に示すように、塩化亜鉛ベンゼンにフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンを添加して、フッ素置換2-フェニルピリジンを製造する。
【化13】
但し、X’はCl、Br又はI元素である。
この式(8)に示す反応ではパラジウム触媒、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム[Pd(PPh3)4]を溶媒であるTHF中に存在させることにより、塩化亜鉛ベンゼンとフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンとの反応が位置選択性よく進行する。ここで使用されるフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンのピリジン環にフッ素を導入する方法としては、アミノ基を有した2-ハロゲン化ピリジンのジアゾフッ素化が適当である。この反応では、反応温度は10〜70℃、反応時間は1〜24時間である。反応温度が10℃未満では効果的に反応が進行せず、有機金属化合物の収率が低下する。反応温度の上限値を70℃に規定したのは、使用する溶媒であるTHFの沸点が上記数値近傍であるため、その温度以上には上がらないからである。THFの沸点に近い70℃近傍の温度で溶媒が激しく還流するような状態として反応を進行させると、収率が低下するため、溶媒であるTHFが緩やかに還流するぐらいが反応条件としては最適である。反応時間が1時間未満であると、反応が十分に進行しない。好ましくは2〜24時間である。
(2)金属マグネシウムを用いた方法
下記式(9)に示すように、ハロゲン化ベンゼンに金属マグネシウムを反応させることにより、ハロゲン原子とベンゼン環との間にマグネシウムが挿入された有機金属化合物が得られる。
【化14】
但し、XはCl、Br又はI元素である。
この式(9)に示す反応は、エーテル系溶媒中でハロゲン化アルキルとマグネシウムとを作用させることにより得られるグリニャール試薬(Grignard Reagent)の製造方法と同様の方法である。この反応では、反応温度が10〜70℃の範囲内で反応時間が1〜24時間である。反応温度が10℃未満では効果的に反応が進行せず、有機金属化合物の収率が低下する。反応温度の上限値を70℃に規定したのは、使用するTHFの沸点が上記数値近傍であるため、その温度以上には上がらないからである。THFの沸点に近い70℃近傍の温度でTHFが激しく還流するような状態として反応を進行させると、収率が低下するため、溶媒であるTHFが緩やかに還流するぐらいが反応条件としては最適である。反応時間が1時間未満であると、反応が十分に進行しない。好ましい反応時間は2〜24時間である。
下記式(10)に示すように、この有機金属化合物にフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンと反応させてフッ素置換2-フェニルピリジンを製造する。
【化15】
但し、X及びX’はCl、Br又はI元素であり、互いに同一又は異なる元素である。
この式(10)に示す反応では、式(8)に示す反応と同様に、パラジウム触媒、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム[Pd(PPh3)4]を触媒として存在させることにより、フッ素置換2-ハロゲン化ピリジンとの反応が位置選択性よく進行する。ここで使用されるフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンのピリジン環にフッ素を導入する方法としては、アミノ基を有した2-ハロゲン化ピリジンのジアゾフッ素化が適当である。この反応では、反応温度が10〜70℃の範囲内で反応時間が1〜24時間である。反応温度が10℃未満では効果的に反応が進行せず、フッ素置換2-ハロゲン化ピリジンの収率が低下する。反応温度の上限値を70℃に規定したのは、使用する溶媒であるTHFの沸点が上記数値近傍であるため、70℃以上には上がらないからである。THFの沸点に近い70℃近傍の温度でTHFが激しく還流するような状態として反応を進行させると、収率が低下するため、THFの沸点以下であることが反応条件としては最適である。反応時間が1時間未満であると、反応が十分に進行しない。好ましい反応時間は2〜24時間である。
また、下記式(11)に示すように、フッ素置換2-ハロゲン化ピリジンに金属マグネシウムを反応させることによりハロゲン原子とピリジン環との間にマグネシウムが挿入された有機金属化合物が得られる。ここで使用されるフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンの製造方法としては、アミノ基を有した2-ハロゲン化ピリジンのジアゾフッ素化が適当である。
【化16】
但し、X’はCl、Br又はI元素である。
この式(11)に示す反応は、エーテル溶媒中でハロゲン化アルキルとマグネシウムとを作用させることにより得られるグリニャール試薬の製造方法と同様の方法である。この反応では、反応温度が10〜70℃の範囲内で反応時間が1〜24時間である。反応温度が10℃未満では効果的に反応が進行せず、有機金属化合物の収率が低下する。反応温度の上限値を70℃に規定したのは、使用する溶媒であるTHFの沸点が上記数値近傍であるため、その温度以上には上がらないからである。THFの沸点に近い70℃近傍の温度で溶媒が激しく還流するような状態として反応を進行させると、収率が低下するため、溶媒であるTHFが緩やかに還流するぐらいが反応条件としては最適である。反応時間が1時間未満であると、反応が十分に進行しない。好ましい反応時間は2〜24時間である。
下記式(12)に示すように、この有機金属化合物にハロゲン化ベンゼンを反応させてフッ素置換2-フェニルピリジンを製造する。
【化17】
但し、X及びX’はCl、Br又はI元素であり、互いに同一又は異なる元素である。
この式(12)に示す反応では、パラジウム触媒、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム[Pd(PPh3)4]を触媒として存在させることにより、ハロゲン化ベンゼンとの反応が位置選択性よく進行する。この反応では、反応温度が10〜70℃の範囲内で反応時間が1〜24時間である。反応温度が10℃未満では効果的に反応が進行せず、有機金属化合物の収率が低下する。反応温度の上限値を70℃に規定したのは、使用する溶媒であるTHFの沸点が上記数値近傍であるため、その温度以上には上がらないからである。THFの沸点に近い70℃近傍の温度で溶媒が激しく還流するような状態として反応を進行させると、収率が低下するため、溶媒であるTHFが緩やかに還流するぐらいが反応条件としては最適である。反応時間が1時間未満であると、反応が十分に進行しない。好ましい反応時間は2〜24時間である。
次に、下記式(13)に示すように、イリジウム(III)アセチルアセトネートと上述した方法により得られたフッ素置換2-フェニルピリジンとを反応させ、錯体を形成することにより本発明のイリジウム錯体が製造される。
【化18】
この式(13)に示す反応では、イリジウム錯体化においては、溶媒としては、グリセロールを使用することができる。この反応は、一般的に溶媒が還流する温度で行われ、反応圧力0.266〜101.08kPa、反応温度が130〜280℃の範囲内で反応時間が1〜12時間である。反応温度が130℃未満では効果的に反応が進行せず、イリジウム錯体の収率が低下する。反応温度の上限値を280℃に規定したのは、使用するグリセロールが290℃で分解してしまうからである。反応時間が1時間未満であると、反応が十分に進行しない。好ましい反応時間は8〜12時間である。
このようにして得られたフッ素置換イリジウム錯体を質量分析、元素分析、IR、NMR等にて測定したところ、それぞれ目的とする化合物が生成していることが確認された。
【実施例】
次に本発明の実施例を説明する。
<実施例1>
先ず、活性化したマグネシウム0.6gとTHF30mlにTHF50mlで希釈したブロモベンゼン3.5gを添加し、55℃で3時間撹拌することによりグリニヤール試薬を調製した。次いで、5-アミノ-2-クロロピリジンのジアゾフッ素化により得られた5-フルオロ-2-クロロピリジン3g、パラジウム触媒1.2gとTHF70mlをフラスコに入れておき、調製したグリニヤール試薬を滴下して50℃で、2時間反応させることにより、5-フルオロ-2-(フェニル)ピリジンを得た。
次に、5-フルオロ-2-(フェニル)ピリジン0.54gにイリジウムアセチルアセトネート0.5g、グリセリン50mlを加え、2.66kPa、190℃の条件下で10時間撹拌加熱をした。これに塩酸とジクロロメタンを添加し、有機層を濃縮して(5-フルオロ-2-(フェニル)ピリジン)3Irを得た。
<実施例2>
先ず、活性化したマグネシウム0.6gとTHF30mlにTHF50mlで希釈したクロロベンゼン2.5gを添加し、40℃で8時間撹拌することによりグリニヤール試薬を調製した。次いで、3-アミノ-2-クロロピリジンのジアゾフッ素化により得られた3-フルオロ-2-クロロピリジン3g、パラジウム触媒1.2gとTHF70mlをフラスコに入れておき、調製したグリニヤール試薬を滴下して50℃で、2時間反応させることにより、3-フルオロ-2-(フェニル)ピリジンを得た。
次に、3-フルオロ-2-(フェニル)ピリジン0.54gにイリジウムアセチルアセトネート0.5g、グリセリン50mlを加え、6.65kPa、210℃の条件下で10時間撹拌加熱をした。これに塩酸とジクロロメタンを添加し、有機層を濃縮して(3-フルオロ-2-(フェニル)ピリジン)3Irを得た。
<実施例3>
先ず、活性化したマグネシウム0.6gとTHF30mlにTHF50mlで希釈したイオドベンゼン4.5gを添加し、15℃で12時間撹拌することによりグリニヤール試薬を調製した。次いで、2-アミノ-6-ブロモピリジンのジアゾフッ素化により得られた2-フルオロ-6-ブロモピリジン4g、パラジウム触媒1.2gとTHF70mlをフラスコに入れておき、調製したグリニヤール試薬を滴下して25℃で、4時間反応させることにより、2-フルオロ-2-(フェニル)ピリジンを得た。
次に、2-フルオロ-2-(フェニル)ピリジン0.54gにイリジウムアセチルアセトネート0.5g、グリセリン50mlを加え、101.08kPa、280℃の条件下で10時間撹拌加熱をした。これに塩酸とジクロロメタンを添加し、有機層を濃縮して(2-フルオロ-2-(フェニル)ピリジン)3Irを得た。
<比較例1>
先ず、活性化したマグネシウム0.6gと1,2-ジメトキシエタン30mlに1,2-ジメトキシエタン50mlで希釈したブロモベンゼン3.5gを添加し、55℃で3時間撹拌することによりグリニヤール試薬を調製した。次いで、5-アミノ-2-クロロピリジンのジアゾフッ素化により得られた5-フルオロ-2-クロロピリジン3g、パラジウム触媒1.2gと1,2-ジメトキシエタン70mlをフラスコに入れておき、調製したグリニヤール試薬を滴下して50℃で、2時間反応させることにより、5-フルオロ-2-(フェニル)ピリジンを得た。
次に、5-フルオロ-2-(フェニル)ピリジン0.54gにイリジウムアセチルアセトネート0.5g、グリセリン50mlを加え、2.66kPa、190℃の条件下で10時間撹拌加熱をした。これに塩酸とジクロロメタンを添加し、有機層を濃縮して(5-フルオロ-2-(フェニル)ピリジン)3Irを得た。
<比較例2>
先ず、活性化したマグネシウム0.6gとジイソプロピルエーテル30mlにジイソプロピルエーテル50mlで希釈したクロロベンゼン2.5gを添加し、40℃で8時間撹拌することによりグリニヤール試薬を調製した。次いで、3-アミノ-2-クロロピリジンのジアゾフッ素化により得られた3-フルオロ-2-クロロピリジン3g、パラジウム触媒1.2gとジイソプロピルエーテル70mlをフラスコに入れておき、調製したグリニヤール試薬を滴下して50℃で、2時間反応させることにより、3-フルオロ-2-(フェニル)ピリジンを得た。
次に、3-フルオロ-2-(フェニル)ピリジン0.54gにイリジウムアセチルアセトネート0.5g、グリセリン50mlを加え、6.65kPa、210℃の条件下で10時間撹拌加熱をした。これに塩酸とジクロロメタンを添加し、有機層を濃縮して(3-フルオロ-2-(フェニル)ピリジン)3Irを得た。
<比較例3>
先ず、活性化したマグネシウム0.6gとジエチルエーテル30mlにジエチルエーテル50mlで希釈したイオドベンゼン4.5gを添加し、15℃で12時間撹拌することによりグリニヤール試薬を調製した。次いで、2-アミノ-6-ブロモピリジンのジアゾフッ素化により得られた2-フルオロ-6-ブロモピリジン4g、パラジウム触媒1.2gとジエチルエーテル70mlをフラスコに入れておき、調製したグリニヤール試薬を滴下して25℃で、4時間反応させることにより、2-フルオロ-2-(フェニル)ピリジンを得た。
次に、2-フルオロ-2-(フェニル)ピリジン0.54gにイリジウムアセチルアセトネート0.5g、グリセリン50mlを加え、101.08kPa、280℃の条件下で10時間撹拌加熱をした。これに塩酸とジクロロメタンを添加し、有機層を濃縮して(2-フルオロ-2-(フェニル)ピリジン)3Irを得た。
<比較評価>
表1に実施例1〜3の原料、反応条件、得られた化合物及び得られた配位子化合物の収率を、表2に比較例1〜3の原料、反応条件、得られた化合物及び得られた配位子化合物の収率をそれぞれ示す。
なお、実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた配位子化合物の収率は、重量により求めた。
【表1】
【表2】
表2より明らかなように、THF以外の溶媒を用いた比較例1〜3で得られたフッ素置換2-フェニルピリジンの収率は低い。これに対して、表1より明らかなように、溶媒としてTHFを用いた実施例1〜3で得られたフッ素置換2-フェニルピリジンは高収率を示していることが判る。
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の製造方法は、フッ素置換2-フェニルピリジンの合成反応において溶媒にTHFを用いたため、フッ素置換イリジウム錯体の配位子であるフッ素が置換された2-フェニルピリジンを収率よく製造できる。従って発光効率が高く、耐久性に優れたフッ素置換イリジウム錯体を効率よく製造できる。
Claims (3)
- 次の式(1)に示される窒素原子から数えて2,3,4又は5位の位置に1つだけフッ素が置換されたフッ素置換2-フェニルピリジンとイリジウム(III)アセチルアセトネートとを反応させ、
次の式(2)に示されるフッ素置換イリジウム錯体を形成させるフッ素置換イリジウム錯体の製造方法において、
前記フッ素置換2-フェニルピリジンが次の式(3)で示されるハロゲン化ベンゼンを有機リチウム化合物と反応させた後、塩化亜鉛(II)と反応させることにより得られる塩化亜鉛ベンゼンを次の式(4)で示されるフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンとを反応させることにより合成されるとき、
前記フッ素置換2-フェニルピリジンの合成反応に用いられる溶媒がテトラヒドロフランであることを特徴とするフッ素置換イリジウム錯体の製造方法。
- 請求項1記載の式(1)に示される窒素原子から数えて2,3,4又は5位の位置に1つだけフッ素が置換されたフッ素置換2-フェニルピリジンとイリジウム(III)アセチルアセトネートとを反応させ、
請求項1記載の式(2)に示されるフッ素置換イリジウム錯体を形成させるフッ素置換イリジウム錯体の製造方法において、
前記フッ素置換2-フェニルピリジンが請求項1記載の式(3)で示されるハロゲン化ベンゼンを金属マグネシウムと反応させることにより得られる有機金属化合物と請求項1記載の式(4)で示されるフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンとを反応させることにより合成されるとき、
前記フッ素置換2-フェニルピリジンの合成反応に用いられる溶媒がテトラヒドロフランであることを特徴とするフッ素置換イリジウム錯体の製造方法。 - 請求項1記載の式(1)に示される窒素原子から数えて2,3,4又は5位の位置に1つだけフッ素が置換されたフッ素置換2-フェニルピリジンとイリジウム(III)アセチルアセトネートとを反応させ、
請求項1記載の式(2)に示されるフッ素置換イリジウム錯体を形成させるフッ素置換イリジウム錯体の製造方法において、
前記フッ素置換2-フェニルピリジンが請求項1記載の式(4)で示されるフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンを金属マグネシウムと反応させることにより得られる次の式(5)で示される有機金属化合物と請求項1記載の式(3)で示されるハロゲン化ベンゼンとを反応させることにより合成されるとき、
前記フッ素置換2-フェニルピリジンの合成反応に用いられる溶媒がテトラヒドロフランであることを特徴とするフッ素置換イリジウム錯体の製造方法。
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