JP3991727B2 - フッ素置換イリジウム錯体、その中間体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(EL;ElectroLuminescence)材料として有効なフッ素置換されたイリジウム錯体、その中間体及びその製造方法に関する。
【従来の技術】
従来の発光材料は、一重項-三重項遷移による発光を利用した材料(以下、一重項発光材料という。)が用いられており、主に、アルミキノリノールやナイルレッド、ペリレン等が用いられている。
最近になり、トリス(フェニルピリジン)イリジウムが従来の一重項発光材料をはるかに越える発光効率を示すことが判明した(T.TSUTSUI et al.; Jpn. J. Appl. Phys. Vol.38(1999) L1502-L1504, Part2, No.12B, 15 December 1999, Express Letter)。このトリス(フェニルピリジン)イリジウムは、励起三重項状態から基底状態への遷移による発光を利用した材料(以下、三重項発光材料という。)であり、今後この材料を契機に一重項発光材料から三重項発光材料の開発にシフトしていくものと考えられる。
【発明が解決しようとする課題】
有機EL発光材料として上記トリス(フェニルピリジン)イリジウムを考えた場合、その耐久性、特に耐熱性及び耐酸化性が不十分であることが課題として挙げられる。
上記課題を解決する手段としてはイリジウム原子に配位しているフェニルピリジン中の水素原子をフッ素原子で置換することが考えられる。フッ素原子は炭素原子との結合エネルギーが高いため、水素原子をフッ素原子で置換すると耐熱性及び耐酸化性等の向上が期待される。
しかし、フッ素置換フェニルピリジンの報告例は、幾つかあるものの、このフッ素置換フェニルピリジンを配位子としたイリジウム錯体の報告例は、窒素原子から数えて10位の位置にフッ素置換したイリジウム錯体があるに過ぎない。
本発明の目的は、発光効率が高く、耐久性に優れたフッ素置換イリジウム錯体、その中間体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、次の式(1)で示され、窒素原子から数えて1,6,7及び12位を除く位置に2つ以上フッ素が置換されたフッ素置換2-フェニルピリジンとイリジウムとが錯体を形成したフッ素置換イリジウム錯体である。
【化12】
但し、整数m及びnの関係が2≦m+n≦8であって、0≦m≦4かつ1≦n≦4である。
請求項1に係る発明では、上記構造を有するイリジウム錯体は配位子である2-フェニルピリジン内にフッ素が2つ以上置換されているため、炭素原子との結合エネルギーが高まり、耐熱性及び耐酸化性等が向上する。
請求項2に係る発明は、次の式(2)で表され、窒素原子から数えて1,6,7,12位、2位と10位及び9位と10位の組み合わせを除く位置にフッ素がそれぞれ置換された錯体形成用第1中間体である。
【化13】
但し、整数m及びnの関係が2≦m+n≦8であって、0≦m≦4かつ1≦n≦4である。
請求項3に係る発明は、次の式(3)で表され、置換基Liから数えて2位と3位と4位、2位と3位と5位、2位と4位と5位及び3位と4位と5位の組み合わせの位置にフッ素がそれぞれ置換された錯体形成用第2中間体である。
【化14】
但し、整数mは3である。
請求項4に係る発明は、次の式(4)で表され、置換基ZnClから数えて3位、4位及び2位と4位の組み合わせを除く位置にフッ素がそれぞれ置換された錯体形成用第3中間体である。
【化15】
但し、整数mは0≦m≦4である。
請求項5に係る発明は、次の式(5)で表される錯体形成用第4中間体である。
【化16】
但し、X’はCl、Br又はI元素であり、整数nは1≦n≦4である。
請求項6に係る発明は、イリジウム (III) アセチルアセトネートと窒素原子から数えて1,6,7及び12位を除く位置に2つ以上フッ素が置換されたフッ素置換 2- フェニルピリジンとを反応させ、錯体を形成させることを特徴とするフッ素置換イリジウム錯体の製造方法において、2つ以上フッ素が置換されたフッ素置換2-フェニルピリジンが次の式(6)で示されるフッ素置換ハロゲン化ベンゼンを有機リチウム化合物と反応させた後、塩化亜鉛(II)と反応させることにより得られる次の式(7)で示されるフッ素置換塩化亜鉛ベンゼンと次の式(8)で示されるフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンとを反応させることにより得られることを特徴とするフッ素置換イリジウム錯体の製造方法である。
【化17】
但し、XはCl、Br又はI元素であって、整数mが1≦m≦4である。
【化18】
但し、整数mは1≦m≦4である。
【化19】
但し、X’はCl、Br又はI元素であり、整数nが1≦n≦4である。
請求項7に係る発明は、イリジウム (III) アセチルアセトネートと窒素原子から数えて1,6,7及び12位を除く位置に2つ以上フッ素が置換されたフッ素置換 2- フェニルピリジンとを反応させ、錯体を形成させることを特徴とするフッ素置換イリジウム錯体の製造方法において、2つ以上フッ素が置換されたフッ素置換2-フェニルピリジンが次の式(9)で示されるハロゲン化ベンゼンを有機リチウム化合物と反応させた後、塩化亜鉛(II)と反応させることにより得られる次の式(10)で示される塩化亜鉛ベンゼンと次の式(11)で示されるフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンとを反応させることにより得られることを特徴とするフッ素置換イリジウム錯体の製造方法である。
【化20】
但し、XはCl、Br又はI元素である。
【化21】
【化22】
但し、X’はCl、Br又はI元素であって、整数nが2≦n≦4である。
請求項8に係る発明は、イリジウム (III) アセチルアセトネートと窒素原子から数えて1,6,7及び12位を除く位置に2つ以上フッ素が置換されたフッ素置換 2- フェニルピリジンとを反応させ、錯体を形成させることを特徴とするフッ素置換イリジウム錯体の製造方法において、2つ以上フッ素が置換されたフッ素置換2-フェニルピリジンが請求項6記載の式(6)で示されるフッ素置換ハロゲン化ベンゼンを金属マグネシウムと反応させることにより得られる有機金属化合物と請求項6記載の式(8)で示されるフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンとを反応させることにより得られることを特徴とするフッ素置換イリジウム錯体の製造方法である。
請求項9に係る発明は、イリジウム (III) アセチルアセトネートと窒素原子から数えて1,6,7及び12位を除く位置に2つ以上フッ素が置換されたフッ素置換 2- フェニルピリジンとを反応させ、錯体を形成させることを特徴とするフッ素置換イリジウム錯体の製造方法において、2つ以上フッ素が置換されたフッ素置換2-フェニルピリジンが請求項7記載の式(9)で示されるハロゲン化ベンゼンを金属マグネシウムと反応させることにより得られる有機金属化合物と請求項7記載の式(11)で示されるフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンとを反応させることにより得られることを特徴とするフッ素置換イリジウム錯体の製造方法である。
請求項10に係る発明は、イリジウム (III) アセチルアセトネートと窒素原子から数えて1,6,7及び12位を除く位置に2つ以上フッ素が置換されたフッ素置換 2- フェニルピリジンとを反応させ、錯体を形成させることを特徴とするフッ素置換イリジウム錯体の 製造方法において、2つ以上フッ素が置換されたフッ素置換2-フェニルピリジンが請求項6記載の式(8)で示されるフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンを金属マグネシウムと反応させることにより得られる有機金属化合物と請求項6記載の式(6)で示されるフッ素置換ハロゲン化ベンゼンとを反応させることにより得られることを特徴とするフッ素置換イリジウム錯体の製造方法である。
請求項11に係る発明は、イリジウム (III) アセチルアセトネートと窒素原子から数えて1,6,7及び12位を除く位置に2つ以上フッ素が置換されたフッ素置換 2- フェニルピリジンとを反応させ、錯体を形成させることを特徴とするフッ素置換イリジウム錯体の製造方法において、2つ以上フッ素が置換されたフッ素置換2-フェニルピリジンが請求項7記載の式(11)で示されるフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンを金属マグネシウムと反応させることにより得られる有機金属化合物と請求項7記載の式(9)で示されるハロゲン化ベンゼンとを反応させることにより得られることを特徴とするフッ素置換イリジウム錯体の製造方法である。
請求項6ないし11いずれかに係る発明では、上記方法により、配位子である2-フェニルピリジンの任意の位置にフッ素を2つ以上導入することができるため、耐久性特に耐熱性、耐酸化性に優れたフッ素置換イリジウム錯体を収率よく合成できる。
【発明の実施の形態】
トリス(フェニルピリジン)イリジウムにおいて、配位子であるフェニルピリジン任意の位置にフッ素を導入することができれば、上記の耐久性、耐酸化性等の面で大いに有効である。本発明者らは以上の問題を鋭意検討した結果、任意の位置にフッ素を導入したフッ素置換2-フェニルピリジンが得られることを確認した。 具体的には、はじめにフッ素化されたハロゲン化ベンゼンを第2中間体を含む有機リチウム化合物と反応させた後、塩化亜鉛(II)と反応させることにより第3中間体を含むフッ素置換塩化亜鉛ベンゼンとし、これとフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンとを反応させるか、若しくはフッ素置換ハロゲン化ベンゼンを金属マグネシウムと反応させることにより有機金属化合物とし、これとフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンとを反応させるか、又は、フッ素化された2-ハロゲン化ピリジンを金属マグネシウムと反応させることにより第4中間体を含む有機金属化合物とし、これとフッ素置換ハロゲン化ベンゼンとを反応させることにより、ピリジン環側、フェニル基側とピリジン環側の双方にフッ素の入った第1中間体を含むフッ素置換2-フェニルピリジンが得られることを確認した。
更に上記方法により得られた第1中間体を含むフッ素置換2-フェニルピリジンとイリジウム(III)アセチルアセトネート([CH3COCH=C(O-)CH3]3Ir)とを反応させることにより、目的とする(フッ素置換2-フェニルピリジン)3Ir錯体が得られることが判明し、本発明に至った。
次に本発明の実施の形態について説明する。
イリジウム(III)アセチルアセトネートと窒素原子から数えて1,6,7及び12位を除く位置に2つ以上フッ素が置換された式(2)に示される錯体形成用第1中間体を含むフッ素置換2-フェニルピリジンを反応させ、錯体を形成することにより本発明のイリジウム錯体が得られる。配位子となる第1中間体を含むフッ素置換2-フェニルピリジンの製造方法は、(1)有機リチウム化合物を用いた方法と、(2)金属マグネシウムを用いた方法が挙げられる。
(1)有機リチウム化合物を用いた方法
先ず、上記式(6)に示すフッ素置換ハロゲン化ベンゼン又は式(9)に示すハロゲン化ベンゼンを用意する。この式(6)又は式(9)に示す化合物は、ベンゼン環内の水素がフッ素により0〜4個置換された化合物である。ハロゲン化ベンゼンに置換したフッ素の数と後述する2-ハロゲン化ピリジンに置換したフッ素の合計が2〜8個となるように置換する。従って、例えばハロゲン化ベンゼンに1つもフッ素が置換されていない場合、2-ハロゲン化ピリジンには少なくとも2つ以上フッ素が置換されていることになる。次いで、下記式(12)に示すように、このハロゲン化ベンゼン或いはフッ素置換ハロゲン化ベンゼンに有機リチウム化合物(式(12)中ではn-ブチルリチウム)を反応させることにより、リチウム原子がハロゲン化ベンゼン中のハロゲン原子と置換した第2中間体を含む有機リチウム化合物が合成される。
【化23】
但し、XはCl、Br又はI元素であって、整数mは0≦m≦4である。
この反応に使用される有機リチウム化合物としては、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム等が挙げられる。溶媒としては、一般的にエーテル系溶媒を使用することができる。エーテル系溶媒としては、テトラヒドロフラン(以下、THFという。)、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等が挙げられる。この式(12)に示す反応では、反応温度が−78〜0℃の範囲内で反応時間が0.5〜3時間である。反応温度が−78℃未満では効果的に反応が進行せず、0℃を越えると副反応が起きてしまうため、有機リチウム化合物の収率が低下する。好ましい反応温度は−78〜−40℃である。反応時間が0.5時間未満であると、反応が十分に進行しない。好ましい反応時間は1〜3時間である。
次に、下記式(13)に示すように、第2中間体を含む有機リチウム化合物に塩化亜鉛(II)を反応させて第3中間体を含むフッ素置換塩化亜鉛ベンゼンに変換する。
【化24】
但し、整数mは0≦m≦4である。
ここで、第2中間体を含む有機リチウム化合物を第3中間体を含むフッ素置換塩化亜鉛ベンゼンに変換するのは、後述するフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンとの反応の際に、有機リチウム化合物の求核性を制御するためである。溶媒としては、一般的にエーテル系溶媒を使用することができる。エーテル系溶媒としては、THF、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等が挙げられる。この合成は、0℃〜溶媒の沸点の範囲内で1〜5時間行うことにより反応が進行する。
次に、下記式(14)に示すように、第3中間体を含むフッ素置換塩化亜鉛ベンゼンにフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンを反応させてフッ素が2個以上置換した第1中間体を含むフッ素置換2-フェニルピリジンを製造する。
【化25】
但し、X’はCl、Br又はI元素であり、整数m及びnの関係が2≦m+n≦8であって、0≦m≦4かつ1≦n≦4である。
この式(14)に示す反応では、パラジウム触媒、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム[Pd(PPh3)4]を溶媒中に存在させることにより、第3中間体を含むフッ素置換塩化亜鉛ベンゼンとフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンとの反応が位置選択性よく進行する。ここで使用されるフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンのピリジン環にフッ素を導入する方法としては、アミノ基を有した2-ハロゲン化ピリジンのジアゾフッ素化が適当である。溶媒としては、一般的にエーテル系溶媒を使用することができる。エーテル系溶媒としては、THF、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等が挙げられる。この反応では、反応温度は、0℃〜溶媒の沸点の範囲内で反応時間は1〜24時間である。反応時間が1時間未満であると、反応が十分に進行しない。好ましくは2〜24時間である。このように上記式(12)〜式(14)に示す反応により、フッ素が2個以上置換した第1中間体を含むフッ素置換2-フェニルピリジンが得られる。
具体的には、上記式(6)に示すフッ素置換ハロゲン化ベンゼンと式(8)に示すフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンを用いることにより、フェニル基側とピリジン環側の双方に1つ以上フッ素を置換させたフッ素置換2-フェニルピリジンが得られる。更に、上記式(9)に示すハロゲン化ベンゼンと式(11)に示すフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンを用いることにより、ピリジン環側のみにフッ素を置換させたフッ素置換2-フェニルピリジンが得られる。この場合ピリジン環側に2つ以上のフッ素が置換される。
(2)金属マグネシウムを用いた方法
先ず、上記式(6)に示すフッ素置換ハロゲン化ベンゼン又は式(9)に示すハロゲン化ベンゼンを用意する。次いで下記式(15)に示すように、ハロゲン化ベンゼン或いはフッ素置換ハロゲン化ベンゼンに金属マグネシウムを反応させることにより、ハロゲン原子とベンゼン環との間にマグネシウムが挿入された有機金属化合物が得られる。
【化26】
但し、XはCl、Br又はI元素であり、整数mは0≦m≦4である。
この式(15)に示す反応は、エーテル系溶媒中でハロゲン化アルキルとマグネシウムとを作用させることにより得られるグリニャール試薬(Grignard Reagent)の製造方法と同様の反応である。エーテル系溶媒としては、THF、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等が挙げられる。この反応では、反応温度が0℃〜使用溶媒の沸点の範囲内で反応時間が1〜48時間である。反応温度が0℃未満では効果的に反応が進行せず、有機金属化合物の収率が低下する。反応温度の上限値を溶媒の沸点に規定したのは、その温度以上には上がらないからである。溶媒の沸点近傍の温度で溶媒が激しく還流するような状態として反応させると収率が低下するため、溶媒が緩やかに還流するぐらいが反応条件としては最適である。反応時間が1時間未満であると、反応が十分に進行しない。好ましい反応時間は3〜48時間である。
下記式(16)に示すように、この有機金属化合物にフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンと反応させてフッ素が2個以上置換した第1中間体含むフッ素置換2-フェニルピリジンを製造する。
【化27】
但し、XはCl、Br又はI元素であり、X’はCl、Br又はI元素であり、整数m及びnの関係が2≦m+n≦8であって、0≦m≦4かつ1≦n≦4である。
この式(16)に示す反応では、式(14)に示す反応と同様に、パラジウム触媒、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム[Pd(PPh3)4]を触媒として存在させることにより、フッ素置換2-ハロゲン化ピリジンとの反応が位置選択性よく進行する。ここで使用されるフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンのピリジン環にフッ素を導入する方法としては、アミノ基を有した2-ハロゲン化ピリジンのジアゾフッ素化が適当である。溶媒としては、一般的にエーテル系溶媒を使用することができる。エーテル系溶媒としては、THF、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等が挙げられる。この反応では、反応温度が0℃〜使用溶媒の沸点の範囲内で反応時間が1〜24時間である。反応温度が0℃未満では効果的に反応が進行せず、フッ素置換2-フェニルピリジンの収率が低下する。反応温度の上限値を溶媒の沸点に規定したのは、その温度以上には上がらないからである。溶媒の沸点近傍の温度で溶媒が激しく還流するような状態として反応させると収率が低下するため、溶媒が還流しない程度が反応条件としては最適である。反応時間が1時間未満であると、反応が十分に進行しない。好ましい反応時間は2〜24時間である。このように上記式(15)及び式(16)に示す反応により、前述した式(12)〜式(14)に示す反応と同様に、フッ素が2個以上置換した第1中間体を含むフッ素置換2-フェニルピリジンが得られる。
また、別の方法としては、先ず、上記式(8)、式(11)に示すフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンを用意する。次いで下記式(17)に示すように、フッ素置換2-ハロゲン化ピリジンに金属マグネシウムを反応させることにより、ハロゲン原子とピリジン環との間にマグネシウムが挿入された第4中間体が得られる。ここで使用されるフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンはアミノ基を有した2-ハロゲン化ピリジンのジアゾフッ素化により得られる。
【化28】
但し、X’はCl、Br又はI元素であり、整数nは1≦n≦4である。
この式(17)に示す反応は、上記式(15)に示す反応と同じく、グリニャール試薬の製造方法と同様の方法である。エーテル系溶媒としては、THF、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等が挙げられる。この反応では、反応温度が0℃〜使用溶媒の沸点の範囲内で反応時間が1〜48時間である。反応温度が0℃未満では効果的に反応が進行せず、第4中間体の収率が低下する。反応温度の上限値を溶媒の沸点に規定したのは、その温度以上には上がらないからである。溶媒の沸点近傍の温度で溶媒が激しく還流するような状態として反応を進行させると、収率が低下するため、溶媒が緩やかに還流する程度が反応条件としては最適である。反応時間が1時間未満であると、反応が十分に進行しない。好ましい反応時間は2〜48時間である。
下記式(18)に示すように、この第4中間体にフッ素置換ブロモベンゼンを反応させてフッ素が2個以上置換した第1中間体を含むフッ素置換2-フェニルピリジンを製造する。
【化29】
但し、XはCl、Br又はI元素であり、X’はCl、Br又はI元素であり、整数m及びnの関係が2≦m+n≦8であって、0≦m≦4かつ1≦n≦4である。
この式(18)に示す反応では、パラジウム触媒、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム[Pd(PPh3)4]を触媒として存在させることにより、フッ素置換ハロゲン化ベンゼンとの反応が位置選択性よく進行する。溶媒としては、一般的にエーテル系溶媒を使用することができる。エーテル系溶媒としては、THF、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等が挙げられる。この反応では、反応温度が0℃〜使用溶媒の沸点の範囲内で反応時間が1〜24時間である。反応温度が0℃未満では効果的に反応が進行せず、フッ素置換2-フェニルピリジンの収率が低下する。反応温度の上限値を溶媒の沸点に規定したのは、その温度以上には上がらないからである。溶媒の沸点近傍の温度で溶媒が激しく還流するような状態として反応を進行させると、収率が低下するため、溶媒が還流しない程度が反応条件としては最適である。反応時間が1時間未満であると、反応が十分に進行しない。好ましい反応時間は2〜24時間である。このように上記式(17)及び式(18)に示す反応により、前述した式(12)〜式(14)及び式(15)、式(16)にそれぞれ示す反応と同様に、フッ素が2個以上置換した第1中間体を含むフッ素置換2-フェニルピリジンが得られる
次に、下記式(19)に示すように、イリジウム(III)アセチルアセトネートと上述した方法により得られた窒素原子から数えて1,6,7及び12位を除く位置に2つ以上フッ素が置換された第1中間体を含むフッ素置換2-フェニルピリジンとを反応させ、錯体を形成することにより本発明のイリジウム錯体が製造される。
【化30】
但し、整数m及びnの関係が2≦m+n≦8であって、0≦m≦4かつ1≦n≦4である。
この式(19)に示す反応では、イリジウム錯体化においては、溶媒としては、グリセロール等を使用することができる。この反応は、一般的に溶媒が還流する温度で行われ、0.266〜101.08kPa、反応温度が130〜280℃の範囲内で反応時間が1〜12時間である。反応温度が130℃未満では効果的に反応が進行せず、イリジウム錯体の収率が低下する。反応温度の上限値を280℃に規定したのは使用するグリセロールが290℃で分解してしまうからである。反応時間が1時間未満であると、反応が十分に進行しない。好ましい反応時間は8〜12時間である。
このようにして得られたフッ素置換イリジウム錯体を質量分析、元素分析、IR、NMR等にて測定したところ、それぞれ目的とする化合物が生成していることが確認された。
【実施例】
次に本発明の実施例を説明する。
<実施例1>
先ず、活性化したマグネシウム0.45gとジエチルエーテル30mlにジエチルエーテル50mlで希釈した1-ブロモ-4-フルオロベンゼン3.0gを添加し、40℃で8時間撹拌することによりグリニャール試薬を調製した。次いで、5-アミノ-2-クロロピリジンのジアゾフッ素化により得られた5-フルオロ-2-クロロピリジン2.3g、パラジウム触媒1.2gとジエチルエーテル70mlをフラスコに入れておき、調製したグリニャール試薬を滴下して10℃で4時間反応させることにより、5-フルオロ-2-(4-フルオロフェニル)ピリジンを得た。
次に、5-フルオロ-2-(4-フルオロフェニル)ピリジン0.59gにイリジウムアセチルアセトネート0.5g、グリセリン50mlを加え、2.66kPa、190℃の条件下で10時間撹拌加熱をした。これに塩酸とジクロロメタンを添加し、有機層を濃縮して(5-フルオロ-2-(4-フルオロフェニル)ピリジン)3Irを得た。
<実施例2>
先ず、活性化したマグネシウム0.45gとTHF30mlにTHF50mlで希釈した1-ブロモ-3-フルオロベンゼン3.0gを添加し、60℃で2時間撹拌することによりグリニャール試薬を調製した。次いで、5-アミノ-2-クロロピリジンのジアゾフッ素化により得られた5-フルオロ-2-クロロピリジン2.3g、パラジウム触媒1.2gとTHF70mlをフラスコに入れておき、調製したグリニャール試薬を滴下して30℃で2時間反応させることにより、5-フルオロ-2-(3-フルオロフェニル)ピリジンを得た。
次に、5-フルオロ-2-(3-フルオロフェニル)ピリジン0.59gにイリジウムアセチルアセトネート0.5g、グリセリン50mlを加え、6.65kPa、210℃の条件下で10時間撹拌加熱をした。これに塩酸とジクロロメタンを添加し、有機層を濃縮して(5-フルオロ-2-(3-フルオロフェニル)ピリジン)3Irを得た。
<実施例3>
先ず、活性化したマグネシウム0.45gとジイソプロピルエーテル30mlにジイソプロピルエーテル50mlで希釈した1-ブロモ-2-フルオロベンゼン3.0gを添加し、30℃で10時間撹拌することによりグリニャール試薬を調製した。次いで、5-アミノ-2-クロロピリジンのジアゾフッ素化により得られた5-フルオロ-2-クロロピリジン2.3g、パラジウム触媒1.2gとジイソプロピルエーテル70mlをフラスコに入れておき、調製したグリニャール試薬を滴下して25℃で3時間反応させることにより、5-フルオロ-2-(2-フルオロフェニル)ピリジンを得た。
次に、5-フルオロ-2-(2-フルオロフェニル)ピリジン0.59gにイリジウムアセチルアセトネート0.5g、グリセリン50mlを加え、2.66kPa、190℃の条件下で10時間撹拌加熱をした。これに塩酸とジクロロメタンを添加し、有機層を濃縮して(5-フルオロ-2-(2-フルオロフェニル)ピリジン)3Irを得た。
<実施例4>
先ず、活性化したマグネシウム0.45gとTHF30mlにTHF50mlで希釈した1-ブロモ-4-フルオロベンゼン3.0gを添加し、50℃で3時間撹拌することによりグリニャール試薬を調製した。次いで、3-アミノ-2-クロロピリジンのジアゾフッ素化により得られた3-フルオロ-2-クロロピリジン2.3g、パラジウム触媒1.2gとTHF70mlをフラスコに入れておき、調製したグリニャール試薬を滴下して30℃で3時間反応させることにより、3-フルオロ-2-(4-フルオロフェニル)ピリジンを得た。
次に、3-フルオロ-2-(4-フルオロフェニル)ピリジン0.59gにイリジウムアセチルアセトネート0.5g、グリセリン50mlを加え、1.20kPa、165℃の条件下で10時間撹拌加熱をした。これに塩酸とジクロロメタンを添加し、有機層を濃縮して(3-フルオロ-2-(4-フルオロフェニル)ピリジン)3Irを得た。
<実施例5>
先ず、活性化したマグネシウム0.45gとジエチルエーテル30mlにジエチルエーテル50mlで希釈した1-ブロモ-3-フルオロベンゼン3.0gを添加し、40℃で24時間撹拌することによりグリニャール試薬を調製した。次いで、3-アミノ-2-クロロピリジンのジアゾフッ素化により得られた3-フルオロ-2-クロロピリジン2.3g、パラジウム触媒1.2gとジエチルエーテル70mlをフラスコに入れておき、調製したグリニャール試薬を滴下して25℃で5時間反応させることにより、3-フルオロ-2-(3-フルオロフェニル)ピリジンを得た。
次に、3-フルオロ-2-(3-フルオロフェニル)ピリジン0.59gにイリジウムアセチルアセトネート0.5g、グリセリン50mlを加え、2.66kPa、190℃の条件下で10時間撹拌加熱をした。これに塩酸とジクロロメタンを添加し、有機層を濃縮して(3-フルオロ-2-(3-フルオロフェニル)ピリジン)3Irを得た。
<実施例6>
先ず、活性化したマグネシウム0.45gとジイソプロピルエーテル30mlにジイソプロピルエーテル50mlで希釈した1-ブロモ-2-フルオロベンゼン3.0gを添加し、40℃で24時間撹拌することによりグリニャール試薬を調製した。次いで、3-アミノ-2-クロロピリジンのジアゾフッ素化により得られた3-フルオロ-2-クロロピリジン2.3g、パラジウム触媒1.2gとジイソプロピルエーテル70mlをフラスコに入れておき、調製したグリニャール試薬を滴下して30℃で4時間反応させることにより、3-フルオロ-2-(2-フルオロフェニル)ピリジンを得た。
次に、3-フルオロ-2-(2-フルオロフェニル)ピリジン0.59gにイリジウムアセチルアセトネート0.5g、グリセリン50mlを加え、2.66kPa、190℃の条件下で10時間撹拌加熱をした。これに塩酸とジクロロメタンを添加し、有機層を濃縮して(3-フルオロ-2-(2-フルオロフェニル)ピリジン)3Irを得た。
<実施例7>
先ず、活性化したマグネシウム0.45gとジイソプロピルエーテル30mlにジイソプロピルエーテル50mlで希釈した1-ブロモ-4-フルオロベンゼン3.0gを添加し、50℃で12時間撹拌することによりグリニャール試薬を調製した。次いで、2-アミノ-6-ブロモピリジンのジアゾフッ素化により得られた6-フルオロ-2-ブロモピリジン2.3g、パラジウム触媒1.2gとジイソプロピルエーテル70mlをフラスコに入れておき、調製したグリニャール試薬を滴下して30℃で5時間反応させることにより、2-フルオロ-6-(4-フルオロフェニル)ピリジンを得た。
次に、2-フルオロ-6-(4-フルオロフェニル)ピリジン0.59gにイリジウムアセチルアセトネート0.5g、グリセリン50mlを加え、1.60kPa、180℃の条件下で10時間撹拌加熱をした。これに塩酸とジクロロメタンを添加し、有機層を濃縮して(2-フルオロ-6-(4-フルオロフェニル)ピリジン)3Irを得た。
<実施例8>
先ず、活性化したマグネシウム0.45gとジイソプロピルエーテル30mlにジイソプロピルエーテル50mlで希釈した1-ブロモ-3-フルオロベンゼン3.0gを添加し、60℃で20時間撹拌することによりグリニャール試薬を調製した。次いで、2-アミノ-6-ブロモピリジンのジアゾフッ素化により得られた6-フルオロ-2-ブロモピリジン2.3g、パラジウム触媒1.2gとジエチルエーテル70mlをフラスコに入れておき、調製したグリニャール試薬を滴下して40℃で3時間反応させることにより、2-フルオロ-6-(3-フルオロフェニル)ピリジンを得た。
次に、2-フルオロ-6-(3-フルオロフェニル)ピリジン0.59gにイリジウムアセチルアセトネート0.5g、グリセリン50mlを加え、2.66kPa、190℃の条件下で10時間撹拌加熱をした。これに塩酸とジクロロメタンを添加し、有機層を濃縮して(2-フルオロ-6-(3-フルオロフェニル)ピリジン)3Irを得た。
<実施例9>
先ず、活性化したマグネシウム0.45gとTHF30mlにTHF50mlで希釈した1-ブロモ-2-フルオロベンゼン3.0gを添加し、30℃で5時間撹拌することによりグリニャール試薬を調製した。次いで、2-アミノ-6-ブロモピリジンのジアゾフッ素化により得られた6-フルオロ-2-ブロモピリジン2.3g、パラジウム触媒1.2gとTHF70mlをフラスコに入れておき、調製したグリニャール試薬を滴下して25℃で4時間反応させることにより、2-フルオロ-6-(2-フルオロフェニル)ピリジンを得た。
次に、2-フルオロ-6-(2-フルオロフェニル)ピリジン0.59gにイリジウムアセチルアセトネート0.5g、グリセリン50mlを加え、2.66kPa、190℃の条件下で10時間撹拌加熱をした。これに塩酸とジクロロメタンを添加し、有機層を濃縮して(2-フルオロ-6-(2-フルオロフェニル)ピリジン)3Irを得た。
<実施例10>
先ず、活性化したマグネシウム0.45gに1,2-ジメトキシエタンを30ml添加し、攪拌しておく。5-アミノ-2-クロロピリジンのジアゾフッ素化により得られた5-フルオロ-2-クロロピリジン2.3gを1,2-ジメトキシエタン10mlにて希釈したものを滴下し、55℃で4時間攪拌することによりグリニャール試薬を調製した。
次いで、1-ブロモ-4-フルオロベンゼン3.0g、パラジウム触媒0.5gと1,2-ジメトキシエタン30mlをフラスコに入れておき、先に調製したグリニャール試薬を滴下して45℃で5時間反応させることにより、5-フルオロ-2-(4-フルオロフェニル)ピリジンを得た。
次に、5-フルオロ-2-(4-フルオロフェニル)ピリジン0.59gにイリジウムアセチルアセトネート0.5g、グリセリン50mlを加え、6.65kPa、210℃の条件下で10時間加熱攪拌した。これに塩酸とジクロロメタンを添加し、有機層を濃縮して(5-フルオロ-2-(4-フルオロフェニル)ピリジン)3Irを得た。
<実施例11>
先ず、活性化したマグネシウム0.45gにTHFを30ml添加し、攪拌しておく。5-アミノ-2-クロロピリジンのジアゾフッ素化により得られた5-フルオロ-2-クロロピリジン2.3gをTHF10mlにて希釈したものを滴下し、60℃で4時間攪拌することによりグリニャール試薬を調製した。
次いで、1-ブロモ-3-フルオロベンゼン3.0g、パラジウム触媒0.5gとTHF30mlをフラスコに入れておき、先に調製したグリニャール試薬を滴下して30℃で18時間反応させることにより、5-フルオロ-2-(3-フルオロフェニル)ピリジンを得た。
次に、5-フルオロ-2-(3-フルオロフェニル)ピリジン0.59gにイリジウムアセチルアセトネート0.5g、グリセリン50mlを加え、2.66kPa、190℃の条件下で9時間加熱攪拌した。これに塩酸とジクロロメタンを添加し、有機層を濃縮して(5-フルオロ-2-(3-フルオロフェニル)ピリジン)3Irを得た。
<実施例12>
先ず、活性化したマグネシウム0.45gに1,2-ジメトキシエタンを30ml添加し、攪拌しておく。5-アミノ-2-クロロピリジンのジアゾフッ素化により得られた5-フルオロ-2-クロロピリジン2.3gを1,2-ジメトキシエタン10mlにて希釈したものを滴下し、40℃で30時間攪拌することによりグリニャール試薬を調製した。
次いで、1-ブロモ-2-フルオロベンゼン3.0g、パラジウム触媒0.5gと1,2-ジメトキシエタン30mlをフラスコに入れておき、先に調製したグリニャール試薬を滴下して30℃で18時間反応させることにより、5-フルオロ-2-(2-フルオロフェニル)ピリジンを得た。
次に、5-フルオロ-2-(2-フルオロフェニル)ピリジン0.59gにイリジウムアセチルアセトネート0.5g、グリセリン50mlを加え、2.66kPa、190℃の条件下で10時間加熱攪拌した。これに塩酸とジクロロメタンを添加し、有機層を濃縮して(5-フルオロ-2-(2-フルオロフェニル)ピリジン)3Irを得た。
<実施例13>
先ず、活性化したマグネシウム0.45gにジイソプロピルエーテルを30ml添加し、攪拌しておく。3-アミノ-2-クロロピリジンのジアゾフッ素化により得られた3-フルオロ-2-クロロピリジン2.3gをジイソプロピルエーテル10mlにて希釈したものを滴下し、40℃で36時間攪拌することによりグリニャール試薬を調製した。
次いで、1-クロロ-4-フルオロベンゼン2.2g、パラジウム触媒0.5gとジイソプロピルエーテル30mlをフラスコに入れておき、先に調製したグリニャール試薬を滴下して40℃で16時間反応させることにより、3-フルオロ-2-(4-フルオロフェニル)ピリジンを得た。
次に、3-フルオロ-2-(4-フルオロフェニル)ピリジン0.59gにイリジウムアセチルアセトネート0.5g、グリセリン50mlを加え、2.66kPa、190℃の条件下で10時間加熱攪拌した。これに塩酸とジクロロメタンを添加し、有機層を濃縮して(3-フルオロ-2-(4-フルオロフェニル)ピリジン)3Irを得た。
<実施例14>
先ず、活性化したマグネシウム0.45gにTHFを30ml添加し、攪拌しておく。3-アミノ-2-クロロピリジンのジアゾフッ素化により得られた3-フルオロ-2-クロロピリジン2.3gをTHF10mlにて希釈したものを滴下し、30℃で5時間攪拌することによりグリニャール試薬を調製した。
次いで、1-イオド-3-フルオロベンゼン3.8g、パラジウム触媒0.5gとTHF30mlをフラスコに入れておき、先に調製したグリニャール試薬を滴下して35℃で5時間反応させることにより、3-フルオロ-2-(3-フルオロフェニル)ピリジンを得た。
次に、3-フルオロ-2-(3-フルオロフェニル)ピリジン0.59gにイリジウムアセチルアセトネート0.5g、グリセリン50mlを加え、1.60kPa、180℃の条件下で10時間加熱攪拌した。これに塩酸とジクロロメタンを添加し、有機層を濃縮して(3-フルオロ-2-(3-フルオロフェニル)ピリジン)3Irを得た。
<実施例15>
先ず、活性化したマグネシウム0.45gにジエチルエーテルを30ml添加し、攪拌しておく。3-アミノ-2-クロロピリジンのジアゾフッ素化により得られた3-フルオロ-2-クロロピリジン2.3gをジエチルエーテル10mlにて希釈したものを滴下し、20℃で48時間攪拌することによりグリニャール試薬を調製した。
次いで、1-ブロモ-2-フルオロベンゼン3.0g、パラジウム触媒0.5gとジエチルエーテル30mlをフラスコに入れておき、先に調製したグリニャール試薬を滴下して30℃で24時間反応させることにより、3-フルオロ-2-(2-フルオロフェニル)ピリジンを得た。
次に、3-フルオロ-2-(2-フルオロフェニル)ピリジン0.59gにイリジウムアセチルアセトネート0.5g、グリセリン50mlを加え、2.66kPa、190℃の条件下で10時間加熱攪拌した。これに塩酸とジクロロメタンを添加し、有機層を濃縮して(3-フルオロ-2-(2-フルオロフェニル)ピリジン)3Irを得た。
<実施例16>
先ず、活性化したマグネシウム0.45gにジエチルエーテルを30ml添加し、攪拌しておく。2-アミノ-6-ブロモピリジンのジアゾフッ素化により得られた2-フルオロ-6-ブロモピリジン2.3gをジエチルエーテル10mlにて希釈したものを滴下し、25℃で48時間攪拌することによりグリニャール試薬を調製した。
次いで、1-ブロモ-2-フルオロベンゼン3.0g、パラジウム触媒0.5gとジエチルエーテル30mlをフラスコに入れておき、先に調製したグリニャール試薬を滴下して35℃で24時間反応させることにより、2-フルオロ-6-(4-フルオロフェニル)ピリジンを得た。
次に、2-フルオロ-6-(4-フルオロフェニル)ピリジン0.59gにイリジウムアセチルアセトネート0.5g、グリセリン50mlを加え、1.20kPa、160℃の条件下で10時間加熱攪拌した。これに塩酸とジクロロメタンを添加し、有機層を濃縮して(2-フルオロ-6-(4-フルオロフェニル)ピリジン)3Irを得た。
<実施例17>
先ず、活性化したマグネシウム0.45gにジイソプロピルエーテルを30ml添加し、攪拌しておく。2-アミノ-6-ブロモピリジンのジアゾフッ素化により得られた2-フルオロ-6-ブロモピリジン2.3gをジイソプロピルエーテル10mlにて希釈したものを滴下し、40℃で36時間攪拌することによりグリニャール試薬を調製した。
次いで、1-ブロモ-3-フルオロベンゼン3.0g、パラジウム触媒0.5gとジイソプロピルエーテル30mlをフラスコに入れておき、先に調製したグリニャール試薬を滴下して35℃で24時間反応させることにより、2-フルオロ-6-(3-フルオロフェニル)ピリジンを得た。
次に、2-フルオロ-6-(3-フルオロフェニル)ピリジン0.59gにイリジウムアセチルアセトネート0.5g、グリセリン50mlを加え、2.66kPa、190℃の条件下で10時間加熱攪拌した。これに塩酸とジクロロメタンを添加し、有機層を濃縮して(2-フルオロ-6-(3-フルオロフェニル)ピリジン)3Irを得た。
<実施例18>
先ず、活性化したマグネシウム0.45gにTHFを30ml添加し、攪拌しておく。2-アミノ-6-ブロモピリジンのジアゾフッ素化により得られた2-フルオロ-6-ブロモピリジン2.3gをTHF10mlにて希釈したものを滴下し、50℃で5時間攪拌することによりグリニャール試薬を調製した。
次いで、1-ブロモ-2-フルオロベンゼン3.0g、パラジウム触媒0.5gとTHF30mlをフラスコに入れておき、先に調製したグリニャール試薬を滴下して45℃で4時間反応させることにより、2-フルオロ-6-(2-フルオロフェニル)ピリジンを得た。
次に、2-フルオロ-6-(2-フルオロフェニル)ピリジン0.59gにイリジウムアセチルアセトネート0.5g、グリセリン50mlを加え、2.66kPa、190℃の条件下で10時間加熱攪拌した。これに塩酸とジクロロメタンを添加し、有機層を濃縮して(2-フルオロ-6-(2-フルオロフェニル)ピリジン)3Irを得た。
<評価>
表1に実施例1〜3、表2に実施例4〜6,表3に実施例7〜9,表4に実施例10〜12、表5に実施例13〜15、表6に実施例16〜18の原料、反応条件及び得られた化合物をそれぞれ示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
表1〜表6より明らかなように、上記製造方法により、イリジウム錯体の配位子である2-フェニルピリジンの任意の位置にフッ素を導入することができる。
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の上記式(1)に示す構造を有するイリジウム錯体はフッ素が配位子である2-フェニルピリジン内に2つ以上置換されているため、炭素原子との結合エネルギーがより高まり、耐熱性及び耐酸化性等の向上される。また、本発明の製造方法は、耐久性特に耐熱性、耐酸化性に優れたフッ素置換イリジウム錯体を収率よく合成でき、得られたフッ素置換イリジウム錯体は、高発光効率有機EL材料として極めて有効である。
Claims (11)
- イリジウム (III) アセチルアセトネートと窒素原子から数えて1,6,7及び12位を除く位置に2つ以上フッ素が置換されたフッ素置換 2- フェニルピリジンとを反応させ、錯体を形成させることを特徴とするフッ素置換イリジウム錯体の製造方法において、
前記2つ以上フッ素が置換されたフッ素置換2-フェニルピリジンが次の式(6)で示されるフッ素置換ハロゲン化ベンゼンを有機リチウム化合物と反応させた後、塩化亜鉛(II)と反応させることにより得られる次の式(7)で示されるフッ素置換塩化亜鉛ベンゼンと次の式(8)で示されるフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンとを反応させることにより得られることを特徴とするフッ素置換イリジウム錯体の製造方法。
- イリジウム (III) アセチルアセトネートと窒素原子から数えて1,6,7及び12位を除く位置に2つ以上フッ素が置換されたフッ素置換 2- フェニルピリジンとを反応させ、錯体を形成させることを特徴とするフッ素置換イリジウム錯体の製造方法において、
前記2つ以上フッ素が置換されたフッ素置換2-フェニルピリジンが次の式(9)で示されるハロゲン化ベンゼンを有機リチウム化合物と反応させた後、塩化亜鉛(II)と反応させることにより得られる次の式(10)で示される塩化亜鉛ベンゼンと次の式(11)で示されるフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンとを反応させることにより得られることを特徴とするフッ素置換イリジウム錯体の製造方法。
- イリジウム (III) アセチルアセトネートと窒素原子から数えて1,6,7及び12位を除く位置に2つ以上フッ素が置換されたフッ素置換 2- フェニルピリジンとを反応させ、錯体を形成させることを特徴とするフッ素置換イリジウム錯体の製造方法において、
前記2つ以上フッ素が置換されたフッ素置換2-フェニルピリジンが請求項6記載の式(6)で示されるフッ素置換ハロゲン化ベンゼンを金属マグネシウムと反応させることにより得られる有機金属化合物と請求項6記載の式(8)で示されるフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンとを反応させることにより得られることを特徴とするフッ素置換イリジウム錯体の製造方法。 - イリジウム (III) アセチルアセトネートと窒素原子から数えて1,6,7及び12位を除く位置に2つ以上フッ素が置換されたフッ素置換 2- フェニルピリジンとを反応させ、錯体を形成させることを特徴とするフッ素置換イリジウム錯体の製造方法において、
前記2つ以上フッ素が置換されたフッ素置換2-フェニルピリジンが請求項7記載の式(9)で示されるハロゲン化ベンゼンを金属マグネシウムと反応させることにより得られる有機金属化合物と請求項7記載の式(11)で示されるフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンとを反応させることにより得られることを特徴とするフッ素置換イリジウム錯体の製造方法。 - イリジウム (III) アセチルアセトネートと窒素原子から数えて1,6,7及び12位を除く位置に2つ以上フッ素が置換されたフッ素置換 2- フェニルピリジンとを反応させ、錯体を形成させることを特徴とするフッ素置換イリジウム錯体の製造方法において、
前記2つ以上フッ素が置換されたフッ素置換2-フェニルピリジンが請求項6記載の式(8)で示されるフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンを金属マグネシウムと反応させることにより得られる有機金属化合物と請求項6記載の式(6)で示されるフッ素置換ハロゲン化ベンゼンとを反応させることにより得られることを特徴とするフッ素置換イリジウム錯体の製造方法。 - イリジウム (III) アセチルアセトネートと窒素原子から数えて1,6,7及び12位を除く位置に2つ以上フッ素が置換されたフッ素置換 2- フェニルピリジンとを反応させ、錯体を形成させることを特徴とするフッ素置換イリジウム錯体の製造方法において、
前記2つ以上フッ素が置換されたフッ素置換2-フェニルピリジンが請求項7記載の式(11)で示されるフッ素置換2-ハロゲン化ピリジンを金属マグネシウムと反応させることにより得られる有機金属化合物と請求項7記載の式(9)で示されるハロゲン化ベンゼンとを反応させることにより得られることを特徴とするフッ素置換イリジウム錯体の製造方法。
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