JP3991200B2 - 密封装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、密封装置に係り、更に詳しくは、複数のシールリップを有する密封装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来からこの種の密封装置として、例えば図3に示す自動車用車輪懸架装置のベアリング部51に用いられる密封装置52が知られており、図4に拡大して示すようにこの密封装置52は以下のように構成されている。
【0003】
すなわち先ず、上記ベアリング部51における外輪53の内周に嵌着される金属等剛材製の取付環54が設けられており、この取付環54にゴム状弾性材製の弾性体55が加硫接着されており、この弾性体55に複数のシールリップが一体成形されており、この複数のシールリップが、上記ベアリング部51における回転部材であるハブ56に設けられたフランジ部57の端面に摺動自在に密接する外径側サイドリップ58と、その内周側において同じくフランジ部57の端面に摺動自在に密接する内径側サイドリップ59と、ハブ56の外周面に摺動自在に密接するグリースリップ60とによって構成されている。
【0004】
上記三本のシールリップのうち、外径側サイドリップ58および内径側サイドリップ59は、外部の泥水やダスト等の異物がベアリング内部へ侵入しないようにこれをシールするものであって、その機能から外向き構造とされ、基端から先端へかけて径寸法が徐々に拡大するように形成されている。また、グリースリップ60は、ベアリング内部の潤滑用グリースが外部へ漏洩しないようにこれをシールするものであって、その機能から内向き構造とされ、基端から先端へかけて径寸法が徐々に縮小するように形成されている。
【0005】
上記従来の密封装置52は、その外側に向けて外径側サイドリップ58および内径側サイドリップ59の二本のリップを備えることにより、優れた耐泥水性を発揮するよう構成されているが、以下のような不都合を有している。
【0006】
すなわち、上記外径側サイドリップ58と内径側サイドリップ59とを比較すると、前者の外径側サイドリップ58の方がその径寸法が大きい分、ハブ56の回転トルク増大に及ぼす影響が大きいにもかかわらず、上記従来技術においては外部の泥水に対して一次的なシール作用を発揮するこの外径側サイドリップ58のへたり等を防止すべくこの外径側サイドリップ58の厚さt1を内径側サイドリップ59の厚さt2よりも大きく形成している(t1>t2)。したがって、二本のリップ58,59のトータルとして、ハブ56等の回転部材に対する摺動抵抗が比較的大きく、よってトルクが比較的高いと云う不都合がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上の点に鑑みて、フランジ部を設けた回転部材に摺動自在に密接する複数のシールリップを有する密封装置において、回転部材に対する摺動抵抗を低減させることができ、もって回転部材の回転トルクを低減させることができる密封装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1による密封装置は、フランジ部を設けた回転部材に摺動自在に密接する複数のシールリップを有する密封装置において、前記フランジ部の端面に摺動自在に密接する外径側サイドリップおよびその内周側において同じく前記フランジ部の端面に摺動自在に密接する内径側サイドリップを有し、リップの厚さについて、外径側サイドリップは内径側サイドリップよりも薄い形状であり、内径側サイドリップの隣りにグリースリップを有し、前記内径側サイドリップとグリースリップとの間に、両リップの引っ張り合いを抑えるくぼみを設け、内径側サイドリップの長手方向中間部位に、回転部材に対する密接荷重を低減させる折り曲げ部を設けたことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の請求項2による密封装置は、上記した請求項1の密封装置において、内径側サイドリップはハブの曲面に当接することを特徴とするものである。
【0010】
上記構成を備えた本発明の考え方は、以下のとおりである。
【0011】
すなわち、上記したように外径側サイドリップの方が内径側サイドリップよりもトルク増大への寄与度が大きいことから(軸の回転に対する抗力が外径側サイドリップの方がそのモーメントに比例して大きい)、外径側サイドリップを従来形状よりも薄く、内径側サイドリップを従来形状よりも厚くすること、すなわち外径側サイドリップよりも内径側サイドリップの方を厚くし、リップの厚さについて、外径側サイドリップを内径側サイドリップよりも薄い形状とすることによりトルク低減を実現する。尚、トルク低減のみを考慮するならば、外径側サイドリップおよび内径側サイドリップをそれぞれ単純に従来形状よりも薄くすればトルクを低減させることができるが、これでは、密封装置に必要とされる耐泥水性を十分に確保することができない。したがって本発明では、内径側サイドリップを従来形状よりも厚い形状とし、リップの厚さについて、外径側サイドリップを内径側サイドリップよりも薄い形状としたものであって、これにより二本のリップのトータルとして、トルク低減を実現し、かつ耐泥水性についても従来形状と同等以上の性能を確保する。
【0012】
また、内径側サイドリップを厚くすると、そのトルク増大が懸念されることから、各リップが回転部材に接触した状態において内径側サイドリップとグリースリップとが互いに引っ張り合わない形状(リップ自体が独立した形状)とするのが好ましく、この観点から本発明では、内径側サイドリップとグリースリップとの間に両リップの引っ張り合いを抑えるくぼみを設けることにより、両リップの互いの干渉を低減させることにした。また、本発明では、内径側サイドリップの長手方向中間部位に回転部材に対する密接荷重を低減させる折り曲げ部を設ける(内径側サイドリップを折り曲げた形状とする)ことにより、密接荷重(緊迫力)の増加を抑えることにした。
【0013】
内径側サイドリップを厚くすると耐泥水性が向上する理由は、以下のとおりである。
【0014】
すなわち、トルク低減のため外径側サイドリップを薄くすることにより、内径側サイドリップの方が厚くなる。外径側サイドリップの締め代は従来と同等で肉厚のみ薄くすることから、へたりによる影響が大きいことが考えられる。そのため、外径側サイドリップおよび内径側サイドリップトータルでの耐泥水性を考えた場合、内径側サイドリップを厚くする(サイドリップ形状は保ったまま)ことにより、へたりによる影響を少なくし、トータルで従来対比耐泥水性は同等以上とする。
【0015】
尚、本件出願には、以下の技術的事項が含まれる。
【0016】
すなわち、上記目的を達成するため、本件出願が提案する一の密封装置は、以下の内容を備えている。
【0017】
(1)リップの厚さについて、外径側サイドリップ(外側リップ)が内径側サイドリップ(内側リップ)よりも薄い形状。または外径側サイドリップよりも内径側サイドリップが厚い形状。
(2)くぼみの形成による内径側サイドリップとグリースリップの独立形状。
(3)内径側サイドリップの折れ曲がり形状。
(4)本発明の密封装置は例えば、自動車関連分野においてハブBRG(ベアリング)用シールとして用いられ、またはその他の汎用機械に用いられる。
【0018】
【発明の実施の形態】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0019】
第一実施例・・・
図1は、本発明の第一実施例に係る密封装置1の要部断面を示している。この密封装置1は、上記図3に示したような自動車用車輪懸架装置におけるベアリング部にハブBRG(ベアリング)用シールとして用いられるものであって、以下のように構成されている。
【0020】
すなわち先ず、上記ベアリング部における取付部材である外輪2の内周に嵌着される金属等剛材製の取付環3が設けられており、この取付環3にゴム状弾性材製の弾性体4が加硫接着されており、この弾性体4に複数のシールリップが一体成形されており、この複数のシールリップが、上記ベアリング部における回転部材であるハブ5に設けられたフランジ部6の端面(フランジ部6の軸方向直角端面とハブ5の外周円筒面との間に形成された断面円弧形の曲面部を含む、以下同じ)に摺動自在に密接する外径側サイドリップ7と、その内周側において同じくフランジ部6の端面に摺動自在に密接する内径側サイドリップ8と、ハブ5の外周面に摺動自在に密接するグリースリップ9とによって構成されている。
【0021】
上記三本のシールリップのうち、外径側サイドリップ7は、外部の泥水やダスト等の異物がベアリング内部へ侵入しないようこれをシールするものであって、その機能から外向き構造とされ、その基端から先端へかけて径寸法が徐々に拡大するように形成されている。
【0022】
また、内径側サイドリップ8は、同じく外部の泥水やダスト等の異物がベアリング内部へ侵入しないようこれをシールするものであって、その機能から外向き構造とされ、その先端部は径寸法が徐々に拡大するように形成されている。またこの内径側サイドリップ8の長手方向中間部位には、ハブ5に対する密接荷重を低減させるための環状の折り曲げ部11が設けられており、この折り曲げ部11が設けられていることによって、当該リップ8はその基端から折り曲げ部11へかけては径寸法が徐々に縮小し、折り曲げ部11から先端へかけては径寸法が徐々に拡大するように形成されている。
【0023】
また,外径側サイドリップ7の厚さt1よりも後者の内径側サイドリップ8の厚さt2の方が大きく形成され、リップの厚さについて、外径側サイドリップ7が内径側サイドリップ8よりも薄い形状とされている(t1<t2)。
【0024】
また、グリースリップ9は、ベアリング内部の潤滑用グリースが外部へ漏洩しないようこれをシールするものであって、その機能から内向き構造とされ、その基端から先端へかけて径寸法が徐々に縮小するように形成されている。
【0025】
更にまた、内径側サイドリップ8とその隣りに設けられたグリースリップ9との間には、その基端同士の間に位置して、装着時における両リップ8,9の引っ張り合いを抑えるための環状のくぼみ10が設けられている。
【0026】
上記構成の密封装置1によれば、外径側サイドリップ7の厚さt1より内径側サイドリップ8の厚さt2の方が大きく形成され、リップの厚さについて、外径側サイドリップ7が内径側サイドリップ8よりも薄い形状とされているために、上記したところにしたがってトルクの低減を実現することができ、かつ耐泥水性を確保することができる。また、内径側サイドリップ8とグリースリップ9の間に環状のくぼみ10が設けられているために、リップ8,9同士が装着姿勢において引っ張り合うのを抑えることができ、内径側サイドリップ8におけるトルクの増大を抑えることができる。また、内径側サイドリップ8の長手方向中間部位に環状の折り曲げ部11が設けられているために、フランジ部6に対する密接荷重を低減させることができ、緊迫力の増加を抑えることができる。
【0027】
尚、上記第一実施例に係る密封装置1は、その構成を以下のように付加または変更しても良い。
【0028】
(1)図2に示すように、グリースリップ9の基端部内周に環状の突起部12を一体成形する。
【0029】
(2)上記第一実施例では、内径側サイドリップ8に折り曲げ部11が設けられたことにより、リップ8が基端から折り曲げ部11へかけては径寸法が徐々に縮小し、折り曲げ部11から先端へかけては径寸法が徐々に拡大する形状とされているが、これに代えて、以下の形状とする。
A案)リップ8が基端から折り曲げ部11へかけては径寸法が一定であり、折り曲げ部11から先端へかけては径寸法が徐々に拡大する形状とする。
B案)リップ8が基端から折り曲げ部11へかけては径寸法が徐々に拡大し、折り曲げ部11から先端へかけても径寸法が徐々に拡大し、前者の拡大率よりも後者の拡大率の方を大きく設定した形状とする。
【0030】
(3)各リップは、その厚さが基端から先端へかけて徐々に薄くなるような形状であっても良い。この場合、厚さの比較は、長手方向中央部位(基端からの距離と先端からの距離が等しい部位)においてこれを行なうことにする。
【0031】
【発明の効果】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0032】
すなわち、上記構成を備えた本発明の密封装置においては、フランジ部を設けた回転部材に摺動自在に密接する複数のシールリップを有する密封装置において、外径側サイドリップの厚さよりも内径側サイドリップの厚さの方が大きく形成され、リップの厚さについて、外径側サイドリップが内径側サイドリップよりも薄い形状とされているために、トルク低減を実現することができ、かつ耐泥水性を確保することができる。
【0033】
また、内径側サイドリップとグリースリップとの間に両リップの引っ張り合いを抑えるためのくぼみが設けられているために、リップ同士が装着時に引っ張り合うのを抑えることができ、よって内径側サイドリップにおけるトルク増大を抑えることができる。
【0034】
また、内径側サイドリップの長手方向中間部位に回転部材に対する密接荷重を低減させるための折り曲げ部が設けられているために、回転部材に対する密接荷重を低減させることができ、緊迫力の増加を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第一実施例に係る密封装置の要部断面図
【図2】 本発明の他の実施例に係る密封装置の要部断面図
【図3】 車輪懸架装置ベアリング部の説明図
【図4】 従来例に係る密封装置の要部断面図
【符号の説明】
1 密封装置
2 外輪(取付部材)
3 取付環
4 弾性体
5 ハブ(回転部材)
6 フランジ部
7 外径側サイドリップ
8 内径側サイドリップ
9 グリースリップ
10 くぼみ
11 折り曲げ部
12 突起部
Claims (2)
- フランジ部(6)を設けた回転部材(5)に摺動自在に密接する複数のシールリップを有する密封装置(1)において、
前記フランジ部(6)の端面に摺動自在に密接する外径側サイドリップ(7)およびその内周側において同じく前記フランジ部(6)の端面に摺動自在に密接する内径側サイドリップ(8)を有し、
リップの厚さについて、外径側サイドリップ(7)は内径側サイドリップ(8)よりも薄い形状であり、
内径側サイドリップ(8)の隣りにグリースリップ(9)を有し、前記内径側サイドリップ(8)とグリースリップ(9)との間に、両リップ(8)(9)の引っ張り合いを抑えるくぼみ(10)を設け、
内径側サイドリップ(8)の長手方向中間部位に、回転部材(5)に対する密接荷重を低減させる折り曲げ部(11)を設けたことを特徴とする密封装置。 - 請求項1の密封装置において、
内径側サイドリップ(8)はハブ(5)の曲面に当接することを特徴とする密封装置。
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