JP4280903B2 - 密封装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、密封装置に係り、更に詳しくは、サイドリップを有する密封装置に関するものである。本発明の密封装置は自動車関連分野に用いられ、更に汎用機械等の分野にも用いられる。
【0002】
【従来の技術】
従来からこの種の密封装置として、例えば図5に示す密封装置が知られている。この密封装置1は、取付環2に加硫接着されたゴム状弾性体3であって、相手部材であるスリンガー4の筒部(軸方向部)5外周面に摺動する主リップ6と、スリンガーの回転軸に直行又は斜めに交差するフランジ(径方向部)7に摺動するサイドリップ8とを一体として有した構成となっており、かかるサイドリップは、サイドリップ先端8bがフランジ部端面7aに摺動して泥水等の異物が密封室に浸入するのを抑止する機能を保有している。
【0003】
また、下記文献1には、回転する相手部材に摺動するサイドリップの表面が磨耗しシール性が悪化することに対する改良を目的に、相手部材と摺動する部分に同心円状の凹凸を多段に開設することが記載されている。更に、文献2には、サイドリップが相手部材と摺動する部分に開設する歯形状の凹凸の断面形状を特定し、泥水等の異物を被密封室方向へ返送する作用を付与することについての記載がある。
【0004】
【特許文献1】
実開平5−8136号公報(第2−4頁、図3乃至図5)
【特許文献2】
特開平5−196146号公報(第2−4頁、図1、2、4)
【0005】
しかしながら、上記文献1には、サイドリップが相手部材と摺動する部分の耐磨耗性を考慮して、摺動する部分に凹凸を開設することの記載はあるが、摺動しない部分を含めてサイドリップの両側面に凹凸を開設することの記載はない。また、文献2には相手部材と摺動する部分に歯形状の凹凸を開設し、開設された歯形状の凹凸の断面形状を特定し凹凸に排出機能を付与する記載は認められるが平行溝の断面形状を特定する記載はなく、しかも平行溝を相手部材と摺動しない部分を含めてサイドリップ両側面に開設する記載も示唆もない。
【0006】
すなわち、従来技術であるとサイドリップ8の屈曲性が悪く、回転軸のミソスリ作動によるフランジ部7の軸方向の振動に対してサイドリップ8が追随出来ず、フランジ部7の振動が小さいときにはサイドリップ8のしめしろが小さいので図6に示す通りサイドリップ先端8bがフランジ部の端面7aと摺動するときの接触圧が低下し泥水等の異物浸入に対して抑止効果を充分に発揮することができず、異物が早期に浸入し易くなる。逆にフランジ部7の振動が大きくサイドリップのしめしろが大きいときには、図7に示す通りサイドリップが大きく屈曲しサイドリップ側面8aがフランジ部端面7aと主に摺動しシール効果の大きいサイドリップ先端8bがフランジ部端面7aから遊離してしまう状態となり、泥水等の浸入を確実に抑止出来ないという問題点が生じていた。更に、サイドリップ表面に凹凸を開設すると直接摺動する部分の面積が凹凸を開設しない場合に比較して狭くなり、耐磨耗性が悪化するという問題点が生じていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上の点に鑑みて、サイドリップの屈曲性を向上させ、フランジ部の軸方向の振動に対して柔軟に対応しサイドリップ先端がフランジ部の端面から遊離することなく摺動し泥水等の異物の浸入に対する抑止効果を向上させること、並びにサイドリップ側面に開設された溝に被密封室方向への良好な排出する機能を付与すること、及び開設された溝によっても耐磨耗性が悪化しないことを目的としたサイドリップを有する密装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1による密封装置は、相手部材の端面に摺動するゴム状弾性材製のサイドリップを有する密封装置において、前記サイドリップの両側面に全面に亙って、前記サイドリップの屈曲性を向上するための平行溝を開設したことを特徴とするものである。
【0009】
本発明の請求項2による密封装置は、請求項1に係る発明において、上記平行溝の断面形状が異物等を排出する機能を有するように上記平行溝を形成している障壁とサイドリップ表面の溝方向への延長線上とのなす角度のうちサイドリップ基部側障壁となす角度βがサイドリップ先端側障壁となす角度αより大きい角度で形成されている上記平行溝が少なくとも摺動側面に開設していることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項3による密封装置は、請求項1または2に係る発明において、上記平行溝と隣接する上記平行溝との間に相手部材に対して直接摺動する直接摺動部を一定の巾を持って形成することを特徴とするものである。
【0011】
上記構成を備えた本発明の請求項1による密封装置のように、サイドリップの両側面に全面に亙って、サイドリップの屈曲性を向上するための平行溝が開設されていると、サイドリップがフランジ部の軸方向の振動に対して柔軟に屈曲するので、相手摺動部材であるスリンガーが嵌着されている回転軸のミソスリ作動による軸方向の振動に対して安定してサイドリップの先端をフランジ部の端面に適正な圧力で摺動させることができる。特にフランジ面の軸方向の振動が大きいときにはサイドリップが大きく湾曲するが、このときでもサイドリップの屈曲性が向上しているので、サイドリップ先端がフランジ面から遊離することを防止することができる。
【0012】
本発明の請求項2による密封装置は、請求項1に係る発明において、上記平行溝の断面形状が異物等を排出する機能を有するように上記平行溝を形成している障壁とサイドリップ表面の溝方向への延長線上とのなす角度のうちサイドリップ基部側障壁となす角度βがサイドリップ先端側障壁となす角度αより大きい角度で形成されている上記平行溝が少なくとも摺動側面に開設していることを特徴としているので、フランジ部の軸方向の振動が大きいことによりサイドリップが大きく湾曲しフランジ部の端面にサイドリップの上記摺動側面が摺動することになったときでも上記平行溝が内部に浸入しようとする泥水等の異物を外部に排出することが出来る。
【0013】
本発明の請求項3による密封装置は、請求項1または2に係る発明において、サイドリップに開設されている上記平行溝と隣接する上記平行溝との間に耐磨耗性の向上を目的として上記直接摺動部が一定の巾を持って形成されているので、フランジ部の端面と摺動する部分を面積で確保し耐磨耗性の悪化を防止することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施例に係る密封装置1の要部断面を示している。この密封装置1は例えば自動車用車輪懸架装置におけるベアリング部にハブベアリング用シールとして用いられるものであって、以下のように構成されている。
【0016】
上記ベアリング部における取付部材である外輪(図示せず)の内周に嵌着される金属等剛材製の取付環(外環)2が設けられており、この取付環2にゴム状弾性材製の弾性体(パッキン)3が加硫接着されており、この弾性体3に複数のシールリップが一体成形されており、この複数のシールリップは、上記ベアリング部における回転部材であるハブ(図示せず)に嵌着される金属等剛材製のスリンガー4の筒部(軸方向部)5外周面に摺動する主リップ6と、スリンガーのフランジ部(径方向部)7端面7aに摺動するサイドリップ8により構成されている。
【0017】
上記リップのうちサイドリップ8は外部の被密封室方向に存在する泥水等の異物が内部に侵入しないようにこれを抑止するものであって、その機能からして外向き構造とされ、その基端から先端にかけて径寸法が徐々に拡大するように形成されており、かつサイドリップの両側面8a.8cには屈曲性を向上するための平行溝9が全面に開設されている。
【0018】
上記平行溝9の断面形状が異物等を排出する機能を有するように上記平行溝9を形成している障壁とサイドリップ表面の溝方向への延長線上とのなす角度のうちサイドリップ基部側障壁8.2となす角度βがサイドリップ先端側障壁8.1となす角度αより大きい角度で形成されている上記平行溝9がサイドリップがフランジ部端面7aと摺動する摺動側面8aに開設される。サイドリップがフランジ部端面7aと直接摺動することがない反摺動側面8cに形成される上記平行溝9の断面形状は、摺動側面に開設された上記平行溝9の断面形状と同一であっても良く、また別の断面形状で構成されるものであっても良い。
【0019】
また、上記平行溝9と隣接する上記平行溝9との間にはフランジ面と直接摺動する直接摺動部8.3が一定の巾を持って形成されていることを特徴とするものである。
【0020】
上記構成を備えた密封装置1によれば、サイドリップ8の屈曲性が向上しているので、サイドリップ8がフランジ部7の軸方向の振動に対して柔軟に対応し、図4に示す通りフランジ部7の軸方向の振動が大きいときは、サイドリップが大きく屈曲し上記摺動側面8aがフランジ部端面7aに摺動することになるが、このときでもサイドリップ先端8bがフランジ部端面7aから遊離することがなく、図7に示す通り平行溝が開設されていないことによりサイドリップ先端8bがフランジ部端面7aから遊離するのと対照をなす。
【0021】
また、サイドリップ8に開設されている上記平行溝9の断面形状が異物等を排出する機能を有するように上記平行溝を形成している障壁とサイドリップ表面の延長線上とのなす角度のうちサイドリップ基部側障壁8.2となす角度βがサイドリップ先端側障壁8.1となす角度αより大きい角度で形成されており、上記平行溝9が少なくともサイドリップがフランジ部端面7aと摺動する摺動側面8aに開設されているので、内部に浸入しようとする泥水等の異物を外部方向に排出するという平行溝が開設されていないときに比較して新たな効果を生じさせることができる。
【0022】
更に、上記平行溝9を開設することによりフランジ部の端面7aと摺動する面積は減少するが上記平行溝9と隣接する上記平行溝9との間に上記直接摺動部8.3を一定の巾をもって形成しているのでフランジ部端面7aと摺動する部分を面積で確保でき耐磨耗性の悪化を防止することができる。
【0023】
なお、本発明の実施例におけるリップ形状は、異物等の浸入を抑止する機能を有する全てのサイドリップに適用され、サイドリップが摺動する相手部材は、スリンガー・ハブフランジ等に限定されるものではない。
【0024】
【発明の効果】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0025】
上記構成を備えた本発明の請求項1の密封装置においては、相手部材の端面に摺動するゴム状弾性材製のサイドリップを有する密封装置において、前記サイドリップの両側面に全面に亙って、前記サイドリップの屈曲性を向上するための平行溝が開設されているので、サイドリップの屈曲性を向上することができ、フランジ部の軸方向の振動に対しシール効果の最も大きい部分であるサイドリップの先端がフランジ部端面から遊離することなくフランジ部端面に対して適正な圧力で摺動し抑止効果を確保することができる。特にフランジ部の軸方向の振動が大きいときにも屈曲性が向上しているので、サイドリップが大きく屈曲しフランジ部端面には主として上記摺動側面が摺動することになるが、このときでもサイドリップ先端はフランジ部端面から遊離することがなく抑止効果の低下を防止することができる。
【0026】
上記構成を備えた本発明の請求項2の密封装置におけるサイドリップは、上記平行溝の断面形状が平行溝を形成している障壁とサイドリップ表面の延長線上とのなす角度のうちサイドリップ基部側障壁となす角度βがサイドリップ先端側障壁となす角度αより大きい角度で形成されている上記平行溝が上記摺動側面に開設されているので、フランジ部の軸方向への振動が大きく上記摺動側面がフランジ部端面に摺動するときでも、上記平行溝の断面形状が異物等を排出する機能を有する形状であることにより泥水等の浸入しようとする異物を排出するという新たな効果を奏し、より一層の抑止効果が発揮される。
【0027】
上記構成を備えた本発明の請求項3の密封装置におけるサイドリップは、平行溝が開設されることによりフランジ部端面と直接摺動する面積は減少するが、平行溝の開設後に残存する上記直接摺動部が耐磨耗性の向上を目的として一定の巾をもって形成されているので、フランジ部端面と摺動する部分を面積で確保し耐磨耗性の悪化を防止することができ、その結果、新品時の最適溝形状による被密封室方向への排出機能を長く維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る密封装置の要部断面図
【図2】同密封装置におけるサイドリップ部の拡大図
【図3】サイドリップ表面に形成された平行溝の図2X部の拡大図
【図4】サイドリップが屈曲して相手方摺動部材と密着している状態図
【図5】従来例に係る密封装置の要部断面図
【図6】比較例にかかるサイドリップの先端部の一部しか摺動していない状態図
【図7】比較例にかかるサイドリップが屈曲して相手方摺動部材と摺動している状態図
【符号の説明】
1 密封装置
2 取付環
3 弾性体
4 スリンガー(相手部材)
5 スリンガーの筒部
6 主リップ
7 スリンガーのフランジ部
7a スリンガーのフランジ部端面
8 サイドリップ
8a サイドリップ側面(摺動側面)
8b 先端部
8c サイドリップ側面(反摺動側面)
8.1 先端側障壁
8.2 基部側障壁
8.3 直接摺動部
9 平行溝
α 平行溝の先端側障壁とサイドリップ表面の延長線が形成する角度
β 平行溝の基部側障壁とサイドリップ表面の延長線が形成する角度

Claims (3)

  1. 相手部材の端面に摺動するゴム状弾性材製のサイドリップを有する密封装置において、
    前記サイドリップの両側面に全面に亙って、前記サイドリップの屈曲性を向上するための平行溝を開設したことを特徴とする密封装置。
  2. 上記平行溝の断面形状が異物等を排出する機能を有するように上記平行溝を形成している障壁とサイドリップ表面の溝方向への延長線上とのなす角度のうちサイドリップ基部側障壁となす角度βがサイドリップ先端側障壁となす角度αより大きい角度で形成されている上記平行溝が少なくとも摺動側面に開設していることを特徴とする請求項1記載の密封装置。
  3. 上記平行溝と隣接する上記平行溝との間に相手部材に対して直接摺動する直接摺動部を一定の巾をもって形成していることを特徴とする請求項1または2記載の密封装置。
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