JPH0814399A - オイルシ−ル - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 回転端面のシールを行うためのサイドリップ
を有するもので、このサイドリップの軸方向のリップ締
め代のばらつきが大きくても有効に働く、オイルシール
を提供すること。 【構成】 回転端面５をシールするためのサイドリップ
１２を有するオイルシール１において、そのサイドリッ
プ１２の長さ方向の途中に屈曲部１３を設け、その屈曲
部１３の肉厚をその周辺のリップの肉厚よりも薄くした
ことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、回転運動部の密封を行
うオイルシールに関し、特に、回転端面のシールを行う
ためのサイドリップを有するオイルシールについて、軸
方向のリップ締め代のばらつきが大きくても有効に働
く、サイドリップの形状に関する。

【０００２】

【従来の技術】回転端面をシールするためのサイドリッ
プを有する従来のオイルシールにおいては、そのサイド
リップの断面形状は、図３に示すように真っ直ぐに伸び
た形のものであり、根本は厚く、先端に行くほど薄くな
り、またリップは半径外側に傾いた形をしている。

【０００３】この図３に示すサイドリップを有する従来
のオイルシールをもう少し詳しく説明すると、１００が
オイルシールであって、機械装置のケースの段付きのボ
ス穴１０１に圧入され、止め輪１０２によりボス穴１０
１から抜けるのを防止されている。１０３が回転軸、１
０４が回転軸１０３と共に回転する回転端面である。

【０００４】オイルシール１００は、シールするための
３つのリップを持っていて、１つはメインリップ１０
５、２つめはダストリップ１０６、３つめがサイドリッ
プ１０７である。機械装置のケースの内部に封入された
流体がケースの外部に回転軸１０３部から漏れないよう
にするのが、オイルシール１００に課せられた基本的な
機能であり、その基本的な機能を果たすのが、メインリ
ップ１０５である。

【０００５】ダストリップ１０６とサイドリップ１０７
とは、基本的な機能を果たすメインリップ１０５を、保
護するための補助的な機能を果たすためにある。即ち、
ダストリップ１０６は、ケース外部の砂ほこり、土ほこ
り等がメインリップ１０５に到達して、メインリップ１
０５を傷つけて液漏れ等を起こしたり、メインリップ１
０５の摩耗を促進させるのを防ぐ機能を果たす。このダ
ストリップ１０６で外部からの砂ほこり、土ほこり等の
進入を防いでいる。

【０００６】通常のオイルシールは、ダストリップ１０
６までつくのが一般的である。サイドリップ１０７は、
第３のリップとして、第２のダストリップ１０６だけで
は不十分と考えられる厳しい環境条件の場合に採用され
る。例えば、周囲の環境が泥水の多い場所などである。
泥は粒子が細かく、ダストリップ１０６の間に入りやす
く、しかも、ラップ剤の働きをしてダストリップ１０６
の摩耗を促進する。たまたま、オイルシールの近くに回
転端面１０４がある場合に、第３のリップとして、サイ
ドリップ１０７が用いられる。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】ところで、サイドリッ
プ１０７の泥水に対するシール性能は、実験的に、経験
的に、図４に示すようなリップの接触幅Ｗが広い場合に
良好であることが知られている。しかし、図３に示す従
来のサイドリップ１０７の形状では、サイドリップ１０
７の締め代即ちリップ接触面からのリップ先端への押し
込み量の大きい場合のみ、図４に示すような広い接触幅
Ｗが得られ、サイドリップ１０７の締め代が大きくない
ときには、十分な接触幅Ｗが得られないのである。従来
形におけるサイドリップ１０７の締め代と接触幅Ｗとの
関係を示したのが、図５のグラフである。

【０００８】また、従来形のサイドリップ１０７では、
リップの締め代を大きくしていくと、リップの締め力に
したがってサイドリップ１０７の摩擦抵抗を急激に増大
させ、サイドリップ１０７の摩耗が速くなる。

【０００９】サイドリップ１０７は、回転軸１０３部を
シールするメインリップ１０５やダストリップ１０６に
比べて、不利なことが２点ある。第１は、リップの接触
部の半径が大きいからリップ接触部の周速度が大きく、
摩耗上不利である。第２に、オイルシール１００から回
転端面１０４までの距離のばらつきが大きいことであ
る。これは回転軸１０４の径の公差よりもボス穴１０１
の段付き部の深さの公差が一般に大きいことに加え、さ
らに、回転端面１０４を有する回転体を回転軸１０３に
取り付ける際の軸方向の取付位置のばらつきが大きく加
わるから、総合的な組立のばらつきはかなり大きなもの
となる。

【００１０】本発明は、上記した従来技術の課題を解決
するためになされたもので、その目的とするところは、
回転端面のシールを行うためのサイドリップを有するも
ので、このサイドリップの軸方向のリップ締め代のばら
つきが大きくても有効に働く、オイルシールを提供する
ことにある。

【００１１】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明にあっては、回転端面をシールするためのサ
イドリップを有するオイルシールにおいて、そのサイド
リップは、リップの長さ方向の途中に屈曲部を有し、そ
の屈曲部の肉厚をその周辺のリップの肉厚よりも薄くし
たことを特徴とする。

【００１２】

【作用】上記構成のオイルシールにあっては、第１に、
屈曲部は蛇腹の働きをして、軸方向の伸縮性に富み、回
転端面までの組立後の距離が小さい場合でもリップ先端
は柔軟であり、リップの締め力が急激に増大することは
なく、摩耗が安定しやすい。

【００１３】第２に、屈曲部の肉厚をその周辺のリップ
の肉厚よりも薄くしたから、リップ先端にリップの締め
力が加わった場合に、リップ先端は、リップの傾いてい
る方向に、即ち、半径外側方向に曲がりやすい。即ち、
屈曲部があるために、回転端面に押しつけられた時に、
リップ先端は容易に広がり、曲がり、接触幅が大きくな
りやすい。押しつけ量が多くなったときは、リップの根
本の方が撓んでくれる。そして、回転端面の位置のばら
つきにあまり左右されずに、リップの接触面の幅は大き
く、外部からの泥水のシールに好都合な状態を実現す
る。

【００１４】

【実施例】この発明の実施例を図１、図２を用いて説明
する。図１は、本発明によるオイルシールが回転運動部
の密封用として組み込まれている状態を示す。

【００１５】１がオイルシールであって、機械装置のケ
ースの段付きのボス穴２に圧入され、止め輪３によりボ
ス穴２から抜けるのを防止されている。４が回転軸であ
って、この回転軸４のシールがオイルシール１の主要な
機能となる。５が回転体の端面である。図示省略してあ
るが、例えば、５は、回転軸４のケース外部に伸び出た
端部に取り付けたベルトプーリーの面と考えてもよく、
また、回転軸４が車軸であって、５はその端部に取り付
けた車輪のハブの端面と考えてもよい。

【００１６】オイルシール１の構造は、その剛性、強度
を増すために、金属環６が内部にあって、その外面をゴ
ムで覆ったものとなっている。またこのオイルシール１
は、シールするための３つのリップを持っている。

【００１７】第１のリップがメインリップ８である。機
械装置のケースの内部には、例えば、潤滑油、その他の
液体、ガス体、あるいはそれらの混合体が入っていて、
それらの封入された流体がケースの外部に回転軸４部か
ら漏れないようにするのが、オイルシール１に課せられ
た基本的な機能であり、その基本的な機能を果たすの
が、メインリップ８である。このメインリップ８の締め
代が多少変わっても、また、回転軸４が回転中に多少振
れても、このメインリップ８の追従がよく、内部からの
流体漏れを防げるように、メインリップ８はゴムの弾性
を利用するだけでなく、コイルスプリング９の力を加え
て締め付け力を出している。

【００１８】１０がダストリップであって、第２のリッ
プとなるものである。このダストリップ１０は、ケース
外部の砂ほこり、土ほこり等がメインリップ８に到達し
て、メインリップ８を傷つけて液漏れ等を起こしたり、
メインリップ８の摩耗を促進させるのを防ぐ機能を果た
す。このダストリップ１０で砂ほこり、土ほこり等の進
入を防いでいる。メインリップ８に対する補助的なリッ
プといえる。ダストリップ１０の摩耗を防ぐために、こ
のリップの先端部や、メインリップ８とダストリップ１
０との間の空間１１にグリースを塗るのが普通である。

【００１９】通常のオイルシールは、ダストリップ１０
までつくのが一般的であり、メインリップ８とダストリ
ップ１０がセットでついているのが一般的なオイルシー
ルの形状である。

【００２０】実施例のオイルシール１では、さらに、第
３のリップとして、サイドリップ１２がついている。サ
イドリップ１２は、ダストリップ１０と共に、メインリ
ップ８を守るための補助的なリップである。第３のリッ
プは、第２のダストリップ１０だけでは不十分と考えら
れる厳しい環境条件の場合に採用される。例えば、周囲
の環境が泥水の多い場所などである。泥は粒子が細か
く、ダストリップ１０の間に入りやすく、しかも、ラッ
プ剤の働きをしてダストリップ１０の摩耗を促進する。
たまたま、オイルシール１の近くに回転端面５がある場
合に、第３のリップとして、サイドリップ１２が用いら
れる。

【００２１】図を見て明らかなように、また、すでに説
明したように、サイドリップ１２は、回転軸４部をシー
ルするメインリップ８やダストリップ１０に比べて、不
利なことが２点ある。第１は、リップの接触部の半径が
大きいからリップ接触部の周速度が大きく、摩耗上不利
である。第２に、オイルシール１から回転端面５までの
距離のばらつきが大きいことである。これは回転軸４の
径の公差よりもボス穴２の段付き部の深さの公差が一般
に大きいことに加え、さらに、回転端面５を有する回転
体を回転軸４に取り付ける際の軸方向の取付位置のばら
つきが大きく加わるからである。これが、サイドリップ
１２の締め代が大きい場合に、サイドリップ１２の締め
力を急に増大させ、サイドリップ１２の摩耗を急に増大
させやすい。

【００２２】この発明では、サイドリップ１２のリップ
の長さ方向の途中に屈曲部１３を設け、その屈曲部１３
の肉厚をその周辺のリップの肉厚よりも薄くした。この
屈曲部１３は大事な機能を２点持っている。

【００２３】第１に、この屈曲部１３は蛇腹の働きをし
て、軸方向の伸縮性に富み、回転端面５までの組立後の
距離が小さい場合、即ちサイドリップ１２の締め代が大
きい場合でも、リップ先端は柔軟であり、サイドリップ
１２の締め力が急激に増大することはなく、摩耗が安定
しやすい。つまり、回転端面５の組立上の軸方向のばら
つきに対して鈍感である特性がある。

【００２４】第２に、屈曲部１３の肉厚をその周辺のサ
イドリップ１２の肉厚よりも薄くしたから、リップ先端
にサイドリップ１２の締め力が加わった場合に、リップ
先端は、サイドリップ１２の傾いている方向に、即ち、
図１、２の場合は、半径外側方向に曲がりやすい。即
ち、図２に示すように、屈曲部１３があるために、回転
端面５に押しつけられた時に、リップ先端は容易に広が
り、曲がり、接触幅が大きくなりやすい。押しつけ量が
多くなったとき、即ち、回転端面５までの距離が小さい
ときは、サイドリップ１２の根本の方が撓んでくれる。
そして、回転端面５の位置のばらつきにあまり左右され
ずに、リップの接触面の幅は大きく、外部からの泥水の
シールに好都合な状態を実現する。

【００２５】

【発明の効果】本発明は、以上の構成および作用を有す
るもので、シールするためのサイドリップを有するオイ
ルシールにおいて、そのサイドリップの長さ方向の途中
に屈曲部を設け、その屈曲部の肉厚をその周辺のリップ
の肉厚よりも薄くしたから、このサイドリップは、第１
に、蛇腹のように軸方向の伸縮性に富み、回転端面まで
の組立後の距離が小さい場合でもリップ先端は柔軟であ
り、リップの締め力が急激に増大することはなく、摩耗
が安定しやすく、回転端面の組立上の軸方向のばらつき
に対して鈍感である 第２に、屈曲部の肉厚をその周辺のリップの肉厚よりも
薄くしたから、リップ先端にリップの締め力が加わった
場合に、リップ先端は、半径外側方向に曲がりやすく、
リップの接触面は大きくなりやすい。押しつけ量が多く
なったとき、即ち、回転端面までの距離が小さいとき
は、リップの根本の方が撓んでくれて、同じように、リ
ップの接触面の幅は大きく、回転端面の組立上の軸方向
のばらつきにあまり左右されずに、リップの接触面の幅
は大きく、外部からの泥水のシール機能の優れたサイド
リップを持ったオイルシールを実現する。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１は本発明の一実施例に係るサイドリップを
有するオイルシールを組み込んだ状態の断面図。

【図２】図２は本発明の一実施例に係るオイルシールの
サイドリップの締め代による変形状態、接触状態を示す
部分断面図。

【図３】図３は従来のサイドリップを有するオイルシー
ルを組み込んだ状態の断面図。

【図４】図４は従来のオイルシールのサイドリップの１
変形状態を示す断面図。

【図５】図５は従来のオイルシールのサイドリップの締
め代による変形状態と接触幅との関係を示すグラフ。

【符号の説明】

１ オイルシール ２ ボス穴 ３ 止め輪 ４ 回転軸 ５ 回転端面 ６ 金属環 ８ メインリップ ９ コイルスプリング １０ ダストリップ １１ 空間 １２ サイドリップ １３ 屈曲部

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 回転端面をシールするためのサイドリッ
   プを有するオイルシールにおいて、 そのサイドリップは、リップの長さ方向の途中に屈曲部
   を有し、その屈曲部の肉厚をその周辺のリップの肉厚よ
   りも薄くしたことを特徴とするオイルシール。