JP3988483B2 - 水中遊離塩素の処理方法 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、水中遊離塩素の処理方法に関し、特に、水を殺菌する際や、水中の各種有機物、アンモニア、ヒドラジン等を酸化分解する際に使用し処理水中に残留する塩素剤(残留塩素)を電気分解処理する方法に関する。
【0002】
【技術背景】
水の殺菌や、水中に含まれる各種有機物、アンモニア、ヒドラジン等の被酸化性物質の酸化分解の際には、一般に、塩素剤が使用され、この残留塩素が、殺菌後あるいは酸化分解後の処理水中に、遊離塩素として含まれる。
【0003】
このような水中の遊離塩素を除去するには、従来から、(1)亜硫酸ナトリウム等の還元剤を添加して分解処理する方法が用いられている。
しかし、この方法では、遊離塩素と等量の還元剤を添加する必要があり、この過不足により遊離塩素が残留したり、過剰の還元剤が残留する問題がある。
【0004】
また、(2)遊離塩素含有水を活性炭と接触させて、遊離塩素を活性炭に吸着させて除去する方法も用いられている。
しかし、この方法では、活性炭の酸化分解が進むため、除去効率に限界があるばかりか、活性炭の酸化分解により活性炭に含まれるフミン質等が水中に溶出し水が着色するという問題もある。
【0005】
さらに、(3)遊離塩素含有水を、過酸化コバルト系触媒と接触させて処理する方法(例えば、特公昭57−18953号公報)も実用化されている。
この方法では、上記(1)や(2)の問題を解決することはできるものの、触媒との接触時間が短いと、除去効果が低減する懸念がある。
【0006】
【発明の目的】
本発明は、以上の従来の処理方法が有する問題や懸念を解消し、高効率で、しかも安定して、遊離塩素(残留塩素)を除去することができる方法を提案することを目的とする。
【0007】
【発明の概要】
本発明者は、上記目的を達成するために検討を重ねた結果、
(1)水中遊離塩素は、還元剤の添加等を要することなく、電気分解により除去することができること、
(2)電極として導電性ダイヤモンド電極を用いると、電極面での電流密度を高めて処理することができるため、大容量の遊離塩素含有水を、コンパクトな装置(必要電極面積が少なくて済む)で処理することができること、
(3)電流密度を高めた導電性ダイヤモンド電極によれば、電極面との短時間の接触で、水中遊離塩素を、高効率で分解除去することができること、
(4)導電性ダイヤモンド電極は、化学的安定性に優れるため、通常の酸やアルカリ等による浸食の懸念がなく、容易な操作で、長期間に渡って安定した処理効果を持続することができること、
の知見を得た。
【0008】
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものであって、水中の遊離塩素を、導電性ダイヤモンド電極を用いて電気分解処理することを特徴とする水中遊離塩素の処理方法を要旨とする。
このとき、導電性ダイヤモンド電極表面の電流密度を0.1〜100,000A/m2とし、遊離塩素含有水を、温度10〜95℃、通液線速度0.1〜1,000m/hrで、前記導電性ダイヤモンド電極面と平行方向に通液することが好ましい。
【0009】
本発明の処理対象水である遊離塩素含有水は、各種の工場から排出される産業排水はもとより、生活排水、下水、水道水、その他の排水であってよく、該水中の遊離塩素(残留塩素)としては、Cl2、HClO、ClO−等が挙げられる。
【0010】
本発明で使用する導電性ダイヤモンド電極は、Ni,Ta,Ti,Mo,W,Zr等の導電性金属材料を基板とし、これら基板の表面に導電性ダイヤモンド薄膜を析出させたものや、シリコンウエハ等の半導体材料を基板とし、このウエハ表面に導電性ダイヤモンド薄膜を合成させたもの、あるいは基板を用いない条件で板状に析出合成した導電性多結晶ダイヤモンド素材を挙げることができる。
なお、導電性(多結晶)ダイヤモンド薄膜は、ダイヤモンド薄膜の調製の際にボロン又は窒素の所定量をドープして導電性を付与したものであり、ボロンをドープしたものが一般的である。
これらのドープ量は、少なすぎればドープする技術的意義が発現せず、多すぎてもドープ効果は飽和するため、ダイヤモンド薄膜素材の炭素量に対し50〜10,000ppmの範囲内のものが適している。
【0011】
本発明において、導電性ダイヤモンド電極は、一般には板状のものを使用するが、網目構造を板状にしたもの等をも使用することができる。
【0012】
この導電性ダイヤモンド電極を用いて行う電気分解は、導電性ダイヤモンド電極表面の電流密度を0.1〜100,000A/m2とし、遊離塩素を含む水を、電解反応槽内温度10〜95℃で、導電性ダイヤモンド電極面と平行に、通液線速度(LV)0.1〜1,000m/hrで、通液し、電極面と接触させることで行うことが好ましい。
【0013】
電流密度が上記未満であると、電流効率の良い導電性ダイヤモンド電極を使用しても、水中の遊離塩素の十分な電気分解を行うための必要電極面積を大きくする必要が生じ、本発明の目的の1つであるコンパクトな装置での大容量の水処理が達成できなくなる。
逆に、上記を超えると、極間抵抗が増大し、熱エネルギーに消費されてしまうため、不経済となる。
【0014】
また、水の通液方向を電極面と平行にするのは、水と電極表面との接触効率を高めるためである。
このときの水の通液速度を、線速度(LV)で0.1〜1,000m/hrとするのは、これより遅すぎると、処理効率が低下し、これより速すぎると、水と電極表面との接触時間を十分に取ることができず、遊離塩素の電気分解を十分に行うことができなくなる。
【0015】
そして、電解反応槽内の水の温度を10〜95℃とするのは、低温すぎると、水中遊離塩素の電気分解が良好に進行せず、逆に高温すぎると、遊離塩素の気化が生じることがあり、この気化成分が水と電極表面との接触阻害を引き起こすのみならず、遊離塩素(残留塩素)による装置構成材料の腐食等の懸念もある。
【0016】
以上のようにして行う本発明の処理方法では、導電性ダイヤモンド電極に単に通電するだけで、水中遊離塩素を除去することができ、前記した従来の処理方法(1)のような還元剤等薬剤の注入量の厳密な制御を不要とし、(2)のような遊離塩素の除去効率に限界を生じることもないし、また活性劣化した活性炭を取り替える必要性もなく、(3)のように接触時間による除去効率の低減の懸念がないばかりか、(3)の方法における過酸化コバルト担持触媒は、酸性条件下で使用するとコバルトの溶出による劣化の懸念があるのに対し、導電性ダイヤモンド電極は、前記のように耐酸・耐アルカリ性に優れるため、広いpH範囲で適用することができる。
そして、このような作用を有する本発明の処理方法においては、水中遊離塩素の処理操作が極めて容易であることは勿論、導電性ダイヤモンド電極は化学的に安定であるため、長期間に渡って遊離塩素の高い電気分解効率を安定して得ることができる。
【0017】
【実施例】
実施例1
ボロンドープ法を用いて気相析出合成した積層状の多結晶ダイヤモンド電極板(2cm×2cm×0.05cm)2枚を、極間距離3mmとなるように、内寸2cm×2cm×0.4cmのガラス製容器に設置して電解反応槽とした。
【0018】
この電解反応槽に、遊離塩素1mg/Lを含む水を、400mL/hrの通液速度(SV=330/hr)で、上向流で通液した。
なお、電解反応槽への投入電気量は、電流密度0.1mA/cm2となるように設定した。
【0019】
通液開始後、5時間経過した後の電解反応槽処理水の残留塩素濃度は、0.05mg/L以下であった。
また、上記と同じ条件で連続通液処理を継続した結果、2週間連続処理した後も、3か月間連続処理した後も、処理水の残留塩素濃度は0.05mg/L以下を維持し、安定して高い処理効果が持続できることを確認した。
【0020】
比較例1
平均粒径0.2mmに調整したクリノプチロライト系ゼオライト表面に過酸化コバルトを1wt%担持させた残留塩素分解用触媒1.2cm3(1.1g)を直径10mmのガラスカラムに充填した反応カラムを用意した。
この反応カラムに、実施例1で用いたものと同じ遊離塩素1mg/Lを含む水を、400mL/hrの通液速度(SV=330/hr)で、上向流で通液した。
【0021】
通液開始後、5時間経過した後の反応カラム処理水の残留塩素濃度は、0.6mg/Lであった。
また、上記と同じ条件で連続通液処理を継続した結果、2週間連続処理した後も、3か月間連続処理した後も、処理水の残留塩素濃度は0.6mg/Lを維持し、本発明による方法に比して、残留塩素の除去効率は低いものの、安定した処理効果は持続する。
【0022】
比較例2
比較例1の残留塩素分解用触媒の代わりに、平均粒径0.2mmに調整した活性炭1.2cm3(0.5g)を用いた以外は、比較例1と同様にして遊離塩素1mg/Lを含む水を通液処理した。
通液開始後、5時間経過した後の反応カラム処理水の残留塩素濃度は、0.05mg/L以下であった。
【0023】
また、上記と同じ条件で連続通液処理を継続した結果、反応カラム処理水の残留塩素濃度はわずかずつ増加する傾向を示し、2週間連続処理した後は0.1mg/L、3か月間連続処理した後は0.5mg/Lまで増加し、水中遊離塩素の除去効果は経時的に低減することを確認した。
【0024】
実施例2
実施例1で用いたものと同じ導電性ダイヤモンド電極を用いて電解反応槽を用意した。
この電解反応槽に、遊離塩素10mg/Lを含む水を、200mL/hrの通液速度(SV=165/hr)で、上向流で通液した。
なお、電解反応槽への投入電気量は、電流密度1mA/cm2となるように設定した。
【0025】
通液開始後、5時間経過した後の電解反応槽処理水の残留塩素濃度は、0.7mg/L以下であった。
また、上記と同じ条件で連続通液処理を継続した結果、2週間連続処理した後も、3か月間連続処理した後も、処理水の残留塩素濃度は0.6〜0.8mg/Lの値を示し、安定した処理効果が持続できることを確認した。
【0026】
比較例3
比較例1で用いたものと同じ残留塩素分解用触媒1.2cm3(1.1g)を充填した反応カラムを用意した。
この反応カラムに、実施例2で用いたものと同じ遊離塩素10mg/Lを含む水を、200mL/hrの通液速度(SV=165/hr)で、上向流で通液した。
【0027】
通液開始後、5時間経過した後の反応カラム処理水の残留塩素濃度は、7.6mg/Lであった。
また、上記と同じ条件で連続通液処理を継続した結果、2週間連続処理した後も、3か月間連続処理した後も、処理水の残留塩素濃度は7.6mg/Lを維持し、本発明による方法に比して、残留塩素の除去効率は低いものの、安定した処理効果は持続する。
【0028】
比較例4
比較例2の残留塩素分解用触媒の代わりに、平均粒径0.2mmに調整した活性炭1.2cm3(0.5g)を用いた以外は、比較例2と同様にして遊離塩素10mg/Lを含む水を通液処理した。
通液開始後、5時間経過した後の反応カラム処理水の残留塩素濃度は、0.05mg/L以下であった。
【0029】
また、上記と同じ条件で連続通液処理を継続した結果、反応カラム処理水の残留塩素濃度は徐々に増加する傾向を示し、1週間連続処理した後は2mg/L、2週間連続処理した後は5mg/Lまで増加し、水中遊離塩素の除去効果は経時的に大幅に低減することを確認した。
【0030】
【発明の効果】
以上のように、本発明の処理方法によれば、電流効率が高く、しかも化学的に安定な導電性ダイヤモンド電極を使用するため、コンパクトな装置により、容易な操作で、かつ高効率で水中遊離塩素を除去することができることに加え、この高効率での除去を、長期間に渡って安定して維持することができる。
【0031】
しかも、本発明の処理方法によれば、
(1)従来の還元剤を添加して残留塩素を除去する技術のように、還元剤の添加量の厳密な制御は、不要であり、
(2)活性炭を用いて除去する技術のように、活性炭の酸化分解が進んで除去効率に限界があるとか、活性炭の酸化分解により活性炭に含まれるフミン質等が水中に溶出し水が着色すると言った問題は一切発生せず、
(3)過酸化コバルト担持触媒と接触させて除去する技術のように、接触時間による除去効率が変化すると言った懸念も一切生じない、
等の効果を奏することができる。
Claims (2)
- 水中の遊離塩素を、導電性ダイヤモンド電極を用いて電気分解処理することを特徴とする水中遊離塩素の処理方法。
- 導電性ダイヤモンド電極表面の電流密度を0.1〜100,000A/m2とし、遊離塩素含有水を、温度10〜95℃、通液線速度0.1〜1,000m/hrで、前記導電性ダイヤモンド電極面と平行方向に通液することを特徴とする請求項1に記載の水中遊離塩素の処理方法。
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