JP3987675B2 - 臨床検査システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は臨床検査システムに関し、特に検査結果から再検査の必要の有無を判断する再検要否判定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
病院の検査室、あるいは検査センター等の検査施設において、被験者の各種の項目について検査が行われ、検査結果が出た際には、その値の妥当性の検証が行われている。例えば検査の結果、異常値が測定された場合には、被験者の検査値が本当に異常であるのか、測定上の不具合(装置の異常、人為的ミスなど)による異常値なのかを判断し、測定上の不具合による可能性が低い場合にはその検査結果を正しいとして臨床へ報告し、測定上の不具合による可能性が高い場合には、再検査を実施する。再検査の必要性は、検査値の組み合わせや、その患者(受診者)についての前回の検査結果を参照し、臨床検査技師が過去の経験に基づき判断していた。
【0003】
近年、臨床検査の自動化が進み、検査結果を電子データとして蓄積し、管理する臨床検査システムが普及してきている。臨床検査システムの普及に伴い、臨床検査システムに再検査の必要性の有無を判定する論理(再検要否判定手段)が組み込まれるようになってきた。このような再検要否判定手段としては単項目チェック、前回値チェック、項目間チェックが代表的な方式として知られている。
【0004】
単項目チェックとしては例えば特開平5−151282号公報に開示されている技術が知られている。この技術は、検査項目ごとに、男女別、年齢別、妊婦の区分に従った基準範囲を設定し、検査値がこの基準範囲を超えた場合に、異常結果として報告する。また、特開平7−271873号公報には、各検査項目について異常値範囲、パニック値範囲という2種類の基準範囲を設ける方法が記載されている。
【0005】
前回値チェックとしては例えば特開平5−151282号公報に記載されているデルタチェック、特開平11−296605号公報に記載されている累積デルタチェックが知られている。デルタチェックでは検査項目毎に前回値と今回値の差に基準値を設け、前回値と今回値の差が基準値を超えた場合にはエラーとして報告する。また、累積デルタチェックでは、各検査項目毎に個体内標準偏差(同一の患者、受診者についての検査項目毎の検査値の標準偏差)を求め、前回値と今回値の差と、固体内標準偏差との比を計算する。各検査項目毎に得られた前述の比を加算した値に基準値を設けることにより、異常を検出する。
【0006】
項目間チェックとしては例えば特開平11−296605号公報に記載されているように項目間の比に基準値を設け、異常を判定する方法、あるいは複数の検査項目を用いた論理演算式を定義し、論理演算式の真偽に基き異常を判定する方法が知られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような技術を適用することにより、再検要否判定の省力化および効率化が実現されつつある。しかしながら、技師が再検の必要性があると判断する検査結果と、自動再検要否判定による結果とが完全に一致するわけではなく、より一層の高精度化が望まれている。検査を行う側としては検査結果に誤りがあるのは困るので、自動再検要否判定では、一般には、再検すべき検査結果の見落とし(検出もれ)が無くなるように基準値や判定論理を設定する傾向にあり、実際には再検の必要が無い検査結果も、再検の必要性ありと判定する傾向の判定基準とする場合が多い。そのため、自動再検要否判定により再検の必要性ありと判定された検査結果を、再度検査技師が確認し、本当に再検が必要な検査結果を抽出する作業が必要となる。検査技師の業務の省力化のためにも、より精度の高い再検要否判定方法が必要とされている。
【0008】
また、自動再検要否判定を適用する場合、予め数多くの基準値、あるいは論理式を設定する必要があるばかりでなく、各施設(病院)毎に受診に訪れる患者の構成(疾患、年齢等の構成割合)が異なるとともに、技師が再検を実施する基準も異なるため、最適な基準値、論理式の設定が困難である。そのため、基準値、論理式が容易に最適化できず、自動再検要否判定を有効に適用することはできない。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、より高精度な自動再検要否判定を実現するとともに、再検要否判定で用いる基準値や論理を容易に最適化可能な臨床検査システムを提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
検査結果に対し再検査の必要性の有無を判定する再検要否判定手段を有する臨床検査システムにおいて、再検査要と判定された検体に対しては、すでに被験者から得ている検体を使用してすべての再検査を行う。この再検査の結果と先の検査結果結果との比較を行い、これを利用して再検要否判定論理の修正を行う。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
図1−図3は本発明を適用することができる臨床検査システムの構成例を示す図である。図1において、分析装置サーバ20、検査サーバ30および検査クライアント40は病院内、あるいは検査室内等に敷設されたLAN50に接続される。それぞれのサーバ20,30、検査クライアント40としては、例えばパーソナルコンピュータ等を使用することができる。LAN50には、さらに、第1の検査装置11、第2の検査装置12および第3の検査装置13が接続される。分析装置サーバ20は各検査装置をコントロールするとともに、各検査装置から出力される検査結果等に分析等の必要な処理を施こして、LAN50を経由して検査サーバ30へ情報を送る。検査サーバ30は得られた検査結果等の情報を蓄積するとともに、検査結果に対する再検の必要性の有無を判定する。検査クライアント40は検査サーバ30に蓄積された検査結果や、検査サーバ30によって判定された再検の必要性の有無、等の情報を参照することができる。また、自動化されていない検査に対する検査結果は、検査クライアント40を用いて入力することができる。この場合、入力された検査結果等のデータは検査クライアント40から検査サーバ30へ送られ、検査サーバ30内に蓄えられる。
【0013】
図2は、図1で説明したシステムが構築された病院500と判定論理学習施設550とが通信回線540を介し、データの送受信を行うことを可能にしたシステム構成の例である。判定論理学習施設550には、学習サーバ60が設置されており、学習サーバ60は第1の通信手段610を介して通信回線540と接続されている。検査サーバ30は第2の通信手段620を介しを介して通信回線540と接続されている。検査サーバ30と学習サーバ60は通信回線540を介し、データの送受信を行うことが可能である。通信回線540としてはデータ通信が可能な様々な回線を使用することができ、例えば電話回線を使用することができる。また、第1の通信手段610および第2の通信手段620は回線の種類に応じた適当な通信手段を用いる。例えば通信回線540として電話回線を使用する場合には、第1の通信手段610および第2の通信手段620としてはモデムを使用することができる。この例によれば、図1の例では検査サーバ30で行われている検査結果に対する再検の必要性の有無の判定基準の最適化等を学習サーバ60に委ねることができる。したがって、学習サーバ60は通信回線540に接続された他の病院のデータをも利用した最適化を行うことができるから、図1のシステムよりは、より充実した最適化が期待できる。
【0014】
図3は、図1で説明したシステムが構築された検査センター510を通信回線540を介して接続された各病院520、530が利用する形の例である。各病院には検査結果参照端末70が設置されていて、依頼した検査対象についての検査結果を知ることができる。この例によれば、各病院は設備投資を低減しながら、より高度の最適化のなされた再検査を含む検査を実施することができる。
【0015】
本発明は、いずれの実施形態を取る場合にも適用することができるものであり、検査サーバー30による再検要否判定をより改善することができる。
【0016】
図4は、本発明に係る検査サーバ30の構成の基本的なブロック図を示す。100はシステムバスである。101はCPUである。102はデータベースであり、初期検査結果111、再検要否判定結果114あるいは再検結果115のような結果のデータ、再検実施情報112、診断情報121、契約情報122、依頼情報123あるいは再検要否判定論理116、再検要否判定基準値118のような各種の情報、さらには、再検要否判定処理113、再検要否判定論理最適化処理117、疾患候補推定処理124等の実行プログラムなどが格納されている。103はRAMであり各種の処理を実行するためのワークエリアとして使用されるメモリ領域である。104は入出力インタフェイスであり、検査結果入力、診断情報入力、再検実施情報入力、契約情報入力等の各種の情報の入力をするとともに、検査結果出力、再検結果のような各種の情報を出力する。
【0017】
この実施例は検査サーバ30の持つべき機能としてのデータ、実行処理プログラム等を挙げたものであり、すべてを網羅しているわけではない。また、図2に示すようなシステム構成では、再検要否判定論理最適化処理等は判定論理学習施設550で実行されるものであり、検査サーバ30はこれと連携して処理を進めることになる。
【0018】
このような構成を持つシステムの下で、本発明に係る再検要否判定論理の最適化を実現する具体的な処理について説明する。
【0019】
ここでは一例として線形判別式による2項目間チェックの最適化について説明する。具体的には、再検要否判定処理113で2項目の検査値x、yを使用し、(数1)に従いtの値を計算する。t≧0の場合は再検要と判定され、t<0の場合は再検不要と判定される。
【0020】
t=ax+by+c (数1)
ここでa、b、cは定数であり、(数1)とともに図4のデータベースの再検要否判定論理116に記録されている。この値の初期値は、予め収集したデータを使用し、最適化した値を設定しておくか、あるいは技師の過去の経験に基く値を設定しておく。この場合、病院毎の患者の特性(どのような疾患の患者が多いか)や、検査の手法、検査装置、試薬等の条件により最適な値は異なるため、病院毎に最適化を行うことは当然である。
【0021】
このときの再検要否判定論理の最適化の原理を図5を参照して説明する。
【0022】
図5(a)は検査値x、検査値yをそれぞれ横軸、縦軸とし、検査値の分布を×で示すデータ群920、○で示すデータ群940により示している。直線950は直線ax+by+c=0を示し、この直線の上側のデータが再検要と判定され、下側のデータが再検不要と判定される。したがって、×で示すデータ群920に対しては再検要否判定結果114に「再検要」と記録され、○で示すデータ群940に対しては再検要否判定結果114に「再検不要」と記録されている。
【0023】
本発明では、×で示すデータ群920に対しては、データ群920の各検体について再検査を施す。一般には、検体は長時間経過すると、検体としては不適切なものとなるので、この再検査は最初の検査結果111が出ると、すぐに実施されるものとする。もちろん、技師が実際に再検が必要かどうかを見直して不要と判定したものは省略するものとしても良い。
【0024】
再検査の結果を図5(b)に示す。図5(b)で太線の×で示すデータ群は、再検査の結果が初期検査結果と大きく異ならなかったデータ群を示す。つまり,再検しても同結果,すなわち再検が無駄だったことになる。これらのデータは、改めて、再検要否判定結果114に再検不要と記録される。一方、元の太さで破線で囲って示す×で示すデータ群の検体は、再検査の結果、矢印のついた破線で対応関係を示す△の位置に検査値が変化したことを示す。すなわち、これらの検体の初回の検査は何らかの異常で信頼性が無く、再検査で確からしい検査値の範囲のデータとなったため,再検査要との判定が適切だったと評価できる。
【0025】
したがって、再検要否判定論理最適化処理117では再検要否判定結果114のデータの内、再検要との判定が不適切だった検査結果と適切だった検査結果の分布から再検要否の閾値となる直線950を、(数2)で示す直線960に変更することができる。この(数2)の内容は再検要否判定論理116に記録されている判定論理を修正するものとして採用される。
【0026】
a’x+b’y+c’=0 (数2)
本発明による再検とその結果の評価は、当初の検査結果を技師が実際に再検が必要かどうかを見直すことによって得られる結果とは厳密には一致しないかもしれないが、本発明では、被検者の負担、技師の負担を軽減して、より合理的な再検要否判定論理を得ることができる。
【0027】
このような検体の検査結果についての評価が変わる大きな原因は計測機器あるいは試薬によるものが大部分である。もちろん、この種の検査を行う施設では、毎日、一定の予備的な作業により、計測機器あるいは試薬についてのチェックがなされているが、現実にこの種の無用な再検査の評価がなされているのは事実である。したがって、図5(a)、(b)では、再検要と判定されたものについての再検査によって、より合理的な再検要否判定論理の最適化を探求する例を説明したが、逆に、再検不要とされた○で示すデータ群940についても、再検要と判断すべきものがある可能性があるわけである。
【0028】
図6(a)、(b)を参照して再検不要とされたデータ群から再検要と判断が変更される例について説明する。図6(a)は、図5(a)と同じ初期の検査結果を示すデータである。この例では、○で示す、一旦、再検不要と判定されたデータ群940の内、直線ax+by+c=0の近傍に存在するデータに対しては、再検査を施す。まず、×で示すデータ群の検体については、再検要と判定されるのですべて再検査する。この場合も、検体は長時間経過すると、検体としては不適切なものとなるので、この再検査は最初の結果が出ると、すぐに実施されるものとする。再検査の結果と先の初回の検査結果との比較で×印の大半が検査値が変化し閾値950の下側に変わったとする。つまり、再検査要との判定が正しかったと評価される。すると、この分布から先の判定で○で示す再検査不要と一旦判定されたデータも検査値が正しいかどうか疑わしいといえる。そこで、本発明では、図6(b)で太線の○で示すデータ群の内、破線で囲って示す○で示す閾値に近いデータ群の検体については、先の再検不要との判定を修正し再検要と判定する。つまり、改めて、再検要否判定結果114に再検要と記録される。
【0029】
具体的には、再検要否判定論理最適化処理117では、再検要否判定結果114のデータの内、再検された結果と初回の結果との比較をした値の変化から再検することが適切だったとの評価を行い、再検が適切だったと評価された元の検査値の分布から再検要と判定する直線950を、(数3)で示す直線970に修正し、過去のデータのうち所定の範囲までさかのぼって修正された直線であらためて再検要否の判定を行う。この(数3)の内容は再検要否判定論理116に記録されている判定要否論理を修正するものとして採用される。
【0030】
a''x+b''y+c''=0 (数3)
この場合も、本発明による再検とその結果の評価は、当初の検査結果を技師が実際に再検が必要かどうかを見直すことによって得られる結果とは厳密には一致しないかもしれないが、本発明では、被検者の負担、技師の負担を軽減して、より合理的な再検要否判定論理を得ることができる。この例は、再検の費用の低減の面ではメリットがあるとは言えないが、より見落としの無い再検評価を実現できるものといえる。
【0031】
なお、再検が適切だったとの評価結果が大半をしめた場合に、上記のように、再検要否判定論理を修正して過去のデータの判定をあらためて行う代わりに、単に、「過去に再検査不要と判定した結果は疑わしい」との警告を発する構成としても同様な効果が得られる。
【0032】
図7は、上述した処理の内、図5の最適化の処理を整理して示すフローチャートである。まず、すべての検体についての検査を所定の項目について行う(ステップ201)。この検査結果は入出力インタフェイス104を介して入力されデータベース102の初期検査結果111に保存される(ステップ202)。もちろんこれらのデータには分析装置サーバ20から自動的に入力されるものがあるとともに、検査技師により手作業で入力されるものもある。次いで再検要否判定の為の再検要否判定基準値118、再検要否判定論理116をRAM103に読み込む(ステップ203、204)。再検要否判定論理にしたがって各検体についての再検要否の判定を実行する(ステップ205)。ここで再検要と判定された検体に対しては、再検要否判定結果114に「再検要」と記録する(ステップ206)。一方、ここで再検不要と判定された検体に対しては、再検実施情報112に「再検不実施」と記録する(ステップ207)。ステップ205で再検要と判定された検体については、再検査を実施する(ステップ208)とともに、再検実施情報112に「再検実施」と記録する(ステップ209)。さらに、再検結果を入力する(ステップ210)。入力された再検結果と初期検査結果との差異の大きさに基づき、本当に再検が必要な検体であったかどうかを判定する(ステップ211)。ここで再検不要と判定された検体に対しては、再検要否判定結果114に「再検不要」と記録する(ステップ213)。次いで、再検要否判定結果114および再検実施情報112の記録を参照して再検要否判定論理最適化処理117を実行する(ステップ214)。この結果に応じて再検要否判定論理を修正する(ステップ215)。
【0033】
図8は、上述した処理の内、図6の最適化の処理を整理して示すフローチャートである。この場合も再検要否判定論理にしたがって各検体についての再検要否の判定を実行するステップ205までの処理は同一である。ここでは再検要と判定された検体に対しては、再検要否判定結果114に「再検要」と記録し(ステップ206)、再検査を実施する(ステップ208)。一方、ここで再検不要と判定された検体に対しては、再検不要と判定される結果となったデータが、再検が必要な検体と不要な検体を分ける識別境界からどの程度離れているかを評価する(ステップ220)。例えば(数1)によるtを利用しt≧−0.1であるか否かを評価し、t≧−0.1であれば、図7で説明した再検要否の判定を実行するステップ205の処理で「再検要」と判定されたのと同様に扱う。識別境界から十分、例えばtが−0.1より小さい程度に離れていれば、図7で説明したステップ205の処理で「再検不要」と判定されたときの処理を行う。
【0034】
ステップ220でt≧−0.1と判定された検体に対しては、再検要否判定結果114に「再検要」と記録する(ステップ206)。一方、ここでt<−0.1と判定された検体に対しては、再検実施情報112に「再検不実施」と記録する(ステップ207)。ステップ220でt≧−0.1と判定された検体については、再検査を実施する(ステップ208)とともに、再検実施情報112に「再検実施」と記録する(ステップ209)。さらに、再検結果を入力する(ステップ210)。入力された再検結果と初期検査結果との差異の大きさに基づき、本当に再検が必要であったかどうかを判定する(ステップ211)。ここで再検不要と判定された検体に対しては、再検要否判定結果114に「再検不要」と記録する(ステップ213)。次いで、再検要否判定結果114および再検実施情報112の記録を参照して再検要否判定論理最適化処理117を実行する(ステップ214)。この結果に応じて再検要否判定論理を修正する。(ステップ215)。
【0035】
図6、図8で説明した実施形態は図5、図7で説明した実施形態と比較すると再検の実施対象が増加することになるから、単純に再検の必要なものに絞るという観点では不利であるが、誤って再検対象を見落とすことを防止するという観点では有利である。
【0036】
なお、ここでは線形判別式を用いた例について説明したが、他の再検判定方法も適用可能である。例えばニューラルネットワークを用いた再検判定にも、同様の最適化を行うことができる。
【0037】
検査結果、診断情報等を入力する複数の入力素子と、再検の要否を判定する1つの出力素子を有するネットワークを使用し、再検の必要がある検査結果、診断情報を入力した場合には出力sが1、必要が無いデータの検査結果等を入力した場合には出力sが0になるよう、予め学習しておく。そして、未知のデータが入力された場合出力s≧vの場合は再検要、s<vの場合は再検不要、と判定する。vは判定の闇値であり、初期値としては0.5を設定する。
【0038】
図5、図7に相当する場合には、ステップ214において再検要否判定結果114に記録された再検要、再検不要というデータを教師データとしてニューラルネットワークを学習することにより、最適化することができる。また、図6、図8に相当する場合には、ステップ220において、t≧−0.1という条件の代わりに、例えばs≧0.4とする。このように、二ューラルネットワークがvの初期値0.5よりわずかに低い値(ここでは0.4)より大きな値を出力する際の検査値を検出することにより、識別境界近傍の検査値を再検要と判定することができる。
【0039】
線形判別式を用いた場合には、図5、図6に示すように、x、yを軸とする平面上での再検要否の識別境界は直線となる。ニューラルネットワークでは識別境界が曲線となるため、より精度の高い再検判定を行うことができる。
【0040】
現在、病院内で扱われる診断に関する情報の電子化が進みつつあり、様々な病院情報システム内にこれらの電子化された情報が蓄積されるようになってきており、上述の実施例では説明しなかったが、再検要否判定論理の最適化には種々の情報が参照できる。例えば、診断情報121には医師による診断結果、投薬に関する情報等が記録されており、これらを参照した再検の必要性の有無の判断もできる。例えばある受診者の血糖値が通常より高い値を示した場合でも、その受診者に対して既に糖尿病である、という診断が下されていれば、測定ミスである可能性は低いと判断することができる。この他、高脂血症という診断がついている場合にはコレステロールや中性脂肪が高値を示す等、疾患の種類に応じ特有の検査値の傾向を示す。そのため、診断に関する情報を使用することにより、測定ミスの可能性の有無を適切に判断することができる。さらに、診断に関する情報として、疾患名を例に挙げたが、疾患名以外の情報を使用しても良い。例えば、特定の薬を服用している場合にはある検査値が高値、あるいは低値を示すことが知られている場合には、診断に関する情報として投薬情報を用いることにより、再検要否判定の精度を高くすることができる。また、疾患名が決定する前なのか、疾患名が確定し、治療を行っている状態なのか、手術からどのくらい経過しているか、等、診療の段階に関する情報でも良い。疾患名が確定する前や、手術が行われた直後、等は検査値が大きく変動する可能性があるが、病名が確定し治療が開始された後、あるいは手術後長時間が経過し、容態が安定した後では検査値の変動は小さくなる。このような情報を使用すると、前回値からの変動を用いた再検要否判定の精度を高めることが可能となる。
【0041】
図5、図6では再検要否の判定を、簡単化のため、2項目間の線形評価とする例で説明したが、単項目チェック、前回値チェック、項目間チェック等、従来の技術による様々な方法を拡張して用いることができる。さらに、判定のための基準値、あるいは論理式を男女別、年齢別に設定していたが、上記の例のように、診断に関する情報として疾患名を利用する場合には、男女別、年齢別に加え、更に疾患名毎に基準値、論理式を設定すれば良い。この場合、診断に関する情報として受診者の年齢、性別、疾患名を診断情報121より読み取り、該当する基準値、論理式を再検要否判定論理116および再検要否判定基準値118より読み込み、再検の必要性の有無を判定することができる。この場合、再検要否判定論理116または再検要否判定基準値118には、例えば図9に示すような形式で、男女別、年齢別、疾患名別に基準値、論理式を記録しておく。このように、再検要否判定論理116および再検要否判定基準値118に、再検要否判定に使用する基準値等のパラメータや、判定論理を記述した論理式を疾患毎に記録しておくことは、再検要否判定を高精度化できる。
【0042】
医師の診断が確定していない診療の初期の段階等において、患者の疾患名が利用できない場合には、図9に示すように予め「診断名未確定」の場合の再検基準値、再検論理を記述しておき、この再検基準値、再検論理利用して再検要否判定処理を行えば良い。また、上記の方法の他、全ての疾患に対する再検基準値、再検論理を用いた判定を行い、少なくとも1種類の疾患に対する再検基準値、再検論理を用いた判定で再検不要、と判定された場合には再検不要と決定しても良い。この場合、患者は再検不要と判定された際の再検基準値、再検論理に対応する疾患である可能性が高く、その結果、この疾患の再検基準値、再検論理においては再検不要と判定されたと考えることができる。
【0043】
また、疾患名が利用できない場合に、図4に示す疾患候補推定処理124を利用し、入力された検査結果等から患者の疾患名を推定した後、推定された疾患名に対応する再検基準値、再検判定論理を使用して再検要否判定処理を行っても良い。この場合、疾患候補が出力されなかった場合には、入力された検査値がおかしいと考えられ、再検を要する検体であると判定することができる。
【0044】
また、投薬情報を利用する場合には、薬の種類別に基準値、論理式を記録しておき、患者に投与されている薬の種類に応じて異なる基準値、論理式を選択して利用することにより、再検要否判定を高精度化することができる。さらに、手術からの経過日数により、異なる基準値、論理式を記録しておき、患者の手術からの経過日数に応じて異なる基準値、論理式を選択して利用することによっても再検要否判定を高精度化することができる。
【0045】
また、再検要否判定論理としては今回の検査値、過去の検査値、診断情報等を入力とし、再検の必要性の有無を出力とするニューラルネットワークを使用しても良い。この場合には再検要否判定論理116には、ニューラルネットワークの層数、各層の素子数、等のネットワーク構造を記述するパラメータや、各素子間の結合重み値等を記録しておき、再検要否判定を行う際には記録された情報に基き、ネットワークを構成する。
【0046】
また、再検要否判定論理としてファジィ推論を用いる場合には、再検要否判定論理116には、ファジィ推論に使用するメンバーシップ関数等を記録しておく。
【0047】
再検要否判定論理による判定(ステップ205)の結果は、再検要否判定結果114に記録されるが、ここには、再検要否判定結果の根拠となる情報も記録しておくのが良い。再検要否判定結果の根拠とは、再検が必要であると判定した場合には、何故必要と判定したか、再検が不要であると判定した場合には、何故不用と判定したか、を説明する根拠となる情報である。再検が必要であると判定した場合の根拠とは、例えば単項目チェックで基準値を超えた検査項目とその値、前回値チェックで基準値を超えた検査項目とその値、項目間チェックで異常と判断された論理式と、その論理演算に使用した検査値、疾患名等の診断に関する情報、などである。また、再検が不要であると判定した場合の根拠とは、例えば単項目チェックで異常値(基準値を超えた検査値)が無い場合は異常値無し、という情報が根拠となる。また、異常値があっても再検不要の場合は、異常値を示す検査項目に対する前回値、あるいは疾患名等の診断に関する情報、などを判定の根拠とすることができる。
【0048】
検査クライアント40のディスプレイ上に検査結果、及び再検要否判定結果を表示する画面構成例を図10、図11に示す。図10では検査クライアント40の画面800上に、受付日時810、検査オーダ番号815、患者氏名820、患者の年齢825、患者の性別830、患者の受診診療科835、検査状況840、異常値の有無845、再検の要否850等、を一覧表形式で表示する例を示している。このうち、検査状況840では、生化学免疫検査(図中では「生化免疫」と記述)や、一般検査(図中では「一般」と記述)という検査の種類別に、検査の進行状況を示している。図中「完」とは検査が終了して、検査結果が報告されていることを示し、「未」はまだ検査が終了していないことを示している。また、「−」は、その種類の検査についてはオーダが出されていないことを示している。異常値の有無845は「無」の場合、異常値が無かったことを示し、「有」の場合は異常値があったことを示している。まだ検査結果が出ていない場合には「−」が表示されている。再検の要否850には、再検要否判定処理113により判定された再検の必要性の有無が表示されており、「否」の場合は再検の必要性が無いことを示し、「要」の場合は再検の必要性が有ることを示している。また、検査結果が出ていない場合には「−」が表示されている。
【0049】
ここでは、上記の情報がオーダ番号順に一覧表示されているが、条件による抽出も可能である。例えば特定の診療科や、患者氏名、異常値の有無、再検の要否、といった項目に条件を設定し、条件を満たす行のみを抽出することにより、目的とする情報を効率良く参照ことができる。
【0050】
図10に示す画面構成例において、検査クライアント40に付属するマウスやキーボード等を操作し、いずれか一行を選択すると、その行に関するさらに詳細な情報が表示される。このときに表示される画面の構成例を図11に示す。
【0051】
図11は検査クライアント40のディスプレイ800上における画面の構成例である。画面は患者基本情報表示エリア860、検査結果表示エリア865、再検要否判定結果表示エリア870、再検実施情報入力エリア875、から構成される。
【0052】
患者基本情報表示エリア860には、患者ID、氏名、年齢、性別等、患者に関する情報が表示される。検査結果表示エリア865にはTP、Alb等の各検査項目ごとの今回値、前回値、それ以前の値、が検査日とともに表形式で表示される。再検要否判定結果表示エリア870には、再検要否判定処理113による再検の必要性の有無に関する判定結果、及び、その判定の根拠となる情報が表示される。再検実施情報入力エリア875では、本システムの操作者が、検査クライアント40に付属のマウス、キーボード等を利用し、再検を実施するか(したか)、あるいは実施しないか(しなかったか)を選択入力することができる。
【0053】
システムが再検の必要あり、と判断した検体について、その検査結果を検査技師が参照し、本当に再検が必要かどうか最終的な判断を行う場合があるが、本発明のように再検要否判定結果に応じて必要な再検が自動的に行われるものとすれば、検査技師による判断は省略できるケースが多くなる。検査技師による判断をする場合にも、再検要否判定の根拠を記録する再検要否判定結果114を設け、検査結果表示エリア865に検査結果を表示するとともに再検要否判定結果表示エリア870に再検要否判定結果と再検要否判定の根拠を表示することにより、技師が最終的な判断を行う時に、どの検査値に着目すれば良いかを再検要否判定の根拠として示すことが可能となり、技師は迅速に判断を行うことが可能になる。
【0054】
再検実施情報入力エリア875により入力された再検実施情報は、再検実施情報112に記録される。再検要否判定論理最適化処理117は初期検査結果111に記録された検査結果と、再検実施情報112に記録された再検実施情報および再検結果115と再検要否判定結果114とを用い、再検要否判定処理113で用いられる再検要否判定論理116を最適化するための情報を出力する。
【0055】
例えば従来技術による単項目チェック、前回値チェック、項目間チェック等で用いる基準値を最適化する場合、検査結果記録手段に記録された過去の検査結果を用いて検査値分布のヒストグラムを作成し、平均値を中心に、全体の95%の値が含まれる範囲を基準範囲とする最適化方法がよく知られている。また、別の方法としては検査値の平均値μと標準偏差σを求め、範囲(μ−kσ、μ+kσ)を基準範囲とする方法がある。但しkは適当な定数である。しかしながら、このような基準範囲の設定方法は、再検の必要な検体がどのような検査値であったかという情報は用いていない。そのため、実際にこの方法で設定した基準範囲を用いて再検要否判定を行った場合、過去に再検を実施した検体が、再検不要と判定されたり、また再検が不要な検体を再検の必要ありと判定してしまうケースが多くなってしまう場合がある。そのため、基準範囲の設定の時に、過去の検査結果に加え、その検査結果が再検を行うべき結果であるか否かを示す再検要否判定結果を用いることにより、過去の検査結果の内、本当に再検が必要であった検査結果が全て再検必要、と判断されるような最大限の基準範囲を設定することが可能となる。このように基準範囲を設定することにより、再検すべき検査結果の見落としを少なくするとともに、実際には再検が不要である検査結果を再検要と判断してしまうケースを少なくし、再検要否判定の精度を高めることが可能になる。
【0056】
再検要否判定処理113で、上記以外の手法を用いる場合には、それぞれの手法に対応した様々な最適化方法、学習方法を用いれば良い。例えば再検要否判定処理113としてニューラルネットワークを使用する場合には、検査結果111から読み込む過去の検査値を学習データとし、再検要否判定結果114から読み込まれる再検を行うべき検体であるか否かという情報を教師データとし、ニューラルネットワークの学習を行うことができる。ニューラルネットワークとして例えばフィードフォワード型のネットワークを用いる場合には、学習方法としてバックプロパゲーション法を用いることができる。
【0057】
再検要否判定は検査値を特徴量とするパターンを、再検の必要があるパターンと、再検の必要が無いパターンの2種類に分類するパターン認識問題と考えることができる。そのため、再検要否判定論理116の再検要否判定方法としては、公知の様々なパターン認識方法を用いることができ、また、再検要否判定論理最適化処理117としては公知の様々なパターン認識論理構築方法を用いることができる。そのため、例えば再検要否判定論理116においてファジィ推論を用いる場合にも、検査結果とそれに対応する再検要否判定結果とを使用することにより、推論方法を最適化することができる。また、公知のパターン認識論理構築方法を用いることにより、最適な論理式を学習により得ることも可能である。
【0058】
このように、初期検査結果111および再検結果115と再検実施情報112を設けることにより、上述のような再検要否判定論理の最適化が可能になり、再検要否判定精度を向上することができる。
【0059】
再検論理の最適化は、図7、図8では再検の流れの中で必ず実行されるものとして説明したが、本システムの使用者が再検要否判定論理変更を入力することによって実行するものとしても良い。
【0060】
また、当然のことながら、システムの運用者は再検結果とは無関係に再検要否判定論理を変更しうる。例えば、図9の再検基準値あるいは再検論理を入力装置を使用して更新するのである。
【0061】
【発明の効果】
再検要と判定された検体に対する再検結果あるいは再検不要と判定された検体の一部に対する再検結果等の蓄積された再検実施情報と検査結果を用いて再検要否判定論理を最適化することにより、再検の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用することができる臨床検査システムの構成例の一つを示す図。
【図2】本発明を適用することができる臨床検査システムの構成例の他の一つを示す図。
【図3】本発明を適用することができる臨床検査システムの構成例のさらに他の一つを示す図。
【図4】本発明に係る検査サーバの基本的なブロック構成を示す図。
【図5】本発明に係る再検要否判定論理の最適化の原理の一つの実施例を説明する図。
【図6】本発明に係る再検要否判定論理の最適化の原理の他の実施例を説明する図。
【図7】図5に係る再検要否判定論理の最適化の処理のフローチャートを示す図。
【図8】図6に係る再検要否判定論理の最適化の処理のフローチャートを示す図。
【図9】本発明に係る再検要否判定論理で再検要否判定に使用する基準値等のパラメータや、判定論理を記述した論理式の例を示す図。
【図10】本発明に係る検査クライアントのディスプレイ上に検査結果、及び再検要否判定結果を表示する画面構成例の一つを示す図。
【図11】本発明に係る検査クライアントのディスプレイ上に検査結果、及び再検要否判定結果を表示する画面構成例の他の一つを示す図。
【符号の説明】
11:第1の検査装置、12:第2の検査装置、13:第3の検査装置、20:分析装置サーバ、30:検査サーバ、40:検査クライアント、50:LAN、60:学習サーバ、70:検査結果参照端末、100:システムバス、101:CPU、102:データベース、103:RAM、104:入出力インタフェイス、111:初期検査結果、112:再検実施情報、113:再検要否判定処理、114:再検要否判定結果の結果のデータ、115:再検結果の結果のデータ、116:再検要否判定論理、117:再検要否判定論理最適化処理、121:診断情報、122:契約情報、123:依頼情報、124:疾患候補推定処理、500:病院、510:検査センター、520:第1の病院、530:第2の病院、540:通信回線、550;判定論理学習施設、610:第1の通信手段、620:第2の通信手段、800:検査クライアント40のディスプレイ画面、810:受付日時を表示する列、815:オーダ番号を表示する列、820:患者氏名を表示する列、825:年齢を表示する列、830:性別を表示する列、835:診療科を表示する列、840:検査状況を表示する列、845:異常値の有無を表示する列、850:再検の要否を表示する列、860:患者基本情報表示エリア、865:検査結果表示エリア、870:再検要否判定結果表示エリア、875:再検実施情報入力エリア、920,940:データ群、950:ax+by+c=0を満足する直線、960:a’x+b’y+c’=0を満足する直線、970:a''x+b''y+c''=0を満足する直線。

Claims (5)

  1. 被検者の検体の臨床検査結果に対して再検要否を判定する再検要否判定論理を有し、該再検要否判定論理は所定のパラメータを備え、前記臨床検査結果を個別に保存する手段と、前記再検要否判定論理で再検査要と判定された複数の検体に関するそれぞれの再検査の結果と、対応する保存された初回の検査結果のそれぞれとの比較により再検査したことが適切か否かを判定する手段と、再検査したことが適切と判定された検査結果の分布に応じて、前記再検要否判定理論により−旦再検不要と判定されていた検体についても再検査要と修正指示をする手段とを有する臨床検査システム。
  2. 請求項1に記載の臨床検査システムにおいて、前記修正を指示する手段は、前記再検要否判定論理のパラメータを修正し、前記保存された初回の検査結果を修正された前記再検要否判定論理で再度判定することにより修正指示することを特徴とする臨床検査システム。
  3. 請求項1に記載の臨床検査システムにおいて、前記被検者の疾患の種類に応じ、異なる前記再検要否判定論理を用いることを特徴とする臨床検査システム。
  4. 請求項1に記載の臨床検査システムにおいて、前記被検者が服用している薬の種類に応じ、異なる前記再検要否判定論理を用いることを特徴とする臨床検査システム。
  5. 請求項1に記載の臨床検査システムにおいて、前記臨床検査結果から、疑われる疾患名を出力する疾患候補抽出手段を有し、該疾患候補抽出手段が出力する疾患の種類に応じ、異なる前記再検要否判定論理を用いることを特徴とする臨床検査システム。
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