JP3986833B2 - ブラシレスモータの駆動制御装置 - Google Patents

ブラシレスモータの駆動制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブラシレスモータの回転速度をPWM(パルス幅変調)により制御する駆動制御装置に関し、特に、車両用空調装置の電動圧縮機に内蔵されたブラシレスモータの回転速度制御に有用な駆動制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用空調装置には、エンジンの回転力をその動力源とするものと、バッテリー等の直流電源の電力をその動力源とするものとがある。後者の空調装置は一般にブラスレスモータ内蔵の電動圧縮機が用いられていて、このブラシレスモータはインバータ回路により変換されたパルス列状の疑似交流電圧によって駆動され、その回転速度は前記疑似交流電圧のデューティ比を変えて供給実効電圧を変化させる方法、即ち、PWM(パルス幅変調)により制御されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、車両に搭載されたバッテリー等の直流電源は電気的負荷との関係において電圧変動を生じ易く、例えば、走行用モータを有する電気自動車やハイブリットカー等の車両では、加速時に走行用モータに大きな負荷電流が流れるため直流電源電圧が急激に下降し、逆に減速時に走行用モータからの回生電流によって直流電源電圧が急激に上昇する現象を生じる。
【0004】
特許第3084941号公報には、前記のPWM制御に関し、電動圧縮機(ブラシレスモータ)の始動から所定時間に達するまでの間、または、電動圧縮機(ブラシレスモータ)の始動から所定回転速度に達するまでの間、検出された直流電源電圧に応じて前記疑似交流電圧のデューティ比を補正、具体的には、検出された直流電源電圧×デューティ比=所定実効電圧となるようにデューティ比を補正するようにした制御装置が開示されている。
【0005】
しかし、前記の制御方法を実現する場合、直流電源電圧の変動を認識してからデューティ比を補正するまでに制御装置の処理速度等に依存する時間差が生じるし、また、直流電源電圧が連続して上昇し続けるときや下降し続けるときには、1回目のデューティ比補正から2回目のデューティ比補正が行われる間にも制御装置の制御装置の処理速度等に依存する時間差が生じる。
【0006】
つまり、前記の制御方法は、直流電源電圧が変動したときに変動後或いは変動中の電圧に基づいてブラシレスモータへの供給実効電圧が所定値となるようにデューティ比を補正するものであり、前記の時間差において生じる電圧変動がデューティ比の補正に何ら反映されないことから、補正デューティ比として適正な値を得ることが困難であり、結果としてブラシレスモータに回転速度変動や過電流やトルク不足といった不具合を生じ得る。また、直流電源電圧の変動が高負荷時(デューティ比が大きいとき)に発生すると、インバータ回路を構成する半導体スイッチング素子にその許容電流を越える電流が流れて同素子に破壊を生じる恐れがある。
【0007】
本発明は前記事情に鑑みて創作されたもので、その目的とするところは、直流電源電圧の変動に伴うPWM制御上のデューティ比補正を適切に行ってブラシレスモータを安定な状態で動作できるブラシレスモータの駆動制御装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明は、直流電源電圧をパルス列状の疑似交流電圧に変換してブラシレスモータに供給しブラシレスモータの回転速度をPWMにより制御する駆動制御装置であって、直流電源の電圧を検出する電圧検出手段と、直流電源の電圧を周期的にサンプリングする電圧サンプリング手段と、サンプリング結果に基づいて直流電源電圧の変動を監視し、直流電源電圧の上昇量或いは下降量が判定基準値よりも大きいときにはブラシレスモータへの供給実効電圧が実質的に維持されるように前記疑似交流電圧のデューティ比を補正するデューティ比補正手段と、判定基準値を超える電圧上昇或いは電圧下降が2回以上連続して生じたときには2回目以降の上昇または下降に対するデューティ比補正を行わずに1回目に補正したデューティ比を保持するデューティ比保持手段とを備えることをその特徴とする。
【0009】
この駆動制御装置によれば、サンプリング結果に基づいて直流電源電圧の変動を監視し、直流電源電圧の上昇量或いは下降量が判定基準値よりも大きいときにはブラシレスモータへの供給実効電圧が実質的に維持されるように前記疑似交流電圧のデューティ比を補正すると共に、判定基準値を超える電圧上昇或いは電圧下降が2回以上連続して生じたときには2回目以降の上昇または下降に対するデューティ比補正を行わずに1回目に補正したデューティ比を保持することができる
【0010】
また、本発明は、直流電源電圧をパルス列状の疑似交流電圧に変換してブラシレスモータに供給しブラシレスモータの回転速度をPWMにより制御する駆動制御装置であって、直流電源の電圧を検出する電圧検出手段と、直流電源の電圧を周期的にサンプリングする電圧サンプリング手段と、サンプリング結果に基づいて直流電源電圧の変動を監視し、直流電源電圧の上昇量或いは下降量が判定基準値よりも大きいときにはそのときのブラシレスモータの負荷トルクを求めてこの負荷トルクに応じて前記疑似交流電圧のデューティ比を補正するデューティ比補正手段と、判定基準値を超える電圧上昇或いは電圧下降が2回以上連続して生じたときには2回目以降の上昇または下降に対するデューティ比補正を行わずに1回目に補正したデューティ比を保持するデューティ比保持手段を備えることをその特徴とする。
【0011】
この駆動制御装置によれば、サンプリング結果に基づいて直流電源電圧の変動を監視し、直流電源電圧の上昇量或いは下降量が判定基準値よりも大きいときにはそのときのブラシレスモータの負荷トルクを求めてこの負荷トルクに応じて前記疑似交流電圧のデューティ比を補正すると共に、判定基準値を超える電圧上昇或いは電圧下降が2回以上連続して生じたときには2回目以降の上昇または下降に対するデューティ比補正を行わずに1回目に補正したデューティ比を保持することができる。
【0014】
本発明の前記目的とそれ以外の目的と、構成特徴と、作用効果は、以下の説明と添付図面によって明らかとなる。
【0015】
【発明の実施の形態】
参考形態]
図1及び図2は本発明の参考形態を示すもので、図1は駆動制御装置の構成図、図2は駆動制御のフローチャートである。
【0016】
図1における符号1は車両に搭載された空調装置の電動圧縮機で、3相巻線型のブラシレスモータ(ブラシレスDCモータ)1aを内蔵している。符号2は車両に搭載されたバッテリーで、ブラシレスモータ1a以外の電気機器の直流電源としても使用されている。符号3はインバータ回路で、6個の半導体スイッチング素子3a1〜3a6を備えるスイッチング回路3aと、スイッチング回路3aにスイッチング素子駆動信号を送出するスイッチング素子駆動回路3bとを備えている。符号4は電圧検出回路で、バッテリー2の直流電圧を検出する。
【0017】
符号5はマイクロコンピュータ構成の制御回路で、前記空調装置によって車内空調を行うときにブラシレスモータ1aに対して通常の速度制御(空調負荷に応じた速度制御)を行うための適切なデューティ比を演算するプログラムをROMに記憶している。この制御回路は、前記プログラムにより演算された所定のデューティ比をそのまま、または、バッテリー2の電圧変動に応じて補正した上でスイッチング素子駆動回路3bに送出する。
【0018】
バッテリー2からの直流電圧は前記のデューティ比に基づきインバータ回路3によってパルス列状の疑似交流電圧に変換されてからブラシレスモータ1aに供給され、ブラシレスモータ1aの回転速度はPWM(パルス幅変調)により制御される。
【0019】
図2に示すように、前記空調装置によって車内空調を行っているときには、バッテリー2の直流電圧Vを電圧検出回路4を通じて周期的に、例えば、0.5秒毎にサンプリングする(ステップS11,S16)。
【0020】
そして、サンプリングされた電圧値をV1とし、前回のサンプリング時の電圧値をV2とした上で(ステップS12,S13)、V1−V2>Vc1であるか否かと、V2−V1>Vc2であるか否かを判定する(ステップS14,S17)。ちなみに、Vc1は電圧上昇量の判定基準値であり、Vc2は電圧下降量の判定基準値である。
【0021】
ステップS14でV1−V2>Vc1の関係を満足しているとき、即ち、直流電圧V1の上昇量が判定基準値Vc1よりも大きいときには、通常の速度制御を行うための所定のデューティ比に対してデューティ比を低くする補正を行い、ステップS16に移行する(ステップS15)。
【0022】
一方、ステップS17でV2−V1>Vc2の関係を満足しているとき、即ち、直流電圧V1の下降量が判定基準値Vc2よりも大きいときには、通常の速度制御を行うための所定のデューティ比に対してデューティ比を高くする補正を行い、ステップS16に移行する(ステップS18)。
【0023】
他方、ステップS14でV1−V2>Vc1の関係を満足しておらず、且つ、ステップS17でV2−V1>Vc2の関係を満足していないときには、通常の速度制御を行うための所定のデューティ比に対して特段補正を行うことなく、ステップS16に移行する(ステップS19)。
【0024】
ここで前記ステップS15と前記ステップS18におけるデューティ比の補正方法について説明する。このデューティ比の補正方法には、(1-1)演算によって補正後のデューティ比を求める方法と、(1-2)データテーブルから補正後のデューティ比を選択する方法の何れかを採用することができる。
【0025】
前記(1-1)の補正方法では、デューティ比=(通常の速度制御を行うための所定のデューティ比によって規定される所定実効電圧)/(電圧検出回路4で検出された直流電圧)×βの計算式の他、デューティ比={(通常の速度制御を行うための所定のデューティ比によって規定される所定実効電圧)/(電圧検出回路4で検出された直流電圧)}+αの計算式によって補正後のデューティ比を演算するようにする。
【0026】
尚、前者の式中のβは、直流電源電圧上昇時にあってはブラシレスモータ1aへの供給実効電圧が電圧上昇前の供給実効電圧よりも小さくなるように定められた1よりも小さい値であり、直流電源電圧下降時にあってはブラシレスモータ1aへの供給実効電圧が電圧下降前の供給実効電圧よりも大きくなるように定められた1よりも大きな値である。
【0027】
また、後者の式中のαは調整値であって、この調整値αはΔV(電圧上昇量または電圧下降量)/Δt(サンプリング周期)で表される電圧上昇・下降率にほぼ比例した値(電圧上昇の場合にはマイナスの値で電圧下降の場合にはプラスの値)に前記βを乗じたものであり、制御回路5のROMに予め記憶しておいた調整値のデータテーブルから前記の上昇率また下降率をパラメータとして選択される。
【0028】
一方、前記(1-2)の方法では、「通常の速度制御を行うための所定のデューティ比によって規定される所定実効電圧」と「電圧検出回路4で検出された直流電圧」をパラメータとした補正デューティ比のデータテーブルを予め作成して制御回路5のROMに記憶しておき、ここから前記2つのパラメータによって規定される補正デューティ比を選択するようにする。
【0029】
何れも方法の場合も、通常の速度制御を行うための所定のデューティ比によって規定される所定実効電圧と近似の実効電圧がブラシレスモータ1aに供給されることから、車内空調を行う上で特段支障は生じ得ない。
【0030】
このように前述の駆動制御方法によれば、サンプリング結果に基づいてバッテリー2の電圧変動を監視し、直流電圧V1の上昇量或いは下降量が判定基準値Vc1,Vc2よりも大きいときにはブラシレスモータ1aへの供給実効電圧が近似的に維持されるように前記疑似交流電圧のデューティ比を補正しているので、バッテリー2の電圧変動によってブラシレスモータ1aへの供給実効電圧が大きく変化することを防止することができ、大きな回転速度変動やトルク不足等といった不具合を解消することができる。
【0031】
第1実施形態]
図3及び図4は本発明の第1実施形態を示すもので、図3は駆動制御装置の構成図、図4は駆動制御のフローチャートである。
【0032】
図3における符号21は車両に搭載された空調装置の電動圧縮機で、3相巻線型のブラシレスモータ(ブラシレスDCモータ)21aを内蔵している。符号22は車両に搭載されたバッテリーで、ブラシレスモータ21a以外の電気機器の直流電源としても使用されている。符号23はインバータ回路で、6個の半導体スイッチング素子23a1〜23a6を備えるスイッチング回路23aと、スイッチング回路23aにスイッチング素子駆動信号を送出するスイッチング素子駆動回路23bとを備えている。符号24は電圧検出回路で、バッテリー22の直流電圧を検出する。符号25は電流検出回路で、バッテリー22の直流電圧を検出する。符号26はモータ回転数検出回路で、ブラシレスモータ21aの回転数を検出する。
【0033】
符号27はマイクロコンピュータ構成の制御回路で、前記空調装置によって車内空調を行うときにブラシレスモータ21aに対して通常の速度制御(空調負荷に応じた速度制御)を行うための適切なデューティ比を演算するプログラムをROMに記憶している。この制御回路は、前記プログラムにより演算された所定のデューティ比をそのまま、または、バッテリー22の電圧変動に応じて補正した上でスイッチング素子駆動回路23bに送出する。
【0034】
バッテリー22からの直流電圧は前記のデューティ比に基づきインバータ回路23によってパルス列状の疑似交流電圧に変換されてからブラシレスモータ21aに供給され、ブラシレスモータ21aの回転速度はPWM(パルス幅変調)により制御される。
【0035】
図4に示すように、前記空調装置によって車内空調を行っているときには、バッテリー22の直流電圧Vを電圧検出回路24を通じて周期的に、例えば、0.5秒毎にサンプリングする(ステップS31,S37)。
【0036】
そして、サンプリングされた現在の電圧値をV1とし、前回のサンプリング時の電圧値をV2とした上で(ステップS32,S33)、V1−V2>Vc1であるか否かと、V2−V1>Vc2であるか否かを判定する(ステップS34,S38)。ちなみに、Vc1は電圧上昇量の判定基準値であり、Vc2は電圧下降量の判定基準値である。
【0037】
ステップS34でV1−V2>Vc1の関係を満足しているとき、即ち、直流電圧V1の上昇量が判定基準値Vc1よりも大きいときには、通常の速度制御を行うための所定のデューティ比に対するデューティ比変化幅を決定し、決定した変化幅でデューティ比を低くする補正を行い、ステップS37に移行する(ステップS35,S36)。
【0038】
一方、ステップS38でV2−V1>Vc2の関係を満足しているとき、即ち、直流電圧V1の下降量が判定基準値Vc2よりも大きいときには、通常の速度制御を行うための所定のデューティ比に対するデューティ比変化幅を決定し、決定した変化幅でデューティ比を高くする補正を行い、ステップS37に移行する(ステップS39,S40)。
【0039】
他方、ステップS34でV1−V2>Vc1の関係を満足しておらず、且つ、ステップS38でV2−V1>Vc2の関係を満足していないときには、通常の速度制御を行うための所定のデューティ比に対して特段補正を行うことなく、ステップS37に移行する(ステップS41)。
【0040】
ここで前記ステップS35と前記ステップS39におけるデューティ比変化幅の決定方法について説明する。このデューティ比変化幅の決定方法には、(2-1)演算によりデューティ比変化幅を求める方法と、(2-2)データテーブルからデューティ比変化幅を選択する方法の何れかを採用することができる。
【0041】
前記(2-1)の決定方法では、デューティ比変化幅=(サンプリング時のブラシレスモータの負荷トルク)×MCの式、または、デューティ比変化幅=(サンプリング時のブラシレスモータの負荷トルク)×MC+αの式によってデューティ比変化幅を演算するようにする。
【0042】
尚、両式中のMCはデューティ比変化幅を算出する場合の定数である。また、後者の式中のαは調整値であって、この調整値αはΔV(電圧上昇量または電圧下降量)/Δt(サンプリング周期)で表される電圧上昇・下降率にほぼ比例した値(電圧上昇の場合にはマイナスの値で電圧下降の場合にはプラスの値)であり、制御回路27のROMに予め記憶しておいた調整値のデータテーブルから前記の上昇率また下降率をパラメータとして選択される。
【0043】
ちなみに、前記の(サンプリング時のブラシレスモータの負荷トルク)を求める方法としては、演算による方法とデータテーブルによる方法の2通りがあり、演算により負荷トルクを求める場合には負荷トルクT=(ηm×ηi×V×I)/(k×N)の算出式を使用する。同式中のηmはモータ効率、ηiはインバータ効率、Vは電圧検出回路24で検出された直流電圧、Iは電流検出回路25で検出された直流電流、Kは定数、Nはモータ回転数検出回路26で検出されたモータ回転数である。
【0044】
また、データテーブルにより負荷トルクを求める場合には、「電圧検出回路24で検出された直流電圧直流電圧」と「電流検出回路25で検出された直流電流」と「モータ回転数検出回路26で検出されたモータ回転数」をパラメータとした負荷トルクのデータテーブルを予め作成して制御回路27のROMに予め記憶しておき、ここから前記3つのパラメータによって規定される負荷トルクを選択するようにする。
【0045】
一方、前記(2-2)の方法では、「サンプリング時のブラシレスモータの負荷トルク」をパラメータとしたデューティ比変化幅のデータテーブルを予め作成して制御回路27のROMに記憶しておき、ここから前記のようにして求めた負荷トルクによって規定されるデューティ比変化幅を選択するようにする。
【0046】
何れも方法の場合も、通常の速度制御を行うための所定のデューティ比で規定される所定実効電圧と近似の実効電圧がブラシレスモータ21aに供給されることから、車内空調を行う上で特段支障は生じ得ない。
【0047】
このように前述の駆動制御方法によれば、サンプリング結果に基づいてバッテリー22の電圧変動を監視し、直流電圧V1の上昇量或いは下降量が判定基準値Vc1,Vc2よりも大きいときにはそのときのブラシレスモータ21aの負荷トルクTを求めてこの負荷トルクTに応じて前記疑似交流電圧のデューティ比を補正するようにしているので、補正デューティ比が所定実効電圧の制約を受けてしまうことを防止して、補正デューティ比として適正な値を得ることができ、トルク不足や半導体スイッチング素子の破壊等といった不具合を解消することができる。
【0048】
図5は図4に示した駆動制御フローチャートの変形例を示すもので、図4に示した駆動制御方法にデューティ比保持機能を持たせたものである。
【0049】
図5に示すように、前記空調装置によって車内空調を行っているときには、バッテリー22の直流電圧Vを電圧検出回路24を通じて周期的に、例えば、0.5秒毎にサンプリングする(ステップS51,S59)。
【0050】
そして、サンプリングされた電圧値をV1とし、前回のサンプリング時の電圧値をV2とした上で(ステップS52,S53)、V1−V2>Vc1であるか否かと、V2−V1>Vc2であるか否かを判定する(ステップS54,S61)。ちなみに、Vc1は電圧上昇量の判定基準値であり、Vc2は電圧下降量の判定基準値である。
【0051】
ステップS54でV1−V2>Vc1の関係を満足しているとき、即ち、直流電圧V1の上昇量が判定基準値Vc1よりも大きいときには、直流電圧V1が上昇中であることを示すフラグ1が1(オン)であるか否かをチェックし、1(オン)でない場合には通常の速度制御を行うための所定のデューティ比に対するデューティ比変化幅を決定し、決定した変化幅でデューティ比を低くする補正を行い、フラグ1に1(オン)をセットし、ステップS59に移行する(ステップS55〜S58)。
【0052】
ステップS59に移行した後は所定の周期で前記のサンプリングが同様に繰り返されるが、新たなサンプリング時の直流電圧V1の上昇量が判定基準値Vc1よりも大きく、しかも、前回のサンプリング時の直流電圧V1の上昇量も判定基準値Vc1よりも大きい場合、換言すれば、判定基準値Vc1を超える電圧上昇が2回以上連続して生じた場合には、直流電圧V1が上昇中であることを示すフラグ1が既に1(オン)であることからステップS55からステップS60に移行し、最初の電圧上昇時に補正されたデューティ比を保持したままステップS59に移行する。
【0053】
一方、ステップS61でV2−V1>Vc2の関係を満足しているとき、即ち、直流電圧V1の下降量が判定基準値Vc2よりも大きいときには、直流電圧V1が下降中であることを示すフラグ2が1(オン)であるか否かをチェックし、1(オン)でない場合には通常の速度制御を行うための所定のデューティ比に対するデューティ比変化幅を決定し、決定した変化幅でデューティ比を高くする補正を行い、フラグ2に1(オン)をセットし、ステップS59に移行する(ステップS62〜S65)。
【0054】
ステップS59に移行した後は所定の周期で前記のサンプリングが同様に繰り返されるが、新たなサンプリング時の直流電圧V1の下降量が判定基準値Vc2よりも大きく、しかも、前回のサンプリング時の直流電圧V1の下降量も判定基準値Vc2よりも大きい場合、即ち、判定基準値Vc2を超える電圧下降が2回以上連続して生じた場合には、直流電圧V1が下降中であることを示すフラグ2が既に1(オン)であることからステップS62からステップS60に移行し、最初の電圧下降時に補正されたデューティ比を保持したままステップS59に移行する。
【0055】
他方、ステップS54でV1−V2>Vc1の関係を満足しておらず、且つ、ステップS61でV2−V1>Vc2の関係を満足していないときには、直流電圧V1が上昇中であることを示すフラグ1と直流電圧V1が下降中であることを示すフラグ2の両方に0(オフ)をセットし、通常の速度制御を行うための所定のデューティ比に対して特段補正を行うことなく、ステップS59に移行する(ステップS66,S67)。
【0056】
尚、前記ステップS56と前記ステップS63におけるデューティ比変化幅の決定方法は図4のステップS35とステップS39にて説明したデューティ比変化幅の決定方法と同じであるのでここでの説明を省略する。
【0057】
このように前述の駆動制御方法によれば、判定基準値Vc1,Vc2を超える電圧上昇或いは電圧下降が2回以上連続して生じたときには2回目以降の上昇または下降に対するデューティ比補正を行わずに1回目に補正したデューティ比を保持するようにしているので、直流電圧V1が継続して上がり続ける場合や下がり続ける場合に電圧検出の度にデューティ比が補正されてしまうことを防止して、デューティ比が必要以上に低くなってしまったり高くなってしまうことを制限することができ、大きな回転速度変動やトルク不足等といった不具合を解消することができる。他の作用効果は図4に示した駆動制御方法の作用効果と同じである。
【0058】
第2実施形態]
図6及び図7は本発明の第2実施形態を示すもので、図6は駆動制御装置の構成図、図7は駆動制御のフローチャートである。
【0059】
図6における符号71は車両に搭載された空調装置の電動圧縮機で、3相巻線型のブラシレスモータ(ブラシレスDCモータ)71aを内蔵している。符号72は車両に搭載されたバッテリーで、ブラシレスモータ71a以外の電気機器の直流電源としても使用されている。符号73はインバータ回路で、6個の半導体スイッチング素子73a1〜73a6を備えるスイッチング回路73aと、スイッチング回路73aにスイッチング素子駆動信号を送出するスイッチング素子駆動回路73bとを備えている。符号74は電圧検出回路で、バッテリー72の直流電圧を検出する。
【0060】
符号75はマイクロコンピュータ構成の制御回路で、前記空調装置によって車内空調を行うときにブラシレスモータ71aに対して通常の速度制御(空調負荷に応じた速度制御)を行うための適切なデューティ比を演算するプログラムをROMに記憶している。この制御回路は、前記プログラムにより演算された所定のデューティ比をそのまま、または、バッテリー72の電圧変動に応じて補正した上でスイッチング素子駆動回路73bに送出する。
【0061】
バッテリー72からの直流電圧は前記のデューティ比に基づきインバータ回路73によってパルス列状の疑似交流電圧に変換されてからブラシレスモータ71aに供給され、ブラシレスモータ71aの回転速度はPWM(パルス幅変調)により制御される。
【0062】
図7に示すように、前記空調装置によって車内空調を行っているときには、バッテリー72の直流電圧Vを電圧検出回路74を通じて周期的に、例えば、0.5秒毎にサンプリングする(ステップS81,S88)。
【0063】
そして、サンプリングされた電圧値をV1とし、前回のサンプリング時の電圧値をV2とした上で(ステップS82,S83)、V1−V2>Vc1であるか否かと、V2−V1>Vc2であるか否かを判定する(ステップS84,S90)。ちなみに、Vc1は電圧上昇量の判定基準値であり、Vc2は電圧下降量の判定基準値である。
【0064】
ステップS84でV1−V2>Vc1の関係を満足しているとき、即ち、直流電圧V1の上昇量が判定基準値Vc1よりも大きいときには、直流電圧V1が上昇中であることを示すフラグ1が1(オン)であるか否かをチェックし、1(オン)でない場合には通常の速度制御を行うための所定のデューティ比に対してデューティ比を低くする補正を行い、フラグ1に1(オン)をセットし、ステップS88に移行する(ステップS85〜S87)。
【0065】
ステップS88に移行した後は所定の周期で前記のサンプリングが同様に繰り返されるが、新たなサンプリング時の直流電圧V1の上昇量が判定基準値Vc1よりも大きく、しかも、前回のサンプリング時の直流電圧V1の上昇量も判定基準値Vc1よりも大きい場合、換言すれば、判定基準値Vc1を超える電圧上昇が2回以上連続して生じた場合には、直流電圧V1が上昇中であることを示すフラグ1が既に1(オン)であることからステップS85からステップS89に移行し、最初の電圧上昇時に補正されたデューティ比を保持したままステップS88に移行する。
【0066】
一方、ステップS90でV2−V1>Vc2の関係を満足しているとき、即ち、直流電圧V1の下降量が判定基準値Vc2よりも大きいときには、直流電圧V1が下降中であることを示すフラグ2が1(オン)であるか否かをチェックし、1(オン)でない場合には通常の速度制御を行うための所定のデューティ比に対してデューティ比を高くする補正を行い、フラグ2に1(オン)をセットし、ステップS88に移行する(ステップS91〜S93)。
【0067】
ステップS88に移行した後は所定の周期で前記のサンプリングが同様に繰り返されるが、新たなサンプリング時の直流電圧V1の下降量が判定基準値Vc2よりも大きく、しかも、前回のサンプリング時の直流電圧V1の下降量も判定基準値Vc2よりも大きい場合、即ち、判定基準値Vc2を超える電圧下降が2回以上連続して生じた場合には、直流電圧V1が下降中であることを示すフラグ2が既に1(オン)であることからステップS91からステップS89に移行し、最初の電圧下降時に補正されたデューティ比を保持したままステップS88に移行する。
【0068】
他方、ステップS84でV1−V2>Vc1の関係を満足しておらず、且つ、ステップS90でV2−V1>Vc2の関係を満足していないときには、直流電圧V1が上昇中であることを示すフラグ1と直流電圧V1が下降中であることを示すフラグ2の両方に0(オフ)をセットし、通常の速度制御を行うための所定のデューティ比に対して特段補正を行うことなく、ステップS88に移行する(ステップS94,S95)。
【0069】
ここで前記ステップS86と前記ステップS92におけるデューティ比の補正方法について説明する。このデューティ比の補正方法には、(3-1)演算によって補正後のデューティ比を求める方法と、(3-2)データテーブルから補正後のデューティ比を選択する方法の何れかを採用することができる。
【0070】
前記(3-1)の補正方法では、デューティ比=(通常の速度制御を行うための所定のデューティ比によって規定される所定実効電圧)/(電圧検出回路74で検出された直流電圧)×βの計算式の他、デューティ比={(通常の速度制御を行うための所定のデューティ比によって規定される所定実効電圧)/(電圧検出回路74で検出された直流電圧)}+αの計算式によって補正後のデューティ比を演算するようにする。
【0071】
尚、前者の式中のβは直流電源電圧上昇時にあってはブラシレスモータ61aへの供給実効電圧が電圧上昇前の供給実効電圧よりも小さくなるように定められた1よりも小さい値で、直流電源電圧下降時にあってはブラシレスモータ61aへの供給実効電圧が電圧下降前の供給実効電圧よりも大きくなるように定められた1よりも大きな値である。
【0072】
また、後者の式中のαは調整値であって、この調整値αはΔV(電圧上昇量または電圧下降量)/Δt(サンプリング周期)で表される電圧上昇・下降率にほぼ比例した値(電圧上昇の場合にはマイナスの値で電圧下降の場合にはプラスの値)に前記βを乗じたものであり、制御回路75のROMに予め記憶しておいた調整値のデータテーブルから前記の上昇率また下降率をパラメータとして選択される。
【0073】
一方、前記(3-2)の方法では、「通常の速度制御を行うための所定のデューティ比によって規定される所定実効電圧」と「電圧検出回路74で検出された直流電圧」をパラメータとした補正デューティ比のデータテーブルを予め作成して制御回路75のROMに記憶しておき、ここから前記2つのパラメータによって規定される補正デューティ比を選択するようにする。
【0074】
何れも方法の場合も、通常の速度制御を行うための所定のデューティ比によって規定される所定実効電圧と近似の実効電圧がブラシレスモータ71aに供給されることから、車内空調を行う上で特段支障は生じ得ない。
【0075】
このように前述の駆動制御方法によれば、サンプリング結果に基づいてバッテリー72の電圧変動を監視し、直流電圧V1の上昇量或いは下降量が判定基準値Vc1,Vc2よりも大きいときにはブラシレスモータ71aへの供給実効電圧が近似的に維持されるように前記疑似交流電圧のデューティ比を補正しているので、バッテリー72の電圧変動によってブラシレスモータ71aへの供給実効電圧が大きく変化することを防止することができる。
【0076】
また、判定基準値Vc1,Vc2を超える電圧上昇或いは電圧下降が2回以上連続して生じたときには2回目以降の上昇または下降に対するデューティ比補正を行わずに1回目に補正したデューティ比を保持するようにしているので、直流電圧V1が連続して上がり続ける場合や下がり続ける場合に電圧検出の度にデューティ比が補正されてしまうことを防止して、デューティ比が必要以上に低くなってしまったり高くなってしまうことを制限することができ、大きな回転速度変動やトルク不足等といった不具合を解消することができる。
【0077】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、直流電源電圧の変動に伴うPWM制御上のデューティ比補正を適切に行ってブラシレスモータを安定な状態で動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の参考形態に示す駆動制御装置の構成図
【図2】 参考形態に係る駆動制御のフローチャート
【図3】 本発明の第1実施形態に示す駆動制御装置の構成図
【図4】 第1実施形態に係る駆動制御のフローチャート
【図5】 図4に示したフローチャートの変形例を示す駆動制御のフローチャート
【図6】 本発明の第2実施形態に示す駆動制御装置の構成図
【図7】 第2実施形態に係る駆動制御のフローチャート
【符号の説明】
21…電動圧縮機、21a…ブラシレスモータ、22…バッテリー、23…インバータ回路、24…電圧検出回路、25…電流検出回路、26…モータ回転数検出回路、27…制御回路、71…電動圧縮機、71a…ブラシレスモータ、72…バッテリー、73…インバータ回路、74…電圧検出回路、75…制御回路。

Claims (4)

  1. 直流電源電圧をパルス列状の疑似交流電圧に変換してブラシレスモータに供給しブラシレスモータの回転速度をPWMにより制御する駆動制御装置であって、
    直流電源の電圧を検出する電圧検出手段と、
    直流電源の電圧を周期的にサンプリングする電圧サンプリング手段と、
    サンプリング結果に基づいて直流電源電圧の変動を監視し、直流電源電圧の上昇量或いは下降量が判定基準値よりも大きいときにはブラシレスモータへの供給実効電圧が実質的に維持されるように前記疑似交流電圧のデューティ比を補正するデューティ比補正手段と
    判定基準値を超える電圧上昇或いは電圧下降が2回以上連続して生じたときには2回目以降の上昇または下降に対するデューティ比補正を行わずに1回目に補正したデューティ比を保持するデューティ比保持手段とを備える、
    ことを特徴とするブラシレスモータの駆動制御装置。
  2. 直流電源電圧をパルス列状の疑似交流電圧に変換してブラシレスモータに供給しブラシレスモータの回転速度をPWMにより制御する駆動制御装置であって、
    直流電源の電圧を検出する電圧検出手段と、
    直流電源の電圧を周期的にサンプリングする電圧サンプリング手段と、
    サンプリング結果に基づいて直流電源電圧の変動を監視し、直流電源電圧の上昇量或いは下降量が判定基準値よりも大きいときにはそのときのブラシレスモータの負荷トルクを求めてこの負荷トルクに応じて前記疑似交流電圧のデューティ比を補正するデューティ比補正手段と
    判定基準値を超える電圧上昇或いは電圧下降が2回以上連続して生じたときには2回目以降の上昇または下降に対するデューティ比補正を行わずに1回目に補正したデューティ比を保持するデューティ比保持手段とを備える、
    ことを特徴とするブラシレスモータの駆動制御装置。
  3. 直流電源の電流を検出する電流検出手段と、ブラシレスモータの回転数を検出するモータ回転数検出手段とを備え、
    デューティ比補正手段は、直流電源電圧と直流電源電流とモータ回転数とからブラシレスモータの負荷トルクを演算する、
    ことを特徴とする請求項2に記載のブラシレスモータの駆動制御装置。
  4. 直流電源の電流を検出する電流検出手段と、ブラシレスモータの回転数を検出するモータ回転数検出手段とを備え、
    デューティ比補正手段は、予め用意された負荷トルクのデータテーブルから直流電源電圧と直流電源電流とモータ回転数をパラメータとしてブラシレスモータの負荷トルクを選択する、
    ことを特徴とする請求項2に記載のブラシレスモータの駆動制御装置。
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