JP3985316B2 - エンジン冷却水との接触下で使用される部品用ポリアミド樹脂組成物および部品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は機械的特性、耐熱性、成形性、耐薬品性にすぐれ、とりわけ自動車エンジン冷却水に用いられる不凍液との高温での接触条件下に置かれた際のポリマー材料劣化が少なく、強度および寸法安定性にもすぐれたポリアミド樹脂組成物に関する。
【0002】
更に詳しくは、特定の構造の半芳香族ポリアミド単位と特定の範囲のアミド基濃度の高級ポリアミド単位を含有して高い耐水性を有し、ラジエタータンク部品、ウォーターポンプ部品など自動車エンジンルーム内で冷却水との接触下で使用される部品用途に好適に使用されるポリアミド樹脂組成物に関する。
【0003】
【従来の技術】
ナイロン6、ナイロン66に代表されるポリアミド樹脂は、エンジニアリングプラスチックとしてすぐれた特性を有し、自動車、電気・電子など各種の工業分野において広く使用されている。
【0004】
近年、自動車部品、特にエンジンルーム内で使用される樹脂製部品においては、エンジン性能の高性能化、高出力化に伴い、エンジン冷却水の温度上昇、更にはエンジンルーム内の温度上昇などの過酷な使用環境下でも高い強度、寸法安定性などの機能を維持することのできる素材に対する要請が益々高まっている。かかる高度化した要求に対しては、汎用的に使用されるナイロン6、ナイロン66樹脂では特に吸水により、剛性が低下して寸法が変化したり、長時間に亘る高温の冷却水との接触によってポリマー材料の劣化が促進される場合が生ずるなどの問題があった。
【0005】
最近、このような過酷な使用環境下でも使用可能なポリアミド樹脂として、特開昭59−155426号公報、特開昭62−156130号公報、特開平3−7761号公報にはテレフタル酸および/またはイソフタル酸を含有した高融点コポリアミド樹脂が開示されている。これらのポリアミド樹脂は融点が高いと同時に芳香族ジカルボン酸単位の導入により吸水性も抑制され、不凍液との接触下でもすぐれた機械的性質と寸法安定性を発揮し得るが、一方その高融点故に溶融成形法によって成形品を製造する際にポリマーのゲル化や炭化に起因すると思われる異物が混入しやすい、あるいは一部分解による揮発性ガス発生によると思われるガス焼けや金型汚染が起こりやすいなど、成形加工性が著しく損なわれ、このままでは実用的な成形品を生産性良く製造するためには安定性不十分であるという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前述のごとく従来の技術では、高温の自動車エンジン冷却水との長期に亘る接触下においても材料特性低下が少ない高い耐薬品性を有し、かつ、耐熱性、強靭性、成形性がバランスしてすぐれるポリアミド樹脂系材料を得ることは困難であった。
【0007】
そこで本発明は高温の自動車エンジン冷却水との長期に亘る接触下においても材料特性低下が少ない高い耐薬品性を有し、機械的特性、耐熱性、成形性、寸法安定性、溶融滞留時安定性にすぐれ、特にラジエタータンク部品、ウォーターポンプ部品など自動車エンジンルーム内で冷却水との接触下で使用される部品用途に好適に使用されるポリアミド樹脂組成物を得ることを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、
1.「(A)(a)ヘキサメチレンテレフタルアミド単位75〜50モル%、および(b)ヘキサメチレンセバカミド単位またはヘキサメチレンドデカミド単位25〜50モル%からなり、更にその特性が以下の範囲内にあるポリアミド樹脂100重量部および(B)無機充填材20〜150重量部からなることを特徴とするエンジン冷却水との接触下で使用される部品用ポリアミド樹脂組成物。
(イ)融点:300℃以上325℃未満
(ロ)粘弾性測定から求められる飽和吸水時のガラス転移点が40℃以上、且つ複数観察される損失弾性係数のピーク値の内、少なくとも一つのピークの位置が80℃以上」、
2.「(A)(a)ヘキサメチレンテレフタルアミド単位75〜50モル%、(b)ヘキサメチレンセバカミド単位またはヘキサメチレンドデカミド単位45〜20モル%および(c)ドデカンアミド単位5〜15モル%からなり、更にその特性が以下の範囲内にあるポリアミド樹脂100重量部および(B)無機充填材20〜150重量部からなることを特徴とするエンジン冷却水との接触下で使用される部品用ポリアミド樹脂組成物。
(イ)融点:300℃以上325℃未満
(ロ)粘弾性測定から求められる飽和吸水時のガラス転移点が40℃以上、且つ複数観察される損失弾性係数のピーク値の内、少なくとも一つのピークの位置が80℃以上」、
【0009】
3.「ポリアミド樹脂(A)が更に次の要件を具備しているものである上記1または2のいずれかに記載のエンジン冷却水との接触下で使用される部品用ポリアミド樹脂組成物。
(ハ)自動車不凍液との接触下、130℃/300時間の処理を行った際のポリマー相対粘度の保持率が85%以上」、
4.「(b)成分がヘキサメチレンセバカミドである上記1〜3のいずれかに記載のエンジン冷却水との接触下で使用される部品用ポリアミド樹脂組成物。」、
【0010】
5.「(B)無機充填材がガラス繊維である上記1〜4のいずれかに記載のエンジン冷却水との接触下で使用される部品用ポリアミド樹脂組成物。」、
6.「(B)ガラス繊維の添加量が、(A)成分のポリアミド樹脂100重量部に対して40〜100重量部の範囲である上記1〜5のいずれかに記載のエンジン冷却水との接触下で使用される部品用ポリアミド樹脂組成物。」、
7.「エンジンが自動車エンジンである上記1〜6いずれかのエンジン冷却水との接触下で使用される部品用ポリアミド樹脂組成物。」、
8.「上記1〜7いずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を溶融成形することによって得られるエンジン冷却水との接触下で使用される部品。」を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明では、ポリアミド樹脂(A)として、(a)ヘキサメチレンテレフタルアミド単位75〜50モル%、および(b)ヘキサメチレンセバカミド単位またはヘキサメチレンドデカミド単位25〜50モル%からなるもの、または、(a)ヘキサメチレンテレフタルアミド単位75〜50モル%、(b)ヘキサメチレンセバカミド単位またはヘキサメチレンドデカミド単位45〜20モル%および(c)ドデカンアミド単位5〜15モル%からなるものが使用される。
【0012】
ポリアミド樹脂(A)を構成する(a)ヘキサメチレンテレフタルアミド単位とはヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸ないしはそのエステル、酸ハロゲン化物などの誘導体から合成される単位である。
【0013】
(b)成分のヘキサメチレンセバカミド単位またはヘキサメチレンドデカミド単位を与える原料の具体例としては、ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート、ヘキサメチレンジアンモニウムドデカノエートを挙げることができる。(c)成分は12−アミノドデカン酸から誘導される単位である。
【0014】
ポリアミド構成成分が(a)および(b)成分からなる2成分系の場合には(a)および(b)成分を各々75〜50モル%および50〜25モル%の割合、好ましくは各々70〜55モル%および45〜30モル%の割合で、また(a)、(b)および(c)成分からなる3成分系の場合には(a)、(b)および(c)成分を各々75〜50、45〜20および5〜15モル%の割合、好ましくは各々70〜55、40〜30、5〜10モル%の割合で含有する共重合体であることが本発明では必要である。
【0015】
なぜならば上記の特定の共重合成分を極めて限定された共重合比率の範囲で重合して得られ、かつ特定の融点、吸水時粘弾性挙動を有する共重合ポリアミドが、耐薬品性(特に耐不凍液性)を有し、自動車エンジン冷却水との接触下で使用される部品として使用する際に、長期間の不凍液との高温での接触下においてもポリマー劣化が少なく、且つ強度、耐熱性、成形性がバランスしてすぐれるなどの好ましい性能を発揮し得るからである。
【0016】
(a)成分の共重合量が上記範囲よりも多いと生成するポリアミド樹脂の融点が高くなり、成形加工時の溶融時劣化が顕在化するなど成形加工性が損なわれるので好ましくなく、逆に上記範囲よりも少ないと機械強度が低下するので好ましくない。(b)成分の共重合量が上記範囲よりも多いと、融点が低下し、必要な耐熱性を維持できなくなるので好ましくなく、逆に上記範囲よりも少ないと吸水性が増加し、不凍液との長期接触下での強度低下が起こるので好ましくない。3成分系の場合に(c)成分の共重合量が上記範囲よりも多いと、この場合も融点が低下し、必要な耐熱性を維持できなくなるので好ましくなく、逆に上記範囲よりも少ないと生成するポリアミド樹脂の流動性が低下し、成形加工性が損なわれるので好ましくない。
【0017】
本発明のポリアミド樹脂の重合度は特に限定されるものではないが、機械的特性および成形性などの点から1%の濃硫酸溶液中25℃で測定したときの相対粘度が通常、1.5〜5.0、好ましくは1.8〜3.5、特に好ましくは2.0〜2.8の範囲にあるものが好適である。また本発明のポリアミド樹脂(A)においては(a)、(b)、(c)で定義されないアミド成分を、本発明の効果が損なわれない限り、少量、例えば5モル%以下含有させることもできる。
【0018】
また、本発明のポリアミド樹脂の製造法は特に制限されないが、通常の加圧溶融重合、たとえばヘキサメチレンジアンモニウムテレフタレート(6T塩)とヘキサメチレンジアンモニウムセバケート(610塩)および12−アミノドデカン酸の混合水溶液を20〜60kg/cm2 の水蒸気圧下で加熱反応せしめ、次いで系内の水を放出させながら溶融重合を行う常套的な溶融重合法、あるいは原料水溶液を200〜350℃で加熱して一旦プレポリマを作り、これをさらに融点以下の温度で固相重合する方法あるいは溶融押出機で高重合度化する方法などが挙げられる。
【0019】
また、本発明のポリアミド樹脂にはその特性を損なわない限りにおいて添加剤、例えば粘度調節剤、顔料、着色防止剤、耐熱剤などが添加されていてもさしつかえない。
【0020】
さらに、本発明のポリアミド樹脂組成物の(B)成分として用いられる無機充填材としては繊維状/非繊維状無機強化材を挙げることができ、それら強化剤の具体例としては、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填剤、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素およびシリカなどの非繊維状充填剤が挙げられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填剤を2種類以上併用することも可能である。これら充填材のなかでも本発明においてとりわけ好ましく用いられるのはガラス繊維である。ガラス繊維は平均繊維径5〜15μmのガラス繊維であり、その繊維長には特に制限はない。通常は押し出し混練作業性の高いストランド長3mmのガラス繊維が使用できるが、ストランド長1mm以上のガラス繊維と繊維長20〜500μmのガラス繊維を混合物として原料に使用することもできる。また、ストランド長の異なるガラス繊維を2種以上併用する際には、用いるガラス繊維の平均径が2μm以上異なる種類のものを使用することも好ましい方法である。
【0021】
本発明の樹脂組成物中の充填材含有量はナイロン樹脂100重量部に対して40〜100重量部の範囲であり、45〜80重量部の範囲が更に好ましい。また、これら充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得る意味において好ましい。
【0022】
また本発明のナイロン樹脂組成物にエポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基の中から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するアルコキシシランの添加は、機械的強度、靱性などの向上に有効である。かかる化合物の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物、γ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランなどの水酸基含有アルコキシシラン化合物などなどが挙げられる。
【0023】
さらに、本発明のナイロン樹脂組成物には、タルク、カオリン、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、次亜リン酸塩などの着色防止剤、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミンなどの酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、などの添加剤を添加することができる。
【0024】
本発明のナイロン樹脂組成物の調製方法は特定の方法に限定されないが、具体的且つ効率的な例として原料のナイロン樹脂、ガラス繊維などの充填材の混合物を単軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーおよびミキシングロールなど公知の溶融混練機に供給して、用いるナイロン樹脂の融点に応じて250〜330℃の温度で溶融混練する方法などを挙げることができる。
【0025】
本発明で得られるポリアミド樹脂組成物は機械的特性、耐熱性、成形性、寸法安定性、耐薬品性にすぐれ、自動車エンジン冷却水系部品、特にラジエタータンクのトップおよびベースなどのラジエタータンク部品、冷却液リザーブタンク、ウォーターパイプ、ウォーターポンプハウジング、ウォーターポンプインペラ、バルブなどのウォーターポンプ部品など自動車エンジンルーム内で冷却水との接触下で使用される部品用途に好適に使用され、該組成物を溶融成形して得られる成形品は実用価値の高いものである。
【0026】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明の効果をさらに説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0027】
なお、実施例および比較例中に記載されている諸特性は以下の方法で測定した。
・融点: コー電子工業(株)製RDC220型示差作動熱量計を用いて、一旦40℃/分の昇温速度で昇温し、吸熱ピーク温度プラス20℃で5分間保持し、次いで20℃/分の速度で100℃まで降温せしめた後20℃/分の昇温速度で測定した際のピーク値を融点とした。
【0028】
・粘弾性挙動: ポリアミド樹脂サンプルを溶融プレス成形して厚さ約0.2mmのシートを作成し、これから2X50mmの短冊状試験片を切り出し、東洋ボールドウィン社製レオーバイブロンDDV−II−EAを用いて周波数110Hz、昇温速度2℃/分の条件で測定した。α−分散に対応する損失弾性係数のピーク温度をガラス転移点とした。また、吸水時に特異的に分裂して観測される損失弾性係数の最も高温側のピーク温度を吸水時高温側ピークとして表示した。
【0029】
・引張強度: ASTMD638に従い、初期および自動車不凍液と水の1:1混合物中、130℃/1000時間処理した後の引張強度を測定した。
・曲げ弾性率: ASTMD790
・ポリマーの耐不凍液性: 上記引張試験片の初期および自動車不凍液と水の1:1混合物中、130℃/300時間処理した後の硫酸相対粘度を測定し、その保持率をポリマーの耐不凍液性の指標とした。
【0030】
参考例1
ヘキサメチレンテレフタルアミド単位65モル%、ヘキサメチレンセバカミド単位30モル%、およびドデカンアミド単位5モル%となるよう調製したヘキサメチレンジアンモニウムテレフタレート(6T塩)、ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート(610塩)およびωラウロラクタムの混合水溶液(固形原料濃度60重量%)を加圧重合缶に仕込み、攪拌下に昇温し、水蒸気圧35kg/cm2で3.5時間反応させた後反応混合物を重合缶下部吐出口から吐出、回収した。ここで得られたポリアミドプレポリマの硫酸溶液相対粘度(1%濃度)は1.45であった。このものを真空下220℃/10時間固相重合することにより、相対粘度2.4のポリアミドとしてその特性を評価したところ、その特性は表1に示す通りであった。このポリアミド樹脂を後述の実施例に供した。
【0031】
比較参考例1
原料のヘキサメチレンセバケートを同量のヘキサメチレンアジペートに変えた以外は実施例1と全く同様に重合を行った。ここで得られたポリアミドの特性は表1に示す通りであり、このものを後述の比較例に供した。
【0032】
比較参考例2
生成するポリアミドの組成がヘキサメチレンテレフタルアミド単位25モル%、ヘキサメチレンセバカミド単位50モル%、およびカプロアミド単位25モル%となるよう原料混合比を変えた以外は実施例1と全く同様に重合を行った。ここで得られたポリアミドの特性は表1に示す通りであり、このものを後述の比較例に供した。
【0033】
参考例2〜3
生成するポリアミド樹脂が表1に示す組成となるように原料の混合比を変えた以外は参考例1と全く同様の手順で重合を行った。得られたポリアミドの特性は表1に示す通りであり、このものを後述の実施例に供した。
【0034】
実施例1〜5、比較例1〜2
先に記述の参考例で得られたポリアミド樹脂とガラス繊維を表1に示す配合比でドライブレンドした後、40mmφ単軸押し出し機のホッパーに供給し、シリンダー温度305〜330℃、スクリュー回転数100rpmの条件で溶融混練を行い、ガラス繊維強化組成物を得た。この組成物を射出成形して種々の試験片を得て所定の特性評価を行った。結果をまとめて表1に示す。本発明の組成物はいずれも高い耐不凍液性を始め、すぐれた特性を有する組成物であった。
【0035】
【表1】
【0036】
【発明の効果】
本発明で得られるポリアミド樹脂組成物は機械的特性、耐熱性、成形性、寸法安定性、耐薬品性にすぐれ、自動車エンジン冷却水系部品、特にラジエタータンクのトップおよびベースなどのラジエタータンク部品、冷却液リザーブタンク、ウォーターパイプ、ウォーターポンプハウジング、ウォーターポンプインペラ、バルブなどのウォーターポンプ部品など自動車エンジンルーム内で冷却水との接触下で使用される部品用途に好適に使用され、該組成物を溶融成形して得られる成形品は実用価値の高いものである。
Claims (8)
- (A)(a)ヘキサメチレンテレフタルアミド単位75〜50モル%、および(b)ヘキサメチレンセバカミド単位またはヘキサメチレンドデカミド単位25〜50モル%からなり、更にその特性が以下の範囲内にあるポリアミド樹脂100重量部および(B)無機充填材20〜150重量部からなることを特徴とするエンジン冷却水との接触下で使用される部品用ポリアミド樹脂組成物。
(イ)融点:300℃以上325℃未満
(ロ)粘弾性測定から求められる飽和吸水時のガラス転移点が40℃以上、且つ複数観察される損失弾性係数のピーク値の内、少なくとも一つのピークの位置が80℃以上 - (A)(a)ヘキサメチレンテレフタルアミド単位75〜50モル%、(b)ヘキサメチレンセバカミド単位またはヘキサメチレンドデカミド単位45〜20モル%および(c)ドデカンアミド単位5〜15モル%からなり、更にその特性が以下の範囲内にあるポリアミド樹脂100重量部および(B)無機充填材20〜150重量部からなることを特徴とするエンジン冷却水との接触下で使用される部品用ポリアミド樹脂組成物。
(イ)融点:300℃以上325℃未満
(ロ)粘弾性測定から求められる飽和吸水時のガラス転移点が40℃以上、且つ複数観察される損失弾性係数のピーク値の内、少なくとも一つのピークの位置が80℃以上 - ポリアミド樹脂(A)が更に次の要件を具備しているものである請求項1または2に記載のエンジン冷却水との接触下で使用される部品用ポリアミド樹脂組成物。
(ハ)自動車不凍液と水の1:1混合物との接触下、130℃/300時間の処理を行った際のポリマー相対粘度の保持率が85%以上 - (b)成分がヘキサメチレンセバカミドである請求項1〜3のいずれかに記載のエンジン冷却水との接触下で使用される部品用ポリアミド樹脂組成物。
- (B)無機充填材がガラス繊維である請求項1〜4のいずれかに記載のエンジン冷却水との接触下で使用される部品用ポリアミド樹脂組成物。
- (B)ガラス繊維の添加量が、(A)成分のポリアミド樹脂100重量部に対して40〜100重量部の範囲である請求項1〜5のいずれかに記載のエンジン冷却水との接触下で使用される部品用ポリアミド樹脂組成物。
- エンジンが自動車エンジンである請求項1〜6いずれかの冷却水との接触下で使用される部品用ポリアミド樹脂組成物。
- 請求項1〜7いずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を溶融成形することによって得られるエンジン冷却水との接触下で使用される部品。
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