JP3984712B2 - 導電ペースト用ニッケル粉末 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電ペースト用ニッケル粉末に係り、特に、積層セラミックコンデンサの内部電極に用いられる焼結特性および耐酸化性に優れた導電ペースト用ニッケル粉末に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、銀、パラジウム、白金、金等の貴金属粉末、あるいはニッケル、コバルト、鉄、モリブデン、タングステン等の卑金属粉末は、電子材料用として導電ペースト、特に積層セラミックコンデンサの内部電極用として用いられている。一般に積層セラミックコンデンサは、誘電体セラミック層と、内部電極として使用される金属層とが交互に重ねられ、誘電体セラミック層の両端に、内部電極の金属層に接続される外部電極が接続された構成となっている。ここで、誘電体を構成する材料としては、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、酸化イットリウム等の誘電率の高い材料を主成分とするものが用いられている。一方、内部電極を構成する金属としては、前述した貴金属粉末あるいは卑金属粉末が用いられるが、最近はより安価な電子材料が要求されているため、後者の卑金属粉末を利用した積層セラミックコンデンサの開発が盛んに行われており、特にニッケル粉末が代表的である。
【0003】
ところで、積層セラミックコンデンサは、一般に次のような方法で製造されている。すなわち、チタン酸バリウム等の誘電体粉末を有機バインダーと混合し懸濁させ、これをドクターブレード法によりシート状に成形して誘電体グリーンシートを作成する。一方、内部電極用の金属粉末を有機溶剤、可塑剤、有機バインダー等の有機化合物と混合して金属粉末ペーストを形成し、これを前記グリーンシート上にスクリーン印刷法で印刷する。次いで、乾燥、積層および圧着し、加熱処理にて有機成分を除去してから、1300℃前後またはそれ以上の温度で焼成し、この後、誘電体セラミック層の両端に外部電極を焼き付けて積層セラミックコンデンサを得る。
【0004】
上記のような積層セラミックコンデンサの製造方法にあっては、誘電体グリーンシートに金属ペーストを印刷し、積層及び圧着した後、加熱処理にて有機成分を蒸発除去するが、この加熱処理は通常大気中で250〜400℃で行われる。このように酸化雰囲気中で加熱処理を行うため、金属粉末は酸化し、それにより体積の膨張が起きる。さらにこの有機成分除去のための加熱処理の後、さらに高温に加熱し焼結するが、この焼結は水素ガス雰囲気等の還元性雰囲気で行う。これにより、一旦酸化した金属粉末は還元されるため、体積の収縮が起きる。
【0005】
このように、積層セラミックコンデンサを製造する工程において、酸化還元反応により金属粉末に膨張・収縮による体積変化が生じる。一方、誘電体自身も焼結により体積変化が生じるが、誘電体と金属粉末という異なった物質を同時に焼結するため、焼結過程でのそれぞれの物質の膨張・収縮の体積変化などの焼結挙動が異なる。このため、金属ペースト層に歪みが生じ、結果としてクラックまたは剥離などのデラミネーションといわれる層状構造の破壊が起きるという問題があった。
【0006】
具体的には、例えばチタン酸バリウムを主成分とする誘電体は1000℃以上、通常1200〜1300℃で焼結が始まるが、内部電極に用いられる金属粉末の焼結はそれよりも低い温度、例えば金属ニッケル粉末の場合であれば通常400〜500℃で焼結が始まるので、急激な収縮による体積変化が起こって内部電極と誘電体シート間に歪みが生じる。このような焼結開始温度の違いが内部電極と誘電体の焼結挙動の違いとなってデラミネーションを招く一つの大きな原因となっている。また、このように低温で急激に焼結が始まると、最終的な焼結時点での体積変化率も大きくなり、その結果デラミネーションが生じやすい。したがって、内部電極に用いる金属粉末は、その焼結開始温度ができるだけ高く、かつ急激な焼結が起こらないことが望ましい。
【0007】
上記のようなデラミネーションの問題を解決する手段として種々の方法が提案されているが、例えば、特開平6−20867号公報においては、パラジウム、銀パラジウム、銅およびニッケルのうちいずれか1つからなる扁平状の金属粒子と、有機バインダーと溶媒を含有した積層セラミックコンデンサ用導電性ペーストが開示されている。また、特開平8−246001号公報においては、平均粒径が0.1〜1.0μmで、タップ密度が平均粒径と関連した経験式で表される条件を満足するような積層セラミックコンデンサ用ニッケル超微粉が開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来方法は、焼結挙動を改善する目的としてはそれなりの効果を上げているが、必ずしも本質的にデラミネーションを防止する方法としては十分ではなかった。前述したように、近年安価な電子材料が求められており、卑金属を内部電極とした積層セラミックコンデンサが開発されているが、このようなニッケルを代表とする卑金属を内部電極とした際に、デラミネーションを防止することができる導電ペーストに適したニッケル粉末の更なる開発が望まれていた。
【0009】
したがって、本発明は、積層セラミックコンデンサの製造工程において、優れた焼結挙動を示し、結果としてデラミネーションを防止することができる導電ペースト用に適したニッケル粉末を提供することを目的としている。より具体的には、加熱処理した際に、酸化還元反応による体積変化あるいは重量変化が少なく、さらに焼結開始温度が従来のニッケル粉末に比べてより高く、積層セラミックコンデンサを製造する際に用いる誘電体の焼結開始温度により近く、その結果、デラミネーションを防止することができる導電ペースト用ニッケル粉末を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前述のとおり、積層セラミックコンデンサを製造する工程において、酸化還元反応によりニッケル粉末に膨張・収縮による体積変化が生じ、これにより、デラミネーションが生じる。したがって、ニッケル粉末の表面に緻密で厚い酸化被膜が形成されていれば、ニッケル粉末表面から内部への酸化の進行が抑制される。そこで、本発明者等は、デラミネーションの発生を防止することができるような酸化被膜をいかに定量的に解析するかにつき検討を重ねた結果、X線光電子分光分析法によってニッケル粉末表面の金属ニッケル含有率を測定することが最も有効であることを見出した。
【0011】
X線光電子分光分析法(以下「XPS」と略記することがある。)は、励起X線の波長により内殻電子準位から起こる光電子放出を利用し、この光電子スペクトルを測定するものである。主に固体の試料の分析に利用され、光電子が脱出可能な深度、すなわち、非弾性散乱を受けずに電子が固体から飛び出すことができる固体の極く薄い表面層に含まれる元素の同定、および定量分析に広く応用されている。
【0012】
通常、酸化被膜を有する金属ニッケル粉末をXPSを用いて分析すると、含有するニッケル成分として、金属ニッケル、酸化ニッケルおよび水酸化ニッケルに起因するニッケル原子がそれぞれ同定することができ、標準試料と比較を行えば定量可能である。ここで、金属ニッケル粉末の表面は酸化被膜に覆われているので、XPSにより同定および定量されるニッケル成分のうち金属ニッケルは、この酸化被膜直下の金属ニッケルに起因するものである。すなわち、酸化被膜が薄ければこの金属ニッケルの比率が多くなり、また酸化被膜が厚ければ金属ニッケルの比率は少なくなる。さらに、同じ厚さの酸化被膜をもつ金属ニッケル粉末であっても、酸化被膜の緻密度と金属ニッケルの比率との間に相関関係が存在し、緻密度が低ければ金属ニッケルの比率は多くなり、緻密度が高ければ金属ニッケルの比率は小さくなる。
【0013】
本発明者等は、ニッケル粉末についてXPSによる分析を行った結果、金属ニッケル含有率が所定の範囲の場合に、積層セラミックコンデンサの製造過程でデラミネーションが生じないことを見出した。本発明の導電ペースト用ニッケル粉末は、このような定量分析に基づいてなされたもので、表面が酸化被膜によって覆われ、前記酸化被膜を透過するX線で酸化被膜直下の金属ニッケルを同定するX線光電子分光分析法により測定した金属ニッケル含有率が0〜10アトミック%であって、前記酸化皮膜の厚さが2.5〜5nmであることを特徴としている。なお、金属ニッケル含有率が0%とは、X線が酸化被膜にって阻止されて金属ニッケルまで達しないことを示し、この場合にはニッケル粉末の酸化が最も抑制される。
【0014】
本発明の導電ペースト用ニッケル粉末は、表面部の金属ニッケルが0〜10アトミック%と比較的少ない含有率である。換言すると、本発明のニッケル粉末の表面に形成された酸化被膜は、ある程度の厚さを有し、かつ緻密な酸化被膜であることがいえる。このようにある程度強固な酸化被膜を形成していることによって、加熱処理した際に、特に、積層セラミックコンデンサの製造工程で有機成分除去のための300〜400℃の温度域で加熱された際に、ニッケルの酸化還元による体積および重量の変化を少なく抑えることが可能となる。
【0015】
さらに、本発明のニッケル粉末では、表面に強固な酸化被膜を有しているので、焼結開始温度が従来のニッケル粉末に比べてより高く、積層セラミックコンデンサを製造する際に用いる誘電体の焼結開始温度により近い。したがって、本発明のニッケル粉末では、加熱時の酸化挙動また焼結挙動が従来のニッケル粉末に比べ優れているので、デラミネーションを有効に防止することができる。
【0016】
なお、本発明の導電ペースト用ニッケル粉末では、金属ニッケル含有率が0〜10アトミック%であれば本発明の目的を達成することができるが、好ましくは0〜8アトミック%、より好ましくは0〜5アトミック%が好適である。また、ニッケル粉末の表面の酸化被膜の厚さは、2nm以上が好ましく、2.5nm以上であればより好ましく、2.5〜5nmの範囲であればさらに好適である。さらに、本発明のニッケル粉末中の酸素含有率は、0.1〜2.0重量%であることが好ましく、0.5〜1.0重量%であればさらに好適である。
【0017】
本発明のニッケル粉末の粒子性状については、導電ペースト用として使用して支障のない限り特に制限はない。しかしながら、近年の電子製品の軽量小型化に伴い、その部品である積層セラミックコンデンサも小型化が要求されており、その内部電極に使用される金属粉末もより粒径の小さいものが要求される。したがって、本発明のニッケル粉末の平均粒径は、0.1〜1μmであることが好ましく、0.1〜0.5μmの範囲の微粒子であればさらに好適である。また、ニッケル粉末のBETによる比表面積は、1〜20m2/gであることが好ましい。さらに、ニッケル粉末の粒子形状は、球状であることが焼結特性また分散性を向上させるために望ましい。
【0018】
上記のようなニッケル粉末は、化学気相法あるいはプラズマ法等の公知の方法により製造することができる。特に、塩化ニッケルガスと還元性ガスとを接触させることによりニッケル粉末を生成させる気相還元法は、生成するニッケル粉末の粒子径を容易にコントロールでき、しかも球状の粒子を効率良く製造することができるので、好適に用いることができる。また、気相還元法は、塩化ニッケルガスと水素のような還元性ガスを反応させる製造方法であり、従来のように、固体の塩化ニッケルを加熱し蒸発させて塩化ニッケルガスを生成させることができる。しかしながら、塩化ニッケルの酸化防止またエネルギー効率を考慮すると、金属ニッケルに塩素ガスを接触させて塩化ニッケルガスを連続的に発生させ、この塩化ニッケルガスを還元工程に直接供給し、還元性ガスと接触させ塩化ニッケルを連続的に還元し製造する方法が有利である。
【0019】
気相還元反応によるニッケル粉末の製造過程では、塩化ニッケルガスと還元性ガスとが接触した瞬間にニッケル原子が生成し、金属ニッケル原子どうしが衝突・凝集することによって超微粒子が生成され、成長してゆく。そして、還元工程の雰囲気中の塩化ニッケルガスの分圧や温度等の条件によって、生成されるニッケル粉末の粒径が決まる。上記のようなニッケル粉末の製造方法によれば、塩素ガスの供給量に応じた量の塩化ニッケルガスが発生するから、塩素ガスの供給量を制御することで還元工程へ供給する塩化ニッケルガスの量を制御することができる。さらに、塩化ニッケルガスは、塩素ガスと金属ニッケルとの反応で発生するから、固体塩化ニッケルの加熱蒸発により塩化ニッケルガスを発生させる方法と異なり、キャリアガスの使用を少なくすることができるばかりでなく、製造条件によっては使用しないことも可能である。よって、キャリアガスの使用量低減とそれに伴う加熱エネルギーの低減により、製造コストを低減することができる。
【0020】
また、塩化工程で発生した塩化ニッケルガスに不活性ガスを混合することにより、還元工程における塩化ニッケルガスの分圧を制御することができる。このように、塩素ガスの供給量もしくは還元工程に供給する塩化ニッケルガスの分圧を制御することにより、ニッケル粉末の粒径を制御することができ、ニッケル粉末の粒径を安定させることができるとともに、粒径を任意に設定することができる。
【0021】
上記のような気相還元法によるニッケル粉末の製造条件について一概には特定できないが、出発原料である金属ニッケルの粒径は約5mm〜20mmの粒状、塊状、板状などが好ましく、またその純度は慨して99.5%以上が好ましい。金属ニッケルを先ず塩素ガスと反応させ、塩化ニッケルガスを生成させる製造方法を採用する場合には、その際の温度は反応を十分進めるために800℃以上とし、ニッケルの融点である1483℃以下とする。反応速度と塩化炉の耐久性を考慮すると、実用的には900℃〜1100℃の範囲が好ましい。次いで、この塩化ニッケルガスを還元工程に直接供給し、還元性ガスである水素ガスと接触反応させる。その際に、窒素やアルゴンなどの不活性ガスを、塩化ニッケルガスに対し1モル%〜30モル%混合し、この混合ガスを還元工程に導入してもよい。還元反応の温度は反応完結に充分な温度以上であれば良いが、固体状のニッケル粉末を生成する方が取扱いが容易であるので、ニッケルの融点以下が好ましく、経済性を考慮すると900℃〜1100℃が実用的である。このように水素ガスのような還元性ガスと塩化ニッケルガスを接触させ、金属ニッケル粉末を生成させる際に、還元性ガスが過剰に供給されると、ニッケル粉末生成後やまた後処理工程において、さらにその過剰還元性ガスによりニッケル粉末表面の酸化被膜が還元され、結果として十分な酸化被膜が形成されない場合がある。したがって、還元工程でニッケル粉末が生成された後、未反応の過剰な還元性ガスは系内から除去することが望ましい。あるいは、還元工程において、なるべくならば反応理論量に近い量の還元性ガスを供給し、過剰の還元性ガスが後処理工程において残留しないようにすることが望ましい。
【0022】
このようにして還元反応を行ってニッケル粉末を生成し、生成ニッケル粉末を冷却する。冷却の際には、還元反応を終えた1000℃付近のガス流を、400℃〜800℃程度まで空気あるいは窒素ガスなどの不活性ガスを吹き込むことにより急速冷却させることが望ましい。これにより、生成したニッケルの一次粒子どうしの凝集による二次粒子の生成を防止し、所望の粒径のニッケル粉末を得ることができる。その後、生成したニッケル粉末を、例えばバグフィルター、水中捕集分離手段、油中捕集分離手段および磁気分離手段の1種または2種以上の組合せることにより分離、回収する。水中もしくは油中捕集を用いる場合には、捕集液にポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシプロピレングリコールまたはそれらの誘導体(モノアルキルエーテル、モノエステル)あるいは、ソルビタン、ソルビタンモノエステル等の界面活性剤、ベンゾトリアゾールまたはその誘導体に代表される金属不活性剤のフェノール系、あるいはアミン系など公知の酸化防止剤、これらの1種または2種以上を10ppm〜1000ppm程度添加すると、ニッケル粉末粒子の凝集防止や防錆に効果的である。
【0023】
上記のようにして得られたニッケル粉末に対して、さらに酸化処理を施すことも本発明のニッケル粉を得る方法として好ましい態様である。酸化処理の具体的な方法としては、例えば空気中あるいは酸素ガス雰囲気中などの酸化雰囲気下において、加熱処理を行う方法が挙げられる。このときの加熱処理の温度は特に制限はなく、X線光電子分光分析法により測定した金属ニッケル含有率が10アトミック%以下になるように適宜行われる。この酸化処理は、通常は200〜400℃で1分〜10時間保持して行う。このように、ニッケル粉末を酸化処理することにより、さらに強固な酸化被膜が形成される。
【0024】
上記のようにして得られた本発明の導電ペースト用ニッケル粉末は、その表面に、ある程度の厚みと緻密度をもった酸化被膜を有しているので、積層セラミックコンデンサの製造工程において優れた焼結挙動を示し、デラミネーションの発生を防止することができる。より具体的には、加熱処理した際、酸化還元反応による体積変化あるいは重量変化が少ないことは勿論のこと、焼結開始温度が従来のニッケル粉末に比べてより高いため、積層セラミックコンデンサを製造する際に用いる誘電体の焼結開始温度により近くなり、その結果、デラミネーションの発生を有効に防止することができる。
【0025】
【実施例】
以下、本発明にニッケル粉末を製造する実施例を図面を参照しながら説明することにより、本発明の効果をより明らかにする。
−ニッケル粉末の製造−
[実施例 1]
図1に示すニッケル粉末の製造装置の塩化炉1に、平均粒径5mmのニッケル粉末15kgを充填し、炉内雰囲気温度を1100℃にして4Nl/minの流量で塩素ガスを導入し、金属ニッケルを塩化して塩化ニッケルガスを発生させた。これに塩素ガス供給量の10%(モル比)の窒素ガスを混合し、この塩化ニッケル−窒素混合ガスを1000℃の雰囲気温度に加熱した還元炉2に、ノズル17から流速2.3m/秒(1000℃換算)で導入した。同時に還元炉2の頂部から水素ガスを流速7Nl/minで供給し、塩化ニッケルガスを還元した。そして、還元反応で生成したニッケル粉末を含む生成ガスに冷却工程で窒素ガスを24.5Nl/分で供給し、1000℃から400℃まで100℃/秒の速度で冷却した。次いで、窒素ガス−塩酸蒸気−ニッケル粉末からなる混合ガスをオイルスクラバーに導き、ニッケル粉末を分離回収した。ついで、回収したニッケル粉末をキシレンで洗浄後、乾燥してニッケル粉末を得た。
【0026】
[実施例2]
実施例1で得られたニッケル粉末を、大気中において250℃で30分間の酸化処理を行い、ニッケル粉末を得た。
【0027】
[比較例1]
水素ガスを流速10Nl/minで供給した以外は実施例1と同様にしてニッケル粉末を得た。
【0028】
−測定−
上記各実施例および比較例のニッケル粉末につき、酸化被膜の厚さ、酸素含有率、XPSによる金属ニッケル含率、平均粒径、焼結開始温度および酸化挙動を下記の方法により測定し、その結果を表1に示した。
【0029】
1)X線光電子分光分析(XPS)測定
ULVAC PHI社製XPS5600CIを用い、単色AlkαをX線源とし、出力を300Wとした。測定試料は、5mmφ×2mmのアルミ容器に試料を適量充填し、その後100kg/cm2でプレス成形し調製した。結合エネルギーは、Ni2P電子に基づくスペクトルを基準として用い、0〜1200eVの範囲で検出角度65゜にて測定した。その後、850〜857eVの間のピークについてシャーリー法によりバックグラウンドを差引き、残りのピークを積分し、その強度を金属ニッケルの強度とした。酸素原子については527〜535eVの間のピークについて同様に強度を求め、金属ニッケルと酸素原子の強度から感度係数を求めて金属ニッケル含率を求めた。
【0030】
2)焼結開始温度
ニッケル粉末1g、しょうのう3重量%およびアセトン3重量%を混合し、内径5mm、長さ10mmの円柱状の金型に充填し、その後面圧3トンの荷重をかけ試験ピースを作成した。この試験ピースを熱膨張収縮挙動(diratometry)測定装置(TD−5000S、株式会社マックサイエンス社製)を用い、窒素雰囲気下で昇温速度5℃/分の条件で測定を行った。
【0031】
3)酸化被膜の厚さ
まず、ニッケル粉末試料をコロジオン膜を張った銅製シートメッシュ上に直接振りかけ、その後カーボンを蒸着させ測定試料を作成した。次いで、200kV電界放射型透過電子顕微鏡(HF−2000、日立製作所社製)を用いて測定試料の格子像を観察し、ニッケル粉末表面の酸化被膜厚さを測定した。
【0032】
4)酸素含有率
試料のニッケル粉末をニッケル製のカプセルに充填し、これを黒鉛るつぼに入れ、アルゴン雰囲気中で500℃に加熱し、このとき発生した一酸化炭素をIRにより定量し、ニッケル粉末中の酸素含有率を求めた。
【0033】
5)平均粒径
電子顕微鏡により試料の写真を撮影し、粉末200個の粒径を測定してその平均を算出した。
【0034】
6)酸化挙動
TG-DTA測定装置にて、大気中にて50℃/時間の昇温速度で1100℃まで加熱し、その際の400℃の時点での重量増加率(%)と、1%重量が増加したときの温度を確認した。
【0035】
【表1】
【0036】
表1から明らかなように、金属ニッケルのアトミック%が10%以下である実施例のニッケル粉末では、焼結開始温度が比較例のニッケル粉末よりも高かった。また、実施例のニッケル粉末では、400℃での重量増加率が比較例よりも小さく、重量増加率が1%のときの温度は比較例よりも高かった。このことから、実施例のニッケル粉末では、比較例に較べて酸化が抑制されることが判る。以上の結果から、本発明のニッケル粉末では、焼結開始温度が積層セラミックコンデンサを製造する際に用いる誘電体の焼結開始温度により近いため焼結挙動が向上され、しかも、酸化が抑制されるために体積の変化が小さく、したがって、デラミネーションの防止が図られることが推定される。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の導電ペースト用ニッケル粉末によれば、焼結開始温度が従来のニッケル粉末に比べて高いことにより優れた焼結挙動を示すとともに、酸化被膜の存在により酸化が抑制されるために体積の変化が小さいから、積層セラミックコンデンサの製造過程においてデラミネーションの発生を防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例で用いたニッケル粉末の製造装置の構成を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1…塩化炉、2…還元炉、M…原料のニッケル粉末、
P…製造されたニッケル粉末。
Claims (3)
- 表面が酸化被膜によって覆われ、前記酸化被膜を透過するX線で酸化被膜直下の金属ニッケルを同定するX線光電子分光分析法により測定した金属ニッケル含有率が0〜10アトミック%であって、前記酸化皮膜の厚さが2.5〜5nmであることを特徴とする導電ペースト用ニッケル粉末。
- 前記ニッケル粉末が、塩化ニッケルガスと還元性ガスとを接触させることにより生成したニッケル粉末であり、得られたニッケル粉末を酸化性雰囲気下において、200〜400℃で1分〜10時間保持することによって酸化処理されたニッケル粉であることを特徴とする請求項1に記載の導電ペースト用ニッケル粉末。
- 塩化ニッケルガスと還元性ガスとを接触させることによりニッケル粉末を生成し、得られたニッケル粉末を酸化性雰囲気下において、200〜400℃で1分〜10時間保持することによりニッケル粉末の表面を酸化被膜によって覆い、これにより前記酸化被膜を透過するX線で酸化被膜直下の金属ニッケルを同定するX線光電子分光分析法により測定した金属ニッケル含有率を0〜10アトミック%とすることを特徴とする導電ペースト用ニッケル粉末の製造方法。
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