JP3983010B2 - トラックの衝撃吸収装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トラックの衝突等による衝撃エネルギを吸収する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の衝撃吸収装置として、車台フレーム上に配設されたキャブと車台フレームとの間にエネルギ吸収部材が設けられたトラックが開示されている(特開平8−230724)。このトラックでは、エネルギ吸収部材の前端部がチルトヒンジ部材の後方に所定の間隔をあけて対向配置され、エネルギ吸収部材の後端部が車台フレームに固着されたストッパブラケットに固定される。上記チルトヒンジ部材によりキャブが車台フレームにチルト可能に支持される。このトラックでは、トラックの衝突時にキャブ全体が車台フレームに対して相対的に後方に移動する。この移動に伴ってチルトヒンジ部材にエネルギ吸収部材を衝突させることにより、キャブに作用する衝撃エネルギを効果的に吸収できるので、衝突におけるキャブの潰れ量を低減できるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開平8−230724号公報に示されたトラックでは、キャブが衝撃荷重を受けて直線運動するときにエネルギ吸収部材がその衝撃エネルギを吸収する、即ちエネルギ吸収部材が直線的に変形して衝撃エネルギを吸収するため、エネルギ吸収部材が大型化し、エネルギ吸収部材やストッパブラケットの取付スペースを広く確保しなければならず、かつその構造が比較的複雑になる不具合があった。
本発明の目的は、比較的小型かつ簡単な構造で衝撃エネルギを効果的に吸収しうるトラックの衝撃吸収装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、図1に示すように、シャシフレーム11に支軸22を介して枢支されかつボルト24又はかしめピンによりシャシフレーム11に所定の角度で固定されたキャブマウントブラケット17を備えたトラックの改良である。
その特徴ある構成は、シャシフレーム11は、キャブマウントブラケット17が固定される断面チャンネル状のサイドメンバ12と、サイドメンバ12と閉断面を構成するようにサイドメンバ12に固着された断面チャンネル状の補助部材26とを備え、支軸22の一端がキャブマウントブラケット17に固定され、支軸22の他端が補助部材26に固定され、キャブマウントブラケット17が衝撃荷重を受けたときにボルト24又はかしめピンが剪断してキャブマウントブラケット17がシャシフレーム11に対して支軸22を中心に支軸22の一端とともに回転したとき支軸22の捩り弾性力がキャブマウントブラケット17の回転の抵抗となるように構成されたところにある。
【0005】
この請求項1に記載された衝撃吸収装置では、キャブ13が衝撃荷重を受けると、キャブ13がシャシフレーム11に対して相対的に移動しようとするので、キャブマウントブラケット17をシャシフレーム11に取付けているボルト24又はかしめピンが剪断して、キャブマウントブラケット17が支軸22を中心に回転し始める。このとき支軸22の捩り弾性力がキャブマウントブラケット17の回転の抵抗となるので、上記衝撃荷重により発生した衝撃エネルギを上記ボルト24等の剪断及び支軸22の捩り弾性力により効率良く吸収できる。また上記衝撃エネルギの全てをボルト24の剪断及び支軸22の捩り弾性力により吸収できれば、シャシフレーム11が変形したり或いは破損したりすることがない。
【0006】
また、この衝撃吸収装置では、従来トラックに存在するサイドメンバ12に補助部材26を設けるだけの簡単な構造で衝撃エネルギを吸収する衝撃吸収装置を得ることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図3に示すように、キャブオーバ型トラック10のシャシフレーム11はトラック10の進行方向に延びて設けられた断面チャンネル状の一対のサイドメンバ12を備え、これらのサイドメンバ12の前部上方にはキャブ13が設けられる。キャブ13はキャブ本体15と、このキャブ本体15のフロアパネル14の下面にトラック10の進行方向に延びかつ一対のサイドメンバ12に対向してそれぞれ設けられた一対のフロアメンバ16とを有する。一対のサイドメンバ12及び一対のフロアメンバ16は左右対称であるため、以下左側のサイドメンバ12等について説明し、右側のサイドメンバ等についての説明を省略する。
フロアメンバ16の前端近傍の下面には受け具19が固着され、この受け具19には連結ピン21を介してキャブマウントブラケット17の上端が連結され、更にブラケット17の下端はサイドメンバ12の前端近傍の側面に取付けられる。受け具19、連結ピン21及びブラケット17はキャブ13の構成部品である。上記連結ピン21によりキャブ本体15の前端が回動可能に保持される、即ちキャブ本体15は連結ピン21を中心にチルトアップ可能に構成される。
【0008】
図1及び図2に示すように、ブラケット17の下端は支軸22を介してサイドメンバ12に枢支される。ブラケット17の下端には支軸22を挿通可能な第1通孔17a(図1)が形成され、サイドメンバ12の側面には支軸22を遊挿可能な第2通孔12a(図1)が形成される。またブラケット17の下端の一方の面には第1ボス23が固着され、この第1ボス23には支軸22を挿通可能な第3通孔23a(図1)が形成される。第1及び第3通孔17a,23aの内周面には細かい山形の多数の内歯が等間隔に形成され、支軸22の外周面には上記第1及び第3通孔17a,23aの多数の内歯に噛合可能な多数の外歯が形成される。支軸22はサイドメンバ12に対して回転可能に構成され、ブラケット17は第1ボス23とともに支軸22の一端にセレーション結合される、即ちブラケット17は支軸22の一端に回転不能に固定される。またブラケット17の下端はブラケット17が所定の角度、この実施の形態ではブラケット17が鉛直上方に向いた状態で、サイドメンバ12の外側面に4本のボルト24及び4つのナット25により固定される(図1)。
【0009】
一方、ブラケット17が固定されたサイドメンバ12には、そのサイドメンバ12と閉断面を構成する断面チャンネル状の補助部材26が、ブラケット17と対向するようにそのサイドメンバ12に固着される。補助部材26のブラケット17と対向する部分には支軸22を挿通可能な第4通孔26a(図1)が形成され、この第4通孔26aの内周面には支軸22の多数の外歯に歯合可能な多数の内歯が形成される。また第4通孔26aが形成された補助部材26の一方の面には第2ボス27が固着され、この第2ボス27には支軸22を挿通可能な第5通孔27a(図1)が形成される。この第5通孔27aの内周面にも細かい山形の多数の内歯が等間隔に形成され、第2ボス27及び補助部材26は支軸22の他端にセレーション結合され、支軸22の他端は補助部材26を含むシャシフレーム11に回転不能に固定される。
【0010】
図1に示すように、支軸22は第1ないし第5通孔23a,27a,12a,26a,27aに貫通され、その状態で抜け防止用のC型軸用止め輪34及び35が支軸22の両端に嵌着される。そして、その止め輪34及び35が嵌着された状態で支軸22の一端がキャブマウントブラケット17に固定され、支軸22の他端がシャシフレーム11に固定される。従って、補助部材26がサイドメンバ12とともに形成する閉断面の図1における幅寸法は、支軸22の固定された一端と固定された他端の間の捩り可能な長さLとなる。ここで、支軸22が捩りによりエネルギを吸収蓄積可能なバネ鋼から作られた場合の、捩り可能な部分における直径をDとすると、DとLの関係は、以下の要件を満足させることにより決定される。
【0011】
即ち、支軸22は捩れることにより衝撃エネルギを吸収できることが要求される。ここで、支軸22の横弾性係数をGとし、剪断応力をτとし、支軸に係るトルクをTとし、支軸22の捩り角をσとし、その支軸22が吸収するエネルギをEとすると、中実の支軸22におけるTとσの関係は
T=(πGD4/32L)×σ……(式1−1) で表される。
式1−1からトルクTと捩れ角σの関係は図7に示すような線形関係にあり、傾き(πGD4/32L)と、横軸(捩れ角σ)とで囲まれる面積がエネルギ吸収量Eを表すことになる。よって、このエネルギ吸収量Eと捩れ角σとの関係は
E=(1/2)×(πGD4/32L)×σ2
=(πGD4/64L)×σ2 ……(式1−2)
となる。
上記式1−2から、支軸22が捩れることにより衝撃エネルギを吸収するための支軸22におけるDとLの関係は、
4/L≧(64E/πGσ2)……(式1−3) となる。
【0012】
一方、支軸22は衝撃エネルギを吸収するととももに所定の捩り角で剪断破壊しないことが要求される。ここで、支軸22における捩れ角σと剪断応力τとの関係は τ=(GD/2L)σ ……(式2−1) と表される。
式2−1から、支軸22が所定の捩り角で剪断破壊しないためには、許容最大剪断応力をτmaxとした場合 τmax≧(GD/2L)σ ……(式2−2)
でなければならない。
よって、支軸22が所定の捩り角で剪断破壊しないDとLの関係は、
(2τmax/Gσ)≧(D/L) ……(式2−3) となる。
即ち、支軸22の捩り可能な長さLとその部分における直径Dとの関係は、上述した式1−3及び式2−3の要件を満足させることにより決定される。
【0013】
図3に戻って、一対のサイドメンバ12のうちキャブ本体15の後端に対向する部位にはリヤアーチ36が架設され、このリヤアーチ36上にゴム等により形成されたクッション部材37を介して一対のフロアメンバ16が載るように構成される(図3)。またリヤアーチ36とキャブ本体15背面との間にはキャブロック装置38が設けられる。このロック装置38をロックするとキャブ本体15がチルトアップ不能になり、ロック装置38を解除するとキャブ本体15がチルトアップ可能になるように構成される。
【0014】
このように構成された衝撃吸収装置では、トラック10が図示しない他のトラックの荷台の後端に追突等して、トラック10のキャブ本体15前面が衝撃荷重F(図2及び図3)を受けると、受け具19がキャブ本体15及びフロアメンバ16とともにシャシフレーム11のサイドメンバ12に対して相対的に後方に移動しようとする。このため、ブラケット17の下端をサイドメンバ12に取付けている4本のボルト24はその衝撃荷重により剪断して、ブラケット17が支軸22を中心に後方(図2の一点鎖線矢印で示す方向)に回転し始める。ブラケット17が回転するとこのブラケット17に固定されている支軸22の一端もそのブラケット17とともに回転する。一方、支軸22の他端はシャシフレーム11である補助部材26に固定されているので、ブラケット17に固定された一端と補助部材26に固定された他端の間の捩り可能な範囲Lでその支軸22は捩られ、エネルギを吸収蓄積する。即ち、キャブ13前面が衝撃荷重Fを受けることにより発生した衝撃エネルギを上記ボルト24の剪断及び支軸22の捩り変形に基づく弾性力により効率良く吸収できる。
【0015】
また、上記衝撃エネルギの全てをボルト24の剪断及び支軸22の捩り弾性力により吸収できれば、サイドメンバ12が変形したり或いは破損したりすることがない。従って、トラック10の全長にわたって設けられ多くの修理時間を要するたシャシフレーム11を交換せずに済むので、修理時間及び修理費用を低減できる。
【0016】
なお、上記実施の形態では、補助部材26に支軸22の他端を直接セレーション結合して、補助部材26がサイドメンバ12とともに形成する閉断面における幅寸法が直接支軸22の捩り可能な長さLとなるように構成したが、支軸の直径との関係において比較的長い閉断面空間が必要となる場合には、図4に示すように第2ボス27に支軸22の中間部分を包囲する胴部27bを形成してその胴部27b野基端に連続して形成されたフランジ部27cを補助部材26に固定し、胴部27cの先端に支軸22の他端が固定される第5通孔27aを形成しても良い。この胴部27bを有する第2ボス27では、補助部材26がサイドメンバ12とともに形成する閉断面の幅寸法を小さくすることができ、第2ボス27自体をバネ鋼により構成すれば第2ボス27における胴部27bも捩られることによりエネルギを吸収蓄積することができる。
【0017】
また、上記実施の形態では、真直ぐな支軸22を用いて第1ないし第5通孔23a,17a,12a,26a,27aに貫通させ、その状態で抜け防止用のC型軸用止め輪34及び35を両端に嵌着したが、図5に示すように、支軸22は捩られることによりエネルギを吸収蓄積することができるものであれば、支軸22の一方の端部に取付け用のフランジ22bが形成されたものであっても良い。このような支軸22を用いても、キャブ13前面が衝撃荷重Fを受けることにより発生した衝撃エネルギを支軸の捩り変形に基づく弾性力により効率よく吸収することができる。
また、上記実施の形態では、真直ぐな支軸22を用いたが、支軸22の捩り可能な長さLとの関係において、支軸22の直径を比較的小さくできる場合には、図6に示すように、支軸22の中間部分における直径を小さくして、その長さを支軸22の捩り可能な長さLとしても良い。
【0018】
また、上記実施の形態では、ブラケット17の下端をボルト24によりサイドメンバ12の側面に固定したが、ブラケット17の下端をかしめピンによりサイドメンバ12の側面に固定してもよい。
また、上記実施の形態では、ブラケットの上端と受け具とを連結ピンにより連結したが、ブラケットの上端と受け具とをキャブフローティング機構、即ちリンクレバー等のリンク機構と空気ばね又はコイルばねとを有する機構により連結してもよい。
更に、上記実施の形態では、支軸22の一端とブラケット17をセレーション結合し、支軸22の他端と補助部材26をセレーション結合したが、支軸22の一端とブラケット17をスプライン結合し、支軸22の他端と補助部材26をスプライン結合してもよい。
【0019】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、キャブマウントブラケットをシャシフレームに支軸を介して枢支し、そのキャブマウントブラケットをボルト又はかしめピンによりシャシフレームに固定し、支軸の一端をキャブマウントブラケットに固定し、支軸の他端をシャシフレームに固定したので、キャブが衝撃荷重を受けると、キャブがシャシフレームに対して相対的に移動しようとするので、キャブマウントブラケットをシャシフレームに取付けているボルト又はかしめピンが剪断して、キャブマウントブラケットが支軸を中心に回転し始める。この時支軸の捩り弾性力がキャブマウントブラケットの回転の抵抗となるので、上記衝撃荷重により発生した衝撃エネルギを上記ボルト等の剪断及び支軸の捩り弾性力により効率良く吸収できる。
また、上記衝撃エネルギの全てをボルトの剪断及び支軸の捩り弾性力により吸収できれば、シャシフレームが変形したり或いは破損したりすることがないので、トラックの全長にわたって設けられ多くの修理時間を要するシャシフレームを交換せずにすみ、修理時間及び修理費用を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施形態の衝撃吸収装置を示す図2のB−B線断面図。
【図2】図3のA部拡大断面図。
【図3】その衝撃吸収装置が搭載されたトラックのキャブの縦断面図。
【図4】第2ボスに胴部を形成した衝撃吸収装置を示す図1に対応する断面図。
【図5】支軸にフランジを形成した衝撃吸収装置を示す図1に対応する断面図。
【図6】支軸に小径部を形成した衝撃吸収装置を示す図1に対応する断面図。
【図7】支軸におけるトルクTと捩れ角σの線形関係を示す図。
【符号の説明】
10 トラック
11 シャシフレーム
12 サイドメンバ
17 キャブマウントブラケット
22 支軸
24 ボルト
26 補助部材
L 支軸の捩り可能な長さ
D 捩り可能な部分における直径

Claims (1)

  1. シャシフレーム(11)に支軸(22)を介して枢支されかつボルト(24)又はかしめピンにより前記シャシフレーム(11)に所定の角度で固定されたキャブマウントブラケット(17)を備えたトラックにおいて、
    前記シャシフレーム (11) は、前記キャブマウントブラケット (17) が固定される断面チャンネル状のサイドメンバ (12) と、前記サイドメンバ (12) と閉断面を構成するように前記サイドメンバ (12) に固着された断面チャンネル状の補助部材 (26) とを備え、
    前記支軸(22)の一端が前記キャブマウントブラケット(17)に固定され、
    前記支軸(22)の他端が前記補助部材 (26)に固定され、
    前記キャブマウントブラケット(17)が衝撃荷重を受けたときに前記ボルト(24)又は前記かしめピンが剪断して前記キャブマウントブラケット(17)が前記シャシフレーム(11)に対して前記支軸(22)を中心に前記支軸(22)の一端とともに回転したとき前記支軸(22)の捩り弾性力が前記キャブマウントブラケット(17)の回転の抵抗となるように構成された
    ことを特徴とするトラックの衝撃吸収装置。
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