JP3982153B2 - プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法 - Google Patents

プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被処理物の表面に存在する有機物等の異物のクリーニング、レジストの剥離、有機フィルムの密着性の改善、金属酸化物の還元、製膜、表面改質、液晶用ガラス基板の表面クリーニングなどのプラズマ処理を行うためのプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に関するものであって、特に、精密な接合が要求される電子部品の表面クリーニング等に応用されるものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、アルゴンやヘリウムなどのプラズマ生成用ガスの雰囲気中で一対の電極間に交流電界を印加して放電を発生させることによってプラズマを生成し、このプラズマを被処理物に供給して表面改質処理などに利用することが行われている。例えば、平行対向型の一対の電極を使用したプラズマ処理装置としては特開平4−358076号公報に記載されているようなものがあり、また、管状の電極を使用したプラズマ処理装置としては特開平6−96718号公報に記載されているようなものがある。このようなプラズマ処理装置用の電極は金属製であるので、そのまま用いると、プラズマによるスパッタリングやプラズマ生成用ガスによる腐食を受けて寿命が短く、また、スパッタリングにより生じた不純物が被処理物に付着して被処理物が汚染されるという問題があり、さらに、異常放電が生じやすいという問題があった。
【0003】
そこで、特開平6−96718号公報に記載の発明では、セラミック溶射層を有する電極を用いることによって、セラミック溶射層で電極の表面を被覆して保護し、上記の問題が生じないようにすることが試みられている。しかし、電極をセラミック溶射層で被覆すると均一な平滑性を得ることはできるが、セラミック溶射層は小さなピンホールが極めて生じやすいものである(実用表面改質技術総覧(技術材料研究会編1993.3.25初版第275頁及び第720頁)参照)。そして、このピンホールの部分は耐電圧性が充分でないために、ピンホールの部分で電界集中や火花放電が発生したり、セラミック溶射層自身が破壊したりするという問題があった。また、ピンホールにより放電が均一に発生せず、プラズマ処理の効率が低下したり被処理物に高温がかかって破損したりする恐れがあった。さらに、ピンホールの少ないセラミック溶射層を溶射により形成するためには、何度にも分けて溶射の工程を繰り返し行わなければならず、セラミック溶射層で電極を被覆するのに費やす時間並びに作製コストが非常にかかるという問題があった。
【0004】
そこで、セラミック溶射層よりもピンホールの少ないガラス板を電極の表面に設けることが、特開平6−96718号公報で提案されているが、この場合は、ガラス板と電極との密着性が低く、また、ガラス板を極薄に形成することができないので、放電が均一に起こりにくいという問題があった。
【0005】
一方、特開平11−191500号公報には、電極の表面にガラス系ライニングで被膜を形成することが提案されている。一般的にガラス系ライニング方法とは、ガラス質の溶射、ゾルゲル法コーティング、水ガラスなどを用いたコーティングが挙げられる。特に、ゾルゲル法コーティングは近年有効的に用いられているものであり、ガラス質アルコキシド(シリカ系アルコキシド)を溶剤で希釈し、これを母材にとり、加熱して加水分解で硬化させて母材の表面にガラス質をライニングする方法である。しかし、ゾルゲル法コーティングでは加水分解時に応力が発生し、収縮歪みが発生するために、母材との密着性が低く、また、ポーラスであるために耐絶縁性が低いという問題があった。
【0006】
上記のように、従来から行われている電極の保護層(保護コーティング)はそれ自身の性能や特性により多くの問題が発生するが、さらに、電極(基材)が原因で保護層の性能や耐久性の低下を引き起こす現象も存在している。通常、筒状に電極を作製する場合は、一つ又は複数個の電極部材を溶接などにより接合することが多く、このために、図15に示すように、電極2、3(電極部材10)の接合部分(溶接継ぎ目)にあたる接合部11に微小な空隙(空間)19が発生することがある(図16に空隙が生じた接合部分の断面写真を示す)。そして、このように電極に空隙が存在すると、この空隙に封入されたガスが放電中や放電後に熱などで膨張して電極の表面から吹き出すことになり、電極の表面から吹き出したガスにより、保護層が破壊されることがあった(図17に保護層が破壊された電極の写真を示す)。この現象は琺瑯被覆技術でいうところの爪飛現象であり、この現象を発生させないようにすることが保護層の性能を充分に生かして耐久性を高くすることを可能にするのである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、ピンホールが極めて少なく、電極との密着性が高く、耐絶縁性の高い保護層を電極の表面に形成することによって、電界集中、火花放電、保護層の破壊や剥離、被処理物の熱的破損、不均一な放電の発生を防止することができ、且つ爪飛現象による保護層の破損を防止することによって、保護層の耐久性を向上させることができるプラズマ処理装置及びこれを用いたプラズマ処理方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係るプラズマ処理装置は、対をなす電極2、3をチャンバー1内に設け、チャンバー1内にプラズマ生成用ガスを導入すると共に対をなす電極2、3の間に交流またはパルス状の電界を印加することにより電極2、3の間に大気圧近傍の圧力下で誘電体バリア放電を発生させ、この誘電体バリア放電でプラズマ生成用ガスからプラズマを生成すると共にこのプラズマで電極2、3の間に導入された被処理物4をプラズマ処理するプラズマ処理装置において、対をなす電極2、3の少なくとも一方の表面にガラス質で熱融着により形成された保護層32を設け、保護層32を設ける電極2、3をシームレスで筒状に形成して成ることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の請求項に係るプラズマ処理装置は、対をなす電極2、3をチャンバー1内に設け、チャンバー1内にプラズマ生成用ガスを導入すると共に対をなす電極2、3の間に交流またはパルス状の電界を印加することにより電極2、3の間に大気圧近傍の圧力下で誘電体バリア放電を発生させ、この誘電体バリア放電でプラズマ生成用ガスからプラズマを生成すると共にこのプラズマで電極2、3の間に導入された被処理物4をプラズマ処理するプラズマ処理装置において、対をなす電極2、3の少なくとも一方の表面にガラス質で熱融着により形成された保護層32を設け、高周波溶接により電極部材10の端部を空隙なく密着させて接合することによって、保護層32を設ける電極2、3を筒状に形成して成ることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の請求項に係るプラズマ処理装置は、請求項1又は2の構成に加えて、電極2、3の表面を粗面化処理した後、電極2、3の表面に熱融着によりガラス質の保護層32を形成して成ることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の請求項に係るプラズマ処理装置は、請求項1乃至のいずれかの構成に加えて、ガラス質材料をスプレー掛けあるいは浸け掛けし、400〜1000℃でガラス質材料を熱融着して保護層32を形成して成ることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の請求項に係るプラズマ処理装置は、請求項の構成に加えて、ガラス質材料のスプレー掛けあるいは浸け掛けと、ガラス質材料の熱融着とを交互に複数回行って保護層32を形成して成ることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の請求項に係るプラズマ処理装置は、請求項1乃至のいずれかの構成に加えて、プラズマ生成用ガスが不活性ガスあるいは不活性ガスと反応ガスの混合気体であることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の請求項に係るプラズマ処理装置は、請求項1乃至のいずれかの構成に加えて、対をなす電極2、3の少なくとも一方を冷媒で冷却することを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の請求項に係るプラズマ処理装置は、請求項の構成に加えて、冷媒がイオン交換水であることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の請求項に係るプラズマ処理装置は、請求項又はの構成に加えて、筒状に形成される電極2、3の内側を冷媒の流路33として形成して成ることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明の請求項10に係るプラズマ処理装置は、請求項の構成に加えて、保護層32の形成の際に電極2、3の流路33側の表面に発生する異物を除去することを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明の請求項11に係るプラズマ処理装置は、請求項9又は10の構成に加えて、電極2、3の流路33側の表面に耐食層12を形成して成ることを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明の請求項12に係るプラズマ処理装置は、請求項7乃至11のいずれかに構成に加えて、冷媒が不凍性及び絶縁性を有することを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明の請求項13に係るプラズマ処理装置は、請求項1乃至12のいずれかの構成に加えて、保護層32が厚み0.1〜2mmであることを特徴とするものである。
【0023】
また、本発明の請求項14に係るプラズマ処理装置は、請求項1乃至13のいずれかの構成に加えて、保護層32が耐電圧1〜30kVであることを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明の請求項15に係るプラズマ処理装置は、請求項1乃至14のいずれかの構成に加えて、対をなす電極2、3の間に印加する交流電界の周波数が1kHz〜200MHzであることを特徴とするものである。
【0025】
また、本発明の請求項16に係るプラズマ処理装置は、請求項1乃至15のいずれかの構成に加えて、対をなす電極2、3の間のギャップが1〜20mmであることを特徴とするものである。
【0026】
また、本発明の請求項17に係るプラズマ処理装置は、請求項1乃至16のいずれかの構成に加えて、金属製のチャンバー1の内面に絶縁層を形成して成ることを特徴とするものである。
【0027】
また、本発明の請求項18に係るプラズマ処理方法は、請求項1乃至14のいずれかに記載のプラズマ処理装置でプラズマ処理を行うことを特徴とするものである。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0029】
図1にプラズマ処理装置の一例を示す。箱形に形成されるチャンバー1は接合部分にOリング等のパッキンを設けて気密性が高く形成されるものであって、チャンバー1内には上下に対向する電極2、3と被処理物4を載せるための設置台5が設けられている。上側に配置される一方の電極2は高圧電極として、下側に配置される他方の電極3は接地電極としてそれぞれ作用するものであって、一個の電極2と二個の電極3で対(一対)をなすものである。また、チャンバー1の上面にはプラズマ生成用ガスをチャンバー1内に導入するための供給管30が突設されていると共にチャンバー1の下面には余剰のプラズマ生成用ガスをチャンバー1外に導出するための排出管31が突設されている。尚、設置台5は被処理物4が二個の電極3の間隔よりも大きい場合に用いるものであって、被処理物4が二個の電極3に載置して支持可能であれば、設置台5は必要ない。また、供給管30や排出管31の位置は図1に示す位置に限定されず、任意である。さらに、電極2と電極3の各個数は特に限定されず、二個以上の電極2と一個又は三個以上の電極3で対をなすようにしても良い。
【0030】
チャンバー1はアクリル樹脂等の合成樹脂やステンレス鋼などの金属で形成することができるが、チャンバー1(特に、金属製の場合)の内面全体に琺瑯などのガラス質材料、テフロン(テトラフルオロエチレン)等の樹脂材料、セラミック材料などの絶縁物(絶縁材料)で絶縁層を形成することによってコーティングするのが好ましい。絶縁物としては、石英、アルミナ、イットリア部分安定化ジルコニウムなどのガラス質材料やセラミック材料などを例示することができる。さらに、アルミナ(Al23)、酸化チタン(チタニアでTiO2)、SiO2、AlN、Si3N、SiC、DLC(ダイヤモンド様炭素皮膜)、チタン酸バリウム、PZT(チタン酸鉛ジルコネート)などの誘電体材質のものを例示することができる。またマグネシア(MgO)単体あるいはマグネシアを含む絶縁材料を用いることもできる。コーティング方法としては、板状に形成した絶縁物をチャンバー1の内面に接着して密着させる方法、及びアルミナ、チタン酸バリウム、酸化チタン、PZTなどの粉末をプラズマ中で分散させ、チャンバー1の内面に吹き付けるようにするプラズマ溶射法、及びシリカ、酸化スズ、チタニア、ジルコニア、アルミナなどの無機質粉末を溶剤などにより分散し、チャンバー1の内面にスプレーなどで吹き付けて被覆した後、600℃以上の温度で溶融させるいわゆる琺瑯被覆方法(尚、琺瑯被覆方法としては、後述の電極2、3への保護層32の形成方法も採用することができる)、及びゾルゲル法によるガラス質膜の形成方法、及び融解したテフロンへのチャンバー1を浸し込んでテフロン被膜を形成する方法、及びシール状(粘着層を有するシート材)のテフロンをチャンバー1の内面に張り付ける方法などを採用することができる。さらに、気相蒸着法(CVD)もしくは物理蒸着法(PVD)によりチャンバー1の内面を絶縁物でコーティングすることもできる。
【0031】
このようにチャンバー1の内面に絶縁層を形成してコーティングすることによって、電極2、3とチャンバー1の内面との間で放電が起こらないようにすることができると共に入力に対するパワーロスを防いで電極2、3の間の放電効率を高めることができ、より安定で均一な誘電体バリア放電が可能となり、プラズマを効率よく安定に生成することができるものである。尚、チャンバー1の外面も絶縁物でコーティングしてもよい。
【0032】
図4(a)に示すように、電極2、3はステンレス鋼などの導電性金属で筒状(パイプ状)に形成されており、その表面(外面)には図4(b)に示すようにガラス質からなり熱融着によって形成される保護層(保護コーティング層)32が全面に亘って設けられている。また、電極2、3の内側(内部)は冷媒が通過可能な流路33として形成されている。尚、電極2、3の形状は特に限定されず、角形断面のものや円管状断面のものあるいは平板状のものを様々な組み合わせで用いることができる。
【0033】
電極2、3は継ぎ目がないシームレスに形成する。このことで図15に示すような空隙19が電極2、3の内部に存在しないようにすることができ、電極2、3が原因(爪飛現象)で保護層32が破壊する可能性を激減させることができる。このようなシームレスの電極2、3は押し出し成形などのシームレス加工で形成することができる。また、押し出し成形で電極2、3を形成すると、電極2、3の形状を変更しやすくて電極2、3の形状の自由度が大きくなり、しかも電極2、3の大量生産が可能となるものである。また、シームレスの円筒状パイプをプレス加工して所望の形状の電極2、3を形成することもできる。電極2、3の角部は誘電体バリア放電の均一化のために凸曲面(R面)とするのが好ましいが、押し出し成形やシームレスの円筒状パイプをプレス加工を採用することによって、角部にRを付けた電極2、3が作製しやすくなるものである。
【0034】
図5(a)及び図6(a)には少なくとも一つの接合部(継ぎ目)11を有する電極2、3を示す。図5(a)の電極2、3は、一つの板状の電極部材10を折り曲げ加工するなどして筒状に成形すると共に電極部材10の一方の端部と他方の端部を空隙なく密着させて接合することによって形成されるものである。すなわち、電極部材10の端部同士の接合部分で形成される接合部11には空隙が存在していないものである。通常一般的に行われている溶接作業では接合部11に空隙が発生しないように電極部材10の端部を密着させて接合することは難しい。そこで、接合部11に空隙が発生しないように容易に電極部材10の端部を密着させて接合することが可能な高周波(抵抗)溶接法を用い、このことで、空隙レスの接合が可能となって接合部11に空隙が存在していない電極2、3を容易に形成することができる(図18に高周波溶接により接合された接合部分の断面写真を示す)。従って、従来のような爪飛現象による保護層32の破壊現象を回避することができるものであり、また、流路33に冷却水などの冷媒を流す場合に、接合部11からの冷媒の染み出しがなくなり、冷媒による保護層32の破壊や劣化を防止して保護層32の耐久性を高めることができる。図5(a)に示すような電極2、3についても図5(b)に示すように上記と同様の保護層32を形成するものである。
【0035】
図6(a)に他の電極2、3を示す。この電極2、3は、折り曲げ加工するなどして断面略コ字状に形成した二つの電極部材10を合わせて筒状にすると共に一方の電極部材10の端部と他方の電極部材10の端部を空隙なく密着させて接合することによって形成されるものである。接合方法としては上記と同様の高周波(抵抗)溶接法を用いることができ、このことで、電極部材10の端部同士の接合部分で形成される二つの接合部11に空隙が存在しないように電極2、3を形成することができるものである。尚、三個以上の電極部材10を接合して電極2、3を形成しても良い。
【0036】
保護層32はガラス質を電極2、3の表面に熱融着することにより形成されるものであって琺瑯等の被膜であり、例えば、ガラスハンドブック(朝倉書店、1991.4.10、第12刷、p191〜196)や実用表面改質技術総覧(技術材料研究協会編、1993.3.25初版、p731)などに記載されている琺瑯被覆の方法を採用して形成することができる。具体的には、シリカ、酸化スズ、チタニア、ジルコニア、アルミナ等の無機質粉末を水などの溶剤に分散させてガラス質材料(釉薬)を調製し、このガラス質材料を電極2、3の表面にスプレー掛けしたり浸け掛け(ディッピング)などで供給して電極2、3の表面をガラス質材料で被覆し、この後、ガラス質材料が付着した電極2、3を480〜1000℃の温度で1〜15分間加熱処理してガラス質材料の溶剤を蒸発させると共に電極2、3の表面に無機質粉末を熱融着(溶着)させることによって形成することができる。
【0037】
このようにガラス質からなる保護層32を電極2、3の表面に熱融着により形成することによって、プラズマのスパッタリング作用やプラズマ生成用ガスの腐食作用から電極2、3を保護することができ、電極2、3の劣化を少なくすることができるものであり、また、電極2、3から不純物が生じないようにすることができて長期間の使用であっても被処理物4が不純物より汚染されないようにすることができるものである。しかも、本発明の保護層32は、セラッミクの溶射により形成された保護層に比べて、ピンホールを極めて少なくすることができると共にガラス板を配置することにより保護層を形成する場合に比べて、厚みが薄くて電極2、3に対する密着性を高めることができ、電界集中、火花放電、保護層の破壊、被処理物の熱的破損、不均一な放電等の異常放電の発生を防止することができるものである。さらに、緻密なセラミック溶射に比べて保護層32の作製に費やす時間並びにコストを低減することができるものである。また、本発明の保護層32は、ゾルゲル法コーティングなどのガラス質ライニングで形成される保護層に比べて、電極2、3との密着性が高く、また、ポーラスでないために耐絶縁性が高いものである。尚、保護層32は電極2、3の一方だけに設けてもよいが、電極2、3の両方に設けるのが好ましく、このことで上記の効果を確実に得ることができる。また、複数個の電極2、3を用いる場合、一部の電極2あるいは一部の電極3に保護層32を設けるようにしても良いが、全部の電極2、3に保護層32を設ける方が上記の効果が大きくなり好ましい。
【0038】
保護層32は重ね塗りによって形成するのが好ましい。重ね塗りは次のようにして行う。まず、電極2、3の表面にスプレー掛けしたり浸け掛け(ディッピング)などで供給して電極2、3の表面をガラス質材料で被覆し、この後、ガラス質材料が付着した電極2、3を480〜1000℃の温度で1〜15分間加熱処理してガラス質材料の溶剤を蒸発させると共に電極2、3の表面に無機質粉末を融着(溶着)させる。次に、電極2、3の表面に融着により形成されたガラス質の被膜の表面に新たにガラス質材料をスプレー掛けしたり浸け掛けなどで供給してガラス質材料の被膜を形成し、この後、480〜1000℃の温度で1〜15分間加熱処理してガラス質の被膜の表面に無機質粉末を熱融着する。すなわち、重ね塗りはガラス質材料のスプレー掛けあるいは浸け掛けの工程とガラス質材料の熱融着の工程とを交互に複数回(2〜3回)行って保護層32を形成するものであり、このことで、保護層32のピンホールがより少なくなって、電界集中、火花放電、保護層の破壊、被処理物の熱的破損、不均一な放電の発生を確実に防止することができるものである。
【0039】
さらに、保護層32の表面に平滑性を付与するために、削り工程を施しても良く、このことで、保護層32のピンホールがより少なくなって、電界集中、火花放電、保護層の破壊、被処理物の熱的破損、不均一な放電の発生を確実に防止することができるものである。
【0040】
また、電極2、3の表面に保護層32を形成する前に、電極2、3の表面に粗面化処理を施して、図7(a)に示すように電極2、3の表面に微細な凹凸の粗面化層15を形成するのが好ましく、この後、図7(b)に示すように、電極2、3の粗面化層15の表面に熱融着によりガラス質の保護層32を形成するのが好ましい。粗面化処理としてはサンドブラストやガラスビーズブラストなどのブラスト処理を採用することができる。そして、このように電極2、3の表面に粗面化処理した後保護層32を形成することによって、電極2、3と保護層32の密着性を向上させることができ、電極2、3からの保護層32の剥離などを防止することができるものである。
【0041】
また、電極2、3に保護層32を形成する際の加熱処理により、保護層32が形成されない電極2、3の表面の一部(非被膜部分)が高温で熱酸化されることになる。すなわち、電極2、3が流路33を有する筒状に形成されている場合は、電極2、3の流路33側の表面(内面)が熱酸化されることになり、電極2、3の流路33側の表面に酸化物などの異物が層状に形成されることになる。そして、このような異物が形成された状態で流路33に水などの冷媒を流して電極2、3を使用すると、電極2、3の腐食(酸化)が促進されるために、電極2、3自身の耐久性が低下し、また、安定した誘電体バリア放電の確保が困難になる。しかも、錆などが冷媒中に混入して冷却器やポンプなどに目詰まりが発生する恐れもある。そこで、これらの現象を回避するために、電極2、3の流路33側の表面に形成される酸化物などの異物を硝酸や硫酸などで酸洗浄して除去することによって、図8に示すように、電極2、3の流路33側の表面を異物除去面16として形成することが好ましく、このことで、電極2、3の耐久性を向上させることができ、また、安定した誘電体バリア放電を確保することができるものである。さらに、異物除去面16を形成した後、冷媒の流通による電極2、3の再腐食の発生を防止したり遅らせたりする目的で、電極2、3の流路33側の表面にクロメート処理などを施すことによって、図9に示すように、耐食層(耐食コーティング層)12を形成するのが好ましい。このことで、電極2、3の耐久性をさらに向上させることができ、また、より安定した誘電体バリア放電を確保することができるものである。
【0042】
保護層32の厚みは0.1〜2mmに形成するのが好ましい。保護層32の厚みが0.1mm未満であれば耐電圧が小さくなり過ぎて、クラックや剥離が生じやすくなって電極2、3を充分に保護することができなくなる恐れがあり、保護層32の厚みが2mmを超えると耐電圧が大きくなり過ぎて、均一な誘電体バリア放電を安定して発生させることができなくなる恐れがある。
【0043】
また、保護層32の耐電圧は1〜30kVにするのが好ましい。保護層32の耐電圧が1kV未満であると、誘電体バリア放電が発生する前に保護層32が破壊されて均一で安定した誘電体バリア放電を発生させることができない恐れがある。保護層32の耐電圧は高い方が好ましいが、耐電圧を高く得ようとすると保護層32の厚みを厚くする必要が生じ、均一で安定した誘電体バリア放電を発生させにくくなるので、耐電圧の上限は30kVに設定するのが好ましい。尚、保護層32の耐電圧は厚みや組成を調整することによって所望の値に設定する。
【0044】
上記のように形成される電極2、3は、その端部をチャンバー1の内側面に設けたホルダーに固定することによって、チャンバー1内に上下に対向させて配設されている。そして、上側に配置された電極2は電源43に電気的に接続されていると共に下側に配置された電極3は接地されており、電極2、3の間に放電空間34が形成されている。電源43は交流電界(高周波電界)を発生させるものであって、対をなす電極2、3の間の放電空間34に交流電界を印加して誘電体バリア放電を発生させるものである。また、電源43はパルス化された電界(パルス状の電界)を発生させるものであってもよく、このような電源43を用いると、対をなす電極2、3の間の放電空間34にパルス化された電界を印加して誘電体バリア放電を発生させることができるものである。
【0045】
対をなす(対向する)電極2、3の上下の間隔(ギャップ)Lは、1〜20mmに設定するのが好ましい。電極2、3の間隔Lが1mm未満であれば、電極2、3の間で短絡が起こって放電空間34で放電が起こらなくなる恐れがあり、しかも、放電空間34が狭くなって効率よくプラズマを生成することが難しくなる恐れがあり、さらに、厚み1mmを超える厚物の被処理物4が放電空間34に導入することができなくなって、厚物の被処理物4にプラズマ処理を施すことができない。また、電極2、3の間隔Lが20mmを超えると、放電空間34で放電が起こりにくくなって効率よくプラズマを生成することが難しくなる恐れがある。
【0046】
このように形成されるプラズマ処理装置を用いて、大気圧近傍の圧力下で、回路用基板や液晶用ガラス基板等のピース状(短尺)で板状の被処理物4をプラズマ処理するにあたっては、次のようにして行う。まず、図1に示すように、設置台5の上に被処理物4を載せて放電空間34に導入する。次に、矢印aで示すように、供給管30を通じてチャンバー1内にプラズマ生成用ガスを供給すると共に、対となる電極2、3の間の放電空間34に交流またはパルス状の電界を電源43により印加する。このことで、対となる電極2、3の間の放電空間34に誘電体である保護層32を介して放電する、いわゆる誘電体バリア放電を発生させると共にこの誘電体バリア放電によりプラズマ生成用ガスからプラズマを生成する。この後、所定の時間だけ放置することによって、被処理物4にプラズマ処理を施すことができる。尚、余剰のプラズマ生成用ガスは矢印bで示すように、排出管31を通じてチャンバー1外に排出される。
【0047】
本発明のプラズマ処理は、大気圧近傍の圧力下(好ましくは、93.3〜106.7kPa(700〜800Torr))で行うので、圧力の調整が容易で装置が簡便になるものであるが、特に、圧力の調整が不要で減圧装置等が不要となる大気圧下でプラズマ処理を行うのが好ましい。
【0048】
プラズマ生成用ガスとして不活性ガス(希ガス)あるいは不活性ガスと反応ガスの混合気体を用い、このことで、例えば、被処理物4の表面に存在する有機物のクリーニングや金属酸化物の還元効果を実現することができる。不活性ガスとしては、ヘリウム、アルゴン、ネオン、クリプトンなどを使用することができるが、放電の安定性や経済性を考慮すると、アルゴンやヘリウムを用いるのが好ましい。また反応ガスの種類は処理の内容によって任意に選択することができる。例えば、被処理物の表面に存在する有機物のクリーニング、レジストの剥離、有機フィルムのエッチング、LCDの表面クリーニング、ガラス板の表面クリーニングなどを行う場合は、酸素、空気、CO2、N2Oなどの酸化性ガスを用いるのが好ましい。また、反応ガスとしてCF4などのフッ素系ガスも適宜用いることができ、シリコンなどのエッチングを行う場合にはこのフッ素系ガスを用いるのが効果的である。また金属酸化物の還元を行う場合は、水素、アンモニアなどの還元性ガスを用いることができる。反応ガスの添加量は不活性ガスの全量に対して10重量%以下、好ましくは0.1〜5重量%の範囲である。反応ガスの添加量が0.1重量%未満であれば、処理効果が低くなる恐れがあり、反応ガスの添加量が10重量%を超えると、放電が不安定になる恐れがある。
【0049】
また、対となる電極2、3の間の放電空間34に印加される交流電界の周波数は1kHz〜200MHzに設定するのが好ましい。交流電界の周波数が1kHz未満であれば、大気圧近傍の圧力下で放電空間34での誘電体バリア放電を安定化させることができなくなり、プラズマ処理を効率よく行うことができなくなる恐れがある。交流電界の周波数が200MHzを超えると、放電空間34でのプラズマの温度上昇が著しくなり、電極2、3の寿命が短くなる恐れがあり、しかも、プラズマ処理装置が複雑化及び大型化する恐れがある。
【0050】
また、放電空間34に印加される印加電力は20〜3500W/cm3、好ましくは100〜500W/cm3に設定するのが好ましい。放電空間34に印加される印加電力が20W/cm3未満であれば、プラズマを充分に発生させることができなくなり、逆に、放電空間34に印加される印加電力が3500W/cm3を超えると、安定した放電を得ることができなくなる恐れがある。尚、印加電力の密度(W/cm3)は、(印加電力/放電空間体積)で定義される。
【0051】
上記のようにしてプラズマ処理を行うにあたって、少なくとも誘電体バリア放電を発生させている間(誘電体バリア放電を発生していない間も含む)は、流路33に冷媒を流通させる(循環させる)ことによって電極2、3を冷却する。冷媒としては、イオン交換水や純水を使用することができる。イオン交換水や純水を用いることによって、冷媒中に不純物が含まれることがなく、電極2、3が冷媒で腐食されにくくなるものである。また、冷媒としては0℃で不凍性を有し、且つ電気絶縁性及び不燃性や化学安定性を有する液体であることが好ましく、例えば、電気絶縁性能は0.1mm間隔での耐電圧が10kV以上であることが好ましい。この範囲の絶縁性を有する冷媒を用いる理由は、高電圧が印加される電極2、3からの漏電を防止するためである。このような性質を有する冷媒としては、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル等を例示することができ、また、純水にエチレングリコールを5〜60重量%添加した混合液であってもよい。
【0052】
上記のように純水を冷媒として用いる場合は、スケールキラー(日本製鋼所の商品名)を用いることができる。スケールキラーは冷却水循環ラインなどでスケール抑制・防錆を行う電場・磁場を用いた物理的水処理装置である。スケールキラーは電場・磁場によりスケール成分の結晶化を促して結晶をスラッジとして大きく成長させることによってスケール化を防止するものであるが、これを本発明に適用することにより、電極2、3の素地に防錆被膜である黒錆層を形成し、電極2、3の素地に冷媒が直接接触することを防止することができ、スケールの抑制だけでなく電極2、3の腐食防止とスケール除去にも効果を奏するものである。
【0053】
そして、図3(a)(b)に矢印で示すように、プラズマ生成中に流路33に冷媒を通すことによって、電極2、3を冷却するものであり、このことで、大気圧近傍の圧力下で周波数の高い交流でプラズマを生成しても、電極2、3の温度上昇をより抑えることができ、高温による電極2、3の熱的劣化を防止することができると共にプラズマの温度(ガス温度)が高くならないようにして被処理物4の熱的損傷を少なくすることができるものである。また、電極2、3の間に形成される放電空間34の局所的な加熱を防ぐことができ、より均質な誘電体バリア放電を生成してストリーマー放電の生成を抑えて被処理物4のストリーマー放電による損傷をより少なくすることができるものである。尚、冷媒は空気であってもよい。また、電極2、3のうち一方のみを冷却するようにしてもよいが、電極2、3の両方を冷却する方が上記の効果が大きくなり好ましい。さらに、複数個の電極2、3を用いた場合、一部の電極2あるいは一部の電極3を冷却することもできるが、全部の電極2、3を冷却する方が上記の効果が大きくなり好ましい。
【0054】
【実施例】
以下本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0055】
(実施例1)
図2に示す電極2、3を用いて図1のようなプラズマ処理装置を形成した。チャンバー1としては520mm×352mm×200mmのアクリル樹脂製のものを使用した。電極2は角形断面で筒状に形成されるものであって、幅32mm×高さ16mm×長さ400mm、肉厚1.5mmのSUS304の角パイプ状電極を用いた。電極3は円管状断面で筒状に形成されるものであって、φ14mm×長さ400mm、肉厚1.5mmのSUS304の管状パイプ電極を用いた。また、いずれの電極2、3の表面にも琺瑯の保護層32を全面に亘って形成した。保護層32は、シリカとアルミナの無機質粉末を原料とし、これを溶剤に分散して調製されたガラス質材料(釉薬)をスプレーガンで電極2、3の表面に150g塗布し、その後、約850℃で10分間加熱溶融して焼き付け(熱融着し)た。そして、スプレーガンによる塗布と焼き付けとを交互に3回ずつ繰り返して重ね塗りし、厚み0.5mm程度に均一に仕上げた保護層32を形成した。そして、一個の電極2と二個の電極3を互いに上下に対向させて対を形成し、この対をなす電極2、3をチャンバー1内に配置した。この時、対向する電極2、3の間のギャップ距離Lは5mmとした。
【0056】
被処理物4としては、ネガ型レジストを1μmで塗布したシリコン基板を用いた。プラズマ生成用ガスとしてはヘリウムを1リットル/min、アルゴンを3リットル/min、酸素を60cc/minの割合で混合してチャンバー1に供給した。また、電極2、3を冷却する冷媒としてはイオン交換水を用いた。
【0057】
そして、電極2を高圧電極、電極3を接地電極とし、大気圧下で電極2、3の間の放電空間34に印加電力が250Wで、100kHzの交流電界(高周波電界)を印加して誘電体バリア放電を発生させてプラズマを生成し、設置台5の載せてギャップ間(放電空間34)に導入した被処理物4に上記のプラズマを約20秒間供給して大気圧下でプラズマ処理(表面の改質処理及びクリーニング処理)を行った。その結果、極めて均一な形状にレジストをエッチングすることができた。また、XPS分析の結果、レジスト成分以外の不純物はほとんど検出されなかった。さらに、放電自体も安定しており、火花放電、異常放電、保護層32の破損等が発生しなかった。また、約6ヶ月程度連続運転しても、保護層32の破損は見られなかった。
【0058】
(実施例2)
アルミナ基板に銀パラジウムペーストをスクリーン印刷し、これを焼き付けしてボンディングパッド部を含む回路を形成することによって、被処理物4を作成した。プラズマ生成用ガスとしてはヘリウムを1リットル/min、アルゴンを3リットル/min、酸素を30cc/minの割合で混合してチャンバー1に供給した。これら以外は実施例1と同様にしてプラズマ処理装置を形成した。
【0059】
そして、電極2を高圧電極、電極3を接地電極とし、大気圧下で電極2、3の間の放電空間34に印加電力が250Wで、100kHzの交流電界(高周波電界)を印加してプラズマを発生させ、設置台5の載せてギャップ間(放電空間34)に導入した被処理物4に上記のプラズマを約5秒間供給して大気圧下でプラズマ処理(表面の改質処理及びクリーニング処理)を行った。
【0060】
ボンディングパッド部のXPS分析の結果、処理前では酸化銀のピークが確認されたが、処理後にはこのピークは金属銀に変化しており、ボンディングパッド部の酸化銀は還元されてほぼ認められなくなった。また、放電自体も安定しており、火花放電、異常放電、保護層32の破損等が発生しなかった。また、約6ヶ月程度連続運転しても、保護層32の破損は見られなかった。
【0061】
(比較例1)
厚さ0.5mmのアルミナの誘電体皮膜を保護層32とした以外は実施例1と同様にした。その結果、ピンホールから発生したと思われる火花放電が発生し、また、約2ヶ月程度放電した段階で保護層32の一部が破壊した。
【0062】
(比較例2)
厚さ0.5mmのアルミナの誘電体皮膜を保護層32とした以外は実施例2と同様にした。その結果、ピンホールから発生したと思われる火花放電が発生し、被処理物4の一部を焦がした。
【0063】
(実施例3)
図10(a)に示す電極2、3を用いて図10(b)のようなシャトル方式で被処理物4を搬送してプラズマ処理を行うプラズマ処理装置を形成した。チャンバー1としては長さ800mm×幅860mm×高さ116mmサイズのSUS304製のものを使用した。チャンバー1の接合部はOリング等のパッキンで気密性がが保たれている。また、チャンバー1にはその一つの側壁を貫通するようにスリット状の搬送口6が設けられている。また、搬送口6を設けた側壁の外側には空気圧等で上下駆動されるシャトル型の搬送口扉20が設けられている。また、チャンバー1内には搬送用ローラ17が設けられている。搬送用ローラ17は被処理物4を搬送するために設けられるものであって、駆動用プーリーやベルト及びそれらを駆動するモータ(松下電器産業(株)製のM8RA25GVL)により回転駆動自在に形成されている。
【0064】
電極2は角形断面で筒状に形成されるものであって、幅32mm×高さ16mm×長さ911mm、肉厚1.5mmのSUS304の角パイプ状電極を用いた。電極2の角部は曲率半径が1.5mmのR面に形成されている。電極3は円管状断面で筒状に形成されるものであって、φ14mm×長さ911mmのSUS304の管状パイプ電極を用いた。いずれの電極2、3も押し出し成形等のシームレス加工により継ぎ目なく形成されたもの(図4に示すもの)である。また、電極2、3の表面にガラスビーズ(JIS相当粒度60番)を用いたブラスト処理を施して粗面化した後、琺瑯の保護層32を全面に亘って形成した。保護層32はシリカとアルミナの無機質粉末を原料とし、これを溶剤に分散して調製されたガラス質材料(釉薬)をスプレーガンで電極2、3の表面に約300〜500g塗布し、その後、約850℃で10分間加熱溶融して焼き付け(熱融着し)た。そして、スプレーガンによる塗布と焼き付けとを交互に3回ずつ繰り返して重ね塗りし、厚み0.5mm程度に均一に仕上げた保護層32を形成した。この保護層32の耐電圧は20kVであった。また、保護層32を形成した後、電極2、3の内側の流路33に酸洗浄液(日本表面化学(株)製のジャスコピクル21)を封入して120分間放置することによって、電極2、3の流路33側の表面に形成された異物を除去して図8に示すような異物除去面16を形成した。
【0065】
そして、一個の電極2と二個の電極3が互いに上下に対向するように、複数個(三個)の電極2と複数個(六個)の電極3をチャンバー1内に並べて配設することによって、対をなす電極2、3をチャンバー1内に設けた。この時、対となる(上下に対向する)電極2、3の間のギャップ距離Lは3mmとし、また、隣接する電極2、2間の距離(ピッチ)は40mmとした。尚、電極2、3はチャンバー1の上下内面から見て略上下対称となるようにチャンバー1の内側の側面に設けられたホルダーによって固定した。
【0066】
被処理物4としては、750mm×600mm×厚み0.7mmのLCD用ガラス基板(松波硝子(株)製のNo.1737)を用いた。プラズマ生成用ガスとしてはヘリウムを8リットル/min、酸素を100cc/minの割合で混合してチャンバー1に供給した。また、電極2、3を冷却する冷媒としては純水を用い、チラー(CKD(株)製のHYW1047)により冷媒を20℃に温度調整した。
【0067】
そして、電極2を高圧電極、電極3を接地電極とし、大気圧下で対をなす電極2、3の間の放電空間34に印加電力が1600Wで、100kHzの交流電界(高周波電界)を印加して誘電体バリア放電を発生させて放電空間34にプラズマを生成すると共に被処理物4を74mm/secの搬送速度で搬送して放電空間34で発生するプラズマにて大気圧下でプラズマ処理(表面の改質処理及びクリーニング処理)を行った。尚、電源43としては神鋼電機(株)製のSPG100−1000を用いた。
【0068】
被処理物4は次のように搬送されてプラズマ処理された。まず、図11に示すように、チャンバー1の搬送口扉20の前側に設けたベルトコンベアなどのコンベア18に被処理物4を載せて搬送口扉20の直前にまで搬送する。次に、被処理物4が搬送口扉20の直前に近づいたら搬送口扉20を上駆動させて搬送口6を開放し、搬送口6からチャンバー1内に被処理物4を搬入する。被処理物4がチャンバー1内に完全に搬入されると、搬送口扉20を下駆動させて搬送口6を閉塞し、チャンバー1内を密閉する。また、チャンバー1内に導入された被処理物4は搬送用ローラ17の上に載せられ、搬送用ローラ17の回転駆動により放電空間34に導入される。
【0069】
そして、チャンバー1内に導入された被処理物4は搬送用ローラ17で搬送口6と反対側に向かって搬送されながら放電空間34を移動して連続的にプラズマ処理される。あるいは、搬送用ローラ17の回転駆動を停止して被処理物4の搬送を中断することにより、所定の時間だけ被処理物4を放電空間34内に停止させて被処理物4にプラズマ処理を施すようにする。このようにして被処理物4にプラズマ処理を施した後、搬送用ローラ17を反時計回りに回転駆動させることによって被処理物4を搬送口6側に向かって搬送する。被処理物4が搬送口6に近づくと、搬送口扉20を上動駆動させてチャンバー1の搬送口6を開放し、プラズマ処理された被処理物4を搬送用ローラー17の回転駆動及びコンベア18によりチャンバー1から導出する。この後、搬送口扉20を下駆動させて搬送口6を閉塞し、チャンバー1内を密閉する。このようにして被処理物4にプラズマ処理を施すことができる。尚、被処理物4が搬送口扉20に近づいたことはミラー反射型センサ(サンクス社製のCX−281R)にて検知した。
【0070】
そして、プラズマ処理を施す前の未処理の被処理物4においては水の接触角度が45°であったが、プラズマ処理を施した後の被処理物4においては水の接触角度が7°になった。また、プラズマ処理を施した被処理物の表面における水の接触角度のバラツキはほとんどなく、平均値7°±3°の範囲内であった。また、放電自体も安定しており、火花放電、異常放電、保護層32の破損等が発生しなかった。また、約6ヶ月程度連続運転しても、保護層32の破損は見られなかった。また、冷媒に錆等の異物が混じることがなく、電極2、3の流路33の錆発生も酸洗浄により抑制することができた。
【0071】
(実施例4)
図12(a)に示す電極2、3を用いて図12(b)のようなインライン方式で被処理物4を搬送してプラズマ処理を行うプラズマ処理装置を形成した。チャンバー1としては長さ800mm×幅860mm×高さ116mmサイズのSUS304製のものを使用した。チャンバー1の接合部はOリング等のパッキンで気密性が保たれている。また、チャンバー1の対向する側壁50、51のうち一方の側壁50にはスリット状の搬入口36が貫通して設けられていると共に他方の側壁51には搬入口36と対向するスリット状の搬出口37が貫通して設けられている。また、一方の側壁50の外側には搬入側緩和室52が設けられていると共に他方の側壁51の外側には搬出側緩和室53が設けられている。搬入側緩和室52及び搬出側緩和室53は、搬入口36及び搬出口37を通じてチャンバー1からプラズマ生成用ガスが流出するのを緩和すると共に搬入口36及び搬出口37を通じてチャンバー1に空気などの外気が流入するのを緩和するために付加されているものである。
【0072】
また、搬入側緩和室52の外壁54には搬入口36と対向するスリット状の入口55が貫通して設けられていると共に搬出側緩和室53の外壁56には搬出口37と対向するスリット状の出口58が貫通して設けられている。さらに、搬入側緩和室52の外壁54の外側には空気圧等で上下駆動されるインライン型の入口扉59が設けられていると共に搬出側緩和室53の外壁56の外側には空気圧等で上下駆動されるインライン型の出口扉60が設けられている。また、チャンバー1内及び搬入側緩和室52と搬出側緩和室53には、実施例3と同様の搬送用ローラ17が設けられている。
【0073】
電極2、3は角形断面で筒状に形成されるものであって、幅32mm×高さ16mm×長さ911mm、肉厚1.5mmのSUS304の角パイプ状電極を用いた。電極2、3の角部は曲率半径が1.5mmのR面に形成されている。電極2、3は一つの電極部材10を折り曲げ加工して筒状に成形し、その端部同士を高周波溶接にて接合したもの(図5に示すもの)である。この電極2、3の接合部11を切断してみると、図18に示すように空隙が存在していなかった。また、電極2、3の表面には実施例3と同様のブラスト処理を行った後、実施例3と同様の琺瑯の保護層32を全面に亘って形成した。また、保護層32を形成した後、電極2、3の内側の流路33に酸洗浄液(日本表面化学(株)製のジャスコピクル21)を封入して180分間放置することによって、電極2、3の流路33側の表面に形成された異物を除去して図9に示すような異物除去面16を形成した。さらに、異物除去面16を形成した後、電極2、3の内側の流路33にクロメート処理液を封入して120分間放置することによってクロメート処理を行い、電極2、3の流路33側の表面に図9に示すような耐食層12を形成した。
【0074】
そして、一個の電極2と一個の電極3が互いに上下に対向するように、複数個(三個)の電極2と複数個(三個)の電極3をチャンバー1内に並べて配設することによって、対をなす電極2、3をチャンバー1内に設けた。この時、対となる(上下に対向する)電極2、3の間のギャップ距離Lは3mmとし、また、隣接する電極2、2(電極3、3)間の距離(ピッチ)は40mmとした。尚、電極2、3はチャンバー1の上下内面から見て略上下対称となるようにチャンバー1の内側の側面に設けられたホルダーによって固定した。
【0075】
被処理物4としては、実施例3と同様のLCD用ガラス基板を用いた。プラズマ生成用ガスとしてはヘリウムを8リットル/minの割合でチャンバー1に供給した。また、電極2、3を冷却する冷媒としてはイオン交換水を用い、チラー(CKD(株)製のHYW1047)により冷媒を20℃に温度調整した。
【0076】
そして、電極2を高圧電極、電極3を接地電極とし、大気圧下で対をなす電極2、3の間の放電空間34に印加電力が1600Wで、100kHzの交流電界(高周波電界)を印加して誘電体バリア放電を発生させて放電空間34にプラズマを生成すると共に被処理物4を200mm/secの搬送速度で搬送して放電空間34で発生するプラズマにて大気圧下でプラズマ処理(表面の改質処理及びクリーニング処理)を行った。尚、電源43としては神鋼電機(株)製のSPG100−1000を用いた。
【0077】
被処理物4は次のように搬送されてプラズマ処理された。まず、図13に示すように、チャンバー1の入口扉59の前側に設けたベルトコンベアなどの搬入コンベア65に被処理物4を載せて入口扉59の直前にまで搬送する。次に、被処理物4が入口扉59の直前に近づいたら入口扉59を上駆動させて入口55を開放し、入口55から搬入側緩和室52及び搬入口36を通じてチャンバー1内に被処理物4を搬入する。被処理物4がチャンバー1内に完全に搬入されると、入口扉59を下駆動させて入口55を閉塞し、チャンバー1内を密閉する。また、チャンバー1内に導入された被処理物4は搬送用ローラ17の上に載せられ、搬送用ローラ17の回転駆動により放電空間34に導入される。
【0078】
そして、チャンバー1内に導入された被処理物4は搬送用ローラ17で搬出口37に向かって搬送されながら連続的にプラズマ処理される。あるいは、搬送用ローラ17の回転駆動を停止して被処理物4の搬送を中断することにより、所定の時間だけ被処理物4を放電空間34内に停止させて被処理物4にプラズマ処理を施すようにする。このようにして被処理物4にプラズマ処理を施した後、搬送用ローラ17を回転駆動させることによって被処理物4を搬出口37側に向かって搬送する。被処理物4が搬出口37を通じてチャンバー1から搬出側緩和室53に搬出されて出口58に近づくと、出口扉60を上動駆動させて出口58を開放し、プラズマ処理された被処理物4を搬送用ローラー17の回転駆動及び搬出コンベア66によりチャンバー1から導出する。この後、出口扉60を下駆動させて出口58を閉塞し、チャンバー1内を密閉する。このようにして被処理物4にプラズマ処理を施すことができる。尚、被処理物4が搬送口扉20に近づいたことはミラー反射型センサ(サンクス社製のCX−281R)にて検知した。
【0079】
そして、プラズマ処理を施す前の未処理の被処理物4においては水の接触角度が45°であったが、プラズマ処理を施した後の被処理物4においては水の接触角度が5°になった。また、プラズマ処理を施した被処理物の表面における水の接触角度のバラツキはほとんどなく、平均値5°±4°の範囲内であった。また、放電自体も安定しており、火花放電、異常放電、保護層32の破損等が発生しなかった。また、約6ヶ月程度連続運転しても、保護層32の破損(爪飛現象や剥離など)は見られなかった。また、冷媒に錆等の異物が混じることがなく、電極2、3の流路33の錆発生も酸洗浄及びクロメート処理により抑制することができた。
【0080】
(比較例3)
電極2、3以外の構成は実施例4と同様にしてプラズマ処理装置を形成し、実施例4と同様にして被処理物4にプラズマ処理を行った。電極2、3は角形断面で筒状に形成されるものであって、幅32mm×高さ16mm×長さ911mm、肉厚1.5mmのSUS304の角パイプ状電極を用いた。電極2の角部は曲率半径が1.5mmのR面に形成されている。電極2、3は二つの断面略コ字状の電極部材10を合わせて筒状にし、その端部同士を通常の溶接にて接合したもの(電極2、3の形状は図6に示すものと同じ)である。また、電極2、3の表面にはその端部20mm以外の箇所を実施例3と同様のブラスト処理を行った後、実施例3と同様の琺瑯の保護層32を全面に亘って形成した。また、電極2、3の内側の流路33に酸洗浄やクロメート処理は行わなかった。
【0081】
このプラズマ装置を用いてプラズマ処理を行うと、運転初期におけるプラズマ処理の性能は実施例3と大差ないが、約3週間程度連続運転してプラズマ処理を行うと、電極2、3の接合部11(溶接継ぎ目部分)で発生した爪飛現象らしき原因にて保護層32が破損した。この破損個所において電極2、3を断面切断検査して観察すると、図15、図16に示すような接合部11に空隙が存在していた。また、ブラスト処理を行っていない電極2、3の端部で図17に示す保護層32の剥離が一部に見られた。さらに、冷媒に錆が若干混入しており、電極2、3を断面切断検査して観察すると、電極2、3の流路33側の表面に錆が発生していた。
【0082】
(実施例5)
図14に示すように、実施例4のプラズマ処理装置においてチャンバー1の内面全体に絶縁層70を形成した。この絶縁層70は琺瑯被膜であって、実施例3のガラス質材料と同様の下ぐすりを1回スプレー掛けした後、1回約850℃で10分間焼成してガラス質を熱融着し、この後、上記とガラス質材料と同様の上ぐすりを1回スプレー掛けした後、1回約850℃で10分間焼成してガラス質を熱融着することによって形成した。この絶縁層70は耐電圧が約2kVで厚さ約0.1mmであった。
【0083】
また、対となる(対向する)電極2、3の間隔は10mmとすると共に下側の電極3はチャンバー1の下側の内面から10mm上方に接地した。その他の構成は実施例4と同様にしてプラズマ処理を行った。
【0084】
このプラズマ処理装置では電極2、3とチャンバー1との間で異常放電が発生せず、放電空間34において安定で均一な誘電体バリア放電を確保することができた。
【0085】
(比較例4)
チャンバー1の内面に絶縁層70を形成しなかった以外は実施例5と同様にしてプラズマ処理装置を形成した。
【0086】
この装置を用いて実施例5と同様のプラズマ処理を行うと、チャンバー1の下側内面から10mmと近い距離に電極3があるために、電極3とチャンバー1の下側内面の間で一部異常放電らしき現象が発生した。
【0087】
【発明の効果】
上記のように本発明の請求項1の発明は、対をなす電極をチャンバー内に設け、チャンバー内にプラズマ生成用ガスを導入すると共に対をなす電極の間に交流またはパルス状の電界を印加することにより電極の間に大気圧近傍の圧力下で誘電体バリア放電を発生させ、この誘電体バリア放電でプラズマ生成用ガスからプラズマを生成すると共にこのプラズマで電極の間に導入された被処理物をプラズマ処理するプラズマ処理装置において、対をなす電極の少なくとも一方の表面にガラス質で熱融着により形成された保護層を設けるので、プラズマのスパッタリング作用やプラズマ生成用ガスの腐食作用から電極を保護することができ、電極の劣化を少なくすることができるものであり、また、電極から不純物が生じないようにすることができて長期間の使用であっても被処理物が不純物より汚染されないようにすることができるものである。しかも、セラッミクの溶射により形成された保護層に比べて、ピンホールを極めて少ない保護層を形成することができ、また、ガラス板を配置することにより保護層を形成する場合に比べて、薄くて電極に対する密着性が高い保護層を形成することができ、さらに、ゾルゲル法コーティングなどのガラス系ライニングで形成される保護層に比べて、電極に対する密着性や耐絶縁性の高い保護層を形成することができ、電界集中、火花放電、保護層の破壊や剥離、被処理物の熱的破損、電極の早期劣化、不均一な放電の発生を防止することができるものである。
【0088】
また、本発明の請求項の発明は、保護層を設ける電極をシームレスで筒状に形成するので、電極の内部に空隙が形成されないようにして爪飛現象による保護層の破損を防止することができ、保護層の耐久性を向上させることができるものであり、しかも任意の形状の電極を大量生産により容易に作製することができるものである。
【0089】
また、本発明の請求項の発明は、電極部材の端部を空隙なく密着させて接合することによって、保護層を設ける電極を筒状に形成するので、電極部材の接合部分すなわち電極の内部に空隙が形成されないようにして爪飛現象による保護層の破損を防止することができ、保護層の耐久性を向上させることができるものである。
【0090】
また、本発明の請求項の発明は、電極部材の端部を高周波溶接によって接合するので、容易に電極部材を空隙なく密着させて接合することができ、電極部材の接合部分に空隙が無い電極を容易に作製することができるものである。
【0091】
また、本発明の請求項の発明は、電極の表面を粗面化処理した後、電極の表面に熱融着によりガラス質の保護層を形成するので、電極と保護層の密着性を向上させることができ、電極からの保護層の剥離を防止することができるものである。
【0092】
また、本発明の請求項の発明は、ガラス質材料をスプレー掛けあるいは浸け掛けし、400〜1000℃でガラス質材料を熱融着して保護層を形成するので、電極との密着性が高く極薄でピンホールの少ない保護層を形成することができ、電界集中、火花放電、保護層の破壊や剥離、被処理物の熱的破損、不均一な放電の発生を防止することができるものである。
【0093】
また、本発明の請求項の発明は、ガラス質材料のスプレー掛けあるいは浸け掛けと、ガラス質材料の熱融着とを交互に複数回行って保護層を形成するので、電極との密着性が高くピンホールの極めて少ない保護層を形成することができ、電界集中、火花放電、保護層の破壊や剥離、被処理物の熱的破損、不均一な放電の発生を確実に防止することができるものである。
【0094】
また、本発明の請求項の発明は、プラズマ生成用ガスが不活性ガスあるいは不活性ガスと反応ガスの混合気体であるので、安定した誘電体バリア放電を発生させることができ、均質なプラズマを安定して生成することができるものである。
【0095】
また、本発明の請求項の発明は、対をなす電極の少なくとも一方を冷媒で冷却するので、電極の温度上昇をより抑えることができ、プラズマの温度(ガス温度)が高くならないようにして被処理物の熱的損傷を少なくすることができるものである。また、電極の間に形成される放電空間の局所的な加熱を防ぐことができ、より均質な誘電体バリア放電を生成してストリーマー放電の生成を抑えて被処理物のストリーマー放電による損傷をより少なくすることができるものである。さらに、電極の熱的劣化を少なくすることができるものである。
【0096】
また、本発明の請求項の発明は、冷媒がイオン交換水であるので、冷媒中に不純物が含まれることがなく、電極が冷媒で腐食されにくくなるものである。
【0097】
また、本発明の請求項の発明は、筒状に形成される電極の内側を冷媒の流路として形成するので、冷媒による電極の冷却効率を高くすることができ、電極及びプラズマの温度上昇を効率よく抑えることができるものである。
【0098】
また、本発明の請求項10の発明は、保護層の形成の際に電極の流路側の表面に発生する異物を除去するので、異物による電極の腐食の促進を防止することができ、電極の耐久性を向上させることができるものであり、また、安定した誘電体バリア放電を確保することができるものである。
【0099】
また、本発明の請求項11の発明は、電極の流路側の表面に耐食層を形成するので、冷媒の流通による電極の腐食の発生を防止したり遅らせたりすることができ、電極の耐久性を向上させることができるものであり、また、安定した誘電体バリア放電を確保することができるものである。
【0100】
また、本発明の請求項12の発明は、冷媒が不凍性及び絶縁性を有するので、冷媒が凍結することなく、また、電極からの漏電を防止することができ、電極を確実に冷却することができると共に安定した誘電体バリア放電を得ることができるものである。
【0101】
また、本発明の請求項13の発明は、保護層が厚み0.1〜2mmであるので、保護層にクラックや剥離が生じにくくなって電極を充分に保護することができるものであり、また、均一な誘電体バリア放電を安定して発生させることができるものである。
【0102】
また、本発明の請求項14の発明は、保護層が耐電圧1〜30kVであるので、電極間への交流電界の印加による保護層の破損を防止することができ、均一な誘電体バリア放電を安定して発生させることができるものである。
【0103】
また、本発明の請求項15の発明は、対をなす電極の間に印加する交流電界の周波数が1kHz〜200MHzであるので、誘電体バリア放電を安定化させることができると共にプラズマの温度上昇を抑えることができ、電極の寿命が短くならないようにして均質で安定したプラズマ処理を効率よく行うことができるものである。
【0104】
また、本発明の請求項16の発明は、対をなす電極の間のギャップが1〜20mmであるので、誘電体バリア放電を確実に安定して発生させることができ、効率よくプラズマを生成することができるものである。
【0105】
また、本発明の請求項17の発明は、金属製のチャンバーの内面に絶縁層を形成するので、電極とチャンバーの内面との間で放電が起こらないようにすることができると共に入力に対するパワーロスを防いで電極の間の放電効率を高めることができ、より安定で均一な誘電体バリア放電が可能となるものである。
【0106】
本発明の請求項18の発明は、請求項1乃至17のいずれかに記載のプラズマ処理装置でプラズマ処理を行うので、電界集中、火花放電、保護層の破壊や剥離、被処理物の熱的破損、不均一な放電の発生を防止して、均質なプラズマを安定して生成することができ、プラズマ処理を効率よく行うことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す概略図である。
【図2】同上の電極の一例を示す断面図である。
【図3】同上の(a)(b)は電極を示す平面図である。
【図4】(a)(b)は同上の電極の他例を示す断面図である。
【図5】(a)(b)は同上の電極の他例を示す断面図である。
【図6】(a)(b)は同上の電極の他例を示す断面図である。
【図7】(a)(b)は同上の電極の他例を示す断面図である。
【図8】同上の電極の他例を示す断面図である。
【図9】同上の電極の他例を示す断面図である。
【図10】(a)は同上の電極の他例を示す断面図、(b)は同上の他の実施の形態の一例を示す概略図である。
【図11】同上の他の実施の形態の一例を示す概略図である。
【図12】(a)は同上の電極の他例を示す断面図、(b)は同上の他の実施の形態の一例を示す概略図である。
【図13】同上の他の実施の形態の一例を示す概略図である。
【図14】同上の他の実施の形態の一例を示す概略図である。
【図15】従来の電極を示す断面図である。
【図16】従来の電極の断面を示す写真である。
【図17】従来の電極に設けた保護層の破損を示す写真である。
【図18】本発明の電極の断面を示す写真である。
【符号の説明】
1 チャンバー
2 電極
3 電極
4 被処理物
10 電極部材
12 耐食層
32 保護層
33 流路

Claims (18)

  1. 対をなす電極をチャンバー内に設け、チャンバー内にプラズマ生成用ガスを導入すると共に対をなす電極の間に交流またはパルス状の電界を印加することにより電極の間に大気圧近傍の圧力下で誘電体バリア放電を発生させ、この誘電体バリア放電でプラズマ生成用ガスからプラズマを生成すると共にこのプラズマで電極の間に導入された被処理物をプラズマ処理するプラズマ処理装置において、対をなす電極の少なくとも一方の表面にガラス質で熱融着により形成された保護層を設け、保護層を設ける電極をシームレスで筒状に形成して成ることを特徴とするプラズマ処理装置。
  2. 対をなす電極をチャンバー内に設け、チャンバー内にプラズマ生成用ガスを導入すると共に対をなす電極の間に交流またはパルス状の電界を印加することにより電極の間に大気圧近傍の圧力下で誘電体バリア放電を発生させ、この誘電体バリア放電でプラズマ生成用ガスからプラズマを生成すると共にこのプラズマで電極の間に導入された被処理物をプラズマ処理するプラズマ処理装置において、対をなす電極の少なくとも一方の表面にガラス質で熱融着により形成された保護層を設け、高周波溶接により電極部材の端部を空隙なく密着させて接合することによって、保護層を設ける電極を筒状に形成して成ることを特徴とするプラズマ処理装置。
  3. 電極の表面を粗面化処理した後、電極の表面に熱融着によりガラス質の保護層を形成して成ることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置。
  4. ガラス質材料をスプレー掛けあるいは浸け掛けし、400〜1000℃でガラス質材料を熱融着して保護層を形成して成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
  5. ガラス質材料のスプレー掛けあるいは浸け掛けと、ガラス質材料の熱融着とを交互に複数回行って保護層を形成して成ることを特徴とする請求項4に記載のプラズマ処理装置。
  6. プラズマ生成用ガスが不活性ガスあるいは不活性ガスと反応ガスの混合気体であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
  7. 対をなす電極の少なくとも一方を冷媒で冷却することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
  8. 冷媒がイオン交換水であることを特徴とする請求項7に記載のプラズマ処理装置。
  9. 筒状に形成される電極の内側を冷媒の流路として形成して成ることを特徴とする請求項7又は8に記載のプラズマ処理装置。
  10. 保護層の形成の際に電極の流路側の表面に発生する異物を除去することを特徴とする請求項9に記載のプラズマ処理装置。
  11. 電極の流路側の表面に耐食層を形成して成ることを特徴とする請求項9又は10に記載のプラズマ処理装置。
  12. 冷媒が不凍性及び絶縁性を有することを特徴とする請求項7乃至11のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
  13. 保護層が厚み0.1〜2mmであることを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
  14. 保護層が耐電圧1〜30kVであることを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
  15. 対をなす電極の間に印加する交流電界の周波数が1kHz〜200MHzであることを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
  16. 対をなす電極の間のギャップが1〜20mmであることを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
  17. 金属製のチャンバーの内面に絶縁層を形成して成ることを特徴とする請求項1乃至16のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
  18. 請求項1乃至17のいずれかに記載のプラズマ処理装置でプラズマ処理を行うことを特徴とするプラズマ処理方法
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