JP4046224B2 - 気体励起用の電極 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、気体励起用の電極に関する。本発明の気体励起用電極によれば、耐用期間を長期化することができる。
【0002】
【従来の技術】
交流高圧放電条件下に気体を誘導して気体分子を励起し、低温プラズマを発生させる気体励起装置としては種々の装置が知られており、例えば、特開平9−199261号公報(特許文献1)や米国特許第5,483,117号明細書(特許文献2)にも、気体励起装置が記載されている。こうした従来公知の気体励起装置の代表的な態様を図1に示す。図1は、気体励起装置50のハウジング51の側壁の一部を切り欠いて示す模式的斜視図である。前記気体励起装置50は、被処理気体Gの流入用開口部52と処理済み気体Cの排出用開口部53とを備えた大略直方体状のハウジング51を有し、前記ハウジング51の内部には、多数の保護電極54を備えている。前記の保護電極54は、図2の模式的断面図に示すとおり、芯電極55と、その芯電極55の周囲を包囲する円筒状鞘体56とを含み、前記の円筒状鞘体56は、絶縁体材料からなる。更に、前記の保護電極54は、2系列の電極群54A,54Bに分かれており、それぞれ電線57A,57Bに接続し、電線57A,57Bは交流電源58と接続している。また、一方の系列の電極群54Bに接続する電線57Bは、アースされている。なお、図2に示すとおり、ハウジング51内部において最も外側に配置され、ハウジング51の内壁と対向する各保護電極54Bは、それぞれ、ハウジング51の内壁との間で放電が発生しないように、アースされる電線57Bに接続するのが好ましい。原理的にはハウジング51それ自体をアースする必要はないが、安全上の観点からハウジング51それ自体をアースするのが好ましい。
【0003】
更に、前記の気体励起装置によって発生する低温非平衡プラズマを利用する脱臭装置や空気浄化装置が知られている。例えば、特開2001−293079号公報(特許文献3)には、低温プラズマを発生する高圧放電部と、その下流に配置され、酸化促進触媒が充填されている触媒部とを有する低温プラズマ脱臭装置が記載されている。前記高圧放電部では、被処理気体に対して高圧放電により解離エネルギーを与えることによりラジカルを発生させる。すなわち、放電により気体中に放出された電子が、臭気ガス中の気体分子に射突し、分子を活性化させる。その活性分子の一部は解離してラジカルとなり、臭気ガス中の悪臭物質を酸化分解したり、あるいは、オゾンを生成させるものと考えられる。ラジカルにより生成された前記オゾンも、悪臭物質を酸化させ、悪臭物質の処理に貢献するものと考えられる。また、放電そのものの有するエネルギーによっても、悪臭物質の酸化分解が行われる。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−199261号公報
【特許文献2】
米国特許第5,483,117号明細書
【特許文献3】
特開2001−293079号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
図1に示すタイプの気体励起装置においては、従来から絶縁体鞘体として比較的廉価なガラス管が広く使用されていた。しかしながら、従来のガラス管では、連続運転を約4ヶ月程度継続すると、ガラス管の破損発生率が急激に上昇していた。従って、電極交換作業が必要となり、ランニングコストが高価になると共に、気体励起装置もその都度停止させなければならないという欠点があった。
従って、本発明の課題は、図1に示すタイプの気体励起用電極の寿命を延長させ、コスト低減を図ることにある。特には、比較的廉価なガラス製鞘体を有する電極の寿命を延長させることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記の課題は、本発明により、気体励起用の少なくとも一対の電極の組み合わせとして、
(A)円柱状芯電極と、その円柱状芯電極を取り囲む円筒状ガラス製鞘体とを含み、そのガラス製鞘体の外側表面が被処理気体と接触する保護電極同士の組み合わせ、又は
(B)前記の保護電極と、被処理気体と直接に接触する露出電極との組み合わせ
で用いる気体励起用の保護電極であって、
前記保護電極の横断面の円の面積に対して、前記円筒状ガラス製鞘体の断面積が0%以上であり、前記保護電極の横断面の円の面積に対して、前記円柱状芯電極と前記円筒状ガラス製鞘体との空隙部の占める断面積が2%以上であり、前記空隙部に空気を充填することを特徴とする、前記の保護電極によって解決することができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明による気体励起用電極は、気体励起装置に装着して使用することができる。一般的な気体励起装置は、被処理気体の流入用開口部と処理済み気体の排出用開口部とを有するハウジング内に、交流電源と接続する少なくとも一対の電極を備える。そして、前記の一対の電極の組み合わせは、例えば、
(A)芯電極と、その芯電極の周囲を包囲する絶縁体鞘体とを含み、その絶縁体鞘体の外側表面が被処理気体と接触する保護電極同士の組み合わせ(すなわち、保護電極同士の組み合わせ)であるか、又は
(B)(1)前記の保護電極と、(2)被処理気体と直接に接触する露出電極との組み合わせ(すなわち、保護電極と露出電極との組み合わせ)である。なお、前記組み合わせ(B)においては、前記露出電極と前記ハウジングとが共にアースされている。
本発明による気体励起用電極は、前記の気体励起装置において、保護電極として使用される。
【0008】
本明細書において、前記組み合わせ(A)の電極を有する装置を、以下に「保護電極型装置」と称し、前記組み合わせ(B)の電極を有する装置を、以下に「露出電極型装置」と称することにする。前記の保護電極型装置は、従来から公知であるが、前記の露出電極型装置は、従来は知られていない(特願2002−341158号明細書参照)。前記の「保護電極型装置」は、例えば、特開平9−199261号公報(前記特許文献1)や米国特許第5,483,117号明細書(前記特許文献2)に記載されている気体の励起装置と同様の装置である。
【0009】
最初に、前記の保護電極型装置の代表的態様について、添付図面に沿って説明する。図1は、保護電極型装置50のハウジング51の側壁の一部を切り欠いて示す模式的斜視図である。前記保護電極型装置50は、大略直方体状のハウジング51の上面に相当する部分に被処理汚染気体(例えば大気)Gの流入用開口部52を備え、前記ハウジング51の底面に相当する部分に処理済み気体(例えば大気)Cの排出用開口部53を備えている。また、高圧放電処理が実施される前記ハウジング51の内部には、多数の保護電極54を備えている。前記の保護電極54は、図2の模式的断面図に示すとおり、円柱状芯電極55と、その芯電極55の周囲を包囲する円筒状鞘体56とを含む。多数の保護電極54は、それぞれ相互に間隔を隔てて平行に、しかも被処理汚染気体の流れ方向に対して垂直方向に配置されており、それら各電極の両端部は、それぞれハウジング51の支持壁51A,51Bで支持されている。
【0010】
複数の保護電極54は2系統に分割されており、それぞれがグループ化されて電線57A,57Bに一括して接続し、電線57A,57Bは交流電源58と接続している。また、一方の系列の保護電極54Bに接続する電線57Bは、アースされている。なお、図2に示すとおり、ハウジング51内部において最も外側に配置され、ハウジング51の内壁と対向する各保護電極54Bは、それぞれ、ハウジング51の内壁との間で放電が発生しないように、アースされる電線57Bに接続するのが好ましい。原理的にはハウジング51それ自体をアースする必要はないが、安全上の観点からハウジング51それ自体をアースするのが好ましい。
【0011】
こうした保護電極型装置50の流入用開口部52から、例えば被処理気体(例えば大気)Gを流入し、2系統の電極群54A,54Bに交流電源58によって高電圧を印加すると、2系統の電極群54A,54B間で放電が起こり、気体分子が励起状態となってラジカルが発生する。これらのラジカルにより、被処理気体中の悪臭物質が酸化分解されたり、あるいは、オゾンを生成させるので、被処理気体は酸化処理される。また、こうして発生したラジカル及びオゾンと共に被処理気体を排出用開口部53から排出し、酸化促進触媒が充填されている触媒部(図示せず)に送付して、ラジカル及びオゾンと被処理気体との反応を更に進行させ、気体の処理を続行することができる。更に、2系統の電極群54A,54Bに交流電源58によって高電圧を印加すると、2系統の電極群54A,54B間で放電が起こり、各電極の表面、すなわち、それぞれの円筒状鞘体56の表面に被処理気体(例えば大気)中の浮遊粒子、特には浮遊粒子状物質(SPM)を付着させることができる。
【0012】
前記の保護電極型装置内で、複数の保護電極群の配置は、ハウジング内部で放電がほぼ均等に発生し、各電極間を通過する被処理気体がほぼ均等に処理されるように配置されている。しかしながら、複数の保護電極群を、相互に間隔を隔てて平行に、しかも被処理気体の流れ方向に対して垂直方向に配置すると共に、一方の電極系列54Aの1つの保護電極が、もう一方の電極系列54Bの4つの保護電極により包囲され、逆に、もう一方の電極系列54Bの1つの保護電極が、一方の電極系列54Aの4つの保護電極により包囲される状態で配置するのが好ましい。
【0013】
次に、露出電極型装置を添付図面に沿って説明する。露出電極型装置は、前記図1及び図2に示すタイプの従来型装置を改良した装置である。最初に、露出電極型装置と前記保護電極型装置との基本構造の差異を図3及び図4に沿って説明する。
図3は、前記図1及び図2に示す保護電極型装置の基本的構造を示す模式的断面図である。保護電極型装置50は、前記のとおり、被処理汚染気体Gの流入用開口部52と処理済み気体Cの排出用開口部53とを備えたハウジング51を有し、前記ハウジング51の内部には、保護電極54A,54B,54Bを備えている。前記の保護電極54A,54B,54Bは、それぞれ芯電極55と、その芯電極55の周囲を包囲する鞘体56とを含む。前記電極54Aは電線57Aに接続し、前記電極54B,54Bはそれぞれ電線57Bに接続し、電線57A,57Bは交流電源58と接続している。また、電極54B,54Bは、ハウジング51内の外側に配置され、ハウジング51の内壁と対向するので、それらと接続する電線57Bは、アースされている。
【0014】
一方、図4は、露出電極型装置の基本的構造を示す模式的断面図である。露出電極型装置10は、被処理汚染気体Gの流入用開口部2と処理済み気体Cの排出用開口部3とを備えたハウジング1を有し、前記ハウジング1の内部には、保護電極4Aと、露出電極4B,4Bとを備えている。保護電極型装置50は、前記のとおり、保護電極54A,54B,54Bを備えているのに対し、露出電極型装置10は、保護電極54B,54Bの代わりに、露出電極4B,4Bを備えている点で異なる。前記の保護電極4Aは、保護電極型装置50と同様に、芯電極5と、その芯電極5の周囲を包囲する鞘体6とを含む。また、保護電極4Aは電線7Aと接続し、露出電極4B,4Bは、それぞれ電線7Bに接続し、電線7A,7Bは交流電源8と接続している。また、露出電極4B,4Bに接続する電線7Bは、アースされている。更に、露出電極型装置10では、ハウジング1もアースする必要があり、この点でも保護電極型装置50と相違する。なお、露出電極型装置10においては、保護電極4A側に高電圧を印可するのが好ましいので、保護電極4Aをハウジング1内部において最も外側に配置するのは好ましくない。すなわち、図4に示すとおり、露出電極4B,4Bをハウジング1内部において最も外側に配置して、ハウジング1の内壁と対向させるのが好ましい。
【0015】
図3に示す保護電極型装置では、保護電極54A内の芯電極55と両側の各保護電極54B内の芯電極55との間で放電が起こる。この放電では、1対の芯電極55,55の間に、2つの鞘体56の絶縁体層の2層が介在する。一方、図4に示す露出電極型装置10では、保護電極4A内の芯電極5と両側の各露出電極4Bとの間で放電が起こる。この放電では、1つの芯電極5と露出電極4Bとの間には、1つの鞘体6の絶縁体層の1層のみが介在するだけであり、励起能力が向上するので、ラジカル発生量が増大し、オゾンの生成量も増大する。なお、図4に示す露出電極型装置10では、ハウジング1と露出電極4B,4Bとがいずれもアースされているので、ハウジング1と露出電極4B,4Bとの間で放電が発生しない。
【0016】
図4に示すとおり、露出電極型装置10においては、図1及び図2に示す保護電極型装置50における一対の保護電極54A,54Bの代わりに、保護電極4Aと露出電極4Bとの組み合わせを用いる点が異なるだけある。そこで、前記の露出電極型装置の或る態様を、図5及び図6に沿って説明する。すなわち、図5は、露出電極型装置10のハウジング1の側壁の一部を切り欠いて示す模式的斜視図であり、図6はその模式的断面図である。
【0017】
図5及び図6に示すように、露出電極型装置10は、保護電極型装置50と同様に、大略直方体状のハウジング1の上面に相当する部分に被処理気体(例えば大気)Gの流入用開口部2を備え、前記ハウジング1の底面に相当する部分に処理済み気体(例えば大気)Cの排出用開口部3を備えている。また、高圧放電処理が実施される前記ハウジング1の内部には、複数の円筒状保護電極4A及び複数の円筒状露出電極4Bが、それぞれ相互に間隔を隔てて平行に、しかも被処理汚染気体(例えば大気)の流れ方向に対して垂直方向に配置されており、それら各電極の両端部は、それぞれハウジング1の支持壁1A,1Bで支持されている。
【0018】
一方、円筒状露出電極4Bは、前記保護電極4の円筒状鞘体6とほぼ同様の寸法を有し、電極表面が露出しているので、被処理気体(例えば大気)と直接に接触する。複数の保護電極4Aと複数の露出電極4Bとは、それぞれがグループ化されて電線7A,7Bに一括して接続し、電線7A,7Bは交流電源8と接続している。また、ハウジング1内の最も外側には露出電極4Bが配置され、複数の露出電極4Bに接続する電線7Bは、アースされている。更に、ハウジング1もアースする。
【0019】
こうした露出電極型装置10の流入用開口部2から被処理汚染気体(例えば大気)Gを流入し、2系統の電極群4A,4Bに交流電源8によって高電圧を印加すると、2系統の電極群4A,4B間で放電が起こり、気体分子が励起状態となってラジカルが発生する。これらのラジカルにより、被処理気体中の悪臭物質が酸化分解されたり、あるいは、オゾンを生成させるので、被処理気体は酸化処理される。また、こうして発生したラジカル及びオゾンと共に被処理気体を排出用開口部3から排出し、酸化促進触媒が充填されている触媒部(図示せず)に送付して、ラジカル及びオゾンと被処理気体との反応を更に進行させ、気体の処理を続行することができる。更に、2系統の電極群4A,4Bに交流電源8によって高電圧を印加すると、2系統の電極群4A,4B間で放電が起こり、露出電極4Bの表面、及び保護電極4Aの表面、すなわち、円筒状鞘体6の表面に気体(例えば大気)中の浮遊粒子、特には浮遊粒子状物質(SPM)を付着させることができる。
【0020】
前記の露出電極型装置で用いる露出電極は、任意の導電性材料から構成することができ、例えば、アルミニウム若しくはその合金、銅、炭素質材料、鉄若しくはその合金、あるいはタングステンを挙げることができる。なお、前記の露出電極は、被処理気体(例えば汚染大気)と直接に接触するので、耐蝕性を有し、清浄操作や取替え操作などのメンテナンスが容易な金属、例えば、ステンレススチール(例えば、SUS)を用いるのが好ましい。
また、前記の露出電極の形状も特に限定されるものではないが、棒状体(例えば、筒状体若しくは柱状体、特には、円筒状体若しくは円柱状体)、あるいは、導線を撚って製造した撚り線型電極であることもできる。
【0021】
前記の露出電極型装置内で、複数の露出電極群と複数の保護電極群との配置は、それぞれハウジング内部で放電がほぼ均等に発生し、各電極間を通過する被処理汚染大気がほぼ均等に処理されるように配置されている。しかしながら、複数の露出電極群と複数の保護電極群とを、相互に間隔を隔てて平行に、しかも被処理汚染大気の流れ方向に対して垂直方向に配置すると共に、1つの露出電極が4つの保護電極により包囲され、しかも1つの保護電極が4つの露出電極により包囲される状態で配置するのが好ましい。
【0022】
本発明による気体励起用電極は、前記の通り、例えば、前記の保護電極型や露出電極型の気体励起装置において、保護電極として使用することができる。
本発明による気体励起用電極の構造を、模式的に図7(断面図)に示す。すなわち、本発明による気体励起用電極40は、円柱状芯電極41と、その円柱状芯電極41を取り囲む円筒状絶縁体鞘体42とを含む。また、円柱状芯電極41と円筒状絶縁体鞘体42との間には、空隙部43を含むことがある。
【0023】
本発明による気体励起用電極は、横断面の円の面積に対して、前記円筒状絶縁体鞘体が占める断面積が70%以上である。前記円筒状絶縁体鞘体が占める断面積が70%未満になると、長期間の連続的使用に対する耐用期間が短くなる。前記円筒状絶縁体鞘体が占める断面積は、好ましくは75%以上であり、より好ましくは80%以上である。
【0024】
前記円筒状絶縁体鞘体は、絶縁体製である限り、特に限定されないが、円筒状鞘体の外側表面は、被処理気体(例えば、汚染大気)と直接に接触する。従って、耐蝕性を有し、清浄操作や取替え操作などのメンテナンスが容易な材料、例えば、合成樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)、又はセラミックスを用いるのが好ましく、ガラス製であることが、強度及びコスト面からはより好ましい。ガラスとしては、任意のガラスを用いることができるが、例えば、ホウ珪酸ガラスを用いると、耐熱性と強度の点で好ましい。
【0025】
前記円柱状芯電極は、任意の導電性材料から構成することができ、例えば、アルミニウム若しくはその合金、銅、炭素質材料、鉄若しくはその合金、あるいはタングステンを挙げることができる。なお、前記の芯電極は、被処理汚染気体と直接に接触しないので、特に耐蝕性を有する必要はない。また、前記の芯電極の形状も特に限定されるものではないが、棒状体(例えば、筒状体若しくは柱状体、特には、円筒状体若しくは円柱状体)、あるいは、導線を撚って製造した撚り線型電極であることもできる。
【0026】
芯電極は、放電時に一般的には膨張するので、芯電極の表面と円筒状鞘体の内側表面との間には、空隙部を設けて、少なくとも0.05mmの間隔を設けるのが好ましい。その空隙部には空気又は適当な不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガス)、あるいは絶縁性液体(例えば、フッ素系不活性液体)を充填することができ、あるいは減圧若しくは真空状態にすることもできる。後述するように、空気を充填するのが好ましい。なお、芯電極の表面と円筒状鞘体の内側表面との間が広くなり過ぎ、例えば、1.0mm以上になると、芯電極の表面と円筒状鞘体の内側表面との間で放電が発生する場合があるので好ましくない。
【0027】
本発明による気体励起用電極において、電極の寸法も特に限定されるものではないが、一般的に広く使用されている電極では、電極外径が約3mm〜10mmである。また、電極の長さも特に限定されないが、一般的に広く使用されている電極では、長さが約50mm〜1000mmである。
【0028】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【電極破壊試験】
電極破壊試験は、実際の気体励起装置よりも厳しい条件下で放電を実施し、短時間で耐久性を評価した。具体的には、図8に示すように、円柱状芯電極41Aと円筒状絶縁体鞘体42Aとを含む試験対象保護電極40Aをカッター60の刃61の上に直角に載置し、保護電極40Aの一方の端部に設けた端子45を交流電源48と接続し、更に、その交流電源48から前記カッター60の端部62と接続させた。前記交流電源48と前記カッター60との間でアースした。なお、円柱状芯電極41Aと円筒状絶縁体鞘体42Aと間の空隙部は図示していない。
【0029】
【ガラス厚の評価例】
(1)アルミニウム製芯電極(直径=1.5mm)とその芯電極を包囲するガラス製円筒状保護鞘体(外径=4mm;ガラス厚さ=1.2mm)とから電極10本を製造した。前記電極の断面積に占める芯電極の面積は14%であり、円筒状保護鞘体の面積は84%であり、空隙部の占める面積は2%であった。なお、前記空隙部には、空気を充填した。これらの電極について、図8に示す方法で、試験電圧18.1kV(一定)を印加して、電極破壊試験を実施し、ガラス製円筒状保護鞘体が破壊するまでの時間を測定した。
【0030】
(2)アルミニウム製芯電極(直径=2mm)とその芯電極を包囲するガラス製円筒状保護鞘体(外径=4mm;ガラス厚さ=0.8mm)とから電極10本を製造した。前記電極の断面積に占める芯電極の面積は25%であり、円筒状保護鞘体の面積は64%であり、空隙部の占める面積は11%であった。なお、前記空隙部には、空気を充填した。これらの電極について、前項(1)と同様に、図8に示す方法で、試験電圧18.1kV(一定)を印加して、電極破壊試験を実施し、ガラス製円筒状保護鞘体が破壊するまでの時間を測定した。
【0031】
(3)結果を以下の表1に示す。
【表1】
Figure 0004046224
【0032】
【充填物の評価例】
(1)アルミニウム製芯電極(直径=1.5mm)とその芯電極を包囲するガラス製円筒状保護鞘体(外径=4mm;ガラス厚さ=1.2mm)とから電極を製造した。前記電極の断面積に占める芯電極の面積は14%であり、円筒状保護鞘体の面積は84%であり、空隙部の占める面積は2%であった。なお、前記空隙部には、空気又はフッ素系不活性液体(フロリナート;3M社,米国)を充填した。
また、アルミニウム製芯電極(直径=2mm)とその芯電極を包囲するガラス製円筒状保護鞘体(外径=4mm;ガラス厚さ=0.8mm)とから電極を製造した。前記電極の断面積に占める芯電極の面積は25%であり、円筒状保護鞘体の面積は64%であり、空隙部の占める面積は11%であった。なお、前記空隙部には、空気又はフッ素系不活性液体(フロリナート;3M社,米国)を充填した。
これらの各電極について、図8に示す方法で、試験電圧18kV(一定)又は18.5kV(一定)を印加し、電極破壊試験を実施した。
【0033】
(2)結果を以下の表2に示す。
【表2】
Figure 0004046224
試験の結果、高電圧側電極の保護鞘体のガラス面積比が84%である電極は、64%の電極よりもはるかに寿命が長いことがわかった。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、気体励起用電極の寿命を延長させ、コスト低減を達成することができる。特には、比較的廉価なガラス製鞘体を有する電極の寿命を延長させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電極が使用可能な保護電極型気体励起装置のハウジングの側壁の一部を切り欠いて示す模式的斜視図である。
【図2】図1の保護電極型気体励起装置の模式的断面図である。
【図3】保護電極型気体励起装置の基本的構造を示す模式的断面図である。
【図4】本発明装置の基本的構造を示す模式的断面図である。
【図5】本発明の電極が使用可能な露出電極型気体励起装置のハウジングの側壁の一部を切り欠いて示す模式的斜視図である。
【図6】図5の露出電極気体励起装置の模式的断面図である。
【図7】本発明による気体励起用電極の構造を模式的に示す断面図である。
【図8】気体励起用電極の破壊試験の実施方法を模式的に示す斜視図である。
【符号の説明】
1・・・ハウジング;1A,1B・・・支持壁;2・・・流入用開口部;
3・・・排出用開口部;4A・・・保護電極;
4A−10,4A−20・・・保護電極列;
4a−11,4a−12・・・保護電極群;
4a−21,4a−22・・・保護電極群;
4B・・・露出電極;5・・・芯電極;6・・・円筒状鞘体;
7A,7B・・・電線;8,48・・・交流電源;10・・・気体励起装置;
40・・・気体励起用電極;40A・・・試験対象保護電極;
41,41A・・・円柱状芯電極;42,42A・・・円筒状絶縁体鞘体;
43・・・空隙部;45・・・端子;50・・・気体励起装置;
51・・・ハウジング;52・・・流入用開口部;
53・・・排出用開口部;54(54A,54B)・・・保護電極;
55・・・芯電極;56・・・円筒状鞘体;57A,57B・・・電線;
58・・・交流電源;60・・・カッター;61・・・カッターの刃;
62・・・カッターの端部;
G・・・被処理気体;C・・・処理済み気体。

Claims (2)

  1. 気体励起用の少なくとも一対の電極の組み合わせとして、
    (A)円柱状芯電極と、その円柱状芯電極を取り囲む円筒状ガラス製鞘体とを含み、そのガラス製鞘体の外側表面が被処理気体と接触する保護電極同士の組み合わせ、又は
    (B)前記の保護電極と、被処理気体と直接に接触する露出電極との組み合わせ
    で用いる気体励起用の保護電極であって、
    前記保護電極の横断面の円の面積に対して、前記円筒状ガラス製鞘体の断面積が0%以上であり、前記保護電極の横断面の円の面積に対して、前記円柱状芯電極と前記円筒状ガラス製鞘体との空隙部の占める断面積が2%以上であり、前記空隙部に空気を充填することを特徴とする、前記の保護電極。
  2. 一対の電極の組み合わせが、保護電極と露出電極との組み合わせである、請求項1に記載の保護電極。
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