JP3981292B2 - 負荷ストレス低減繊維材料 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、負荷ストレス低減繊維材料に関し、より詳しくは負荷ストレスに起因する皮膚機能低下障害等を予防又は改善する負荷ストレス低減繊維材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現代はストレス過負荷の時代であり、現代に暮らす者は多かれ少なかれ、負荷されたストレス(以下「負荷ストレス」という)の影響のもとに暮らしている。この様な負荷ストレスの人体に及ぼす影響は近年になって詳細に調査されるようになり、予想外に大きな悪影響を及ぼすことが明確になりつつある。例えば、近年アトピー性皮膚炎の人が急増し、或いは、化粧品使用者の中で通常の化粧料を使用することによる肌トラブルを起こす敏感肌の人が急増した要因の一つに負荷ストレスの影響があることが知られている。また、下着や衣服に供されている繊維には風合を柔軟にするために柔軟効果を有する界面活性剤等が使用されているが、その衣服の着用により肌荒れが誘発されることも知られている。
【0003】
そして、従来は、このような皮膚機能低下障害等による肌トラブルを改善するためには、肌荒れ防止効果を有する物質を含有する軟膏やクリーム剤を患部に塗布する方法が一般的であった。しかしながら、このような従来の手法では、皮膚機能低下障害等を長期にわたって持続的に改善することは困難であり、更に皮膚機能低下障害等を事前に効果的に予防することも困難であった。
【0004】
一方、ウルソール酸(Ursolic acid)やウルソール酸誘導体は、例えば、特開平5−286835号公報においては養毛化粧料として有用であること、特開昭62−93215号公報においてはレダクターゼ活性の阻害による養毛効果を有することが開示されている。また、特開平2−17121号公報においては皮膚上皮細胞のガン化を予防するための外用剤として、特開昭58−57307号公報においては皮膚の黒化を防止しかつ変色、変臭、分解失活等の経時変化を起こさない美白化粧料としてウルソール酸が有用であることが開示されている。さらに、特開平1−290619号公報においてはウルソール酸が抗う蝕性効果を示すこと、特開昭61−36213号公報においてはストレプトコッカスミュウタンス(S.Mutans)に対し特異的抗菌作用を示すことが開示されている。
【0005】
また、イソフラボンやイソフラボン誘導体は、一般に、エストロジェン作用、抗酸化作用、抗菌作用を有することが知られており、例えば、特許第2557449号において消臭剤として有用であることが開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、負荷ストレスに起因する皮膚機能低下障害等を長期にわたって持続的に改善(治癒、回復)し、また事前に効果的に予防することが可能な負荷ストレス低減作用を有する材料を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、殺菌消毒剤や界面活性剤等による皮膚障害の客観的な評価方法として経表皮性水分喪失(Trans epidermal water loss、以下「TEWL」と略す)値の変化量を測定することにより被検物質の皮膚保護性を評価する方法を確立し(特許第3051119号)、そしてこの評価方法を用いて多種類の植物抽出物、同抽出物中の化合物並びにその化学的に修飾された誘導体の中からスクリーニングした。その結果、ウルソール酸、ウルソール酸誘導体、イソフラボン及びイソフラボン誘導体が経表皮性水分喪失(TEWL)を抑制して皮膚の水分含有量保持に有効であり、それらを繊維材料に固着せしめることにより負荷ストレスに起因する皮膚機能低下障害等を長期にわたって持続的に改善し、また事前に効果的に予防することが可能な負荷ストレス低減作用を有する材料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の負荷ストレス低減繊維材料は、ウルソール酸、及びウルソール酸ベンジルから選ばれる少なくとも1種の化合物を繊維材料に固着せしめてなることを特徴とするものであり、係る本発明の負荷ストレス低減繊維材料は負荷ストレスに起因する皮膚機能低下障害を予防又は改善するのに好適なものである。
【0009】
前記本発明に係るウルソール酸及びウルソール酸誘導体としては、下記一般式(I):
【0010】
【化3】
Figure 0003981292
[式(I)中、X1及びX2は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜22のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、アリール基、アリールアルキル基、ベンゾイル基、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アンモニウムイオン、モノエタノールアミン残基、ジエタノールアミン残基 、トリエタノールアミン残基及びジシクロヘキシルアミン残基からなる群から選ばれるいずれかを表す。]
で表されるものが好ましく、このようなウルソール酸及び/又はウルソール酸誘導体としては、それらを含有するウルソール酸含有植物エキスを用いてもよい。
【0011】
また、前記本発明に係るイソフラボン及びイソフラボン誘導体としては、下記一般式(II):
【0012】
【化4】
Figure 0003981292
[式(II)中、Y1及びY2は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水酸基、低級アルコキシ基及びグリコシド基からなる群から選ばれるいずれかを表し、mは0〜5の整数を表し、nは0〜4の整数を表す。]
で表されるものが好ましく、中でも上記イソフラボン誘導体がダイゼイン、ゲニステイン、グリステイン、ダイズイン、ゲニスチン、グリスチンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。また、このようなイソフラボン及び/又はイソフラボン誘導体としては、それらを含有するイソフラボン含有植物エキス(イソフラボン骨格類含有植物エキス)を用いてもよい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を発明の実施の形態に即して詳細に説明する。本発明の負荷ストレス低減繊維材料に固着される化合物は、ウルソール酸、及びウルソール酸ベンジルから選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0014】
先ず、本発明に係るウルソール酸及びウルソール酸誘導体について説明する。前記ウルソール酸及び/又はウルソール酸誘導体は、ローズマリー、ウワウルシの葉や実に、またカキ、サンザシ、タイソウ、オオバコ、ウツボグサ、キリ等にも含まれる公知の物質であり、このようなウルソール酸やウルソール酸誘導体を含有する種々のウルソール酸含有植物エキスが知られている。
【0015】
また、ウルソール酸(Ursolic acid)は市販されており、このような市販品としては和光純薬工業株式会社、東京化成工業株式会社、シグマ・アルドリッチ社等から販売されているものがある。
【0016】
このようなウルソール酸及びウルソール酸誘導体としては、下記一般式(I)で表されるものが好ましい。
【0017】
【化5】
Figure 0003981292
一般式(I)において、X1及びX2は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜22のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、アリール基、アリールアルキル基、ベンゾイル基、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アンモニウムイオン、モノエタノールアミン残基、ジエタノールアミン残基 、トリエタノールアミン残基及びジシクロヘキシルアミン残基からなる群から選ばれるいずれかを表す。
【0018】
なお、ウルソール酸は前記一般式(I)中のX1及びX2がそれぞれ水素原子であるものであり、ウルソール酸誘導体は前記ウルソール酸のトリテルペノイド(α―アミリン)骨格の28位のカルボキシル基の水素原子部分(X1)及び/又は3位の炭素原子に結合する水酸基の水素原子部分(X2)が官能基で置換されたものである。
【0019】
このような炭素数1〜22のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基(ラウリル基)、テトラデシル基(ミリスチル基)、ヘキサデシル基(パルミチル基)、オクタデシル基(ステアリル基)等が挙げられ、より好ましくは、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基である。また、炭素数2〜22のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、オレイル基、リノレル基等が挙げられ、より好ましくはアリル基である。アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられ、より好ましくはフェニル基である。アリールアルキル基としては、前記アリール基が炭素数1〜22のアルキル基に結合したもの等が挙げられ、より好ましくはベンジル基である。アルカリ金属原子としては、例えば、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、より好ましくはナトリウム、カリウムである。アルカリ土類金属原子としては、例えば、マグネシウム、カルシウム等が挙げられ、より好ましくはマグネシウム、カルシウムである。
【0020】
さらに、本発明に係る前記一般式(I)で表されるウルソール酸及びウルソール酸誘導体の具体例としては、ウルソール酸、ウルソール酸メチル、ウルソール酸エチル、ウルソール酸プロピル、ウルソール酸ブチル、ウルソール酸ペンチル、ウルソール酸ヘキシル、ウルソール酸ヘプチル、ウルソール酸オクチル、ウルソール酸ノニル、ウルソール酸デシル、ウルソール酸ドデシル(ウルソール酸ラウリル)、ウルソール酸テトラデシル(ウルソール酸ミリスチル)、ウルソール酸ヘキサデシル(ウルソール酸パルミチル)、ウルソール酸オクタデシル(ウルソール酸ステアリル)、ウルソール酸ビニル、ウルソール酸アリル、ウルソール酸オレイル、ウルソール酸リノレル、ウルソール酸フェニル、ウルソール酸トリル、ウルソール酸キシリル、ウルソール酸ビフェニル、ウルソール酸ナフチル、ウルソール酸アントリル、ウルソール酸フェナントリル、ウルソール酸ベンジル、ウルソール酸ベンゾイル、ウルソール酸ナトリウム、ウルソール酸カリウム、ウルソール酸マグネシウム、ウルソール酸カルシウム、ウルソール酸アンモニウム、ウルソール酸モノエタノールアミン、ウルソール酸ジエタノールアミン、ウルソール酸トリエタノールアミン、ウルソール酸ジシクロヘキシルアミン等が挙げられ、より好ましくは、ウルソール酸、ウルソール酸ナトリウム、ウルソール酸テトラデシル、ウルソール酸ベンジルである。
【0021】
また、前記ウルソール酸誘導体は既知の方法で得ることができ、例えば、前記官能基(置換基)のハロゲン化体(ハロゲン化アルキル等)、或いは前記官能基のトシレート体(アルキルトシレート等)とウルソール酸を反応させることにより目的の化合物を得ることができる。
【0022】
次に、本発明に係るイソフラボン及びイソフラボン誘導体について説明する。前記イソフラボン及び/又はイソフラボン誘導体は、豆科の植物等に含まれるフラボノイド配糖体の一つであり、このようなイソフラボンやイソフラボン誘導体を含有する種々のイソフラボン含有植物エキス(イソフラボン骨格類含有植物エキス)が知られている。このようなイソフラボン含有植物エキスは、大豆、納豆等から水、アルコール等の溶媒で容易に抽出され、この抽出物中に含まれるイソフラボン及びイソフラボン誘導体としてはイソフラボン、ダイゼイン、ゲニステイン、グリステイン、ダイズイン、ゲニスチン、グリスチン等が挙げられる。
【0023】
このようなイソフラボン及びイソフラボン誘導体としては、下記一般式(II)で表されるものが好ましい。
【0024】
【化6】
Figure 0003981292
一般式(II)において、Y1及びY2は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水酸基、低級アルコキシ基及びグリコシド基からなる群から選ばれるいずれかを表し、mは0〜5の整数を表し、nは0〜4の整数を表す。なお、イソフラボンは前記一般式(II)中のY1及びY2が存在しない、すなわちm=n=0のものである。
【0025】
このような低級アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられ、より好ましくはメトキシ基である。また、グリコシド基としては、例えば、グルコシド基、フルクトシド基、ガラクトシド基が挙げられ、より好ましくはグルコシド基である。
【0026】
なお、前記Y1としては、水酸基が好ましく、また置換基の数及び位置は上記条件を満たせば特に制限されないが、Y1の数(m)は1が好ましく、位置はパラ位が好ましい。また、前記Y2としては、水酸基、メトキシ基、グルコシド基が好ましく、また置換基の数及び位置は上記条件を満たせば特に制限されないが、Y2が水酸基の場合はY2の数(n)は1又は2が好ましく、位置は5位又は7位が好ましい。また、Y2がメトキシ基の場合はY2の数(n)は1が好ましく、位置は6位が好ましい。更に、Y2がグルコシド基の場合はY2の数(n)は1が好ましく、位置は7位が好ましい。
【0027】
さらに、本発明に係る前記一般式(II)で表されるイソフラボン及びイソフラボン誘導体の具体例としては、イソフラボン、ダイゼイン、ゲニステイン、グリステイン、ダイズイン、ゲニスチン、グリスチン、ホルムオノネチン、プルネチン、アフロモシン等が挙げられ、より好ましくは、イソフラボン、ダイゼイン、ゲニステイン、グリステイン、ダイズイン、ゲニスチン、グリスチンである。
【0028】
前記イソフラボン及びイソフラボン誘導体は市販されており、このような市販品としては、フジッコ株式会社、(株)ホーネンコーポレーション等から販売されているものがある。
【0029】
本発明に係る繊維材料としては特に制限はなく、綿、絹、ウール等の天然繊維;レーヨン等の再生繊維;アセテート等の半合成繊維;ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ビニロン、ポリアラミド等又はそれらの混合物からなる合成繊維;並びにこれらの繊維の複合繊維等が用いられ、その形態としては糸、編物、織物、不織布又はそれらの積層体等が挙げられる。
【0030】
本発明に係る前記化合物を上記繊維材料に固着せしめる方法は特に制限されず、例えば、本発明に係る前記化合物を水又は有機溶剤中に溶解または分散せしめた後、スプレー法、パッド法、浸漬法、コーティング法等により繊維材料に付着させ、その後乾燥することにより固着せしめることができる。また、耐久性をより向上せしめるために必要に応じて架橋剤やバインダー等を併用してもよく、本発明に係る化合物の経皮吸収の更なる促進を図るためにN−アシルサルコシン、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸モノエタノールアマイド、ラウリン酸ジエタノールアマイド等の経皮吸収促進剤を併用してもよい。さらに、本発明の負荷ストレス低減繊維材料においては他の機能性を付与させる添加剤と併用してもよく、例えば、柔軟剤、帯電防止剤、抗菌防臭剤等の繊維加工剤を併用することにより、多種多用途の加工等も可能となる。
【0031】
本発明に係る前記化合物の固着量は、特に制限されないが、繊維材料(例えば、目付150g/m2のもの)1m2あたり、好ましくは5〜1000mgであり、さらに好ましくは10〜600mgである。固着量が5mg以下であると、所望の効果が十分に得られにくくなる傾向にあり、他方、1000mgを超えても使用量に見合う効果が得られにくく、経済的に不利となる傾向にある。
本発明の負荷ストレス低減繊維材料は、特に負荷ストレスの皮膚への悪影響を予防又は改善するのに好適であり、用途は特に制限されないが、例えば、下着、ファンデーション、ストッキング、靴下、手袋等の形態が挙げられ、繊維材料が直接肌に接触する形態で用いられることが好ましい。
【0032】
なお、本発明の負荷ストレス低減繊維材料により負荷ストレスが低減されるメカニズムは定かではないが、外界からの負荷ストレスに生体が反応して(例えば、体内において起炎症性サイトカイン等を多く放出したり、コルチゾール類等のストレス伝達物質を放出して)負荷ストレスに過敏に反応することが予防され、負荷ストレスによる悪影響が予防又は改善されるものと本発明者らは推察している。また、このような負荷ストレスによる皮膚機能低下障害等に対する予防又は改善効果の発現は、負荷ストレス低減繊維材料に固着せしめた化合物が高い抗酸化作用並びに抗ストレス作用を有していることに起因しており、本発明の負荷ストレス低減繊維材料を用いればその化合物が少量ずつ長期にわたり経皮吸収されることによりこのような効果が得られると本発明者らは推察している。従って、本発明の負荷ストレス低減繊維材料によれば、負荷ストレスによる影響だとされているアトピー性皮膚炎の人や、敏感肌の人が、日常的に用いられている化粧品、毛髪洗浄剤、食器洗浄剤等に含まれる界面活性剤による肌トラブルを防止することが可能となる。
【0033】
次に、本発明において採用した皮膚障害モデルについて説明する。
〔皮膚障害モデルの作成〕
皮膚の炎症等に対する化合物の予防又は改善(回復)効果を議論する場合、適当な起炎剤を使用して、ヘアレスマウス等の皮膚に障害を発生させると共に、被検物質を含んだ薬剤を供して、その効果を観察するのが一般的である。
【0034】
本発明では上記起炎剤を塗布したマウスに過密状態で負荷ストレスを与え、皮膚機能低下障害との関係及びそれに対する本発明の負荷ストレス低減繊維材料の効果を調べた。すなわち、本皮膚障害モデルにおいては上記起炎剤を塗布したマウス(12週令のSkh−1ヘアレスマウス)を用い、1ケージあたり5匹で飼育することにより過密状態での負荷ストレスを付与せずかつ負荷ストレス低減繊維材料を貼付しなかった標準群、1ケージあたり20匹で飼育することにより過密状態での負荷ストレスを付与しかつ負荷ストレス低減繊維材料を貼付しなかった対照群、並びに1ケージあたり20匹で飼育することにより過密状態での負荷ストレス条件を付与しかつ負荷ストレス低減繊維材料を貼付した被検群との間での皮膚障害改善率を比較した。
【0035】
なお、前記起炎剤としては塩化ベンザルコニウムを用いた。係る塩化ベンザルコニウムは、優れた殺菌作用を有するカチオン(陽イオン)性界面活性剤であり、繊維用の抗菌防臭加工用薬剤として広く用いられている。また、エタノール溶液として院内感染起因菌(例えばメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を含むグラム陽性菌(6株)やグラム陰性菌(8株))に対して優れた殺菌効果を示すことから、医療施設で医師、看護婦等の医療従事者の手指消毒薬として頻用されている。一方、塩化ベンザルコニウムには副作用的な極めて弱い皮膚、粘膜刺激性があり、その性質に起因すると考えられる過敏症に関する報告もなされている(例えば、日本大衆薬工業協会編;1996〜1997大衆薬辞典一般用医薬品集添付文書要約第5版;薬業時報社、日本医薬情報センター編;1996.10医療薬日本医薬品集;薬業時報社、小澤光、丹野慶紀、池田實、菅原和伸;薬物療法の実際 第3版第2編 薬のまとめ;アサヒメディカル等)ため、使用に際しては注意を要するとされている。また、塩化ベンザルコニウムによる過敏症状は、その「角質溶解作用」による角質細胞間脂質の破壊のため、すなわち角質細胞の積み重なりが塩化ベンザルコニウムによって乱れ、物質透過性が上昇し、バリア機能が低下するために生ずると考えられていることから、塩化ベンザルコニウムによる皮膚障害モデルが好ましい。
【0036】
尚、モデル作成は以下のことを前提とする。すなわち、既に述べたように医療機関では塩化ベンザルコニウムの0.01〜0.2重量%エタノール溶液が頻用され、この際に肌荒れ等の副作用が起きていることを前提に、皮膚への適用濃度を決定する。
【0037】
また、皮膚障害モデルにおいて、皮膚の状態は角質層のバリア機能の指標として汗腺を通らずに直接角質層から蒸発する水分量を表す経表皮性水分喪失(TEWL)で評価される(例えば、田上八朗;皮膚のバリアとしての角質;日皮会誌108(5)713〜727(1998)、Journal of LipidReseach Volume28(1987)、ExperimentalDenmatology(1997)3,36−40、石橋康正;皮膚の健康科学;南山堂、西岡清;アトピー性皮膚炎、病態と治療;医薬ジャーナル社等)。すなわち、負荷ストレスによる皮膚機能低下障害に対する客観的な評価方法として、経表皮性水分喪失(TEWL)値の変化量を測定することにより被検化合物の皮膚機能低下障害に対する予防又は改善効果を評価することができる。従って、本発明では経表皮性水分喪失(TEWL)値を指標にして、皮膚障害に対する改善効果で評価した。
【0038】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
[皮膚障害改善試験方法]
以下、実施例に従い、具体的な方法及び結果について説明する。
【0039】
(1)測定機器及び試料
TEWL値測定機器:TewameterTM210(Courage&Kharazaka社)
(試料)
塩化ベンザルコニウム:日華化学(株)製、濃塩化ベンザルコニウム液50
ウルソール酸:東京化成工業(株)製試薬
ウルソール酸誘導体:上記試薬を用いて以下の方法により各誘導体を調製した;
ローズマリー抽出エキス:乾燥ローズマリーから以下の方法によりメタノール抽出したエキスを使用した;
イソフラボン含有植物エキス:(株)ホーネンコーポレーション製、豊年イソフラボン−80
※分析値
ダイズイン 31.1%
グリスチン 42.7%
ゲニスチン 7.4%
他 0.5%。
【0040】
(2)ウルソール酸誘導体の調製方法
ウルソール酸1g、トリエチルアミン2.3gをアセトン100mLに溶解した後、室温で塩化ベンジル2.8gを加え、48時間反応させた。反応終了後、ろ過を行い、脱溶媒をして、ウルソール酸ベンジル1.1gを得た。塩化ベンジルに換えてモノクロロテトラデカンを用いて、同様にウルソール酸テトラデシルを得た。また、ウルソール酸ナトリウムは常法によりウルソール酸から調製した。
【0041】
(3)ローズマリー抽出エキスの調製方法及び含有成分
ローズマリー100gにメタノール100Lを加え、還流下、2時間加熱抽出を行った。その後、冷却、ろ過を行い、脱溶媒、濃縮してメタノールエキス(ローズマリー抽出エキス)24.5gを得た。このエキス中にはウルソール酸2.7gを含有していた。
【0042】
(4)飼育条件
12〜18週令の雌性Skh−1ヘアレスマウス(日本エスエルシー(株))を実験に用いた。また、実験期間中、空調(温度26.5±1℃、湿度55.4±3%)管理下、12時間間隔の明暗スケジュールで維持された動物室内で、標準群は各動物を1ケージ(225×338×140mm)あたり5匹で飼育し、対象群及び被検群は各動物を1ケージあたり20匹で飼育し、普通飼料(MF、オリエンタル酵母)と水を自由摂取させた。すなわち、対照群及び被検群は、1ケージあたり20匹で飼育することにより、過密状態での負荷ストレス条件を設定した。
【0043】
(5)負荷ストレス低減繊維材料の作製方法
表1に示す化合物を、それぞれの固着量が表1に示す量となるように50%メタノール水溶液に溶解させた処理液に、綿メリヤス(目付:150g/m2)を浸漬後、マングルで絞り、その後120℃にて乾燥、固着せしめることにより負荷ストレス低減繊維材料を作製した。
【0044】
(6)塗布方法
マウスの背部を剃毛した後ストリッピングし、0.8重量%塩化ベンザルコニウム含有エタノール溶液100μLをマイクロピペットにとり、チップの先を使って標準群、対照群、被検群のマウスの背部に実験期間中一日一回均一に塗布した後、被検群のマウスには負荷ストレス低減繊維材料(6mm×6mm)を通気性の良い絆創膏(シルキーポア/Alcare社製:10mm×10mm)にてその背部6カ所に貼付し、4日間にわたり繰り返した。
【0045】
このように、標準群には過密状態による負荷ストレスを与えず0.8重量%塩化ベンザルコニウム含有エタノール溶液を塗布し、また対照群には過密状態による負荷ストレスを与えかつ0.8重量%塩化ベンザルコニウム含有エタノール溶液を塗布し、更に被検群には過密状態による負荷ストレスを与えかつ0.8重量%塩化ベンザルコニウム含有エタノール溶液を塗布しかつ負荷ストレス低減繊維材料を貼付した。
【0046】
(7)TEWL値の測定
マウスを固定後、TewameterTM210を用い、1分30秒間TEWL値を測定した。得られた値は、有意差検定をStudent's t-testにより統計処理した。
【0047】
(8)改善効果
表1に示す各化合物を固着せしめた負荷ストレス低減繊維材料について、塩化ベンザルコニウム及び負荷ストレスに起因する皮膚機能低下障害に対する被検群の改善効果の有効性を、次式により得られる皮膚障害改善率の値(%)で評価し、その値を表1に示した。
【0048】
皮膚障害改善率(%) =(TEWL値DA―TEWL値DN)/(TEWL値DA―TEWL値DB)×100
ここで、TEWL値DB:ストリッピング前のTEWL値
TEWL値DA:ストリッピング後のTEWL値
TEWL値DN:N日後のTEWL値、ただしNは1又は4
【表1】
Figure 0003981292
【0049】
表1に示した結果から、以下のような知見が確認された。すなわち、負荷ストレスを与えかつ塩化ベンザルコニウムにより起炎された対照群は、負荷ストレスを与えずかつ塩化ベンザルコニウムにより気炎された標準群と比較して改善率が低下しているが、それに対して本発明の負荷ストレス低減繊維材料を貼付した被検群においては明らかに有意な改善効果が認められた。この結果から、本発明の負荷ストレス低減繊維材料は、負荷されたストレスの影響を軽減する作用を有していることが確認された。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、負荷ストレスに起因する皮膚機能低下障害等を長期にわたって持続的に改善(治癒、回復)し、また事前に効果的に予防することが可能な負荷ストレス低減作用を有する材料を提供することが可能となる。
【0051】
従って、本発明の負荷ストレス低減繊維材料は、下着、ファンデーション、ストッキング、靴下、手袋等の直接肌に接するような衣類を構成する繊維材料として非常に有用である。

Claims (3)

  1. ウルソール酸及びウルソール酸ベンジルから選ばれる少なくとも1種の化合物を繊維材料に固着せしめてなることを特徴とする負荷ストレス低減繊維材料。
  2. 前記ウルソール酸及び/又はウルソール酸ベンジルを含有するウルソール酸含有植物エキスを繊維材料に固着せしめてなることを特徴とする請求項1記載の負荷ストレス低減繊維材料。
  3. 負荷ストレスに起因する皮膚機能低下障害を予防又は改善するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の負荷ストレス低減繊維材料。
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