JP3977687B2 - 衝撃吸収部材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、バンパが受けた衝撃荷重を塑性変形に要する変形荷重に転換して吸収する衝撃吸収部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両衝突時の搭乗者に対する衝撃を吸収する衝撃吸収部材は、衝撃印加方向に縮退するシリンダを用いるタイプと、バンパが受けた衝撃荷重を塑性変形に要する変形荷重に転換して吸収するタイプとに大別できる。後者の衝撃吸収部材は、軽量で安価に製造できる利点があり、製造コスト低減が望まれる近年の傾向に適している。後者の例として、特公昭47-045986号、特公昭47-014535号、特公昭48-002300号、特公昭52-046344号、特開昭48-001676号、特開昭48-093045号、特開昭49-000673号、USP3,143,321、USP3,511,345、USP3,599,757等を挙げることができる。
【0003】
特公昭47-014535号は、延性を有する中空筒体(本発明の小径管に相当)と、この中空筒体の有効径より大径(又は小径)の非塑性部(本発明の大径管に相当)と、丸みをもった段付部(本発明の環状段差部に相当)とからなる塑性負荷体を提案している。衝撃荷重は、段付部が逐次塑性変形し、中空筒体が折り返されることにより吸収する。特公昭47-045986号も同様な構成を採用している。
【0004】
特公昭48-002300号は、大径部(本発明の大径管に相当)及び小径部(本発明の小径管に相当)を同一又は異なった肉厚の中空筒体で構成し、丸みを持った段部(本発明の環状段差部に相当)で大径部と小径部とを連続一体化した塑性負荷体からなる構成を提示している。衝撃は、段部から塑性変形を起こして小径部を折り返し、小径部より大きく大径部より小さい中間直径部を生起して吸収する。
【0005】
特公昭52-046344号は、丸みを持つ段付部(本発明の環状段差部に相当)で互いに連なる小径部(本発明の小径管に相当)と大径部(本発明の大径管に相当)とが連続一体に共通の中心軸上に配列された所用肉厚の中空平行筒で構成されるアブソーバーにおいて、塑性変形の進行が抑制された後に、別途中空平行筒の壁面自体に座屈が生ずるアブソーバーを提案している。前記アブソーバーの基本的な衝撃荷重の吸収は、先ず段付部に連なる部分から始まって壁面の反転変形が進行することで実現する。
【0006】
特開昭48-001676号は、互いに同心をなす小径部(本発明の小径管に相当)と大径部(本発明の大径管に相当)を、その各々の端面より反転する環状部(本発明の環状段差部に相当)をもって軸線方向に連設し、かつこの反転折曲部を、軸線方向に対して若干の傾斜を有する切削面を削成した構成を提案している。
【0007】
特開昭48-093045号は、周長が大なる部分(本発明の大径管に相当)と小なる部分(本発明の小径管に相当)が軸方向に連続した緩衝体を用い、衝撃により周長が小なる部分が、周長が大なる部分に徐々に押し込まれる塑性変形を起こし、衝撃荷重を吸収する。また、特開昭49-000673号は、外筒部材に対して捲り返した内筒部材の端縁を内接した構造で、内筒部材に衝撃が印加されると、前記捲り返した部位が塑性変形を起こして衝撃を吸収する。
【0008】
USP3,146,014は、金属製平行筒管(tube)にバンパ取付部材(bumper attaching member, rod member)を押し込む際に金属製平行筒管に生ずる塑性変形を利用して衝撃荷重を吸収する構成を提案している。他の先行技術と比較して2部材(金属製平行筒管及びバンパ取付部材)から構成する点で異なるが、金属製平行筒管の塑性変形を利用して衝撃荷重を吸収する点は同様である。
【0009】
USP3,511,345は、第1管部(first tubular portion、本発明の小径管に相当)と、第2管部(second tubular portion、本発明の大径管に相当)と、両管部端縁を結ぶ段差中間部(round stepped intermediate portion、本発明の環状段差部に相当)で結んだ衝撃吸収部材(energy absorber)で、前記段差中間部から塑性変形を起こして衝撃を吸収するとしている。USP3,599,757も同様な構成である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
塑性変形を利用した基本的な衝撃吸収部材は、通常、小径管が衝撃に押されて変位し、大径管に没入する過程で、環状段差部から大径管側面にかけて引き起こされる塑性変形に応じて衝撃荷重を吸収する。ここで、小径管の変位量(=没入量)と、塑性変形により吸収する衝撃荷重の大きさとの関係を表す変位-荷重特性は、(1)変位開始直後には比例関係で増加するものの、(2)塑性変形が定常状態になると、変位量とは無関係に過重が一定になる。衝撃吸収部材として吸収する衝撃荷重の全量は、変位-荷重特性の積分量(グラフ面積)であるから、径管の変位量を増やせば吸収できる衝撃荷重を増やすことができる。
【0011】
しかし、要求される変位-荷重特性は、特に衝突時の速度(低速衝突又は高速衝突)の違いによって異なる。例えば低速衝突の場合、当然に衝撃荷重も小さくなり、荷重吸収量は比例した小さなものが好ましい。仮に過剰な荷重吸収量を発揮する衝撃吸収部材であると、車体に対する負荷が大きくなり、衝突相手に対する損傷、自身の車体及び乗員に対する損傷が大きくなる問題が発生する。これから、低速衝突に際しては、発生する小さな衝撃荷重に見合った小さな荷重吸収量を発揮する変位-荷重特性が衝撃吸収部材に望まれることになる。
【0012】
これに対して、高速衝突の場合、大きくなる衝撃荷重を十分に吸収できる程度の大きな荷重吸収量を有する衝撃吸収部材が必要となる。この場合、小径管の変位量(ストローク)を増やすことが考えられるが、それでは設置容積を増加させてしまうため、好ましくない。これから、荷重吸収量を増やすには、塑性変形の定常状態において、小径管の変位量(没入量)に比例して荷重吸収量を増加させる変位-荷重特性にすることが考えられる。
【0013】
このように、塑性変形を利用した衝撃吸収部材は軽量で安価に製造できる利点があるものの、衝突時の速度の違いに基づいて要求される変位-荷重特性を考えた場合、上述のような基本的な衝撃吸収部材の変位-荷重特性では満足できない点があった。そこで、衝突時の速度の違いに基づいて適切な変位-荷重特性を設定して、種々の衝突に合わせた適切な衝撃吸収ができ、乗員への衝撃伝達の防止又は抑制を図ることができるように、まず荷重吸収量の増加を可能とし、前記荷重吸収量の増加を衝突時の速度の違いに基づいて選択的に発揮できる塑性変形を利用した衝撃吸収部材について、検討した。
【0014】
【課題を解決するための手段】
検討の結果、塑性加工可能な直管を部分的に縮径又は拡径し、互いに向かい合う中間端縁を環状段差部により結んだ外径の異なる小径管及び大径管からなり、環状段差部は小径管の中間端縁から折り返した円弧状断面の小環部と、大径管の中間端縁から折り返した円弧状断面の大環部とを結んだ断面構造である衝撃吸収部材において、大環部から大径管側面にかけて内向きに捲れ込む塑性変形により大径管内部に向けて没入する小径管の前記没入速度又は量を低減又は抑制する抵抗体を大径管内部に内蔵した衝撃吸収部材を開発した。本発明の衝撃吸収部材は、抵抗体が(a)小径管の没入速度を低減する(速度低減作用、主として小径管の没入に対して定量で働く抵抗を指す)、又は(b)小径管の没入を抑制する(没入抑制作用、主として小径管の没入に比例して増加するように働く抵抗を指す)。これにより、塑性変形は前記抵抗体による速度低減作用没入抑制作用を上回る衝撃荷重によって初めて引き起こされ、継続することになるので、結果として低速衝突では小さく、対して高速衝突では大きく荷重吸収量を増加させることができる。
【0015】
本発明の衝撃吸収部材では、小径管の先端端縁から衝撃が加えられて大径管に対して小径管が没入を開始し、円滑に塑性変形を引き起こす衝撃荷重を、連続的かつ滑らかに吸収することが望ましい。なぜなら、断続的又は急激な衝撃荷重の吸収は、車体や乗員に衝撃を与えることになるからである。例えば、まず部材を破断させ(破断による衝撃荷重の吸収)、次いで破断した一方の部材を他方の部材に圧入する(塑性変形による衝撃荷重の吸収)2段階の作用を有する実開平06-022112号があるが、明示する荷重-変形量特性(本発明における変位-荷重特性)にはハッキリと前後の分断が見られる。これから、衝撃荷重は連続的かつ滑らかに吸収されることが重要であり、本発明は主吸収作用及び追加吸収作用が連続的かつ滑らかに生じるように構成する。
【0016】
連続的かつ滑らかな衝撃荷重の吸収を実現するには、特に衝撃印加直後に環状段差部が破断せず、塑性変形を円滑に引き起こす必要がある。そこで、小径管の中間端縁から折り返した円弧状断面の小環部と、大径管の中間端縁から折り返した円弧状断面の大環部とを結んだ断面構造の環状段差部を用いる。衝撃吸収部材全体は、直管を部分的に縮径又は拡径して小径管又は大径管を形成するため、相対的に小径管より大径管の肉厚が薄くなり、大径管の方が塑性変形しやすくなっている。このため、大環部を滑らかな円弧状断面とすると、大環部から大径管側面にかけて内側に捲れ込む塑性変形を円滑に引き起せる。より好ましい環状段差部は、(i)小径管の中間端縁から折り返した円弧角度90度超円弧状断面の小環部と、大径管の中間端縁から折り返した円弧角度90度超円弧状断面の大環部とを結んだ断面構造で、かつ(ii)小環部の円弧状断面半径は大環部の円弧状断面半径に比べて相対的に小さくするとよい。ここで、各円弧状縁の半径は厚み方向中心線の半径とする。小径管が受ける衝撃は、相対的に急峻な折返となる小環部で塑性変形を引き起こしにくく、相対的に緩やかに連続する円弧状縁の大環部で塑性変形を引き起こしやすいので、衝撃吸収を担う塑性変形が正しくかつ容易に発生する。
【0017】
また、効率的な衝撃吸収を可能とする塑性変形を発生させるには、小径管が傾倒することなく大径管へ没入する必要がある。これから、環状段差部は、小環部及び大環部を平行筒又は錐台側面からなる傾倒防止環で結んだ断面構造にするとよい。円弧角度180度の各円弧状縁を結ぶ傾倒防止環は、小径管及び大径管の各側面と平行になる平行筒側面を基本とするが、各円弧状縁の円弧角度の組み合せにより、小径管から大径管に向けて縮径又は拡径する錐台側面としてもよい。この傾倒防止環は両円弧状縁を離隔し、斜め方向からの衝撃により小径管が傾倒した場合、早い段階で小径管側面に当接し、傾倒角度を抑制する。そして、小径管が大径管に没入を始めた段階で、傾倒防止環に小径管側面を摺接させながら傾倒を補正し、確実な小径管の大径管への没入を保証する。
【0018】
本発明は、上述のような基本構成を前提に、大径管内部に抵抗体を内蔵することにより、衝突時の速度の違いに基づいて選択的に荷重吸収量を加減できるようにする。こうした抵抗体としては、(1)外周が大径管内径より小さく、かつ内周が小環部外径より大きな剛性環体であり、前記剛性環体を大径管内部に挿入する構成、(2)外周が大径管内径より小さく、かつ内周が小環部外径より大きな弾性環体であり、前記弾性環体を大径管内部に挿入する構成、又は(3)外周が大径管内径より小さい弾性環体と、内周が小環部外径より大きな剛性環体とを嵌合により一体にした二重環体であり、前記二重環体を大径管内部に挿入する構成を例示できる。
【0019】
上記各環体は、外周が大径管内径より小さく、かつ内周が小環部外径より大きいため、部分的な大径管側面との摩擦を除いて、基本的に大径管内部を自在に移動できる。このため、衝撃吸収部材の小径管から大径管に向けて衝撃が印加されると、抵抗体は慣性により小径管に向けて衝撃の大きさに比例した移動量で移動する。低速衝突では、前記慣性による抵抗体の移動量は小さく、とりわけ小さな衝撃では前記部分的な摩擦によって抵抗体の移動が防止され、大径管に対する小径管の没入による塑性変形のみで衝撃荷重を吸収する。しかし、高速衝突では、抵抗体は大きく移動して大環部にまで達し、小径管の大径管に向けた没入による塑性変形において大径管側面及び環状段差部(特に大環部)に挟まれつつ、塑性変形に伴って後方へ位置変位する大環部の前記位置変位の抵抗となる。こうして、上記各環体は、衝突時の速度の違いに基づいて、小径管の没入速度を低減する速度低減作用を選択的に発揮し、結果として荷重吸収量を加減できる。
【0020】
(1)剛性環体は、高速衝突に際して大環部にまで移動し、速度低減作用を発揮する。具体的な材料として、金属製環体(金属製リング)を例示できる。(2)弾性環体は、前記剛性環体に比べて大径管側面との部分的摩擦の程度が大きく、慣性による移動量が相対的に小さい。このため、速度低減作用を発揮する高速衝突は、より大きな速度として設定できる。具体的な材料として、ゴム製環体(ゴム製リング)を例示できる。この弾性環体が大径管に対する小径管の没入に比例して圧縮可能な場合、大径管側面全域にわたって密着する長さの弾性円筒として構成してもよい。この場合、塑性変形に際して大環部が変位しながら弾性円筒を圧縮していき、小径管の没入に応じて必要とされる荷重が増大していくため、衝突時の速度に比例して荷重吸収量を加減できる。(3)二重環体は、弾性環体に見られる大きな速度設定での速度低減作用を発揮しながら、剛性環体の構造強度を実現するのに適している。
【0021】
上記各環体に対し、より積極的に没入抑制作用を加えるには、上記同様な抵抗体でありながら、(4)外周が大径管内径に略等しく、かつ内周が小環部外径より大きな剛性環体であり、前記剛性環体を大径管内部に圧入する構成、(5)外周が大径管内径に略等しく、かつ内周が小環部外径より大きな弾性環体であり、前記弾性環体を大径管内部に圧入する構成、又は(6)外周が大径管内径に略等しい弾性環体と、内周が小環部外径より大きな剛性環体とを嵌合により一体にした二重環体であり、前記二重環体を大径管内部に圧入する構成とする。外周が大径管内径に略等しいために、各環体外周は大径管側面との間に摩擦を生じており、衝突に際する環体の移動が抑制され、より高い高速衝突で初めて環体による速度低減作用及び没入抑制作用を発揮する。各環体から大径管側面に向け、後退方向に掛止する掛止環部を設けてもよい。剛性環体、弾性環体及び二重環体それぞれの相違は、上記環体相互の相違と同様である。
【0022】
上記各環体から構成する抵抗体は、主として速度低減作用を発揮して、速度の違いによる荷重吸収量の加減を実現する。しかし、自動車の振動等によって各環体の初期位置が容易にずれてしまえば、速度低減作用が発揮される衝突時の速度が異なり、偶然の事情により変位-荷重特性が変化することにもなりかねない。そこで、上記各環体からなる抵抗体は、弾性体により大径管に対して弾支するとよい。より具体的には、大径管の後端端縁側に後端を固着したコイルスプリング等の前端を各環体からなる抵抗体の後方に接続し、前記後端端縁側から小径管に向けて抵抗体を弾支する。このように弾性体で抵抗体を弾支すると、外力により大径管内部で環体が前進又は後退することを防止して初期位置を保ち、必ず大環部に向けた方向にのみ環体を移動させることができる。
【0023】
上記各環体からなる抵抗体に対し、より積極的に没入抑制作用を発揮する抵抗体として、緩衝流体を封入した密閉部からなり、この密閉部は密閉部から大径管外部へ緩衝流体を排出する吐出孔を有し、大径管内部に向けて没入する小径管に押圧されて前記吐出孔から緩衝流体を排出することで小径管の没入速度又は量を低減又は抑制する構成を示すことができる。緩衝流体は、吐出孔から排出可能な粒子から構成する液体、気体及び粉体単独、又はこれらの組み合せであり、好ましくは粘性流体、より好ましくは粘性液体がよい。また、密閉部は小環部を塞ぐ押し蓋と、大径管の後端端縁を塞ぐ閉じ蓋と、大径管側面とから形成し、吐出孔を閉じ蓋に設けるとよい。以下では、前記密閉部に粘性液体を緩衝流体として封入する抵抗体を設けた衝撃吸収部材を例として、抵抗体の働きを説明する。
【0024】
緩衝流体からなる抵抗体は、大径管に対して小径管を没入させるには、緩衝流体を密閉部内で圧縮又は密閉部から排出しなければならないので、密閉部に充填した緩衝流体の存在自体を小径管の没入に対する抵抗と考えることができる。ここで、緩衝流体の圧縮による抵抗には限界があることから、前記抵抗としては、主として緩衝流体を密閉部から排出する際の流出抵抗により実現するとよい。本発明では、前記流出抵抗を実現する手段として吐出孔を用いている。吐出孔は、緩衝流体の排出方向の直交方向における密閉部内径(上記押し蓋及び閉じ蓋に囲まれた大径管内部を密閉部とする場合は大径管内径)よりも小径な孔であれば流出抵抗を発生させることができる。好ましくは、吐出孔をオリフィス孔とする。
【0025】
このように、緩衝流体による没入抑制作用を発揮する際には、吐出孔から緩衝流体が排出される必要があるが、逆に定常状態にあっては、緩衝流体が密閉部から漏れ出ることは好ましくない。そこで、(a)緩衝流体を含浸させた、連続気泡を有する可撓性発泡体を密閉部に封入したり、(b)緩衝流体を充填した、吐出孔に連通する放出孔を有する可撓性袋体を密閉部に封入したりするとよい。可撓性発泡体又は可撓性袋体は、常態として緩衝流体を含浸状態又は充填状態で保持しながら、大径管に没入する小径管に押されて変形する量又は割合に応じて、適宜吐出孔から緩衝流体を排出できる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。図1は剛性環体1を抵抗体として大径管2内に挿入した衝撃吸収部材3の斜視図、図2は同衝撃吸収部材3の断面図、図3は図2中A矢視拡大断面図、図4は図2中B−B断面図、図5は低速衝突時における剛性環体1の移動を表す図2相当断面図であり、図6は高速衝突時における剛性環体1の移動を表す図2相当断面図である。本例は、従来見られる基本的な塑性変形を利用した衝撃吸収部材3の大径管2内に、外周が大径管内径Ri(各図中半径図示)より小さく、かつ内周が小環部外径Ro(各図中半径図示)より大きな剛性環体(金属製リング)1を挿入した構成である。
【0027】
最初に、本例以下に共通な構成部分を説明する。各衝撃吸収部材3は、例えば図1及び図2に見られるように、塑性可能な金属製直管を前後略等分し、前段を縮径する又は後段を拡径して、前段を小径管4、後段を大径管2とした構成を基本とし、大径管2内部に抵抗体を内蔵している(図1以下では剛性環体1を挿入している)。バンパ構造材(図示略)は小径管4の先端端縁5に、車体メンバ(図示略)は大径管2の後端端縁6にそれぞれ接続し、衝撃吸収部材3が車体メンバに対してバンパ構造材を支持する恰好となる。環状段差部7は、図3に見られるように、小径管4の中間端縁8から折り返した円弧状断面の小環部9と、大径管2の中間端縁10から折り返した円弧状断面の大環部11とを、平行筒側面からなる傾倒防止環12で結んだ断面構造である。小径管4は、小径管4の先端端縁5に受けた衝撃(衝撃は先端端縁5に直接又は先端端縁5に取り付けたバンパ構造材等を介して受ける)によって大径管2に向けて変位し、没入する。
【0028】
傾倒防止環12は、衝撃が小径管4に対して斜め方向から印加された場合に小径管4の傾倒を防止し、小径管4を正しく大径管2に没入させる。本発明の衝撃吸収部材3は、前記小径管4の大径管2に対する没入によって、大環部11から大径管側面13にかけて(以下では環状段差部7において、とも表現する)内向きに捲れ込む塑性変形を発生し、前記塑性変形の変形荷重として衝撃荷重を吸収する。前記塑性変形の態様としては、小環部から小径管側面にかけて外向きに捲れ上がる態様も考えられるが、直管を部分的に縮径又は拡径して構成する小径管4及び大径管2は、相対的に大径管側面13の厚みが小径管側面14より薄く、大環部11から大径管側面13にかけて内向きに捲れ込む塑性変形の方が容易になっている。また、小環部から小径管にかけて捲れ込む塑性変形の場合(特公昭52-046344号等)、小径管にはバンパ構造材を接続しているために、小径管の変位量は小径管長の略半分となる。これに対し、大環部から大径管にかけて捲れ込む塑性変形の場合、小径管が車体メンバにまで没入可能(車体メンバに没入孔を設ける等)とすれば、小径管の変位量は小径管を接続するバンパ構造材が車体メンバに当接するまでの長さ、すなわち大径管長に略等価となり、衝撃吸収部材として大きな変位量を実現できる利点もある。
【0029】
また、各例では、大環部11から大径管側面13にかけて内向きに捲れ込む塑性変形を確実に発生させるため、いずれの環状段差部7も、(i)円弧角度略180度の円弧状断面からなる小環部9及び大環部11を結んだ断面構造で、かつ(ii)小環部9の円弧状断面半径を大環部11の円弧状断面半径に比べて相対的に小さくしている(図3参照)。これにより、小径管4が衝撃を受けると、相対的に急峻な折返となる小環部9は塑性変形しにくく、相対的に緩やかに連続する円弧状縁の大環部11が塑性変形する主吸収作用が確実に起きることになる。
【0030】
本例の抵抗体は、図1及び図2に見られるように、外周が大径管内径Riより小さく、かつ内周が小環部外径Roより大きな剛性環体(金属製リング)1からなる。この剛性環体1は、比較的厚みのある板材を円環状に丸めた構造で、図4に見られるように、前記板材の端部15,15は接合せず、離隔状態に留めている。このため、剛性環体1は、端部15,15を接近又は突き合わせるように縮径すれば容易に大径管2内へ挿入できる。この剛性環体1が、外周が大径管内径Riに略等しく、かつ内周が小環部外径Roより大きい場合でも、前述のように離隔状態の端部15,15を設けておけば、大径管2内への圧入は容易である。
【0031】
自動車が衝撃を受けると、バンパ構造材を介して小径管4に前記衝撃が伝達され、環状段差部7の大環部11から大径管側面13にかけて内側に捲れ込む塑性変形を引き起こしながら、衝撃吸収部材3が衝撃荷重を吸収していく。このとき、低速衝突の場合、自動車の速度は低速である場合が多く、衝撃も小さいので、図5に見られるように、塑性変形を伴う大径管に対する小径管4の没入量も小さく、大径管2に挿入した剛性環体1が慣性に従って移動する前進量も大きくない。このため、小径管4は、剛性環体1による速度低減作用や没入抑制作用(圧入した剛性環体1の場合)の影響を受けることなく、塑性変形のみで衝撃荷重を吸収する。
【0032】
ところが、高速衝突の場合、自動車は高速にあり、衝撃は大きくなるので、図6に見られるように、塑性変形を伴う大径管2に対する小径管4の没入量は大きく、大径管2に挿入した剛性環体1が慣性に従って移動する前進量も大きくなる。このため、剛性環体1は塑性変形を発生させている環状段差部7にまで達し、剛性環体1による速度低減作用や没入抑制作用(圧入した剛性環体1の場合)が働き、小径管4の没入は剛性環体1の抵抗を受けることになる。前記抵抗は、剛性環体1の内周が小環部外径Roよりも大きいため、塑性変形における大環部11から大径管側面13にかけての捲れ込みを阻害するものではなく、捲れ込んだ結果、大径管側面13と傾倒防止環12との間に剛性環体1が挟まれることで生ずる摩擦に基づく。よって、剛性環体1が最初から大径管側面13に対して摩擦を生ずる圧入状態にあれば、小径管4の没入に対する抵抗として、没入抑制作用がより強く発揮されることになる。
【0033】
剛性環体1(及び他の環体)の大径管に対する挿入又は圧入の違いは、剛性環体1が慣性に従って移動可能な衝突時の速度及び移動する場合の前進量の差や、剛性環体1による小径管4の没入に対する抵抗の度合いを変化させる。常態として剛性環体1が大径管側面13に対して摩擦を生じていなければ(部分的接触による摩擦は除く)、抵抗体としての剛性環体1は小径管4の没入に要する塑性変形の阻害要素として速度低減作用を主として発揮する。これに対し、剛性環体1を大径管2に圧入していれば、剛性環体1の移動に際して必ず発生する摩擦は小径管4の移動速度に比例して増加するため、没入抑制作用を発揮しはじめる。これら速度低減作用又は没入抑制作用の程度及び割合は、衝撃吸収部材3の素材や構造、剛性環体1等の素材や構造又は構成によって左右される。このため、必要とされる衝撃吸収性能に合わせて、前記素材、構造又は構成は適宜決定するとよい。例えば、環体による摩擦力を増加したければ、弾性環体を用いたり、図7(抵抗体として二重環体17を大径管2内部に挿入(又は圧入)して抵抗体を構成した衝撃吸収部材3の図2相当断面図)に見られるように、外周に弾性環体16を有する二重環体(完全な円環状)17を大径管2に圧入するとよい。
【0034】
図8は掛止環部18を設けた剛性環体19を大径管2内部に挿入(又は圧入)し、この剛性環体19をコイルスプリング20で支持した抵抗体を構成した衝撃吸収部材3の図2相当断面図、図9は高速衝突時における前記衝撃吸収部材3(図8参照)の図6相当断面図、図10は環状段差部7から大径管2の後端端縁6に至る大きさの弾性環体21を大径管2内部に挿入(又は圧入)して抵抗体を構成した衝撃吸収部材3の図2相当断面図であり、図11は高速衝突時における前記衝撃吸収部材3(図10参照)の図6相当断面図である。
【0035】
上記各例示に示した各環体は、基本的には大径管内部へ挿入又は圧入しただけであり、例えば衝撃を受けなくても、自動車の振動等で前進した場合、再び初期位置へ復帰させることはできない。このように、衝撃を受けた場合以外の環体の移動を防止するには、振動等により前進しないように、大径管内部へ環体を圧入することが好ましい。より積極的には、環体を大径管内部の定位置に留めておくように、大径管内部に環体を掛止する後退ストッパを設けたり、図8に見られるように、剛性環体19をコイルスプリング20で支持する構成の抵抗体とするとよい。本例では、大径管2の後端端縁6に小径管4の没入孔22を設けた支持板23を取り付け、コイルスプリング20は剛性環体19後縁と前記支持板23とをコイルスプリング20で結んでいる。これにより、振動等でコイルスプリング20が伸長又は圧縮すれば、このコイルスプリング20が復元力を発生させるため、剛性環体19を初期位置(図8中に見られる剛性環体19の位置)に復帰させることができる。
【0036】
上記コイルスプリング20は、衝撃による剛性環体19の前進を妨げる働きを有し、剛性環体19による小径管4の没入に対する速度低減作用や没入抑制作用が発現する衝撃の閾値を高くする役割も有している。裏返せば、コイルスプリング20による復元力を超える衝撃が加われば、図9に見られるように、剛性環体19は前進して環状段差部7に達し、抵抗体として小径管4の没入に対する速度低減作用や没入抑制作用を発現する。本例の剛性環体19は、厚みの薄い金属円管を塑性加工して形成した構造で、前側(小径管側)に姿勢維持のための摺接環部24を、後側(大径管側)に大径管側面13へ向け、後退方向に掛止する掛止環部18を設けている。前記掛止環部18は、摩擦の発生に方向性を与え、小径管4の没入に従って剛性環体19が後退する場合にのみ摩擦を発生させ、没入抑制作用を発揮させる。また、摺接環部24及び掛止環部18を有する本例の剛性環体19は、こうした複雑な構成が構造強度の向上をもたらすので、本例のような薄板でも塑性変形に際する圧力に負けて変形することはない。
【0037】
抵抗体は、大径管2内部を移動する環体でなくても構成できる。例えば、図10に見られるように、大径管2の後端端縁6に小径管4の没入孔22を設けた支持板23を取り付け、環状段差部7の大環部11から前記支持板23に至る大きさの弾性環体(弾性円筒)21を大径管2内部に挿入(又は圧入)して抵抗体を構成している。この弾性環体21は、環状段差部7と支持板23で挟まれて位置固定されているが、より安定して大径管2内部に収めておくために、大径管側面13に対して接着してもよい。この弾性環体21は、初期状態で既に環状段差部7に先端が達しているため、低速衝突でも小径管4の没入に対する速度低減作用(大径管側面13に対する摩擦)及び没入抑制作用(弾性環体21の圧縮又は変形)を発揮する。
【0038】
小径管4の没入量が増加すると、弾性環体21の圧縮や微少な変形のみでは足りなくなり、図11に見られるように、弾性環体21は大きく変形して高い没入抑制作用を発揮しはじめる。弾性環体21の変形領域は、環状段差部7、支持板23及び大径管側面13によって画されるために限界があり、弾性環体21の変形が前記限界に近付くにつれて没入抑制作用は強く発揮されるようになる。そして、小径管4に加わる衝撃荷重が弾性環体21の変形荷重の限界を超えると、この超過した荷重は環状段差部7における「剪断力」として使われる。通常、環状段差部7における塑性変形に要する力よりも前記剪断力のほうが大きいため、より大きな荷重吸収量を確保できる。
【0039】
図12〜図17は非圧縮の粘性流体(液体=シリコンオイル)を緩衝流体25として用いた抵抗体の例で、図12は緩衝流体25を含浸させた可撓性発泡体26を封入した密閉部27からなる抵抗体を構成した衝撃吸収部材3の図2相当断面図、図13は高速衝突時における前記衝撃吸収部材3(図12参照)の図6相当断面図、図14は緩衝流体25を充填した可撓性ドーナツ状袋体28を封入した密閉部27からなる抵抗体を構成した衝撃吸収部材3の図2相当断面図、図15は高速衝突時における前記衝撃吸収部材3(図14参照)の図6相当断面図、図16は緩衝流体25を充填した可撓性方形状袋体29を封入した密閉部27からなる抵抗体を構成した衝撃吸収部材3の図2相当断面図であり、図17は高速衝突時における前記衝撃吸収部材3(図16参照)の図6相当断面図である。
【0040】
図12以下に示す各例の抵抗体は、小環部9を塞ぐ押し蓋30と、大径管2の後端端縁6を塞ぐ閉じ蓋31と、大径管側面13とで囲まれた密閉部27に、緩衝流体(シリコンオイル)25を含浸させた可撓性発泡体(連続気泡合成樹脂発泡体)26を封入して構成している。可撓性発泡体26は、初期状態で略飽和量の緩衝流体25を含浸させて安定的に保持しており、密閉部27の縮小がない限り、緩衝流体25を外部へ排出させることはない。この緩衝流体25から構成した抵抗体では、衝撃のない常態で緩衝流体25を保持し、他所へ緩衝流体25を漏れ出させないことが好ましい。このため、本例は、可撓性発泡体26に緩衝流体25を含浸させ、衝撃のない常態での緩衝流体25の保持を実現している。
【0041】
押し蓋30は、小径管4内径に等しい外径を有する嵌合凸部32周縁に押圧フランジ33を設けてなり、押圧フランジ33で環状段差部7の小環部9を受ける押し蓋30は小径管4と共に後退して密閉部27を押し縮める。大径管2外に連通する吐出孔(オリフィス孔)34は閉じ蓋31の略中央に設けてあり、前記押し蓋30の後退に伴って圧縮される可撓性発泡体26からしみ出す緩衝流体25を、図13に見られるように排出する。この吐出孔34を通じた緩衝流体25の排出時に発生する流出抵抗が、小径管4の速度低減作用及び没入抑制作用を発揮する。
【0042】
上記流出抵抗は、吐出孔34に加わる緩衝流体25の圧力に比例して増加する。よって、低速衝突では小さな流出抵抗を発生させ、大径管2に対する小径管4の没入速度を低減する速度低減作用が強く見られる。これに対して、高速衝突では大きな流出抵抗を発生させることになるから、前記没入速度を低減させるほか、大径管2に対する小径管4の没入を抑制する没入抑制作用が強く現れるようになる。こうして、緩衝流体25を用いて構成した抵抗体は、衝突時の速度の違いによって、異なる作用を発揮して、前記速度毎に適した大径管2に対する小径管4の没入運動を実現する。
【0043】
可撓性発泡体26に含浸できる緩衝流体25の量は限界があり、好ましくは緩衝流体25そのものを直接的に密閉部27内に保持できるとよい。例えば、図14に見られるように、上記例示(図12及び図13)同様の密閉部27を構成し、この密閉部27内へ緩衝流体25を封入したゴム製の可撓性ドーナツ状袋体28を封入する。押し蓋30の押圧フランジ33は、可撓性ドーナツ状袋体28を半径方向内向きに膨出させながら圧縮する。この可撓性ドーナツ状袋体28は、閉じ蓋31の吐出孔34と直線的に連通する放出孔35を有している。本例は、吐出孔34及び放出孔35が共に大径管2の垂直方向上位側(図14中上側)に設けている。これにより、可撓性ドーナツ状袋体28内での緩衝流体液面36を放出孔35より下にすると、重力による緩衝流体25の自然排出を防止できる(実際には、振動による緩衝流体液面36の変動を加味し、放出孔35をより高く、緩衝流体液面36をより低くするとよい)。
【0044】
上記衝撃吸収部材3は、大径管2に対して小径管4が没入を開始すると、可撓性ドーナツ状袋体28を押し蓋30で圧縮し始め、まず半径方向内向きに向けて膨出する断面形状へ変形して前記小径管4の後退に対応し、更に可撓性ドーナツ状袋体28の圧縮が進むと、図15に見られるように、緩衝流体25を放出孔35から吐出孔34を通じて排出する。これから、可撓性ドーナツ状袋体28の変形のみで対応可能な低速衝突では、可撓性ドーナツ状袋体28の変形に伴う若干の抵抗は存在するものの、基本的には環状段差部7における塑性変形のみで衝撃荷重を吸収する。しかし、緩衝流体25の排出を伴う高速衝突では、前記緩衝流体25の排出に伴う流出抵抗が、速度低減作用及び没入抑制作用を発生させる。このようにして、本例の衝撃吸収部材3は、低速衝突と高速衝突とで異なる変位-荷重特性を実現する。
【0045】
低速衝突から高速衝突にわたって、連続的に過重-変位特性を変化させるには、図16に見られるように、緩衝流体25を充填した可撓性方形状袋体29を密閉部27に封入して構成する抵抗体を用いるとよい。この例でも、上記例示(図14及び図15)と同様に、初期状態での緩衝流体25の排出を防止するため、吐出孔34に連通する放出孔35より下方に緩衝流体液面36を設定している。しかし、可撓性ドーナツ状袋体28(図15参照)の場合と異なり、低速衝突時において可撓性方形状袋体29は変形のみで密閉部27の圧縮に対応できず、密閉部27の圧縮に応じて緩衝流体25を排出することになるため、低速衝突の段階から速度低減作用及び没入抑制作用を発揮させることができる相違点がある。
【0046】
また、大径管2に対する小径管4の没入が続いたり、前記没入量が大きな高速衝突では、図17に見られるように、可撓性方形状袋体29は密閉部27の圧縮に対応するように、例えば襞37を形成して体積(特に小径管4の没入方向の長さ)を縮小する。当然に、前記可動性方形状袋体29の縮小変形は、より多くの緩衝流体25の排出を導くから、この排出に比例した流出抵抗が、高い没入抑制作用を発生させる。この可動性方形状袋体29は、上記可撓性ドーナツ状袋体28に比べて容積が大きいため、充填できる緩衝流体25の量も多く、小径管4が没入運動する間の長期にわたって緩衝流体25の流出抵抗を発生させることができ、それだけ総荷重吸収量を増やすことができる利点がある。
【0047】
【発明の効果】
本発明の衝撃吸収部材は、衝突時の速度の違いに基づいて適切な変位-荷重特性を設定できる衝撃吸収部材を提供し、種々の衝撃態様に合わせた適切な衝撃荷重の吸収と、乗員への衝撃伝達の防止又は抑制の効果を得る。このために、まず荷重吸収量を増加させる効果を実現するため、上記様々な抵抗体を大径管に内蔵した。簡易には、衝撃吸収部材と別体の剛性、弾性又は二重環体を大径管内部へ挿入又は圧入することで、この各環体が環状段差部における塑性変形を邪魔することで、荷重吸収量を増やすことができる。また、大径管内へ緩衝流体を封入した密閉部を内蔵しても、緩衝流体の流出抵抗を利用して荷重吸収量を増加させることができる。環体を用いた場合、容易に抵抗体を構成できるが、速度低減作用又は没入抑制作用の程度が比較的小さく、また設計的に前記作用の発生タイミングを正確に定めにくい。対して、緩衝流体を用いた場合、密閉部の構成や、初期状態での緩衝流体の保持に工夫が必要となるが、速度低減作用又は没入抑制作用の程度が比較的大きく、また設計的に前記作用の発生タイミングを定めやすくなる利点がある。
【0048】
次に、荷重吸収量の増加を衝突時の速度の違いに基づいて選択的に発揮できる効果を得るため、抵抗体による速度低減作用又は没入抑制作用の発生を、大径管に対する小径管の没入速度又は量の違い、具体的には低速又は高速衝突の違いに基づいて異なるようにしている。例えば各環体について、環状段差部の変形を規制するために同様な環体を大径管内部に設ける先行技術(例えば特公昭47-014535号、USP3,599,757等)が見受けられるが、これら先行技術の各環体は大径管内部に固定であり、あくまで塑性変形の態様を決定する働きしか持ち得ない。本発明では、前記環体が大径管内部を移動自在に挿入又は圧入する結果、低速衝突から高速衝突にわたって連続的に、又は低速衝突に対して高速衝突へ追加的に、小径管に対する速度低減作用や没入抑制作用を付加し、目的とする低速又は高速衝突の違いに基づく異なる変位-荷重特性を実現する効果を得る。
【0049】
上記速度低減作用又は没入抑制作用は、緩衝流体を用いた抵抗体の場合に、より明確に現れる。緩衝流体を用いるには、上述したように密閉部の構成や、初期状態での緩衝流体の保持に工夫が必要となるが、吐出孔から緩衝流体を排出する際に得られる流出抵抗は、大径管に対する小径管の没入速度に比例して大きくしやすく、また前記没入速度に比例した大きさで安定した流出抵抗を発生させることができる。このため、低速衝突において、緩衝流体の排出を伴わない可撓性発泡体又は可撓性袋体の変形のみとしたり、少量の緩衝流体の排出で済むようにすれば、衝撃荷重の吸収は主として塑性変形のみとしながら、高速衝突では大径管に対する小径管の没入速度に比例した大きさで安定した流出抵抗を発生させ、必要十分な速度低減作用及び没入抑制作用を得ることができる。このように、本発明は低速衝突と高速衝突とで異なる荷重-変位特性を実現することで、多様な衝突に対して適切に衝撃荷重を吸収する衝撃吸収部材を提供することができるわけである。
【図面の簡単な説明】
【図1】剛性環体を抵抗体として大径管内部に挿入した衝撃吸収部材の斜視図である。
【図2】同衝撃吸収部材の断面図である。
【図3】図2中A矢視拡大断面図である。
【図4】図2中B−B断面図である。
【図5】低速衝突時における剛性環体の移動を表す図2相当断面図である。
【図6】高速衝突時における剛性環体の移動を表す図2相当断面図である。
【図7】抵抗体として二重環体を大径管内部に挿入して抵抗体を構成した衝撃吸収部材の図2相当断面図である。
【図8】掛止環部を設けた剛性環体を大径管内部に挿入し、この剛性環体をコイルスプリングで支持した抵抗体を構成した衝撃吸収部材の図2相当断面図である。
【図9】高速衝突時における前記衝撃吸収部材の図6相当断面図である。
【図10】環状段差部から大径管の後端端縁に至る大きさの弾性環体を大径管内部に挿入(又は圧入)して抵抗体を構成した衝撃吸収部材の図2相当断面図である。
【図11】高速衝突時における前記衝撃吸収部材の図6相当断面図である。
【図12】緩衝流体を含浸させた可撓性発泡体を内蔵した密閉部からなる抵抗体を構成した衝撃吸収部材の図2相当断面図である。
【図13】高速衝突時における前記衝撃吸収部材の図6相当断面図である。
【図14】緩衝流体を充填した可撓性ドーナツ状袋体を内蔵した密閉部からなる抵抗体を構成した衝撃吸収部材の図2相当断面図である。
【図15】高速衝突時における前記衝撃吸収部材の図6相当断面図である。
【図16】緩衝流体を充填した可撓性方形状袋体を内蔵した密閉部からなる抵抗体を構成した衝撃吸収部材の図2相当断面図である。
【図17】高速衝突時における前記衝撃吸収部材の図6相当断面図である。
【符号の説明】
1 剛性環体
2 大径管
3 衝撃吸収部材
4 小径管
7 環状段差部

Claims (13)

  1. 塑性加工可能な直管を部分的に縮径又は拡径し、互いに向かい合う中間端縁を環状段差部により結んだ外径の異なる小径管及び大径管からなり、環状段差部は小径管の中間端縁から折り返した円弧状断面の小環部と、大径管の中間端縁から折り返した円弧状断面の大環部とを結んだ断面構造である衝撃吸収部材において、大環部から大径管側面にかけて内向きに捲れ込む塑性変形により大径管内部に向けて没入する小径管の前記没入速度又は量を低減又は抑制する抵抗体を大径管内部に内蔵したことを特徴とする衝撃吸収部材。
  2. 抵抗体は、外周が大径管内径より小さく、かつ内周が小環部外径より大きな剛性環体であり、前記剛性環体を大径管内部に挿入している請求項1記載の衝撃吸収部材。
  3. 抵抗体は、外周が大径管内径より小さく、かつ内周が小環部外径より大きな弾性環体であり、前記弾性環体を大径管内部に挿入している請求項1記載の衝撃吸収部材。
  4. 抵抗体は、外周が大径管内径より小さい弾性環体と、内周が小環部外径より大きな剛性環体とを嵌合により一体にした二重環体であり、前記二重環体を大径管内部に挿入している請求項1記載の衝撃吸収部材。
  5. 抵抗体は、外周が大径管内径に略等しく、かつ内周が小環部外径より大きな剛性環体であり、前記剛性環体を大径管内部に圧入している請求項1記載の衝撃吸収部材。
  6. 抵抗体は、外周が大径管内径に略等しく、かつ内周が小環部外径より大きな弾性環体であり、前記弾性環体を大径管内部に圧入している請求項1記載の衝撃吸収部材。
  7. 抵抗体は、外周が大径管内径に略等しい弾性環体と、内周が小環部外径より大きな剛性環体とを嵌合により一体にした二重環体であり、前記二重環体を大径管内部に圧入している請求項1記載の衝撃吸収部材。
  8. 抵抗体は、弾性体により大径管に対して弾支した請求項1記載の衝撃吸収部材。
  9. 抵抗体は、緩衝流体を封入した密閉部からなり、該密閉部は密閉部から大径管外部へ緩衝流体を排出する吐出孔を有し、大径管内部に向けて没入する小径管に押圧されて前記吐出孔から緩衝流体を排出することで小径管の没入速度又は量を低減又は抑制する請求項1記載の衝撃吸収部材。
  10. 密閉部は、小環部を塞ぐ押し蓋と、大径管の後端端縁を塞ぐ閉じ蓋と、大径管側面とから形成し、吐出孔を閉じ蓋に設けた請求項9記載の衝撃吸収部材。
  11. 吐出孔は、オリフィス孔である請求項9記載の衝撃吸収部材。
  12. 抵抗体は、緩衝流体を含浸させた、連続気泡を有する可撓性発泡体を封入した密閉部からなる請求項9記載の衝撃吸収部材。
  13. 抵抗体は、緩衝流体を充填した、吐出孔に連通する放出孔を有する可撓性袋体を封入した密閉部からなる請求項9記載の衝撃吸収部材。
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