JP2004237889A - 衝撃吸収装置の取付構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】車体メンバの構成又は構造はそのままとして、塑性変形タイプの衝撃吸収装置を車体メンバに取り付ける取付構造に改良を加え、局所的な荷重の印加による車体メンバの圧潰又は変形を防止する。
【解決手段】塑性変形する直管体を部分的に縮径又は拡径して段差7を介した小径管2及び大径管3を形成し、小径管2をバンパ補強材10に接続し、大径管3端面をサイドメンバ8前端に突き当てて支持する有段管体であって、前記大径管3端縁に対して大径管3外面からサイドメンバ8にかけて荷重伝達体12,12を覆設した衝撃吸収装置1の取付構造である。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車等のバンパに加えられた衝撃エネルギーを吸収して車体メンバへの前記衝撃エネルギーの伝達を防止又は抑制する衝撃吸収装置、特に衝撃エネルギーを塑性変形の変形エネルギーとして吸収する衝撃吸収装置を車体メンバに対して取り付ける衝撃吸収装置の取付構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車等のバンパに加えられた荷重が車体メンバに伝達されることを防止又は低減するため、通常、前記荷重の衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収装置をバンパ(通常、バンパ補強材)及び車体メンバ(例えばサイドメンバ前端)間に介装する。この衝撃吸収装置には、シリンダタイプや塑性変形タイプ等、様々な種類があるが、後者の塑性変形タイプの衝撃吸収装置は、構造が簡素でシリンダタイプに比べて軽量ながら衝撃エネルギーの吸収性能に優れ、車両重量の違いに応じて柔軟に設計を変更できる利点があることから、例えば特許文献1〜3に見られるように、多用されている。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−047952号公報(2〜5頁、図1)
【特許文献2】
特開2001−138841号公報(2〜4頁、図1及び図4)
【特許文献3】
米国特許第6,293,587号明細書(9〜12頁、図1及び図4)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
塑性変形タイプの衝撃吸収装置1は、例えば図9に見られるように、軸方向(塑性変形をもたらす形状変形方向、通常車両の前後方向に一致)に塑性変形を引き起こすため、車体メンバ(図9中はサイドメンバ8)に後端を突き当て、バンパ(図9中はバンパ補強材10)から加えられる荷重により車体メンバに突き当てた後端に向けて全体が圧縮する態様で塑性変形し、前記荷重の衝撃エネルギーを吸収する。これから、塑性変形タイプの衝撃吸収装置1を用いた場合、大径管3の側面端縁11が車体メンバに局所的な荷重を加える。
【0005】
こうした塑性変形タイプの衝撃吸収装置1が、十分に衝撃エネルギーを吸収するには、位置固定された後端に対して全体が圧縮する必要がある。しかし、上述のように局所的な荷重が加えられると、図10に見られるように、後端を位置固定に支持するはずの車体メンバが圧潰又は変形(図示では取付台座9の上下縁が大径管3端面を境界として前方に屈曲)し、衝撃吸収装置1が十分に塑性変形できず、結果として車体メンバへの荷重の伝達を防止又は低減できない問題が生じる。例えば、衝撃吸収装置1を支持するサイドメンバ8は中空構造であり、実質的には大径管端面が当接するサイドメンバ8前端の側面縁に荷重が集中することになる。
【0006】
上記問題を解決するには、衝撃吸収装置の後端を接続する車体メンバの部位の構造強度(剛性)を高めること、例えば板厚を増やすといった対策が考えられる。しかし、こうした対策は材料コストを高くするほか、部分的な構造強度の向上は、車体メンバ全体に対するバランスを欠くことにもなりかねない。そこで、車体メンバの構成又は構造はそのままとして、塑性変形タイプの衝撃吸収装置を車体メンバに取り付ける取付構造に改良を加え、局所的な荷重の印加による車体メンバの圧潰又は変形を防止することとし、検討した。
【0007】
【課題を解決するための手段】
検討の結果開発したものが、塑性変形する直管体を部分的に縮径又は拡径して段差を介した小径管及び大径管を形成し、小径管をバンパに接続し、大径管端面を車体メンバに突き当てて支持する有段管体であって、大径管外面と車体メンバとを結ぶ荷重伝達体を大径管端縁から離隔してこの大径間端縁に対して覆設した衝撃吸収装置の取付構造である。ここで、大径管端面とは、管体構造の大径管の側面に囲まれた仮想的な面を指し、実際に車体メンバに突き当てる部位は、前記大径管の側面端縁となる。
【0008】
本発明を適用する衝撃吸収装置は、単数の小径管及び大径管からなる二段管体を基本とするが、小径管よりも更に径の小さな管部、又は大径管よりも更に径の大きな管部を形成して、例えば小径管、中径管及び大径管からなる三段以上の多段管体に適用することもできる。この場合、三段管体の小径管及び中径管、中径管及び大径管の関係それぞれが、二段管体の小径管及び大径管の関係に相当する。
【0009】
上記衝撃吸収装置は、軸方向(小径管及び大径管の並び方向、通常車両の前後方向に一致)から受けた衝撃エネルギーにより小径管を大径管に押し込んで没入させ、段差を介して小径管により大径管を内側へ捲り込ませ、前記衝撃エネルギーを大径管の変形エネルギーとして吸収する。
【0010】
本発明の取付構造は、大径管外面と車体メンバとを結ぶ荷重伝達体を大径管端縁から離隔してこの大径間端縁に対して覆設することで、車体メンバに対する荷重の印加範囲を拡大及び分散させる。すなわち、荷重伝達体は、面材、板材又は棒材のいずれでもよいが、大径管端縁から離れた位置関係で大径管外面と車体メンバとにわたって架設する部材である。この荷重伝達体による荷重の印加範囲の拡大及び分散は、局所的な荷重の印加による車体メンバの圧潰又は変形を防止する。ここで、荷重伝達体により分散される荷重は分散される印加範囲で均一であることが望ましいため、荷重伝達体は衝撃吸収装置の軸方向中心から点対称位置関係で大径管外面と車体メンバとを結ぶとよい。
【0011】
また、荷重伝達体が上述のような荷重の印加範囲を拡大及び分散するには、荷重伝達体へ荷重が均等に伝達されるように、衝撃吸収装置自体が軸方向に安定して塑性変形することが望ましい。そこで、本発明の衝撃吸収装置を構成する有段管体は、小径管及び大径管を軸方向に縮退し、小曲率半径断面の小径管側縁と大曲率半径断面の大径管側縁とを環状側面で結んだ段差を形成する構造とする。すなわち、小径管が大径管に予め若干没入した状態を初期状態とすることで、小径管が傾倒することなく安定して大径管に没入し、衝撃エネルギーを吸収する塑性変形を導くようにする。
【0012】
具体的な荷重伝達体としては、車体メンバ前端外周に沿う車体取付縁と、大径管の外面に沿う管体取付縁とを有する湾曲面材からなる構成を示すことができる。この荷重伝達体は、上述のように荷重の印加範囲を拡大するが、車体取付縁が車体メンバ前端の外周より内側にあると、単に印加範囲が拡大するのみで、やはり車体取付縁の範囲で荷重が集中し、車体メンバが圧潰又は変形する可能性が残る。荷重伝達体は、車体取付縁を車体メンバ前端外周に沿わせることにより、車体メンバ前端の圧潰又は変形の可能性を減らす働きを有する。
【0013】
このように、荷重伝達体は、本来断面形状の異なる大径管の断面(=外周形状)と車体メンバ前端の断面(=外周形状)とを一致させるため、大径管外面に沿う管体取付縁から車体メンバ前端外周に沿う車体取付縁へと荷重の伝達範囲を拡大する仲介部材(アダプタ)とみることができる。
【0014】
ここで、上記荷重伝達体は、車体メンバ前端外周に沿う車体取付縁を除く周縁がすべて大径管の外面に沿う管体取付縁を有する湾曲面材からなる構成がより好ましい。荷重伝達体は、車体取付縁を車体メンバ前端外周と、管体取付縁を大径管の外面とにそれぞれ沿う湾曲面材であることから、軸方向からの荷重に対して一定程度の剛性を発揮するが、それでも側方に開放した架設構造であれば、軸方向に座屈する可能性が残る。車体メンバ前端外周に沿う車体取付縁を除く周縁がすべて大径管の外面に沿う管体取付縁を有する湾曲面材からなる荷重伝達体は、側方を閉塞してすべての外周縁を大径管に沿わせることで、座屈に対する構造強度を高め、荷重の印加範囲を拡大及び分散させる働きを全うすることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。図1は本発明を適用した衝撃吸収装置1の取付構造を表した斜視図、図2は図1中A矢視部拡大斜視図、図3は別例の図2相当斜視図、図4は同衝撃吸収装置1の取付構造の軸方向を表した断面図、図5は同衝撃吸収装置1の取付構造の軸方向を表した平面図、図6は同衝撃吸収装置1の取付構造の軸直交方向を表した図4中B−B断面図であり、図7は荷重Fを受けて塑性変形した衝撃吸収装置1の取付構造の軸方向を表した図4相当断面図である。
【0016】
本例の取付構造に用いる衝撃吸収装置1は、図1〜図6(図3除く)に見られるように、塑性変形する直管体を部分的に縮径又は拡径して段差を介した小径管2及び大径管3を形成した二段管体からなる。本例の二段管体は、小径管2及び大径管3を軸方向(図1中一点鎖線参照、以下同じ)に縮退し、小曲率半径断面の小径管側縁4と大曲率半径断面の大径管側縁5とを環状側面6で結んだ段差7を形成している。
【0017】
本例の取付構造は、車体メンバを構成するサイドメンバ8前端(車体メンバ前端)に取り付けた取付台座9に大径管3端面を突き当て、溶接により衝撃吸収装置1をサイドメンバ8に固着している。バンパ補強材10は、左右の衝撃吸収装置1,1の各小径管2,2に架設する。取付台座9は、開放されたサイドメンバ8前端を閉蓋する板材で、高さ方向に大径管3より長く、幅方向に大径管3よりも短い。このため、大径管3は上下に分画された範囲で側面端縁11を部分的に取付台座9に当接させることになる。
【0018】
本例は、大径管3端縁の上下にそれぞれ一対の荷重伝達体12,12を覆設している。各荷重伝達体12は、サイドメンバ8前端に取り付けた取付台座9外周に沿う車体取付縁13を除く周縁がすべて大径管3の外面に沿う管体取付縁14を有する湾曲面材からなる(図2参照)。本例は、荷重伝達体12の構造強度を高めるため、管体取付縁14及び車体取付縁13を直線で結ばず、軸直交方向に膨出した膨出湾曲面15を形成し、各荷重伝達体12の外観視形状を略錐台形状にしている。
【0019】
荷重伝達体12は、大径管3外面とサイドメンバ8前端とを結び、荷重の印加範囲を大径管3端面からサイドメンバ8前端の取付台座9の大きさへと拡大できればよい。これから、例えば図3に見られるように、リブ16を一体に設けて剛性を増した板材からなる荷重伝達体17で、大径管3外面とサイドメンバ8前端とを結んでもよい。リブ16は、基本が平坦な板材の剛性を増加させ、荷重により荷重伝達体17が屈曲しないようにしている。
【0020】
荷重伝達体12を大径管3端縁に対して覆接した取付構造では、バンパ補強材10から小径管2に印加される荷重Fは、図7に見られるように、大径管3端面より広い上下の荷重伝達体12の車体取付縁13に囲まれた範囲に拡大及び分散される(図6参照)。そして、取付台座9は全体として緩やかに撓むのみで、もちろんサイドメンバ8前端の圧潰又は変形を引き起こさない。
【0021】
このように、荷重伝達体12を大径管3端縁に対して覆設した取付構造は、荷重Fの印加範囲を大径管3端面から荷重伝達体12の車体取付縁13に囲まれる範囲に拡大し、サイドメンバ8前端の圧潰又は変形を防止する。これを別の観点から説明すると、大径管3端面に押圧されて前方に向けて屈曲しようとする取付台座9の上下縁を荷重伝達体12,12が押し返すことで取付台座9の屈曲、ひいてはサイドメンバ8前端の圧潰又は変形を防止する。
【0022】
【実施例】
次に、本発明に基づく取付構造の有用性を確認するため、荷重伝達体の有無の違いによる荷重−変位特性(小径管の没入量=変位に対する小径管に加わる荷重の変化で表す、吸収する衝撃エネルギーはグラフの面積に相当する)の比較を試みた。実施例(図4相当)及び比較例(図8相当)は、共に二段管体からなる衝撃吸収装置で構成し、実施例には大径管端縁に対して外観略錐台形状の荷重伝達体を覆設している。実施例及び比較例は車重1530kgの車両の弾塑性を備えたサイドメンバ前端に取付台座を介して取り付け、初速度15km/hで正面衝突したという条件下で、コンピュータ解析による荷重−変位特性をそれぞれ算出した。試験結果を図8に示す。
【0023】
試験結果から明らかなように、小径管の変位60mm付近までは、実施例及び比較例共にほぼ同じ特性を示している。しかし、比較例では小径管の変位60mmを超えるあたりから小径管に印加できる荷重が波打ち、小径管の変位100mmでグラフが途切れている。これは、小径管の変位60mmを超えた時点でサイドメンバ前端の圧潰又は変形が生じ、最終的にはサイドメンバ全体の変形によってもはや荷重を吸収できなくなったことを意味する。
【0024】
これに対し、本発明に基づく実施例では、小径管の変位60mmを超えた後も、吸収できる荷重が緩やかに増加しており、小径管の変位130mmに至って初めて減少傾向を示すが、なお荷重を吸収しようとしている(実際には小径管の変位125mm付近でサイドメンバ前端が若干変形し始めることを確認している)。これは、サイドメンバ前端の圧潰又は変形を防止又は抑制し、小径管に大径管が没入できる限り衝撃エネルギーを吸収し続けることができることを意味している。
【0025】
本発明を適用する衝撃吸収装置は、塑性変形により衝撃エネルギーを吸収するので、前記塑性変形ができるだけ安定して引き起こされることが重要である。試験結果から、本発明の取付構造は、サイドメンバ前端の圧潰又は変形を防止又は抑制し、衝撃吸収装置の塑性変形を安定して引き起こすことが分かり、従来の取付構造に対して本発明の効果を確認できたと言える。
【0026】
【発明の効果】
本発明により、車体メンバの構成又は構造はそのままとして、塑性変形タイプの衝撃吸収装置を車体メンバに取り付ける取付構造において、局所的な荷重の印加による車体メンバの圧潰又は変形を防止できる効果を得る。これは、荷重の印加範囲を拡大及び分散する働きを有する荷重伝達体によりもたらされる効果である。また、本発明の取付構造は車体メンバの圧潰又は変形を引き起こさないので、衝撃吸収装置は設計値に近い荷重−変位特性を達成できるようになる。このように、本発明の取付構造は、実質的な衝撃吸収装置の性能向上を実現する効果をも有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した衝撃吸収装置の取付構造を表した斜視図である。
【図2】図1中A矢視部拡大斜視図である。
【図3】別例の図2相当斜視図である。
【図4】同衝撃吸収装置の取付構造の軸方向を表した断面図である。
【図5】同衝撃吸収装置の取付構造の軸方向を表した平面図である。
【図6】同衝撃吸収装置の取付構造の軸直交方向を表した図4中B−B断面図である。
【図7】荷重を受けて塑性変形した衝撃吸収装置の取付構造の軸方向を表した図4相当断面図である。
【図8】実施例及び比較例の荷重−変位特性を表すグラフである。
【図9】従来の衝撃吸収装置の取付構造を表した斜視図である。
【図10】荷重を受けて塑性変形した衝撃吸収装置の取付構造の軸方向を表した図8相当断面図である。
【符号の説明】
1 衝撃吸収装置
2 小径管
3 大径管
7 段差
8 サイドメンバ
9 取付台座
10 バンパ補強材
12 荷重伝達体
13 車体取付縁
14 管体取付縁
15 膨出湾曲面
F 荷重

Claims (4)

  1. 塑性変形する直管体を部分的に縮径又は拡径して段差を介した小径管及び大径管を形成し、小径管をバンパに接続し、大径管端面を車体メンバに突き当てて支持する有段管体であって、大径管外面と車体メンバとを結ぶ荷重伝達体を大径管端縁から離隔して該大径間端縁に対して覆設してなる衝撃吸収装置の取付構造。
  2. 有段管体は、小径管及び大径管を軸方向に縮退し、小曲率半径断面の小径管側縁と大曲率半径断面の大径管側縁とを環状側面で結んだ段差を形成してなる請求項1記載の衝撃吸収装置の取付構造。
  3. 荷重伝達体は、車体メンバ前端外周に沿う車体取付縁と、大径管の外面に沿う管体取付縁とを有する湾曲面材からなる請求項1記載の衝撃吸収装置の取付構造。
  4. 荷重伝達体は、車体メンバ前端外周に沿う車体取付縁を除く周縁がすべて大径管の外面に沿う管体取付縁を有する湾曲面材からなる請求項3記載の衝撃吸収装置の取付構造。
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