JP3598931B2 - 衝撃吸収連結構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は衝撃吸収連結構造に係り、特に、自動車等の車両における衝撃吸収連結構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車等の車両における衝撃吸収連結構造の一例としては、特開平11−157468号公報が知られている。
【0003】
図8に示される如く、この衝撃吸収連結構造では、車体100の前部100Aに平面視V字型のフレーム102が配設されている。このV字型フレーム102の前端102Aは、エンジンクロスメンバ104の車幅方向中央部分に連結されており、V字型フレーム102における左右の後端部102Bは、左右のフロントフレーム106における車両フロア下部にそれぞれ連結されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この衝撃吸収連結構造では、車両の操縦安定性及び振動騒音性向上のために、V字型フレーム102の剛性を上げる必要があるが、V字型フレーム102の剛性を上げ過ぎると、車両が衝突、特に車両が前突した場合に、V字型フレーム102がつっかえ棒となって、フロントフレーム106の軸圧縮変形が妨げられる。このため、衝突時のエネルギー吸収性能が低下する。これを改善するため、V字型フレーム102にクラッシャブルビードを形成するこも考えられるが、この場合には、クラッシャブルビードによって、V字型フレーム102の剛性が低下し、操縦安定性能及び振動騒音性能が低下する。この結果、操縦安定性能及び振動騒音性能と衝突安全性能との両立は困難であった。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、操縦安定性能及び振動騒音性能と衝突安全性能との両立が図れる衝撃吸収連結構造を得ることが目的である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の本発明は、車幅方向に延設される横方向部材の車幅方向略中央と、車体前後方向に延設される左右の縦方向部材とを連結する少なくとも2本の主連結部材を有する衝撃吸収連結構造において、
前記主連結部材における前記横方向部材との第1連結部の近傍と、前記主連結部材における前記縦方向部材との第2連結部の近傍と、のうちの少なくとも一方に車両衝突時に変形により前記主連結部材に入力する衝撃を吸収する衝撃吸収部を設けると共に、前記衝撃吸収部は、前記主連結部材における端部において軸径が変化する部位であることを特徴とする。
【0007】
従って、車幅方向に延設される横方向部材の車幅方向略中央と、車体前後方向に延設される左右の縦方向部材とを連結する少なくとも2本の主連結部材によって、操縦安定性能及び振動騒音性能を確保することができる。また、車両衝突時に衝撃が主連結部材に入力した場合には、主連結部材における横方向部材との第1連結部の近傍と、主連結部材における縦方向部材との第2連結部の近傍と、のうちの少なくとも一方に設けた衝撃吸収部によって主連結部材自身がエネルギーを吸収すると共に、衝撃吸収部が変形するため、主連結部材によって、縦方向部材の変形が邪魔されることが無く、主連結部材におけるエネルギー吸収が妨げられることもない。この結果、従来困難であった、操縦安定性能及び振動騒音性能と衝突安全性能との両立が図れる。また、主連結部材の端部における軸径の変化のみで所望の効果が得られるため、生産性が向上する。
【0008】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の衝撃吸収連結構造において、前記主連結部材は、中空パイプ材からなることを特徴とする。
【0009】
従って、請求項1に記載の内容に加えて、入力した衝撃によって、中空パイプの外周部に沿った円周上に応力集中が発生するため、全ての曲げ方向及び軸方向にも衝撃吸収部が変形可能となるため、エネルギー吸収性能が更に向上する。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明に係る衝撃吸収連結構造の第1実施形態を図1〜図5に従って説明する。
【0017】
なお、図中矢印FRは車体前方方向を、矢印UPは車体上方方向を示す。
【0018】
図5に示される如く、自動車車体10の前部10Aにおける下部には、縦方向部材としての左右一対のフロントサイドメンバ12、14が車体前後方向に沿って配設されいる。また、これらのフロントサイドメンバ12、14の下部には、車幅方向に沿って横方向部材としてのサスペンションメンバ16が架設されている。
【0019】
図1に示される如く、サスペンションメンバ16の車幅方向両端部16A、16Bは、それぞれフロントサイドメンバ12、14に固定されており、サスペンションメンバ16の車幅方向略中央部16Cには、ハンガーブレース20が取り付けられている。ハンガーブレース20は、平面視においてA字状とされており、前端部に配設された第1連結部となるブラケット22がボルト等の固定部材24または溶接によってサスペンションメンバ16の下面に固定されている。ブラケット22には中空パイプ材から成る左右一対の主連結部材26、28の各前端部26A、28Aが溶着されており、これらの主連結部材26、28の後端部26B、28Bは、それぞれフロントサイドメンバ12、14の下部にボルト等の固定部材30によって固定された第2連結部となるブラケット32に溶着されている。
【0020】
図2に示される如く、主連結部材28の前端部28Aの軸径R1は、前後方向中間部28Cの軸径R2に比べて小さく設定されており、前端部28Aと中間部28Cとの間の傾斜部36における小径側(この場合には、前端部28A側)の境界には衝撃吸収部としてのコーナーR部38が設定されている。
【0021】
なお、主連結部材28におけるモーメントの予想分布としては、図2に示される如く、コーナーR部38におけるモーメントMbが、前端部28Aとブラケット22との連結部39におけるモーメントMaより小さくなるが、コーナーR部38における曲率Rを、軸径R1、R2、主連結部材28の全長L1、及びコーナーR部38と連結部39との距離L2を考慮して、所定の範囲内の値に設定することで、前記モーメントMaとMbの大小関係を逆転して、連結部39に代えてコーナーR部38において変形させるようにできるため、変形時に、主連結部材28とブラケット22との干渉を防止できる。また、図1に示される如く、主連結部材26の前端部26Aも同様な構成となっており、傾斜部36における小径側の境界には衝撃吸収部としてのコーナーR部38が設定されている。
【0022】
図3に示される如く、主連結部材26の後端部26Bの軸径(前端部26Aと同じR1)は、前後方向中間部26Cの軸径に比べて小さく設定されており、後端部26Bと中間部26Cとの間の傾斜部40における小径側(この場合には、後端部26B側)の境界には衝撃吸収部としてのコーナーR部42が設定ている。なお、このコーナーR部42も、前記コーナーR部38と同様に設定されている。また、図1に示される如く、主連結部材28の後端部28Bも同様な構成となっており、傾斜部40における小径側の境界には衝撃吸収部としてのコーナーR部42が設定されている。また、ハンガーブレース20は、フロントサイドメンバ12、14の下部となる位置に略水平に配設されている。
【0023】
図1に示される如く、主連結部材26、28の前後方向中間部26C、28Cは、互いに中空パイプ材から成る従連結部材44によって、連結されている。この従連結部材44の両端部44A、44Bは、それぞれで主連結部材26、28の前後方向中間部26C、28Cに溶着されており、本実施形態においては、従連結部材44の軸径R3は、主連結部材26、28の前端部26A、28A及び後端部26B、28Bの軸径R1以下に設定されている。
【0024】
次に本実施形態の作用を説明する。
【0025】
本実施形態では、ハンガーブレース20を構成する左右の主連結部材26、28によって、車幅方向に延設されるサスペンションメンバ16の車幅方向略中央部16Cと、車体前後方向に延設される左右のフロントサイドメンバ12、14とが連結されている。このため、主連結部材26、28の前後方向中間部26C、28Cの軸径R2を大きくすることで、車体前部の剛性がアップし、操縦安定性能及び振動騒音性能を確保することができる。
【0026】
また、図4に示される如く、車両衝突(フルラップ正面衝突)時に、衝撃(図4の矢印F1及びF2)が主連結部材26、28に車体前方から入力した場合には、実線で示すように、主連結部材26、28におけるサスペンションメンバ16との第1連結部の近傍に設けたコーナーR部38によって主連結部材26、28自身が屈曲変形しエネルギーを吸収すると共に、主連結部材26、28におけるフロントサイドメンバ12、14との第2連結部の近傍に設けたコーナーR部42によって主連結部材自身26、28が軸圧縮変形しエネルギーを吸収する。また、衝撃吸収部26、28がこのように変形することによって、主連結部材26、28がフロントサイドメンバ12、14における軸圧縮機変形を邪魔することが無く、フロントサイドメンバ12、14におけるエネルギー吸収を妨げることもない。
【0027】
一方、車両衝突(オフセット正面衝突)時に、衝撃(図4の矢印F1、F3)が、主連結部材26、28に車体前方から入力した場合には、二点鎖線で示すように、主連結部材28におけるサスペンションメンバ16との第1連結部の近傍に設けたコーナーR部38と、主連結部材26におけるフロントサイドメンバ12との第2連結部の近傍に設けたコーナーR部42とによって主連結部材26、28自身が屈曲変形しエネルギーを吸収すると共に、主連結部材28におけるフロントサイドメンバ14との第2連結部の近傍に設けたコーナーR部42によって主連結部材自身28が軸圧縮変形しエネルギーを吸収する。また、衝撃吸収部26、28がこのように変形することによって、主連結部材26、28がフロントサイドメンバ12、14における軸圧縮機変形を邪魔することが無く、フロントサイドメンバ12、14におけるエネルギー吸収を妨げることもない。
【0028】
この結果、本実施形態においては、従来困難であった、操縦安定性能及び振動騒音性能と衝突安全性能との両立が図れる。
【0029】
また、本実施形態では、主連結部材26、28における、第2連結部としてのブラケット32より車体前方に位置する第1連結部としてのブラケット22がサスペンションメンバ16に連結された構成となっている。このため、主連結部材26、28がサスペンションメンバ16の後側となることで、操縦安定性能上有利となる。
【0030】
また、本実施形態では、主連結部材26、28は、車幅方向に延設する従連結部材44で連結されているため、従連結部材44は、フロントサイドメンバ12、14における車体前後方向の変形を邪魔し難くい。この結果、衝突安全性能を妨げることなく、主連結部材26、28を補強できる。
【0031】
また、本実施形態では、衝撃吸収部が主連結部材26、28における軸径が変化するコーナーR部38、42であるため、主連結部材26、28における軸径の変化のみで所望の効果が得られるため、生産性が向上する。
【0032】
また、本実施形態では、主連結部材26、28が中空パイプ材からなるため、入力した衝撃に対よって、中空パイプの外周部に沿った円周上に応力集中が発生する。この結果、全ての曲げ方向及び軸方向にもコーナーR部38、42が変形可能となるため、エネルギー吸収性能が更に向上する。
【0033】
次に、本発明に係る衝撃吸収連結構造の第2実施形態を図6に従って説明する。
【0034】
なお、第1実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
【0035】
図6に示される如く、本実施形態では、主連結部材26、28の前後方向中間部26C、28Cにおける軸径R4が、前端部26A、28A及び後端部26B、28Bの軸径R1(R4=R1)と等しくなっており、これらの前後方向中間部26C、28Cの両端部には、衝撃吸収部としてのコーナーR部38が設定されている。
【0036】
次に本実施形態の作用を説明する。
【0037】
本実施形態においては、第1実施形態の作用に加えて、車両衝突(フルラップ正面衝突及びオフセット正面衝突)時に衝撃が主連結部材26、28に車体前方から入力した場合には、主連結部材26、28の前後方向中間部26C、28Cに設けたコーナーR部38においても主連結部材26、28自身が屈曲または軸圧縮変形しエネルギーを吸収する。この結果、衝突安全性能を更に向上することができる。
【0038】
次に、本発明に係る衝撃吸収連結構造の第3実施形態を図7に従って説明する。
【0039】
なお、第1実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
【0040】
図7に示される如く、本実施形態では、主連結部材26、28の前端部26A、28Aのみの軸径R1が他の部位の軸径R2に比べて小さくなっており、これらの前端部26A、28Aのみに衝撃吸収部としてのコーナーR部38が設定されている。
【0041】
次に本実施形態の作用を説明する。
【0042】
本実施形態においては、車両衝突(フルラップ正面衝突及びオフセット正面衝突)時に衝撃が主連結部材26、28に車体前方から入力した場合には、主連結部材26、28の前端部26A、28Aに設けたコーナーR部38においてのみ主連結部材26、28自身が屈曲または軸圧縮変形しエネルギーを吸収する。この結果、衝突安全性能を向上することができる。また、主連結部材26、28の前端部26A、28Aのみの軸径をR1とすれば良いため、主連結部材26、28の製造が容易となる。
【0043】
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、主連結部材26、28を中空パイプ材で構成したが、中空パイプ材に代えて、矩形断面形状の閉断面構造部材、コ字状断面形状の開断面構造部材、板材等によって主連結部材26、28を構成しても良い。また、上記実施形態では、ブラケット22、24を使用したが、主連結部材26、28の各前端部26A、28Aまたは後端部26B、28Bを直接サスペンションメンバ16またはフロントサイドメンバ12、14Mに固定しても良い。
【0044】
また、上記実施形態では、縦方向部材をフロントサイドメンバ12、14とし、横方向部材をサスペンションメンバ16として説明したが、縦方向部材及び横方向部材は、これらの部材に限定されない。また、本発明の衝撃吸収連結構造は、車体後部にも適用可能である。
【0045】
また、本実施形態では、左右の主連結部材26、28を従連結部材44によって連結したが、従連結部材44を除いた構成としても良い。また、従連結部材44の軸径R3を、主連結部材26、28における各前端部26A、28Aまたは後端部26B、28Bの軸径R1より大きくしても良い。また、矩形断面形状の閉断面構造部材、コ字状断面形状の開断面構造部材、板材等によって従連結部材44を構成しても良い。
【0046】
【発明の効果】
請求項1に記載の本発明は、車幅方向に延設される横方向部材の車幅方向略中央と、車体前後方向に延設される左右の縦方向部材とを連結する少なくとも2本の主連結部材を有する衝撃吸収連結構造において、主連結部材における横方向部材との第1連結部の近傍と、主連結部材における縦方向部材との第2連結部の近傍と、のうちの少なくとも一方に車両衝突時に変形により主連結部材に入力する衝撃を吸収する衝撃吸収部を設けると共に、衝撃吸収部は、主連結部材における端部において軸径が変化する部位であるため、操縦安定性能及び振動騒音性能と衝突安全性能との両立が図れると共に、軸径の変化のみで所望の効果が得られるため、生産性が向上するという優れた効果を有する。
【0047】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の衝撃吸収連結構造において、前記主連結部材は、中空パイプ材からなるため、請求項1に記載の効果に加えて、エネルギー吸収性能が更に向上するという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る衝撃吸収連結構造を示す車体下方から見た平面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る衝撃吸収連結構造の要部と予想モーメント分布を示す車体下方から見た拡大平面図である。
【図3】図1の3−3線に沿った断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る衝撃吸収連結構造の作用説明図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る衝撃吸収連結構造が適用された車体を示す斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る衝撃吸収連結構造を示す車体下方から見た平面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る衝撃吸収連結構造を示す車体下方から見た平面図である。
【図8】従来の衝撃吸収連結構造を示す平面図である。
【符号の説明】
12 フロントサイドメンバ(縦方向部材)
14 フロントサイドメンバ(縦方向部材)
16 サスペンションメンバ(横方向部材)
20 ハンガーブレース
22 ブラケット(第1連結部)
26 主連結部材
28 主連結部材
32 ブラケット(第2連結部)
36 傾斜部
38 コーナーR部(衝撃吸収部)
40 傾斜部
42 コーナーR部(衝撃吸収部)
44 従連結部材
Claims (2)
- 車幅方向に延設される横方向部材の車幅方向略中央と、車体前後方向に延設される左右の縦方向部材とを連結する少なくとも2本の主連結部材を有する衝撃吸収連結構造において、
前記主連結部材における前記横方向部材との第1連結部の近傍と、前記主連結部材における前記縦方向部材との第2連結部の近傍と、のうちの少なくとも一方に車両衝突時に変形により前記主連結部材に入力する衝撃を吸収する衝撃吸収部を設けると共に、前記衝撃吸収部は、前記主連結部材における端部において軸径が変化する部位であることを特徴とする衝撃吸収連結構造。 - 前記主連結部材は、中空パイプ材からなることを特徴とする請求項1に記載の衝撃吸収連結構造。
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