JP5570100B2 - エネルギ吸収体、およびエネルギ吸収方法 - Google Patents

エネルギ吸収体、およびエネルギ吸収方法 Download PDF

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本発明は、エネルギ吸収体、およびエネルギ吸収方法に関する。
たとえば、自動車等の車両には、衝突時などにおける衝撃エネルギを吸収するエネルギ吸収体が設けられている。エネルギ吸収体は、例えば、繊維強化プラスチックから形成された中空成形体を用い、衝撃エネルギを自身の破壊によって吸収している(特許文献1、2を参照)。
繊維強化プラスチックからなる中空成形体を用いるエネルギ吸収体において、より効率的にエネルギを吸収させるために、繊維の開裂方向(周方向)を制御する方法と、開裂のトリガ部になる中空成形体の先端形状を工夫する方法とが採用されている。
前者の開裂方向を制御する方法については、複数の凹凸形状を設けた押圧部材を使い、繊維が周方向に複数に拡開するように制御することによって、エネルギ吸収の効率化を図っている(特許文献1を参照)。
後者の中空成形体の先端形状を工夫する方法については、中空成形体の先端をテーパ形状の複数の凹凸形状とし、衝突初期の荷重の低下を防ぐことによって、エネルギ吸収の効率化を図っている(特許文献2を参照)。
いずれの方法においても、エネルギ吸収については、層間剥離力および繊維の引っ張り破断力を利用している。
特開2005−233263号公報 特開2006−125531号公報
この種のエネルギ吸収体にあっては、より大きなエネルギ吸収量を実現することによって、車両の軽量化などに寄与することが要請されている。
しかしながら、従来のエネルギ吸収体にあっては、エネルギ吸収の効率化つまりエネルギ吸収量の向上は、層間剥離力および繊維の引っ張り破断力をいかに大きくするかにかかっており、材料特性の限界もあり十分な効率化を得ることが難しい。
本発明の目的は、より大きなエネルギ吸収量の実現が可能なエネルギ吸収体、およびエネルギ吸収方法を提供することにある。
上記目的を解決するための本発明に係るエネルギ吸収体は、壁部によって囲まれる中空部を備え、繊維強化プラスチックから形成された中空成形体を有するエネルギ吸収体である。前記中空成形体は、前記壁部に圧縮荷重が作用したときに、前記壁部の外表面が前記中空部の中に折り返されるように前記壁部を前記中空部の中に折り曲げ、内側に折り曲げられた壁部を詰め込む前記中空部の中において、折り曲げられた壁部同士を相互に接触させることによって、前記中空成形体の単体によってエネルギを吸収する。エネルギ吸収体は、前記中空成形体に取り付けられ圧縮荷重を前記中空成形体の前記壁部に作用させる押圧部材をさらに有し、前記押圧部材は、前記壁部の先端部が当接することによって前記壁部を前記中空部の中に折り曲げる凹部が形成されている。前記中空成形体は筒形状を有し、筒状の軸方向から見た前記中空部の大きさは、前記中空部の中に折り曲げた前記壁部同士を相互に接触させる大きさである。
上記目的を解決するための本発明に係るエネルギ吸方法は、壁部によって囲まれる中空部を備え、繊維強化プラスチックから形成された中空成形体によってエネルギを吸収する。そして、前記中空成形体の前記壁部に圧縮荷重が作用したときに、前記壁部の外表面が前記中空部の中に折り返されるように前記壁部を前記中空部の中に折り曲げ、内側に折り曲げられた壁部を詰め込む前記中空部の中において、折り曲げられた壁部同士を相互に接触させることによって、前記中空成形体の単体によってエネルギを吸収する。エネルギ吸収体は、前記中空成形体に取り付けられ圧縮荷重を前記中空成形体の前記壁部に作用させる押圧部材をさらに有し、前記押圧部材は、前記壁部の先端部が当接することによって前記壁部を前記中空部の中に折り曲げる凹部が形成されている。前記中空成形体は筒形状を有し、筒状の軸方向から見た前記中空部の大きさは、前記中空部の中に折り曲げた前記壁部同士を相互に接触させる大きさである。
本発明によれば、層間剥離力および繊維の引っ張り破断力を利用してエネルギを吸収するのに加えて、曲げエネルギを利用した繊維破断によってもエネルギを吸収できる。さらに、折り曲げられた壁部同士を相互に接触させ、壁部同士を相互に押し付け合わせて、圧縮による摩擦力による熱または繊維の破断の形によって、中空成形体の単体によってエネルギを吸収できる。したがって、より大きなエネルギ吸収量の実現が可能となる。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
実施形態
図1は、本発明に係るエネルギ吸収体21を適用したフロントサイドメンバ10の要部を示す斜視図、図2は、実施形態のエネルギ吸収体21を示す断面図、図3は、図2に示される中空成形体30および押圧部材40を示す分解斜視図、図4は、押圧部材40を示す断面図である。
図1を参照して、車体骨格部材としてのフロントサイドメンバ10は、自動車の車体前方の車幅方向両側下方に位置し、車体の前後方向に長尺な形状を有している。図示するフロントサイドメンバ10にあっては、車体の前方側に位置する先端部分11にエネルギ吸収体21を配置している。
図2および図3を参照して、実施形態のエネルギ吸収体21は、概説すれば、壁部31によって囲まれる中空部32を備え、繊維強化プラスチック(FRP)から形成された筒形状を有する中空成形体30を有している。この中空成形体30は、筒状の軸方向から壁部31に圧縮荷重が作用したときに、壁部31の外表面31aが中空部32の中に折り返されるように壁部31を折り曲げることによってエネルギを吸収している。このようにして、軸方向からの圧縮荷重による衝撃を緩和する。エネルギ吸収体21はさらに、中空成形体30に取り付けられ荷重を中空成形体30の壁部31に作用させる押圧部材40を有している。
中空成形体30の中空部32の大きさ、壁部31の厚さなどは、吸収すべきエネルギの大きさに応じて適宜選択される。本実施形態の中空成形体30は、壁部31の曲げエネルギを利用して繊維破断させ、中空部32の中に壁部31を折り曲げるときには、折り曲げられた壁部31同士が相互に接触するようにしてある。曲げエネルギを利用した繊維破断によるエネルギ吸収は、繊維の量、壁部31の厚み、形状(例えば、リブ形状)を選択することによって変化させることができる。折り曲げられた壁部31同士を相互に接触させることによって摩擦力を発生させ、この摩擦力によってエネルギを吸収する。逆に言えば、摩擦力によるエネルギ吸収は、繊維の量および中空成形体30の形状を選択することによって変化させることができる。
中空成形体30を形成する繊維強化プラスチックは、強化繊維と樹脂との複合材料である。強化繊維は、例えば炭素繊維であり、樹脂は例えばエポキシ樹脂である。
前記強化繊維は、強化材となるものであれば特に制限されるものではない。強化繊維は、炭素繊維の他に、例えば黒鉛繊維、またはガラス繊維や、アラミド、パラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリビニルアルコール、ポリアリレートなどの有機繊維などを使用することができる。さらには、上記した強化繊維の2種類以上を併用したものも使用できる。
前記樹脂は、繊維強化プラスチックのマトリックス樹脂となるものであればあらゆる樹脂を使用することができる。樹脂は、エポキシ樹脂の他に、例えば不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂や、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂を使用することができる。さらには、上記の樹脂の混合樹脂も使用できる。
中空成形体30の成形法は、特に限定されず、公知の作製方法を適用することができる。例えば、成形型内に封入した強化繊維に溶融した熱硬化性樹脂を注入して加熱硬化させるRTM(Resin Transfer Molding)成形法や、シートワインディング成形や、プレス成形などを適用して中空成形体30を作製することがきる。中空成形体30は、壁部31の厚み方向に、強化繊維の層が積層している。
図4をも参照して、押圧部材40は、ブロック形状を有し、壁部31の先端部33が当接することによって壁部31を折り曲げるための凹部41を形成してある。
押圧部材40は、中空成形体30の端部に被せるように取り付けている。押圧部材40は、接着剤42を介して、中空成形体30の壁部31の外表面31aに取り付けている(図2を参照)。接着剤42は、通常使用時には押圧部材40と中空成形体30とを接合する一方、エネルギを吸収するときには壁部31の折り曲げを阻害することがない接着強さを有している。
押圧部材40の前面側は、図示しないバンパーレインフォースにボルトなどを介して固定されている。バンパーレインフォースおよびフロントサイドメンバ10によって、衝撃を吸収するクラッシャブルゾーンを構成している。
押圧部材40の材料は、荷重を中空成形体30の壁部31に作用し得る限りにおいて適宜の材料を用いることができる。例えば、鉄やアルミを挙げることができるが、繊維強化プラスチックよりも硬い材料、例えば鉄などが好ましい。
図2および図4を参照して、壁部31の先端部33は、内表面31bの側が先端となり外表面31aの側が先端から離れるように傾斜する断面テーパ形状を有している。押圧部材40の凹部41の底部角部43は、折り曲げられる壁部31をガイドする断面円弧形状を有している。押圧部材40の底部角部43のアール形状が、壁部31の先端部33を内側に破壊する誘導起点となる。凹部41の内側面と壁部31の外表面31aとの間のクリアランスは、例えば、0.1mm〜0.3mmが望ましい。クリアランスが大きくなると、壁部31の変形形態が底部角部43のアール形状に沿う形態にならなくなるからである。
図5は、実施形態のエネルギ吸収体21によるエネルギ吸収メカニズムを説明するための断面図、図6は、対比例のエネルギ吸収メカニズムを説明するための断面図である。図7は、壁部31が内側に折り曲げられる繊維強化プラスチックの繊維の破断状態を示す概念図、図8は、壁部131が花弁状に開裂している繊維強化プラスチックの繊維の破断状態を示す概念図である。
まず、実施形態におけるエネルギ吸収メカニズムについて説明する。
図5を参照して、中空成形体30に押圧部材40を取り付ける。中空成形体30の壁部31の先端部33は、押圧部材40の凹部41の底部に接触している(図5(A))。中空成形体30の後端部は、他の部材34に接合され、中空部32の開口は閉じている。
軸方向からの圧縮荷重Fが押圧部材40を介して中空成形体30の壁部31に作用すると、壁部31の先端部33が凹部41の底部に当接して押し付けられ、先端部33の破壊が始まる(図5(B))。
圧縮荷重がさらに作用すると、中空成形体30の壁部31は、押圧部材40の底部角部43のアール形状に沿って変形を開始する(図5(C))。壁部31は、その外表面31aが中空部32の中に折り返されるように、内側に折り曲がる。壁部31は、急激に曲げられることによって、引張り側(外表面31aの側)および圧縮側(内表面31bの側)ともに、曲げ応力が大きくなり、変形エネルギを蓄積する。このエネルギの解放として、中空成形体30を構成する繊維強化プラスチックにおける強化繊維とマトリックス樹脂との界面に破壊が発生し、繊維の破断が開始する。また、壁部31が内側に曲げられると破壊領域が短縮されるため、周方向の剪断破壊が発生し、折れ曲がった壁部31が分割される。
壁部31が分割されつつ内側にさらに折り曲がると、曲げ変形の後、折り曲げられた壁部31同士が相互に接触し、摩擦力が発生する(図5(D))。摩擦力による熱または繊維の破断の形によって、ここでもエネルギが吸収される。折り曲げられた壁部31は、中空部32の中に詰まり始める。内側に折り曲げられる図5(D)のP1点における繊維強化プラスチックの繊維の破断状態を確認したところ、層間剥離は少なく、その一方、層内において破断した繊維が多かった(図7を参照)。
壁部31が内側にさらに折り曲がると、折り曲げられた壁部31は、中空部32の中に詰まって行き場がなくなる。中空部32の中に詰め込まれる壁部31同士が相互に押し付け合い、圧縮による摩擦力が発生する(図5(E))。圧縮による摩擦力による熱または繊維の破断の形によって、ここでもエネルギが吸収される。
次に、対比例におけるエネルギ吸収メカニズムについて説明する。
図6を参照して、対比例のエネルギ吸収体121は、中空成形体130と、中空成形体130の壁部131の先端部133を花弁状に開裂させる押圧部材140と、を有している。中空成形体130は、上述した実施形態の中空成形体30と同様に形成されている。押圧部材140は、壁部131の先端部133が接触する面を平坦面に形成してある。
図6を参照して、中空成形体130の壁部131の先端部133は、押圧部材40の平坦面に接触している(図6(A))。
軸方向からの圧縮荷重Fが押圧部材140を介して中空成形体130の壁部131に作用すると、壁部131の先端部133が平坦面に当接して押し付けられ、先端部133の破壊が始まる(図6(B))。壁部131の先端部133は、花弁状に開裂する。中空成形体130を構成する繊維強化プラスチックは、主に層間剥離によってエネルギを吸収する。層間剥離によるエネルギ吸収は比較的少ない。
圧縮荷重がさらに作用すると、外側に開裂した層はそのまま開放し、内側に開裂した層は、中空部132の中に折り返されるように、内側に折り曲がる(図6(C))。内側に開裂した層同士は相互に接触するが、中空部132の断面積および容積に対して繊維強化プラスチックの絶対量が少ないため、摩擦力によってエネルギを吸収するという効果は比較的少ない。壁部131が花弁状に開裂している図6(C)のP2点における繊維強化プラスチックの繊維の破断状態を確認したところ、層間剥離が進展しており、その一方、層内において破断した繊維が少なかった(図8を参照)。
図9は、本実施形態のエネルギ吸収体21および対比例のエネルギ吸収体121のエネルギ吸収実験によって得られた荷重変位線図である。図9において、本実施形態の荷重変位曲線は実線を用いて表し、対比例の荷重変位曲線は破線を用いて表している。
エネルギ吸収実験は、落錘試験機を用いて行った。図示するように、初期の荷重の立ち上がりについては、本実施形態および対比例ともほぼ同様である。その後、対比例では、荷重が若干低下し、あるレベルで荷重が推移する。本実施形態では、荷重が低下することなく、対比例よりも高いレベルで荷重が推移する。本実施形態では、図中符号Z1の領域で荷重が急激に増加している。この領域Z1では、折り曲げられた壁部31同士が相互に接触しており、発生した摩擦力によってエネルギを吸収している。さらに図中符号Z2の領域で荷重がさらに増加している。この領域Z2では、中空部32の中に詰め込まれて行き場を失った壁部31同士が相互に押し付け合っており、発生した圧縮による摩擦力によってエネルギを吸収している。本実施形態の最大変位は、対比例の最大変位に比べて小さい。
対比例のエネルギ吸収体121にあっては、花弁状の破壊形態であり、層間剥離力および繊維の引っ張り破断力のみを利用して、エネルギを吸収している。
実施形態にあっては、対比例におけるエネルギ吸収に加えて、第1に、曲げエネルギを利用した繊維破断によってエネルギを吸収し、第2に、中空成形体30の内側に折り曲げられた壁部31が相互に押し合うことにより発生する摩擦力によってエネルギを吸収している。したがって、本実施形態のエネルギ吸収方法、およびこれを具現化したエネルギ吸収体21によれば、より大きなエネルギ吸収量の実現が可能となる。図9に示したように、本実施形態は、破壊形態が花弁状である対比例に比べて、約2倍のエネルギを吸収することができる。さらに、本実施形態は、対比例と比べると、同じ変位量でより多くのエネルギを吸収することができる。
押圧部材40を備えることによって、荷重を中空成形体30の壁部31に確実に作用させることができ、凹部41を設けることによって、壁部31を折り曲げることができる。
壁部31の先端部33を断面テーパ形状とし、凹部41の底部角部43を断面円弧形状とすることによって、底部角部43の断面円弧形状が壁部31の先端部33を破壊する誘導起点となって、壁部31をガイドして折り曲げることができる。
押圧部材40には、中空成形体30が接触する部分に凹部41を設けるだけでよい。複数の凹凸形状を押圧部材に設けて開裂方向を制御する形態に比べて、押圧部材40の加工が容易となる。
中空成形体30の壁部31の先端部33には、一つのテーパ部を設けるだけでよい。複数の凹凸形状を壁部の先端部に設けてトリガ部の形状を工夫する形態に比べて、壁部31の先端部33の加工が容易となる。
本実施形態のエネルギ吸収体21は、より大きなエネルギ吸収量を実現し得ることから、同じエネルギ吸収量であれば、中空成形体30の繊維の量を低減し、エネルギ吸収体21の小型軽量化を図ることができる。これを通して、車両の軽量化などに寄与することができる。
図10(A)(B)は、底部角部43のアール形状の大きさが異なる押圧部材40を示す断面図、図11は、底部角部43のアール形状の大きさが異なる押圧部材40を用いたエネルギ吸収実験によって得られた荷重変位線図である。図10において、底部角部43のアール形状の大きさは、理解の容易のために、誇張して示してある。また、図11において、アール形状の大きさが小さい方の押圧部材40(図10(A))を用いたときの荷重変位曲線は実線を用いて表し、アール形状の大きさが大きい方の押圧部材40(図10(B))を用いたときの荷重変位曲線は破線を用いて表している。
図10(A)の押圧部材40は、底部角部43のアール形状の大きさが例えばR2、図10(B)の押圧部材40は、底部角部43のアール形状の大きさが例えばR5である。説明の便宜上、アール形状の大きさが小さい方の押圧部材40を「小Rの押圧部材40」と言い、アール形状の大きさが大きい方の押圧部材40を「大Rの押圧部材40」と言う。
エネルギ吸収実験は、落錘試験機を用いて行った。図11に示すように、初期の荷重の立ち上がりについては、小Rの押圧部材40を用いたときの方が大きい。その後、小Rの押圧部材40を用いたとき、および大Rの押圧部材40を用いたときの両方とも、あるレベルで荷重が推移する。小Rの押圧部材40を用いたときの方が、大Rの押圧部材40を用いるよりも高いレベルで荷重が推移する。いずれの押圧部材40を用いても、荷重が急激に増加する点については、レベルの差はあるものの同様である。発生した摩擦力によってエネルギを吸収している。小Rの押圧部材40を用いたときの最大変位は、大Rの押圧部材40を用いたときの最大変位に比べて小さい。
このように、エネルギ吸収量は、押圧部材40の底部角部43のアール形状の大きさにより変化させることができ、要求されるエネルギ吸収量に応じて、アール形状の大きさを設定すればよい。
参考例1
図12は、参考例1のエネルギ吸収体22を示す断面図、図13は、参考例1のエネルギ吸収体22によるエネルギ吸収メカニズムを説明するための断面図である。なお、実施形態と共通する部位には同じ符号を付してその説明は一部省略する。
参考例1は、中空成形体30の壁部31を折り曲げる方向が外側である点で、内側に折れ曲がる実施形態と相違している。壁部31を折り曲げる方向が異なるため、押圧部材40の形状も若干相違している。
図12を参照して、参考例1のエネルギ吸収体22は、実施形態と同様に、壁部31によって囲まれる中空部32を備え、繊維強化プラスチック(FRP)から形成された筒形状を有する中空成形体30を有している。この中空成形体30は、筒状の軸方向から壁部31に圧縮荷重が作用したときに、壁部31の内表面31bが外側に折り返されて外表面31a同士が向かい合うように壁部31を折り曲げることによってエネルギを吸収している。このようにして、軸方向からの圧縮荷重による衝撃を緩和する。エネルギ吸収体22はさらに、中空成形体30に取り付けられ荷重を中空成形体30の壁部31に作用させる押圧部材40を有している。
参考例1の押圧部材40も、ブロック形状を有し、壁部31の先端部33が当接することによって壁部31を折り曲げるための凹部45を形成してある。但し、壁部31を外側に向けて折り曲げるために、押圧部材40の中心には中空成形体30の中空部32に嵌り合う挿入部46を突出して設け、凹部45をリング形状に形成している。さらに、壁部31の内表面31bが外側に折り返されて外表面31a同士が向かい合うように壁部31を折り曲げるために、リング形状の凹部45は、内周側の底部角部47と外周側の底部角部47とが向かい合っている。凹部45における外周側の縦壁は、壁部31の外表面31aに向かい合い、外周側の底部角部47から図中下側に伸びている。
押圧部材40は、挿入部46を中空部32に嵌め込み、中空成形体30の端部に被せるように取り付けている。押圧部材40は、接着剤を介して、中空成形体30の壁部31の内表面31bに取り付けている。
壁部31の先端部33は、内表面31bの側が先端となり外表面31aの側が先端から離れるように傾斜する断面テーパ形状を有している。押圧部材40の凹部45の底部角部47は、内周側および外周側ともに、折り曲げられる壁部31をガイドする断面円弧形状を有している。内周側の底部角部47のアール形状が、壁部31の先端部33を内側に破壊する誘導起点となる。挿入部46と壁部31の内表面31bとの間のクリアランスは、例えば、0.1mm〜0.3mmが望ましい。クリアランスが大きくなると、壁部31の変形形態が底部角部47のアール形状に沿う形態にならなくなるからである。
図13を参照して、参考例1におけるエネルギ吸収メカニズムについて説明する。
中空成形体30の壁部31の先端部33は、押圧部材40の凹部45の底部に接触している(図13(A))。
軸方向からの圧縮荷重Fが押圧部材40を介して中空成形体30の壁部31に作用すると、壁部31の先端部33が凹部45の底部に当接して押し付けられ、先端部33の破壊が始まる(図13(B))。
圧縮荷重がさらに作用すると、中空成形体30の壁部31は、押圧部材40の底部角部47のアール形状に沿って変形を開始する(図13(C))。壁部31は、その内表面31bが外側に折り返されて外表面31a同士が向かい合うように、外側に折り曲がる。壁部31は、急激に曲げられることによって、引張り側(内表面31bの側)および圧縮側(外表面31aの側)ともに、曲げ応力が大きくなり、変形エネルギを蓄積する。このエネルギの解放として、中空成形体30を構成する繊維強化プラスチックにおける強化繊維とマトリックス樹脂との界面に破壊が発生し、繊維の破断が開始する。また、壁部31が外側に曲げられると破壊領域が拡大されるため、周方向の剪断破壊が発生し、折れ曲がった壁部31が分割される。
参考例1にあっては、壁部31は、曲げ変形の後に押圧部材40から開放される。このため、摩擦力によるエネルギ吸収は生じていない。
参考例1にあっては、摩擦力によるエネルギ吸収を行っていないが、層間剥離力および繊維の引っ張り破断力を利用したエネルギ吸収に加えて、曲げエネルギを利用した繊維破断によってエネルギを吸収している。したがって、参考例1のエネルギ吸収方法、およびこれを具現化したエネルギ吸収体22によれば、実施形態よりもエネルギ吸収量は小さいものの、前述した対比例に比べて、より大きなエネルギ吸収量の実現が可能となる。
参考例2
図14は、参考例2のエネルギ吸収体23を示す断面図である。なお、参考例1と共通する部位には同じ符号を付してその説明は一部省略する。
参考例2は、摩擦力によるエネルギ吸収をも行うようにした点で、摩擦力によるエネルギ吸収を行っていない参考例1と相違している。
図14を参照して、参考例2のエネルギ吸収体23は、押圧部材40に取り付けられ、外側に折り曲げられた壁部31を詰め込む空間51を形成するリング部材50をさらに有している。リング部材50を押圧部材40に取り付けることにより、壁部31は曲げ変形の後に押圧部材40から開放されずに、空間51の中に詰まって行き場がなくなる。空間51の中に詰め込まれる壁部31同士が相互に押し付け合い、圧縮による摩擦力が発生する。この圧縮による摩擦力による熱または繊維の破断の形によって、エネルギが吸収される。
参考例2にあっては、参考例1に加えて、中空成形体30の外側に折り曲げられた壁部31が相互に押し合うことにより発生する摩擦力によってエネルギを吸収している。したがって、実施形態と同程度に、より大きなエネルギ吸収量の実現が可能となる。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内で種々改変できる。例えば、本発明のエネルギ吸収体21を車体骨格部材としてのフロントサイドメンバ10に適用する場合に限定されず、エネルギを吸収する必要があるいかなる箇所にも適用できることは言うまでもない。
本発明に係るエネルギ吸収体を適用したフロントサイドメンバの要部を示す斜視図である。 実施形態のエネルギ吸収体を示す断面図である。 図2に示される中空成形体および押圧部材を示す分解斜視図である。 押圧部材を示す断面図である。 実施形態のエネルギ吸収体によるエネルギ吸収メカニズムを説明するための断面図である。 対比例のエネルギ吸収メカニズムを説明するための断面図である。 壁部が内側に折り曲げられる繊維強化プラスチックの繊維の破断状態を示す概念図である。 壁部が花弁状に開裂している繊維強化プラスチックの繊維の破断状態を示す概念図である。 本実施形態のエネルギ吸収体および対比例のエネルギ吸収体のエネルギ吸収実験によって得られた荷重変位線図である。 図10(A)(B)は、底部角部のアール形状の大きさが異なる押圧部材を示す断面図である。 底部角部のアール形状の大きさが異なる押圧部材を用いたエネルギ吸収実験によって得られた荷重変位線図である。 参考例1のエネルギ吸収体を示す断面図である。 参考例1のエネルギ吸収体によるエネルギ吸収メカニズムを説明するための断面図である。 参考例2のエネルギ吸収体を示す断面図である。
符号の説明
10 フロントサイドメンバ、
21、22、23 エネルギ吸収体、
30 中空成形体、
31 壁部、
31a 壁部の外表面、
31b 壁部の内表面、
32 中空部、
33 壁部の先端部、
40 押圧部材、
41、45 凹部、
42 接着剤、
43、47 凹部の底部角部、
46 挿入部、
50 リング部材、
51 空間。

Claims (4)

  1. 壁部によって囲まれる中空部を備え、繊維強化プラスチックから形成された中空成形体を有するエネルギ吸収体であって、
    前記中空成形体は、前記壁部に圧縮荷重が作用したときに、
    前記壁部の外表面が前記中空部の中に折り返されるように前記壁部を前記中空部の中に折り曲げ、内側に折り曲げられた壁部を詰め込む前記中空部の中において、折り曲げられた壁部同士を相互に接触させることによって、前記中空成形体の単体によってエネルギを吸収してなり、
    前記中空成形体に取り付けられ圧縮荷重を前記中空成形体の前記壁部に作用させる押圧部材をさらに有し、
    前記押圧部材は、前記壁部の先端部が当接することによって前記壁部を前記中空部の中に折り曲げる凹部が形成され、
    前記中空成形体は筒形状を有し、筒状の軸方向から見た前記中空部の大きさが、前記中空部の中に折り曲げた前記壁部同士を相互に接触させる大きさであるエネルギ吸収体。
  2. 前記壁部の前記先端部は、内表面の側が先端となり外表面の側が先端から離れるように傾斜する断面テーパ形状を有し、
    前記押圧部材の前記凹部の底部角部は、折り曲げられる前記壁部をガイドする断面円弧形状を有している請求項1に記載のエネルギ吸収体。
  3. 壁部によって囲まれる中空部を備え、繊維強化プラスチックから形成された中空成形体によってエネルギを吸収するエネルギ吸収方法であって、
    前記中空成形体の前記壁部に圧縮荷重が作用したときに、
    前記壁部の外表面が前記中空部の中に折り返されるように前記壁部を前記中空部の中に折り曲げ、内側に折り曲げられた壁部を詰め込む前記中空部の中において、折り曲げられた壁部同士を相互に接触させることによって、前記中空成形体の単体によってエネルギを吸収してなり、
    前記中空成形体に取り付けた押圧部材を介して圧縮荷重を前記中空成形体の前記壁部に作用させ、前記押圧部材に形成した凹部に前記壁部の先端部が当接することによって、前記壁部を前記中空部の中に折り曲げ、
    前記中空成形体は筒形状を有し、筒状の軸方向から見た前記中空部の大きさが、前記中空部の中に折り曲げた前記壁部同士を相互に接触させる大きさであるエネルギ吸収方法。
  4. 前記壁部の前記先端部は、内表面の側が先端となり外表面の側が先端から離れるように傾斜する断面テーパ形状を有し、
    前記押圧部材の前記凹部の底部角部は、折り曲げられる前記壁部の前記先端部をガイドする断面円弧形状を有している請求項3に記載のエネルギ吸収方法。
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