JP3977083B2 - コア部品成形方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、励磁コイルを保持するコア部品の成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
シャフトの回転角度或いは相対回転角度を非接触で検出する回転センサ、例えば、相対回転する2本のシャフトがトーションバーを介して連結された自動車のステアリングシャフトにおける回転トルクを検出し、ステアリング装置の円滑な電子制御に利用する回転センサが知られている(例えば、特公平7−21433号公報参照)。
【0003】
この種の回転センサは、トーションバーで連結された第1のシャフトに第1のロータを、第2のシャフトに第2のロータを、それぞれ取り付けると共に、第1及び第2のロータを、励磁コイルがコアに保持されたリング状の固定コアの内側に回転自在に配置し、第1及び第2のシャフトの相対回転を前記コイルのインダクタンスの変化によって検出し、第1のシャフトと第2のシャフトとの間に作用するトルクを検出するものである。
【0004】
この回転センサにおいては、前記固定コアのコアを、2つのコア部品を組み合わせて製造している。そして、コア部品は、形状の自由度があり、量産性に優れ、振動に強いという利点があることから、従来用いられていた燒結品に代えて、電気絶縁性の合成樹脂に軟磁性材を混合した軟磁性樹脂を成形したものが使用されるようになってきた。
【0005】
このコア部品の素材としては、Mn−Zn系やMg−Zn系のフェライトやセンダスト等の、数μm〜200μm程度の微小磁性材粉を、ナイロンやポリフェニレンスルフィド(PPS)等の電気絶縁性を有する熱可塑性合成樹脂や、他の熱可塑性合成樹脂に混合した軟磁性樹脂が用いられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、固定コアでは、回転センサの出力変動が生じないように、コアの透磁率が周方向に沿って均一で、励磁コイルによって形成される磁束密度が周方向に沿って均一となるようにする必要がある。
しかし、前記軟磁性樹脂によってコア部品を成形する場合、成形時に金型内で溶融した脂流がぶつかり合うウェルド部分と、その他の部分とで、微小磁性材粉の配向性が異なることから、成形されたコア部品の透磁率が周方向に沿って不均一になるという問題がある。
【0007】
特に、前記軟磁性樹脂は、一般の合成樹脂と異なり、微小磁性材粉が混合されていることから、成形時に金型内で冷えて固化する速度が速い。このため、キャビティ内へ樹脂を注入するゲート部分とその他の部分とでは、軟磁性樹脂が流れて行くことによる充填時間の差によって密度が異なってしまう。従って、例えば、ゲートが1ヶ所の場合、成形されたコア部品は、図10に示すように、ゲート部分を基準として時計方向の角度ごとに測定した軟磁性樹脂の密度が、ゲート付近で高く、ゲートから遠い位置で低くなる傾向を示す結果、透磁率も周方向に沿って不均一になるという問題がある。
【0008】
一方、成形されたコア部品を金型からイジェクトピンで押し出すと、イジェクトピンが当たった部分にピン跡が多少なりともついてしまう。このため、ピン跡がついたコア部品は、周方向に沿った磁界分布がピン跡の部分で変化してノイズとなり、周方向に均一な磁界分布を示さなくなるという問題があった。
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、電気絶縁性の合成樹脂に軟磁性材を混合した軟磁性樹脂を用いて成形する際に、周方向に沿った透磁率の不均一を発生することを抑制することが可能なコア部品成形方法を提供することを第1の目的とする。
【0009】
また、コア部品にピン跡がつかないコア部品成形方法を提供することを第2の目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明においては第1の目的を達成するため、電気絶縁性の合成樹脂に軟磁性材を混合した軟磁性樹脂からリング状に成形され、励磁コイルが収容されるコア部品を成形するコア部品成形方法であって、前記コア部品を成形するキャビティの全周に亘って形成されたパスから、前記軟磁性樹脂の溶融体を前記キャビティに、その半径方向内側の全周から外側へ向かって流れるように注入して、周方向に沿って均一な透磁率を有するコア部品を成形する構成としたのである。
【0011】
また、本発明においては第1の目的を達成するため、電気絶縁性の合成樹脂に軟磁性材を混合した軟磁性樹脂からリング状に成形され、励磁コイルが収容されるコア部品を成形するコア部品成形方法であって、前記コア部品を成形するキャビティの全周に亘って形成されたパスから、前記軟磁性樹脂の溶融体を前記キャビティに、その半径方向内側の全周から外側へ向かって流れるように注入して、周方向に沿って均一な透磁率を有するコア部品を成形し、前記金型の型開きと並行して、成形された前記コア部品を前記パスの部分において前記軟磁性樹脂の半固化状態で切断する構成としたのである。
【0012】
一方、本発明においては第2の目的を達成するため、成形されたコア部品をリング状のイジェクト部材で金型から全周に亘って均一な押圧力で押し出す構成としたのである。また、本発明においては第2の目的を達成するため、電気絶縁性の合成樹脂に軟磁性材を混合した軟磁性樹脂からリング状に成形され、励磁コイルが収容されるコア部品を成形するコア部品成形方法であって、前記コア部品を成形するキャビティの全周に亘って形成されたパスから、前記軟磁性樹脂の溶融体を前記キャビティに、その半径方向内側の全周から外側へ向かって流れるように注入して、周方向に沿って均一な透磁率を有するコア部品を成形し、成形された前記コア部品をリング状のイジェクト部材で金型から全周に亘って均一な押圧力で押し出す構成としたのである。
【0013】
更に、本発明においては第2の目的を達成するため、電気絶縁性の合成樹脂に軟磁性材を混合した軟磁性樹脂からリング状に成形され、励磁コイルが収容されるコア部品を成形するコア部品成形方法であって、前記コア部品を成形するキャビティの全周に亘って形成されたパスから、前記軟磁性樹脂の溶融体を前記キャビティに、その半径方向内側の全周から外側へ向かって流れるように注入して、周方向に沿って均一な透磁率を有するコア部品を成形し、前記金型の型開きの際に、成形された前記コア部品をリング状のイジェクト部材で金型から全周に亘って均一な押圧力で押し出す構成としたのである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のコア部品成形方法に係る一実施形態を図1乃至図10に基づいて詳細に説明する。
本発明のコア部品成形方法は、射出成形,トランスファー成形,圧縮成形等によって実行され、例えば、図1に示す金型1を用いてコア部品が成形される。金型1は、図示のように、上金型2と下金型3とを有し、両金型2,3によってコア部品を成形するキャビティCと、キャビティCに電気絶縁性の合成樹脂に軟磁性材を混合した前記軟磁性樹脂を圧送するパスPを形成する。このとき、パスPは、キャビティCの内周に亘って形成されている。
【0015】
第1の目的を達成する本発明方法においては、金型1を用い、パスPから前記軟磁性樹脂の溶融体をキャビティCに一様に注入し、コア部品5を成形する。このとき、パスPからキャビティCに注入された前記軟磁性樹脂は、図2に矢印で示すように、キャビティCに半径方向内側の全周から外側へ向かって流れる。このため、前記軟磁性樹脂は、キャビティC内を半径方向に沿って流れるだけである。
【0016】
次に、金型1を開くと、図示しないイジェクトピンによって金型から押し出され、図3に示すように、キャビティC及びパスPに前記軟磁性樹脂が充填された成形体BMが得られる。この型開きと並行して、パスPの部分、より詳しくは、図3に示すように、キャビティCとパスPとの境界に位置するランナR(図1参照)に対応する部分で、成形体BMが、予め成形装置に組み込まれたカッタ4により前記軟磁性樹脂の半固化状態で切断される。これにより、図4に示すコア部品5が得られる。
【0017】
このとき、前記軟磁性樹脂は、金型1内で冷えて固化する速度が速いが、キャビティCに半径方向内側の全周から外側へ向かって流れ、キャビティC内を半径方向に沿って流れるだけである。このため、成形されたコア部品5は、キャビティCの半径方向内側と外側とで、前記軟磁性樹脂が流れて行くことによる充填時間の差が殆どない。従って、コア部品5は、周方向に沿った密度が大きく異なることがない。この結果、本発明方法によって成形されたコア部品は、周方向に沿って均一な透磁率を有している。このため、本発明方法によって製造されたコア部品5を用いた回転センサは、出力が安定し、信頼性に優れたものとなる。
【0018】
以上のようにして製造されたコア部品5は、図5に示すように、2つのコア部品5の間に励磁コイル6を保持し、両コア部品5を接着して固定コア10として組み立てられる。また、2つのコア部品5の間に励磁コイル6を保持し、これらを外側から交流磁界の遮蔽性を有する遮蔽ケースで覆うことで固定コアとして組み立ててもよい。
【0019】
一方、前記のようなキャビティCとパスPとを形成することができれば、コア部品5は、図6に示すように、キャビティCとパスPとの境界部分の形状が若干異なる上金型2と下金型3とを有する金型1を用いて成形してもよい。この場合、成形体BMは、キャビティCとパスPとの境界に位置するランナRに対応する部分で切断するカッタ4に代えて、図7に示す金型部品7を用い、前記軟磁性樹脂の半固化状態で切断する。
【0020】
また、本発明方法は、コア部品を成形するキャビティの全周に亘って形成されたパスから、前記軟磁性樹脂の溶融体を前記キャビティに注入して成形することに特徴を有している。従って、前記キャビティの上側全周に亘って形成されたパスから、前記軟磁性樹脂の溶融体を前記キャビティに注入することで、図8に示す成形体BMを成形し、コア部品5としてもよい。
【0021】
次に第2の目的を達成するコア部品の成形方法について説明する。
本実施形態においては、図9に示すように、上金型11と下金型12とを有する金型10を用い、キャビティCの全周に亘って形成されたパスPから前記軟磁性樹脂の溶融体をキャビティCに一様に注入し、成形体BMを成形する。
そして、図9に示すように、金型10の型開きと並行して、成形体BMを、複数のロッド15aで支持されたイジェクト部材15のイジェクトリング15bで金型10から押し出す。成形体BMは、縊れ部Pcで折れば、リング状のコア部材が得られる。
【0022】
このように、成形体BMをイジェクトリング15bで金型10から押し出すと、ピンで押し出す場合に比べて、イジェクトリング15bによる押圧力が成形体BMの下面に均一に作用する。このため、成形体BMは、ピン跡が付くことがなく、コア部品としたときに、磁界分布が周方向に沿って均一となる。
尚、本発明方法においては、前記キャビティの全周から注入できれば、前記軟磁性樹脂の溶融体は、前記キャビティの外周あるいは下側の全周から前記キャビティに注入してもよい。
【0023】
また、成形されたコア部品を金型から全周に亘って均一な押圧力で押し出すイジェクト部材としては、上記実施形態で説明したイジェクトリングの他、プレートごと押し出すプレートイジェクト、コアごと押し出すコアイジェクト或いはキャビティイジェクトを用いてもよい。
更に、本発明により得られるコア部品は、回転センサの他に、例えば、電力や信号を伝達する分離型の回転トランスのコア部品に用いてもよい。
【0024】
【発明の効果】
請求項1,2の発明によれば、電気絶縁性の合成樹脂に軟磁性材を混合した軟磁性樹脂を用いて成形する際に、周方向に沿った透磁率の不均一を発生することを抑制することが可能なコア部品成形方法を提供することができる。
請求項3乃至5の発明によれば、コア部品にピン跡がつかないコア部品成形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の目的を達成するコア部品成形方法を説明するもので、コア部品を成形する金型の断面図である。
【図2】図1の金型において、キャビティの全周に亘って形成されたパスから、軟磁性樹脂が一様に注入される状態を示す平面図である。
【図3】金型の型開きと並行して、成形されたコア部品を、パスの部分において軟磁性樹脂の半固化状態で切断する様子を示す断面図である。
【図4】切断して得られたコア部品の断面正面図である。
【図5】励磁コイルを図4のコア部品間に保持して得られるコアの断面正面図である。
【図6】本発明のコア部品成形方法の他の実施形態を説明するもので、コア部品を成形する金型の断面図である。
【図7】図6の金型の型開きと並行して、成形されたコア部品を、パスの部分において軟磁性樹脂の半固化状態で切断する様子を示す断面図である。
【図8】本発明方法の更に他の実施形態によって成形されたコア部品の断面正面図である。
【図9】本発明の第2の目的を達成するコア部品成形方法を説明するもので、コア部品を成形する金型の断面図である。
【図10】従来の成形方法によって成形されたコア部品を回転センサに用いたときの、コア部品における軟磁性樹脂の密度を、ゲート部分を基準として時計方向の角度ごとに測定した密度分布図である。
【符号の説明】
1 金型
2 上金型
3 下金型
4 カッタ
5 コア部品
7 金型部品
10 金型
11 上金型
12 下金型
15 イジェクト部材
15a ロッド
15b イジェクトリング
BM 成形体
C キャビティ
P パス
Pc 縊れ部
R ランナ

Claims (4)

  1. 電気絶縁性の合成樹脂に軟磁性材を混合した軟磁性樹脂からリング状に成形され、励磁コイルが収容されるコア部品を成形するコア部品成形方法であって、前記コア部品を成形するキャビティの全周に亘って形成されたパスから、前記軟磁性樹脂の溶融体を前記キャビティに、その半径方向内側の全周から外側へ向かって流れるように注入して、周方向に沿って均一な透磁率を有するコア部品を成形することを特徴とするコア部品成形方法。
  2. 電気絶縁性の合成樹脂に軟磁性材を混合した軟磁性樹脂からリング状に成形され、励磁コイルが収容されるコア部品を成形するコア部品成形方法であって、前記コア部品を成形するキャビティの全周に亘って形成されたパスから、前記軟磁性樹脂の溶融体を前記キャビティに、その半径方向内側の全周から外側へ向かって流れるように注入して周方向に沿って均一な透磁率を有するコア部品を成形し、前記金型の型開きと並行して、成形された前記コア部品を前記パスの部分において前記軟磁性樹脂の半固化状態で切断することを特徴とするコア部品成形方法。
  3. 電気絶縁性の合成樹脂に軟磁性材を混合した軟磁性樹脂からリング状に成形され、励磁コイルが収容されるコア部品を成形するコア部品成形方法であって、前記コア部品を成形するキャビティの全周に亘って形成されたパスから、前記軟磁性樹脂の溶融体を前記キャビティに、その半径方向内側の全周から外側へ向かって流れるように注入して周方向に沿って均一な透磁率を有するコア部品を成形し、成形された前記コア部品をリング状のイジェクト部材で金型から全周に亘って均一な押圧力で押し出すことを特徴とするコア部品成形方法。
  4. 電気絶縁性の合成樹脂に軟磁性材を混合した軟磁性樹脂からリング状に成形され、励磁コイルが収容されるコア部品を成形するコア部品成形方法であって、前記コア部品を成形するキャビティの全周に亘って形成されたパスから、前記軟磁性樹脂の溶融体を前記キャビティに、その半径方向内側の全周から外側へ向かって流れるように注入して周方向に沿って均一な透磁率を有するコア部品を成形し、前記金型の型開きの際に、成形された前記コア部品をリング状のイジェクト部材で金型から全周に亘って均一な押圧力で押し出すことを特徴とするコア部品成形方法。
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