JP3976840B2 - ケーブル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車、ロボット、電子機器用等に使用されるケーブルに関し、さらに詳しくは、優れた機械特性、柔軟性を有し、ケーブルの端末部分を各種センサ−や端子などに接続した後、この接続部を気密もしくは水密に保持するためにポリブチレンテレフタレート(以下PBTともいう)樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂でモ−ルド加工処理するのに好適なケーブルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車、ロボット、電子機器用等に使用されるケーブルの絶縁被覆材としては、機械特性、柔軟性が良好である熱可塑性ポリウレタン系組成物が採用されている。そして、この熱可塑性ポリウレタン系組成物は成形後、電離性放射線照射による架橋処理で耐熱性、耐薬品性、耐水性を向上させている場合がある。
このようなケーブルに、センサ−などの機器部品や電極端子を接続する場合には、その接続部およびその近傍の周囲を樹脂モ−ルド(成形体)で気密もしくは水密に成形し保護する。このように樹脂モールドで気密、水密を確保するには、成形のしやすさや機械的強度に優れることから、PBT樹脂やポリアミド樹脂がモールド材料としてよく用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ケーブルの被覆材料とモ−ルド材料の選定によっては材料間の熱収縮率の差により、端末加工時や使用時の加熱、冷却過程において、ケーブルと成形体の界面に隙間が生じ、界面に生じた隙間から水分が浸入するという問題がある。界面に生じた隙間から水分が浸入すると、ケーブルの導体が腐食し、接続された機器部品の性能が劣化する等の不具合が発生するので、気密、水密性の保持のために各種のシ−ル対策が必要となる。このため、端末加工時の作業性が著しく煩雑となり、その作業には高度の熟練を要していた。
【0004】
このような問題を解決するためにケーブルの被覆材料を、モ−ルド材料との接着性を考慮して、モールド材料と同一もしくは類似材料とすることが考えられるが、これらの樹脂材料はケーブルの被覆材料としては成形加工性が悪く、電線として要求される可撓性にも問題がある。また、モールド材料との接着性が初期特性として満足できる被覆材であっても、ヒートショック試験で気密性、水密性が損なわれたり、耐水性試験で特性劣化を示す材料は長期的にみて実用的ではない。
本発明の目的は、気密性、水密性の保持のために特別なシ−ル対策を施さなくても、ケーブルと成形体との界面の気密性、水密性が長期的に保たれ、ケーブルの導体の腐食や接続された機器部品の性能劣化を防止でき、かつ耐水性にも優れたケーブルを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、被覆材のベース樹脂として、単独成分ではモールド材料に対してほとんど接着力のないある種のスチレン系エラストマーを熱可塑性ポリエステルエラストマーと組み合わせ使用することにより、熱可塑性ポリエステルエラストマー単独での接着力を大きく上回る接着性が得られることを知見し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明においては、
(1)絶縁導体を複数本撚り合わせた多芯撚線の外側に被覆層を設けたケーブルにおいて、前記被覆層の少なくとも最外層が、(a)熱可塑性ポリエステルエラストマー20〜95重量%、および(b)スチレン−(エチレン−プロピレン)系ブロック共重合体80〜5重量%をベース樹脂とする樹脂組成物により形成され、架橋処理されていることを特徴とするケーブル、
(2)前記被覆層が2層からなり、その内層に熱可塑性ポリウレタンをベース樹脂とする樹脂組成物を用いることを特徴とする(1)に記載のケーブル、
(3)前記被覆層が2層からなり、その内層にエチレン・酢酸ビニル共重合体、および密度が0.86〜0.90g/cm 3 であるエチレン・αオレフィン共重合体の群から選ばれた少なくとも1種をベ−ス樹脂とする樹脂組成物を用いたことを特徴とする(1)に記載のケーブル、が提供される。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明のケーブルにおいて、絶縁導体を撚り合わせた多芯撚線上に設ける被覆層は一層でも複数層でもよい。複数層とするときには同時押出し被覆をすることもできるし、内層を被覆した後に次の外層を順次被覆しても良い。
その際少なくとも被覆層の最外層は (a)熱可塑性ポリエステルエラストマー20〜95重量%、および(b)エチレン−(エチレン−プロピレン)系ブロック共重合体80〜5重量%をベース樹脂とする樹脂組成物により形成される。
【0007】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明のケーブルの一実施形態を示す概略断面図で、1は多芯撚線で、該多芯撚線1は導体(例えば外径0.18mmφの錫メッキ軟銅線を20本撚り合わせて導体径1mmφに仕上げた撚線導体)1aの上に、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等からなる絶縁層1bを設けた絶縁導体を複数本(図1では2本)を撚り合わせた構成となっている。2は多芯撚線1を被覆した被覆層で、該被覆層2は上記(a)および(b)をベース樹脂とする樹脂組成物を適度に架橋した層で構成されている。
【0008】
多芯撚線の外側に設ける被覆層は、ケーブル断面の真円度を高めるために2層以上の多層とすることが好ましく、図2はその実施態様を示すもので、多芯撚線1を被覆する被覆層2を複数層(図2では2層)とし、内層2aは熱可塑性ポリウレタンをベース樹脂とする樹脂組成物、または、エチレン・酢酸ビニル共重合体、密度が0.86〜0.90g/cm 3 であるエチレン・αオレフィン共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種をベ−ス樹脂とする樹脂組成物で形成することができる。この内層は適度に架橋した層としてもよい。被覆層外層2bは前記した(a)および(b)をベース樹脂とする樹脂組成物を適度に架橋した層で構成されている。本発明のケーブルにおいては、多芯撚線上に設けられる被覆層の最外層が特定の樹脂組成物の架橋体によって形成されているために、ケーブル端末部におけるケーブル被覆材とモールド材(成形体)との接着性が極めて高く、ケーブルの端末部の樹脂モ−ルド時に高温高圧を受ける結果、または使用時に加熱と冷却が繰り返される結果生じる、ケーブルとモールド材(成形体)との界面の気密、水密性不良という問題が解決される。
【0009】
本発明ケーブルの被覆層の少なくとも最外層を構成する樹脂組成物中のベース樹脂は、前記(a)および(b)からなるベース樹脂を主体とする。
本発明において用いられる(a)の熱可塑性ポリエステルエラストマーは、柔軟性をもった熱可塑性エラストマーであり、ポリブチレンテレフタレート等の結晶性ポリエステルからなるハードセグメントと、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリオキシメチレングリコール、もしくはポリカプロラクトングリコール等のポリエステルグリコールからなるソフトセグメントとのブロック共重合体である。
このような熱可塑性ポリエステルエラストマーとしては、例えば、「ハイトレル」(商品名、東レデュポン社製)、「ペルプレン」(商品名、東洋紡績社製)、 「Arnitel」(商品名、Akzo社製)などが市販されており、市販品の各種グレ−ドから適宜選択して使用することができる。
【0010】
本発明において用いられる(b)のスチレン−(エチレン−プロピレン)系ブロック共重合体はポリスチレンブロック(S)と柔軟なポリオレフィン構造のエチレンープロピレンエラストマーブロック(EP)で構成されており、ジブロックタイプおよび末端スチレンブロックからなるトリブロックタイプの2種類を基本とするブロック共重合体で、常温ではゴム弾性に優れ、耐油性、耐熱性、低温特性に優れた樹脂である。このようなものとしては例えば「セプトン」(商品名、クラレ社製)が市販されており、市販品の各種グレードから適宜選択して使用することができる。
本発明で用いるS−EP系ブロック共重合体は、それ単独ではPBT樹脂やポリアミド樹脂等の射出成形材料とは全くといって良いほど接着力がない。ところが、熱可塑性ポリエステルエラストマーと特定配合量範囲内で配合することにより、驚くべき接着性を発揮し、しかもその接着性は、熱可塑性ポリエステルエラストマー単独での成形材料との接着力をはるかに上回るものである。
【0011】
本発明に用いる樹脂組成物のベース樹脂中の(a)成分の配合量は、20〜95重量%、好ましくは40〜60重量%の範囲とする。(a)成分の配合量がこの範囲内であると、ケーブル最外層とモールド材との接着性が良好で、水密性、気密性が確保できるばかりでなく、耐水性も良好である。
ベース樹脂中の(b)成分の配合量は、80〜5重量%、好ましくは60〜40重量%の範囲とする。配合量が80重量%を超えると、ケーブル最外層とPBT樹脂やポリアミド樹脂等のモールド材との接着力が大きく低下し、水密性、気密性を保つことができない。一方、配合量が5重量%よりも少ない場合も、ケーブル最外層とモールド材との接着力が低いばかりでなく、耐水性が低下し、水密性、気密性が損なわれる。
なお、このベース樹脂には、(a)+(b)の特性を損なわない範囲でその他の樹脂成分、例えば熱可塑性エラストマー(熱可塑性ポリウレタン、ポリアミドエラストマー等)やエチレン系共重合体(エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体等)を配合することができる。
【0012】
多芯撚線の外側に設ける被覆層は、ケーブル断面の真円度を高めるために2層以上の多層とすることが好ましい。多層被覆層のうち、内層の被覆材料は、最外層である被覆層との密着性等を考慮して選択され、特に、熱可塑性ポリウレタン系組成物、エチレン・酢酸ビニル共重合体および密度が0 . 86〜0 . 90g/cm 3 であるエチレン・αオレフィン共重合体のいずれかもしくはそれらの混合物をベ−ス樹脂とする樹脂組成物が好ましい。
【0013】
熱可塑性ポリウレタン系の樹脂組成物を内層被覆材として用いる場合は、ケーブルの繰り返し屈曲性を良好にすることが可能である。
ベース樹脂となる熱可塑性ポリウレタン樹脂の種類としては、ポリエステル系ウレタン樹脂(アジペート系、カプロラクトン系、ポリカーボネート系)、ポリエエーテル系ウレタン樹脂が挙げられ、耐水性、耐カビ性などの点でポリエーテル系ウレタン樹脂が好ましい。
【0014】
また、内層の被覆材として、エチレン・酢酸ビニル共重合体および密度が0.86〜0.90g/cm 3 であるエチレン・αオレフィン共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種をベ−ス樹脂とする樹脂組成物で構成すると良い。これらの樹脂を用いると、内層・外層間の気密性や繰り返し曲げ特性を維持しつつ安価にケーブルを形成することが可能になる。エチレン・αオレフィン共重合体は、エチレンとプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどのαオレフィンの少なくとも1種との共重合体であり、架橋性、弾力性の点から、本発明においては、密度0.86〜0.90g/cm 3 であるものが好ましい。
【0015】
さらに、被覆層の内層に用いることのできるエチレン・酢酸ビニル共重合体は、架橋性、弾力性の点から、酢酸ビニル含有量が10〜30重量%のものが好ましい。エチレン・αオレフィン共重合体およびエチレン・酢酸ビニル共重合体は単独で、または両者を混合して使用することも可能である。
内層を構成する樹脂組成物は架橋によって、その耐熱性を向上させることができ、ポリブチレンテレフタレ−トやポリアミドのように高融点を有する樹脂でモ−ルドする場合には架橋させるとよい。被覆層を架橋することにより耐熱性とゴム弾性特性を向上でき、その結果としてケーブル絶縁層の弾性反発力、即ち復元力が向上するために端末に成形する成形体との界面の気密、水密性が向上する。
【0016】
被覆層を架橋させる方法としては、従来公知の電離性放射線による架橋法や化学架橋法が採用できるが、生産性の点から、電子線等の電離性放射線の照射による架橋方法が好ましい。電子線の線量は、1〜30Mradが適当である。
また、化学架橋法の場合には、有機過酸化物を架橋剤として配合した樹脂組成物を用い、押出成形後に加熱処理により架橋を完了させる。
【0017】
被覆層最外層に用いられる樹脂組成物は、適度に架橋されることにより、耐熱性、耐薬品性、耐水性を更に向上させることが可能であるが、ゲル分率は5〜50%において接着性と耐熱性の向上が最も認められる。5重量%より少ないと200℃以上の高温雰囲気中でケーブル被覆層が溶融するなど架橋の効果が認められない。50重量%を超えると本発明の目的である接着性が低下し、結果的に気密性、水密性を損なう。
【0018】
本発明におけるケーブルの被覆層を構成する樹脂組成物には、絶縁電線やケーブルにおいて、一般的に使用されている各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、金属不活性剤、難燃剤、分散剤、着色剤、充填剤、滑剤等を本発明の目的を損なわない範囲で適宜配合することができる。
特に、自動車用途では難燃剤の添加は不可欠である。
【0019】
酸化防止剤としては、4,4’−ジオクチル・ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物等のアミン系酸化防止剤、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等のフェノ−ル系酸化防止剤、ビス(2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル)スルフィド、2−メルカプトベンヅイミダゾールおよびその亜鉛塩、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリル−チオプロピオネート)などのイオウ系酸化防止剤などがあげられる。
【0020】
金属不活性剤としては、N,N’−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、2,2'−オキサミドビス−(エチル3−((3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)などがあげられる。
【0021】
難燃剤としては、テトラブロモビスフェノールA(TBA)、デカブロモジフェニルオキサイド(DBDPO)、オクタブロモジフェニルエーテル(OBDPE)、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)、ビストリブロモフェノキシエタン(BTBPE)、トリブロモフェノール(TBP)、エチレンビステトラブロモフタルイミド、★TBA・ポリカーボネートオリゴマー、★臭素化ポリスチレン、★臭素化エポキシ、エチレンビスペンタブロモジフェニール、塩素化パラフィン、ドデカクロロシクロオクタンなどのハロゲン系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの無機系難燃剤、リン酸化合物、ポリリン酸化合物、赤リン化合物などのリン系難燃剤などがあげられる。
難燃助剤、充填剤としては、カ−ボン、クレ−、酸化亜鉛、酸化錫、酸化マグネシウム、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ほう酸亜鉛などがあげられる。
【0022】
【実施例】
(実施例1〜13、比較例1〜2)
導体(導体径1mmφの錫メッキ軟銅撚線 構成:20本/0.18mmφ)の上に、低密度ポリエチレンを外径1.7mmとなるように押出被覆し、これに加速電圧500keV、照射量20Mradの電子線を照射して架橋ポリエチレン絶縁層を有する絶縁導体を得、この絶縁導体を2本撚り合わせた多芯撚線を用意した。
次いで、上記多芯撚線上に、40mmφ押出機(L/D=25)を用い、ダイス温度180℃、以下フィ−ダ−側へ C3=170℃、C2=160℃、C1=150℃の条件により、表中に示す(A)熱可塑性ポリウレタン、(B)エチレン−酢酸ビニル共重合体、(C)エチレン−αオレフィン共重合体のいずれかの樹脂を外径が4.2mmφとなるように押出被覆して内層被覆層を形成し、さらに、その上に表2に示した外層樹脂組成物を外径が5.0mmφとなるように内層と同条件で押出被覆した。次いで、押出被覆後さらに750keVの加速電圧と表に示す照射量で電子線を照射して被覆層を架橋させて、図2に示すような被覆層が2層からなるケーブルを得た。
なお、実施例13については、内層被覆層を外層被覆材と同一材料で形成した。
【0023】
得られた各ケーブルについて、下記の試験方法で各種の特性を評価し、その結果を表1〜表3に示した。
1)外層のゲル分率
ケーブルより外層のみを採取し、キシレンで110℃、24時間抽出し充分乾燥し、重量を測定する。溶け残った重量をゲル分とし、溶剤抽出前の重量に対する百分率で表した。
【0024】
2)PBT樹脂またはポリアミド樹脂との剥離強度と剥離後の残留物の有無
a)所定長のケーブルの被覆層を長手方向に2分割し、絶縁導体を取り外し、b)2分割した半円形の被覆層を金型内にセットし、c)金型内にPBT樹脂、もしくはポリアミド(PA)樹脂(ナイロン12)を射出して、被覆層上に樹脂モールドを行った。
得られた樹脂成形体を剥離試験に供した。剥離試験はケーブル被覆層を樹脂成形体から90度の角度で50mm/分の速度で引き剥がし、その時の最大強度を測定し、併せて、剥離面の樹脂成形体表面にケーブル被覆材が残留しているか否か観察した。被覆材が凝集力破壊して成形体表面に残留している場合を○、少量残留している場合を△、残留していない場合は×とした。
【0025】
3)端末の気密性
図3に示すように、ケーブルの被覆層2および1bを除去して導体1aを露出させ、その端部に電極端子5を接続した。
次いで、接続部とその近傍周囲をPBT樹脂によるモ−ルド(射出成形)により、樹脂成形体4で覆った。
このケーブルについて、120℃×1時間、−40℃×1時間を1サイクルとして、100サイクル、500サイクルのヒートショック試験をおこなった。
その後、樹脂成形体側と反対の端末より、2気圧の圧縮空気を注入し、樹脂成形体側から漏れがないかを、水中に浸漬し、気泡の発生有無で、気密性を確認した。
5サンプルについて、試験をおこない、全て合格した場合を○、いずれかのサンプルが不合格であった場合を×とした。
【0026】
4)耐水性
ケーブルサンプルより外皮のみ半割にして採取し、1/8インチダンベルで打ち抜いた。打ち抜きサンプルは表面が平滑になる様研磨し90℃の熱水に240時間浸漬した。浸漬したサンプルを定速型引張り試験機で標線間20mm、引張り速度500mm/minで引張り試験を行い破断時の抗張力(TS)と破断時の伸び(El)を測定した。この結果を熱水浸漬前のTS、Elを100%とした時の百分率で表した。
5)浸水後の気密性
上記3)で作製したヒートショック試験前のサンプルを上記4)と同条件の熱水浸漬を行った後、3)と同様の気密性試験を行った。試験数は3で、全数合格の場合は○、内一つでも不合格の場合は×とした。
【0027】
6)耐熱性
ケーブルサンプルと同径(5.0mmφ)の金属棒に6ターン以上巻き付けたまま200℃に30分放置した。取り出して室温で充分冷却した後、ケーブル表面に亀裂や溶融のないことを目視にて確認した。
3サンプル試験を行い、全サンプルに溶融や亀裂が無い場合は○とし、1サンプルでも溶融や亀裂があった場合には×とした。
【0028】
なお、表1〜表3に示す各成分は下記のものを使用した。
(01)ポリエステルエラストマー
東レデュポン(株)製、商品名:ハイトレル2300X06
(02)SEPS
クラレ(株)製、商品名:セプトン2063(スチレン量13重量%、硬度34(JIS−A)
(03)SEPS
クラレ(株)製、商品名:セプトン2002(スチレン量30重量%、硬度80(JIS−A)
(04)SEP
クラレ(株)製、商品名:セプトン1001(スチレン量35重量%、硬度80(JIS−A)
(05)ペンタエリスリチル-テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)
チバガイギー(株)製、商品名:イルガノックス1010
(06)エチレンビスペンタブロモフェニール
アルベマール(株)製、商品名:サイテックス8010
【0029】
(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂(エラストマー)
日本ミラクトラン(株)製、商品名:E−385PNAT
(B)エチレン・酢酸ビニル共重合体
三井・デュポンポリケミカル(株)製、
商品名:エバフレックスV527−4(酢酸ビニル含有量17重量%、MFR0.8g/10min.、密度0.94g/cm 3
(C)エチレン・αオレフィン共重合体
ダウ・ケミカル(株)製、商品名:エンゲージ CL8003(αオレフィン(オクテン)含有量18重量%、MFR1g/10min.、密度0.89g/cm 3
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
表1〜表3の結果から、被覆層最外層が(a)ポリエステルエラストマー20〜95重量%および(b)SEPSもしくはSEP80〜5重量%をベース樹脂とする樹脂組成物により形成されている本発明実施例のケーブルは、ケーブル被覆材料とモールド成形体との接着性に優れ、ケーブル端末の気密性が保たれており、耐水性も十分であることがわかる。
特に(a)成分40〜60重量%および(b)成分60〜40重量%をベース樹脂とする樹脂組成物により最外層が形成される場合には接着性が極めて良好である また最外層のゲル分率が5〜50重量%となるように架橋処理されている場合には上記の効果以外に耐熱性も十分であることがわかる。
【0034】
一方、表3に示した比較例の結果から判るように、2成分のうち(b)成分が本発明で規定する範囲を外れて多い比較例1では、PBT樹脂、ポリアミド樹脂への接着性が低下し十分な気密性が得られない(比較例1)。また、規定範囲より少ない場合、すなわち(a)成分のみの比較例2では、モールド材との接着力が実施例のように高くないため、初期特性としての気密性は得られるが、ヒートショック試験のサイクル数が多くなると気密性が失われるばかりでなく、耐水性が著しく劣り、熱水浸漬後は気密性を保つことができない。
【0035】
【発明の効果】
本発明のケーブルは、(a)熱可塑性ポリエステルエラストマー20〜95重量%および(b)スチレン−(エチレン−プロピレン)系ブロック共重合体5〜80重量%をベース樹脂とする樹脂組成物により形成されていることから、ケ−ブルの端末部分をPBT樹脂やポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂でモ−ルドする際に、ケーブル被覆材とモールド材とが強固に接着され、特別なシ−ル対策を施さなくても、ケ−ブルと成形体との界面の気密性、水密性が長期にわたって保たれ、ケ−ブル内部の絶縁電線の導体の腐食や接続された機器部品の性能劣化を防止できる。さらに、本発明ケーブルは、極めて優れた耐水性を有し、耐熱性、押出特性にも優れる被覆材を採用していることから、自動車用、ロボット用、電子機器用等の配線ケーブルとして経年安定して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のケーブルの一実施態様を示す断面図。
【図2】本発明のケーブルの他の実施態様を示す断面図。
【図3】本発明ケーブルの端末部の実施態様を示す説明図。
【符号の説明】
1 多芯撚線
1a 導体
1b 絶縁層
2 被覆層
2a 内層
2b 外層
3 ケーブル
4 樹脂成形体
5 電極端子
Claims (3)
- 絶縁導体を複数本撚り合わせた多芯撚線の外側に被覆層を設けたケーブルにおいて、前記被覆層の少なくとも最外層が(a)熱可塑性ポリエステルエラストマー20〜95重量%および(b)スチレン−(エチレン−プロピレン)系ブロック共重合体80〜5重量%をベース樹脂とする樹脂組成物により形成され、架橋処理されていることを特徴とするケーブル。
- 前記被覆層が2層からなり、その内層に熱可塑性ポリウレタンをベース樹脂とする樹脂組成物を用いることを特徴とする請求項1記載のケーブル。
- 前記被覆層が2層からなり、その内層にエチレン・酢酸ビニル共重合体、および密度が0.86〜0.90g/cm 3 であるエチレン・αオレフィン共重合体の群から選ばれた少なくとも1種をベ−ス樹脂とする樹脂組成物を用いたことを特徴とする請求項1に記載のケーブル。
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1997
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