JP5598863B2 - ノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線 - Google Patents

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Description

本発明は、機械特性及び耐熱性に優れるとともに、内層と該内層に接する最外層との剥離性に優れたノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線に関する。
電気・電子機器の内部および外部配線に使用される絶縁電線やケーブルには、耐熱性および機械特性(例えば、引張特性、耐摩耗性)のほか、高い難燃性が要求される。
難燃性を満足するために、ポリ塩化ビニル(PVC)コンパウンドや、分子中に臭素原子や塩素原子を含有するハロゲン系難燃剤を配合したポリオレフィンコンパウンドに代わり、ハロゲンを含有しない難燃剤(ノンハロゲン系難燃剤)が配合された樹脂組成物が提案されている。例えばエチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのエチレン系共重合体に、難燃剤として水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの金属水和物が多量に配合された難燃性樹脂組成物が提案されている。
一方、電気・電子機器の配線材に求められる難燃性、耐熱性、機械特性(例えば引張特性、耐摩耗性)などの規格は、UL、JISなどで要求水準に応じて定められている。例えば、UL1581(電線、ケーブルおよびフレキシブルコードのための関連規格(Reference Standard for Electrical Wires,Cables and Flexible Cords))や、JIS C 3005(ゴム・プラスチック絶縁電線試験方法)では、難燃性、耐熱性、および機械特性について定められている。
また、電気・電子機器の配線材には、内層を機械的な外傷から保護するために、最外層に被覆層を形成した多層絶縁電線が必要とされる場合がある。この多層絶縁電線では、電線製造工程において、内層に絶縁性に劣る局所部分が生じてしまっても、内層を最外層部によって保護することにより、長期にわたり高い耐圧特性を維持することが可能となる。
電気・電子機器の配線材では、圧着端子により絶縁電線の金属導体と金属製の端子が接続される。この方法では、最外層を内層から剥離し、内層を露出させた状態で、中空の金属製の圧着端子を、内層の外周を覆うように差込み、その外側から圧着端子を固定し、絶縁電線の金属導体と金属製の端子を直接接続させる。この方法によって、電荷を逃がすことなく、効率良く電気エネルギーを伝えることができる。圧着端子の中空部分の大きさは配線材の直径により定まっており、最外層が内層からきれいに剥すことができないと、圧着端子をうまく差し込むことができない。
またノイズフィルターに使用される配線材でも、最外層を内層からきれいに剥すことが必要とされている。
しかし上記のエチレン系共重合体に金属水和物を充填した難燃性樹脂組成物を用いて導体に2層以上被覆した多層絶縁電線では、層間の密着性が高く、最外層を内層からうまく剥離することが困難である場合が多い。
多層絶縁電線としては、内層にノンハロゲン難燃性樹脂組成物を用い、外層にシリコーン化合物とパラフィンワックスを添加したノンハロゲン難燃性樹脂組成物からなるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この多層絶縁電線は、内層から外層をきれいに剥離するという点では十分とはいえず、UL3737で定められた耐熱性に合格することはできない。
また、内層の引張弾性率が特定の値以上のポリオレフィン系熱可塑性樹脂で形成され、外層がエチレン系重合体と金属水酸化物とからなる難燃性樹脂組成物で形成された絶縁電線が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この絶縁電線も、内層から外層をきれいに剥離することができない。
特開2002−270048号公報 特開2004−335263号公報
本発明は、上記の問題点を解決し、耐熱性および機械特性に優れるとともに、最外層を内層からきれいに剥離することができ、かつ難燃性を維持できるノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、金属導体上に直接又は間接に内層が設けられ、前記内層を覆うように最外層が設けられた少なくとも2層の樹脂層からなるノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線であって、内層と最外層の一方が、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−アクリル酸エステル共重合体の中から少なくとも1種以上が選ばれたエチレン系共重合体、ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂を含有する樹脂成分に対し金属水和物を含む難燃性樹脂組成物を用いて押出被覆され、内層と最外層の他方が、ポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂を必須とし、さらに好ましくはエチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−アクリル酸エステル共重合体の中から少なくとも1種以上が選ばれたエチレン系共重合体を含有してもよい樹脂成分に対し金属水和物を含む難燃性樹脂組成物を用いて押出被覆され、内層と最外層の少なくともいずれか一方にシリコーンガムを含有するノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線が上記課題を解決することを見出した。本発明はこの知見に基づきなされたものである。
すなわち本発明は、下記手段で達成された。
<1>金属導体上に直接又は間接に内層が設けられ、前記内層を覆うように直接最外層が設けられた少なくとも2層の樹脂層からなるノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線であって、
前記内層と前記最外層の一方が、下記組成:
(a11)エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群から選ばれたエチレン系共重合体50〜80質量%、(a12)ポリエチレン樹脂5〜35質量部、(a13)ポリプロピレン樹脂5〜20質量%を含有する樹脂成分(A1)の合計100質量部に対し、(B1)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウムおよび水酸化バリウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属水和物120〜300質量部を有する難燃性樹脂組成物(X1)を用いて押出被覆され、
前記内層と前記最外層の他方が、下記組成:
(a21)ポリエチレン樹脂40〜95質量%、(a22)エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群から選ばれたエチレン系共重合体0〜40質量%、(a23)ポリプロピレン樹脂5〜30質量%を含有する樹脂成分(A2)の合計100質量部に対し、(B2)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウムおよび水酸化バリウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属水和物120〜300質量部を有する難燃性樹脂組成物(X2)を用いて押出被覆され、
前記内層と前記最外層を構成する難燃性樹脂組成物の少なくともいずれか一方が(C)シリコーンガムを1〜6質量部含有することを特徴とするノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線。
<2>前記(a13)または/および(a23)のポリプロピレン樹脂が、エチレン成分量を0〜15質量%含有したホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン共重合体、ランダムポリプロピレン共重合体、または不飽和カルボン酸で変性されたポリプロピレン樹脂から選ばれた少なくとも1種以上であることを特徴とする<1>に記載のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線
<3>前記難燃性樹脂組成物(X1)および前記難燃性樹脂組成物(X2)が、前記(C)のシリコーンガムおよびポリエチレンワックスのいずれかを含有することを特徴とする<1>または<2>に記載のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線。
<4>前記最外層の難燃性樹脂組成物が、前記難燃性樹脂組成物(X1)であり、前記内層の難燃性樹脂組成物が、前記難燃性樹脂組成物(X2)であることを特徴とする請求項<1>〜<3>のいずれか1項に記載のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線。
本発明のノンハロゲン系難燃性多層電線は、耐熱性および機械特性に優れるとともに、最外層を内層からきれいに剥離することができ、かつ難燃性を維持することができる。
本発明のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線の一実施形態を模式的に示す断面図である。 本発明のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線の別の実施形態を模式的に示す断面図である。
本発明のノンハロゲン系難燃性多層電線について、図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本発明のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線20の一実施形態は、金属導体1上に内層2が設けられ、該内層2を覆うように直接最外層3が設けられている。金属導体1としては、軟銅線、銅合金線、アルミニウム線、好ましくは、軟銅線、銅合金線を使用することができる。内層2と最外層3は、後述するように、一方が難燃性樹脂組成物(X1)を用いて押出被覆され、他方が難燃性樹脂組成物(X2)を用いて押出被覆されている。
また、図2に示すように、本発明のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線は、金属導体1上に他の層4を介して、内層2が押出被覆され、該内層2を覆うように直接最外層3が設けられていてもよい。内層2と最外層3を構成する難燃性樹脂組成物としては、前記図1に示す、第一の形態のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線と同様のものを使用することができる。図1に示す一実施形態のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線においても、図2に示す別の実施形態のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線においても、内層2と最外層3をうまく剥離することができる。
本発明のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線は、金属導体上に直接又は間接に内層が設けられ、該内層を覆うようにして直接外層が設けられた少なくとも2層の樹脂層からなるノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線であり、この少なくとも2層の樹脂層とは金属導体を覆う被覆樹脂層である。
本発明においては、内層と最外層のうち、一方が、(a11)エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群から選ばれたエチレン系共重合体50〜80質量%、(a12)ポリエチレン樹脂5〜35質量部、(a13)ポリプロピレン樹脂5〜20質量%を含有する樹脂成分(A1)の合計100質量部に対し、(B1)金属水和物120〜300質量部を有する難燃性樹脂組成物(X1)を用いて押出被覆され、
他方が、(a21)ポリエチレン樹脂40〜95質量%、(a22)エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群から選ばれたエチレン系共重合体0〜40質量%、(a23)ポリプロピレン樹脂5〜30質量%を含有する樹脂成分(A2)の合計100質量部に対し、(B2)金属水和物120〜300質量部を有する難燃性樹脂組成物(X2)を用いて押出被覆され、
前記内層と前記最外層を構成する難燃性樹脂組成物の少なくともいずれか一方に(C)シリコーンガムを1〜6質量部含有する。
例えば、本発明のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線は、内層が難燃性樹脂組成物(X1)で押出被覆された場合には、最外層は難燃性樹脂組成物(X2)で押出被覆されている。逆に、内層が難燃性樹脂組成物(X2)で押出被覆された場合には、最外層は難燃性樹脂組成物(X1)で押出被覆されている。
本発明においては、外層、特に最外層の難燃性樹脂組成物が難燃性樹脂組成物(X1)であり、内層の難燃性樹脂組成物が難燃性樹脂組成物(X2)であることが好ましい。
1.難燃性樹脂組成物(X1)
本発明のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線の内層又は最外層に用いられる難燃性樹脂組成物(X1)は、(a11)エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群から選ばれたエチレン系共重合体50〜80質量%、(a12)ポリエチレン樹脂5〜35質量部、(a13)ポリプロピレン樹脂5〜20質量%を含有する樹脂成分(A1)の合計100質量部に対し、(B1)金属水和物120〜300質量部を含有する。
(a11)エチレン系共重合体
(a11)成分のエチレン系共重合体としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などを単独で、又は適宜混合したものを使用することができる。
(a11)成分のエチレン系共重合体は、難燃性樹脂組成物(X1)の前記樹脂成分(A1)の50〜80質量%、好ましくは55〜65質量%である。ここで、(a11)成分のエチレン系共重合体は、樹脂成分(A1)の50質量%以上であることが好ましい。この範囲内とすることにより、金属水和物を十分配合することができ、難燃性を確保することができると同時に柔軟性の低下を抑制することができる。
エチレン−酢酸ビニル共重合体及び/又はエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を用いることにより、多層電線としての柔軟性や難燃特性の向上の効果を得ることができるため、好ましい。
エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、例えば、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体などを挙げることができる。
エチレン−酢酸ビニル共重合体としては、例えば、エバフレックス(商品名、三井デュポンポリケミカル(株)製)、レバプレン(商品名、バイエル社製)を挙げることができる。またエチレン−メタクリル酸共重合体としては、例えば、ニュクレル(商品名、三井デュポンポリケミカル(株)製)などを挙げることができる。さらにエチレン−アクリル酸エチル共重合体としては、例えば、エバルロイ(商品名、三井デュポンポリケミカル(株)製)などを挙げることができる。
エチレン−酢酸ビニル共重合体としては、酢酸ビニル含有量が17〜80質量%のものを使用することが好ましい。酢酸ビニル含有量の異なる樹脂を二種以上組み合わせてもよい。この範囲内の酢酸ビニル含有量のエチレン−酢酸ビニル共重合体を用いることにより、ノンハロゲン系難燃剤を配合しても機械特性を損なうことなく、難燃性を確保することができる。(a11)エチレン系共重合体中の酢酸ビニル含有量は、好ましくは、20〜80量%、さらに好ましくは33〜80質量%である。
エチレン−酢酸ビニル共重合体の配合量は、(a11)エチレン系共重合体中、80〜100質量%とすることが好ましい。この範囲内とすることにより、ノンハロゲン系難燃剤を十分配合することができ、難燃性を確保することができると同時に柔軟性の低下を抑制することができる。
(a12)ポリエチレン樹脂
本発明で使用するポリエチレン樹脂は、エチレンのみの重合体であるポリエチレン樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合体、これらの樹脂が不飽和カルボン酸で変性されたポリエチレン樹脂を含み、本発明においてはこれらのポリエチレン樹脂が好ましい。
ポリエチレン樹脂は、高密度ポリエチレン(HDPE:密度0.92〜0.96、荷重たわみ温度130℃以下、低密度ポリエチレン(LDPE:密度0.91〜0.92、荷重たわみ温度100℃)、超低密度ポリエチレン(VLDPE:密度0.9以下)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE:密度0.94以下)、超高分子量ポリエチレン(UHMW−PE:分子量が通常150万以上)のいずれでもよく、一般に、5モル%以下のα−オレフィンで共重合されている。本発明においては、α−オレフィンは5モル%を超えて共重合されたものも好ましい。
エチレン−α−オレフィン共重合体としては、好ましくは、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体である。α−オレフィンの具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げられる。本発明においては、プロピレン以外のα−オレフィンが好ましい。エチレン−α−オレフィン共重合体としては、上記の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)及びシングルサイト触媒存在下に合成されたエチレン−α−オレフィン共重合体等がある。
この中でも、シングルサイト触媒存在下で合成されたエチレン−α−オレフィン共重合体が好ましい。その一例として、「カーネル」(商品名、日本ポリエチレン(株)製)、「エボリュー」(商品名、プライムポリマー(株)製)、「タフマー」(商品名、三井化学(株)製)、「ユメリット」(商品名、宇部丸善石油化学(株)製)を挙げることができる。
ポリエチレン樹脂、特にエチレン−α−オレフィン共重合体の密度は特に制限されないが、伸び特性、柔軟性の点で、925kg/m以下が好ましく、より好ましくは913kg/m以下、さらに好ましくは900kg/m以下、特に好ましくは890kg/m以下である。この密度の下限は880kg/mが好ましい。
また、本発明においてポリエチレン樹脂は、不飽和カルボン酸で変性されたポリエチレン樹脂も好ましい。変性する不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸が挙げられ、マレイン酸、無水マレイン酸や(メタ)アクリル酸が好ましく、特に、マレイン酸もしくは無水マレイン酸が好ましい。
不飽和カルボン酸で変性したポリエチレン樹脂としては、例えば、「アドテックス」(商品名、日本ポリエチレン(株)製)が挙げられる。
ポリエチレン樹脂の含有量は、難燃性樹脂組成物(X1)の前記樹脂成分(A1)の5〜35質量%、このましくは5〜30質量%である。
(a13)ポリプロピレン樹脂
(a13)ポリプロピレン樹脂としては、エチレン成分量を0〜15質量部含有したプロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン樹脂:エチレン成分量0質量%)や、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体を使用することができる。成分として、エチレン−プロピレンブロック共重合体を使用することにより、耐熱性、加熱変形特性を向上させることができる。
また、本発明においては、不飽和カルボン酸で変性されたポリプロピレン樹脂も好ましい。ここで、不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸などを使用することができる。このうち、(メタ)アクリル酸(アクリル酸もしくはメタクリル酸)、無水マレイン酸、マレイン酸が好ましく、(メタ)アクリル酸がさらに好ましい。
ここでエチレン−プロピレンランダム共重合体はエチレン成分の含有量が1〜5質量%程度のものをいい、エチレン成分がプロピレン鎖中にランダムに取り込まれているものをいう。またエチレン−プロピレンブロック共重合体はエチレン成分の含有量が5〜15質量%程度のものをいい、エチレン成分とプロピレン成分が独立した成分として存在するものをいう。
不飽和カルボン酸で変性したポリプロピレン樹脂としては、例えば、「ポリボンド」(商品名、クロンプトン(株)製)が挙げられる。
不飽和カルボン酸で変性されたポリプロピレン樹脂を配合することにより、機械的特性、耐磨耗性向上の効果を得ることができる。
(a13)ポリプロピレン樹脂のMFR(ASTM−D−1238)は、好ましくは0.1〜60g/10分、より好ましくは0.1〜25g/10分、さらに好ましくは0.3〜15g/10分である。
ポリプロピレン樹脂を配合することにより、耐熱性を向上させることができる。UL1581で規定されている121℃で1時間後の加熱変形特性を満足することができる。
ポリプロピレン樹脂の含有量は樹脂成分(X1)の前記樹脂成分(A1)の5〜20質量%であり、好ましくは、7〜20質量%、さらに好ましくは、10〜20質量%である。ポリプロピレン樹脂の含有量が少なすぎると耐熱性、特に加熱変形特性が低下し、多すぎると成形体の柔軟性が低下する。
なお、不飽和カルボン酸で変性したポリオレフィン樹脂としては、例えば、「アドマー」(商品名、三井化学(株)製)、「モディック」(商品名、三菱化学(株)製)を挙げることができる。
(B1)金属水和物
難燃性樹脂組成物(X1)は、前記(a11)エチレン系共重合体、(a12)ポリエチレン樹脂及び(a13)ポリプロピレン樹脂を含有する樹脂成分(A1)の合計100質量部に対し、(B1)金属水和物120〜300質量部、さらに好ましくは150〜220質量部を含有する。難燃剤の含有量をこの範囲内とすることにより、難燃性と機械特性を満足することができる。
使用できる金属水和物としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムを挙げることができ、本発明では、これらから選択される。その中でも水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムが好ましい。その中でも水酸化マグネシウムは熱分解温度が高いため、本発明の難燃性樹脂組成物に配合した際に押出成形が容易である。また、水酸化マグネシウムを使用すると、難燃性に優れた樹脂組成物を得ることができ、特に好ましい。
水酸化マグネシウムは、無処理のままでも、表面処理を施されていてもよい。表面処理の例としては、脂肪酸処理、リン酸処理、チタネート処理、シランカップリング剤による処理などが挙げられる。樹脂成分との相互作用の点から、本発明においては、無処理のものか、シランカップリング剤により表面処理したものを使用するのが好ましい。
さらに、本発明においては、無処理の水酸化マグネシウムや、表面処理を行った水酸化マグネシウムをそれぞれ単独で使用するのは勿論、両者を併用してもよい。さらに、異なる表面処理を行った水酸化マグネシウムを併用することも可能である。この際、シラン表面処理水酸化マグネシウムを少なくとも50質量%に設定することが好ましい。
本発明におけるシランカップリング剤は末端にビニル基、メタクリロキシ基、グリシジル基、アミノ基を有するものが好ましい。具体的には、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ―アミノプロピルトリプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ―アミノプロピルトリプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。中でもビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が好ましい。
水酸化マグネシウムをシランカップリング剤で表面処理をする場合には、いずれか1種のシランカップリング剤のみでも、2種以上を併用してもよい。
シランカップリング剤による表面処理の方法としては、通常使用される方法で処理を行うことが可能であるが、たとえば、表面処理をしていない水酸化マグネシウムをあらかじめドライブレンドしたり、湿式処理を行ったり、混練時にシランカップリング剤をブレンドすることなどにより得ることが可能である。使用するシランカップリング剤の含有量は、表面処理をするのに十分な量が適宜加えられるが、具体的には水酸化マグネシウムに対し0.1〜2.5質量%、好ましくは0.2〜1.8質量%、さらに好ましくは0.3〜1.0質量%である。
すでにシランカップリング剤により表面処理が施された水酸化マグネシウムを入手することも可能である。シランカップリング剤で表面処理された水酸化マグネシウムとしては、具体的には、キスマ5L、キスマ5N、キスマ5P(いずれも商品名、協和化学(株)製)や、マグシーズS4(商品名、神島化学(株)製)などが挙げられる。
また、無処理の水酸化マグネシウムとしては、例えばキスマ5(商品名、協和化学(株)製)、マグニフィンH5(商品名、アルベマール(株)製)などが挙げられる。
難燃性樹脂組成物(X1)では、金属水和物の含有量は、前記樹脂成分(A1)の合計100質量部に対し120〜300質量部であり、好ましくは150〜220質量部、さらに好ましくは180〜210質量部である。金属水和物の配合量が少なすぎると、難燃性に問題が生じ、多すぎると機械的特性が低下する。
その他難燃性を向上させるために難燃助剤として、メラミンシアヌレート化合物を、0〜80質量部、好ましくは10〜50質量部、更に好ましくは15〜45質量部加えることもできる。メラミンシアヌレート化合物は、粒径が細かい物が好ましい。本発明で用いるメラミンシアヌレート化合物の平均粒径は好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。ここで平均粒径とは、レーザー回折法による粒度分布測定によって得られた値をいう。
また、分散性の面から表面処理されたメラミンシアヌレート化合物が好ましく用いられる。本発明で用いることのできるメラミンシアヌレート化合物としては、MC6000(商品名、日産化学(株)製)、メラプアMF15(商品名、(株)チバ製)、スタビエースMC15(商品名、堺化学製)などがある。
そのほかに使用できるノンハロゲン系難燃助剤として、スズ酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、膨張性黒鉛、炭酸カルシウムなどを使用することができる。
(C)シリコーンガム
(C)シリコーンガムは、内層と前記最外層を構成する難燃性樹脂組成物の少なくともいずれか一方に含有する。
前記難燃性樹脂組成物(X1)にシリコーンガムを含有する場合、シリコーンガムの配合量は、前記(a11)エチレン系共重合体、(a12)ポリエチレン樹脂及び(a13)ポリプロピレン樹脂を含有する樹脂成分(A1)の合計100質量部に対し、1〜6質量部、さらに好ましくは1〜4質量部である。内層と最外層を構成する難燃性樹脂組成物の少なくともいずれか一方に所定量のシリコーンガムを含有させることにより、内層と最外層との密着性を低下させることなく、シリコーンガムが内層と最外層の界面にブリードしやすくなり、内層と最外層との剥離を問題なく行うことができる。ここで、高分子量のシリコーンガムを使用することによって、構成素材と架橋し、長期に渡って界面の状態を維持することが出来る。高分子量シリコーンガムとしては、例えば、「CF−9150」(商品名、東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製)を使用することができる。
シリコーンガムの中でも、質量平均分子量が10万以上のものが好ましい。更に好ましくは、10〜80万である。また、25℃における動粘度は1万cSt以上のものが好ましい。
ここで、質量平均分子量は、下記条件のGPC(ゲル−パーミエーション クロマトグラフ)で測定することができる。
GPC装置:HLC−8120GPC(商品名、東ソー(株)製)
カラム:TSK gel SuperHM−H/4000/H3000/H2000(商品名、東ソー(株)製)
流量:0.6mL/min
濃度:0.3質量%
注入量:20μL
カラム温度:40℃
また、動粘度は、25℃で回転粘度計により粘度を測定し、その後、動粘度に換算した値である。
2.難燃性樹脂組成物(X2)
本発明のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線の内層又は最外層に用いられる難燃性樹脂組成物(X2)は、(a21)ポリエチレン樹脂40〜95質量%、(a22)エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群から選ばれたエチレン系共重合体0〜40質量%、(a23)ポリプロピレン樹脂5〜30質量%を含有する樹脂成分(A2)の合計100質量部に対し、(B2)金属水和物120〜300質量部を含有する。
(a21)ポリエチレン樹脂
(a21)ポリエチレン樹脂は前記(a12)ポリエチレン樹脂に使用されるものと同様のものを使用することができる。なお、(a21)のポリエチレン樹脂は、不飽和カルボン酸で変性されていないものが好ましい。
ポリエチレン樹脂の含有量は、難燃性樹脂組成物(X2)の前記樹脂成分(A2)の40〜95質量%、好ましくは50〜85質量%である。内層と最外層の両方にポリエチレン樹脂を含有することで、具体的には、内層では、難燃性樹脂組成物(X2)に、樹脂成分(A2)として、(a21)ポリエチレン樹脂40〜95質量%及び(a22)ポリプロピレン樹脂5〜30質量%を含有させることにより、内層と最外層の剥離を問題なく行うことができる。
(a22)エチレン系共重合体
(a22)エチレン系共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群から選ばれたエチレン系共重合体である。
このエチレン系共重合体としては、前記(a11)のエチレン系共重合体と同様のものを使用することができる。このエチレン系共重合体は、難燃性樹脂組成物(X2)中の前記樹脂成分(A2)の0〜40質量%、好ましくは10〜30質量%である。(a22)をこの範囲内とすることにより、十分な機械的特性と難燃性を得ることができる。
(a23)ポリプロピレン樹脂
(a23)ポリプロピレン樹脂は、前記(a12)ポリプロピレン樹脂に使用されるものと同様のものを使用することができる。
ポリプロピレン樹脂の含有量は、難燃性樹脂組成物(X2)の前記樹脂成分(A2)の5〜30質量%、好ましくは10〜20質量%である。この範囲内とすることにより、柔軟性を損なうことなく、UL1581規格を満足する加熱変形特性の効果を得ることができる。
(B2)金属水和物
(B2)金属水和物は、前記(B1)金属水和物に使用されるものと同様のものを使用することができる。
(B2)金属水和物の含有量は、前記(a21)ポリエチレン樹脂、(a22)前記ポリエチレン系共重合体及び(a23)ポリプロピレン樹脂を含有する樹脂成分(A2)の合計100質量部に対し、120〜300質量部、さらに好ましくは180〜250質量部である。この範囲内とすることにより、UL1581規格を満足する垂直難燃特性の効果を得ることができる。
(C)シリコーンガム
(C)シリコーンガムは、前述のように、前記内層と前記最外層を構成する難燃性樹脂組成物の少なくともいずれか一方に含有する。
前記難燃性樹脂組成物(X2)にシリコーンガムを含有する場合、シリコーンガムの配合量は、前記(a21)ポリエチレン樹脂、前記(a22)エチレン系共重合体及び(a23)ポリプロピレン樹脂を含有する樹脂成分(A2)の合計100質量部に対し、1〜6質量部、さらに好ましくは2〜6質量部とする。この範囲内とすることにより、最外層とそれと隣接する層間での剥離性向上の効果を得ることができる。
本発明においては、シリコーンガムは、難燃性樹脂組成物(X1)と難燃性樹脂組成物(X2)の両方に含有することが好ましい。
本発明においては、難燃性樹脂組成物(X1)または/および難燃性樹脂組成物(X2)に滑剤としてポリエチレンワックス(PEワックス)を含有することが好ましく、前記難燃性樹脂組成物(X1)および前記難燃性樹脂組成物(X2)が、上記(C)シリコーンガムおよびポリエチレンワックスのいずれかを含有することが好ましい。含有量は、含有する難燃性樹脂組成物中の前記樹脂成分(A1)または(A2)の合計100質量部に対し、0.1〜6質量部、さらに好ましくは0.5〜5質量部である。
ポリエチレンワックスとしては、滑剤のポリエチレンワックスであればどのようなものでもよく、市販のものが使用でき、例えば、ハネウェル社製のAC−PE−No.6が挙げられる。
ポリエチレンワックスは、上記(C)シリコーンガムを含有する難燃性樹脂組成物に含有するのが特に好ましい。
3.その他の成分
(1)不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィン樹脂
難燃性樹脂組成物(X1)及び/又は難燃性樹脂組成物(X2)には、樹脂成分として、上記(a11)、(a13)、(a21)、(a23)以外のポリオレフィン樹脂を配合することができる。
不飽和カルボン酸による変性量は、ポリオレフィン樹脂に対し、0.5〜15質量%のものを好ましく使用することができる。ここでポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンなどを使用することができる。
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸などを使用することができる。ただし、これらの組合せは、上記(a11)、(a13)、(a21)、(a23)以外のポリオレフィン樹脂である。
ポリオレフィン樹脂の変性は、例えば、ポリオレフィン樹脂と不飽和カルボン酸を有機パーオキサイドの存在下で、加熱・混練することにより行うことができる。
不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィン樹脂を配合することにより、機械的特性、耐磨耗性向上の効果を得ることができる。
本発明において、樹脂成分中における不飽和カルボン酸変性ポリオレフィンを配合する場合には、難燃性樹脂組成物(X1)及び/又は難燃性樹脂組成物(X2)の樹脂成分中0〜40質量%、好ましくは0〜30質量%とすることができる。
(2)スチレン系共重合体
難燃性樹脂組成物(X2)には、スチレン系共重合体を配合することができる。スチレン系共重合体としては、ポリスチレンブロックとポリオレフィン構造のエラストマーブロックで構成された、二元又は三元の共重合体を使用することができる。
本発明のスチレン系共重合体のスチレン含有量は、10〜65質量%が好ましい。例えば、「セプトン4077」(商品名、クラレ(株)製)を挙げることができる。スチレン系共重合体の配合量としては、難燃性樹脂組成物(X2)の樹脂成分中、0〜40質量%、好ましくは、0〜30質量%、更に好ましくは0〜20質量%である。スチレン系共重合体を配合することにより、伸び特性や柔軟性の向上の効果を得ることができる。
(3)鉱物性オイル
難燃性樹脂組成物(X2)には、鉱物性オイルを配合することができる。鉱物性オイルとしては、パラフィン系のオイルである「ダイアナプロセスオイルPW」(商品名、出光興産(株)製)が挙げられる。
鉱物性オイルの配合量は、難燃性樹脂組成物(X2)中の樹脂成分100質量部に対し、0〜20質量部、好ましくは、0〜10質量部である。この添加量が多いほど、樹脂成分が流動的になり伸び特性、柔軟性が向上するが、強度特性、耐摩耗性、難燃性が低下する。
(4)酸化防止剤及び金属不活性化剤など
難燃性樹脂組成物(X1)及び/又は難燃性樹脂組成物(X2)には、一般的に使用されている各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、金属不活性剤、難燃(助)剤、充填剤、滑剤などを本発明の目的を損なわない範囲で適宜、配合することができる。
酸化防止剤としては、4,4’−ジオクチル・ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物などのアミン系酸化防止剤、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等のフェノール系酸化防止剤、ビス(2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル)スルフィド、2−メルカプトベンゾイミダゾールおよびその亜鉛塩、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリル−チオプロピオネート)などのイオウ系酸化防止剤などが挙げられる。
金属不活性剤としては、N,N’−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、2,2’−オキサミドビス−(エチル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)などがあげられる。
本発明のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線は、金属導体上に、例えば、難燃性樹脂組成物を押出被覆して内層を形成し、該内層を覆うように直接、難燃性樹脂組成物を押出被覆して、最外層を形成する。内層と最外層の厚さに特に制限はないが、例えば、内層の厚さは0.30〜2.00mm、外層の厚さは、0.15〜1.00mmが好ましい。
耐熱性や耐外傷性を付与するため、内層及び/又は最外層に架橋処理を施してもよい。架橋方法としては、化学架橋や電子線架橋などの従来の架橋方法を適宜併用又は選択することができる。内層及び/又は最外層を電子線で架橋すると、架橋設備が必要となる上に、架橋後の内層及び/又は最外層をリサクリルすることが困難となる場合があるため、化学架橋法を採用することが好ましい。化学架橋により、本発明のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線を製造する場合は、難燃性樹脂組成物に予め有機パーオキサイドを架橋剤として配合し、押出成形して被覆層とした後、加熱処理により架橋を行う。
(実施例1〜14、16、比較例1〜16)
表1〜5に示す各樹脂成分を、バンバリーミキサーを用いて溶融・混練した後、ペレット化してコンパウンドを得た。
次に、40mmφ押出機(L/D=25)にて、ダイス温度200℃、以下フィーダー側へ、C3=200℃、C2=190℃、C1=170℃、プレヒーター温度=70℃の押出温度条件により、導体(錫めっき処理軟銅線、34本/0.18mmφ)の上に、表1に示されている内層樹脂組成物を外径2.89mmφとなるように押出・被覆した。
その後、上記押出機を用いて、ダイス温度200℃、以下フィーダー側へ、C3=200℃、C2=190℃、C1=170℃、プレヒーター温度=OFFの押出温度条件により、引き落とし法で、外径3.8mmφとなるように押出被覆した。
(実施例15)
以下の方法により、図2の多層ノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線を得た。
予め、下記表1の実施例1の内層の各樹脂成分を、バンバリーミキサーを用いて溶融・混練した後、ペレット化して、下記表2に示すように樹脂組成物(内1)を得た。同様の方法で、下記表1の実施例1の最外層の各樹脂成分を用いて、下記表2に示すように、樹脂組成物(外1)を得た。
次に、40mmφ押出機(L/D=25)にて、ダイス温度200℃、以下フィーダー側へ、C3=200℃、C2=190℃、C1=170℃、プレヒーター温度=70℃の押出温度条件により、導体(錫めっき処理軟銅線、34本/0.18mmφ)の上に、外径2.05mmφとなるように、上記樹脂組成物(内1)を押出・被覆し、図2に示す、他の層4を形成した。
その後、上記の樹脂組成物(内1)を、上記押出機を用いて、ダイス温度200℃、以下フィーダー側へ、C3=200℃、C2=190℃、C1=170℃、プレヒーター温度=70℃の押出温度条件により、図2に示す、他の層4の上に、表1に示されている内層樹脂組成物を外径2.89mmφとなるように押出・被覆し、図2に示す、内層2を形成した。
その後、上記の樹脂組成物(外1)を、上記押出機を用いて、ダイス温度200℃、以下フィーダー側へ、C3=200℃、C2=190℃、C1=170℃、プレヒーター温度=OFFの押出温度条件により、引き落とし法で、外径3.8mmφとなるように押出被覆して、図2に示す、最外層3を形成し、図2に示す多層ノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線を得た。
得られた電線について、下記に示されているUL1581に準拠した試験方法で各種の特性を評価した。
下記表1〜5に示す各成分としては、以下のものを用いた。なお、下記表1〜5における、エチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR)は JIS K 7210:1999 の条件による値をいう。
<エチレン性共重合体>
(1)エチレン−酢酸ビニル共重合体 V9000(商品名、三井・デュポンポリケミカル(株)製)
(2)エチレン−エチルアクリレート共重合体 NUC6510(商品名、日本ユニカー(株)製
(3)エチレン−メチルアクリレート共重合体 LOTRYL−29MA03(商品名、LOTRYL社製)
<ポリエチレン樹脂>
(4)ポリエチレン樹脂(エチレン−α−オレフィン共重合体) カーネルKS240T(商品名、日本ポリエチレン(株)製)
(5)ポリエチレン樹脂(エチレン−α−オレフィン共重合体) カーネルKF360T(商品名、日本ポリエチレン(株)製)
(6)ポリエチレン樹脂(マレイン酸変性ポリエチレン) アドテックスL6100M(商品名、日本ポリエチレン(株)製)
<ポリプロピレン樹脂>
(7)アクリル酸変性ポリプロピレン ポリボンドP1002(商品名、ケムチュラ(株)製)
(8)ブロックポリプロピレン ノバテックBC8A(商品名、日本ポリプロピレン(株)製)
(9)ランダムポリプロピレン PB222A(商品名、サンアロマー社製)
<金属水和物:難燃剤>
(10)ビニルシランカップリング剤で表面処理された水酸化マグネシウム FK640(商品名、神島化学工業(株)製)
(11)ビニルシランカップリング剤で表面処理された水酸化マグネシウム キスマ5L(商品名、協和化学工業(株)製)
<その他の難燃剤>
(12)メラミンシヌレート系難燃剤 MC6000(商品名、日産化学工業(株)製)
(13)スズ酸亜鉛系難燃助剤 アルカネックスZHS(商品名、水澤化学工業(株)製)
<酸化防止剤>
(14)ヒンダードフェノール系酸化防止剤 イルガノックス1076(商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
(15)ヒンダードフェノール 系金属不活性剤 イルガノックスMD1024(商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
(16)ヒンダードフェノール系酸化防止剤 イルガノックス1010(商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
(17)ベンゾイミダゾール系酸化防止剤 ノクラックMB(商品名、大内新興化学工業(株)製)
<シリコーンガム:滑剤>
(18)シリコーンガム CF9150(商品名、 東レ・ダウコーニング(株)製)
(質量平均分子量:10万以上、25℃における動粘度:100万cSt)
<その他の滑剤>
(19)ポリエチレンワックス AC−PE−No.6(商品名、 ハネウェル社製)
(20)オレイン酸アマイド アーモスリップCP(商品名、 ライオン(株)製)
ここで、上記(18)のシリコーンガムの質量平均分子量と粘度は以下の方法により測定した値である。
(質量平均分子量)
下記条件のGPC)ゲルーパーミエーション クロマトグラフ)で測定した。
GPC装置:HLC−8120GPC(商品名、東ソー(株)製)
カラム:TSK gel SuperHM−H/4000/H3000/H2000(商品名、東ソー(株)製)
流量:0.6mL/min
濃度:0.3質量%
注入量:20μL
カラム温度:40℃
(動粘度)
25℃で回転粘度計により粘度を測定し、その後、動粘度に換算した。
1.引張試験
二重絶縁電線から導体を抜き取り、さらに内層と外層を剥離して管状サンプルを準備し、それぞれ標点距離25mm、引張速度500mm/minで、破断伸び(%)、破断強度(MPa)を測定した。外層については、破断伸びが150%以上を合格、破断強度が13.79MPa以上を合格とした。また、内層については、破断伸びが150%以上を合格、破断強度が10.3MPa以上を合格とした。
なお、下記表中では、破断伸びをEI、破断強度をTSとして示した。
2.老化引張試験
1.の引張試験に用いたサンプルと同等の形状のものを136℃の恒温槽内で7日間保持した後、室温で十分に冷却し、それぞれ標点距離25mm、引張速度500mm/minで、破断伸び(%)及び破断強度(MPa)を測定した。得られた測定データと、(1)の老化前引張データを用いて、破断伸び残率(%)、破断強度残率(%)を算出した。外層については、破断伸び残率(%)が70%以上を合格、破断強度残率が85%以上を合格とした。また、内層については、破断伸び残率(%)が45%以上を合格、破断強度残率(MPa)が75%以上を合格とした。
なお、下記表中では、破断伸び残率をEI残率、破断強度残率をTS残率として示した。
3.加熱変形試験
UL1581に基づき、内層と最外層の加熱変形を層ごとに測定した。最外層には250gfの負荷荷重を、最外層に接する内層には400gfの負荷荷重を121℃の温度下で60分間与え、各層の試験後の変形率を測定した。測定は2回行い平均値を求め、この平均値が、各層とも40%未満を合格とし、40%以上を超えるものを不合格とした。
4.垂直燃焼試験VW−1
多層絶縁電線のサンプル(以下、「内外層一括のサンプル」ともいう。)を、たるみのない状態で張った後、このサンプル上に指示旗、サンプル下に綿を設置した。フードを外した状態で15secの着火と60secの離火を5回繰り返した。60sec以上のサンプルの燃焼、指示旗の燃焼および綿の燃焼の全てが観察されなかったサンプルを合格とした。
5.内層/外層間密着力測定
多層絶縁電線の最外層の端末を50mmの長さで剥した電線を用意した。最外層の被覆と最外層に接する内層の間に3.0mmφ程度のダイスをセットし、引張試験機を用いて、50mm/minの速度で最外層を引き抜いた。その際、計測された荷重を密着力とした。密着力が、20〜30N程度で、引き抜き可能であって、配線の際に容易に外層が外れないものを○と評価した。
Figure 0005598863
Figure 0005598863
Figure 0005598863
Figure 0005598863
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表1〜5からわかるように、本発明の多層絶縁電線は、内層と外層の単独でも十分な機械特性を示し、加熱変形試験でも優れた結果を示した。また、難燃性も、内層と外層の密着性も適度な値を示した。
これに対して、比較例1では、最外層のエチレン系共重合体の配合量が少ないため、難燃性が不合格であり、比較例2では、逆にエチレン系共重合体の配合量が多すぎるため、密着性が高すぎる結果となった。また最外層にポリプロピレン樹脂を配合しない比較例3では、加熱変形性が不合格となった。金属水和物が少なすぎる比較例4は難燃性が不合格であり、金属水和物が多すぎる比較例5は機械特性が低くなった。
また、比較例6では、最外層のポリプロピレン樹脂が多すぎるため、伸びが低下し、比較例7では、最外層に含まれるシリコーンガムが多すぎるため、樹脂組成物の製造が困難な場合があり、押出被覆の際にスクリューが滑って成形性に支障を生じた。
さらに、比較例8〜10は、内層と最外層を構成する難燃性樹脂組成物のいずれにもシリコーンガムを含有しないので、ストリップ加工性が悪くなった。比較例9、10からわかるように、シリコーンガムに代えて、他の滑剤を用いてもストリップ加工性に問題が生じた。
比較例11は、内層のポリエチレン樹脂の使用量が少なく、かつエチレン系共重合体が多すぎるため、強度が低くなった。比較例12は、内層のポリプロピレン樹脂が多すぎるため、伸びが低下した。比較例13、14は内層にポリプロピレン樹脂を含まないため、強度が低くなった。また、比較例15は内層の金属水和物が少なく、難燃性に問題があり、比較例16は内層の金属水和物が逆に多く、破断強度と破断伸びに問題があった。
1 金属導体
2 内層
3 最外層
4 他の層
10 一実施形態のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線
20 別の実施形態のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線

Claims (4)

  1. 金属導体上に直接又は間接に内層が設けられ、前記内層を覆うように直接最外層が設けられた少なくとも2層の樹脂層からなるノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線であって、
    前記内層と前記最外層の一方が、下記組成:
    (a11)エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群から選ばれたエチレン系共重合体50〜80質量%、(a12)ポリエチレン樹脂5〜35質量部、(a13)ポリプロピレン樹脂5〜20質量%を含有する樹脂成分(A1)の合計100質量部に対し、(B1)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウムおよび水酸化バリウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属水和物120〜300質量部を有する難燃性樹脂組成物(X1)を用いて押出被覆され、
    前記内層と前記最外層の他方が、下記組成:
    (a21)ポリエチレン樹脂40〜95質量%、(a22)エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群から選ばれたエチレン系共重合体0〜40質量%、(a23)ポリプロピレン樹脂5〜30質量%を含有する樹脂成分(A2)の合計100質量部に対し、(B2)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウムおよび水酸化バリウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属水和物120〜300質量部を有する難燃性樹脂組成物(X2)を用いて押出被覆され、
    前記内層と前記最外層を構成する難燃性樹脂組成物の少なくともいずれか一方が(C)シリコーンガムを1〜6質量部含有することを特徴とするノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線。
  2. 前記(a13)または/および(a23)のポリプロピレン樹脂が、エチレン成分量を0〜15質量%含有したホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン共重合体、ランダムポリプロピレン共重合体、または不飽和カルボン酸で変性されたポリプロピレン樹脂から選ばれた少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線
  3. 前記難燃性樹脂組成物(X1)および前記難燃性樹脂組成物(X2)が、前記(C)のシリコーンガムおよびポリエチレンワックスのいずれかを含有することを特徴とする請求項1または2に記載のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線。
  4. 前記最外層の難燃性樹脂組成物が、前記難燃性樹脂組成物(X1)であり、前記内層の難燃性樹脂組成物が、前記難燃性樹脂組成物(X2)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線。
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