JP3975700B2 - 化合物半導体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、GaN単結晶基板上に形成された窒化物系化合物半導体層、特に、III−V族窒化物系化合物半導体層を備える化合物半導体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
GaN系化合物半導体層を用いた発光デバイスは、短波長の光を出射するものとして、近年注目を集めている。従来、サファイア基板を下地とするGaN系化合物半導体層の製造方法が提案されていたが、本願発明者らは、これに代えてGaN単結晶基板を用いることにより、GaN系化合物半導体層を成長させる方法について考案した。特開2000−252217号公報は、かかる製造方法を開示するものである。同公報に記載の製造方法によれば、GaN系化合物半導体の形成前に、アンモニアガスでGaN単結晶基板の表面処理を行うことにより、優れた特性のGaN系化合物半導体層を製造することができるとされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、GaN単結晶基板上に形成された窒化物系化合物半導体層の特性は更なる改善が期待されている。本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、GaN単結晶基板上に良好な窒化物系化合物半導体層を形成することが可能な化合物半導体の製造方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、GaN単結晶基板上に形成された窒化物系化合物半導体層を備える化合物半導体の製造方法において、前記GaN単結晶基板を塩化水素ガスを含む混合ガス雰囲気中で加熱することにより前記基板の表面層をエッチングする気相エッチング工程と、前記気相エッチング工程の後に前記窒化物系化合物半導体層の原材料を前記GaN単結晶基板上に供給して前記窒化物系化合物半導体層を形成する半導体層成長工程と、前記気相エッチング工程と前記半導体層成長工程との間で行われる表面処理工程とを備え、この表面処理工程は、前記GaN単結晶基板をアンモニアを含むガス雰囲気中において900℃以上の温度で15秒以上加熱する工程を有し、更に、以下に説明の工程を有することを特徴とする。本方法によれば、GaN基板上に良好な窒化物系化合物半導体層を形成することが可能となる。
【0005】
塩化水素を含む上記混合ガスは、水素ガス及び窒素ガスの少なくともいずれか一方を更に含むものであることが好ましく、この混合ガス中の塩化水素の含有率は0.01%以上であることが好ましい。また、気相エッチング工程の加熱は600℃以上の基板温度で行われ、この加熱は30秒以上行われることが好ましい。この加熱は750℃以上あることが更に好ましく、アンモニアの含有率は40%以上であることが好ましい。気相エッチング工程において、前記混合ガスは流速1cm/秒以上でGaN単結晶基板の表面上を流れており、窒化物系化合物半導体層はMOCVD法又はHVPE法によって形成されることが好ましい。
【0006】
上述のように、表面処理工程は、前記GaN単結晶基板をアンモニアを含むガス雰囲気中において900℃以上の温度で15秒以上加熱する工程を有することが好ましく、基板温度が1000℃以上の場合は窒化物系化合物半導体層2の結晶状態に更に顕著な効果が認められる。
【0007】
なお、前記窒化物系化合物半導体層は、GaN、AlN、InN、AlXGa1-XN、InXGa1-XN、AlXIn1-XN、又はAlXInYGa1-XN1-Y(X+Y<1、X>0、Y>0)である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る化合物半導体の製造方法ついて添付の図面に基づき説明する。
【0009】
図1は実施の形態に係る化合物半導体の断面図である。この化合物半導体は、GaN単結晶基板1上に形成された窒化物系化合物半導体層2を備えている。この化合物半導体は、発光ダイオード又は半導体レーザ等の発光デバイスの製造中間体であり、この上に適当なpn接合、好ましくはヘテロ接合を形成し、それぞれに電流を供給するための電極を取り付けることにより、発光デバイスが完成する。
【0010】
窒化物系化合物半導体層2の構成材料としては、AlN、InN、AlxGa1-xN、InxGa1-xN、AlxIn1-xN、AlxInyGa1-x-yN(x+y<1、x>0、y>0)等があり得る。窒化物系化合物半導体層2の構成材料としては、GaNが最も好ましく、この場合、基板1に対してホモエピタキシャル成長となる。
【0011】
この化合物半導体を製造するためには、まず、GaN単結晶基板1を用意する。GaN単結晶基板1は、これをGaNインゴットから切り出すことによって製造される。GaNインゴットは、GaNを種結晶とし、種結晶を加熱しながらGa及びNを含む原料ガスを種結晶に供給し、この上にエピタキシャル成長を行わせることによって製造される。
【0012】
この種結晶はGaN単結晶の表面を研磨して形成される。GaN単結晶は、GaAs基板上に窓を有するマスク層を形成する工程と、このマスク層上に気相成長法によってGaNをエピタキシャル成長させた後、GaAs基板を除去することによって製造される。なお、製造されたGaN単結晶基板1は、研磨材を用いて表面研磨され、純水等を用いて液体洗浄される。また、液体洗浄においては、適当な有機溶剤を用いてもよい。もちろん、市販のGaN単結晶基板1を用意してもよい。
【0013】
上記化合物半導体は、GaN単結晶基板1を用意した後、以下の(▲1▼:気相エッチング工程)、(▲2▼:半導体層成長工程)を順次行うことによって製造される。
【0014】
(▲1▼:気相エッチング工程)
GaN単結晶基板1を所定の混合ガスG1の雰囲気内に配置し、基板温度T1で時間t1の間、加熱する。気相エッチング工程に用いる混合ガスG1は、塩化水素ガス(HCl)を含むものであり、キャリアガスとして窒素ガス及び/又は水素ガスを含むものである。キャリアガスとしては、水素又は窒素を単独で用いてよい。水素ガスは還元効果を有するので、水素ガスをキャリアガスとして使用するとエッチング効果が大きくなる。なお、窒素をキャリアガスとして単独で用いた場合においても、塩化水素ガスの分解生成物として水素が生成されているため、エッチング処理は行われることとなる。したがって、キャリアガスとしては、ヘリウム(He)やアルゴン(Ar)などの不活性ガスを使用することもできる。
【0015】
基板温度T1は600℃以上が好ましい。基板温度T1が600℃以上の場合は気相エッチングが進行し、750度以上の場合には気相エッチングが顕著に進行し、これらの場合には、窒化物系化合物半導体層2の結晶状態に顕著な改善効果が認められる。この場合の加熱時間t1は、30秒以上であることが好ましく、気相エッチング効果が観察される。但し、加熱時間t1が1時間以上の場合、表面形態の劣化が見られるので、必ずしも好ましくない。この混合ガス中の塩化水素の含有率(モル濃度、モル分圧)は0.01%以上であることが好ましく、より好ましくは0.5%以上であることが望ましい。
【0016】
なお、温度T1における加熱時において、混合ガスG1は流速1cm/秒以上でGaN単結晶基板1の表面上を流れていることが好ましい。混合ガスG1は流速1cm/分以上でGaN単結晶基板1の表面上を流れていてもよい。
【0017】
最も効果が認められるのは、塩化水素ガスを0.5%以上含有した水素ガス中において、750℃、20分間の加熱を行った場合である。
【0018】
(▲2▼:半導体層成長工程)
上述の気相エッチング工程によって、GaN単結晶1の損傷した表面層を除去した後、半導体層成長工程を行う。これにより、表面状態が良好なGaN単結晶1が露出しているので、これを下地として窒化物系化合物半導体層2を形成することにより、窒化物系化合物半導体層2がエピタキシャル成長し、その結晶状態を良好とすることができる。窒化物系化合物半導体層2のエピタキシャル成長においては、有機金属化学気相成長(MOCVD)法、又はハイドライド気相エピタキシャル成長(HVPE)法を用いることが可能である。これらの方法においては、窒化物系化合物半導体層2の原材料を基板1の表面に供給する。
【0019】
窒化物系化合物半導体層2の材料としては、好適にはGaNが挙げられる。
【0020】
MOCVD法にてGaNを形成する場合においては、その原材料G2としては、混合ガスとしてTMG(トリメチルガリウム)及び塩化水素ガスを用いる。この原材料G2は、キャリアガスとして水素ガス及び窒素ガスを含む。勿論、キャリアガスとして、ヘリウムやアルゴンなどの不活性ガスを用いてもよい。MOCVD法にてGaNを形成する場合においては、成長時の基板温度T2は1030℃(±20℃)に設定される。
【0021】
HVPE法にてGaNを形成する場合においては、金属Gaをつるぼ(ボード)内で加熱して蒸発又は昇華させながら、原料ガスとしての塩化水素を前記Gaと共に基板表面に原材料G2として供給し、これらと共にキャリアガスとして水素ガス及び塩素ガスを基板表面に供給する。HVPE法を用いる場合には成長時の基板温度T2は1000℃(±20℃)に設定される。
【0022】
窒化物系化合物半導体層2の材料としては、InGaNであってもよい。MOCVD法にてInGaNを形成する場合においては、原材料G2としては、混合ガスとしてTMGに加えて、TMI(トリメチルインジウム)及び塩化水素ガスを用いる。原材料G2は、キャリアガスとして水素ガス及び窒素ガスを含む。勿論、キャリアガスとしてヘリウムやアルゴンなどの不活性ガスを用いてもよい。InGaNをMOCVD法にて形成する場合においては、成長時の基板温度T2は800℃程度(±20℃)に設定される。
【0023】
GaN等の窒化物系化合物半導体層2を形成可能な他の方法としては、有機金属塩化物気相成長法及び分子線エピタキシー(MBE)法が列挙されるが、これらの方法においても、窒化物系化合物半導体層2の成長は窒化物系化合物半導体層2の原材料を基板1の表面に供給することによって行われる。
【0024】
また、AlN、InN、AlGaN、AlInN、又はAlInGaNを製造するに場合には、これらの原料をGaN単結晶基板1上に供給しながら、これらが基板上のエピタキシャル成長する製法に応じた公知の温度でGaN基板1を加熱すればよい。
【0025】
なお、上記気相エッチング工程と半導体層成長工程との間に以下の表面処理工程を備えることとしてもよい。この表面処理工程は、GaN単結晶基板1をアンモニア(NH3)を含むガスGαの雰囲気中において900℃以上の温度Tαで、時間tα=15秒以上加熱する工程を有する。
【0026】
(▲3▼表面処理工程)
この表面処理工程においては基板温度Tαは900℃以上が好ましい。基板温度Tαが1000℃以上の場合は窒化物系化合物半導体層2の結晶状態に更に顕著な効果が認められる。これらの場合の、加熱時間tαは15秒以上であることが好ましい。また、上記結晶状態の観点から、加熱時間tαは5分以上であることがより好ましく、15分以上行われることが更に好ましい。但し、加熱時間tαが1時間以上の場合、表面形態の劣化が見られるので、必ずしも好ましくない。最も効果が認められるのは、アンモニアガスを40%以上含有した水素ガス中において、1000℃、5分間の加熱を行った場合である。
【0027】
表面処理工程においては、混合ガスGα中のアンモニアの含有率(モル濃度、モル分圧)は5%以上であることが好ましく、40%以上であることが更に好ましい。すなわち、混合ガスGα中のアンモニアガスの含有量が5%以上ある場合には、表面結晶性の更なる改質効果が認められる。これは窒化反応を進行させるために、最低限必要なアンモニアガスの含有量である。アンモニアガスの含有量が40%以上ある場合には、更に顕著な効果を奏することができる。
【0028】
なお、温度Tαにおける加熱時において、混合ガスGαは流速1cm/秒以上でGaN単結晶基板1の表面上を流れていることが好ましい。混合ガスGαは流速1cm/分以上でGaN単結晶基板1の表面上を流れていてもよい。
【0029】
表面処理工程においては、当該基板表面にアンモニアを含む混合ガスGαを流し続けながら、基板温度を室温(25℃)からTαまで上昇させて、温度Tαにて表面処理を行い、この後、基板温度をT2に変更し、この温度T2で、上述の半導体層成長工程を行うことが好ましい。
【0030】
上述の方法によれば、GaN単結晶基板1上に良好な窒化物系化合物半導体層2を形成することが可能となる。この理由は以下のように考えられる。
【0031】
まず、完全な表面を有するGaN単結晶基板1を研磨工程によって作製することは大変難しい。なぜならば、研磨時に基板表面にダメージが導入されるからである。このダメージを含む加工変質層は、結晶成長時の下地として機能するため、上部に形成される窒素系化合物半導体2に悪影響を与える。通常、機械研磨や化学研磨を用いて、当該加工変質層を除去することができるものと考えられるが、この研磨表面の欠陥をなくすために、研磨時間を大きく取り、研磨傷の低減を図っても、研磨によるピットが深くなることがある。すなわち、加工変質層除去のために、長時間研磨した場合、研磨の時間経過と共に表面にピットが出現してくる。このピットの発生原因は、現在まだ明らかになっていないが、研磨条件もさることながら、基板単結晶の何らかの欠陥に起因している可能性もある。
【0032】
上述の実施形態の製造方法においては、塩化水素を用いた気相エッチングにより加工変質層を除去している。この方法によれば、下地状態を良好に変性させることができ、最終的にGaN単結晶基板1上に形成された窒化物系化合物半導体層2の結晶状態は、当該工程を行わないで形成されたものよりも良好となる。
【0033】
また、本願発明者らは、上述の表面処理工程が窒化物系化合物半導体層2の成長に大きく影響することについて提案してきた(特開2000−252217号公報)。これは、アンモニアに含まれる水素による還元反応と窒素による窒化反応をGaN単結晶基板1の表面上で同時に行うことにより、表面における選択的ピットの形成を抑制しつつ、表面原子の再配列を行う方法であり、上述の気相エッチング工程と組み合わせることにより、結晶成長における下地状態を更に良好に保持するものである。
【0034】
なお、表面処理工程後、半導体層成長工程までの間は、アンモニアガスを流し続けるか、窒素ガスのみを流すことにより、基板表面の還元反応を防止する。
【0035】
【実施例】
上記実施の形態に係る化合物半導体を製造した。化合物半導体の製造に用いる種結晶は、いずれの実施例においても共通であり、GaN単結晶基板1を用いた。このGaN単結晶基板は、GaAs基板上に、窓を有したマスク層を形成し、当該マスク層の上に気相成長法によりGaNをエピタキシャル成長した後、GaAs基板を王水中でエッチング除去して得たGaN単結晶の表面をさらに研磨加工する事により得られる。GaN単結晶基板1は、直径2インチ、厚さ0.4mmである。
【0036】
この基板表面については、機械研磨、メカノケミカル研磨を施したが、ノマルスキー型顕微鏡で観察したところ、高倍率において基板表面に細かい研磨傷や欠陥が認められた。基板表面をCL(カソードルミネッセンス)により評価したところ、バンド端発光である360nmの発光波長で2次元マッピングすると、研磨傷の存在が黒い筋となって判別できた。以下の各実施例においては、このGaN単結晶基板1を用いる。
【0037】
以下の各実施例においては、上述の▲1▼気相エッチング工程、▲2▼半導体層成長工程、▲3▼表面処理工程を適宜組み合わせて用いる。また、実施例1〜4における▲2▼半導体層成長工程においてはMOCVD法を用い、実施例5における▲2▼半導体層成長工程においてはHVPE法を用いる。
【0038】
(実施例1)
上記実施の形態に係る化合物半導体をMOCVD法を用いて製造した。基板1の材料は単結晶GaN、窒化物系化合物半導体層2の材料は単結晶GaNである。
【0039】
図2は実験に用いるMOCVD装置を示す。この装置は、石英製のフローチャンネル10を有する横型MOCVD装置である。実施例1においては、上記▲1▼気相エッチング工程及び▲2▼半導体層成長工程を続けて用いる。まず、塩化水素ガスを用いて上述の気相エッチング工程を行った。GaN単結晶基板1をヒータ11が内蔵されたターンテーブル12上にセットした。ターンテーブル12を回転させながら、ヒータ11を加熱して基板温度を室温RT(25℃)から基板温度T1に昇温した。この時、チャネル10内には圧力P1で混合ガスG1を流した。
【0040】
実際のエッチングにおいては、室温RTからの実施温度T1までの昇温中においても混合ガスG1を流しており、昇温完了後、基板温度T1で一定時間t1保持した。
【0041】
しかる後、基板温度をT1からT2に昇温し、これに連続して成長温度T2でエピタキシャル工程を行った。基板温度をT1からT2に昇温する際には、チャンバ内部が1気圧となるようにアンモニアガスをチャネル10内に供給し、GaNの蒸気圧を抑制した。半導体層成長工程においては、ターンテーブル12を回転させながら、基板温度T2、圧力P2で混合ガスG2をチャネル10内に流した(成長時間t2)。これにより、厚さ2μmのn型GaNエピタキシャル層2を成長させた。本実験の条件は以下の通りである。
【0042】
【表1】
【0043】
なお、各サンプル1〜8における気相エッチング条件(基板温度T1、保持時間t1、塩化水素含有率C1、キャリアガス比R1(=H2:N2)は以下の通りである。
【0044】
【表2】
【0045】
(実施例2)
キャリアガスの影響を調べるため、上記実施例1における気相エッチング工程において、エッチングガスとしての塩化水素の他にキャリアガスとして窒素のみを用い、しかる後、温度T2で半導体層成長工程を行った(サンプル9)。他の工程は,実施例1と同一である。また、比較のため、実施例1における気相エッチング工程を行わず、室温から成長温度T2に至る間に、表面処理温度Tαを設定し、アンモニアガスを含む混合ガスGαの雰囲気中において基板温度Tαを一定時間tαだけ保持し、表面処理工程を行い、続いて、半導体成長工程を行った(サンプル10)。他の工程は,実施例1と同様である。
【0046】
各サンプル9,10における気相エッチング条件(基板温度T1、保持時間t1、塩化水素含有率C1、キャリアガス比R1(=H2:N2)は以下の通りである。
【0047】
【表3】
【0048】
(実施例3)
上記サンプル9の製造工程に表面処理工程▲3▼を加えて化合物半導体を製造した(サンプル11)。すなわち、まず、基板温度を室温RT(25℃)から基板温度T1に昇温し、チャネル10内には混合ガスG1を流し、塩化水素ガスによる▲1▼気相エッチング工程を行った。
【0049】
サンプル11における気相エッチング条件(基板温度T1、保持時間t1、塩化水素含有率C1、キャリアガス比R1(=H2:N2)は以下の通りである。
【0050】
【表4】
【0051】
しかる後、基板温度をT1からTαに昇温して混合ガスGαを流すことで保持時間tαだけ▲3▼表面処理工程を行い、次に、基板温度をT2に設定してエピタキシャル工程を行った。▲3▼表面処理工程の実験条件は以下の通りである。
【0052】
【表5】
【0053】
(実施例4)
実施例3における▲2▼気体エッチング工程及び▲3▼表面処理工程を行った後、GaN単結晶に代えてGaInN単結晶を形成するための▲2▼半導体層成長工程を行い、サンプル12〜20を作製した。形成されたn型GaInN単結晶の厚さは500nm、組成はIn0.05Ga0.95Nである。
【0054】
なお、各工程▲1▼−▲3▼間、工程▲3▼−▲2▼間においては、アンモニアガスを1気圧でチャンバ内に供給した。実施例4の実験条件は以下の通りである。
【0055】
【表6】
【0056】
なお、各サンプル12〜20における気相エッチング条件(基板温度T1、保持時間t1、塩化水素含有率C1、キャリアガス比R1(=H2:N2)は以下の通りである。
【0057】
【表7】
【0058】
(実施例5)
GaN単結晶基板に表面研磨加工を施さず、HVPE法によって成長表面上に直接GaNエピタキシャル成長を行った。
【0059】
図2はHVPE装置の断面構成図である。チャンバ20の外周には加熱器22が配置されており、内部は排気されている。チャンバ20内には、アンモニアガス、水素ガス、窒素ガス、塩素ガスが導入可能な構成とされており、Ga金属を入れたボードが配置されている。Ga金属は加熱と同時に原料ガスが当たることにより当該原料ガスに取り込まれ、キャリアガスによって基板1の表面まで運ばれ、基板1の表面でGaN単結晶が成長する。
【0060】
この成長においては、まず、表面研磨加工を特別には行わなわないGaN単結晶基板1を用意した。これを試料ホルダー23上に固定し、▲1▼気相エッチング工程、▲2▼半導体層成長工程を順次行った。なお、各工程▲1▼−▲2▼間においては、アンモニアガスを1気圧でチャンバ内に供給した。実施例5の実験条件は以下の通りである。
【0061】
【表8】
【0062】
なお、各サンプル12〜20における気相エッチング条件(基板温度T1、保持時間t1、塩化水素含有率C1、キャリアガス比R1(=H2:N2)は以下の通りである。
【0063】
【表9】
【0064】
(評価及び結果)
実施例1〜4のサンプルに関しては、エピタキシャル成長した半導体層2の表面形態を観察して評価した。この評価としては、サンプル表面を電子顕微鏡観察によって観察し、サンプル表面の粗れが殆ど観察できないものを良好状態(ランクA)、デバイスの基板として使用不可能な程度に表面の凹凸が著しいものを表面粗れ大の状態(ランクE)とし、これらの間の状態を3ランクに分けて相対評価し、表面粗れ中の状態を(ランクD)、表面粗れ小の状態を(ランクC)、表面の粗れが僅かに観察できる状 態を良好状態(ランクB)として規定した。なお、各ランク間の中間に位置する状態は、良い状態の場合には(+)を、悪い状態の場合には(−)を付加することとした。
【0065】
なお、実施例5のサンプルに関しては、(0001)面や(11−22)面等が表面上に現れているため、半導体層2の厚み方向に平行な(10−10)面に沿って当該サンプルを切断し、切断面を研磨した後、この面を断面を蛍光顕微鏡で観察し、半導体層2の結晶性を評価した。この評価としては、サンプル表面を電子顕微鏡観察によって観察し、基板1と半導体層2との界面が観察できないものを良好状態(ランクA)、界面が明確に観察でき、且つ、界面より多結晶や面方位の異なる結晶が多数成長しているものを(ランクE)とし、これらの間の状態を3ランクに分けて相対評価し、界面が明確に観察でき、且つ、界面より多結晶や面方位の異なる結晶が少数成長しているものを(ランクD)、界面より多結晶や面方位の異なる結晶は成長していないが界面が明確に観察できるものを(ランクC)、界面が僅かに観察できるものを(ランクB)として規定した。なお、各ランク間の中間に位置する状態は、良い状態の場合には(+)を、悪い状態の場合には(−)を付加することとした。
【0066】
以下、各サンプルの評価結果を示す。
【0067】
【表10】
【0068】
【表11】
【0069】
【表12】
【0070】
【表13】
【0071】
【表14】
【0072】
(結果1)サンプル1〜29の評価結果を比較すると、成長させる窒化物系化合物半導体がGaNであるか、InGaNであるか、成長方法がMOCVD法であるか、HVPE法であるかに拘らず、基板温度T1が600℃以上、好ましくは750度以上、保持時間t1も1分間、好ましくは20分間以上の方が良い評価結果が得られることが判明した。なお、材料の融点を超える加熱は行わない。
【0073】
(結果2)同様に、各実施例において、気相エッチング工程時の塩化水素含有率は0.01%以上が望ましいことが分かった。
【0074】
(結果3)実施例1において、表面状態の良いサンプル7,8の結晶状態を調査した。サンプル7,8についてX線回折法による評価を行い、X線回折ピーク(GaN)の半値幅を測定した。種結晶となるGaN単結晶基板1の半値幅は2分であった。サンプル7,8の半値幅は、いずれも1.9〜2.1分の範囲であった。したがって、窒化物系化合物半導体層2は、ほぼ基板の状態をそのまま反映したエピタキシャル結晶となっていることが判明した。したがって、気相エッチング工程におけるキャリアガスとして、水素を用いた場合においても、また、水素に加えて窒素を用いた場合においても、その後の半導体層成長工程において、エピタキシャル成長が達成されていることが判明した。
【0075】
(結果4)実施例1において、サンプル6,7,8の比較より、塩化水素含有率は0.5%以上が望ましいことが分かる。また、サンプル7,8の比較により、キャリアガスに水素を含んだ方が良い結果が得られることが分かる。また、キャリアガスが水素を含み、窒素を含まない場合においても、塩化水素含有率が0.5%以上の場合には、サンプル5よりも良い表面状態のエピタキシャル層2が得られた。サンプル17〜20及びサンプル26〜29についても同様の結果が得られた。
【0076】
(結果5) サンプル9,10の比較より、表面処理工程を行わず気相エッチング工程のみを行った場合にも、気相エッチング工程を行わず表面処理工程のみを行ったものよりも良い評価結果が得られることが分かった。
【0077】
(結果6) サンプル11の結果から、気相エッチング工程に表面処理工程を組み合わせることにより、著しく良い評価結果が得られることが分かった。
【0078】
(結果7) サンプル7,8,11の比較より、気相エッチング工程時のキャリアガスに窒素のみを含んだものよりも、水素を含んだ方が良く、更に、水素を含んで窒素を含まないものの方が良い評価結果が得られることが判明した。サンプル18,19,20及びサンプル27,28,29についても同様の結果が得られた。
【0079】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、GaN単結晶基板上に良好な窒化物系化合物半導体層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】化合物半導体の断面図。
【図2】HVPE装置の構成図。
【図3】MOCVD装置の構成図。
【符号の説明】
1…GaN単結晶基板、2…窒化物系化合物半導体層。
Claims (1)
- GaN単結晶基板上に形成された窒化物系化合物半導体層を備える化合物半導体の製造方法において、
前記GaN単結晶基板を塩化水素ガスを含む混合ガス雰囲気中で加熱することにより前記基板の表面層をエッチングする気相エッチング工程と、
前記気相エッチング工程の後に前記窒化物系化合物半導体層の原材料を前記GaN単結晶基板上に供給して前記窒化物系化合物半導体層を形成する半導体層成長工程と、
前記気相エッチング工程と前記半導体層成長工程との間で行われる表面処理工程と、
を備え、
この表面処理工程は、前記GaN単結晶基板をアンモニアを含むガス雰囲気中において900℃以上の温度で15秒以上加熱する工程を有し、アンモニアの含有率は40%以上であり、
前記窒化物系化合物半導体層は、GaN、AlN、InN、Al X Ga 1-X N、In X Ga 1-X N、Al X In 1-X N、又はAl X In Y Ga 1-X N 1-Y (X+Y<1、X>0、Y>0)であり、
前記気相エッチング工程の加熱は750℃以上の基板温度で行われ、
前記加熱は30秒以上行われ、
前記混合ガスは、水素ガス及び窒素ガスの少なくともいずれか一方を更に含み、
前記塩化水素の含有率は0.01%以上であり、
前記気相エッチング工程において、前記混合ガスは流速1cm/秒以上で前記GaN単結晶基板の表面上を流れ、
前記窒化物系化合物半導体層はMOCVD法又はHVPE法によって形成されることを特徴とする化合物半導体の製造方法。
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