JP3973235B2 - 塩化ビニル系樹脂粉体の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は塩化ビニル系樹脂粉体及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、多孔性で可塑剤吸収性に優れ、かつ嵩密度が高く、良好な加工生産性を有し、さらに体積固有抵抗値が大きい上、フィッシュアイの少ない外観の良好な成形品を与える汎用の塩化ビニル系樹脂粉体、及びこのものを効率よく製造する方法に関するものである。
背景技術
汎用の塩化ビニル系樹脂粉体は、大量生産が可能で、かつ安価であるなどのことから、硬質製品や軟質製品などとして、多くの分野において幅広く用いられている。
この汎用の塩化ビニル系樹脂粉体の製造方法としては、例えばセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ゼラチンなどの懸濁剤の存在下で、塩化ビニル単独又は塩化ビニルを主体とし、これと共重合可能な不飽和単量体とを懸濁重合させる方法が知られている。
しかしながら、従来の懸濁重合法で得られる塩化ビニル系樹脂粉体の中で、多孔性に優れるものは、嵩密度が低く、かつ粒径が不均一で微小粒子が存在するなどの欠点があるし、一方、嵩密度の高いものは、多孔性に乏しいという欠点を有している。この嵩密度については、低コスト化や省エネルギー化に伴う高速加工、加工時の作業性の向上や成形加工における生産性の向上などの観点から、高嵩密度の樹脂粉体が好ましく、また多孔性については、多孔性が乏しい場合、可塑剤吸収性が悪く、その結果、例えば農業用フィルムなどの加工において、作業効率が低下するのを免れず、また成形品がフィッシュアイの増加により、外観が悪くなるなどの問題が生じる。
また、従来、フィッシュアイの少ない塩化ビニル系樹脂粉体は体積固有抵抗値が小さい傾向があった。電線被覆用途では、押出加工の高生産性のために高嵩密度であって、優れた外観を呈するためにフィッシュアイが少なく、かつ、優れた絶縁性が要求されるために高体積固有抵抗値を有する塩化ビニル系樹脂粉体が望まれていた。
これまで、多孔性に優れる塩化ビニル系樹脂粉体や嵩密度の高い塩化ビニル系樹脂粉体を製造する試みが種々なされており、例えば懸濁剤として、(1)ケン化度が65〜80モル%で、平均重合度が300〜2500のポリビニルアルコールとセルロース誘導体との組合せ(特開昭54−46284号公報)、(2)ケン化度60モル%以上のポリビニルアルコールと水溶性セルロースエーテルとの組合せ(特開昭61−151209号公報)(3)ケン化度が20〜55モル%で、平均重合度が150〜600のポリビニルアルコールとヒドロキシプロピルメチルセルロースとの組合せ(特開昭63−156809号公報)などを用いる方法が開示されている。
しかしながら、これらの方法はいずれも、可塑剤吸収性及び嵩密度のいずれか一方に対しては改善効果を有するものの、両方を同時に改善する効果については必ずしも満足しうるものではない。
また、特開平4−323208号公報には、塩化ビニル系重合体を懸濁重合するに際し、まず分散安定剤として、ケン化度65〜75モル%、平均重合度750〜850の部分ケン化ポリビニルアルコールとヒドロキシプロピルメチルセルロースの存在下に重合を行い、重合転化率が5〜60重量%の間に、さらにケン化度75〜85モル%、平均重合度1500〜2700の部分ケン化ポリビニルアルコールを添加する塩化ビニル系重合体の製造方法が提案されている。しかしながら、この方法においては、高嵩密度の塩化ビニル系樹脂粉体を得ることができるが、その成形品はフィッシュアイが多く、高嵩密度で、かつフィシュアイの少ない成形品を与えることができるバランスのとれた塩化ビニル系樹脂粉体を得ることができないという問題がある。
さらに、特開昭60−42407号公報には、ケン化度70〜99モル%のポリビニルアルコールのような1次懸濁剤の存在下で重合するに際し、ケン化度70モル%未満のポリビニルエステル少なくとも1種を重合の前、又は重合中に添加することにより、多孔性で高嵩密度及び高体積固有抵抗値を有する塩化ビニル系樹脂粉体が得られることが開示されている。しかしながら、この方法によっても、まだフィッシュアイはかなり多く、嵩密度もさらなる向上が望まれる。
このように、従来の技術では、多孔性、嵩密度及び体積固有抵抗値のバランスに優れるとともに、フィッシュアイの少ない外観の良好な成形品を与える塩化ビニル系樹脂粉体を製造するのは困難であるのが実状である。
発明の開示
本発明の目的は、多孔性で可塑剤吸収性に優れ、かつ嵩密度が高く、良好な加工生産性を有し、さらに体積固有抵抗値が大きい上、フィッシュアイの少ない外観の良好な成形品を与える塩化ビニル系樹脂粉体を提供することである。
また、本発明の他の目的は、前記の優れた性能を有する塩化ビニル系樹脂粉体を効率よく製造する方法を提供することである。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、K値が特定の範囲にあり、かつ粉体の嵩密度D(g/ml)と上記K値とが特定の関係にあって、体積固有抵抗値がある値以上で、フィッシュアイの数が特定の値未満の塩化ビニル系樹脂粉体がその目的に適合しうることを見出した。
また、懸濁剤として、特定のケン化度と平均重合度を有する末端イオン性基含有ポリビニルアルコールとヒドロキシプロピルメチルセルロースとの組合せを用いることにより、あるいは懸濁剤として、特定のケン化度と平均重合度を有する末端イオン性基含有ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び特定のケン化度と平均重合度を有するポリビニルアルコールを併用し、これらの懸濁剤の添加方法を特定化することにより、前記の優れた性能を有する塩化ビニル系樹脂粉体が効率よく得られることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)水性媒体中において、(a)ヒドロキシプロピルメチルセルロースと(b)ケン化度61〜70モル%、平均重合度150〜350の末端イオン性基含有ポリビニルアルコールとの存在下、塩化ビニル単独又は塩化ビニルを主体とし、これと共重合可能な不飽和単量体との混合物の懸濁重合を開始し、重合率が5重量%以上の時点に、(c)ケン化度70〜99モル%、平均重合度2800〜5000の部分ケン化ポリビニルアルコールを添加開始し、重合率が少なくとも10重量%進行する期間にわたり、かつ添加終了時の重合率が70重量%を超えないように連続的に添加する塩化ビニル系樹脂粉体の製造方法であって、該塩化ビニル系樹脂粉体100重量部とジオクチルフタレート60重量部及びバリウム亜鉛系複合安定剤2重量部及び濃青色顔料3.5重量部の混合物を混練用6インチロールによって140℃で7分間混練し、巾100mm、厚さ0.5mmのシートを作成したときに、該シートの50cm 2 当たりのフィッシュアイが5個未満であることを特徴とするDIN53726に準拠したK値63〜74の塩化ビニル系樹脂粉体の製造方法(以下、製造方法[2]と称す)、及び
(2)単量体100重量部に対し、(a)ヒドロキシプロピルメチルセルロース0.01〜0.5重量部、(b)末端イオン性基含有ポリビニルアルコール0.001〜0.5重量部及び(c)部分ケン化ポリビニルアルコール0.001〜0.5重量部を用いる第(1)項記載のDIN53726に準拠したK値63〜74の塩化ビニル系樹脂粉体の製造方法、
を提供するものである。
発明を実施するための最良の形態
本発明の塩化ビニル系樹脂粉体は、下記の性状を有することが必要である。
まず、K値が63〜74の範囲にあることが必要である。このK値は平均重合度と相関性を有し、K値が63〜74の範囲では、平均重合度は900〜1600程度となる。このK値が63未満では耐摩耗性が悪化したり、引張り強度が低下するなど、強度的な問題が生じるし、また74を超えると嵩密度が低くなり、加工性も悪化し、この加工性の悪化に伴いフィッシュアイも多くなる。
次に、塩化ビニル系樹脂粉体の嵩密度D(g/ml)とこのK値とが、式[1]
8.5≦KD≦11 …[1]
の関係を満たすことが必要で、好ましくは、KDの値が8.7以上、10.5以下である。KDの値が式[1]の範囲を逸脱すると多孔性、嵩密度、体積固有抵抗値のバランスに優れる塩化ビニル系樹脂粉体が得られず、本発明の目的が達せられない。
なお、該K値は、JIS K 6721に溶液の比粘度から求められる平均重合度との関係が示されているDIN53726に準拠し、下記の方法で測定した値である。
すなわち、塩化ビニル系樹脂粉体試料0.5gをシクロヘキサノン100mlに溶解し、試験液を調製する。次に、ウベローデ型粘度計を用い、温度25±0.05℃において、上記試験液の落下秒数及び試験液の調製に用いたシクロヘキサノンの落下秒数を測定し、以下に示す式に従って、K値を算出する。
また、該嵩密度D(g/ml)は、ISO 60 1977に準拠し、下記の方法で測定した値である。
すなわち、内径45±5mm、容量100±0.5mlの測定用シリンダーの20〜30mm上に、ISO 60 1977で規定する形状を有し、底部にカバーが設けられた漏斗を配置する。十分にかきまぜた塩化ビニル系樹脂粉体試料110〜120mlを上記漏斗に入れたのち、底部のカバーを速やかに外し、試料を測定用シリンダーに落す。シリンダーから盛り上がった試料を薄い平たい部材ですり落とし、水平面とする。次に、シリンダー内の試料の重さを0.1gまで正確に量ると共に、シリンダーの内容積を測定し、次式により嵩密度を求める。
嵩密度D(g/ml)=m/V
m:シリンダー内の試料の重量(g)
V:シリンダーの内容積(ml)
測定は2回行い、その平均値を取る。
この本発明の塩化ビニル系樹脂粉体は、また、体積固有抵抗値が8×1013Ω・cm以上、好ましくは1×1014Ω・cm以上で、かつ下記測定法によるフィッシュアイの数が5個未満、好ましくは3個以下である。これにより、電気絶縁性に優れ、しかも外観の美麗な成形品を与えることができる。
なお、該体積固有抵抗値は、以下のようにして測定した値である。すなわち、塩化ビニル系樹脂粉体100重量部にジオクチルフタレート50重量部、及び鉛系安定剤3重量部を加えて調製した混合物を、混練用6インチロールによって150℃で5分間混練し、得られるシートをさらに170℃で6分間プレスして、厚さ1.0±0.15mm、120mm×120mmの大きさ以上の正方形テストピースを作成する。このテストピースを23℃、50%の恒温恒湿室で30分間以上保持したのち、JIS K 6723に準拠して体積固有抵抗値を測定する。
また、フィッシュアイの数は、以下のようにして測定した値である。すなわち、塩化ビニル系樹脂粉体100重量部にジオクチルフタレート60重量部、バリウム亜鉛系複合安定剤2重量部及び濃青色顔料3.5重量部を加えて調製した混合物を、混練用6インチロールによって140℃で7分間混練したのち、幅100mm、厚さ0.5mmのシートを作成し、このシートについて50cm2当たりの透明粒子数を計数し、これをフィッシュアイの数とする。フィッシュアイが少ないほど、成形フィルムは美麗である。
このような優れた性状を有する本発明の塩化ビニル系樹脂粉体は、以下に示す本発明の製造方法により、極めて効率よく製造することができる。
次に、本発明の塩化ビニル系樹脂粉体の製造方法について説明する。
本発明方法においては、水性媒体中での懸濁重合により、塩化ビニル系樹脂粉体を製造する。この際、原料単量体として、塩化ビニル単独、又は塩化ビニルを主体とし、これと共重合可能な不飽和単量体との混合物が用いられる。ここで、塩化ビニルと共重合可能な不飽和単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、ケイ皮酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、無水イタコン酸などの不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸及びその酸無水物;フマール酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステルなどの不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステル;アクリル酸又はメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、シクロヘキシル、ベンジルエステルなどの不飽和モノカルボン酸エステル類;マレイン酸やフマール酸のジメチル、ジエチル、ジプロピル、ジブチル、ジオクチル、ジシクロヘキシル、ジベンジルエステルなどの不飽和ジカルボン酸ジエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1などのオレフィン類;スチレンやα−メチルスチレンなどの芳香族モノビニル化合物;アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物;アクリルアミドやメタクリルアミドなどの不飽和アミド化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類;さらには塩化ビニリデンなどが挙げられる。これらの共重合可能な単量体は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、原料単量体として、塩化ビニルと上記の共重合可能な不飽和単量体との混合物を用いる場合には、単量体混合物中の塩化ビニルの含有量は50重量%以上が好ましく、特に75重量%以上が好適である。
本発明の製造方法においては、2つの態様があり、製造方法[1]においては、懸濁剤として、(a)ヒドロキシプロピルメチルセルロースと(b)末端イオン性基含有ポリビニルアルコールとの組合せが用いられ、製造方法[2]においては、懸濁剤として、(a)ヒドロキシプロピルメチルセルロースと(b)末端イオン性基含有ポリビニルアルコールと(c)部分ケン化ポリビニルアルコールとの組合せが用いられる。
この製造方法[1]及び[2]における上記(a)成分のヒドロキシプロピルメチルセルロースは、セルロースの水酸基の一部を、ヒドロキシプロポキシ基及びメトキシ基で置換したものであって、その製造方法については特に制限はなく、本発明においては、公知の方法で得られたものを用いることができる。また、ヒドロキシプロポキシ基及びメトキシ基の置換度については特に限定されないが、可塑剤吸収性に優れ、かつ嵩密度の高い塩化ビニル系樹脂粉体が得られる点から、ヒドロキシプロポキシ基置換度が5〜15モル%で、かつメトキシ基置換度が15〜35モル%の範囲にあるものが好ましい。さらに、2重量%水溶液の温度20℃における粘度が、10〜550センチポイズの範囲にあるものが懸濁性に優れ、かつ得られる塩化ビニル系樹脂粉体の性能の点から好適である。
本発明の製造方法[1]及び[2]においては、このヒドロキシプロピルメチルセルロースは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、またその使用量としては特に制限はなく、状況に応じて適宜選定されるが、通常、原料単量体100重量部当たり、0.01〜0.5重量部の範囲で選ばれる。この使用量が0.01重量部未満では重合系が不安定となるおそれがあるし、0.5重量部を超えると得られる重合体の粒径が小さくなりすぎて取り扱い性が悪くなり、好ましくない。重合系の安定性及び得られる重合体の粒径などを考慮すると、このヒドロキシプロピルメチルセルロースの好ましい使用量は、原料単量体100重量部当たり、0.02〜0.1重量部の範囲である。
一方、製造方法[1]、[2]における(b)成分の末端イオン性基含有ポリビニルアルコールは、部分ケン化ポリビニルアルコールの末端にイオン性基を有するものであって、本発明においては、ケン化度が61〜70モル%、好ましくは62〜68モル%の範囲にあり、かつ平均重合度が150〜350、好ましくは170〜270の範囲にあるものが用いられる。ケン化度や平均重合度が上記範囲を逸脱すると、可塑剤吸収性と嵩密度とのバランスに優れる塩化ビニル系樹脂粉体が得られにくく、本発明の目的が達せられない。また、イオン性基としては特に限定されないが、例えばアミノ基、アンモニウム基、カルボキシル基、スルホン酸基などを好ましく挙げることができる。
このような末端イオン性基を有するポリビニルアルコールは、公知の方法、例えば国際公開91/15518号公報に記載されている方法に従って容易に製造することができる。
本発明の製造方法[1]及び[2]においては、この末端イオン性基含有ポリビニルアルコールは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量は特に制限はなく、状況に応じて適宜選定されるが、通常、原料単量体100重量部当たり、0.001〜0.5重量部の範囲で選ばれる。この使用量が0.001重量部未満ではフィッシュアイの改良効果が十分に発揮されないおそれがあるし、0.5重量部を超えると得られる重合体の嵩密度が小さくなり、取り扱い性が悪くなるので、好ましくない。フィッシュアイの改良効果及び重合体の嵩密度などを考慮すると、この末端イオン性基含有ポリビニルアルコールの好ましい使用量は、原料単量体100重量部当たり、0.01〜0.1重量部の範囲である。
さらに、製造方法[2]における(c)成分の部分ケン化ポリビニルアルコールは、後述するように、重合の途中で添加される懸濁剤であって、本発明においては、ケン化度が70〜99モル%の範囲にあり、かつ平均重合度が2800〜5000の範囲にあるものが用いられる。ケン化度や平均重合度が上記範囲を逸脱すると可塑剤吸収性と嵩密度とのバランスに優れる塩化ビニル系樹脂粉体が得られにくく、本発明の目的が達せられない。
本発明の製造方法[2]においては、この部分ケン化ポリビニルアルコールは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量は、状況に応じて適宜選定されるが、通常原料単量体100重量部当たり、0.001〜0.5重量部の範囲で選ばれる。この使用量が0.001重量部未満では嵩密度が低くなるおそれがあるし、0.5重量部を超えるとフィッシュアイの改良効果が十分に発揮されず、好ましくない。重合体の嵩密度及びフィッシュアイの改良効果などの面から、この部分ケン化ポリビニルアルコールの好ましい使用量は、原料単量体100重量部当たり、0.01〜0.1重量部の範囲である。
本発明の製造方法[1]においては、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、前記(a)成分及び(b)成分とともに、従来公知の他の懸濁剤を用いてもよく、また、本発明の製造方法[2]においては、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、前記(a)成分、(b)成分及び(c)成分とともに、従来公知の他の懸濁剤を用いてもよい。この所望により用いられる他の懸濁剤としては、例えば、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレングリコール、デンプン、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、カルボキシル化セルロース、マレイン酸−酢酸ビニル共重合体及びその塩、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体及びその塩、ポリエチレングリコールの脂肪酸エステル、さらにはアニオン性、ノニオン性、カチオン性界面活性剤などが挙げられる。これらは、重合前又は重合途中の適当な時間に添加することができる。
本発明の製造方法[1]、[2]における懸濁重合においては、触媒として油溶性のラジカル開始剤が用いられる。この油溶性のラジカル開始剤としては特に制限はなく、従来塩化ビニル系重合体を懸濁重合法により製造する際に慣用されているものの中から任意のものを選択して用いることができる。この油溶性のラジカル開始剤としては、例えばジベンゾイルペルオキシド、ジ−3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド類;ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルペルオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネートなどのペルオキシジカーボネート類;t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシネオデカノエートなどのペルオキシエステル類;あるいはアセチルシクロヘキシルスルホニルペルオキシド、ジサクシニックアシッドペルオキシドなどの有機過酸化物、さらには2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2'−アゾビスジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物などを挙げることができる。これらの触媒の1種又は2種以上を組み合わせて使用することができ、その使用量は、原料単量体の種類と量及び仕込方式などによって適宜選ばれるが、通常原料単量体100重量部当たり、0.001〜5.0重量部の範囲で選択することができる。
次に、本発明の製造方法[1]について、その好適な実施態様を説明する。
本発明の製造方法[1]における懸濁重合法としては特に制限はなく、従来塩化ビニル系重合体を懸濁重合により製造する際に慣用されている方法を用いることができる。例えば、次のようにして、懸濁重合を好適に実施することができる。
まず、水性媒体中に、懸濁剤としての前記(a)成分のヒドロキシプロピルメチルセルロースと(b)成分の末端イオン性基含有ポリビニルアルコール、及び油溶性のラジカル開始剤を、それぞれ所定量仕込んだのち、原料の塩化ビニル又は所定の割合の塩化ビニルと共重合可能な不飽和単量体との混合物を所定量仕込み、撹拌しながら、通常30〜80℃の範囲の温度において重合を行う。この際、得られる重合体のK値が63(平均重合度約900)〜74(平均重合度約1600)の範囲になるように、各材料の仕込量及び反応条件などを適宜選択する。なお、平均重合度は、JIS K 6721に規定の比粘度(ただし、溶剤として、シクロヘキサノンを使用)により測定することができる。また、K値の測定は、前述したとおりである。
この反応においては、懸濁剤、油溶性のラジカル開始剤及び原料単量体の仕込み順序については特に制限はない。
また、撹拌条件としては、単位容積当たりの正味撹拌所要動力が、0.6〜3kW/m3になるように選ぶのが有利である。なお、単位容積当たりの正味撹拌所要動力とは、総撹拌動力から変速機又は減速機及び撹拌機自体の回転駆動の負荷を除いた撹拌動力を内容積で除した値のことであり、式[2]によって算出することができる。
ここに、
Pv:単位内容積当たりの撹拌所要動力(kW/m3)
P:撹拌動力(kW)
V:液容量(m3)
NP:動力数、撹拌翼固定値であり、経験値を採用する。
例、ファウドラー翼:1.5、
マックスブレンド翼・フルゾーン翼:2.5、
ループ翼・アンカー翼:1.0
ρ:液密度(kg/m3)
n:回転数(1/sec)
d:撹拌翼径(m)
gc:重力換算係数[(kg・m)/(kg・sec2)]
また単位内容積当たりの正味撹拌所要動力の別の求め方として、重合器の撹拌機の電動機の電流計による方法がある。予め重合器が空の段階で撹拌機を回し、変速機又は減速機及び撹拌機自体の回転駆動の負荷を電流計で知り、これを重合反応時の電流計の読みから差引いた値に実効電圧を乗じ、液容量で除すことにより求められる。
次に、本発明の製造方法[2]について、その好適な実施態様を説明する。
まず、水性媒体中に、懸濁剤としての前記(a)成分のヒドロキシプロピルメチルセルロースと(b)成分の末端イオン性基含有ポリビニルアルコール、及び油溶性のラジカル開始剤を、それぞれ所定量仕込んだのち、原料の塩化ビニル又は所定の割合の塩化ビニルと共重合可能な不飽和単量体との混合物を所定量仕込み、撹拌しながら、通常30〜80℃の範囲の温度において重合を開始する。なお、上記懸濁剤、油溶性のラジカル開始剤及び原料単量体の仕込み順序については特に制限はない。
本発明の製造方法[2]においては、このようにして重合を開始してから、重合率(重合転化率)が5重量%以上の時点に、前記(c)成分の部分ケン化ポリビニルアルコールを添加開始し、重合率が少なくとも10重量%進行する期間にわたり、かつ添加終了時の重合率が70重量%を超えないように連続的に添加することが必要である。(c)成分の部分ケン化ポリビニルアルコールを、重合率が5重量%未満の時点で添加開始した場合、得られる重合体を用いて得られる成形品はフィッシュアイが多くなり、また添加終了時の重合率が70重量%を超えた場合は、重合体の嵩密度を高くする効果が十分に発揮されない。得られる重合体による成形品のフィッシュアイを少なくし、かつ重合体の嵩密度を高くする効果などの点から、該(c)成分の部分ケン化ポリビニルアルコールを、重合率が10重量%以上の時点で、かつ添加終了時の重合率が60重量%を超えないように添加するのが特に有利である。また、この部分ケン化ポリビニルアルコールの添加を、重合率の上昇幅が10重量%未満で終了した場合、及び一括で添加した場合、成形品にフィッシュアイが多くなり、好ましくない。
(c)成分の添加方法としては、好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%の水溶液の形態で高圧定量ポンプで圧入する方法が推奨される。
この反応においては、得られる重合体のK値が63(平均重合度約900)〜74(平均重合度約1600)の範囲になるように、各材料の仕込量や反応条件などを適宜選択する。
本発明の製造方法[1]、[2]においては、本発明の目的が損なわれない範囲で、時間当たりの単量体重合転化率を平準化させ、反応熱除去の負荷を均一化させるなどの目的で、所望により、重合反応の途中で、重合禁止剤や重合遅延剤を適宜添加することができる。この重合禁止剤や重合遅延剤としては特に制限はなく、従来塩化ビニル系重合体の製造において慣用されているものの中から適宜選択して用いることができる。重合禁止剤の例としては、ハイドロキノン、p−t−ブチルカテコールなどのフェノール化合物、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩(クペロン)などのヒドロキシルアミン化合物;ジチオベンゾイルジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィドなどの有機イオウ化合物などが挙げられる。これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一方、重合遅延剤の例としては、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテンなどの炭素数5〜8のシクロアルケン化合物などが挙げられ、これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、所望により、連鎖移動剤、架橋剤、スケール防止剤などの公知の添加剤を重合系に添加することができる。
重合圧力は、通常3〜15kg/cm2G、好ましくは4〜12kg/cm2Gの範囲であり、重合時間は、原料単量体の種類、触媒の種類や量、重合温度、重合圧力、得られる重合体の所望K値(所望重合度)など、様々な条件により左右され、一概に定めることはできないが、通常は2〜20時間程度である。
このようにして、平均粒子径が50〜250μm程度の塩化ビニル系重合体粒子が生成する。反応終了後、常法に従って、未反応の単量体を回収したのち、重合体を取り出し、乾燥処理することにより、目的とする塩化ビニル系樹脂粉体が得られる。
このようにして得られた塩化ビニル系樹脂粉体は、K値が63〜74の範囲にあり、かつ粉体の嵩密度D(g/ml)と上記K値とが、式[1]
8.5≦KD≦11 …[1]
の関係を満たすものであって、体積固有抵抗値が8×1013Ω・cm以上で、前記測定法によるフィッシュアイの数が5未満である。
該塩化ビニル系樹脂粉体は、多孔性で可塑剤吸収性に優れ、かつ嵩密度が高く、加工生産性が良好である上、体積固有抵抗値が大きく、電気絶縁性に優れ、しかもフィッシュアイの少ない外観の良好な成形品を与えることができる。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、得られた塩化ビニル系樹脂粉体の物性は、下記の要領に従って測定した。
(1)K値
明細書本文に記載した方法に従って測定した。
(2)平均重合度
JIS K 6721に準拠して測定した。ただし、溶剤としてシクロヘキサノンを用いた。
(3)嵩密度
明細書本文に記載した方法に従って測定した。
(4)可塑剤吸収時間
ミキサー試験機[東洋精機社製ラボプラストミル、プラネタリーミキサーP−600型]に塩化ビニル樹脂粉末400gを入れ、100rpmで撹拌しながら予熱(5分)して88℃としたのち、これにポリエステル系可塑剤[三建化工(株)製SP−105]を200g添加し、添加時よりトルクが下降し定常値になった時間を吸収時間とした。短時間であるほど可塑剤吸収性が良い。
(5)体積固有抵抗値
明細書本文に記載した方法に従って測定した。
(6)フィッシュアイ
明細書本文に記載した方法に従って測定した。
製造例1
末端イオン性基含有ポリビニルアルコールの製造
反応容器に酢酸ビニル1400重量部、3−メルカプトプロピオン酸0.12重量部及びメタノール350重量部を仕込み、容器内を窒素置換したのち、加熱して、液温を60℃に昇温した。液温が60℃になった時点で、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.60重量部を含むメタノール5重量部を加えた。次いで、3−メルカプトプロピオン酸2.54重量部を含むメタノール25重量部を4時間要して均一に滴下した。滴下終了後、60℃にて4時間反応を行ったのち、反応液を冷却した。
次に、反応終了液中に残留する酢酸ビニルを、減圧下にメタノールと共に系外へ留去させる操作を、メタノールを追加しながら行い、ポリビニルアセテートのメタノール溶液を得た(濃度約70重量%)。
次に、上記メタノール溶液中のポリビニルアセテートを、水酸化ナトリウムによりケン化処理して、ケン化度65モル%のポリビニルアルコールを得た。このポリビニルアルコールは、平均重合度が250であり、また、核磁気共鳴分析(NMR)により、末端に−COONa基の存在が認められ、分子の片末端にNaOOC−CH2CH2−S−で示される基を有するものであることが確認された。
製造例2
製造例1と同様な操作により、分子の片末端にNaOOC−CH2CH2−S−で示される基を有し、かつケン化度が40モル%、平均重合度が250のポリビニルアルコールを製造した。
参考例1
内容積2000リットルの撹拌機及びジャケット付きステンレススチールライニング重合器に、脱イオン水1000kg、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート400g及び懸濁剤として第1表に示した量のヒドロキシプロピルメチルセルロース[略称HPMC、信越化学(株)製、商品名:メトローズ60SH50]と製造例1で得られた末端イオン性基含有ポリビニルアルコールを仕込んだのち、重合器を脱気し、塩化ビニル単量体800kgを仕込み、57℃に昇温し、重合圧力8.5kg/cm2G、単位容積当たりの正味撹拌所要動力1.7kW/m3にて重合を開始した。温度を57℃に保持しながら重合を行い、重合圧力が7kg/cm2Gに降下した時点で重合を終了した。
反応終了後、未反応単量体を回収したのち、重合体を脱水、乾燥処理した。得られた塩化ビニル樹脂粉体の評価結果を第1表に示す。
参考例2
参考例1において、末端イオン性基含有ポリビニルアルコールの使用量を、第1表に示すように変えた以外は、参考例1と同様にして実施し、塩化ビニル樹脂粉体を製造した。この樹脂粉体の評価結果を第1表に示す。
参考例3
参考例1において、51.5℃に昇温し、温度を51.5℃に保持しながら重合を行い、重合圧力が5.9kg/cm2Gに降下した時点で重合を終了した以外は、参考例1と同様に実施した。得られた塩化ビニル樹脂粉体の評価結果を第1表に示す。
参考例4
参考例3において、末端イオン性基含有PVAの量を第1表に示すように変えた以外は、参考例3と同様にして実施した。得られた塩化ビニル樹脂粉体の評価結果を第1表に示す。
参考例5
参考例4において、49.5℃に昇温し、温度を49.5℃に保持しながら重合を行い、重合圧力が5.4kg/cm2Gに降下した時点で重合を終了した以外は、参考例4と同様に実施した。得られた塩化ビニル樹脂粉体の評価結果を第1表に示す。
[注]
1)塩化ビニル単量体に対する重量%
2)HPMC:ヒドロキシプロピルメチルセルロース、信越化学(株)製、商品名「メトローズ60SH50」、メトキシ基置換度28〜30モル%、ヒドロキシプロポキシ基置換度7〜12モル%
比較例1、2
参考例1において、製造例1で得られた末端イオン性基含有ポリビニルアルコールの代わりに、製造例2で得られた末端イオン性基含有ポリビニルアルコールを第2表に示す量で用いた以外は、参考例1と同様にして実施し、それぞれ塩化ビニル樹脂粉体を製造した。各塩化ビニル樹脂粉体の評価結果を第2表に示す。
比較例3、4
参考例1において、製造例1で得られた末端イオン性基含有ポリビニルアルコールの代わりに、第2表に示す種類と量の末端にイオン性基を有しない部分ケン化ポリビニルアルコールPVA−1、PVA−2を、それぞれ用いた以外は、参考例1と同様にして実施し、塩化ビニル樹脂粉体を製造した。各塩化ビニル樹脂粉体の評価結果を第2表に示す。
比較例5
参考例1において、製造例1で得られた末端イオン性基含有ポリビニルアルコールの代わりに、SMS(ソルビタンモノステアレート、ノニオン性界面活性剤)を第2表に示す量で用いた以外は、参考例1と同様にして実施し、塩化ビニル樹脂粉体を製造した。この樹脂粉体の評価結果を第2表に示す。
比較例6
参考例1において、懸濁剤として、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いずに、製造例1で得られた末端イオン性基含有ポリビニルアルコールと部分ケン化ポリビニルアルコールPVA−3を、第2表に示す量で用いた以外は、参考例1と同様にして実施し、塩化ビニル樹脂粉体を製造した。このものの評価結果を第2表に示す。
比較例7
比較例2において、重合温度を51.5℃、終了圧力を5.9kg/cm2Gに変更した以外は、比較例2と同様にして実施した。得られた塩化ビニル樹脂粉体の評価結果を第2表に示す。
比較例8
比較例6において、重合温度を51.5℃、終了圧力を5.9kg/cm2Gに変更した以外は、比較例6と同様にして実施した。得られた塩化ビニル樹脂粉体の評価結果を第2表に示す。
比較例9
比較例6において、重合温度を49.5℃、終了圧力を5.4kg/cm2Gに変更した以外は、比較例6と同様にして実施した。得られた塩化ビニル樹脂粉体の評価結果を第2表に示す。
[注]
1)塩化ビニル単量体に対する重量%
2)HPMC:ヒドロキシプロピルメチルセルロース、信越化学(株)製、商品名「メトローズ60SH50」、メトキシ基置換度28〜30モル%、ヒドロキシ、プロポキシ基置換度7〜12モル%
3)SMS:ソルビタンモノステアレート(ノニオン性界面活性剤)
4)PVA−1:部分ケン化ポリビニルアルコール(試作品)
5)PVA−2:部分ケン化ポリビニルアルコール(試作品)
6)PVA−3:部分ケン化ポリビニルアルコール、日本合成化学工業(株)製、商品名「ゴーセノールKH−20」
実施例6
内容積2000リットルの撹拌機及びジャケット付きステンレススチールライニング重合器に、脱イオン水1000kg、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート400g及び懸濁剤として第3表に示した量のヒドロキシプロピルメチルセルロース[略称HPMC、信越化学(株)製、商品名:メトローズ60SH50]と製造例1で得られた末端イオン性基含有ポリビニルアルコールを仕込んだのち、重合器を脱気し、塩化ビニル単量体800kgを仕込み、57℃に昇温し、重合圧力8.5kg/cm2G、単位容積当たりの正味撹拌所要動力1.7kW/m3にて重合を開始した。温度を57℃に保持しながら重合を行い、重合率が10重量%の時点で、第3表に示した後添加部分ケン化ポリビニルアルコール(PVA−1)160gを5重量%水溶液として、重合率が35重量%になるまで連続的に添加し、重合圧力が7kg/cm2Gに降下した時点で重合を終了した。
反応終了後、未反応単量体を回収したのち、重合体を脱水、乾燥処理した。得られた塩化ビニル樹脂粉体の評価結果を第3表に示す。
実施例7
実施例6において、後添加部分ケン化ポリビニルアルコール(PVA−1)を、重合率が20重量%の時点で、60重量%になるまで連続的に添加した以外は、実施例6と同様に実施し、塩化ビニル樹脂粉体を製造した。この樹脂粉体の評価結果を第3表に示す。
実施例8
実施例6において、重合温度を51.5℃、終了圧力を5.9kg/cm2Gに変更した以外は、実施例6と同様にして実施した。得られた塩化ビニル樹脂粉体の評価結果を第3表に示す。
実施例9
実施例7において、重合温度を49.5℃、終了圧力を5.4kg/cm2Gに変更した以外は、実施例6と同様にして実施した。得られた塩化ビニル樹脂粉体の評価結果を第3表に示す。
[注]
1)塩化ビニル単量体に対する重量%
2)HPMC:ヒドロキシプロピルメチルセルロース、信越化学(株)製、商品名「メトローズ60SH50」、メトキシ基置換度28〜30モル%、ヒドロキシプロポキシ基置換度7〜12モル%
3)PVA−1:部分ケン化ポリビニルアルコール、クラレ(株)製、商品名「PVA635」、末端イオン性基なし
比較例10
実施例6において、後添加部分ケン化ポリビニルアルコール(PVA−1)を、重合の途中でなく、重合前に添加した以外は、実施例6と同様に実施し、塩化ビニル樹脂粉体を製造した。この樹脂粉体の評価結果を第4表に示す。
比較例11
実施例6において、後添加部分ケン化ポリビニルアルコール(PVA−1)を、重合率25〜30重量%の短い期間に集中して添加した以外は、実施例6と同様に実施し、塩化ビニル樹脂粉体を製造した。この樹脂粉体の評価結果を第4表に示す。
比較例12
実施例6において、後添加部分ケン化ポリビニルアルコール(PVA−1)の代わりに、第4表に示す後添加部分ケン化ポリビニルアルコール(PVA−2)を用いた以外は、実施例6と同様に実施し、塩化ビニル樹脂粉体を製造した。この樹脂粉体の評価結果を第4表に示す。
比較例13
実施例6において、製造例1で得られた末端イオン性基含有ポリビニルアルコール0.05重量部の代わりに第4表に示す部分ケン化ポリビニルアルコール(PVA−3)0.02重量部を用いて重合開始し、後添加部分ケン化ポリビニルアルコール(PVA−2)を重合率30〜60重量%にわたって添加した以外は、実施例6と同様に実施し、塩化ビニル樹脂粉体を製造した。この樹脂粉体の評価結果を第4表に示す。
比較例14
比較例10において、重合温度を51.5℃、終了圧力を5.9kg/cm2Gに変更した以外は、比較例10と同様にして実施した。得られた塩化ビニル樹脂粉体の評価結果を第4表に示す。
比較例15
比較例10において、重合温度を49.5℃、終了圧力を5.4kg/cm2Gに変更した以外は、比較例10と同様にして実施した。得られた塩化ビニル樹脂粉体の評価結果を第4表に示す。
[注]
1)塩化ビニル単量体に対する重量%
2)HPMC:ヒドロキシプロピルメチルセルロース、信越化学(株)製、商品名「メトローズ60SH50」、メトキシ基置換度28〜30モル%、ヒドロキシプロポキシ基置換度7〜12モル%
3)PVA−1:部分ケン化ポリビニルアルコール、クラレ(株)製、商品名「PVA635」、末端イオン性基なし
4)PVA−2:部分ケン化ポリビニルアルコール、日本合成化学工業(株)製、商品名「ゴーセノールKH20」、末端イオン性基なし
5)PVA−3:部分ケン化ポリビニルアルコール、日本合成化学工業(株)製、商品名「ゴーセノールKP08」、末端イオン性基なし
産業上の利用可能性
本発明の塩化ビニル系樹脂粉体は、多孔性で可塑剤吸収性に優れ、かつ嵩密度が高く、良好な加工生産性を有し、さらに体積固有抵抗値が大きい上、フィッシュアイの少ない外観の良好な成形品を与えることができる。
本発明の方法によれば、上記の優れた性能を有する塩化ビニル系樹脂粉体を、極めて効率よく製造することができる。
Claims (2)
- 水性媒体中において、(a)ヒドロキシプロピルメチルセルロースと(b)ケン化度61〜70モル%、平均重合度150〜350の末端イオン性基含有ポリビニルアルコールとの存在下、塩化ビニル単独又は塩化ビニルを主体とし、これと共重合可能な不飽和単量体との混合物の懸濁重合を開始し、重合率が5重量%以上の時点に、(c)ケン化度70〜99モル%、平均重合度2800〜5000の部分ケン化ポリビニルアルコールを添加開始し、重合率が少なくとも10重量%進行する期間にわたり、かつ添加終了時の重合率が70重量%を超えないように連続的に添加する塩化ビニル系樹脂粉体の製造方法であって、該塩化ビニル系樹脂粉体100重量部とジオクチルフタレート60重量部及びバリウム亜鉛系複合安定剤2重量部及び濃青色顔料3.5重量部の混合物を混練用6インチロールによって140℃で7分間混練し、巾100mm、厚さ0.5mmのシートを作成したときに、該シートの50cm 2 当たりのフィッシュアイが5個未満であることを特徴とするDIN53726に準拠したK値63〜74の塩化ビニル系樹脂粉体の製造方法。
- 単量体100重量部に対し、(a)ヒドロキシプロピルメチルセルロース0.01〜0.5重量部、(b)末端イオン性基含有ポリビニルアルコール0.001〜0.5重量部及び(c)部分ケン化ポリビニルアルコール0.001〜0.5重量部を用いる請求項1記載のDIN53726に準拠したK値63〜74の塩化ビニル系樹脂粉体の製造方法。
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