JP7269236B2 - ビニル系重合体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリビニルアルコールを含む分散安定剤の存在下でビニル化合物を懸濁重合するビニル系重合体の製造方法に関する。
ポリビニルアルコール(以下、「PVA」と略記することがある)は従来より、接着剤、紙塗工剤、偏光フィルム、水溶性フィルム、医薬、化粧品用途組成物、ビニル化合物(例えば、塩化ビニル)の懸濁重合用分散安定剤等、様々な製品に使用されている。PVAに二重結合等の反応性基が存在することで各種性能が向上すること、あるいは特殊な効果を得られることが知られている。
ビニル化合物の懸濁重合に用いられる分散安定剤として、PVAが広く使用されている(特許文献1~5)。重合安定性、可塑剤吸収性、かさ比重の改善が求められているが現行技術ではどれも十分満足とは言いがたい。特に可塑剤吸収性とかさ比重の関係は基本的にトレードオフの関係にあるため両方の改善は困難である。そのため、可塑剤吸収性に優れなおかつかさ比重も高いビニル系重合体を得ることは困難とされてきた。
塩化ビニルの重合時における安定性(重合安定性)を向上させる目的で、熱処理したPVAを重合反応に用いることが提案されている(特許文献1~3)。しかしながら、これらのPVAを分散安定剤として用いて塩化ビニルの懸濁重合を行った場合、重合安定性、可塑剤吸収性、かさ比重の点で必ずしも満足すべき効果が得られていなかった。
特許文献4には、オレフィン系不飽和二重結合を有するモノアルデヒドによりポリビニルアルコールをアセタール化して得られる、側鎖に二重結合を有するポリビニルアルコールを含有することを特徴とする懸濁重合用分散安定剤が記載されている。特許文献4に記載の懸濁重合用分散安定剤を用いて重合反応を行った場合、重合安定性や得られるビニル系重合体の可塑剤吸収性、かさ比重は十分とは言い難かった。
また、特許文献4に記載のポリビニルアルコールを製造する際には酸を使用するため、酸に耐性のある高額の設備が必要という問題もあった。さらに、当該ポリビニルアルコールの製造に用いられる、二重結合を有するモノアルデヒドは、高価である、空気中で不安定である、毒物指定のものがある、刺激臭があり取り扱い性が悪い、原料供給性に乏しい等の問題点を有していた。
特許文献5には、不飽和二重結合を有するカルボン酸またはその塩によりポリビニルアルコールをエステル化して得られる、側鎖に二重結合を有するポリビニルアルコールからなる分散安定剤が記載されている。この分散安定剤に用いられているポリビニルアルコールは、安価なカルボン酸を用いて簡便な方法により得ることができるとされている。
しかしながら、このポリビニルアルコールからなる分散安定剤を用いてビニル化合物の懸濁重合を行うと、得られるビニル系重合体からなる成形品にフィッシュアイが多数発生するとともに、重合安定性、可塑剤吸収性、かさ比重にも問題点もあった。
特開昭51-45189号公報 特開平10-67806号公報 特開2004-250695号公報 国際公開2015/182567号 国際公開2007/119735号
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、ビニル化合物を懸濁重合するに際して、重合安定性に優れ、得られるビニル系重合体の可塑剤吸収性及びかさ比重を向上させることができるとともに、当該ビニル系重合体からなる成形品のフィッシュアイを抑制することができるビニル系重合体の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題は、分散安定剤の存在下でビニル化合物を懸濁重合するビニル系重合体の製造方法であって、前記分散安定剤が変性ポリビニルアルコール(A)、ポリビニルアルコール(B)及びポリビニルアルコール(C)を含有し、変性ポリビニルアルコール(A)が、イタコン酸及びその誘導体、並びにメタクリル酸及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種に由来する二重結合を側鎖に0.05モル%以上0.5モル%未満有し、変性ポリビニルアルコール(A)のけん化度が68モル%以上77モル%未満であり、粘度平均重合度が500以上1500未満であり、ポリビニルアルコール(B)のけん化度が30モル%以上60モル%未満であり、粘度平均重合度が150以上600未満であり、ポリビニルアルコール(C)のけん化度が77モル%以上90モル%未満であり、粘度平均重合度が1700以上3000未満であり、かつ変性ポリビニルアルコール(A)、ポリビニルアルコール(B)及びポリビニルアルコール(C)の合計100質量部に対する、変性ポリビニルアルコール(A)の含有量が10~45質量部であり、ポリビニルアルコール(B)の含有量が1~45質量部であり、ポリビニルアルコール(C)の含有量が10~89質量部である製造方法を提供することによって解決される。
このとき、前記分散安定剤が変性ポリビニルアルコール(A)100質量部に対して、さらに化合物(D)を0.001質量部以上5質量部未満含有し、化合物(D)が、フェノール性水酸基を2つ以上有する化合物、又はその塩若しくはその酸化物であることが好ましい。
また、変性ポリビニルアルコール(A)がイタコン酸に由来する二重結合を側鎖に有することが好ましい。
本発明の製造方法によれば、重合反応が安定し、粗大粒子の形成が少なくなる。また、ビニル系重合体からなる成形品のフィッシュアイを抑制できるとともに、ビニル系重合体の可塑剤吸収性及びかさ比重を向上できる。
本発明は、分散安定剤の存在下でビニル化合物を懸濁重合するビニル系重合体の製造方法に関する。本発明者は上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、変性ポリビニルアルコール(A)(以下、「変性PVA(A)」と略記する)、ポリビニルアルコール(B)(以下、「PVA(B)」と略記する)及びポリビニルアルコール(C)(以下、「PVA(C)」と略記する)を含有する分散安定剤を用いるビニル系重合体の製造方法を完成させた。
本発明の製造方法においては、変性PVA(A)、PVA(B)及びPVA(C)を同時に特定量含有する分散安定剤を用いることが重要である。本発明の製造方法によれば、ビニル化合物の重合時における安定性が向上し、平均粒径が小さく粗大粒子も少ないビニル系重合体を得ることができる。また、得られる成形品のフィッシュアイも抑制される。しかも驚くべきことに、本発明の製造方法で得られたビニル系重合体は可塑剤吸収性に優れ、なおかつかさ比重も高かった。
(変性PVA(A))
本発明で用いる変性PVA(A)は、イタコン酸及びその誘導体、並びにメタクリル酸及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種に由来する二重結合を側鎖に有する。
本発明で用いる変性PVA(A)の製造方法は特に限定されないが、好適な製造方法は、上記特定のカルボン酸(イタコン酸又はメタクリル酸)及びその誘導体の存在下で、ポリビニルアルコール(E)(以下、「PVA(E)」と略記することがある)を加熱し反応させる方法である。このとき、上記特定のカルボン酸及びその誘導体は単独で、または2種以上を併用して用いることができる。反応温度及び反応時間は特に限定されない。反応温度は、30~200℃であることが好ましい。反応時間は、通常、10分~24時間である。ここで、PVA(E)は、二重結合を側鎖に有さないPVAである。
本発明において、イタコン酸の誘導体としては、イタコン酸アルキルエステル、無水イタコン酸などが挙げられる。また、メタクリル酸の誘導体としては、メタクリル酸アルキルエステル、無水メタクリル酸などが挙げられる。これらのカルボン酸及びその誘導体は塩であっても構わない。
上記特定のカルボン酸(イタコン酸又はメタクリル酸)及びその誘導体の中でも、PVA(E)との反応性や分散安定剤として用いた際の性能面からイタコン酸であることが好ましい。すなわち、本発明における変性PVA(A)がイタコン酸に由来する二重結合を側鎖に有することが好ましい。
上記PVA(E)は、ビニルエステル系単量体を塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法等の従来公知の重合方法を採用して製造できる。工業的観点から好ましい重合方法は、溶液重合法、乳化重合法及び分散重合法である。重合操作にあたっては、回分法、半回分法及び連続法のいずれの重合方式も採用できる。
重合に用いるビニルエステル系単量体としては、例えば、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプリル酸ビニル、バーサチック酸ビニルなどを挙げることができ、中でも酢酸ビニルが工業的観点から好ましい。
ビニルエステル系単量体の重合に際して、本発明の趣旨を損なわない範囲であればビニルエステル系単量体を他の単量体を共重合させても差し支えない。使用しうる単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、n-ブテン、イソブチレンなどのα-オレフィン;アクリル酸及びその塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸i-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸i-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸及びその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸i-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸i-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシルなどのメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩またはその4級塩、N-メチロールアクリルアミド及びその誘導体などのアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩またはその4級塩、N-メチロールメタクリルアミド及びその誘導体などのメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、i-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、i-ブチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル類;塩化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン類;酢酸アリル、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸及びその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニルなどが挙げられる。このような他の単量体の共重合量は、通常、10モル%以下である。
また、ビニルエステル系単量体の重合に際して、得られるポリビニルエステルの重合度を調節することなどを目的として、連鎖移動剤を共存させても差し支えない。連鎖移動剤としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒドなどのアルデヒド類;アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;2-ヒドロキシエタンチオール、ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン類;トリクロロエチレン、パークロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類が挙げられ、中でもアルデヒド類及びケトン類が好適に用いられる。連鎖移動剤の添加量は、添加する連鎖移動剤の連鎖移動定数及び目的とするポリビニルエステルの重合度に応じて決定されるが、一般にビニルエステル系単量体に対して0.1~10質量%が望ましい。
ポリビニルエステルのけん化反応には、従来公知の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシドなどの塩基性触媒、またはp-トルエンスルホン酸などの酸性触媒を用いた、加アルコール分解ないし加水分解反応が適用できる。けん化反応に用いられる溶媒としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素などが挙げられ、これらは単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。中でも、メタノールまたはメタノールと酢酸メチルとの混合溶液を溶媒として用い、塩基性触媒である水酸化ナトリウムの存在下にけん化反応を行うのが簡便であり好ましい。
本発明において、変性PVA(A)が、イタコン酸及びその誘導体、並びにメタクリル酸及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種に由来する二重結合を側鎖に0.05モル%以上0.5モル%未満有することが重要である。なお、上記二重結合は、炭素-炭素二重結合を意味する。
二重結合の量が0.05モル%未満の変性PVA(A)を含む分散安定剤を用いてビニル化合物を懸濁重合した場合、重合安定性が低下し粗大粒子が多く形成される、ビニル系重合体からなる成形品にフィッシュアイが多数発生する、ビニル系重合体のかさ比重が低いという問題が発生する。上記二重結合の量は、0.08モル%以上であることが好ましく、0.10モル%以上であることがより好ましく、0.12モル%以上であることがさらに好ましい。
一方、二重結合の量が0.5モル%以上の変性PVA(A)を含む分散安定剤を用いてビニル化合物を懸濁重合した場合、ビニル系重合体からなる成形品にフィッシュアイが多数発生するとともに、ビニル系重合体の可塑剤吸収性が低くなる。二重結合の量は0.45モル%未満であることが好ましく、0.40モル%未満であることがより好ましく、0.35モル%未満であることがさらに好ましい。
上記二重結合の量は公知の方法で測定可能である。具体的にはH-NMRによる測定が簡便である。上記二重結合の量を測定する場合は、未反応のカルボン酸又はその誘導体をあらかじめ除去し、精製した後に行うことが好ましい。
精製方法は特に限定されないが、変性PVA(A)が溶解せず、未反応のカルボン酸又はその誘導体が溶解可能な溶液で洗浄する方法が挙げられる。変性PVA(A)を一度、濃度1~20質量%程度の水溶液とした後、変性PVA(A)が溶解せず、未反応のカルボン酸又はその誘導体が溶解可能な溶液中に水溶液を滴下し、変性PVA(A)を析出させることで精製する再沈殿法が簡便で好ましい。
変性PVA(A)のけん化度は68モル%以上77モル%未満である。けん化度が68モル%未満の場合、水溶性が低下するためハンドリング性が低下する、重合不安定となり粗大粒子が増加する、という問題が発生する。変性PVA(A)のけん化度は、70モル%以上であることが好ましい。一方、変性PVA(A)のけん化度が77モル%以上の場合、粗大粒子が多く形成される、ビニル系重合体からなる成形品にフィッシュアイが多数発生する、ビニル系重合体の可塑剤吸収性が低い、という問題が発生する。変性PVA(A)のけん化度は、75モル%未満であることが好ましい。けん化度はJIS-K6726に準じて測定して得られる値である(以下に説明するけん化度も同様の測定方法である)。
変性PVA(A)の粘度平均重合度(単に「重合度」と記載することがある)は500以上1500未満である。重合度が500未満の場合、重合安定性が低下し粗大粒子が多く形成される、ビニル系重合体からなる成形品にフィッシュアイが多数発生する、ビニル系重合体のかさ比重が低い、という問題が発生する。変性PVA(A)の重合度は、600以上であることが好ましい。一方、重合度が1500以上の場合、粗大粒子が多く形成される、ビニル系重合体からなる成形品にフィッシュアイが多数発生する、ビニル系重合体の可塑剤吸収性やかさ比重が低い、という問題が発生する。変性PVA(A)の重合度は、1000未満であることが好ましく、900未満であることがより好ましい。けん化度が99.5モル%未満の場合には、けん化度99.5モル%以上になるまでけん化したPVAについて、水中、30℃で測定した極限粘度[η](リットル/g)を用いて下記式により粘度平均重合度(P)を求めた。
P=([η]×10/8.29)(1/0.62)
(PVA(B))
本発明におけるPVA(B)は、二重結合を側鎖に有さないPVAであり、製法はPVA(E)と同様である。
PVA(B)のけん化度は30モル%以上60モル%未満である。けん化度が30モル%未満の場合、ビニル化合物の分散安定剤として用いた際の重合安定性が低下する。けん化度は35モル%以上であることが好ましい。一方、PVA(B)のけん化度が60モル%以上の場合、ビニル系重合体からなる成形品にフィッシュアイが多数発生する、ビニル系重合体の可塑剤吸収性が低い、という問題が発生する。けん化度は57モル%未満であることが好ましく、54モル%未満であることがより好ましい。
PVA(B)の粘度平均重合度は150以上600未満である。重合度が150未満の場合、ビニル化合物の分散安定剤として用いた際の重合安定性が低下し、粗大粒子が多く形成される、ビニル系重合体からなる成形品にフィッシュアイが多数発生する、ビニル系重合体のかさ比重が低い、という問題が発生する。重合度は200以上であることが好ましい。一方、重合度が600以上の場合、ビニル系重合体からなる成形品にフィッシュアイが多数発生する、ビニル系重合体の可塑剤吸収性が低い、という問題が発生するおそれがある。重合度は550未満であることが好ましい。
(PVA(C))
本発明におけるPVA(C)は、二重結合を側鎖に有さないPVAであり、製法はPVA(E)と同様である。
PVA(C)のけん化度は77モル%以上90モル%未満である。けん化度が77モル%未満の場合、ビニル化合物の分散安定剤として用いた際の重合安定性が低下する、ビニル系重合体のかさ比重が低い、という問題が発生する。けん化度は78モル%以上であることが好ましい。一方、PVA(C)のけん化度が90モル%以上の場合、ビニル系重合体からなる成形品にフィッシュアイが多数発生する、ビニル系重合体の可塑剤吸収性が低い、という問題が発生する。けん化度は85モル%未満であることが好ましい。
PVA(C)の粘度平均重合度は1700以上3000未満である。重合度が1700未満の場合、ビニル化合物の分散安定剤として用いた際の重合安定性が低下し、粗大粒子が多く形成される、ビニル系重合体のかさ比重が低い、という問題が発生する。重合度は1800以上であることが好ましい。一方、重合度が3000以上の場合、ビニル系重合体からなる成形品にフィッシュアイが多数発生する、ビニル系重合体の可塑剤吸収性が低い、という問題が発生する。重合度は2700未満であることが好ましい。
(化合物(D))
本発明の製造方法に用いる分散安定剤は、さらに化合物(D)を含有することが好ましい。このとき、化合物(D)が、フェノール性水酸基を2つ以上有する化合物、又はその塩若しくはその酸化物であることが好ましい。フェノール性水酸基を2つ以上有する化合物は具体的にはヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、t-ブチルヒドロキノン、ジt-ブチルヒドロキノンなどのベンゼンジオール、ピロガロール、フロログルシノール、ヒドロキシキノールなどのベンゼントリオール、ヘキサヒドロキシベンゼン、没食子酸などのフェノールカルボン酸;没食子酸アルキルエステルなどのフェノールカルボン酸エステル;エピカテキン、エピガロカテキン、エピガロカテキン-3-ガラートなどのカテキンも挙げられる。没食子酸アルキルエステルとしては、没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル、没食子酸オクチル、没食子酸ドデシルなどが挙げられる。これらの塩または酸化物も同様に用いることができる。
中でも、ベンゼンジオール、没食子酸、没食子酸アルキルであることが好ましく、ベンゼンジオール又は没食子酸アルキルであることがより好ましく、ベンゼンジオールがさらに好ましく、t-ブチルヒドロキノンが特に好ましい。
(分散安定剤)
本発明の分散安定剤において、変性PVA(A)、PVA(B)及びPVA(C)の合計100質量部に対する、変性PVA(A)の含有量が10~45質量部であることが重要である。
変性PVA(A)の含有量が10質量部未満の場合、ビニル化合物の懸濁重合において重合安定性が低下し、粗大粒子が多く形成される、ビニル系重合体からなる成形品にフィッシュアイが多数発生する、ビニル系重合体のかさ比重が低い、という問題が発生する。変性PVA(A)の含有量は20質量部以上であることが好ましい。一方、変性PVA(A)の含有量が45質量部を超える場合、ビニル系重合体からなる成形品にフィッシュアイが多数発生する、ビニル系重合体の可塑剤吸収性が低い、という問題が発生する。変性PVA(A)の含有量は43質量部以下であることが好ましい。
本発明において、変性PVA(A)、PVA(B)及びPVA(C)の合計100質量部に対する、PVA(B)の含有量が1~45質量部であることも重要である。
PVA(B)の含有量が1質量部未満の場合、ビニル系重合体からなる成形品にフィッシュアイが多数発生する、ビニル系重合体の可塑剤吸収性が低い、という問題が発生する。PVA(B)の含有量は5質量部以上であることが好ましい。一方、PVA(B)の含有量が45質量部を超える場合、ビニル化合物の懸濁重合において重合安定性が低下し、粗大粒子が多く形成される、ビニル系重合体からなる成形品にフィッシュアイが多数発生する、ビニル系重合体のかさ比重が低い、という問題が発生する。PVA(B)の含有量は40質量部以下であることが好ましい。
本発明において、変性PVA(A)、PVA(B)及びPVA(C)の合計100質量部に対する、PVA(C)の含有量が10~89質量部であることが重要である。
PVA(C)の含有量が10質量部未満の場合、重合安定性が低下し粗大粒子が多く形成される、ビニル系重合体からなる成形品にフィッシュアイが多数発生する、ビニル系重合体のかさ比重が低い、という問題が発生する。PVA(C)の含有量は15質量部以上であることが好ましい。PVA(C)の含有量が89質量部を超える場合、ビニル系重合体からなる成形品にフィッシュアイが多数発生する、ビニル系重合体のかさ比重が低い、という問題が発生する。PVA(C)の含有量は75質量部以下であることが好ましい。
本発明において、前記分散安定剤が変性PVA(A)100質量部に対して、さらに化合物(D)を0.001質量部以上5質量部未満含有することが好ましい。化合物(D)の含有量が0.001質量部未満の場合、ビニル系重合体からなる成形品にフィッシュアイが発生しやすい傾向がある。化合物(D)の含有量は0.01質量部以上であることがより好ましい。一方、化合物(D)の含有量が5質量部以上の場合、ビニル化合物の懸濁重合において重合安定性が低下し粗大粒子が多く形成される、ビニル系重合体からなる成形品にフィッシュアイが発生しやすい、という傾向がある。化合物(D)の含有量は3質量部未満であることがより好ましい。
(ビニル系重合体の製造方法)
本発明は、分散安定剤の存在下でビニル化合物を懸濁重合するビニル系重合体の製造方法である。そして、前記分散安定剤が変性PVA(A)、PVA(B)及びPVA(C)を同時に特定量含有する。前記分散安定剤を用いることにより、平均粒径が小さく粗大粒子も少ないビニル系重合体を得ることができる。また、ビニル系重合体からなる成形品のフィッシュアイが抑制されビニル系重合体を得ることもできる。さらに、可塑剤吸収性にも優れ、なおかつかさ比重も高いビニル系重合体を得ることもできる。
このとき、変性PVA(A)、PVA(B)及びPVA(C)の合計含有量は、ビニル化合物100質量部に対して0.01~1質量部であることが好ましい。変性PVA(A)、PVA(B)及びPVA(C)の合計含有量が0.01質量部未満の場合、重合安定性が低く、ビニル系重合体粒子が得られない傾向がある。変性PVA(A)、PVA(B)及びPVA(C)の合計含有量は、ビニル化合物100質量部に対して、0.02質量部以上であることがより好ましい。一方、変性PVA(A)、PVA(B)及びPVA(C)の合計含有量が1質量部を超える場合、経済性が悪化する傾向がある。変性PVA(A)、PVA(B)及びPVA(C)の合計含有量は、ビニル化合物100質量部に対して、0.5質量部以下であることが好ましい。
上記分散安定剤は、本発明の趣旨を損なわない範囲で、各種添加剤を含有してもよい。上記添加剤としては、例えば、アルデヒド類、ハロゲン化炭化水素類、メルカプタン類などの重合調節剤;フェノール化合物、イオウ化合物、N-オキサイド化合物などの重合禁止剤;pH調整剤;架橋剤;防腐剤;防黴剤、ブロッキング防止剤、消泡剤、相溶化剤等が挙げられる。分散安定剤における各種添加剤の含有量は、上記分散安定剤の量に対して10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
上記分散安定剤の重合槽への仕込み方法は特に限定されない。仕込み方法としては、例えば下記の方法(i)~(iv)が挙げられる。
方法(i):変性PVA(A)、PVA(B)及びPVA(C)を粉末状態で混合した後に水溶液にして重合槽に仕込む方法
方法(ii):変性PVA(A)、PVA(B)及びPVA(C)をそれぞれ別々の水溶液として調製した後、これらを混合して得られた水溶液を重合槽に仕込む方法
方法(iii):変性PVA(A)、PVA(B)及びPVA(C)をそれぞれ別々の水溶液として調製した後、これらを水溶液に混合せずに、それぞれ別々に重合槽に仕込む方法
方法(iv):変性PVA(A)、PVA(B)及びPVA(C)を粉末状態のまま仕込む方法
重合槽内での均一性の点から、上記方法(i)、(ii)及び(iii)のいずれかの方法が好ましい。
また上述したように、本発明においては、前記分散安定剤がさらに化合物(D)を含有することが好ましい。この場合における、分散安定剤の重合槽への仕込み方法は特に限定されないが次に説明する方法が好ましい。まず、化合物(D)の存在下で、PVA(E)と上記特定のカルボン酸又はその誘導体とを反応させて変性PVA(A)を含む組成物を得ることが好ましい。この組成物において、反応前のPVA(E)は上記特定のカルボン酸又はその誘導体と反応して変性PVA(A)になり、化合物(D)はそのまま残る。そして、この組成物、PVA(B)及びPVA(C)を分散安定剤として重合槽に仕込む方法が好ましい。このときの仕込み方法は特に限定されず、例えば上記の方法(i)~(iv)が挙げられる。
本発明の製造方法で用いられるビニル化合物としては、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、これらのエステル及び塩;マレイン酸、フマル酸、これらのエステル及び無水物;スチレン;アクリロニトリル;塩化ビニリデン;ビニルエーテル等が挙げられる。中でも、本発明の分散安定剤は、特に好適には塩化ビニルを単独で、または塩化ビニル及び塩化ビニルと共重合できる単量体と共に懸濁重合する際に用いられる。塩化ビニルと共重合できる単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸エステル;エチレン、プロピレンなどのα-オレフィン;無水マレイン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸類;アクリロニトリル;スチレン;塩化ビニリデン;ビニルエーテル等が挙げられる。
ビニル化合物の懸濁重合には、従来から塩化ビニルの重合に使用されている、油溶性または水溶性の重合開始剤を用いることができる。油溶性の重合開始剤としては、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物;t-ブチルパーオキシネオデカネート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、α-クミルパーオキシネオデカネート等のパーエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、2,4,4-トリメチルペンチル-2-パーオキシフェノキシアセテート、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物;アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビス(4-2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物等が挙げられる。水溶性の重合開始剤としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。これらの油溶性あるいは水溶性の重合開始剤は単独で、または2種類以上を組合せて用いることができる。
ビニル化合物の懸濁重合に際し、重合温度には特に制限はなく、20℃程度の低い温度はもとより、90℃を超える高い温度に調整することもできる。また、重合反応系の除熱効率を高めるために、リフラックスコンデンサー付の重合器を用いることもできる。
ビニル化合物の懸濁重合に際して、上記分散安定剤の他に、ビニル化合物を水性媒体中で懸濁重合する際に通常使用されるメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの水溶性セルロースエーテル;ゼラチンなどの水溶性ポリマー;ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレート、グリセリントリステアレート、エチレンオキシドプロピレンオキシドブロックコポリマーなどの油溶性乳化剤;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレングリセリンオレート、ラウリン酸ナトリウムなどの水溶性乳化剤等を併用してもよい。その添加量については特に制限は無いが、ビニル化合物100質量部あたり0.01質量部以上1.0質量部以下が好ましい。
本発明の製造方法によって得られたビニル系重合体は適宜可塑剤などを配合して、各種の成形品用途に用いることができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。以下の実施例及び比較例において、特に断りがない場合、「部」及び「%」はそれぞれ質量部及び質量%を示す。
[PVAの粘度平均重合度]
PVAの粘度平均重合度はJIS-K6726(1994年)に準じて測定した。具体的には、けん化度が99.5モル%未満の場合には、けん化度99.5モル%以上になるまでけん化したPVAについて、水中、30℃で測定した極限粘度[η](リットル/g)を用いて下記式により粘度平均重合度(P)を求めた。
P=([η]×10/8.29)(1/0.62)
[PVAのけん化度]
PVAのけん化度は、JIS-K6726(1994年)に記載の方法により求めた。なお、変性PVA(A)のけん化度は、得られた組成物(C)からなる粉末を再沈精製して単離された変性PVA(A)について測定した値である。
[変性PVA(A)に導入された二重結合の量]
変性PVA(A)の10%水溶液を調製した。この水溶液を、500gの酢酸メチル/水=95/5の溶液中に5g滴下し変性PVA(A)を析出させ、回収し乾燥させた。単離された変性PVA(A)について、H-NMRを用いて変性PVA(A)中に導入された二重結合の量を測定した。なお、当該二重結合の量は変性PVA(A)の全モノマー単位に対する二重結合の量である。
製造例1(PVA(A1)の製造)
イタコン酸6.5部をメタノール120部に溶解した溶液を調製し、そこにPVA(E)として粘度平均重合度700、けん化度72モル%のPVA100部、及び化合物(D)としてt-ブチルヒドロキノン0.1部を加え、メタノールを減圧下除去した。その後、110℃の温度下、7時間熱処理を行うことで、イタコン酸由来の二重結合を側鎖に有するPVA(A1)を得た。PVA(A1)の製造条件を表1に示す。
上記PVA(A1)は、5.6~6.0ppm付近に導入された二重結合のピークが確認され、その二重結合の量は0.23モル%であった。また、上記PVA(A1)の粘度平均重合度は700、けん化度は72モル%であった。PVA(A1)の製造結果を表2に示す。
製造例2~12(PVA(A2~A12)の製造)
使用する原料の種類及び量、熱処理温度、熱処理時間等の熱処理条件を変えたこと以外はPVA(A1)の製造と同様にしてPVA(A2~A12)を製造した。製造条件を表1に、製造結果を表2に示す。
Figure 0007269236000001
Figure 0007269236000002
実施例1
PVA(A1)を脱イオン水に溶解させて200メッシュ目開きのナイロンメッシュでろ過をしたろ液を分散安定剤としてオートクレーブに100部仕込んだ。ろ液におけるPVA(A1)の使用量は、塩化ビニルの仕込み量100質量部に対して0.04質量部(400ppm)であった。次いで、PVA(B)として、粘度平均重合度250、けん化度40モル%のPVAを脱イオン水/メタノール=1/1の溶液に40%の濃度で溶解して分散安定剤としてオートクレーブに仕込んだ。仕込んだPVA(B)の使用量は塩化ビニルの仕込み量100質量部に対して0.02質量部(200ppm)であった。次いで、PVA(C)として、粘度平均重合度2000、けん化度80モル%のPVA(C)を脱イオン水に溶解させて200メッシュ目開きのナイロンメッシュでろ過をしたろ液を分散安定剤としてオートクレーブに100部仕込んだ。仕込んだPVA(C)の使用量は塩化ビニルの仕込み量100質量部に対して0.04質量部(400ppm)であった。次いで、脱イオン水の合計が1200部となるように脱イオン水を追加して仕込んだ。
次いで、クミルパーオキシネオデカノエートの70%トルエン溶液0.65部及びt-ブチルパーオキシネオドデカネートの70%トルエン溶液1.05部をオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内に圧力0.2MPaとなるように窒素を導入した。その後窒素のパージを行う操作を計5回行い、オートクレーブ内を十分に窒素置換して酸素を除いた後、塩化ビニル940部を仕込んだ。オートクレーブ内の内容物を57℃に昇温して撹拌下で塩化ビニルの重合を開始した。重合開始時におけるオートクレーブ内の圧力は0.80MPaであった。重合を開始してから約3.5時間経過後、オートクレーブ内の圧力が0.70MPaとなった時点で重合を停止し、未反応の塩化ビニルを除去した後、重合反応物を取り出し、65℃にて16時間乾燥を行い、ビニル系樹脂(塩化ビニル重合体粒子)を得た。そして、以下に示す方法で得られた粒子を評価した。評価結果を表3に示す。
(塩化ビニル重合体粒子の評価)
得られた塩化ビニル重合体粒子について、(1)平均粒子径、(2)粒度分布、(3)かさ比重、(4)可塑剤吸収性及び(5)フィッシュアイを以下の方法にしたがって評価した。評価結果を表3に示す。
(1)平均粒子径
タイラーメッシュ基準の金網を使用して、JIS-Z8815(1994年)に記載の乾式篩法により粒度分布を測定した。その結果からRosin-Rammlerプロットを用いて平均粒子径を算出した。
(2)粒度分布
JIS標準篩い42メッシュオンの含有量を質量%で表示した。
A:0.5%未満
B:0.5%以上1%未満
C:1%以上
JIS標準篩い60メッシュオンの含有量を質量%で表示した。
A:5%未満
B:5%以上10%未満
C:10%以上
なお、42メッシュオンの含有量及び60メッシュオンの含有量はともに、値が小さいほど粗大粒子が少なくて粒度分布がシャープであり、重合安定性に優れていることを示している。
(3)かさ比重
JIS-K6720-2(1999年)に準じて測定した。
(4)可塑剤吸収性
脱脂綿を0.02g詰めた容量5mLのシリンジの質量(Ag)を測定し、そこに塩化ビニル重合体粒子0.5gを入れ質量(Bg)を測定し、そこにジオクチルフタレート(DOP)1gを入れ15分静置後、3000rpmで40分間遠心分離して質量(Cg)を測定した。そして、下記の計算式より可塑剤吸収性(%)を求めた。可塑剤吸収性が高いほど、加工が容易で主にシートへの加工時にブツ等の外観に生じる欠陥が生じにくいことを示す。
可塑剤吸収性(%)=100×[{(C-A)/(B-A)}-1]
(5)フィッシュアイ
得られた塩化ビニル重合体粒子100部、DOP50部、三塩基性硫酸鉛5部及びステアリン酸亜鉛1部を150℃で7分間ロール練りして0.1mm厚のシートを作製し1000cm当たりのフィッシュアイの数を測定した。
実施例2~12
分散安定剤として用いた変性PVA(A)、PVA(B)及びPVA(C)の種類及び量を表2に示すように変えたこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。条件と結果を表2及び3に示す。
比較例1
表2に示すように、変性PVA(A)としてPVA(A8)を用いたこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表3に示す。PVA(A8)の重合度が低すぎたため、重合が不安定であり、得られる塩化ビニル重合体粒子の平均粒径が大きく、粗大粒子の割合も多く、かさ比重が低く、フィッシュアイも多くなった。
比較例2
表2に示すように、変性PVA(A)としてPVA(A9)を用いたこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表3に示す。PVA(A9)の重合度が高すぎたため、かさ比重、可塑剤吸収性が低く、フィッシュアイも多くなった。
比較例3
表2に示すように、変性PVA(A)としてPVA(A10)を用いたこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表3に示す。PVA(A10)のけん化度が高すぎたため、得られる塩化ビニル重合体粒子の平均粒径が大きく、可塑剤吸収性が低く、フィッシュアイも多くなった。
比較例4
表2に示すように、変性PVA(A)としてPVA(A11)を用いたこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表3に示す。PVA(A11)の側鎖にイタコン酸及びその誘導体、並びにメタクリル酸及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種に由来する二重結合を有していないため、重合が不安定であり、得られる塩化ビニル重合体粒子の平均粒径が大きく、粗大粒子の割合も多く、かさ比重が低く、フィッシュアイも多くなった。
比較例5
表2に示すように、変性PVA(A)としてPVA(A12)を用いたこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表3に示す。PVA(A12)が側鎖に有する二重結合の量が多すぎるため、可塑剤吸収性が低く、フィッシュアイも多くなった。
比較例6
表2に示すように、変性PVA(A)を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表3に示す。変性PVA(A)を用いていないため、重合が不安定であり、得られる塩化ビニル重合体粒子の平均粒径が大きく、粗大粒子の割合も多く、かさ比重が低く、フィッシュアイも多くなった。
比較例7
表2に示すように、PVA(B)を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表3に示す。PVA(B)を用いていないため、可塑剤吸収性が低く、フィッシュアイも多くなった。
比較例8
表2に示すように、変性PVA(A)、PVA(B)及びPVA(C)の使用量を変えたこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表3に示す。PVA(B)の使用量が多く、かつPVA(C)の使用量が少ないため、重合が不安定であり、得られる塩化ビニル重合体粒子の平均粒径が大きく、粗大粒子の割合も多く、かさ比重が低く、フィッシュアイも多くなった。
比較例9
表2に示すように、変性PVA(A)、PVA(B)及びPVA(C)の使用量を変えたこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表3に示す。PVA(A)の使用量が多いため、可塑剤吸収性が低く、フィッシュアイも多くなった。
比較例10
表2に示すように、けん化度が高いPVA(B)を用いたこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表3に示す。PVA(B)のけん化度が高すぎるため、可塑剤吸収性が低く、フィッシュアイも多くなった。
比較例11
表2に示すように、けん化度が高いPVA(C)を用いたこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表3に示す。PVA(C)のけん化度が高すぎるため、可塑剤吸収性が低く、フィッシュアイも多くなった。
比較例12
表2に示すように、重合度が低いPVA(C)を用いたこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表3に示す。PVA(C)の重合度が低すぎるため、重合が不安定であり、得られる塩化ビニル重合体粒子の平均粒径が大きく、粗大粒子の割合も多く、かさ比重が低く、フィッシュアイも多くなった。
比較例13
表2に示すように、重合度が低いPVA(B)を用いたこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表3に示す。PVA(B)の重合度が低すぎるため、重合が不安定であり、得られる塩化ビニル重合体粒子の平均粒径が大きく、粗大粒子の割合も多く、かさ比重が低く、フィッシュアイも多くなった。
比較例14
表2に示すように、PVA(B)及びPVA(C)を用いなかったこと及び変性PVA(A)の使用量を変えたこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表3に示す。PVA(B)及びPVA(C)を用いていないため、可塑剤吸収性が低く、フィッシュアイも多くなった。
Figure 0007269236000003
実施例において示されているように、塩化ビニルのようなビニル化合物を懸濁重合してビニル系重合体を製造する際に、分散安定剤として変性PVA(A)、PVA(B)及びPVA(C)を特定の割合で併用することで重合安定性が改善される。その結果、粗大粒子の生成や成形品のフィッシュアイが少なく、可塑剤吸収性とかさ比重を両立できるビニル系重合体の提供が可能となる。したがって、本発明の工業的な有用性はきわめて高い。

Claims (3)

  1. 分散安定剤の存在下でビニル化合物を懸濁重合するビニル系重合体の製造方法であって;
    前記分散安定剤が変性ポリビニルアルコール(A)、ポリビニルアルコール(B)及びポリビニルアルコール(C)を含有し、
    変性ポリビニルアルコール(A)が、イタコン酸及びその誘導体、並びにメタクリル酸及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種に由来する二重結合を側鎖に0.05モル%以上0.5モル%未満有し、
    変性ポリビニルアルコール(A)のけん化度が68モル%以上77モル%未満であり、粘度平均重合度が500以上1500未満であり、
    ポリビニルアルコール(B)のけん化度が30モル%以上60モル%未満であり、粘度平均重合度が150以上600未満であり、
    ポリビニルアルコール(C)のけん化度が77モル%以上90モル%未満であり、粘度平均重合度が1700以上3000未満であり、かつ
    変性ポリビニルアルコール(A)、ポリビニルアルコール(B)及びポリビニルアルコール(C)の合計100質量部に対する、変性ポリビニルアルコール(A)の含有量が10~45質量部であり、ポリビニルアルコール(B)の含有量が1~45質量部であり、ポリビニルアルコール(C)の含有量が10~89質量部である製造方法。
    但し、変性ポリビニルアルコール(A)が末端にメルカプト基を有する場合を除く。
  2. 前記分散安定剤が変性ポリビニルアルコール(A)100質量部に対して、さらに化合物(D)を0.001質量部以上5質量部未満含有し、
    化合物(D)が、フェノール性水酸基を2つ以上有する化合物、又はその塩若しくはその酸化物である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 変性ポリビニルアルコール(A)がイタコン酸に由来する二重結合を側鎖に有する、請求項1又は2に記載の製造方法。
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