JP7269236B2 - ビニル系重合体の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明で用いる変性PVA(A)は、イタコン酸及びその誘導体、並びにメタクリル酸及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種に由来する二重結合を側鎖に有する。
P=([η]×104/8.29)(1/0.62)
本発明におけるPVA(B)は、二重結合を側鎖に有さないPVAであり、製法はPVA(E)と同様である。
本発明におけるPVA(C)は、二重結合を側鎖に有さないPVAであり、製法はPVA(E)と同様である。
本発明の製造方法に用いる分散安定剤は、さらに化合物(D)を含有することが好ましい。このとき、化合物(D)が、フェノール性水酸基を2つ以上有する化合物、又はその塩若しくはその酸化物であることが好ましい。フェノール性水酸基を2つ以上有する化合物は具体的にはヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、t-ブチルヒドロキノン、ジt-ブチルヒドロキノンなどのベンゼンジオール、ピロガロール、フロログルシノール、ヒドロキシキノールなどのベンゼントリオール、ヘキサヒドロキシベンゼン、没食子酸などのフェノールカルボン酸;没食子酸アルキルエステルなどのフェノールカルボン酸エステル;エピカテキン、エピガロカテキン、エピガロカテキン-3-ガラートなどのカテキンも挙げられる。没食子酸アルキルエステルとしては、没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル、没食子酸オクチル、没食子酸ドデシルなどが挙げられる。これらの塩または酸化物も同様に用いることができる。
本発明の分散安定剤において、変性PVA(A)、PVA(B)及びPVA(C)の合計100質量部に対する、変性PVA(A)の含有量が10~45質量部であることが重要である。
本発明は、分散安定剤の存在下でビニル化合物を懸濁重合するビニル系重合体の製造方法である。そして、前記分散安定剤が変性PVA(A)、PVA(B)及びPVA(C)を同時に特定量含有する。前記分散安定剤を用いることにより、平均粒径が小さく粗大粒子も少ないビニル系重合体を得ることができる。また、ビニル系重合体からなる成形品のフィッシュアイが抑制されビニル系重合体を得ることもできる。さらに、可塑剤吸収性にも優れ、なおかつかさ比重も高いビニル系重合体を得ることもできる。
方法(i):変性PVA(A)、PVA(B)及びPVA(C)を粉末状態で混合した後に水溶液にして重合槽に仕込む方法
方法(ii):変性PVA(A)、PVA(B)及びPVA(C)をそれぞれ別々の水溶液として調製した後、これらを混合して得られた水溶液を重合槽に仕込む方法
方法(iii):変性PVA(A)、PVA(B)及びPVA(C)をそれぞれ別々の水溶液として調製した後、これらを水溶液に混合せずに、それぞれ別々に重合槽に仕込む方法
方法(iv):変性PVA(A)、PVA(B)及びPVA(C)を粉末状態のまま仕込む方法
重合槽内での均一性の点から、上記方法(i)、(ii)及び(iii)のいずれかの方法が好ましい。
PVAの粘度平均重合度はJIS-K6726(1994年)に準じて測定した。具体的には、けん化度が99.5モル%未満の場合には、けん化度99.5モル%以上になるまでけん化したPVAについて、水中、30℃で測定した極限粘度[η](リットル/g)を用いて下記式により粘度平均重合度(P)を求めた。
P=([η]×104/8.29)(1/0.62)
PVAのけん化度は、JIS-K6726(1994年)に記載の方法により求めた。なお、変性PVA(A)のけん化度は、得られた組成物(C)からなる粉末を再沈精製して単離された変性PVA(A)について測定した値である。
変性PVA(A)の10%水溶液を調製した。この水溶液を、500gの酢酸メチル/水=95/5の溶液中に5g滴下し変性PVA(A)を析出させ、回収し乾燥させた。単離された変性PVA(A)について、1H-NMRを用いて変性PVA(A)中に導入された二重結合の量を測定した。なお、当該二重結合の量は変性PVA(A)の全モノマー単位に対する二重結合の量である。
イタコン酸6.5部をメタノール120部に溶解した溶液を調製し、そこにPVA(E)として粘度平均重合度700、けん化度72モル%のPVA100部、及び化合物(D)としてt-ブチルヒドロキノン0.1部を加え、メタノールを減圧下除去した。その後、110℃の温度下、7時間熱処理を行うことで、イタコン酸由来の二重結合を側鎖に有するPVA(A1)を得た。PVA(A1)の製造条件を表1に示す。
使用する原料の種類及び量、熱処理温度、熱処理時間等の熱処理条件を変えたこと以外はPVA(A1)の製造と同様にしてPVA(A2~A12)を製造した。製造条件を表1に、製造結果を表2に示す。
PVA(A1)を脱イオン水に溶解させて200メッシュ目開きのナイロンメッシュでろ過をしたろ液を分散安定剤としてオートクレーブに100部仕込んだ。ろ液におけるPVA(A1)の使用量は、塩化ビニルの仕込み量100質量部に対して0.04質量部(400ppm)であった。次いで、PVA(B)として、粘度平均重合度250、けん化度40モル%のPVAを脱イオン水/メタノール=1/1の溶液に40%の濃度で溶解して分散安定剤としてオートクレーブに仕込んだ。仕込んだPVA(B)の使用量は塩化ビニルの仕込み量100質量部に対して0.02質量部(200ppm)であった。次いで、PVA(C)として、粘度平均重合度2000、けん化度80モル%のPVA(C)を脱イオン水に溶解させて200メッシュ目開きのナイロンメッシュでろ過をしたろ液を分散安定剤としてオートクレーブに100部仕込んだ。仕込んだPVA(C)の使用量は塩化ビニルの仕込み量100質量部に対して0.04質量部(400ppm)であった。次いで、脱イオン水の合計が1200部となるように脱イオン水を追加して仕込んだ。
得られた塩化ビニル重合体粒子について、(1)平均粒子径、(2)粒度分布、(3)かさ比重、(4)可塑剤吸収性及び(5)フィッシュアイを以下の方法にしたがって評価した。評価結果を表3に示す。
タイラーメッシュ基準の金網を使用して、JIS-Z8815(1994年)に記載の乾式篩法により粒度分布を測定した。その結果からRosin-Rammlerプロットを用いて平均粒子径を算出した。
JIS標準篩い42メッシュオンの含有量を質量%で表示した。
A:0.5%未満
B:0.5%以上1%未満
C:1%以上
A:5%未満
B:5%以上10%未満
C:10%以上
JIS-K6720-2(1999年)に準じて測定した。
脱脂綿を0.02g詰めた容量5mLのシリンジの質量(Ag)を測定し、そこに塩化ビニル重合体粒子0.5gを入れ質量(Bg)を測定し、そこにジオクチルフタレート(DOP)1gを入れ15分静置後、3000rpmで40分間遠心分離して質量(Cg)を測定した。そして、下記の計算式より可塑剤吸収性(%)を求めた。可塑剤吸収性が高いほど、加工が容易で主にシートへの加工時にブツ等の外観に生じる欠陥が生じにくいことを示す。
可塑剤吸収性(%)=100×[{(C-A)/(B-A)}-1]
得られた塩化ビニル重合体粒子100部、DOP50部、三塩基性硫酸鉛5部及びステアリン酸亜鉛1部を150℃で7分間ロール練りして0.1mm厚のシートを作製し1000cm2当たりのフィッシュアイの数を測定した。
分散安定剤として用いた変性PVA(A)、PVA(B)及びPVA(C)の種類及び量を表2に示すように変えたこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。条件と結果を表2及び3に示す。
表2に示すように、変性PVA(A)としてPVA(A8)を用いたこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表3に示す。PVA(A8)の重合度が低すぎたため、重合が不安定であり、得られる塩化ビニル重合体粒子の平均粒径が大きく、粗大粒子の割合も多く、かさ比重が低く、フィッシュアイも多くなった。
表2に示すように、変性PVA(A)としてPVA(A9)を用いたこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表3に示す。PVA(A9)の重合度が高すぎたため、かさ比重、可塑剤吸収性が低く、フィッシュアイも多くなった。
表2に示すように、変性PVA(A)としてPVA(A10)を用いたこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表3に示す。PVA(A10)のけん化度が高すぎたため、得られる塩化ビニル重合体粒子の平均粒径が大きく、可塑剤吸収性が低く、フィッシュアイも多くなった。
表2に示すように、変性PVA(A)としてPVA(A11)を用いたこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表3に示す。PVA(A11)の側鎖にイタコン酸及びその誘導体、並びにメタクリル酸及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種に由来する二重結合を有していないため、重合が不安定であり、得られる塩化ビニル重合体粒子の平均粒径が大きく、粗大粒子の割合も多く、かさ比重が低く、フィッシュアイも多くなった。
表2に示すように、変性PVA(A)としてPVA(A12)を用いたこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表3に示す。PVA(A12)が側鎖に有する二重結合の量が多すぎるため、可塑剤吸収性が低く、フィッシュアイも多くなった。
表2に示すように、変性PVA(A)を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表3に示す。変性PVA(A)を用いていないため、重合が不安定であり、得られる塩化ビニル重合体粒子の平均粒径が大きく、粗大粒子の割合も多く、かさ比重が低く、フィッシュアイも多くなった。
表2に示すように、PVA(B)を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表3に示す。PVA(B)を用いていないため、可塑剤吸収性が低く、フィッシュアイも多くなった。
表2に示すように、変性PVA(A)、PVA(B)及びPVA(C)の使用量を変えたこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表3に示す。PVA(B)の使用量が多く、かつPVA(C)の使用量が少ないため、重合が不安定であり、得られる塩化ビニル重合体粒子の平均粒径が大きく、粗大粒子の割合も多く、かさ比重が低く、フィッシュアイも多くなった。
表2に示すように、変性PVA(A)、PVA(B)及びPVA(C)の使用量を変えたこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表3に示す。PVA(A)の使用量が多いため、可塑剤吸収性が低く、フィッシュアイも多くなった。
表2に示すように、けん化度が高いPVA(B)を用いたこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表3に示す。PVA(B)のけん化度が高すぎるため、可塑剤吸収性が低く、フィッシュアイも多くなった。
表2に示すように、けん化度が高いPVA(C)を用いたこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表3に示す。PVA(C)のけん化度が高すぎるため、可塑剤吸収性が低く、フィッシュアイも多くなった。
表2に示すように、重合度が低いPVA(C)を用いたこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表3に示す。PVA(C)の重合度が低すぎるため、重合が不安定であり、得られる塩化ビニル重合体粒子の平均粒径が大きく、粗大粒子の割合も多く、かさ比重が低く、フィッシュアイも多くなった。
表2に示すように、重合度が低いPVA(B)を用いたこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表3に示す。PVA(B)の重合度が低すぎるため、重合が不安定であり、得られる塩化ビニル重合体粒子の平均粒径が大きく、粗大粒子の割合も多く、かさ比重が低く、フィッシュアイも多くなった。
表2に示すように、PVA(B)及びPVA(C)を用いなかったこと及び変性PVA(A)の使用量を変えたこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表3に示す。PVA(B)及びPVA(C)を用いていないため、可塑剤吸収性が低く、フィッシュアイも多くなった。
Claims (3)
- 分散安定剤の存在下でビニル化合物を懸濁重合するビニル系重合体の製造方法であって;
前記分散安定剤が変性ポリビニルアルコール(A)、ポリビニルアルコール(B)及びポリビニルアルコール(C)を含有し、
変性ポリビニルアルコール(A)が、イタコン酸及びその誘導体、並びにメタクリル酸及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種に由来する二重結合を側鎖に0.05モル%以上0.5モル%未満有し、
変性ポリビニルアルコール(A)のけん化度が68モル%以上77モル%未満であり、粘度平均重合度が500以上1500未満であり、
ポリビニルアルコール(B)のけん化度が30モル%以上60モル%未満であり、粘度平均重合度が150以上600未満であり、
ポリビニルアルコール(C)のけん化度が77モル%以上90モル%未満であり、粘度平均重合度が1700以上3000未満であり、かつ
変性ポリビニルアルコール(A)、ポリビニルアルコール(B)及びポリビニルアルコール(C)の合計100質量部に対する、変性ポリビニルアルコール(A)の含有量が10~45質量部であり、ポリビニルアルコール(B)の含有量が1~45質量部であり、ポリビニルアルコール(C)の含有量が10~89質量部である製造方法。
但し、変性ポリビニルアルコール(A)が末端にメルカプト基を有する場合を除く。 - 前記分散安定剤が変性ポリビニルアルコール(A)100質量部に対して、さらに化合物(D)を0.001質量部以上5質量部未満含有し、
化合物(D)が、フェノール性水酸基を2つ以上有する化合物、又はその塩若しくはその酸化物である、請求項1に記載の製造方法。 - 変性ポリビニルアルコール(A)がイタコン酸に由来する二重結合を側鎖に有する、請求項1又は2に記載の製造方法。
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