JP3969758B2 - ポリオレフィン製不織布 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、ポリオレフィン製不織布に関し、さらに詳しくは従来のポリオレフィン製不織布に比べて表面ベタツキ感がなく、ヒートシール性にも優れたポリオレフィン製不織布に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
従来よりポリプロピレンから製造された不織布は、手術着、紙おむつ、生理用品などの医療・衛生材、包装材などの産業資材、油吸着材などの工業資材、ごみ袋の日用雑貨などの種々の用途に広範に利用されている。
【0003】
このようなポリプロピレン不織布は、種々の紡糸法により得られた繊維を、次いでこの繊維をシート状に融着あるいは接着することにより製造されるが、一般的には溶融紡糸法により、ポリプロピレンを溶融混練して紡糸口金から押出すことにより得られたフィラメント(繊維)を得て、次いでこれをシート状に形成することにより製造されている。
【0004】
ところでポリプロピレン不織布は、一般的にヒートシール性が不十分であり、その向上が望まれている。このようなポリプロピレンのヒートシール性を向上させる方法としては、従来よりポリプロピレンにポリエチレンあるいはプロピレン共重合体などを配合する方法が知られており、たとえば特公平6−62815号公報には、ヒートシール性に優れたポリプロピレン不織布として、結晶性ポリプロピレンと低密度ポリエチレンとのブレンド物からなる不織布が提案されている。このようなポリプロピレンに配合される低密度ポリエチレンあるいはプロピレン共重合体は、通常固体状チタン触媒成分を用いて製造されている。
【0005】
しかしながら上記のような公知の低密度ポリエチレンあるいはプロピレン共重合体は一般的に分子量分布(Mw/Mn)が広く、このためこれらを用いた不織布では、低分子量成分による不織布表面にベタツキを生じることがあった。
【0006】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に鑑みてなされたものであって、ヒートシール性に優れ、しかも表面ベタツキ感がないポリオレフィン製不織布を提供することを目的としている。
【0007】
【発明の概要】
本発明に係るポリオレフィン製不織布は、
[A]結晶性ポリプロピレンと、
[B-1]メタロセン系触媒を用いて製造され、密度が0.91〜0.97g/cm3 であり、
エチレン以外のオレフィンから導かれる単位の含有量が0または0.1〜10モル%であるポリエチレンとからなり、
このポリエチレン[B-1] を10〜95重量%の量で含むポリオレフィン組成物からなる繊維よりなり、
MIU(表面摩擦抵抗値)が0.3を越えることなしにヒートシール強度が0.7kg/5cm以上であることを特徴としている。
【0008】
また本発明に係るポリオレフィン製不織布は、
[A]固体状チタン触媒成分を用いて製造された結晶性ポリプロピレンと、
[B-2] メタロセン系触媒を用いて製造され、プロピレンから導かれる単位を80〜99モル%の量で含有し、230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が20〜60g/10分であり、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が1.3〜2.5である、プロピレンと他のα-オレフィンとの共重合体とからなり、
このプロピレン共重合体[B-2] を25〜95重量%の量で含むポリオレフィン組成物からなる繊維よりなり、
MIU(表面摩擦抵抗値)が0.3を越えることなしにヒートシール強度が0.7kg/5cm以上であることを特徴としている。
【0009】
上記のような本発明に係るポリオレフィン製不織布は、表面ベタツキ感がなく、かつヒートシール性にも優れているが、前記ポリオレフィン組成物を、溶融紡糸法により紡糸し、エンボスロールにより交絡させて得られることが好ましい。
【0010】
【発明の具体的説明】
以下本発明に係るポリオレフィン製不織布について具体的に説明する。
本発明に係るポリオレフィン製不織布は、
[A]結晶性ポリプロピレンと、
メタロセン系触媒を用いて製造された[B-1] 低密度ポリエチレンまたは[B-2] プロピレン共重合体とからなるポリオレフィン組成物から形成されている。
【0011】
まずこのポリオレフィン組成物を形成する各成分について説明する。
【0012】
[A]結晶性ポリプロピレン
本発明では、結晶性ポリプロピレンとして従来公知の実質的にホモポリプロピレンが広く用いられるが、結晶性であればプロピレンと少量たとえば10モル%以下好ましくは5モル%未満の量のプロピレン以外のオレフィンとから導かれる単位を含むプロピレンランダム共重合体であってもよい。
【0013】
プロピレンと共重合されていてもよい他のオレフィンとしては、具体的にプロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィンが挙げられ、たとえばエチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-ヘキサデセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセンなどが挙げられる。
【0014】
また他のオレフィンとして、アリルナフタレン、アリルノルボルナン、スチレン、ジメチルスチレン類、ビニルナフタレン類、アリルトルエン類、アリルベンゼン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘプタン、アリルトリアルキルシラン類などを用いることもできる。
【0015】
これらは2種以上組合せてプロピレンと共重合されていてもよい。
またポリプロピレンは、これらから導かれる単位を、予備重合体として含有していてもよい。
【0016】
本発明で用いられるポリプロピレン[A]は結晶性であるが、具体的に、X線回折法で測定される結晶化度が、通常90%以下好ましくは80%以下であることが望ましい。
【0017】
またこのポリプロピレンの融点(Tm)は、100〜165℃好ましくは120〜165℃であることが好ましい。
またこのポリプロピレンのメルトフローレートMFR(ASTM D1238;230℃、2.16kg荷重下)は、通常0.1〜400g/10分好ましくは1〜100g/10分であることが望ましい。
【0018】
本発明で用いられるポリプロピレンは、従来公知の固体状チタン触媒成分を用いて公知の方法により製造されたポリプロピレンが好適である。またメタロセン化合物触媒成分を用いて得られるポリプロピレンも使用することができる。
【0019】
[B-1] ポリエチレン
本発明で用いられるポリエチレン[B-1] は、後述するようなメタロセン系触媒を用いて製造されたポリエチレンであって、その密度は、0.91〜0.97g/cm3 であり、好ましくは0.91〜0.95g/cm3 、より好ましくは0.91〜0.93g/cm3 である。
【0020】
ポリエチレンの密度は、下記に示すメルトフローレート測定の際に得られるストランドを、120℃で1時間熱処理し、室温まで1時間かけて徐冷した後、密度勾配管で測定した。
【0021】
このポリエチレンのメルトフローレート(MFR)は、15〜100g/10分、好ましくは20〜60g/10分であることが望ましい。
ポリエチレンのメルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238−65Tに準拠して、190℃、2.16kg荷重下で測定される値である。
【0022】
また本発明で用いられるポリエチレンの分子量分布(Mw/Mn)は1.5〜3.5、好ましくは2.0〜3.0であることが望ましい。
この分子量分布は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィーGPCにより求めることができる。
【0023】
上記のような本発明で用いられるポリエチレンは、ホモポリエチレンであることが好ましいが、上記のような特性を有していれば、エチレンと少量の他のオレフィンとの共重合体であってもよい。
【0024】
エチレンと共重合されるオレフィンとしては、炭素数3〜20のα−オレフィンが挙げられ、たとえばプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。
【0025】
本発明で用いられるポリエチレンは、具体的にはこのような他のオレフィンから導かれる単位を、0.1〜10モル%含有していてもよい。
上記のようなポリエチレンはメタロセン系触媒を用いて製造されるが、メタロセン系触媒および製造方法については後述する。
【0026】
[B-2] プロピレン共重合体
本発明で用いられるプロピレン共重合体[B-2] は、プロピレンから導かれる単位(以下プロピレン成分)を1〜99モル%、好ましくは80〜95モル%の量で含むプロピレンと他のオレフィンとの共重合体であって、プロピレンと他のオレフィンとのランダム共重合体であってもよく、またブロック共重合体であってもよい。
【0027】
プロピレンと共重合されていてもよい他のオレフィンとしては、炭素数2〜20のプロピレン以外のα-オレフィン、たとえばエチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、
炭素数5〜20の環状オレフィン、たとえばシクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2-メチル1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、
さらにスチレン、ビニルシクロヘキサン、ジエンなどが挙げられる。
【0028】
本発明で用いられるプロピレン共重合体[B-2] は、このような他のオレフィンから導かれる単位を、1〜99モル%好ましくは5〜20モル%の量で含有しているが、このような他のオレフィンのうちではエチレンが好ましい。
【0029】
本発明で用いられるプロピレン共重合体[B-2] のメルトフローレート(MFR:ASTM D1238、230℃、2.16kg荷重下)は15〜100g/10分、好ましくは20〜60g/10分であることが望ましい。
【0030】
またこのプロピレン共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は1.3〜2.5、であることが望ましい。
この分子量分布は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィーGPCにより求めることができる。
【0031】
上記のような本発明で用いられるポリエチレン[B-1] 、プロピレン共重合体[B-2] は、下記のようなメタロセン系触媒を用いて製造される。
メタロセン系触媒
本発明で用いられるメタロセン系触媒は、
(a)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含有する周期律表第IV〜VIB族遷移金属化合物と、
(b)この遷移金属化合物(a)を活性化させうる化合物であって、かつ
(b-1)有機アルミニウム化合物、
(b-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および
(b-3)遷移金属化合物(a)と反応してイオン対を形成する化合物、から選ばれる少なくとも1種の化合物とから形成されるメタロセン系触媒が用いられる。
【0032】
本発明で用いられる遷移金属化合物(メタロセン化合物)(a)は、下記式で示される。
【0033】
【化1】
【0034】
式中、M1 は、周期律表第IV〜VIB族の遷移金属原子を示し、具体的には、ジルコニウム、チタニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデンまたはタングステンであり、好ましくはジルコニウム、チタニウムまたはハフニウムである。
【0035】
R1 、R2 、R3 およびR4 は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、リン含有基、水素原子またはハロゲン原子を示す。R1 、R2 、R3 およびR4 で示される基のうち、互いに隣接する基の一部が結合してそれらの基が結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。なお、R1 、R2 、R3 およびR4 が各々2ヶ所に表示されているが、それぞれ例えばR1 とR1 などは、同一の基でもよくまた相異なる基でもよい。Rで示される基のうち同一のサフィックスのものは、それらを継いで、環を形成する場合の好ましい組み合せを示している。
【0036】
炭素原子数1〜20の炭化水素基としてはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、ドデシル、アイコシルなどのアルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボルニル、アダマンチルなどのシクロアルキル基;ビニル、プロペニル、シクロヘキセニルなどのアルケニル基;ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピルなどのアリールアルキル基;フェニル、トリル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ビフェニル、ナフチル、メチルナフチル、アントラセニル、フェナントリルなどのアリール基などが挙げられる。
【0037】
これらの炭化水素基が結合して形成する環としてはベンゼン環、ナフタレン環、アセナフテン環、インデン環などの縮環基、ベンゼン環、ナフタレン環、アセナフテン環、インデン環などの縮環基上の水素原子がメチル、エチル、プロピル、ブチルなどのアルキル基で置換された基が挙げられる。
【0038】
ハロゲン化炭化水素基としては、前記炭化水素基にハロゲンが置換したハロゲン化炭化水素基が挙げられる。
ケイ素含有基としてはメチルシリル、フェニルシリルなどのモノ炭化水素置換シリル;ジメチルシリル、ジフェニルシリルなどのジ炭化水素置換シリル;トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリシクロヘキシルシリル、トリフェニルシリル、ジメチルフェニルシリル、メチルジフェニルシリル、トリトリルシリル、トリナフチルシリルなどのトリ炭化水素置換シリル;
トリメチルシリルエーテルなどの炭化水素置換シリルのシリルエーテル;
トリメチルシリルメチルなどのケイ素置換アルキル基;トリメチルフェニルなどのケイ素置換アリール基などが挙げられる。
【0039】
さらにケイ素含有基としては前記以外の−SiR3〔ただし、Rは、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数6〜10のアリール基〕で表される基が挙げられる。
【0040】
酸素含有基としてはヒドロキシ基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなどのアルコキシ基;フェノキシ、メチルフェノキシ、ジメチルフェノキシ、ナフトキシなどのアリーロキシ基;フェニルメトキシ、フェニルエトキシなどのアリールアルコキシ基などが挙げられる。
【0041】
さらに酸素含有基としては−OSiR3〔ただし、Rは、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数6〜10のアリール基〕で表される基が挙げられる。
【0042】
イオウ含有基としては前記含酸素化合物の酸素がイオウに置換した置換基などが挙げられる。
さらにイオウ含有基としては前記以外の−SR〔ただし、Rは、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数6〜10のアリール基〕で表される基が挙げられる。
【0043】
窒素含有基としてはアミノ基;メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジシクロヘキシルアミノなどのアルキルアミノ基;フェニルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノ、ジナフチルアミノ、メチルフェニルアミノなどのアリールアミノ基またはアルキルアリールアミノ基などが挙げられる。
【0044】
さらに窒素含有基としては前記以外の−NR2〔ただし、Rは、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数6〜10のアリール基〕で表される基が挙げられる。
【0045】
リン含有基としてはジメチルフォスフィノ、ジフェニルフォスフィノなどのフォスフィノ基などが挙げられる。
さらにリン含有基としては前記以外の−PR2〔ただし、Rは、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数6〜10のアリール基〕で表される基が挙げられる。
【0046】
ハロゲンとしてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられる。
これらのうち炭化水素基であることが好ましく、特にメチル、エチル、プロピル、ブチルの炭素数1〜4の炭化水素基、炭化水素基が結合して形成されたベンゼン環、炭化水素基が結合して形成されたベンゼン環上の水素原子がメチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチルなどのアルキル基で置換された基であることが好ましい。
【0047】
X1 およびX2 は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、ケイ素含有基、水素原子またはハロゲン原子を示す。
【0048】
炭化水素基としては、炭素原子数1〜20の炭化水素基が好ましく、具体的には、R1 、R2 、R3 およびR4 と同様の基を挙げることができる。
ハロゲン化炭化水素基としては、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基が好ましく、具体的には、R1 、R2 、R3 およびR4 と同様の基を挙げることができる。
【0049】
酸素含有基およびハロゲン原子としては、R1 、R2 、R3 およびR4 と同様の基または原子が例示できる。
イオウ含有基としては、R1 、R2 、R3 およびR4 と同様の基、ならびにメチルスルフォネート、トリフルオロメタンスルフォネート、フェニルスルフォネート、ベンジルスルフォネート、p-トルエンスルフォネート、トリメチルベンゼンスルフォネート、トリイソブチルベンゼンスルフォネート、p-クロルベンゼンスルフォネート、ペンタフルオロベンゼンスルフォネートなどのスルフォネート基;メチルスルフィネート、フェニルスルフィネート、ベンゼンスルフィネート、p-トルエンスルフィネート、トリメチルベンゼンスルフィネート、ペンタフルオロベンゼンスルフィネートなどのスルフィネート基が例示できる。
【0050】
ケイ素含有基としては、前記と同様のケイ素置換アルキル基、ケイ素置換アリール基が挙げられる。
これらのうち、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基またはスルフォネート基であることが好ましい。
【0051】
Y1 は、炭化水素基、2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO2−、−Ge−、−Sn−、−NR5 −、−P(R5 )−、−P(O)(R5 )−、−BR5 −または−AlR5 −〔ただし、R5 は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、アルコキシ基である〕を示す。
【0052】
炭化水素基としては、炭素数1〜20の2価の炭化水素基が好ましく、具体的には、メチレン、ジメチルメチレン、1,2-エチレン、ジメチル-1,2- エチレン、1,3-トリメチレン、1,4-テトラメチレン、1,2-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキシレンなどのアルキレン基、ジフェニルメチレン、ジフェニル-1,2- エチレンなどのアリールアルキレン基などが挙げられる。
【0053】
ハロゲン化炭化水素基としては、炭素数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基が好ましく、具体的には、クロロメチレンなどの上記炭素数1〜20の2価の炭化水素基をハロゲン化した基などが挙げられる。
【0054】
2価のケイ素含有基としては、シリレン、メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジ(n-プロピル)シリレン、ジ(i-プロピル)シリレン、ジ(シクロヘキシル)シリレン、メチルフェニルシリレン、ジフェニルシリレン、ジ(p-トリル)シリレン、ジ(p-クロロフェニル)シリレンなどのアルキルシリレン基;アルキルアリールシリレン基;アリールシリレン基;テトラメチル-1,2-ジシリル、テトラフェニル-1,2- ジシリルなどのアルキルジシリル、アルキルアリールジシリル基;アリールジシリル基などが挙げられる。
【0055】
2価のゲルマニウム含有基としては、上記2価のケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムに置換した基などが挙げられる。
さらに2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基としては、下記[化16]で表される基のうち、ケイ素、ゲルマニウム、スズのうちいずれか1つを含む基が挙げられる。
【0056】
これらの中では、ジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基、メチルフェニルシリレン基などの置換シリレン基が特に好ましい。
以下に、前記式(I)で表される遷移金属化合物について具体的な化合物を例示する。
【0057】
rac-ジメチルシリレン-ビス(2,3,5-トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2,4-トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-tert-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
イソプロピリデン-(4-メチルシクロペンタジエニル)(3-メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
イソプロピリデン-(4-tert-ブチルシクロペンタジエニル)(3-メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
イソプロピリデン-(4-tert-ブチルシクロペンタジエニル)(3-tert-ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレン-(4-メチルシクロペンタジエニル)(3-メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレン-(4-tert-ブチルシクロペンタジエニル)(3-メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレン-(4-tert-ブチルシクロペンタジエニル)(3-tert-ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレン-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
イソプロピリデン-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドなど。
【0058】
また上記のような化合物中のジルコニウムを、チタニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデンまたはタングステンに代えた化合物を挙げることもできる。
【0059】
本発明では、前記式(I)で表される第IVB族遷移金属化合物のうち、下記一般式(II)、(III)または(IV)で表される第IVB族遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種の第IVB族遷移金属化合物を用いることが望ましい。
【0060】
【化2】
【0061】
式中、M2 は周期律表第IVB族の遷移金属原子を示し、具体的には、チタニウム、ジルコニウムまたはハフニウムであり、好ましくはジルコニウムである。
R11は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜6の炭化水素基を示し、具体的には、
メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシルなどのアルキル基、ビニル、プロペニルなどのアルケニル基などが挙げられる。
【0062】
これらのうちインデニル基に結合した炭素が1級のアルキル基が好ましく、さらに炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、特にメチル基およびエチル基が好ましい。
【0063】
R12、R14、R15およびR16は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子またはR11と同様の炭素数1〜6の炭化水素基を示す。 R13は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素数6〜16のアリール基を示し、具体的には、
フェニル、α-ナフチル、β-ナフチル、アントラセニル、フェナントリル、ピレニル、アセナフチル、フェナレニル、アセアントリレニル、テトラヒドロナフチル、インダニル、ビフェニリルなどである。これらのうちフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントリルであることが好ましい。
【0064】
これらのアリール基は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子;
メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、ノニル、ドデシル、アイコシル、ノルボルニル、アダマンチルなどのアルキル基;ビニル、プロペニル、シクロヘキセニルなどのアルケニル基;ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピルなどのアリールアルキル基;フェニル、トリル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ビフェニル、α−またはβ−ナフチル、メチルナフチル、アントラセニル、フェナントリル、ベンジルフェニル、ピレニル、アセナフチル、フェナレニル、アセアントリレニル、テトラヒドロナフチル、インダニル、ビフェニリルなどのアリール基などの炭素数1〜20の炭化水素基;
トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリフェニルシリルなどの有機シリル基で置換されていてもよい。
【0065】
X3 およびX4 は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基またはイオウ含有基を示し、具体的には、
ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基としては前記と同様の原子および基を例示することができる。また、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基としては、前記炭素数1〜20の炭化水素基にハロゲン原子が置換した基を例示することができる。
【0066】
酸素含有基としては、ヒドロオキシ基、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなどのアルコキシ基、フェノキシ、メチルフェノキシ、ジメチルフェノキシ、ナフトキシなどのアリロキシ基、フェニルメトキシ、フェニルエトキシなどのアリールアルコキシ基などが挙げられる。
【0067】
イオウ含有基としては、前記含酸素化合物の酸素がイオウに置換した置換基、およびメチルスルホネート、トリフルオロメタンスルフォネート、フェニルスルフォネート、ベンジルスルフォネート、p-トルエンスルフォネート、トリメチルベンゼンスルフォネート、トリイソブチルベンゼンスルフォネート、p-クロルベンゼンスルフォネート、ペンタフルオロベンゼンスルフォネートなどのスルフォネート基、メチルスルフィネート、フェニルスルフィネート、ベンゼンスルフィネート、p-トルエンスルフィネート、トリメチルベンゼンスルフィネート、ペンタフルオロベンゼンスルフィネートなどのスルフィネート基が挙げられる。
【0068】
これらのうち、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。
Y2 は、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO2 −、−NR17−、−P(R17)−、−P(O)(R17)−、−BR17−または−AlR17−〔ただし、R17は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基〕を示し、具体的には、
メチレン、ジメチルメチレン、1,2-エチレン、ジメチル-1,2- エチレン、1,3-トリメチレン、1,4-テトラメチレン、1,2-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキシレンなどのアルキレン基、ジフェニルメチレン、ジフェニル-1,2- エチレンなどのアリールアルキレン基などの炭素数1〜20の2価の炭化水素基;
クロロメチレンなどの上記炭素数1〜20の2価の炭化水素基をハロゲン化したハロゲン化炭化水素基;
メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジ(n-プロピル)シリレン、ジ(i-プロピル)シリレン、ジ(シクロヘキシル)シリレン、メチルフェニルシリレン、ジフェニルシリレン、ジ(p-トリル)シリレン、ジ(p-クロロフェニル)シリレンなどのアルキルシリレン、アルキルアリールシリレン、アリールシリレン基、テトラメチル-1,2-ジシリル、テトラフェニル-1,2- ジシリルなどのアルキルジシリル、アルキルアリールジシリル、アリールジシリル基などの2価のケイ素含有基;
上記2価のケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムに置換した2価のゲルマニウム含有基などである。
【0069】
また、R17は、前記と同様のハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基を示す。
これらのうちY2 は、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基であることが好ましく、2価のケイ素含有基であることがより好ましく、アルキルシリレン、アルキルアリールシリレンまたはアリールシリレンであることがより好ましい。
【0070】
以下に上記一般式(II)で表される遷移金属化合物の具体的な例を示す。
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(α-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(1-アントラセニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(9-フェナントリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(p-フルオロフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(ペンタフルオロフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(p-クロロフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(o,p-ジクロロフェニル) フェニル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(p-ブロモフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(p-トリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(o,o'-ジメチルフェニル)-1-インデニル) ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(p-エチルフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(p-ベンジルフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(p-ビフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-(p-トリメチルシリレンフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-フェニル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジエチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4- フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジシクロヘキシルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4- フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-メチルフェニルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4- フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジフェニルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4- フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジ(p-トリル)シリレン-ビス{1-(2-メチル-4- フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジ(p-クロロフェニル)シリレン-ビス{1-(2-メチル-4- フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-メチレン-ビス{1-(2-メチル-4- フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-エチレン-ビス{1-(2-メチル-4- フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルゲルミレン-ビス{1-(2-メチル-4- フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルスタニレン-ビス{1-(2-メチル-4- フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4- フェニルインデニル)}ジルコニウムジメチル、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4- フェニルインデニル)}ジルコニウムメチルクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4- フェニルインデニル)}ジルコニウムクロリドSO2Me、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(2-メチル-1-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(o-メチルフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(2,3-ジメチルフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(o-クロロフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(2,3-ジクロロフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(4-ビフェニリル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(4-トリメチルシリルフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-n-プロピル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-n-プロピル-4-(2-メチル-1-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-n-プロピル-4-(5-アセナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-i-プロピル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-i-プロピル-4-(α-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-i-プロピル-4-(8-メチル-9-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-s-ブチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-s-ブチル-4-(α-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-s-ブチル-4-(2-メチル-1-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-n-ペンチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-n-ペンチル-4-(α-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-n-ブチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-n-ブチル-4-(α-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-n-ブチル-4-(2-メチル-1-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-i-ブチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-i-ブチル-4-(α-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-i-ブチル-4-(2-メチル-1-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-ネオペンチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-ネオペンチル-4-(α-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-n-ヘキシル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-n-ヘキシル-4-(α-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-メチルフェニルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-メチルフェニルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(α-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジフェニルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジフェニルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(α-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジフェニルシリレン-ビス{1-(2-エチル-4-(4-ビフェリニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-メチレン-ビス{1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-メチレン-ビス{1-(2-エチル-4-(α-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-エチレン-ビス{1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-エチレン-ビス{1-(2-エチル-4-(α-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-エチレン-ビス{1-(2-n-プロピル-4-(α-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルゲルミル-ビス{1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルゲルミル-ビス{1-(2-エチル-4-(α-ナフチル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルゲルミル-ビス{1-(2-n-プロピル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリドなど。
【0071】
また上記のような化合物中のジルコニウムをチタニウムまたはハフニウムに代えた化合物を挙げることもできる。
本発明では、通常前記一般式(II)で表される第IVB族遷移金属化合物のラセミ体が触媒成分として用いられるが、R型またはS型を用いることもできる。
【0072】
このような第IVB族遷移金属化合物は、Journal of Organometallic Chem.288(1985)、第63〜67頁、ヨーロッパ特許出願公開第0,320,762 号明細書および実施例に準じて製造することができる。
【0073】
次に、一般式(III)で示される第IVB族遷移金属化合物について説明する。
【0074】
【化3】
【0075】
式中、M2 は周期律表第IVB族の遷移金属原子を示し、具体的には、チタニウム、ジルコニウムまたはハフニウムであり、好ましくはジルコニウムである。
R21およびR22は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基を示し、具体的には、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基としては、前記一般式(II)に例示したものと同様である。
【0076】
窒素含有基としては、アミノ基、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジシクロヘキシルアミノなどのアルキルアミノ基、フェニルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノ、ジナフチルアミノ、メチルフェニルアミノなどのアリールアミノ基またはアルキルアリールアミノ基などが挙げられ、
リン含有基としては、ジメチルフォスフィノ、ジフェニルフォスフィノなどが挙げられる。
【0077】
これらのうちR21は、炭化水素基であることが好ましく、特にメチル、エチル、プロピルの炭素数1〜3の炭化水素基であることが好ましい。
R22は、水素原子、炭化水素基であることが好ましく、特に水素原子あるいは、メチル、エチル、プロピルの炭素数1〜3の炭化水素基であることが好ましい。
【0078】
R23およびR24は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜20のアルキル基を示し、具体的には前記一般式(II)に例示したものと同様である。
これらのうちR23は、2級または3級アルキル基であることが好ましい。
【0079】
R24は、2重結合、3重結合を含んでいてもよい。
X3 およびX4 は、互いに同一でも異なっていてもよく、前記一般式(II)の定義と同様である。
【0080】
Y2 は、前記一般式(II)の定義と同様である。
以下に上記一般式(III)で表される第IVB族遷移金属化合物の具体的な例を示す。
【0081】
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-エチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-n-プロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-i-プロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-t-ブチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-シクロヘキシルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-メチルシクロヘキシルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-フェニルエチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-フェニルジクロルメチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-クロロメチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-トリメチルシリルメチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジエチルシリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-i-プロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジ(i-プロピル)シリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-i-プロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-メチルフェニルシリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-i-プロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-メチルフェニルシリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-t-ブチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジフェニルシリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-t-ブチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジフェニルシリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-エチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジ(p-トリル)シリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-i-プロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジ(p-クロロフェニル)シリレン-ビス{1-(2,7-ジメチル-4-i-プロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,3,7-トリメチル-4-エチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,3,7-トリメチル-4-i-プロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,3,7-トリメチル-4-t-ブチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,3,7-トリメチル-4-シクロヘキシルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,3,7-トリメチル-4-トリメチルシリルメチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,3,7-トリメチル-4-トリメチルシロキシメチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,3,7-トリメチル-4-フェニルエチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,3,7-トリメチル-4-フェニルジクロルメチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2,3,7-トリメチル-4-クロルメチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジエチルシリレン-ビス{1-(2,3,7-トリメチル-4-i-プロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジ(シクロヘキシル)シリレン-ビス{1-(2,3,7-トリメチル-4-i-プロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-メチルフェニルシリレン-ビス{1-(2,3,7-トリメチル-4-i-プロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジフェニルシリレン-ビス{1-(2,3,7-トリメチル-4-エチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジ(p-トリル)シリレン-ビス{1-(2,3,7-トリメチル-4-i-プロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-i- プロピル-7- メチルインデニル)}ジルコニウムメチルクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-i- プロピル-7- メチルインデニル)}ジルコニウム-ビス(メタンスルホナト)、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-i- プロピル-7- メチルインデニル)}ジルコニウム-ビス(p-フェニルスルフィナト)、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-3- メチル-4-i- プロピル-7-メチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4,6-ジ-i-プロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-i- プロピル-7- メチルインデニル)}チタニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-i- プロピル-7- メチルインデニル)}ハフニウムジクロリドなど。
【0082】
これらの中で、4位にi-プロピル,sec-ブチル,tert-ブチル基などの分岐アルキル基を有するものが、特に好ましい。
【0083】
本発明では、通常前記一般式(III)で表される第IVB族遷移金属化合物のラセミ体がオレフィン重合用触媒成分として用いられるが、R型またはS型を用いることもできる。
【0084】
上記のような一般式(III)で表される第IVB族遷移金属化合物は、インデン誘導体から既知の方法たとえば特開平4−268307号公報に記載されている方法により合成することができる。
【0085】
次に、一般式(IV)で表される第IVB族遷移金属化合物について説明する。一般式(IV)で表される第IVB族遷移金属化合物は、EP−549900号およびカナダ−2084017号に記載された化合物である。
【0086】
【化4】
【0087】
式中、M2 は周期律表第IVB族の遷移金属原子を示し、具体的には、チタニウム、ジルコニウムまたはハフニウムであり、好ましくはジルコニウムである。
R31は、互いに同一でも異なっていてもよく、
水素原子、
ハロゲン原子、好ましくは、塩素原子または臭素原子、
炭素数1〜10、好ましくは1〜4のアルキル基、
炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基、
炭素数6〜10、好ましくは6〜8のアリール基、
−NR2、−SR、−OSiR3、−SiR3または−PR2基〔ただし、Rは、ハロゲン原子、好ましくは塩素原子、炭素数1〜10、好ましくは1〜3のアルキル基、または炭素数6〜10、好ましくは6〜8のアリール基〕を示す。
【0088】
R32〜R38は、互いに同一でも異なっていてもよく、前記R21と同様の原子または基を示し、これらのR32〜R38で示される基のうち隣接する少なくとも2個の基は、それらの結合する原子とともに、芳香族環または脂肪族環を形成していてもよい。
【0089】
X5 およびX6 は、互いに同一でも異なっていてもよく、
水素原子、
炭素数1〜10、好ましくは1〜3のアルキル基、
炭素数1〜10、好ましくは1〜3のアルコキシ基、
炭素数6〜10、好ましくは6〜8のアリール基、
炭素数6〜10、好ましくは6〜8のアリールオキシ基、
炭素数2〜10、好ましくは2〜4のアルケニル基、
炭素数7〜40、好ましくは7〜10のアリールアルキル基、
炭素数7〜40、好ましくは7〜12のアルキルアリール基、
炭素数8〜40、好ましくは8〜12のアリールアルケニル基、
OH基またはハロゲン原子を示す。
Zは、
【0090】
【化5】
【0091】
−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO2−、−Ge−、−Sn−、−NR39−、−P(R39)−、−P(O)(R39)−、−BR39−または−AlR39−である。
【0092】
ただし、R39およびR40は、互いに同一でも異なっていてもよく、
水素原子、
ハロゲン原子、
炭素数1〜10、好ましくは1〜4のアルキル基、特にメチル基、
炭素数1〜10のフルオロアルキル基、好ましくはCF3基、
炭素数6〜10、好ましくは6〜8のアリール基、
炭素数6〜10のフルオロアリール基、好ましくはペンタフルオロフェニル基、
炭素数1〜10、好ましくは1〜4のアルコキシ基、特にメトキシ基、 炭素数2〜10、好ましくは2〜4のアルケニル基、
炭素数7〜40、好ましくは7〜10のアリールアルキル基、
炭素数8〜40、好ましくは8〜12のアリールアルケニル基、
炭素数7〜40、7〜12のアルキルアリール基である。
【0093】
またR39とR40とは、それぞれそれらの結合する原子とともに環を形成してもよい。
M3 は、ケイ素、ゲルマニウムまたはスズを示し、好ましくはケイ素またはゲルマニウムである。
【0094】
ここで、上述のアルキル基は直鎖状のまたは枝分かれしたアルキル基であり、そしてハロゲン(ハロゲン化)はフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であり、特にフッ素原子または塩素原子である。
【0095】
前記一般式(IV)で表される化合物のなかでは、
M2 は、ジルコニウムまたはハフニウムであり、
R31は、互いに同じであり、炭素数1〜4のアルキル基であり、
R32〜R38は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、
X5 およびX6 は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜3のアルキル基またはハロゲン原子であり、
Zは、
【0096】
【化6】
【0097】
(式中、M3 はケイ素であり、R39およびR40は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基である)である化合物が好ましく、置換基R32およびR38は、水素原子であり、R33〜R37は、炭素数1〜4のアルキル基または水素原子である化合物がより好ましい。
【0098】
さらに、前記一般式(IV)で表される化合物のなかでは、
M2 は、ジルコニウムであり、
R31は、互いに同一で炭素数1〜4のアルキル基であり、
R32およびR38は、水素原子であり、
R33〜R37は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜4のアルキル基または水素原子であり、
X5 およびX6 は、いずれも塩素原子であり、
Zは、
【0099】
【化7】
【0100】
(式中、M3 は、ケイ素であり、R39およびR40は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基である)である化合物が好ましい。
【0101】
特に、前記一般式(IV)で表される化合物のなかでは、
M2 は、ジルコニウムであり、
R31は、メチル基であり、
R32〜R38は、水素原子であり、
X5 およびX6 は、塩素原子であり、
Zは、
【0102】
【化8】
【0103】
(式中、M3 は、ケイ素であり、R39およびR40は、互いに同一でも異なっていてもよく、メチル基またはフェニル基ある)である化合物が好ましい。
【0104】
以下に上記一般式(IV)で表される遷移金属化合物の具体的な例を示す。
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4,5-ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-α-アセナフトインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-メチルフェニルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4,5-ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジフェニルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4,5-ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジフェニルシリレン-ビス{1-(2-メチル-α-アセナフトインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-メチルフェニルシリレン-ビス{1-(2-メチル-α-アセナフトインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-1,2-エタンジイル-ビス{1-(2-メチル-4,5-ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(4,5-ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリドなど。
【0105】
また上記のような化合物中のジルコニウムをチタニウムまたはハフニウムに代えた化合物を挙げることもできる。
本発明では、上記したような第IVB族遷移金属化合物は、2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0106】
本発明では、ポリエチレン[B-1] を製造する際には、上記に例示した架橋型メタロセン化合物以外にも、非架橋型メタロセン化合物を用いることもでき、たとえば
ビス(1,3-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(n‐プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドなどを用いることもできる。
【0107】
本発明では、上記のような遷移金属化合物(a)を活性化させうる化合物(b)(以下成分(b)ともいう)として、
(b-1) 有機アルミニウム化合物、
(b-2) 有機アルミニウムオキシ化合物、および
(b-3) 前記遷移金属化合物(a)と反応してイオン対を形成する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物が用いられる。
【0108】
本発明で用いられる有機アルミニウム化合物(b-1) は、たとえば下記一般式[IV]で示される。
R1 nAlX3-n … [IV]
(式[IV]中、R1 は炭素数1〜12の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子または水素原子であり、nは1〜3である。)
上記一般式[IV]において、R1 は炭素数1〜12の炭化水素基例えばアルキル基、シクロアルキル基またはアリ−ル基であるが、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基などである。
【0109】
このような有機アルミニウム化合物(b-1) としては、具体的には、
トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリ2-エチルヘキシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、
イソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム、
ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミドなどのジアルキルアルミニウムハライド、
メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、イソプロピルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド、
メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライド、
ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライドなどを挙げることができる。
【0110】
また有機アルミニウム化合物(b-1) として、下記一般式[V]で表される化合物を用いることもできる。
R1 nAlY3-n … [V]
(式[V]中、R1 は上記と同様であり、Yは−OR2基、−OSiR3 3基、−OAlR4 2基、−NR5 2基、−SiR6 3基または−N(R7)AlR8 2基であり、 nは1〜2であり、R2、R3、R4およびR8はメチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基などであり、R5は水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、フェニル基、トリメチルシリル基などであり、R6 およびR7 はメチル基、エチル基などである。)
具体的には、下記のような化合物が挙げられる。
(1)R1 nAl(OR2)3-n で表される化合物、たとえば
ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシドなど、
(2)R1 nAl(OSiR3 3)3-n で表される化合物、たとえば
Et2Al(OSi Me3)、(iso-Bu)2Al(OSiMe3)、(iso-Bu)2 Al(OSiEt3)など、
(3)R1 nAl(OAlR4 2)3-n で表される化合物、たとえば、
Et2AlOAlEt2 、(iso-Bu)2AlOAl(iso-Bu)2 など、
(4) R1 nAl(NR5 2)3-n で表される化合物、たとえば、
Me2AlNEt2 、Et2AlNHMe 、Me2AlNHEt 、Et2AlN(SiMe3)2、(iso-Bu)2AlN(SiMe3)2 など、
(5)R1 nAl(SiR6 3)3-n で表される化合物、たとえば、
(iso-Bu)2AlSi Me3 など、
(6)R1 nAl(N(R7)AlR8 2)3-n で表される化合物、たとえば、
Et2AlN(Me)AlEt2 、
(iso-Bu)2AlN(Et)Al(iso-Bu)2 など。
【0111】
これらのうちでは、一般式R1 3Al、R1 nAl(OR2)3-n 、R1 nAl(OAlR4 2)3-n で表わされる化合物が好ましく、特にRがイソアルキル基であり、n=2である化合物が好ましい。
【0112】
これらを組合わせて用いることもできる。
本発明で用いられる(b-2) 有機アルミニウムオキシ化合物は、従来公知のベンゼン可溶性のアルミノキサンであってもよく、また特開平2−276807号公報で開示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
【0113】
上記のようなアルミノキサンは、例えば下記のような方法によって製造することができる。
(1)吸着水を含有する化合物あるいは結晶水を含有する塩類、例えば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などの炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して反応させる方法。
(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水、氷または水蒸気を作用させる方法。
(3)デカン、ベンゼン、トルエン等の媒体中でトリアルキルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシド等の有機スズ酸化物を反応させる方法。
【0114】
なおこのアルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有してもよい。また回収された上記のアルミノキサンの溶液から溶媒あるいは未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、溶媒に再溶解してもよい。
【0115】
アルミノキサンを製造する際に用いられる有機アルミニウム化合物としては、具体的には、上記に有機アルミニウム化合物(b-1) として示したものと同様のものが挙げられる。
【0116】
これらのうち、トリアルキルアルミニウムおよびトリシクロアルキルアルミニウムが特に好ましい。
有機アルミニウム化合物(b-2) は、組合せて用いることもできる。
【0117】
アルミノキサンの製造の際に用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメンなどの芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ガソリン、灯油、軽油などの石油留分あるいは上記芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素のハロゲン化物とりわけ、塩素化物、臭素化物などの炭化水素溶媒が挙げられる。その他、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類を用いることもできる。これらの溶媒のうち特に芳香族炭化水素が好ましい。
【0118】
また本発明で用いられるベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物は、60℃のベンゼンに溶解するAl成分がAl原子換算で10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であり、ベンゼンに対して不溶性あるいは難溶性である。
【0119】
このような有機アルミニウムオキシ化合物のベンゼンに対する溶解性は、100ミリグラム原子のAlに相当する該有機アルミニウムオキシ化合物を100mlのベンゼンに懸濁した後、攪拌下60℃で6時間混合した後、ジャケット付G−5ガラス製フィルターを用い、60℃で熱時濾過を行ない、フィルター上に分離された固体部を60℃のベンゼン50mlを用いて4回洗浄した後の全濾液中に存在するAl原子の存在量(xミリモル)を測定することにより求められる(x%)。
【0120】
本発明で用いられる前記遷移金属化合物(a)と反応してイオン対を形成する化合物(b-3) (以下成分(b-3) ともいう)としては、特開平1−501950号公報、特開平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報、US−547718号公報などに記載されたルイス酸、イオン性化合物およびカルボラン化合物を挙げることができる。
【0121】
ルイス酸としては、トリフェニルボロン、トリス(4-フルオロフェニル)ボロン、トリス(p-トリル)ボロン、トリス(o-トリル)ボロン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、MgCl2、Al2O3、SiO2-Al2O3 などを挙げることができる。
【0122】
イオン性化合物としては、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリn-ブチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを挙げることができる。
【0123】
カルボラン化合物としては、ドデカボラン、1-カルバウンデカボラン、ビスn-ブチルアンモニウム(1-カルベドデカ)ボレート、トリn-ブチルアンモニウム(7,8-ジカルバウンデカ)ボレート、トリn-ブチルアンモニウム(トリデカハイドライド-7-カルバウンデカ)ボレートなどを挙げることができる。
【0124】
これらは、2種以上組合わせて用いることもできる。
本発明では、遷移金属化合物(a)を活性化させうる化合物(b)として、上記のような成分(b-1) 、(b-2) または(b-3) を組合わせて用いることもできる。
【0125】
本発明で用いられるメタロセン系触媒は、上記のような遷移金属化合物(a)および成分(b)を不活性炭化水素溶媒中またはオレフィン溶媒中で混合することにより調製することができる。
【0126】
メタロセン系触媒の調製に用いられる不活性炭化水素溶媒としては、たとえばプロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、シクロオクタンなどの脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素、ガソリン、灯油、軽油などの石油留分あるいはこれらの混合物などを用いることができる。
【0127】
これら各成分から触媒を調製するに際して、遷移金属化合物(a)は、約10-8〜10-1モル/リットル(重合容積)好ましくは10-7〜5×10-2モル/リットルの濃度で用いることが望ましい。
【0128】
成分(b)として(b-1) および/または(b-2) が用いられる場合には、遷移金属化合物(a)の遷移金属に対する成分(b)中のアルミニウムの原子比(Al/遷移金属)で、通常1〜10000好ましくは10〜5000の量で用いられる。この有機アルミニウム化合物(b-1) と有機アルミニウムオキシ化合物(b-2) とが併用されるときには、(b-1) 中のアルミニウム原子(Al-1)と(b-2) 中のアルミニウム原子(Al-2)の原子比(Al-1/Al-2)が0.02〜3さらには0.05〜1.5となる量で用いられることが望ましい。
【0129】
また成分(b)として(b-3) が用いられる場合には、遷移金属化合物(a)と成分(b-3) とのモル比((a)/(b-3) )は、通常0.01〜10好ましくは0.1〜5の量で用いられる。
【0130】
上記各触媒成分は、重合器中で混合してもよいし、予め混合したものを重合器に添加してもよい。
予めこれら成分を混合する際には、通常−100〜200℃好ましくは−70〜120℃の温度で、1分〜50時間好ましくは5分〜25時間接触させることができる。また、混合接触時には混合温度を変化させてもよい。
【0131】
本発明で用いられるメタロセン系触媒は、上記成分(a)および(b)の少なくともいずれかが顆粒状ないしは微粒子状固体(担体)に担持された固体状触媒であってもよい。
【0132】
この担体は、無機担体であっても有機担体であってもよい。無機担体としては、たとえばSiO2、Al2O3 などの多孔質酸化物が好ましく用いられる。また有機担体としては、たとえばエチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンなどの炭素数2〜14のα-オレフィンを主成分として生成される(共)重合体あるいはビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される重合体あるいは共重合体などを用いることができる。
【0133】
また本発明で用いられるメタロセン系触媒は、上記の各触媒成分にオレフィンを予備重合させて予備重合触媒を形成してから用いることもできる。
予備重合に用いられるオレフィンとしては、プロピレン、エチレン、1-ブテンなどのオレフィンが用いられるが、これらと他のオレフィンとを組合わせて用いることもできる。
【0134】
なお本発明では、メタロセン系触媒を形成するに際して、上記のような各成分以外にもオレフィン重合に有用な他の成分、たとえば触媒成分としての水などを用いることができる。
【0135】
本発明で用いられるポリエチレン[B-1] は、上記のようなメタロセン系触媒の存在下にエチレンを重合させるかあるいはエチレンと前述したような他のオレフィンとを共重合させることによって得られる。
【0136】
またプロピレン共重合体[B-2] は、上記のようなメタロセン系触媒の存在下にプロピレンおよび必要に応じて前述したような他のオレフィンを、最終的に前記の組成比になるように(共)重合させることによって得られる。
【0137】
重合は懸濁重合、溶液重合などの液相重合法あるいは気相重合法いずれにおいても実施できる。
液相重合法では上述した触媒調製の際に用いた不活性炭化水素溶媒と同じものを用いることができ、プロピレンなどの重合モノマー自身を溶媒として用いることもできる。
【0138】
重合を懸濁重合法により実施する際には、−50〜100℃好ましくは0〜90℃の温度で、また溶液重合法により実施する際には、0〜250℃好ましくは20〜200℃の温度で行なうことが望ましい。重合を気相重合法により実施する際には、0〜120℃好ましくは20〜100℃の温度で、常圧〜100kg/cm2 好ましくは常圧〜50kg/cm2 の圧力下で行なうことが望ましい。
【0139】
重合は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
得られるポリマーの分子量は、重合系に水素を存在させるか、あるいは重合温度、重合圧力を変化させることによって調節することができる。
【0140】
なお上記のように製造されたプロピレン共重合体は、有機過酸化物の存在下に混練して、プロピレン共重合体のMFRを所望の値にすることもできる。プロピレン共重合体と有機過酸化物との混練は、上記のような任意成分の共存下に混練を行なてもよく、プロピレン共重合体を有機過酸化物と混練した後、任意成分と混合してもよい。
【0141】
このような有機過酸化物としては、たとえば
メチルエチルケトンパ―オキシド、シクロヘキサノンパ―オキシドなどのケトンパ―オキシド類、1,1-ビス(t-ブチルパ―オキシ)シクロヘキサン2,2-ビス(t-ブチルパ―オキシ)オクタンなどのパ―オキシケタ―ル類、
t-ブチルヒドロパ―オキシド、クメンヒドロパ―オキシド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロキシパ―オキシド、
1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロパ―オキシドなどのヒドロパ―オキシド類、
ジ-t-ブチルパ―オキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパ―オキシ)ヘキサン(商品名:パーヘキシン25B)、
2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3などのジアルキルパ―オキシド、
ラウロイルパ―オキシド、ベンゾイルパ―オキシドなどのジアシルパ―オキシド類、
t-ブチルパ―オキシアセテ―ト、t-ブチルパ―オキシベンゾエ―ト、2,5-ジメチル-2,5- ジ(ベンゾイルパ―オキシ)ヘキサンなどのパーオキシエステル類などを挙げることができる。
【0142】
このような有機過酸化物は、プロピレン共重合体100重量部に対して、通常0.01〜1重量部、好ましくは0.05〜0.5重量部の量で用いることができる。
【0143】
ポリオレフィン製不織布
本発明に係るポリオレフィン製不織布は、上記のような
[A]結晶性ポリプロピレンと、
[B-1] ポリエチレンまたは[B-2] プロピレン共重合体とからなるポリオレフィン組成物から形成される。
【0144】
このポリオレフィン組成物が、結晶性ポリプロピレン[A]と、ポリエチレン[B-1] とから形成される場合には、ポリエチレン[B-1] を、10〜95重量%、好ましくは10〜75重量%の量で含有している。
【0145】
またこのポリオレフィン組成物が、結晶性ポリプロピレン[A]と、プロピレン共重合体[B-2] とから形成される場合には、プロピレン共重合体[B-2] を、25〜95重量%、好ましくは25〜75重量%の量で含有している。
【0146】
またこの組成物は、これら各成分とともに発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて他の成分を含有していてもよい。
【0147】
このような他の成分としては、たとえば従来公知の耐熱安定剤、耐候安定剤、各種安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックスなどが挙げられる。
【0148】
たとえば、任意成分として配合される安定剤としては、
2,6‐ジ‐t‐ブチル‐4‐メチルフェノール(BHT)などの老化防止剤、
テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4- ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルエステル、2,2'-オキザミドビス[エチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル) プロピオネート、Irganox 1010(ヒンダードフェノール系酸化防止剤:商品名)などのフェノール系酸化防止剤、
ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、1,2-ヒドロキシステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩、
グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレートなどの多価アルコール脂肪酸エステルなどを挙げることができる。これらを組み合わせて用いることもできる。
【0149】
またシリカ、ケイ藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、軽石粉、軽石バルーン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドワマイト、硫酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、アスベスト、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ペントナイト、グラファイト、アルミニウム粉、硫化モリブデンなどの充填剤を含有していてもよい。
【0150】
これら他の任意成分は、公知の方法を利用して配合することができる。
【0151】
本発明に係るポリオレフィン製不織布は、上記のようなポリオレフィン組成物あるいは必要により任意成分を加えたポリオレフィン組成物組成物を、従来公知の紡糸方法により繊維化し、シート状に形成することにより形成される。
【0152】
紡糸方法としては、乾式紡糸法、湿式紡糸法、溶融紡糸法、エマルジョン紡糸法などを挙げることができる。これらのうちでも特に溶融紡糸法が好ましい。
この溶融紡糸法では、ポリオレフィン組成物を融点(または軟化点)以上分解温度未満の温度、好ましくは180〜260℃の温度に加熱して溶融状態にした後、ノズルから押出し、押出された樹脂を冷却しながら巻き取りポリオレフィン組成物のフィラメント(繊維原糸)を得ることができる。この際には、種々の形態のノズルが使用できるが、L/Dの値が10/0.5〜60/3mm程度のノズルが好ましい。またノズルからの樹脂の押し出し速度は、通常は0.01〜100m/min、好ましくは0.05〜10m/min程度である。上記のような速度で押し出されたモノフィラメントの巻き取り速度は、通常は10〜10000m/min 、好ましくは100〜5000m/minである。従ってノズルから押し出されたモノフィラメントは通常は巻き取りの際に延伸され、この際の延伸倍率は通常は10〜10000、好ましくは100〜5000である。
【0153】
このように紡糸することにより得られた原糸には、不純物の除去、緊張延伸、熱処理、精錬、染色などを目的とする後処理工程における処理を施すことができる。
【0154】
上記のように得られたフィラメントは、従来より公知の方法たとえばスパンボンド法、メルトブローン法、カード機法などによりシート状に形成され、不織布が形成される。
【0155】
たとえば短繊維状のポリオレフィン組成物を紡績用カード機でシート状に形成することにより吸油布(オイルマット)用不織布を形成することができる。
この際には、短繊維状のポリオレフィン組成物を空気流で飛散させ降下させてなるランダムウェブを上記のように接合してもよく(乾式法)、また短繊維状のポリオレフィン組成物を水あるいは接着剤に分散させて抄紙機で漉いてもよい(湿式法)。
【0156】
また本発明では、ポリオレフィン組成物を溶融紡糸すると同時にウェブを作り、融着させてもよい。
本発明に係るポリオレフィン製不織布は、特に限定されないが目付量が10〜100g/m2 程度好ましくは15〜50g/m2 であることが望ましい。
【0157】
【発明の効果】
本発明に係るポリオレフィン製不織布は、特定のポリオレフィン組成物から形成されており、従来公知のポリオレフィン製不織布に比べて表面ベタツキ感がなく、しかもヒートシール性に優れている。
【0158】
このような本発明に係るポリオレフィン製不織布は、手術着、紙おむつ、生理用品、パップ剤シート、使い捨ておむつなどの医療・衛生材、包装材などの産業資材、油吸着材などの工業資材、ゴミ袋などの日用雑貨用途に好適に利用することができる。
【0159】
【実施例】
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0160】
なお本明細書において、各ポリマーの分子量分布および不織布のヒートシール性、表面ベタツキ感は下記のように測定または評価した。
【0161】
[分子量分布(Mw/Mn)]
分子量分布(Mw/Mn)は、ミリポア社製GPC−150Cを用い、以下のようにして測定した。
【0162】
分離カラムは、TSK GNH HTであり、カラムサイズは直径72mm、長さ600mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはo-ジクロロベンゼン(和光純薬工業)および酸化防止剤としてBHT(武田薬品)0.025重量%を用い、1.0ml/分で移動させ、試料濃度は0.1重量%とし、試料注入量は500マイクロリットルとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンは、分子量がMw<1000およびMw>4×106 については東ソー社製を用い、1000<Mw<4×106 についてはプレッシャーケミカル社製を用いた。
【0163】
[ヒートシール性]
縦10cm×横5cmの不織布試料を、流れ方向を縦として10枚切出し、互いに重ね合わせて熱板ヒートシール機によりヒートシールした。
【0164】
このとき上段シールバーは5mm巾、下段シールバーは25mm巾で2mmのシリコンゴムを貼ったものを用いた。シール条件は、シール温度が上段155℃、下段150℃、シール圧力2kg/cm2 、シール時間1.0秒とした。
【0165】
このようにヒートシールした試料を、引張試験機によりゲージ長100mm、引張速度300mm/分で引張試験して、ヒートシール強度を評価した。
【0166】
[ベタツキ感]
カトーテック社製KES−70摩擦感テスターを用いて、表面摩擦抵抗値(MIU)によりベタツキ感を評価した。
【0167】
数値が小さいほどベタツキ感が小さいことを示す。
以下に実施例で用いたポリエチレンおよびプロピレン共重合体の製造例を示す。
【0168】
【製造例1】
ポリエチレン(1)の製造
[触媒溶液の調製]
充分に窒素置換したガラス製フラスコに、ビス(1,3-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドを3.0mg加え、そこへメチルアルミノキサンのトルエン溶液(Al;1.1モル/リットル)1.57ml、およびトルエン2.76mlを添加することにより触媒溶液を得た。
【0169】
[重合]
充分に窒素置換した内容積2リットルのステンレス製オートクレーブに、4-メチル-1-ペンテン1000mlを装入し、系内の温度を150℃に昇温した。引続き、トリイソブチルアルミニウム1ミリモルおよび上記で調製した触媒溶液0.5ml(Zrとして0.001ミリモル)をエチレンで圧入することにより重合を開始した。その後、エチレンのみを連続的に供給することにより全圧を30kg/cm2G に保ち、160℃で30分間重合を行った。少量のエタノールを系内に添加することにより、重合を停止した後、未反応のエチレンをパージした。
【0170】
得られたポリマー溶液を大過剰のメタノール中に投入することにより、ポリマーを析出させた。ポリマーを濾過により回収し、130℃で減圧下に一晩乾燥した。その結果、MFRが17.7g/10分であり、密度が0.918g/cm3 であるエチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体(ポリエチレン(1))を6.2g得た。
【0171】
【製造例2】
ポリエチレン(2)の製造
[触媒溶液の調製]
充分に窒素置換したガラス製フラスコに、rac-ジメチルシリレンビス{1-(2,7-ジメチル-4-イソプロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリドを5.1mg加え、そこへメチルアルミノキサンのトルエン溶液(Al;1.1モル/リットル)1.57ml、およびトルエン2.76mlを添加することにより触媒溶液を得た。
【0172】
[重合]
充分に窒素置換した内容積2リットルのステンレス製オートクレーブに、ヘキサン850mlおよび4-メチル-1-ペンテン150mlを装入し、系内の温度を150℃に昇温した。引続き、トリイソブチルアルミニウム1ミリモルおよび上記で調製した触媒溶液0.5ml(Zrとして0.001ミリモル)をエチレンで圧入することにより重合を開始した。その後、エチレンのみを連続的に供給することにより全圧を30kg/cm2G に保ち、170℃で30分間重合を行った。少量のエタノールを系内に添加することにより、重合を停止した後、未反応のエチレンをパージした。
【0173】
得られたポリマー溶液を大過剰のメタノール中に投入することにより、ポリマーを析出させた。ポリマーを濾過により回収し、130℃で減圧下に一晩乾燥した。その結果、MFRが18.2g/10分であり、密度が0.919g/cm3 であるエチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体(ポリエチレン(2))を29.5g得た。
【0174】
【製造例3】
プロピレン共重合体(1)の製造
[触媒の調製]
充分に窒素置換したガラス製フラスコにメチルアルミノキサンのトルエン溶液(Al;1.52モル/リットル、CH3/Alモル比;2.12)800mlを装入した。
【0175】
フラスコ内の温度を37〜40℃、留出温度を27〜28.5℃一定下、30mmHgにて4時間蒸留し、液部を完全に留出させた。フラスコには乾固した白色のメチルアルミノキサン53.6gが残った。この固体状のメチルアルミノキサンにトルエン650mlを加え再溶解した。このようにして得られたメチルアルミノキサン/トルエン溶液は、Al濃度が1.32モル/リットルの無色透明な均一溶液であり、CH3 /Al比(モル比)は1.54であった。
【0176】
充分に窒素置換した400mlの反応器に200℃で4時間乾燥したシリカ(富士デヴィソン社製 F-948)10gおよびトルエン150mlを装入し、攪拌しながら系を0℃とした。ここへ、前記メチルアルミノキサン/トルエン溶液をアルミニウム原子に換算して67ミリモル窒素雰囲気下で60分かけて滴下した。次いで、この温度で30分、95℃で4時間反応させた。反応系を放冷し、60℃になった時点で上澄み溶液をデカンテーションによって取り除き、続いて室温下トルエン150mlで3回洗浄し、全容量が150mlとなるようトルエンを加え再懸濁した。その結果、シリカ1gに対してAlを5.5ミリモル有する固体成分(a-1)を得た。
【0177】
充分に窒素置換した200mlの反応器に、上記で得た固体成分(a-1)をAl原子に換算して9ミリモル、トルエンに溶解したrac-ジメチルシリレンビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリドをZr原子に換算して0.03ミリモル加え5分間攪拌した。次いでn-ヘキサン100mlを加え、トリイソブチルアルミニウムを1.5ミリモル加えて5分間攪拌した後、プロピレンガス(1.6リットル/hr)を2時間、20℃で流通させ、プロピレンの予備重合を行った。上澄み溶液をデカンテーションによって取り除き、ヘキサン150mlで3回洗浄し、n-デカンで再懸濁した。その結果、固体触媒1g当たりプロピレン共重合体3gを有し、ジルコニウムが0.0096ミリモル、アルミニウムが4.78ミリモル担持された固体触媒成分(b-1)を得た。この際、反応器および攪拌羽根への予備重合触媒の付着は認められず、得られた予備重合触媒は良好な形状をしていた。
【0178】
[プロピレン共重合]
充分に窒素置換した2リットルのオートクレーブに、プロピレン400g、エチレン10リットル、および水素800mlを仕込み、50℃に昇温してトリイソブチルアルミニウム1.0ミリモルおよび上記で得られた固体触媒成分(b-1)をジルコニウムとして、0.0005ミリモル加え、60℃で1時間重合を行った。
【0179】
得られたプロピレン共重合体(1)は、148.1gであり、重合活性は2880g/g触媒、296kg−ポリマー/mmol−Zr・hrであり、エチレン成分含量は5モル%、n-デカン可溶成分量が1.1重量%、MFRが41.0g/10分、融点が131℃であった。
【0180】
【製造例4】
プロピレン共重合体(2)の製造
[触媒の調製]
充分に窒素置換した200mlの反応器に、前記の固体成分(a-1)をAl原子に換算して9ミリモル、トルエンに溶解したrac-ジメチルシリレンビス{1-(2-メチル-α-アセナフトインデニル)}ジルコニウムジクロリドをZr原子に換算して0.03ミリモル加え5分間攪拌した。次いでn-ヘキサン100mlを加え、トリイソブチルアルミニウムを1.5ミリモル加えて5分間攪拌した後、プロピレンガス(1.6リットル/hr)を2時間、20℃で流通させ、プロピレンの予備重合を行った。上澄み溶液をデカンテーションによって取り除き、ヘキサン150mlで3回洗浄し、n-デカンで再懸濁した。その結果、固体触媒1g当たりプロピレン共重合体3gを有し、ジルコニウムが0.0091ミリモル、アルミニウムが5.03ミリモル担持された固体触媒成分(b-2)を得た。
【0181】
プロピレン共重合
充分に窒素置換した2リットルのオートクレーブに、プロピレン400g、エチレン2リットル、および水素200mlを仕込み、50℃に昇温してトリイソブチルアルミニウム1.0ミリモルおよび固体触媒成分(b-2)をジルコニウムとして、0.0005ミリモル加え、60℃で1時間重合を行った。
【0182】
得られたプロピレン共重合体(2)は、160.2gであり、重合活性は2880g/g触媒、320kg−ポリマー/mmol−Zr・hrであり、エチレン成分含量は5モル%、n-デカン可溶成分量が0.9重量%、MFRが42.1g/10分、融点が132℃であった。
【0183】
[参考実施例1〜3]
結晶性ポリプロピレンとして、MFR 35g/10分、Mw/Mn=2.65を用い、上記のようにメタロセン系触媒を用いて得られたポリエチレンまたはプロピレン共重合体を表1に示すようなような量(組成物中の重量%)で用いて、ポリオレフィン組成物を得た。
【0184】
このポリオレフィン組成物を、押出機で溶融混練した後、0.6φ、1141孔の紡糸口金から単孔あたり毎分0.6g紡糸した後、エアーガンにより引取り捕集面上に、分散・堆積させた後、エンボスロールにより交絡させることにより、目付量が20g/m2 の不織布を製造した。結果を表1に示す。
【0185】
[参考比較例1〜2]
参考実施例において、製造例で製造されたポリエチレンまたはプロピレン共重合体に代えて、固体状チタン触媒成分を用いて製造されたポリエチレン(エチレン成分含量100モル%、MFR=22g/10分、分子量分布(Mw/Mn)=2.61)またはプロピレン共重合体(エチレン成分含量5モル%、MFR=40g/10分、分子量分布(Mw/Mn)=2.65)を用いた以外は、実施例1と同様にして不織布を製造した。結果を表1に示す。
【0186】
【表1】
Claims (2)
- [A]結晶性ポリプロピレンと、
[B-1]メタロセン系触媒を用いて製造され、密度が0.91〜0.97g/cm3 であり、
エチレン以外のオレフィンから導かれる単位の含有量が0または0.1〜10モル%であるポリエチレンとからなり、
このポリエチレン[B-1] を10〜95重量%の量で含むポリオレフィン組成物からなる繊維よりなり、
MIU(表面摩擦抵抗値)が0.3を越えることなしにヒートシール強度が0.7kg/5cm以上であることを特徴とするポリオレフィン製不織布。 - [A]固体状チタン触媒成分を用いて製造された結晶性ポリプロピレンと、
[B-2] メタロセン系触媒を用いて製造され、プロピレンから導かれる単位を80〜99モル%の量で含有し、230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が20〜60g/10分であり、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が1.3〜2.5である、プロピレンと他のα-オレフィンとの共重合体とからなり、
このプロピレン共重合体[B-2] を25〜95重量%の量で含むポリオレフィン組成物からなる繊維よりなり、
MIU(表面摩擦抵抗値)が0.3を越えることなしにヒートシール強度が0.7kg/5cm以上であることを特徴とするポリオレフィン製不織布。
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