JP3967237B2 - 磁気抵抗効果素子及びその製造方法、磁気再生素子並びに磁気メモリ - Google Patents

磁気抵抗効果素子及びその製造方法、磁気再生素子並びに磁気メモリ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気抵抗効果素子及びその製造方法、磁気再生素子並びに磁気メモリに関し、より詳細には、高い磁気抵抗変化率を示す磁気微小接点を有する磁気抵抗効果素子及びその製造方法、磁気再生素子並びに磁気メモリに関する。
【0002】
【従来の技術】
強磁性層/非磁性層/強磁性層からなる積層構造において面内に電流を流した場合に、巨大磁気抵抗効果(Giant Magnetoresistance effect)が発現することが見出されて以来、さらに大きな磁気抵抗変化率を持つ系が探索されてきた。これまでに、強磁性トンネル接合や電流を積層構造に対して垂直方向に流すCPP(Current Perpendicular to Plane)型MR素子が開発され、これらは磁気センサーや磁気記録の再生素子として有望視されている。
【0003】
磁気記録技術の分野においては、記録密度の向上により必然的に記録ビットの縮小化が進められ、その結果として十分な信号強度を得ることが難しくなりつつある。このため、より感度の高い磁気抵抗効果を示す材料が求められており、上述の如く大きな磁気抵抗変化率を示す系の必要性はますます高くなっている。
【0004】
最近、100%以上の磁気抵抗効果を示すものとして、2つの針状のニッケル(Ni)を付き合わせた「磁気微小接点」、あるいは2つのマグネタイトを接触させた磁気微小接点が、開示された(非特許文献1及び2参照)。
【0005】
【非特許文献1】
N. Garcia, M. Munoz, and Y. -W. Zhao, Physical Review Letters, vol.82, p2923 (1999)
【非特許文献2】
J. J. Versluijs, M. A. Bari and J. M. D. Coey, Physical Review Letters, vol.87, p26601 -1 (2001)
【0006】
これらは、大きな磁気抵抗変化率を示しているものの、その磁気微小接点の作製方法は、いずれも2つの針状あるいは三角形状に加工した強磁性体を角付き合わせるというものである。
さらにごく最近、2本の細いNiワイヤをT字に配置し、電着法を用いて接触部に微小コラムを成長させた磁気微小接点が開示された(非特許文献3及び4参照)。
【0007】
【非特許文献3】
N.Garciaら、Appl.Phys.Lett.,vol.80,p1785(2002)
【非特許文献4】
H.D.Chopra and S.Z.Hua, Phys.Rev.B,vol.66,p.20403-1(2002)
【0008】
これらも非常に大きな磁気抵抗変化率を示しているが、この磁気微小接点の構造では素子化が不可能である。一方、アルミナのピンホールにNiクラスターを電着で成長させて作製した磁気微小接点が開示された(非特許文献5参照)。
【0009】
【非特許文献5】
M. Munoz, G. G. Qian, N. Karar, H. Cheng, I. G. Saveliev, N. Garcia, T. P. Moffat, P. J. Chen, L. Gan, and W. F. Egelhoff, Jr., Appl. Phys. Lett., vol.79, p.2946, (2001))
【0010】
この構造は磁区の制御と接点構造制御が困難で、このため、この接点の抵抗変化率は14%以下と小さい。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
磁気微小接点は、大きな磁気抵抗変化率を示す可能性を有するものの、磁気抵抗効果の大きな磁気微小接点を得るためには、2つの針状等に加工した強磁性体を角付き合わせる、あるいは2本のワイヤ間に電着で微小コラムを形成することが必要であるなど、作製時の接点部の精密な制御が困難な構造であった。磁気ヘッドや固体磁気メモリなどへの応用を考慮すると、制御性よく作製でき、量産可能な微小接点の構造およびその作製方法の開発が必要である。
【0012】
また、磁気抵抗変化は、微小接合を挟んだ両側の磁性電極における磁化方向の差異を検出する。このため、両側の磁性電極の磁区制御がその特性を決定する。よって、両磁性電極の磁区制御が容易となるような構造が、磁気抵抗効果素子としては不可欠である。
【0013】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、その目的は、磁性電極の磁区制御が容易な構造で、素子として使用できる磁気微小接点構造を提供することにある。また同時に、作製時に接点構造制御が容易な磁気微小接点構造を提供することにある。さらに、これを用いた高感度の再生ヘッド用素子を提供することにある。またさらに、この磁気抵抗効果素子を用いた記録再生機能をもつ磁気メモリを提供することも目的とする。またさらに、そのような磁気微小接点の作製法を提供することも目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の一態様によれば、
第1の強磁性層と、
前記第1の強磁性層の上に設けられた絶縁層と、
前記絶縁層の上に設けられた第2の強磁性層と、
を備え、
前記絶縁層の所定の位置に前記第1の強磁性層と前記第2の強磁性層とが接続される最大幅が20nm以下の開口を有する孔が設けられ、
前記第1の強磁性層と前記第2の強磁性層との前記孔における接続部において、前記第1の強磁性層を構成する元素とも前記第2の強磁性層を構成する元素とも異なる異種元素が添加され、
前記異種元素が添加された領域の厚みは10原子層以下であることを特徴とする磁気抵抗効果素子が提供される。
また、本発明の他の一態様によれば、
第1の強磁性層と、
前記第1の強磁性層の上に設けられた絶縁層と、
前記絶縁層の上に設けられた第2の強磁性層と、
を備え、
前記絶縁層の所定の位置に前記第1の強磁性層と前記第2の強磁性層とが接続される最大幅が20nm以下の開口を有する孔が設けられ、
前記第1の強磁性層及び前記第2の強磁性層の少なくともいずれかは、前記孔に接した部分を含む領域の結晶粒がそれ以外の領域の結晶粒よりも相対的に大きく、前記孔の全領域の結晶方位が同一の配向とされた、多結晶体であることを特徴とする磁気抵抗効果素子が提供される。
またここで、前記第1の強磁性層と前記第2の強磁性層との前記孔における接続部において、前記第1の強磁性層を構成する元素とも前記第2の強磁性層を構成する元素とも異なる異種元素が添加され、前記異種元素が添加された領域の厚みは10原子層以下であるものとすることもできる。
【0015】
上記構成によれば、大きな磁気抵抗変化が得られる磁気微小接点を有する磁気抵抗効果素子を確実且つ容易に実現でき、また強磁性電極は薄膜構造のため、磁性電極の磁区制御が容易となり、各種のデバイスへの応用も可能となる。
【0016】
ここで、前記孔を通して前記第1の強磁性層と前記第2の強磁性層との間に流される電流に対し、電気抵抗が前記第1の強磁性層と前記第2の強磁性層の相対的磁化配置により変化するものとすることができる。
【0017】
上記構成によっても、大きな磁気抵抗変化が得られる磁気微小接点を有する磁気抵抗効果素子を確実且つ容易に実現でき、また強磁性電極は薄膜構造のため、磁性電極の磁区制御が容易となり、各種のデバイスへの応用も可能となる。
【0018】
ここで、前記絶縁層の孔は、前記第1の強磁性層側の開口幅が前記第2の強磁性層側の開口幅よりも小さくされた錐状であるものとすれば、針を用いて開口を形成することにより、確実且つ容易な製作が可能となる。
【0019】
また、前記孔を複数設けてもよい。
【0020】
また、前記第1の強磁性層と前記第2の強磁性層との間の抵抗が5Ω以上100kΩ以下であり、20%以上の磁気抵抗変化率を示すものとすれば、磁気抵抗効果素子として、種々の用途に適用が可能である。
【0021】
ここで、「第1の強磁性層と第2の強磁性層との間の抵抗」とは、平均値を意味するものとする。すなわち、第1の強磁性層と第2の強磁性層との間で観察される最大抵抗値をRmax、最小抵抗値をRminとした時、「第1の強磁性層と第2の強磁性層との間の抵抗」とは、これらの平均値すなわち、(Rmax+Rmin)/2を意味するものと定義する。
【0022】
なお本願明細書において、「磁気抵抗変化率」とは、磁場の印加による磁気抵抗効果素子の電気抵抗変化を磁場を印加した状態での電気抵抗で割った値と定義する。ただし磁場が不足して磁化が未飽和の場合には、最も小さい抵抗値で割った値と定義する。
【0023】
また、前記絶縁層は、ポリマー、または、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、シリコン(Si)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)及び鉄(Fe)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素を含む酸化物、窒化物あるいはフッ化物であり、
前記第1及び第2の強磁性層は、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、または、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)及びクロム(Cr)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素を含む合金、酸化物、窒化物あるいはホイスラー合金、あるいは鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)及びクロム(Cr)の少なくともいずれかの元素を含む化合物半導体または酸化物半導体であるものとすれば、良好な特性が容易に得られる。
【0025】
また、前述したいずれかの磁気抵抗効果素子の複数を直列に結合したものとすれば、いわゆるタンデム型の直列構造が得られ、単独のものより大きな磁気抵抗変化が得られる。
【0026】
一方、本発明の磁気再生素子は、前述したいずれかの磁気抵抗効果素子を備え、
磁気記録媒体から放出される磁束の経路上に前記第1及び第2の強磁性層を直列に設け、前記孔を挟んだ前記第1及び第2の強磁性層の磁化方向の差異を磁気抵抗変化として検出可能としたことを特徴とする。
【0027】
上記構成によれば、高感度の磁気検出素子を確実且つ容易に実現することができる。
【0028】
ここで、前記第1及び第2の強磁性層のうちで、前記磁気記録媒体から相対的に遠くに設けられた強磁性層の磁化が一方向に固着されてなるものとすれば、スピンフィルタ効果により高信号強度の磁気検出が可能となる。
【0029】
また、前記第1の強磁性層の膜面は、磁気抵抗効果素子に対して略垂直の配置にて前記磁気記録媒体からの信号磁界を検出すれば、媒体からの信号を高感度に再生することが可能となる。
【0030】
さらに、前記孔が、前記絶縁層の中心から前記記録媒体の方向にずれた位置に設けられたものとしてもよい。
【0031】
上記構造によれば、感度の高い領域に磁気微小接点を設けることが可能となり高感度の磁気検出素子を容易に実現することができる。
【0032】
一方、本発明の磁気メモリは、前述したいずれかの磁気抵抗効果素子と、前記第2の強磁性層の上に設けられた非磁性中間層と、前記非磁性中間層の上に設けられた第3の強磁性層と、を備え、
前記第1の強磁性層の磁化の方向が第1の方向に固着され、前記第3の強磁性層の磁化の方向が前記第1の方向とは略反平行な第2の方向に固着され、前記第2の強磁性層の磁化の方向が可変であり、前記第1乃至第3の強磁性層の膜面に対して略垂直方向に電流を流すことにより書き込み及び読み出しの少なくともいずれかを行うことを特徴とする。
【0033】
上記構成によれば、磁気抵抗効果素子を用いた磁気メモリを実現できる。
【0034】
また一方、本発明の磁気メモリは、前述したいずれかの磁気抵抗効果素子と、前記第2の強磁性層の上に設けられた非磁性中間層と、前記非磁性中間層の上に設けられた第3の強磁性層と、を備え、
前記第1及び第3の強磁性層の磁化の方向が第1の方向に固着され、前記第2の強磁性層の磁化の方向が可変であり、前記第1乃至第3の強磁性層の膜面に対して略垂直方向に電流を流すことにより書き込み及び読み出しの少なくともいずれかを行うことを特徴とする。
【0035】
上記構成によっても、磁気抵抗効果素子を用いた磁気メモリを実現できる。
【0036】
また一方、本発明の磁気メモリは、前述したいずれかの磁気抵抗効果素子を備え、前記第1及び第2の強磁性層のいずれか一方の磁化の方向が第1の方法に固着され、前記第1及び第2の強磁性層のいずれか他方の磁化の方向が可変であり、前記第1及び第2の強磁性層の膜面に対して略垂直方向に電流を流すことにより書き込み及び読み出しの少なくともいずれかを行うことを特徴とする。
【0037】
上記構成によれば、構造シンプルな磁気抵抗効果素子を用いた磁気メモリを実現できる。
【0038】
ここで、前記電流を流すための第1及び第2の電極が、前記第1及び第2の強磁性層の全体または一部のみを覆うように設けられ、前記第1及び第2の電極が対向する範囲内に前記開口が設けられたものとすることができる。
【0039】
さらにまた一方、本発明の磁気メモリは、複数のメモリセルが絶縁領域により互いに分離されて2次元的に配列され、導体プローブまたは固定配線により、前記複数のメモリセルのそれぞれに電流が供給され、前記複数のメモリセルのそれぞれに対する書き込みのための電流の絶対値は、読み出しのためのセンス電流よりも大きく、前記複数のメモリセルのそれぞれは、前述したいずれかの磁気抵抗効果素子を備え、前記第1及び第2の強磁性層のいずれか一方の磁化の方向が第1の方法に固着され、前記第1及び第2の強磁性層のいずれか他方の磁化の方向が可変であり、前記第1及び第2の強磁性層の膜面に対して略垂直方向に電流を流すことにより前記書き込み及び読み出しの少なくともいずれかを行うことを特徴とする。
【0040】
上記構造によれば、磁気抵抗効果素子を用いた大容量の記録が可能な磁気メモリを実現できる。
【0041】
また、本発明の他の一態様によれば、
第1の強磁性層と、前記第1の強磁性層の上に設けられた絶縁層と、前記絶縁層の上に設けられた第2の強磁性層と、を有する積層体を形成する工程と、
前記積層体の主面に電子線を局所的に照射することにより前記絶縁層を局所的に消失させる工程と、
を備えたことを特徴とする磁気抵抗効果素子の製造方法が提供される。
【0042】
また、本発明のさらに他の一態様によれば、
第1の強磁性層の上に絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層の表面に針を当て、還元性雰囲気において前記絶縁層と前記針との間に電界を印加することにより電流を流して還元反応を生じさせ前記絶縁層の前記針を当てた領域を通電領域とする工程と、
前記絶縁層上に強磁性体を堆積することにより第2の強磁性層を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする磁気抵抗効果素子の製造方法が提供される。
【0043】
また、本発明のさらに他の一態様によれば、
第1の強磁性層と、前記第1の強磁性層の上に設けられた絶縁層と、前記絶縁層の上に設けられた第2の強磁性層と、を有する積層体を形成する工程と、
前記積層体の主面に針を当てて局所的に電界を印加することにより前記絶縁層を局所的に還元して前記絶縁層に局所的な通電領域を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする磁気抵抗効果素子の製造方法が提供される。
また、本発明のさらに他の一態様によれば、
第1の強磁性層の上に被酸化層を形成する工程と、
前記被酸化層の表面に針を当て、酸化性雰囲気において前記被酸化層と前記針との間に電界を印加することにより電流を流して陽極酸化反応を生じさせ前記被酸化層の前記針を当てた領域を酸化する工程と、
前記酸化した領域を選択的に取り除いて前記被酸化層に孔を形成する工程と、
前記被酸化層を酸化させることにより、孔が形成された絶縁層を形成する工程と、
前記孔を埋め込むように前記孔及び前記絶縁層の上に強磁性体を堆積することにより第2の強磁性層を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする磁気抵抗効果素子の製造方法が提供される。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
【0045】
図1は、本発明の実施の形態にかかる磁気抵抗効果素子の要部断面構造を例示する模式図である。
【0046】
すなわち、本発明の磁気抵抗効果素子は、基板Sの上に直接あるいは間接的に形成された第1の強磁性層1の上に、微小開口Aを有する絶縁層3が形成され、その微小開口Aを埋め込むように第2の強磁性層2が形成されている。
【0047】
微小開口Aは、後に詳述するように、その最小部の開口幅が20nm以下であることが望ましい。この「開口幅」は、微小開口Aの開口形状が円形であれば、その直径であり、多角形の場合には対角線のうちで最も長いもの、扁平円などの非等方的な形状の場合には、その開口幅のうちで最も長いものを意味する。
【0048】
絶縁層3は、第1の強磁性層1に向けて円錐形あるいは円形、多角錘形、円柱形、あるいは多角柱形などの開口を有し、その開口の一部が微小開口Aを形成している。本発明の望ましい実施の形態のひとつとしては、微小開口Aは、第1の強磁性層の近傍に設けられる。
【0049】
つまり、本発明の磁気抵抗効果素子は、第1の強磁性層1と第2の強磁性層2とが、微小開口Aにおいて接続された磁気微小接点を有する。
【0050】
またさらに、強磁性層1および強磁性層2は、それら自身が電極としても作用し、あるいはそれらに接続された電極が別途設けられ、これら電極間に電流を通電した場合に得られる強磁性層1および強磁性層2の間の電気抵抗は、前記第1の強磁性層と前記第2の強磁性層との相対的な磁化配置により変化するという特徴を有する。
【0051】
すなわち、微小開口Aにおいて形成された磁気微小接点の開口幅が20nm以下になると、この開口部が極薄磁壁の発生部となり、強磁性層1と強磁性層2との間の相対的な磁化の配置関係を変化させることができる。これにより前記第1の強磁性層と前記第2の強磁性層2との間の電気抵抗が変化する。
本発明の磁気抵抗効果素子の場合、基本的に、磁場印加方向を変えても電気抵抗が磁場により減少する磁場領域が存在することから、ここで発生する磁気抵抗効果は、微小接点の部分で形成された磁壁により発生する磁気抵抗効果であるといえる。ここで、この磁壁は、磁化方向を異にする2つの部分の遷移領域として作用する。そして、本発明においては、磁化方向および印加磁場の大きさに応じて20%以上の大きな磁気抵抗効果が発生する。
【0052】
図2は、本発明の磁気抵抗効果素子における印加磁場と電気抵抗との関係を説明するための模式図である。すなわち、同図(a)及び(c)は、微小開口Aすなわち磁気微小接点の開口幅が20nm以下の場合に、強磁性層1または2の膜面に対して平行な方向に磁場を印加して得られる電気抵抗の変化を表すグラフ図である。また、図2(b)及び(d)は、同様に、微小開口Aの開口幅が20nm以下で、強磁性層1または2の膜面に対して垂直な方向に磁場を印加した場合に得られる電気抵抗の変化を表すグラフ図である。なお、これらの図は、図1に例示したように、交換バイアス層を持たない最も単純な基本構造についてのものであり、素子の磁化容易磁区方向はこの場合には面内方向にある。
【0053】
これらのグラフ図からわかるように、微小開口Aの開口幅が20nm以下の場合には、磁場の印加方向に依らずに、磁場印加方向を変えても電気抵抗が磁場により減少する磁場領域が基本的には存在する。ただし、困難磁区方向に磁場印加した場合に、変化が小さくて抵抗減少が見出せない場合もある。
【0054】
これに対して、磁気微小接点の開口幅が20nmよりも大きくなると、通常の異方性磁気抵抗効果(Anisotropic Magnetoresistance Effect)による磁気抵抗効果が顕著になる。
【0055】
図3は、通常の異方性磁気抵抗効果による磁気抵抗変化を説明する概念図である。異方性磁気抵抗効果においては、電流に対して磁場を垂直に印加した場合、すわなち、強磁性層1または2の膜面に対して平行に磁場を印加した場合には、図3(a)に表したように、磁場の印加により、わずかに電気抵抗が減少する。
【0056】
一方、電流に対して平行な方向に磁場を印加した場合、すなわち強磁性層1または2の膜面に対して垂直な方向に磁場を印加した場合には、磁場に対して磁化がなかなか飽和せず、図3(b)に表したように、磁場勾配は小さいが磁場の印加により電気抵抗は増加する。但し、図3(a)及び(b)からも分かるように、通常の異方性磁気抵抗効果を示す場合には、磁気抵抗変化率は大きくても高々数%どまりである。
【0057】
これに対して、本発明の磁気抵抗効果素子の場合には、図2(a)〜(d)に例示したように、磁場に対して大きく抵抗変化する磁場印加方向が存在する。しかもその磁気抵抗変化率は極めて大きいという特徴を有する。
以下、本発明の磁気抵抗効果素子が、従来の磁気抵抗効果素子と比較して大きな磁気抵抗変化率を示す理由について説明する。
【0058】
図4は、本発明の磁気抵抗効果素子と従来の磁気抵抗効果素子とを比較して表した概念図である。
【0059】
ここで、同図(a)乃至(f)においては、それぞれ、上側に磁化の方向を含む素子の模式図を表し、下側に対応するポテンシャル図を表した。同図(a)および(b)は、CPP型磁気抵抗効果効果素子の場合、同図(c)及び(d)は、微小接点を有する本発明の磁気抵抗効果素子の場合、同図(e)及び(f)は、微小接点を有しない磁気抵抗効果素子の場合について、それぞれ平行磁化配置と反平行磁化配置の場合を表わす。
【0060】
以下、これらの模式図において、電子の流れを強磁性層1から強磁性層2へ流した場合について説明する。
【0061】
図4(a)及び(b)のCPP−MRの場合、強磁性層1及び2の間に設けられた中間層40は、銅(Cu)などの非磁性体からなる層である。すなわち、CPP型のMR素子は、例えば、コバルト(Co)/銅(Cu)/コバルト(Co)という積層構造を有する。このようなCPP型のMR素子の場合、図4(a)に表したように強磁性層1及び2の磁化Mが平行の場合には、アップスピン電子が強磁性層1から中間層40を介して強磁性層2へ流れる。一方、図4(b)に表したように、強磁性層1及び2の磁化Mが反平行の場合は、強磁性層1から中間層40を通過時に散乱されずに生き残ったアップスピン電子は、強磁性層2へ向かい、強磁性層2で散乱される。
【0062】
一方、本発明のMR素子の場合、同図(c)に表したように、磁化Mが平行の場合にはアップスピン電子とダウンスピン電子がそのまま強磁性層1から強磁性層2へ流入する。一方、同図(d)に表したように磁化Mが反平行の場合には、微小接点部において極めて薄い磁壁が形成されて磁化Mの方向が急峻に変化する(図4(d)において、この磁壁の厚さは、例えば描画線の太さと同程度である)ので、アップスピン電子は強磁性層2で散乱され、ダウンスピン電子も強磁性層2で散乱される。このように本発明のMR素子の場合、両スピンの電子が散乱されるので、同(a)及び(b)に例示したCPP−MR素子に比べて、大きな磁気抵抗効果が得られる。
なお、本発明者は、後に詳述するように、開口接続部に異種元素が添加されている場合にも大きな磁気抵抗効果が得られることを見出している。この場合、この異種元素からなる層の厚さは極めて薄いため、異種元素層の存在を無視して近似することができる。
【0063】
一方、もし、微小接点が20nmを越えるような大きなサイズである場合には、図4(f)に例示したように、磁化Mが反平行の場合に、それらの間の磁壁は非常に厚くなり、ここを通過する電子はスピン情報を保つことが難しくなる。その結果として、磁化Mの方向の変化に起因した磁気抵抗効果は得られにくくなる。
【0064】
以上、本発明の磁気抵抗効果素子が極めて大きな磁気抵抗変化率を示す理由を説明した。
【0065】
本発明においては、強磁性層1及び2の磁化Mの制御が容易になるように、素子構造を積層構造としているので、図4(d)に表したような磁化の状態を容易に実現することができる。
なお、本発明の磁気抵抗効果素子の場合、磁場印加により電気抵抗は減少するが、ヒステリシスが存在する場合には、図2(a)に例示したように抵抗最大がゼロ磁場からシフトする場合もある。あるいは、図2(c)のようにゼロ磁場近傍で抵抗が落ち込む場合もある。しかし何れの場合も、磁場を印加して抵抗が最大値を越えると、さらなる磁場増加により素子の磁化が全て平行に揃うまで、電気抵抗は減少する。
【0066】
さて、図1に戻って説明を続けると、本発明の磁気抵抗効果素子においては、微小接点を挟んだ強磁性層1と磁性層2は、磁区制御が容易なように膜状の平面を有する。このようにすれば、磁化分布状態を揃えることができ、従って、微小接点において接続されている他方の強磁性層との間の磁壁幅を急峻に保つことが可能となり、大きな磁気抵抗変化率が得られる。
【0067】
但し、強磁性層1や絶縁層3は、必ずしも厳密に平坦な層である必要はなく、例えば図1(b)に例示したように、多少の凹凸面あるいは湾曲面を有していてもよい。
またさらに、本発明においては、図5(a)乃至(d)に例示した如く、複数の微小接点を設けてもよい。微小接点を複数とすることにより、MR値は減少するが、単一の微小接点を有する場合と比較して素子ごとのMR値の「ばらつき」を低減でき、安定したMR特性を再現することが容易となる。
【0068】
またここで、微小接点の開口形状としては、図5(a)及び(b)に例示したような、「すり鉢状」の他にも、図6(a)に例示したように平坦な強磁性層1の上に形成された凸状曲面からなるものとしてもよい。また、図6(b)に例示したような垂直壁面からなるものとしてもよい。あるいは、図6(c)に例示したように、強磁性層1及び2のいずれの側においても、凸状曲面からなるものとしてもよい。
【0069】
磁気微小接点を取り囲む絶縁層3としては、ポリマーあるいはアルミニウム(Al)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、シリコン(Si)、鉄(Fe)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)の少なくともいずれかの元素を含む酸化物、窒化物あるいはフッ化物など、あるいはアルミニウム砒素(AlAs)などの実質上絶縁体として作用する化合物半導体などを用いることができる。
【0070】
また、強磁性層1及び強磁性層2としては、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)などの単体、または、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)の少なくともいずれかの元素を含む合金、または、「パーマロイ」と呼ばれるNiFe系合金、あるいは、CoNbZr系合金、FeTaC系合金、CoTaZr系合金、FeAlSi系合金、FeB系合金、CoFeB系合金などの軟磁性材料、ホイスラー合金やCrO、Fe、La1―XSrMnOなどのハーフメタル磁性体を用いることができる。さらに、(Ga、Cr)N、(Ga、Mn)N、MnAs、CrAs、(Ga、Cr)As、ZnO:Fe、(Mg、Fe)などの、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)の少なくともいずれかの磁性元素と化合物半導体あるいは酸化物半導体を用いることができる。すなわち、これらの材料のうちから用途に応じた磁気特性を有するものを適宜選択して用いればよい。
【0071】
また、強磁性層1あるいは強磁性層2は、それぞれ単一膜でも複数の強磁性層の組み合わせからなる多層膜構造でもよい。例えば、外部磁場を反応性よく検出したい場合には、ソフト層にCoFe/パーマロイからなる2層膜を用いるとよい。すなわち、用途に応じた組み合わせを適宜選択して用いればよい。
【0072】
また、強磁性層1と強磁性層2の材料は、同一のものを用いてもよく、互いに異なるものを用いてもよい。
【0073】
また、強磁性層1または2の隣に、さらに、反強磁性層、あるいは非磁性層/強磁性層/反強磁性層からなる多層膜を設けることによって、強磁性層1または2の磁化方向を固定することができ、磁気抵抗効果素子の磁場に対する応答特性を制御することが可能となる。そのための反強磁性材料としては、FeMn、PtMn、PdMn、PdPtMnなどが有用である。
【0074】
素子抵抗を制御して所望の値を得るためには、若干量の導体あるいは半導体、あるいは絶縁体の性質をもつ異種元素を微小接点の開口部の付近に存在させることも有効である。
【0075】
図7(a)及び(b)は、このような磁気抵抗効果素子を表す模式図である。すなわち、これら具体例においては、微小開口Aの開口端付近に、異種元素を添加した領域Dが設けられている。このようにすると、磁気抵抗変化率を若干犠牲にする場合があるが、磁気抵抗効果素子が使用されるシステムが必要とする値に調整することができる。異種元素を添加した領域Dは層状に形成することができ、この場合に微小開口Aにおける領域Dの厚みは、平均して0原子層から10原子層以下の範囲であることが望ましい。
【0076】
これらの異種元素は、強磁性層1と強磁性層2との間の交換結合を切る作用を有するとともに、磁区制御をより容易にさせる効果をも持つ。さらに、異種元素の添加により、実効的開口径を小さくして磁区制御をより容易にするとともに、微小接点の磁気抵抗効果を高効率化する効果ももつ。
【0077】
このような異種元素としては、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)等の貴金属のほかに、酸素を含む異種元素として、Ni−O、Fe−O、Co−O、Co−Fe−O、Ni−Fe−O、Ni−Fe−Co−O、Al−O、Cu−O等の酸化物、およびこれら酸化物を含むAl−Cu−Oなどの複合化合物、あるいはアンチモン(Sb)、すず(Sn)等の磁性層成長にとって所謂サーファクタントとして働く元素を用いることができる。
【0078】
本発明の磁気抵抗効果素子は、従来提案されている微小接点を用いた磁気抵抗効果素子と比べて作成が容易でデバイス化も確実にできるという特徴を有する。以下、本発明の磁気抵抗効果素子の作製方法について説明する。
【0079】
図8は、本発明の磁気抵抗効果素子の製造方法の要部を表す工程断面図である。
【0080】
まず、同図(a)に表したように、基板(図示せず)の上に直接、あるいは図示しないバッファ層などの単層あるいは複数の層を介して強磁性層1を形成し、その上に絶縁層3を形成する。絶縁層3は、強磁性層1の上に、異種の材料を堆積あるいは析出させて形成してもよく、あるいは、強磁性層1の表面層を酸化、窒化、フッ化などの方法で改質することにより形成しても良い。
【0081】
次に、図8(b)または(c)に表したように、先端部が曲率半径5nm〜1000nmの球形状、円錐形状あるいは多角錘形状の導電性を有する針110を接触させ、圧力を負荷することにより、絶縁層3に微小開口Aを形成する。この際に、針110と磁性層との間に設けられた導線120に所定の電圧を印加し、この導線120を流れる電流が所定の値になるまで、針110を圧入する。つまり、針110が絶縁層3を貫通することによって強磁性層1との間を流れる電流をモニタすることにより、微小開口Aの開口幅を制御する。このようにして、流れる電流が所定の値になったら針110を逆方向へ動かして絶縁層3の表面から外す。
【0082】
この針110は、図8(b)及び(c)に表したような距離変化機能部130A(130B)により駆動される。距離変化機能部130は、針110を試料面に対して垂直方向に動かす機能を有する。そのための動き方としては、例えば、図8(b)に表したようにアームを湾曲させる方式や、図8(c)に表したように垂直方向に移動させる方式などがある。
【0083】
図8(b)に例示した湾曲方式の場合、試料面と平行に設けたアーム140に針110を装着し、このアーム140の上部あるいは下部に設けられた距離変化機能部130Aを伸縮させることによりアーム140を湾曲させ、針110の高さを変化させることができる。距離変化機能部130Aとしては、通電加熱によって生ずる温度変化により熱膨張を起こす膜などを使用することができる。なおこのような通電加熱の場合には、距離変化機能部130とアーム140との間に絶縁体が適宜必要となる。
【0084】
図8(c)に例示した垂直移動方式の場合、針110の上側にピエゾ素子などの距離変化機能部130Bを設け、ここに印加する電圧により針110の位置を変移させることができる。
【0085】
他のケースとして、図8(b)の距離変化機能部130Aとしてピエゾ素子を用いることも可能である。その場合、ピエゾ素子に電圧を印加してアーム140の湾曲を制御する。
【0086】
これらの微小距離の制御が可能な機構を用いて形成された穴は、基本的に、所定の最小部直径をもち、針110の先端形状である球形状、円錐形状あるいは多角錘形状などに対応して形状を有する。
【0087】
このような方法により、最終的に望ましいコンダクタンスを得るための微小開口Aが、針110の先端形状に応じて円錐形状、円形状、もしくは多角錘形状をした開口の先端に形成される。
【0088】
次のステップとして、図8(d)に表したように、この穴に向けて、強磁性層2を堆積する。これにより、強磁性層1と強磁性層2とは所望の微小開口Aにおいて、小さなコンダクタンスで繋がることとなる。このあと必要に応じて熱処理を行ってもよい。このようにして形成した磁気抵抗効果素子の使用にあたっては、それぞれの強磁性層に電極を設けて通電可能とする。
【0089】
以上説明した方法により、強磁性層1及び2の間には再現性・制御性にすぐれた磁気微小接点が形成される。針110を圧入する際に印加する電圧の代表的な値としては、0.01V〜10Vで、所定の電流範囲は0.05μA〜100mAであり、絶縁体の円錐形、円形、多角錐形を形成している穴の最小開口幅は0.1nm〜50nmである。特に、微小開口の開口幅は、0.1nmから20nmが好ましい。
【0090】
ここで用いる針110の材料としては、絶縁層3よりも硬く、かつ伝導性があるものが望ましい。例えば、導電性ダイヤモンドあるいは超硬金属、あるいはシリコン(Si)あるいは導電性ダイヤモンドがコーティングされたシリコンなどを用いることができる。
【0091】
また、磁気微小接点を形成する前の絶縁層3の厚さは、絶縁層3としての機能が維持される範囲で薄い方が好ましい。具体的には、0.5nmから50nmの範囲である。また、強磁性層1及び2の厚さは、用途に応じて適宜決定することができる。特に、強磁性層1は、十分厚いバルク形状のものでも問題はない。
【0092】
また、本発明によれば、図9に例示したように、共通の基板(図示せず)の上に複数の磁気抵抗効果素子を配列した構造も簡単に形成できる。このような構造は、例えば、後に詳述するパターンド媒体などに応用することができる。
【0093】
本発明の磁気抵抗効果素子は、デバイス化が容易な構造であるため、いろいろな用途に応用できる。
【0094】
まず、磁気記録システムにおける再生用素子として用いることができる。本発明の磁気抵抗効果素子を用いることで20%以上の磁気抵抗変化率を発生することができるため、大きな再生感度を得ることができる。
【0095】
図10は、本発明の磁気抵抗効果素子を磁気再生素子として用いる具体例を表す模式図である。
【0096】
同図(a)に例示した具体例の場合、磁気記録媒体200の表面から放出される磁束が通過する経路上に、磁気抵抗効果素子の強磁性層2、絶縁層3、強磁性層1を直列に配置する。このようにすると、微小開口Aに形成される磁気微小接点を挟んで対向する強磁性層1及び2の磁化方向の差異を磁気抵抗変化として検出することができる。この場合、同図に例示した如く、2つの強磁性層1及び2の磁化方向Mは必要に応じて磁区制御させておくとよい。
【0097】
図10(b)に例示した具体例の場合、磁気記録媒体200の表面に対して誤差角度プラスマイナス20度程度の範囲内で垂直な方向に、磁気抵抗効果素子の強磁性層2、絶縁層3、強磁性層1を直列に配置する。このようにしても、微小開口Aに形成される磁気微小接点を挟んで対向する強磁性層1及び2の磁化方向の差異を磁気抵抗変化として検出することができる。
【0098】
この場合、記録媒体200から遠い位置に設けられる強磁性層1の磁化Mを記録媒体200の表面に対してプラスマイナス20度の範囲内で垂直な方向に固着することが望ましい。磁化の固着の方法としては、強い形状磁気異方性を導入する方法や、図示しない反強磁性層を隣接して設けることにより一方向異方性を導入する方法などを挙げることができる。
【0099】
そして、記録媒体200に近い強磁性層2の磁化Mの方向は、媒体200からの磁束によりスイッチング可能とする。このようにすれば、強磁性層1と強磁性層2と磁化Mが成す角度から記録媒体200からの信号を検出することができる。
【0100】
本発明の磁気抵抗効果素子を用いれば、高い感度が得られるとともに、記録媒体200に面する媒体対向面側の形成・加工が容易である。媒体200から磁気微小接点Aまでの距離を、基本的に強磁性層2の層厚により決定することができるからである。また、記録媒体200に面する媒体対向面の加工が容易である場合には、図10(c)に例示した如く、強磁性層1を記録媒体200に近い側に配置することも可能である。
【0101】
図11は、本発明の磁気抵抗効果素子を磁気再生素子として用いる他の具体例を表す模式図である。同図に表した具体例の場合、磁気抵抗効果素子の膜面を媒体200に対して垂直に配置している。ここで、微小開口Aは、磁気抵抗効果素子の中心(重心点)から見て、下方向(媒体200に近づく方向)にずれている。媒体200からの信号磁界は、媒体からの距離が短くなるほど大きくなるため、この構造は、フリー層2の磁界検出効率を大きくできるという大きな利点を有する。
【0102】
磁化感受層(フリー層)として機能する強磁性層2は、図11(a)に例示したように1層としてもよく、あるいは、図11(b)に例示したように2層としてもよい。図11(a)の具体例の場合、強磁性層1は、その磁化の方向が固着された「ピン層」を形成している。強磁性層(ピン層)1は、微小開口Aから見て順に、磁性層/反強磁性層、あるいは磁性層/非磁性層/磁性層/反強磁性層のような積層構造とすることができる。
【0103】
また、図11(b)の具体例の場合、強磁性層(ピン層)1は、強磁性層/反強磁性層/強磁性層、あるいは強磁性層/非磁性層/強磁性層/反強磁性層/強磁性層/非磁性層/強磁性層という積層構造とすることができる。
図11(b)に表したように、ピン層の両脇に開口部Aを挟んでフリー層2A,2Bが設けられ、これらそれぞれはその下の記録媒体からの信号を感知する。その際、図11(c)に表したように、フリー層2A、2Bとも上向き信号の場合には、ピン層と同じ方向に磁化が向けられるため抵抗変化ΔRは0となり、フリー層2A、2Bとも下向き信号の場合には、両側でのスピン散乱が生じるためΔRは2となり、フリー層2A、2Bの信号方向がそれぞれ下・上もしくは上・下の場合は、片側のみのスピン散乱になるためΔRは1となり、その区別をΔRの履歴から行う。
【0104】
このように複数のフリー層を設けることによって、多値の抵抗変化を発生させることができる。ナノホールMRでは抵抗変化が100%以上発生させることが可能なので、組み合わせによりこのように多値での信号再生が可能となる。
【0105】
また、本発明の磁気抵抗効果素子は、いわゆる「パターンド(patterned)媒体」に応用することができる。すなわち、図9に例示したように複数の磁気抵抗効果素子を配列した構造を容易に形成することができる。この具体的な応用例として、磁気メモリあるいはプローブストレージ用媒体を挙げることができる。
【0106】
図12は、本発明の磁気抵抗効果素子を用いた磁気メモリの要部断面構造を例示する模式図である。
【0107】
同図に表したように、本発明の磁気メモリは、電極層20の上に複数の磁気抵抗素子10が並列配置された構造を有する。それぞれの磁気抵抗効果素子10は、絶縁体30によって電気的に隔絶され、記録再生セルとしての役割を有する。
【0108】
これら記録再生セル10のそれぞれへのアクセスとしては、例えば、図13(a)に表したように、上側電極としての導電性プローブPRを用いてもよく、あるいは、図13(b)に表したように固定配線WRを用いてもよい。
ここで固定配線WRの場合は、セル10に接触させて用いるが、導電性プローブPRの場合は、セル10に対して接触か、あるいは非接触のいずれでもよい。非接触の場合には、セル10との間に流れるトンネル電流を介してプロービングが可能である。
【0109】
図14及び図15は、図12の磁気メモリに用いる磁気抵抗効果素子10の断面構造を表す模式図である。図14(a)〜(d)及び図15(a)〜(h)のいずれの磁気抵抗効果素子も、第2の強磁性層2の上に、非磁性層4を介して磁性層を積層させた構造を有する。そして、この積層構造の上下に電極7がそれぞれ接続されている。これらの磁気抵抗効果素子は、いずれも記録および再生の機能を併せ持つ。すなわち、これらの磁気抵抗効果素子に対して、所定の大きさの電流を所定の方向に流すことより記録が可能となり、また、これよりも弱い電流を流して測定した抵抗値からそのセルの信号を読み込むことができる。
【0110】
図14(a)に表したセルの場合、第2の強磁性層2の上に、非磁性中間層4、強磁性層5が積層された構造を有する。またここで、第1の強磁性層1と強磁性層5とは、磁化方向が互いに反平行となるようにそれぞれ磁化Mを固着しておく。磁化方向を反平行にすると、後に詳述するように、より小さい電流での書き込みが可能となる。
【0111】
このような積層構造に対して、膜面に垂直方向に電流を流すと、第2の強磁性層2を記録部として、記録及び再生が可能となる。すなわち、電流が第1の強磁性層1または強磁性層5を通る際に、伝導電子がこれら磁性層の磁化方向に応じたスピン情報を受け取る。そして、これら電子が第2の強磁性層2に流入した時、それら電子が持っているスピンの方向と第2の強磁性層2の磁化の方向に応じたスピンの方向とが同一の場合には、電子は通過しやすいが、これらが反平行の場合には、電子は反射され、第2の強磁性層2を通過しにくくなる。
【0112】
このとき、強磁性層1と強磁性層2の間のコンダクタンスは小さく磁気抵抗変化は大きい、一方、強磁性層2と強磁性層5との間のコンダクタンスは大きく、磁気抵抗変化は小さい。従って、これらが直列につながった図14(a)の場合、前者の強磁性層1と強磁性層2の間のコンダクタンスが支配的になり、強磁性層1と強磁性層2の磁化方向の差異を検出することになる。つまり、第2の強磁性層2の磁化の方向に応じて電気抵抗の増減が観察され、磁化方向に応じた情報を読み出すことができる。
【0113】
一方、記録に際して、膜面に対して垂直方向に所定量の電流を流した場合、伝導電子は、まず、第1の強磁性層1と強磁性層5のうちの最初に流入した磁性層が有する磁化Mのスピン情報を受け取る。しかる後に、その電子は第2の強磁性層2に流入する。この際に、多量の電子が第2の強磁性層2に流入すると、第2の強磁性層2の磁化の方向が、これら電子が有するスピン情報に応じて遷移する。つまり、第1の強磁性層1と強磁性層5のうちで電子が最初に流入した層が有する磁化Mの方向を第2の強磁性層(記録層)2に転写する方向にある。
【0114】
また、強磁性層2を通過した電子は1と5のうちで後で流入する層のスピン情報を反作用の形で受け取り、反対方向を向く方向にある。これらのため、電流の向きにより磁化方向を制御することができる。
【0115】
図14(a)乃至(d)は、面内磁化すなわち磁化の方向が膜面に対して平行な場合を表しているが、図15(a)、(c)、(j)に表したような垂直磁化の場合も同様の効果が得られる。また、微小開口の断面形状についても、図14(a)乃至(d)のように下向きに狭くなっていてもよく、あるいは、図15(b)乃至(l)に表したように、上向きに狭くなっていてもよい。あるいは、図6(a)乃至(c)に表したような各種の形状を与えることができる。
【0116】
図14及び図15に表した磁気抵抗効果素子においては、第2の強磁性層(記録層)2の磁化Mの方向はある臨界以上の電流を流した場合に電流の流れる向きにより変化する。この強磁性層(記録層 )2の磁化方向により信号を記録する。また読み込みは、書きこみのための臨界電流以下の電流を流した場合の抵抗値から信号を読み込むことができる。
【0117】
このためには、記録層としての役割を有する第2の強磁性層2の上下に強磁性層1及び5を設け、これらの磁化Mを互いに反平行方向に固着する必要がある。
【0118】
図14(b)〜(d)及び図15(d)〜(h)は、この磁化固着を与える構造を例示する。
【0119】
図14(b)に表したセルの場合、第2の強磁性層2の上に、非磁性中間層4A、強磁性層5A、非磁性中間層4B、強磁性層5B、反強磁性層6Aがこの順に積層された構造を有する。さらに、第1の強磁性層1の下側には、反強磁性層6Bが設けられている。このようにして、第1の強磁性層1及び強磁性層5の磁化Mをそれぞれ固着できる。ここで、微小開口は、例えば図15(d)に表したように、反対向きに開いてもよい。また、図14及び図15の全てに共通して上下の既定はない。さらに、面内磁化に限定されず、図15(f)に例示したような面直磁化(垂直磁化)としてもよい。
【0120】
また、 図14(c)に表したセルの場合、第2の強磁性層2の上に、非磁性中間層4A、強磁性層5A、反強磁性層6Aがこの順に積層されている。また、第1の強磁性層1の下側には、非磁性中間層4B、強磁性層5B、反強磁性層6Bがこの順に設けられている。このようにしても、第1の強磁性層1及び強磁性層5の磁化Mをそれぞれ固着できる。
【0121】
さらに、図14(d)に表したセルの場合、第2の強磁性層2の上に、非磁性中間層4A、強磁性層5A、非磁性中間層4B、強磁性層5B、反強磁性層6Aがこの順に積層されている。また、第1の強磁性層1の下側には、非磁性中間層4C、強磁性層5C、反強磁性層6Bがこの順に設けられている。このようにしても、第1の強磁性層1及び強磁性層5の磁化Mをそれぞれ固着できる。
【0122】
図14(a)〜(d)及び図15(a)〜(d)に例示した磁気抵抗効果素子の場合、強磁性層1と5の磁化の向きは反並行とされている。反平行とすることで、スピン伝達と反作用効果がプラスされて記録層2への書き込みが効率よく行われる。
【0123】
一方、作りやすさを考慮すると、図15(f)〜(h)に例示したように強磁性層1と5の磁化を平行にした形態が好ましい。スピン伝達作用と反作用効果とは、記録層2に接した面積により働く効果の大きさが異なる。このため、片方を犠牲にして、すなわち、反転電流が若干大きくなることを犠牲にして、強磁性層1と5の磁化を平行配置にすることができる。このようにすると、固着化のための多層化を少なくする、あるいは作製上の工程を減らすことができる。
【0124】
図16は、図12に例示したような磁気メモリに用いることができる磁気抵抗効果素子の他の具体例を表す模式断面図である。すなわち、図16(a)〜(e)に表した具体例の場合、いずれも第1の強磁性層1と第2の強磁性層2の何れか一方の磁化方向が、所定の方向に固着され、他方の磁化方向が可変であり、第1と第2の強磁性層の外側(中間層3と反対側)に1対の電極7を設け、これら電極7に対して電流供給手段(図示せず)から電流を接触あるいは非接触で供給することで各積層膜の界面を電流が通過するように電流を流すことで記録再生を行なう。
【0125】
強磁性層の磁化の固着のためには、その磁性層の外側に反強磁性層を設けるか、あるいは非磁性層/強磁性層/反強磁性層を積層すればよい。
【0126】
再生は、この素子自身の磁気抵抗効果を利用して検出し、記録は再生よりも大きな電流を流すことで、前述したようにスピン伝達と反作用効果を強磁性層1と2との間で行なうことにより実行できる。図16の構造は、素子特性を調整することが若干難しいが、しかし極めて構造がシンプルになるという利点を有する。なお、図16に例示した磁気抵抗効果素子の場合も、微小開口の断面形状は、図示したような円錐形には限定されず、前述のように円柱、多角錘、多角柱、曲面などでもよい。
【0127】
なお、微小開口の位置は、磁気抵抗効果素子に電流を流すために設けられた2つの電極7、7の間であることが望ましい。よって、図16(e)に例示した如く電極7がオフセンターすなわち素子の中心から外れた位置に設けられた場合には、それに対応して微小開口もオフセンターにあることが望ましい。
【0128】
【実施例】
以下、実施例を参照しつつ、本発明の実施の形態についてさらに詳細に説明する。
【0129】
(第1の実施例)
まず、本発明の第1の実施例として、アルミナでカバーされたニッケル(Ni)上に磁気微小接点を形成した磁気抵抗効果素子の作製例を紹介する。
【0130】
まず、図8(a)に表した積層構造を得るために、ニッケルからなる強磁性層1の上にアルミニウム(Al)を蒸着し、その表面を酸化させることで、絶縁層アルミナを形成した。
【0131】
次に、その表面に対して、図8(b)に表したように導電性ダイヤモンドがコーティングされた微小開口形成用の針110を近づけた。そして、ニッケル層1と針110との間に0.1Vの電圧を印加し、流れる電流をモニターしながら針110をアルミナ3の中へ圧入していった。針110の移動は、アーム140の上部に取り付けられた距離変化機能部130Aへの通電加熱による熱膨張を利用して制御した。
【0132】
図17は、針110を一定速度で圧入した時の、(a)強磁性層1の表面と針110の先端部との間の距離と、(b)これらの間に流れる電流の時間変化を表すグラフ図である。
【0133】
ここでは、時間とともに距離を線形(リニア)に変動させているが、流れる電流は指数関数的に増加する。設定電流を10μAとし、電流がこれに到達したら針110をマウントしているアーム140の湾曲をもとに戻した。さらに形成された穴を埋め込むように強磁性層2としてニッケルを蒸着した。
【0134】
このように形成された磁気抵抗効果素子の2つの強磁性層1、2にそれぞれ電極を設け、磁気抵抗効果を測定した。
【0135】
図18は、本実施例の磁気抵抗効果素子において、印加した磁場と電気抵抗との関係を表すグラフ図である。多少のヒステリシスが見られたが、概ね、磁場を印加することにより抵抗は減少した。微小開口Aにおける接点部の抵抗は磁場がゼロの時に約3kΩであり、MR比として120%という大きな値が得られた。
【0136】
(第2の実施例)
次に、本発明の第2の実施例として、前述した第1実施例において用いた作製方法を応用して、磁気記録のための再生素子を作製した。
【0137】
すなわち、まず、基板上にコバルト(Co)の厚膜を形成し、その上にアルミナを形成した。そして、微小開口Aを形成したのち厚さ20nmのパーマロイを蒸着した。微小開口Aの上部のパーマロイを約20nm角にパターン加工し、さらにその下のコバルト層を100nmに切り出した。これに導線を設け、この磁気抵抗効果素子を垂直磁化媒体の表面で動かしたところ、媒体信号変化に対応した抵抗変化が観察された。
【0138】
(第3の実施例)
次に、本発明の第3の実施例として、図12に例示した磁気メモリを作成した。
【0139】
すなわち、導電性基板上に、図14(d)に表した積層構造膜をスパッタ装置を用いて作製した。その過程で、微小開口Aの形成も行なった。
【0140】
すなわち、電極層20の上に反強磁性層6B〜第1の強磁性層1を積層形成し、その上に、絶縁層3として、ポリマーを塗布し、微小開口Aを形成した。そして、その上に第2の強磁性層2を堆積した。
【0141】
さらに、図14(d)に表したように、非磁性中間層4A〜反強磁性層6Aを形成した。そして、この上に相分離構造をもつポリマーを塗布することで微細加工用マスクを形成し、その表面をイオンミリングでエッチングすることでパターンド媒体を作製した。セル・パターンの間にはポリマーを充填して表面を平らにした。
【0142】
このようにして作製したパターンド媒体の1つのセルに対し、探針(プローブ)を電極として電流を流し、記録再生テストを行なった。まず、プラス500μAの記録電流を流すことにより書きこみを行なった。ここで、プラス方向は、図14(d)において上から下へ電流が流れる方向に対応する。そして、10μAの電流でセルの抵抗を測定した。このときの抵抗値は3kΩであった。また、マイナス500μAの記録電流を流すことにより書きこみを行ない、同じく10μAの電流でセルの抵抗を測定した結果、抵抗値は7kΩであった。
【0143】
すなわち、多少のヒステリシスが観察されたものの、この結果は電流駆動書きこみと電流駆動の読み込みが可能であることが確認できた。
(第4の実施例)
次に、本発明の第4の実施例として、開口部に異種元素を添加した磁気抵抗効果素子について説明する。
ここでは、図19に表した構造により接点部に異種元素を添加した磁気抵抗効果素子と、接点部に図7(a)に表したように異種元素を添加した素子と、異種元素を添加しない磁気微小接点からなる素子と、をそれぞれ作製し、従来のCCP−MR構造の素子と比較した。
【0144】
いずれの膜も、堆積にはイオンビームスパッタ製膜装置を用い、下記サンプルIIを除き、電子ビームによる反応性エッチング(詳細は、後述の第11の実施例に関して説明する)を用いて作製した。また、絶縁層3の開口径は、設定目標値として10nmとした。各サンプルの構造は次の通りである。
【0145】
サンプルIは、図19(a)に表した構造をもち、ここで異種元素として、3原子層の銅(Cu)を挿入した。強磁性層1を含む下部構造は、PtMn15nm/CoFe4nm/Ru1nm/CoFe4nm(強磁性層1)からなる積層構造とし、強磁性層1をピン層とした。絶縁層3の材料としてはSiOを用い、3nmの厚みに堆積させたあと、開口を形成した。
【0146】
異種元素としてCu層を挿入すると、接点部の結晶性を保ったまま、上下の強磁性層1、2の交換結合の分断を促し、これら上下の層1、2の磁化が独立に、すなわち、この場合は上の強磁性層2の磁化がより自由に動くようにすることができる。一般に、Cuの中間層が存在する場合でも、その膜厚が薄いところでは層間交換相互作用が働くので、上下層が結合してしまう。しかし、磁気微小接点のような接触面積が極めて小さい場合には、層間交換相互作用は無視できるため、上下の磁性層の結合分断に有効である。
【0147】
なお、強磁性層2はCoFe4nmとし、この上には保護膜としてCu層を堆積した。
【0148】
一方、サンプルIIは、図19(b)に表した構造とし、ここでの異種元素としては、銅(Cu)とアルミニウム(Al)からなる合金を堆積させたのち酸素中で酸化させ、Cu−Al−Oとした。強磁性層1を含む下部構造および強磁性層2はサンプルIと同じで、絶縁層3の材料としては、Alを用いた。Cu−Al−O層では、アルミナがリッチな高絶縁微粒子と、Cuがリッチな導通がある箇所とが形成されやすい。従って、磁気微小接点の開口サイズを実質的に小さくすることができ、これによりさらに大きな磁気抵抗効果が得られる。
【0149】
サンプルIIIは、図7(a)に表した構造を有する。ここでの異種元素は酸素(O)であり、自然酸化により酸素元素を導入した。その基本的な構造は、異種元素の導入方法を除いては、サンプルIと同じである。この酸化層の導入は、サンプルIIと同じく、磁気微小接点の開口サイズを実質的に小さくすることを目的とする。
【0150】
サンプルIVはパーマロイのみからなる微小接点であり、接点部には異種元素層が存在しない構造である。
【0151】
サンプルVは通常のCCP−MR構造で、PtMn15nm/CoFe4nm/Ru1nm/CoFe4nm/Cu2nm/CoFe4nm/Cuなる積層構造をもつ。
【0152】
磁気抵抗変化率の測定結果を表1にまとめた。本発明の磁気抵抗効果素子であるサンプルI〜IVではいずれも、サンプルVの通常のCCP−MRよりも大きな磁気抵抗変化率を示している。また、サンプルIとIIでは、異種元素添加により、さらに大きな磁気抵抗変化率が得られた。
【0153】
【表1】
Figure 0003967237
(第5の実施例)
次に、本発明の第5の実施例として、複数の磁気抵抗効果素子を直列に積層させたいわゆる「タンデム型」の素子を製作した。
【0154】
図20は、本実施例として製作した磁気抵抗効果素子の要部断面構造を表す模式図である。
【0155】
同図に表したように、強磁性層1と絶縁層3とが交互に積層され、それぞれの絶縁層3には微小開口Aが形成され、隣接する強磁性層1同士を磁気微小接点により接続されている。すなわち、図1に表した磁気抵抗効果素子における強磁性層1と強磁性層2とを、隣り合う磁気抵抗素子素子間で兼用するようにした。
【0156】
ここで、各絶縁層3に形成される微小開口Aの位置は、必ずしも一直線上に整列している必要はなく、図20に例示した如く互いに「ずれて」いてもよい。
【0157】
本実施例のような直列構造とすると、より大きな磁気抵抗変化が得られる点で有利である。
【0158】
また、このような積層直列構造において、仮に微小開口Aの開口幅にばらつきがある場合には、もっとも抵抗の大きな微小開口Aの部分で全体の特性が規定されるので、微小開口Aが大きくなりがちであるという欠点を補うことができる。
【0159】
(第6の実施例)
次に、本発明の第6の実施例として、円柱状の微小開口を形成した磁気抵抗効果素子について説明する。
【0160】
図21は、本実施例において製作した磁気抵抗効果素子の要部断面構造を表す模式図である。
【0161】
まず、導電性基板Sの上に反強磁性膜6、磁性層1をこの順に形成し、さらにその上に直径5nmの円柱形の微小開口Aを有するアルミナ3を形成した。この微小開口Aに対して、電気化学的な堆積方法によりニッケル(Ni)を埋め込んだ。そして、その上に磁性層2を堆積することにより、図21に表した構造の磁気抵抗効果素子を得た。
【0162】
図22は、この磁気抵抗効果素子の磁気抵抗変化を表すグラフ図である。すなわち、ゼロ磁場における電気抵抗は100Ω以下と比較的小さく、磁場20G以上で抵抗の大きな減少が得られることが分かった。
【0163】
(第7の実施例)
次に、本発明の第7の実施例として、図11(a)に表した構造を有する磁気記録のための再生素子を作製した。この素子を媒体200側から眺めた断面構造(開口面上の)は、図23に表した如くである。電極層の一部およびシールド層を除いた磁気抵抗効果素子を構成する各層の材料と膜厚は、次のとおりである。Ta5nm/CoFe1nm/SiO層の中に開口部/CoFe1nm/Ru1nm/CoFe1nm/PtMn30nm/Ta5nm
【0164】
ここで開口部はFIB(focused ion beam)を利用することで作製した。また、磁気抵抗効果素子の側面には、フリー層2の磁化の制御のためにハードマグネット層HMを設けた。フリー層2は、ハードマグネット層HMに近い部分が磁化制御のために不感応領域2Aとなる。このため、単純なフリー層/中間層/ピン層という単純な積層構造のMR素子の場合には、不感応領域2Aの磁気抵抗効果も含むため、検出効率が低下する。また、媒体200から遠くなるほど媒体200からの信号磁界が小さくなるため、フリー層2の応答は悪くなり、やはり検出効率が低下する。
【0165】
これに対して本実施例の構造では、不感応領域2Aをさけ、また、フリー層2のうちで、媒体200に近い部分のみにおけるセンス状態を検出することができる。つまり、本実施例によれば、感度のロスが少なく、単純なフリー層/中間層/ピン層構造に比べ、検出効率を1.5倍以上に上げることができる。
【0166】
(第8の実施例)
次に、本発明の第8の実施例として、図15(g)の構造をもつ磁気抵抗効果セルを図12に表したように基板上に並べ、32×32のマトリックスを形成した。このマトリックスをさらに32×32並べ、合計で1M(メガ)ビットの記録再生媒体を形成した。
【0167】
そして、この記録再生媒体に対して、32個×32個からなるプローブで記録再生を行った。すなわち、マトリックス1セットに対しプローブ1個を対応させた。プロービングは、図13(a)に表した如くである。それぞれのプローブPRに対するセルの選択は、媒体に設けられたXY駆動機構により行なった。
【0168】
また、これらプローブPRを、図24に表したようにトランジスタTRを介してアレイ状に接続した。こうすることによって、ビット線BLとワード線WLとを選択し、所定のプローブPRに対応するトランジスタTRをオン(ON)することによりプローブの選択を行なった。このような構造をとることで、多数のビットに対してもビット選択が可能となることを確認した。
【0169】
(第9の実施例)
次に、本発明の第9の実施例として、図5(d)に例示した断面構造を有する磁気抵抗効果素子を、「自己組織化プロセス」を利用して作製した。
【0170】
まず、超高真空イオンビームスパッタ装置を用いて、基板上にCoFeからなる強磁性層1の平坦な層を形成したのち、基板温度を200℃まで上げてその上にSiO層3を成長させた。条件によりSiO層3はアイランド状に成長する。
【0171】
図25(a)乃至(c)は、成長時間とともに変化するSiO層3の平面形態を表す模式図である。
【0172】
すなわち、SiO層3は、成長初期には、図25(a)に表したように微細なアイランド、成長中期には大きいアイランド、成長後期にはアイランドが繋がって成長していき、最終的には連続的な膜となる。
【0173】
このように異なる成長時間の膜に対し、さらにそれらの上面にCoFe強磁性層2を堆積し、磁気抵抗効果を調べた。
【0174】
図26は、横軸にSiO層3の成長時間、縦軸にMR比を表すグラフ図である。成長の初期は強磁性層1及び2が大きな面積で接しているため、MR効果は非常に小さい。しかし、SiO層3の成長が進行して、強磁性層1及び2の接触面積が適切な範囲まで小さくなると、MR比が急激に大きくなる。そして、SiO層3の成長がさらに進行すると、強磁性層1の表面を覆うために、MR比は、ピークを越えて急速に低下する。なお、SiO層3が強磁性層1の表面を覆った直後の状態においてはTMR効果が出現していると推測されるが、この絶縁層3の厚さが成長の進行によって厚くなるので、MR比は急速に低下する。
【0175】
以上説明したように、本実施例の方法によれば、微細加工技術を駆使する必要なく、微小開口を形成して大きなMR値を得ることができる。
【0176】
(第10の実施例)
次に、本発明の第10の実施例として、図16(a)に表した磁化方向の関係を有するセルを第9実施例と同様の方法で作製し、図12の磁気記録媒体を形成した。
【0177】
まず、超高真空スパッタ装置を用いて下地電極20の上にPtMn層(厚み10nm)を形成したのちCo層(厚み5nm)1を成長させ、さらにアルミナ層3をアイランド状に形成し、その上にCo層(2.5nm)2を形成した。そして、その上Ta層(3nm)を形成した。この積層膜を真空磁場中でアニールしたのち、EB(electron beam)露光装置を用いて、それぞれが70nm×120nmのサイズを有するセルが規則正しく並んだセルアレイを形成した。
【0178】
そして、これらセルのうちの一つにプローブPRを接触させて電流値をスウィープさせた場合の素子抵抗変化を調べた。その結果、プラス1.2mA以上の電流を流すと素子の抵抗が大きくなり、さらに電流を2mAまで流した後に減少させ電流方向を反転すると、マイナス1.4mA近くまでは抵抗値が大きいままであり、この電流値を境にさらにそれよりもマイナス方向に電流値を増加すると抵抗は減少した。このような抵抗変化の反応は、何回かの繰り返し実験でも同様に再現した。電流スウィープによる抵抗の変化率は、平均すると22%であった。
【0179】
以上、図1乃至図26を参照しつつ、本発明の磁気抵抗効果素子及びその製造方法について説明した。以下、本発明の磁気抵抗効果素子に設けられる微小開口の製造方法に関連した他の具体例について、第11乃至第18の実施例を参照しつつ詳細に説明する。
【0180】
(第11の実施例)
次に、本発明の第11の実施例として、電子線(EB)によるエッチングを利用して微小開口を形成する具体例について説明する。
【0181】
図27は、本実施例において用いた方法を説明する概念図である。この装置は、真空チャンバ300内に設置された電子線を供給するEBソース310、サンプルステージ320、サンプルに反応ガスを供給するノズル340さらにサンプル温度を上昇させるためのサンプルヒータ330を有する。真空チャンバ300は、排気口350を介して真空排気され、減圧雰囲気が維持可能とされている。
【0182】
微小開口の穴あけ加工は、以下の要領で行った。
【0183】
まず、強磁性層1と絶縁層3とが形成されたサンプルをサンプルステージ320に固定する。スキャンされたEB像を観察して絶縁層3の穴あけ位置を決定する。さらにその予定の場所にEBを集中して照射し、さらにノズル340を介して反応ガスをその近傍に吹き付ける。また、反応を促進するためサンプルヒータ330により、サンプルの温度を適宜上昇させる。そのようにすることで、絶縁層3の表面は供給されたガスとEBにより反応して揮発性物質となり蒸発する。その結果、エッチングが促進される。また、サンプル温度を上昇させることにより、反応速度をあげて工程時間を短縮することができる。また、エンドポイントであり反応が進まない磁性層1の表面でカーボンフロライド層がEB照射にて形成堆積するのを防ぐ。
【0184】
図28は、磁気抵抗効果素子の形成工程を表す模式図である。すなわち、同図は、CoFe磁性層1の上に形成されたSiO絶縁層3に微小開口Aを形成する工程を表す。
【0185】
まず、図示しない下地膜(例えば、厚み5nmのタンタルなどからなる)上に、図示しないPtMn反強磁性膜(例えば、厚み15nm)が形成される。その上に、CoFe層1がMR素子のピン層として形成される。その上に厚み3nmのSiO層3が形成されている。
【0186】
次に、ビーム径が10nm以下に絞られたEBをスポット状にSiO層3の表面に照射する。絶縁体のチャージアップを防ぐため、EBの加速電圧は10kVとした。そこへ反応ガスとしてXeF2を吹き付ける。そのようにすることで、SiOはガスと反応してSiフッ化物となり蒸発する。しかしながら、CoFe磁性層1とは揮発性の反応物を作らないため反応はSiO層3のエッチングのみで停止する。
【0187】
チャージアップの影響避けるためには、サンプルを約30度ほど傾けたり、2次電子の放出を促進させるとよい。ノズル340から供給する反応性ガスとしては、XeFのみでなく、CHFガスや他のフレオン系ガスでも効果がある。さらに、チャージアップへの対策として、SiO層3の上にNb(ニオブ)膜などの金属膜を形成しても良い。
【0188】
図29は、Nb膜400を形成した例を表す。Nb膜400の厚みは、例えば、3nm程度とすることができる。この場合には、まず、図29(a)に表したように、CFを反応ガスとして用いてEBを照射して、Nb膜400にスポット状の穴400Aを形成する。次に、図29(b)に表したように、XeFガスに切り替えてSiO層3をEB照射にてエッチングする。
【0189】
このように、金属膜400を絶縁層3の上に形成することで、チャージアップによるEB照射径の増大を防ぐことができる。また、金属膜400が絶縁層3の上に存在することで、その上に形成される磁性膜2の結晶性が向上し、その結果として軟磁性の向上や抵抗変化率の向上が図られる。つまり、磁気抵抗効果素子の磁界感度の向上に寄与する。
【0190】
図30は、微小開口の形成プロセスのもうひとつの例を表す工程断面図である。
【0191】
すなわち、素子ひとつひとつについてEBにより微小開口Aを形成するのは時間がかかるので、EBによる微小開口Aの形成は、図30(a)に表したように金属膜400だけにしておき、その後、図30(b)に表したようにCHFガスによるRIE(Reactive Ion Etching)をウェーハ全体で行ったり、さらに物理的ダメージの小さいCDE(Chemical Dry Etching)によってウェーハ全体に亘ってSiO層3をエッチングすることにより、工程時間の短縮化を図ることができる。
【0192】
また、図30(a)に表したすように金属膜400に穴400Aが開口した状態で全体をスパッタエッチングやイオンミリングすることにより、図30(c)に表したように金属の穴400Aを絶縁層3に転写してもよい。この方法の場合も、ウェーハ全体に亘って微小開口Aを同時に形成できるので、工程時間の短縮化を図ることが可能である。
【0193】
SiO層3に微小開口Aを形成した後、図31(a)に例示したようにフリー層となる磁性層2(例えば、厚みが5nm程度のCoFe )を積層形成し、さらに保護膜9となるTa膜を5nm程度、積層形成して、ピン層とフリー層とがポイントコンタクトしたMR積層膜を得ることができる。
【0194】
また、図31(b)に表したようにフリー層となるCoFe磁性膜2を形成する前にMR素子における非磁性中間層(スペーサ層)4となるCr膜やCu膜を2nm程度、積層形成しても良い。このようにすることで、図14に関して前述したように、フリー層2のコンタクト部分が外部磁界に対して磁化回転しやすくなり、低信号磁界で反応するようになる。
【0195】
また、図31(c)に表したようにピン層1の上に非磁性中間層4を設けても同様の効果が得られる。
【0196】
一方、上下の磁性層を反転させて下をフリー層、上をピン層としてもよい。
【0197】
図32(a)は、上下を反転させた例を表し、微小開口Aを形成後、ピン層となるCoFe層1さらにそれを磁化固着する反強磁性層6さらにTa保護膜9が形成される。微小開口Aの中に埋め込まれる磁性膜1はどうしても結晶欠陥が入りやすいので、軟磁気特性を要求されないピン層が穴に埋め込まれる形態のほうが信号磁界への感度という点では有利である。ピン層となる磁性膜2を埋め込む場合にも、図32(b)に表したように最初に非磁性中間層4を埋め込んでもよい。この場合も、フリー層1の信号磁界に対する磁化回転がスムーズになり、信号磁界に対する感度を増すことができる。
【0198】
また、図32(c)に表したようにフリー層2の上にスペーサー層4が形成されていても同様の効果が得られる。
【0199】
埋め込まれる磁性層2の結晶性を良くして高いMRを得るためには、微小開口Aの側面はなだらかなテーパー状であること、およびその表面粗さが小さいことが望ましい。なだらかなテーパーをつけるためには、図33に表したように斜め入射のイオンミリングや、斜め入射でのRIBE(Reactive Ion Beam Etching)加工で絶縁膜3をエッチングするとよい。またテーパー面の表面荒さを小さくするためには、絶縁層3の材料として、SiOやアルミナなどのアモルファスの酸化物を用いることが望ましい。
【0200】
以上説明したように、反応性ガスを用いたEB照射により任意の場所に微小な穴を開けることができる。この電子を反応性ガスと共に基板に衝突させて加工する原理自体は、J.W.Coburn により開示されている(非特許文献6参照)。
【0201】
【非特許文献6】
J.W.Coburn (Journal of Applied Physics , vol.50,no.5,pp3189-3196(1979)
【0202】
この方法の特徴は、電子衝突であるため衝突ターゲットに与える物理的ダメージがきわめて小さいことである。ナノコンタクトMR素子の形成に適用した場合、極微小に絞った電子線を使用して絶縁膜の下層にある磁性体に物理的ダメージを与えることなく絶縁膜のエッチング加工を行うことができる。微小部分エッチングは絶縁体表面を金属膜で覆うことによりチャージアップによるEB収束劣化を防ぐことができる。
【0203】
ナノコンタクトMR素子ではコンタクト部分の良好な結晶性が要求されるため、このEB照射エッチングは特に有用な開口部形成プロセスである。また、素子一つ一つの加工領域が極めて狭いためプロセス時間が短いこと、さらに加工後、加工形状を観察できその結果プロセスフィードバックが可能であることが、この方法をナノコンタクトMR素子に適用することのメリットである。
【0204】
なお、絶縁体の微小開口を形成した後、上側の磁性層あるいは異種元素層や非磁性中間層を形成する前に、工程によっては、試料を取り出す必要があり、質の悪い雰囲気に晒されることによって下側の磁性層の開口部が望まない酸化する場合がある。このような場合に酸化層を除去する方法として、2つの方法を以下に挙げる。
【0205】
まず第1の方法は、通常のスパッタエッチングにより除去する方法である。この場合、結晶にダメージが入りやすいので、上部電極を形成する真空チャンバと同一あるいは真空ラインで繋がった真空チャンバ内でイオンビームでスパッタエッチングした後、電子ビームあるいはレーザービームを用いて局所加熱すると結晶性向上に有用である。もちろん、試料を加熱してもよい。
【0206】
第2の方法は、上部電極を形成する真空チャンバと同一のチャンバあるいは真空ラインで繋がった別の真空チャンバ内で試料表面を原子状水素にさらすことで表面酸素を除去する方法である。
【0207】
原子状水素は、試料近傍に設けられた高温に加熱した(およその温度として摂氏1400度から2000度以上程度)タングステン(W)フィラメントあるいはタンタル(Ta)チューブに水素ガスを導入して水素をクラッキング(加熱分解)させることで発生させることができる。ノズルから試料表面までの距離は10cm程度のこともあるが、チャンバ内構造によってはより距離があっても構わない。水素による酸素の還元とともに加熱による結晶性回復を行なうとより効果的である。
【0208】
この場合の熱源としては、水素クラッキング装置からの輻射熱、あるいは電子ビームを局所的にあてる電子ビーム加熱、あるいはレーザービームを局所的にあてるレーザービーム加熱などを用いることができる。
以上のような酸化層の除去方法は、本実施例の微小開口形成法以外にも、本発明の磁気抵抗効果素子へ適用することができる。
【0209】
(第12の実施例)
次に、本発明の第12の実施例として、EBを利用してMR積層膜の状態でスポット的に加熱を行い微小開口を形成するプロセスについて説明する。
【0210】
図34は、本実施例による磁気抵抗効果素子の製造プロセスを表す工程断面図である。
【0211】
まず、同図(a)に表したように、下から順に、PtMn反強磁性層6(厚み15nm)、ピン層となるCoFe磁性層1(厚み2nm)、SiO絶縁層3(厚み2nm)、フリー層となるCoFe層2(厚み2nm)、保護層9としてTa層(厚み5nm)を形成する。
【0212】
次に、図34(b)に表したように、EBのスポット径10nm以下に絞込み、Ta保護層9の上から照射する。
【0213】
すると、図34(c)に表したように、EB照射された領域が急激に温度上昇して粒径の増大を引き起こし、SiO絶縁層3を構成するSi原子とO原子が界面に偏析したり、その一部がCoFe層1、2内に取り込まれ、EBが照射された部分で絶縁層3が局所的に消失する。その結果として、上下の磁性層1、2の間をポイントコンタクトにより接続することができる。
【0214】
また、図35(a)に表したように、上下の磁性層1、2の間に、例えばCrのような非磁性スペーサー層4Aと、その表面が酸化されて形成された酸化クロムの非磁性スペーサー層4Bとが挿入された構造も考えられる。
【0215】
この場合も、同様にして、図35(b)に表したように、Ta保護層9の上からEB照射を局所的に行うことで、図35(c)に表したように局所的にスペーサー層4A、4Bを消失させ、導通を得ることができる。この場合、上下の磁性層1、2の間で、非磁性スペーサー4A、4Bに形成された微小開口を介して電気的な導通が得られると、ポイントコンタクトによるMR増大のメリットと、低信号磁界にもフリー層2が反応することによる感度の向上のメリットの両方を得ることができる。
【0216】
このようなTa保護層9の上からEB照射することのメリットは、MR膜積層工程の途中で微小開口の形成プロセスを実施しないため、よりクリーンな積層界面を形成できること、またEB照射1回のみでポイントコンタクトを形成できるので工程時間を短縮できることである。
【0217】
また、このEB照射プロセスは、図36に表したように、下側のピン磁性層1の上にピン磁性層1が酸化された酸化層1A(Co−Fe−O)が形成されている場合や、図37に表したように、上側のフリー磁性層2の下側に酸化層2A(Co−Fe−O)が形成されている場合でも有効である。
【0218】
また、EB照射により形成されるナノホール(微小開口)PCは、図38(a)に表したようにEBをスポット状に照射した場合、図38(c)のように照射した部分に形成される場合や、図38(b)のように照射スポットの周りに複数が点在するように形成される場合もある。これらいずれの場合でも、磁気抵抗効果素子の微小接点として利用できる。なお、図38(a)乃至(c)においては、EB照射領域を一点鎖線により表している。
【0219】
また、EB照射する位置は、磁気抵抗効果素子として磁気ヘッドに搭載される場合、媒体走行面に近いところに照射することが望ましい。
【0220】
図39は、MR積層膜を形成後の状態で、アライメントマークAMを読み込み素子の重心(中心)点Cよりも媒体走行面に近いところへEB照射位置が設定されていることを表す概念図である。
【0221】
図40は、デバイスの構成を表す概念図である。磁気抵抗効果膜MRは、上下電極ELにサンドイッチされ、またその左右を縦バイアス膜HMに挟まれる。同図から分かるように、EB照射により形成されるポイントコンタクトPCは、素子の重心(中心)点Cよりも媒体走行面ABSに近い方向にオフセットされている。こうすることで、MR素子の磁気検出部を媒体走行面ABSに近づけ、記録媒体からの大きな信号磁界が得られる部分に集中的にセンス電流を供給することができる。その結果として、センス電流あたりの検出出力を増加させることができる。
【0222】
なお、第11実施例に関して前述したようにEBを用いてエッチングを行う場合にも、微小開口の形成位置は媒体走行面ABSに近いところとすることが望ましい。
【0223】
ところで、本実施例においては、EB照射された領域は結晶粒径が増大して結晶欠陥が減少していた。その結果として、素子抵抗が減少し、MR変化率の向上が見られた。しかし、軟磁性の改善は明確には確認されなかった。これは、素子の電気的性質は通電領域のみの結晶性に依存するが、軟磁気的性質はフリー層2の全体が交換結合して全体で磁化が動くため、局所的な欠陥の減少の効果が明確には現れないためであると考えられる。
【0224】
このことから、EB照射による局所的アニールは、素子全体をオーブンなどで加熱する方法に比べて素子の電気的性質および磁気的性質を独立に制御できる方法であることがわかる。
【0225】
例えば、結晶磁気異方性が大きなbcc結晶構造のFeCoは大きなMRを期待できるが、結晶サイズが大きくなるとその軟磁性が劣化してしまう。そこで、図41(a)に表したように、ほとんどの部分を微結晶で構成したbcc−FeCoを形成し、その通電領域のみにEB照射する(EB照射領域を一点鎖線により表した)。すると同図(b)に表したようにEB照射部分は若干、結晶サイズが増大するがセンス電流の通電領域の結晶欠陥は減少する。こうすることで、大きなMRと軟磁性とを両立することができる。軟磁性をアシストするためにNiFe(パーマロイ)合金膜と積層させる場合にも、同様の方法が有効である。
【0226】
また、EB照射によるアニールを利用して、特定の結晶方位のみの選択的な成長を促すこともできる。
【0227】
図42は、MR素子内にいくつかの(例えば、[111],[100],[110])成長軸が存在する状態を表す模式図である。これら成長軸は、例えば、イオンビームを照射して得られるSI(Secondary Ion)像において、コントラストの違いとして確認することができる。MR素子が異なる面方位を有する複数の結晶粒で構成される場合は、磁気抵抗効果素子として動作する場合のノイズの発生原因となる。これは、素子のサイズが小さくなり、少数の結晶粒で構成される場合にはさらに顕著となる。また、ポイントコンタクトが粒界近くに形成されると、電流磁界の影響も加わり、さらに動作信頼性に問題が生じる。
【0228】
そこで、EBをポイント照射する場合は、この粒界を避けて照射することが望ましい。またさらに、単に粒界を避けるのみでなく、EBを制御してスキャンさせることにより、特定の方位の結晶粒を成長させることができる。
【0229】
例えば、図43(a)に例示したように、EB照射を[111]配向した結晶粒の部分で「うずまき状」に徐々に広げてゆくことで、[111]配向部分を広げることができる。そして、図43(b)に表したように、ポイントコンタクトPCの全領域が同一の配向の状態となることが望ましい。
【0230】
また、本実施例において、EB加熱による結晶性の改善は、MR膜の全ての層を積層した後でなく、途中で行っても良い。
【0231】
図44(a)は、基板(図示せず)側から順に、フリー磁性層1、抵抗変化率を上げる目的のCrAs層410、SiO絶縁層3、Nb導電層400からなる積層体にコンタクトホールCHが形成された状態を表す。このコンタクトホールCHにEB照射してCrAs層410を過熱する。こうすることで、CrAs層410の結晶性および結晶配向を改善し、高い電子分極特性を有する構造が得られる。
【0232】
この後、図44(b)に表したように、ピン層となる磁性層2と反強磁性層6および保護膜9を形成する。積層の途中の工程でEB照射を行うことにより、特定の層のみを加熱処理できる。
【0233】
また一方、図45(a)に表すように、MR膜の全ての層(下から順に、CoFeフリー層1、CrAs層410、Crスペーサー層4A、Cr酸化物層4B、CoFeピン層2、PtMn反強磁性層6、Ta保護層9)を形成した後に、EB照射を局所的に行ってもよい。
その結果、CrAs層410の原子配列は、上下に隣接する積層膜の影響を受けて再配列する。このように、EB照射を微小接点に行うことで、その部分のみの結晶性の向上を行うことができ、他の部分には加熱による悪影響を及ぼさない素子作成法となる。
【0234】
また、絶縁層3への穴あけ工程において、下側の磁性層1に導入された結晶欠陥や歪などのダメージをEB照射によって取り除くこともできる。
【0235】
図46(a)は、RIEによる穴あけ工程で、下側の磁性層1の表面にダメージが導入された部分DMが形成された状態を表す。この後、図46(b)に表すようにEB照射を穴に向かって行うことで、ダメージが導入された部分DMを局所的アニールで取り除くことができる(図46(c))。
【0236】
また、これとは別のプロセスとして、さらに上側の磁性層2を成膜して穴の中に埋め込んだ後、その部分をEBアニールしても同じ効果が得られ、さらに穴に埋め込まれた磁性体の結晶欠陥を低減することもできる。その結果、高いMR変化率を有するMR素子を得ることができる。
【0237】
以上説明したように、EB局所照射加熱はナノホールMR素子において、磁性層の接続部に局所的に必要な電気的性質および外部磁界に反応するフリー層全体的な磁気的性質を両立できるプロセスである。なお、局所加熱はEB照射のみならずレーザー光照射を用いても効果がある。レーザー光照射の場合は、表面が透明層の場合には、任意の場所に焦点を合わせることが可能である。
例えば、フリー層形成後、絶縁層を形成、その絶縁層にレーザーを照射することで穴あけ加工など必要とせずに上下磁性層を電気的につなぐための「ピラー」を形成できる。その後、ピン層を積層することでポイントコンタクトしたMR素子が形成できる。この方法は穴を開けてそこへ磁性層を埋め込むわけではないので埋めこみ磁性膜の膜質が向上し、その結果、素子のMRや軟磁性が向上する。
【0238】
(第13の実施例)
次に、本発明の第13の実施例として、FIB(Focused Ion Beam)によって微小接点を形成する方法について説明する。FIBの場合は、基本的に、衝突粒子(イオン)の質量が大きいため、照射だけでエッチング加工が可能である。
【0239】
図47は、CoFe磁性層1の上に形成されたSiO絶縁層3に微小開口を開ける方法を表す工程断面図である。
【0240】
まず、図示しない下地層(厚み5nmのTa)上に、図示しないPtMn反強磁性層(厚み15nm)を形成する。その上に、CoFe層1をMR素子のピン層として形成する。その上に、厚み3nmのSiO層3を形成する。
【0241】
次に、図47(a)に表したように、ビーム径を10nm以下に絞ったFIBをスポット状にSiO層3の表面に照射する。ドーズ量を制御することにより、図47(b)に表したように、SiO層3に微小開口Aを開けることができる。ただし、一般的にFIB源として用いられるGaイオンは、CoFe層1もエッチングしてしまうので、ドーズ量の厳密な制御が必要となる。また、SiO層3とCoFe層1のエッチング選択比を大きくすることにより、CoFe磁性層1のオーバーエッチングを抑えることができる。
【0242】
例えば、図48(a)に例示したように、フレオン系ガスを反応アシストガスAGとして加工領域に吹き付けながらFIB加工を行うことにより、選択比を高めることができる。その結果として、図48(b)に表したように、CoFe磁性層1のオーバーエッチングを抑えて微小開口Aを形成できる。ガスとしてはCHF3などのフレオン系ガスのほかにやヨウ素ガスなども使用できる。
【0243】
また、図49(a)に表したように、SiO層3の表面をFIB加工するが、FIB加工はSiO層3の途中で止めておき(図49(b))、残りの部分は、別の方法によりエッチングしてもよい(図49(c))。
【0244】
このエッチングの方法として、磁性層1に対するエッチング速度が極めて低くなるRIEもしくはCDEなどを用いると、CoFe磁性層1のオーバーエッチングや結晶性劣化ダメージの導入などの問題を抑えることができる。すなわち、FIBを途中でとめ、最後はダメージがより少ないRIEやCDEでのエッチングすることで、さらに低ダメージのエッチングが可能である。
【0245】
なお、この場合、SiO層3の初期の膜厚設定を、RIEやCDEなどによりエッチングされる量だけ、多目にしておく必要がある。
【0246】
また、図50に例示したように、SiO層3の表面に例えばTa膜などを形成すると、RIEやCDEによるSiO層3の膜べりを減らすことができる。具体的には、例えば、図50(a)に表したように、SiO層3の上に厚み3nmのTa膜9を形成する。そして、これにFIBにて穴加工を行う。
【0247】
図50(b)に表したように開口がSiO層3にまで達したところで、図50(c)に表したように、RIEやCDEに切り替える。
【0248】
RIEやCDEで大きなエッチング選択比が得られる材料をSiO層3の上にマスク層9として形成しておくことで、CHFなどのようなフレオン系ガスによるRIEやCDEでの膜厚の減少を抑制でき、さらに、オーバーエッチング時間やエッチングの面内の不均一によるSiO層3の膜厚の面内不均一も抑制することができる。
【0249】
また、このようにして形成された微小開口に中に埋め込まれる磁性層2の欠陥を減少させるためには、微小開口の側壁にテーパーをつけることが有効である。このためには、図50(c)に例示したように、斜め入射のRIBEを行うことも望ましい。
【0250】
金属マスク層9を適用することにより、EBの場合と同様にチャージアップによるビーム径の増大を防ぐことができる。さらに、金属マスク層9は、その上に形成される磁性層2のバッファ層として作用するため、磁性層2の結晶性向上による高出力高感度を得ることができる。
【0251】
また、同様のプロセスをFIBのみで行うことも可能である。
【0252】
まず、図51(a)に表したように、下からCoFe磁性層1、SiO酸化物層3、Taマスク層9という積層構造を形成し、FIBを照射する。
【0253】
図51(b)に表すようにTaマスク層9に穴が形成されたら、次に、図51(c)に表すように、再びFIBにてSiO層3を削る。この時、CHFなどのアシストガスAGを導入してSiO層3のエッチング速度を増加させ、CoFe磁性層1とのエッチング速度の選択比を大きくすることができる。
【0254】
プロセス上の簡略化さのためには、アシストガスAGは、最初のTa膜エッチング時(図51(a))から吹き付けていてかまわない。しかし、マスク層9の材料として、アシストガスAGに対して反応するものを用いた場合、通常ではエッチングが進行しないような、FIBビームの裾野の部分でもエッチングが進んでしまい、結果的に穴が大きくなってしまうことがある。そのため、絶縁層3に対しては反応するが、マスク層9および磁性層1には反応しないようなアシストガスAGガスを選択することが望ましい。
【0255】
また、図52に表したようにスペーサー層4(たとえばCu)を挿入し、これをエッチングストップ層として用いることもできる。
【0256】
本実施例では、イオン源としてガリウム(Ga)を使用した例を示したが、ガリウム原子が加工面に残るような場合には、このような残留の心配がないアルゴン(Ar)ガスなどのガスを用いたイオン源を用いることが望ましい。
【0257】
(第14の実施例)
次に、本発明の第14の実施例として、ウェーハの全面に亘って一括的に微小開口を形成できるプロセスについて説明する。すなわち、微小開口をひとつずつ形成するよりも、ウェーハ全面で一度に形成するほうが工程時間を短縮でき有利である。
【0258】
図53及び図54は、本実施例のプロセスを表す工程図である。
【0259】
まず、図53(a)に表したように、磁性層(図示せず)上に形成されたアルミナ絶縁層3(厚み6nm)の上に厚み0.1μmのフォトレジストPRをコートし、穴の位置Xの部分までパターニングする。
【0260】
次に、図53(b)に表したように、その上に厚み7nmのSiO膜420を形成する。フォトレジストPR側壁には5nmのSiO膜420が形成された。さらに、図53(c)に表したように、厚み0.1μmのフォトレジストPRをコートする。
【0261】
そして、表面をイオンミリングもしくはRIEによりエッチバックして約30nm厚まで削り、図53(d)に表したように、PRの側壁のSiO膜420を表面に露出させた。すなわち、上方から見ると、SiO膜420が幅5nmのライン状に見える状態となる。
【0262】
これをCHFガスによるRIEにより、図54(a)に表したように、5nm幅のSiO層420を選択的にエッチングする。さらに、CHF−CF混合ガスによるRIEをおこない、図54(b)に表したように、アルミナ絶縁層3の膜厚の半分程度(約3nm)までライン状にエッチングする。
【0263】
そして、表面に残った一対のフォトレジストPRをOガスのRIEで除去し、さらに、その下のSiO膜420をCHFガスRIEによって除去する。アルミナ絶縁層3に対して、これらのガスによるRIEのエッチング速度は10分の1以下であるため、アルミナ絶縁層3のエッチングはわずかで済む。
【0264】
以上のプロセスにより、図54(c)に表したように、アルミナ絶縁層3の表面の位置xにおいて、幅5nm深さ3nmの溝Gが形成される。
【0265】
次に、パターニングする方向を90度回転させ、図53(a)乃至図54(b)に表したプロセスを繰り返して幅5nm深さ3nmの溝Gを形成する。すると、図54(d)に表したように、これら直交する2つの溝Gの交点には5nm角の穴CHが形成されることになる。
【0266】
以上説明したプロセスを適用することで、穴あけ工程の時間を大幅に短縮することができた。また、穴CHの形状は、RIEを用いた場合は、その側壁の傾斜角度が80度以上と急峻であり、一方、CDEを用いた場合にはワインカップ状になだらかにな側壁が形成される。その上に埋め込む磁性膜2がフリー層の場合には、なだらかな側壁形状であるほうが穴内部に埋め込まれる磁性体の軟磁気特性が優れる。
【0267】
(第15の実施例)
次に、本発明の第15の実施例として、AFM(Atomic Force Microprove)技術に代表される針の技術で穴を開ける方法について説明する。
【0268】
図55は、本実施例において還元反応を利用するプロセスを説明するための概念図である。
【0269】
サンプルとしては、磁性層1の上にアルミナ絶縁層3(厚み5nm)を形成したものを用いた。そして、AFMの針の表面に金属膜をコーティングし、新たな酸化物の生成を防ぐためH2混合フォーミングガスを吹き付けて還元性雰囲気とした状態で、針NDとサンプルとの間に電界を印加する。すると、ある電界強度で電流が急激に流れ出し、還元反応が起こって、針NDを当てた領域が通電領域(Al)となる。針NDで接触しているため、電気力線は接触部分で密であり、その部分から還元反応が進行する。
【0270】
ここで、アルミナ絶縁層3と磁性層1との間にスペーサー層4を挿入しても良い。また、絶縁層3の材料として金属酸化物を用いる場合、アルミニウム(Al)などの金属を成膜し、その後酸化プロセスにより酸化物を形成しても良い。
【0271】
本実施例における絶縁層3としては、金属酸化物が望ましいが、SiOを使用した場合には、針NDからの通電によりSiOを還元してSiまたはSi化合物を形成し、しかる後に、図56に表したように、RIEで取り除くとコンタクトホールが完成する。
【0272】
また、絶縁層3の上に磁性層2を積層した状態で加工することも可能である。すなわち、図57に例示した如く、磁性層1、絶縁層3、磁性層2のサンドイッチ構造のサンプルに対して、針NDから局所的に電界を印加することで、絶縁層3が局所的に還元され、局所的な通電領域を形成することも可能である。
【0273】
また一方、本発明においては、酸化反応を利用することも可能である。
【0274】
図58は、酸化反応を利用したプロセスを説明するための概念図である。
【0275】
すなわち、磁性層1の上に、シリコン(Si)などの層3Aを設けておき、酸化性雰囲気中で、これに針NDを接触させて逆方向の電界を印加すると、陽極酸化反応が局所的に進行する。その結果として、同図(a)に表したように、微小なSiO領域3Rが形成される。
【0276】
しかる後に、このSiO領域3RをRIEなどにより選択的にエッチング除去する。この際には、母体のシリコン(Si)とのエッチング選択比が大きい条件でエッチングを行うことが望ましい。
【0277】
この後、シリコン層3Aを酸化させてSiOとすることにより、微小開口が形成された絶縁層3を形成できる。
【0278】
AFM技術を用いた場合には、サンプルの上での開口位置を予め確認し、調節することも容易であるという利点がある。特に、本発明のMR素子を形成する場合は、局所的に通電するため、通電領域としては、欠陥、異物、粒界などをさけたい。これに対して、AFM走査により事前の膜表面形状を把握し、また穴あけ位置を調節することができる。またさらに、磁性体からなる針NDを用いることにより、サンプルの表面の磁気的な状態をMFM(Magnetic Force Microscope)技術によって確認できる点でも、顕著なメリットがあるといえる。
【0279】
(第16の実施例)
次に、本発明の第16の実施例として、非磁性体からなるスペーサー層4の作用について説明する。
【0280】
図59(a)には、CoFe磁性層1の上にSiO絶縁層3が形成され、コンタクトホールCHが構成されている場合、スペーサー層4として例えばCu(厚み2nm)などを先に形成し、その上にCoFe磁性層2(厚み4nm)を形成する構造を表した。この構造の場合、磁性層1と磁性層2とが直接接触しないために、フリー層(例えば磁性層2)がピン層(例えば磁性層1)と交換結合することに起因する軟磁性の低下を抑制できる。 特に、コンタクトホールCHの中に埋め込まれる磁性体には欠陥が多く含まれピン層とフリー層とで急峻な磁化回転を起こしにくくなる。これに対して、図59(a)に表したように、非磁性層4をまず形成し、続いて上側の磁性層2を形成する。こうすることでコンタクトホールCHの側面も金属膜下地が形成されることになり、コンタクトホールCH内の磁性膜の結晶性が向上、穴CHの中の磁性体が周りの磁性層と一緒に磁化回転できるようになり、信号磁界に対して敏感なMR変化を発生させるようになる。
【0281】
また、穴CHを開ける過程もしくは埋め込み成膜前のスパッタエッチングなどで、穴CHの底の磁性層1が削られる場合も、図59(b)に例示したように、スペーサー層4を形成して開口を形成した後に、図59(c)に表したように上側のスペーサー層4及び磁性層2を形成することで同様のバッファ効果が得られる。
【0282】
一方、絶縁層3をフレオン系のガスでRIEエッチングした場合、図60(a)に表したように、エッチング条件によっては穴CHの底部(すなわち、下側の磁性層1の表面)に、カーボン膜CFが堆積することがある。このカーボン膜CFもスペーサー層4として機能する。すなわち、図60(b)に表したように上側の磁性層2を形成する際に、上述したものと同様のバッファ効果が得られる。
【0283】
スペーサー層4はCH内全面をCuで覆う必要は無く、ピンホール的にまたは網目状にCuが抜けて部分的にCHを狭窄した状態で、磁気的な接触面積を制限することでも効果がある。導体を挿入することで狭窄による電気抵抗の過上昇を防ぐことができ、その結果より高周波に対応する再生素子を供給できる。また、絶縁膜を部分的に挿入することで、MR値を上昇させることができる。CHが製造プロセスで大きく出来上がってしまった場合、有効な対処方法となる。
【0284】
(第17の実施例)
次に、本発明の第17の実施例として、メッキ法によって、コンタクトホールを磁性体で埋め込むプロセスについて説明する。
【0285】
コンタクトホールの中に磁性層を埋め込む場合、メッキ法を用いると穴の底部から磁性層の成長が開始するため、欠陥を極めて抑えて成長させることができる。
【0286】
例えば、図61(a)に表したように、下側の磁性層1の上にSiO絶縁層3を形成し、コンタクトホールCHを形成する。その後、磁性層1に電極を接続してメッキ浴PLに入れる。例えば、NiFeメッキ浴PLへ入れた場合、図61(b)に表したように、コンタクトホールCHの底に露出した磁性層1であるCoFe表面からNiFeの成長が始まる。また、この場合、CoFe磁性層1の表面にCuスペーサー層4(図示せず)を積層しても良い。
【0287】
コンタクトホール底部より始まったNiFe膜2の成長は穴CHを出たところで周囲に向けて広がり、表面積が急激に増加し始めるため、一定のメッキ電流では成長速度が低下する。したがって、極微小コンタクトホール部分へのメッキを行う場合には、穴を埋め込むメッキの停止タイミングは、メッキ時間で管理することが容易となる。このように、メッキでコンタクトホールに形成した磁性膜は欠陥が少なく大きなMRを出現させることができる。
【0288】
さらにこの後、図61(c)に表したように反強磁性層6を成膜してピン層の固着を行う。このように、メッキで穴を埋めた後、反強磁性層で磁化固着を行うことで磁区制御が可能となり、非特許文献5(M.Munoz (Applied Physics Letters vol.79,No.18,pp2946-2948(2001))における問題点である大きなノイズを抑制した再生素子を提供することができる。
【0289】
(第18の実施例)
次に、本発明の第18の実施例として、通電方向が膜面に対して平行に形成された微小接点を有するMR素子の形成方法について説明する。
【0290】
図62は、本実施例のMR素子の構造を表す模式図である。すなわち、第1の電極EL1から第2の電極EL2へ電流が流れる途中に、ピン層1、電流が狭窄される(A―B)領域PC、フリー層2が設けられる。この構成例では、信号磁界SMは、第2電極EL2の側からフリー層2に入る。
【0291】
図63は、このようなMR素子を形成するプロセスを表す工程図である。
【0292】
まず、同図(a)に表したように、CoFe磁性層(厚み5nm)FMを成膜し、その上にPtMn反強磁性層6(厚み15nm)を形成する。さらに、その上に、電流狭窄される位置にエッジ(端部)が配置されるようにフォトレジストPRをパターニング形成する。
【0293】
次に、図63(b)に表したように、イオンミリングでフリー層になる側のCoFe層FMの上のPtMn層6を除去する。
【0294】
次に、図63(c)に表したように、フォトレジストPRのエッジに沿って、FIBによりビーム走査してトリミングを行い、電流狭窄する部分PCを形成する。
【0295】
すると、加工後に、図63(d)に表したような形状が得られる。その後、第1電極EL1および第2電極EL2を形成する。
【0296】
ところが、このときA−B断面のフリー層2側の断面を見てみると、図64に表したようにFIBビームのプロファイルの影響を受けて上側が丸まってしまい、抵抗値制御が困難となる。そこで、図65に表したように、保護層PRを設け、この保護層PF越しにFIB加工を行うことで、磁性層FMの「丸まり」を防ぐことができる。保護膜PFは、絶縁膜のような高抵抗膜とすると、磁性膜との電流の分流の観点で望ましい。
【0297】
図66は、図63(b)の状態からさらにフォトレジストをコートしてフリー層上に保護層PRを形成した状態を表す。この状態で、FIBによる電流狭窄加工を行うと、ピン層1とフリー層2ともに、上面保護された状態でFIBエッチングを受けることになるので、「丸まり」による抵抗のばらつきを抑えることができる。
【0298】
また一方、ガリウム(Ga)打ち込みを利用して、電流狭窄幅を加工幅よりも狭くすることもできる。
【0299】
図67は、FIB加工部の端部にGaを打ち込んだ状態を表す模式図である。Gaを打ち込んだ領域IZは、CoFe層1、2の結晶が破壊され抵抗値も増加する。したがってFIBによる物理的な加工幅よりも、両側が数〜10数nmずつ実効的に狭いジャンクションが形成されることとなる。このように、GaなどのFIBソース粒子の打ち込みにより、物理的加工幅よりも実質的に狭いコンタクトを形成することが可能となる。
【0300】
また狭窄部をEB照射加熱して結晶欠陥を改善することでMR特性の向上をはかることができる。
【0301】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、磁気抵抗効果膜を構成する各要素の具体的な寸法関係や材料、その他、電極、バイアス印加膜、絶縁構造などの形状や材質に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0302】
また、前述したように、磁気抵抗効果素子における反強磁性層、強磁性層、非磁性中間層、絶縁層などの構成要素は、それぞれ単層として形成してもよく、あるいは2以上の層を積層した構造としてもよい。
【0303】
また、本発明の磁気抵抗効果素子を再生用磁気ヘッドに適用する際に、これと隣接して書き込み用の磁気ヘッドを設けることにより、記録再生一体型の磁気ヘッドが得られる。
【0304】
その他、本発明の実施の形態として上述した磁気ヘッド及び磁気記憶再生装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施しうるすべての磁気抵抗効果素子、磁気ヘッド及び磁気記憶再生装置も同様に本発明の範囲に属する。
【0305】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、素子化可能でかつ制御性が良好、さらに作製容易な磁気微小接点を提供するとともに、これを用いた高感度の再生ヘッド用素子を提供することができる。
【0306】
またさらに、この磁気抵抗効果素子を用いた記録再生機能をもつ磁気メモリを提供することもでき産業上のメリットは多大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態にかかる磁気抵抗効果素子の要部断面構造を例示する模式図である。
【図2】本発明の磁気抵抗効果素子における印加磁場と電気抵抗との関係を説明するための模式図である。
【図3】通常の異方性磁気抵抗効果による磁気抵抗変化を説明する概念図である。
【図4】本発明の磁気抵抗効果素子と従来の磁気抵抗効果素子とを比較して表した概念図である。
【図5】複数の微小接点を有する磁気抵抗効果素子を表す模式図である。
【図6】微小接点の開口部の断面形状を例示する模式図である。
【図7】微小開口Aの開口端付近に、異種元素を添加した領域Dが設けられた磁気抵抗効果素子を表す模式図である。
【図8】本発明の磁気抵抗効果素子の製造方法の要部を表す工程断面図である。
【図9】共通の基板(図示せず)の上に複数の磁気抵抗効果素子を配列した構造を表す断面図である。
【図10】本発明の磁気抵抗効果素子を磁気再生素子として用いる具体例を表す模式図である。
【図11】本発明の磁気抵抗効果素子を磁気再生素子として用いる他の具体例を表す模式図である。
【図12】本発明の磁気抵抗効果素子を用いた磁気メモリの要部断面構造を例示する模式図である。
【図13】記録再生セル10のそれぞれへのアクセスの手段を例示する模式図である。
【図14】図12の磁気メモリに用いる磁気抵抗効果素子10の断面構造を表す模式図である。
【図15】図12の磁気メモリに用いる磁気抵抗効果素子10の断面構造を表す模式図である。
【図16】図12の磁気メモリに用いることができる磁気抵抗効果素子の他の具体例を表す模式断面図である。
【図17】針110を一定速度で圧入した時の、(a)強磁性層1の表面と針110の先端部との間の距離と、(b)これらの間に流れる電流の時間変化を表すグラフ図である。
【図18】本発明の実施例の磁気抵抗効果素子において、印加した磁場と電気抵抗との関係を表すグラフ図である。
【図19】本発明の第4実施例として製作した磁気抵抗効果素子の要部断面構造を表す模式図である。
【図20】本発明の実施例において製作した磁気抵抗効果素子の要部断面構造を表す模式図である。
【図21】本発明の実施例において製作した磁気抵抗効果素子の要部断面構造を表す模式図である。
【図22】本発明の実施例の磁気抵抗効果素子の磁気抵抗変化を表すグラフ図である。
【図23】本発明の第7の実施例において形成した素子を媒体200側から眺めた断面構造を表す模式図である。
【図24】複数のプローブをトランジスタTRを介してアレイ状に接続した状態を表す模式図である。
【図25】成長時間とともに変化するSiO層3の平面形態を表す模式図である。
【図26】横軸にSiO層3の成長時間、縦軸にMR比を表すグラフ図である。
【図27】本発明の第11実施例の方法を説明するための模式図である。
【図28】本発明の実施例の磁気抵抗効果素子を形成する方法を表す模式図である。
【図29】ニオブ膜400を形成する具体例を表す模式図である。
【図30】微小接点を形成する方法を表す模式図である。
【図31】図30に続く工程を表す模式図である。
【図32】微小接点を形成する別の方法を表す模式図である。
【図33】斜め入射による方法を表す模式図である。
【図34】本発明の実施例における磁気抵抗効果素子の製造方法を表す模式図である。
【図35】本発明の実施例における磁気抵抗効果素子の別の製造方法を表す模式図である。
【図36】 本発明の実施例における磁気抵抗効果素子のさらに別の製造方法を表す模式図である。
【図37】本発明の実施例における磁気抵抗効果素子のさらに別の製造方法を表す模式図である。
【図38】電子線をスポット状に照射した場合のポイントコンタクトの形成を説明する模式図である。
【図39】素子の中心Cに対して、電子線の照射位置の関係を例示した模式図である。
【図40】デバイスの構成を表す模式図である。
【図41】MR素子内に複数の成長軸が存在する場合を表す模式図である。
【図42】結晶粒の結晶方位を配向させるプロセスを例示する模式図である。
【図43】MR積層膜の積層プロセスに挿入される電子線加熱のプロセスを表す模式図である。
【図44】MR積層膜の積層プロセスの後に電子線加熱を行うプロセスを表す模式図である。
【図45】穴あけ工程で生じた欠陥を取り除くプロセスを表す模式図である。
【図46】微小開口を形成する方法を表す模式図である。
【図47】オーバーエッチングを防ぐ方法を表す模式図である。
【図48】異なるエッチングを利用して微小開口を形成するプロセスを表す模式図である。
【図49】絶縁層の膜べりを抑制するプロセスを表す模式図である。
【図50】FIBによる形成プロセスを表す模式図である。
【図51】スペーサー層を用いるプロセスを表す模式図である。
【図52】本発明の第14実施例のプロセスを表す模式図である。
【図53】本発明の第14実施例のプロセスを表す模式図である。
【図54】本発明の第15実施例のプロセスを表す模式図である。
【図55】本発明の第15実施例のプロセスを表す模式図である。
【図56】本発明の第15実施例のプロセスを表す模式図である。
【図57】酸化反応を利用したプロセスを表す模式図である。
【図58】本発明の第16実施例のプロセスを表す模式図である。
【図59】スペーサー層を用いたプロセスを表す模式図である。
【図60】穴の底部にカーボン膜が堆積した状態を表す模式図である。
【図61】本発明の第17の実施例を表す模式図である。
【図62】本発明の第18の実施例にかかるMR素子を表す模式図である。
【図63】本発明の第18実施例のMR素子を形成するプロセスを表す模式図である。
【図64】FIBビームのプロファイルにより磁性層に「丸まり」が生ずることを表す模式図である。
【図65】保護層PFを用いた状態を表す模式図である。
【図66】フォトレジストを用いた具体例を表す模式図である。
【図67】FIB加工部の端部にGaを打ち込んだ状態を表す模式図である。
【符号の説明】
1、2 強磁性層
3 絶縁層
4、4A〜4C 非磁性中間層
5、5A〜5C 強磁性層
6、6A、6B 反強磁性層
7 電極
10 磁気抵抗効果素子
20 電極層
30 絶縁体
110 針
120 導線
130A、130B 距離変化機能部
140 アーム
A 微小開口
S 基板

Claims (23)

  1. 第1の強磁性層と、
    前記第1の強磁性層の上に設けられた絶縁層と、
    前記絶縁層の上に設けられた第2の強磁性層と、
    を備え、
    前記絶縁層の所定の位置に前記第1の強磁性層と前記第2の強磁性層とが接続される最大幅が20nm以下の開口を有する孔が設けられ、
    前記第1の強磁性層と前記第2の強磁性層との前記孔における接続部において、前記第1の強磁性層を構成する元素とも前記第2の強磁性層を構成する元素とも異なる異種元素が添加され、
    前記異種元素が添加された領域の厚みは10原子層以下であることを特徴とする磁気抵抗効果素子。
  2. 第1の強磁性層と、
    前記第1の強磁性層の上に設けられた絶縁層と、
    前記絶縁層の上に設けられた第2の強磁性層と、
    を備え、
    前記絶縁層の所定の位置に前記第1の強磁性層と前記第2の強磁性層とが接続される最大幅が20nm以下の開口を有する孔が設けられ、
    前記第1の強磁性層及び前記第2の強磁性層の少なくともいずれかは、前記孔に接した部分を含む領域の結晶粒がそれ以外の領域の結晶粒よりも相対的に大きく、前記孔の全領域の結晶方位が同一の配向とされた、多結晶体であることを特徴とする磁気抵抗効果素子。
  3. 前記第1の強磁性層と前記第2の強磁性層との前記孔における接続部において、前記第1の強磁性層を構成する元素とも前記第2の強磁性層を構成する元素とも異なる異種元素が添加され、
    前記異種元素が添加された領域の厚みは10原子層以下であることを特徴とする請求項2記載の磁気抵抗効果素子。
  4. 前記孔を通して前記第1の強磁性層と前記第2の強磁性層との間に流される電流に対し、電気抵抗が前記第1の強磁性層と前記第2の強磁性層の相対的磁化配置により変化することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の磁気抵抗効果素子。
  5. 前記絶縁層の孔は、前記第1の強磁性層側の開口幅が前記第2の強磁性層側の開口幅よりも小さくされた錐状であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の磁気抵抗効果素子。
  6. 前記孔が複数設けられたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の磁気抵抗効果素子。
  7. 前記第1の強磁性層と前記第2の強磁性層との間の抵抗が5Ω以上100kΩ以下であり、20%以上の磁気抵抗変化率を示すことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の磁気抵抗効果素子。
  8. 前記絶縁層は、ポリマー、または、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、シリコン(Si)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)及び鉄(Fe)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素を含む酸化物、窒化物あるいはフッ化物であり、
    前記第1及び第2の強磁性層は、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、または、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)及びクロム(Cr)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素を含む合金、酸化物、窒化物あるいはホイスラー合金、あるいは鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)及びクロム(Cr)の少なくともいずれかの元素を含む化合物半導体または酸化物半導体であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の磁気抵抗効果素子。
  9. 請求項1〜8のいずれか1つに記載の磁気抵抗効果素子の複数を直列に結合したことを特徴とする磁気抵抗効果素子。
  10. 請求項1〜9のいずれか1つに記載の磁気抵抗効果素子を備え、
    磁気記録媒体から放出される磁束の経路上に前記第1及び第2の強磁性層を直列に設け、前記孔を挟んだ前記第1及び第2の強磁性層の磁化方向の差異を磁気抵抗変化として検出可能としたことを特徴とする磁気再生素子。
  11. 前記第1及び第2の強磁性層のうちで、前記磁気記録媒体から相対的に遠くに設けられた強磁性層の磁化が一方向に固着されてなることを特徴とする請求項10記載の磁気再生素子。
  12. 請求項1〜9のいずれか1つに記載の磁気抵抗効果素子を備え、
    前記第1の強磁性層の膜面は、磁気記録媒体に対して略垂直の配置にて前記磁気記録媒体からの信号磁界を検出することを特徴とする磁気再生素子。
  13. 前記孔は、前記絶縁層の中心から前記記録媒体の方向にずれた位置に設けられたことを特徴とする請求項12記載の磁気再生素子。
  14. 請求項1〜9のいずれか1つに記載の磁気抵抗効果素子と、
    前記第2の強磁性層の上に設けられた非磁性中間層と、
    前記非磁性中間層の上に設けられた第3の強磁性層と、
    を備え、
    前記第1の強磁性層の磁化の方向が第1の方向に固着され、
    前記第3の強磁性層の磁化の方向が前記第1の方向とは略反平行な第2の方向に固着され、
    前記第2の強磁性層の磁化の方向が可変であり、前記第1乃至第3の強磁性層の膜面に対して略垂直方向に電流を流すことにより書き込み及び読み出しの少なくともいずれかを行うことを特徴とする磁気メモリ。
  15. 請求項1〜9のいずれか1つに記載の磁気抵抗効果素子と、
    前記第2の強磁性層の上に設けられた非磁性中間層と、
    前記非磁性中間層の上に設けられた第3の強磁性層と、
    を備え、
    前記第1及び第3の強磁性層の磁化の方向が第1の方向に固着され、
    前記第2の強磁性層の磁化の方向が可変であり、
    前記第1乃至第3の強磁性層の膜面に対して略垂直方向に電流を流すことにより書き込み及び読み出しの少なくともいずれかを行うことを特徴とする磁気メモリ。
  16. 請求項1〜9のいずれか1つに記載の磁気抵抗効果素子を備え、
    前記第1及び第2の強磁性層のいずれか一方の磁化の方向が第1の方向に固着され、
    前記第1及び第2の強磁性層のいずれか他方の磁化の方向が可変であり、
    前記第1及び第2の強磁性層の膜面に対して略垂直方向に電流を流すことにより書き込み及び読み出しの少なくともいずれかを行うことを特徴とする磁気メモリ。
  17. 前記電流を流すための第1及び第2の電極が、前記第1及び第2の強磁性層の全体または一部のみを覆うように設けられ、前記第1及び第2の電極が対向する範囲内に前記開口が設けられたことを特徴とする請求項14〜16のいずれか1つに記載の磁気メモリ。
  18. 複数のメモリセルが絶縁領域により互いに分離されて2次元的に配列され、
    導体プローブまたは固定配線により、前記複数のメモリセルのそれぞれに電流が供給され、
    前記複数のメモリセルのそれぞれに対する書き込みのための電流の絶対値は、読み出しのためのセンス電流よりも大きく、
    前記複数のメモリセルのそれぞれは、
    請求項1〜9のいずれか1つに記載の磁気抵抗効果素子を備え、
    前記第1及び第2の強磁性層のいずれか一方の磁化の方向が第1の方向に固着され、
    前記第1及び第2の強磁性層のいずれか他方の磁化の方向が可変であり、
    前記第1及び第2の強磁性層の膜面に対して略垂直方向に電流を流すことにより前記書き込み及び読み出しの少なくともいずれかを行うことを特徴とする磁気メモリ。
  19. 第1の強磁性層と、前記第1の強磁性層の上に設けられた絶縁層と、前記絶縁層の上に設けられた第2の強磁性層と、を有する積層体を形成する工程と、
    前記積層体の主面に電子線を局所的に照射することにより前記絶縁層を局所的に消失させる工程と、
    を備えたことを特徴とする磁気抵抗効果素子の製造方法。
  20. 前記積層体は、前記電子線を照射される前記主面にタンタルからなる保護層を有することを特徴とする請求項19記載の磁気抵抗効果素子の製造方法。
  21. 第1の強磁性層の上に絶縁層を形成する工程と、
    前記絶縁層の表面に針を当て、還元性雰囲気において前記絶縁層と前記針との間に電界を印加することにより電流を流して還元反応を生じさせ前記絶縁層の前記針を当てた領域を通電領域とする工程と、
    前記絶縁層上に強磁性体を堆積することにより第2の強磁性層を形成する工程と、
    を備えたことを特徴とする磁気抵抗効果素子の製造方法。
  22. 第1の強磁性層と、前記第1の強磁性層の上に設けられた絶縁層と、前記絶縁層の上に設けられた第2の強磁性層と、を有する積層体を形成する工程と、
    前記積層体の主面に針を当てて局所的に電界を印加することにより前記絶縁層を局所的に還元して前記絶縁層に局所的な通電領域を形成する工程と、
    を備えたことを特徴とする磁気抵抗効果素子の製造方法。
  23. 第1の強磁性層の上に被酸化層を形成する工程と、
    前記被酸化層の表面に針を当て、酸化性雰囲気において前記被酸化層と前記針との間に電界を印加することにより電流を流して陽極酸化反応を生じさせ前記被酸化層の前記針を当てた領域を酸化する工程と、
    前記酸化した領域を選択的に取り除いて前記被酸化層に孔を形成する工程と、
    前記被酸化層を酸化させることにより、孔が形成された絶縁層を形成する工程と、
    前記孔を埋め込むように前記孔及び前記絶縁層の上に強磁性体を堆積することにより第2の強磁性層を形成する工程と、
    を備えたことを特徴とする磁気抵抗効果素子の製造方法。
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